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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1204694 |
審判番号 | 不服2007-10845 |
総通号数 | 119 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-16 |
確定日 | 2009-09-28 |
事件の表示 | 平成10年特許願第511921号「顕微手術システム用のフットコントローラ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月 5日国際公開、WO98/08442、平成13年11月13日国内公表、特表2001-522254号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成9年8月28日(パリ条約による優先権主張 平成8年8月29日、米国 平成8年9月26日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年12月21日付けで拒絶査定がなされたところ、同査定を不服として平成19年4月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 II.本願の発明 本願の請求項1に係る発明は、平成18年6月28日付けの手続補正書により補正された、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 システム用の動作モードおよびモードシーケンスを画定するための中央プロセッサと、システムと共働する機能を表示するための電子表示機器とを有する顕微手術システムにて使用するフットコントロールであって、 コンソールと、 手術中にシステムのユーザによって使用されるコンソールに与えられるフットペダルと、 ピッチ方向の動きの所定の最大範囲にわたって、ユーザによりピッチ方向に動かされるためのフットペダルであって、その動作モードおよびモードシーケンスにしたがってシステムにより実行される1以上の線形機能を選択的に制御するフットペダルを配置する手段と、 コンソール内に配置され、顕微手術システムとデータ通信するためのコンピュータネットワークにおいて顕微手術システムと接続された制御回路とを備え、 前記制御回路が、フットペダルのピッチ方向の動きを電子的に監督し、かつ、その動作モードにおいて顕微手術システムの制御のために、そのような動きおよび動作を顕微手術システムに通知し、 前記制御回路が、フットペダルの構成および機能をプログラムするため、かつ、フットペダルのピッチを変更することによるユーザの制御を可能にするために、システムと通信し、 前記制御回路が、フットペダルのピッチ方向の動きの全範囲内で複数の活性領域を画定するようにシステムとともに機能し、かつ、当該活性領域を対応するアーチ状の範囲でユーザが定めた基準にしたがって選択的に変更可能とすることを特徴とするフットコントロール。」(以下、これにより特定される発明を、「本願発明」という。) III.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特表平8-502422号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。 記載事項1. 「1.水晶体乳化吸引の実行において、水晶体乳化吸引装置の操作に対する方法、食塩水による眼の洗浄、同時の洗浄と液体吸引、同時の洗浄と組織の乳化と組織の吸引の少なくとも3つのオペレーションモードを必要とする上記水晶体乳化吸引装置、オペレーションモードを制御するためのフットコントロールを持った上記水晶体乳化吸引装置、以下のステップを含む上記方法; 各オペレーションモードに対するフットペダルオペレーションの角度範囲、連続であり、かつ上記フットペダルに対するトータル角変位を定義する上記角度範囲、を確立するステップ; 各範囲内のフットペダルの角度位置と各範囲内のフットペダルからの出力信号の線形な関係を割当てるステップ; 選択されたオペレーションモードに対するフットペダルの位置の範囲の変化によるフットペダルコントロール感度を調整するステップ。 2.上記フットペダルのトール角度変位が15度で確立される。洗浄モードのフットペダル角度範囲は約2度に設定される。同時の洗浄と液体吸引のフットぺダル角度範囲は約5度に設定される。また同時の洗浄と乳化と吸引に対してフットペダル角度範囲は約8度に設定される請求項1に記載の方法。 3.上記フットペダルのトータル角度変位が15度で確立される。洗浄モードのフットペダル角度範囲は約2度に設定される。同時の洗浄と液体吸引のフットぺダル角度範囲は約8度に設定される。また同時の洗浄と乳化と吸引に対してフットペダル角度範囲は約5度に設定される請求項1に記載の方法。 4.上記フットペダルに対するトータルの角度変位は15度で確立され、またの3つのオペレーションモードに対する各フットペダル角度範囲は約5度に設定される請求項1に記載の方法。」(第2頁第2-24行) 記載事項2. 「特に、この発明による方法は、連続した角度範囲で、フットペダルに対するトータル角度変位を定義しながら、各オペレーションモードに対するフットペダルオペレーションの角度範囲の確立を含む。線形な関係は、各範囲内のフットペダルの角度位置と各範囲内のフットペダルからの出力信号の間に割り当てられる。重要なことに、選択されたモード内でフットペダル位置の範囲を変化させることによって、その方法は、フットペダルコントロールの感度を調整することを含む。 さらなる詳細について、フットペダルに対するトータル角度変位は15度で確立される。洗浄モードでのフットペダルの角度範囲は2度に設定され、洗浄モードと洗浄と吸引同時モードに対しては、およそ5度と8度の間で設定される。」(第4頁第8-17行) 記載事項3. 「従来の技術システム10は、一般的に、今回の発明によるデジタル電子フットコントロールシステム14に接続した医療装置12を含む。医療装置12は多機能の水晶体乳化吸引医療装置である。医療装置14を構成するものは、備え付けのコンソールあるいはキャビネット16と連係した携帯医療装置あるいはコンソールに数フィートの長さの帯20で接続された道具18である。」(第4頁第24行-第5頁第1行) 記載事項4. 「一般的に、この発明の目指している所でかつ、挿入図の中で記述されており、さらには、以下で述べられている、フットペダルコントロールシステム14の構成はフットペダル手段あるいは機構30、デジタルカウンター32、デジタルストレージ手段34、データ処理手段36、デジタルーアナログ(D/A)コンバーター38からなる。デジタルストレージ手段34とデータ処理手段36は共に、論理手段40を構成すると考えられる。」(第5頁第11-16行) 記載事項5. 「眼科の外科医が水晶体乳化吸引の手術を行う時以下の動作あるいは機能の順序で行う: i)食塩水による眼の洗浄 ii)同時での洗浄と洗浄液の吸引の組み合わせ iii)患者の眼の液体洗浄、水晶体の超音波による乳化、洗浄液と破壊された水晶体の破片の吸引の組み合わせ しかしながら、このプロセスの間で、外科医は水晶体の乳化なしの液体洗浄と液体吸引に切り替わるオプションを望む。これらの機能はモードとして参照されまたコンソール16のフロントパネルで選択される、またモードセレクター22によってフットペダルプロセッサ-40に対して方向付けられている。 この発明は可能な各モードに対して、携帯装置18の機能的なオペレーションを与えるためにフットペダルコントロールシステム14を必要とする制御の種類を与える。従って、コンソール16に対して必要な制御信号(1つのコンジットあるいはコンジットのグループを介して)を与える論理手段が必要である、そのため、例えば、ある決まった(また都合のよい)フットペダルの角度位置で、また装置に対する乳化のための超音波エネルギーを与える別のフットペダルの角度位置で、信号が、装置18に対する液体洗浄の流れを与えるためにコンソール16が管理する論理手段40によって生成される。」(第6頁第24行-第7頁第13行) 記載事項6. 「従って、メモリー手段34は、フットペダル54がゼロ位置から最大限押し下げられた時に、決められた制御信号の組がコンソール16に与えられるために必要であるものを全て蓄えるように構成される。 できれば、メモリー手段34は、位置インジケーター62とカウンター32によって検出あるいは決定される時、フットペダル54(すなわち、ぺダルシャフト50)のN通りの角度位置に対応した、コンソール16へ与えられるN通りの制御信号の組を蓄えるよう構成される。・・・ メモリー手段34は、N個のアドレスを持ったアドレスカード77からなり、またそこでは、各アドレスは、N個のフットペダル54(すなわち、ぺダルシャフト50)の角度位置の特定の1つに対応する。N個のアドレスカード77のアドレス位置のそれぞれの中で、対応するぺダルシャフト位置に対して要求されるデジタル出力制御信号の組を蓄える。プロセッサ-36はシャフト角度位置インジケーター62からの信号をデコードし、またカウンター34と共にアドレスカード77へ対応するアドレスポインターを与える。」(第8頁第6-22行) 記載事項7. 「それらに反応して、プロセッサー36はコンジット82を介して、アドレスポインターの対応する順序を、メモリー手段34(すなわち、アドレスカード)に与える。これらのアドレスポインターの各々は、ポジションインジケーター62によって決定されるぺダルシャフト50の特定の角度位置に対応する。アドレスポインターがストレージ手段34により受信された時はいつも、指定されたアドレスの中の制御信号の組はコンジット74を介してコンソール16に出力される、ここで制御信号は与えられた方法で装置12の機能の制御に使用される。」(第8頁末行-第9頁第6行) 記載事項8. 「・・・ストレージ手段34から構成される多数の類似のアドレスカード77の利用は有効である。装置の1つの与えられた機能(あるいは機能のグループ)が選択された時に、プロセッサー36を介して、コンソール16上の機能セレクター22によって、適当なアドレスカード77が選択される。」(第9頁第21-25行) 記載事項9. 「具体例によると、このフットペダル54の再プログラミングは水晶体乳化吸引装置に対して以下の表の中で述べられている、そしてそれはフットペダルの変位の関数としてフットペダルによって可能となる異なる動作を示す。表の中に示されているように、全てのオペレーションに対して同じぺダル位置でオペレーション内の機能が切り替わるが、もし希望するならば、アドレスカード77はそのような一様性なしにプログラムできることが理解できる。」(第10頁第13-18行) 記載事項10. 「フットペダルコントロールシステム14に関連したこの発明を具体的に示すために、カウンター32、デジタルストレージ手段34、プロセッサー36、D/Aコンバーター38は、時には有効なように、1つずつまた装置12と別に示されまた記述されている。 しかしながら、必らずしもそうではなく、また別の方法として、カウンター32、プロセッサー36そして/またはD/Aコンバーターを1つに統合してもよい、そして/または別の方法として、全てを装置12に統合してもよい、例えば、コンソール16に統合してもよいというこが認識できる。」(第10頁末行-第11頁第7行) 記載事項11. 「なぜならば、装置を使い始めたユーザーあるいは、ユーザーの個人的な好みに適したモード内のオペレーションのより漸次的な変化を可能にするためである。」(第12頁第8-9行) 図面及び表の記載を併せみつつこれら記載を検討すると、引用例には、「医療装置12は多機能の水晶体乳化吸引医療装置である。医療装置14を構成するものは、備え付けのコンソールあるいはキャビネット16と連係した携帯医療装置あるいはコンソールに数フィートの長さの帯20で接続された道具18である。」(記載事項3.参照)(なお、ここで「医療装置14」は「医療装置12」の誤記と認められる。)と、医療装置12を記載し、加えて、「水晶体乳化吸引の実行において、水晶体乳化吸引装置の操作に対する方法、食塩水による眼の洗浄、同時の洗浄と液体吸引、同時の洗浄と組織の乳化と組織の吸引の少なくとも3つのオペレーションモードを必要とする上記水晶体乳化吸引装置、・・」(記載事項1.参照)と、医療装置12は少なくても3つのオペレーションモードがあることを記載している。そして、これらオペレーションモード画定に関して、「これらの機能はモードとして参照されまたコンソール16のフロントパネルで選択される、またモードセレクター22によってフットペダルプロセッサ-40に対して方向付けられている。」(記載事項5.参照)と記載している。 さらに、「具体例によると、このフットペダル54の再プログラミングは水晶体乳化吸引装置に対して以下の表の中で述べられている、そしてそれはフットペダルの変位の関数としてフットペダルによって可能となる異なる動作を示す。」(記載事項9.参照)と記載され、オペレーションモードに応じて、フットペダルの変位により、フットペダル切替位置において、順次機能が変化することが、第10頁下方に表として記載されている。また、引用例は、「各範囲内のフットペダルの角度位置と各範囲内のフットペダルからの出力信号の線形な関係を割当てるステップ」(記載事項1.参照)と、フットペダルの変位により、フットペダル切替位置において、順次機能が変化することについて、線形な関係と記載している。 以上を総合すると、引用例には、 医療装置12用のオペレーションモードおよび順次変化する機能の切り替えを画定するためのモードセレクタ22・論理手段40と、オペレーションモードを選択するためのフロントパネルとを有する医療装置12にて使用するデジタル電子フットコントロールシステム14であって、コンソール16を有すること が記載されている。 次に、引用例には、「眼科の外科医が水晶体乳化吸引の手術を行う時・・・このプロセスの間で、外科医は水晶体の乳化なしの液体洗浄と液体吸引に切り替わるオプションを望む。これらの機能はモードとして参照されまたコンソール16のフロントパネルで選択される、またモードセレクター22によってフットペダルプロセッサ-40に対して方向付けられている。・・・従って、コンソール16に対して必要な制御信号(1つのコンジットあるいはコンジットのグループを介して)を与える論理手段が必要である、そのため、例えば、ある決まった(また都合のよい)フットペダルの角度位置で、また装置に対する乳化のための超音波エネルギーを与える別のフットペダルの角度位置で、信号が、装置18に対する液体洗浄の流れを与えるためにコンソール16が管理する論理手段40によって生成される。」(記載事項5.参照)と記載され、引用例には、 手術中に医療装置12のユーザによって使用されるコンソール16に制御信号を与えられるフットペダル54 が記載され、フットペダルに関して図面をみると、フットペダルは、いわゆるピッチ方向に角度位置を変更するものとして記載されており、引用例には、「 特に、この発明による方法は、連続した角度範囲で、フットペダルに対するトータル角度変位を定義しながら、各オペレーションモードに対するフットペダルオペレーションの角度範囲の確立を含む。線形な関係は、各範囲内のフットペダルの角度位置と各範囲内のフットペダルからの出力信号の間に割り当てられる。 ・・・ さらなる詳細について、フットペダルに対するトータル角度変位は15度で確立される。洗浄モードでのフットペダルの角度範囲は2度に設定され、洗浄モードと洗浄と吸引同時モードに対しては、およそ5度と8度の間で設定される。」(記載事項2.参照)と記載され、フットペダルが、ピッチ方向の動きの所定の最大範囲であるトータル角度にわたって、ユーザによりピッチ方向に動かされることが記載されるとともに、前記第10頁下方の表は、確立された線形な関係に関して、オペレーションモード及び機能のシーケンスにしたがって、水晶体乳化吸引装置により実行される機能が順次選択されることを記載しているので、引用例には、 ピッチ方向の動きの所定の最大範囲であるトータル角度にわたって、ユーザによりピッチ方向に動かされるためのフットペダル54であって、そのオペレーションモードおよび順次選択される機能にしたがって医療装置12により実行される1以上の線形機能を選択的に制御するフットペダル54を配置すること が記載されている。 そして、引用例は、前記「コンソール16が管理する論理手段40」(記載事項5.参照)に関して、「データ処理手段36、デジタルーアナログ(D/A)コンバーター38からなる。デジタルストレージ手段34とデータ処理手段36は共に、論理手段40を構成すると考えられる。」(記載事項4.)及び「フットペダルコントロールシステム14に関連したこの発明を具体的に示すために、カウンター32、デジタルストレージ手段34、プロセッサー36、D/Aコンバーター38は、時には有効なように、1つずつまた装置12と別に示されまた記述されている。 しかしながら、必らずしもそうではなく、また別の方法として、カウンター32、プロセッサー36そして/またはD/Aコンバーターを1つに統合してもよい、そして/または別の方法として、全てを装置12に統合してもよい、例えば、コンソール16に統合してもよいというこが認識できる。」(記載事項10.参照)と、プロセッサー36を有し、さらに、カウンター32、デジタルストレージ手段34、プロセッサー36、D/Aコンバーター38等をコンソールを有する装置12に統一して配置することを引用例は記載しており、論理手段40の信号を装置18に与える手段として、「・・・備え付けのコンソールあるいはキャビネット16と連係した携帯医療装置あるいはコンソールに数フィートの長さの帯20で接続された道具18である。」(記載事項3.参照)、及び、「プロセッサー36はコンジット82を介して、アドレスポインターの対応する順序を、メモリー手段34(すなわち、アドレスカード)に与える。これらのアドレスポインターの各々は、ポジションインジケーター62によって決定されるぺダルシャフト50の特定の角度位置に対応する。アドレスポインターがストレージ手段34により受信された時はいつも、指定されたアドレスの中の制御信号の組はコンジット74を介してコンソール16に出力される、ここで制御信号は与えられた方法で装置12の機能の制御に使用される。」(記載事項7.参照)と、帯20及びコンジット74として、装置18とデータを通信することが記載されており、少なくとも、プロセッサー36を有して通信を行っているので、帯20及びコンジット74の存在は、ネットワークを構成すると表現可能であり、さらに、プロセッサー36を有する論理手段40は、制御を行う回路としても記載している。 引用例のこれら記載から、当業者であれば、 コンソール16内に配置され、医療装置12とデータ通信するためのプロセッサー36、帯20及びコンジット74からなるネットワークにおいて医療装置12と接続された制御を行う制御を行う論理手段40とを備えること を把握することが可能である。 加えて、「メモリー手段34は、位置インジケーター62とカウンター32によって検出あるいは決定される時、フットペダル54(すなわち、ぺダルシャフト50)のN通りの角度位置に対応した、コンソール16へ与えられるN通りの制御信号の組を蓄えるよう構成される。・・ メモリー手段34は、N個のアドレスを持ったアドレスカード77からなり、またそこでは、各アドレスは、N個のフットペダル54(すなわち、ぺダルシャフト50)の角度位置の特定の1つに対応する。N個のアドレスカード77のアドレス位置のそれぞれの中で、対応するぺダルシャフト位置に対して要求されるデジタル出力制御信号の組を蓄える。プロセッサ-36はシャフト角度位置インジケーター62からの信号をデコードし、またカウンター34と共にアドレスカード77へ対応するアドレスポインターを与える。」(記載事項6.参照)と、位置インジケーター62とカウンター32を介して、論理回路40がフットペダル54のピッチ方向の動きを監督することを引用例は記載しており、「プロセッサー36はコンジット82を介して、アドレスポインターの対応する順序を、メモリー手段34(すなわち、アドレスカード)に与える。これらのアドレスポインターの各々は、ポジションインジケーター62によって決定されるぺダルシャフト50の特定の角度位置に対応する。アドレスポインターがストレージ手段34により受信された時はいつも、指定されたアドレスの中の制御信号の組はコンジット74を介してコンソール16に出力される、ここで制御信号は与えられた方法で装置12の機能の制御に使用される。」(記載事項7.参照)と、論理回路40は、監督したフットペダルの動きを装置12に通知することを記載しているので、引用例には、 論理手段40が、フットペダル54のピッチ方向の動きを電子的に監督し、かつ、そのオペレーションモードにおいて医療装置12の制御のために、そのような動きおよび動作を医療装置12に通知すること が記載されている。 また、前述のとおり、論理手段40は医療装置12と帯20及びコンジット74を介して通信しており(記載事項3.7.参照)、加えて、引用例は、「このフットペダル54の再プログラミングは水晶体乳化吸引装置に対して以下の表の中で述べられている、そしてそれはフットペダルの変位の関数としてフットペダルによって可能となる異なる動作を示す。表の中に示されているように、全てのオペレーションに対して同じぺダル位置でオペレーション内の機能が切り替わるが、もし希望するならば、アドレスカード77はそのような一様性なしにプログラムできることが理解できる。」(記載事項9.参照)と、フットペダルの再プログラミング可能であることを記載し、「メモリー手段34は、N個のアドレスを持ったアドレスカード77からなり、またそこでは、各アドレスは、N個のフットペダル54(すなわち、ぺダルシャフト50)の角度位置の特定の1つに対応する。N個のアドレスカード77のアドレス位置のそれぞれの中で、対応するぺダルシャフト位置に対して要求されるデジタル出力制御信号の組を蓄える。プロセッサ-36はシャフト角度位置インジケーター62からの信号をデコードし、またカウンター34と共にアドレスカード77へ対応するアドレスポインターを与える。」(記載事項6.参照)、及び、「ストレージ手段34から構成される多数の類似のアドレスカード77の利用は有効である。装置の1つの与えられた機能(あるいは機能のグループ)が選択された時に、プロセッサー36を介して、コンソール16上の機能セレクター22によって、適当なアドレスカード77が選択される。」(記載事項8.参照)と、そのための手段として、論理回路の一部であるストレージ手段34におけるアドレスカード77が記載され、コンソール16上の機能セレクター22によって、適当なアドレスカード77が選択されることにより再プログラムがなされることを引用例は記載している。 そして、記載事項1.に記載される請求項2乃至4の記載を比較すれば、この選択の結果、フットペダルのピッチは変更され、フットペダルのピッチ方向の動きの全範囲内は、複数の角度の領域に画定され、この角度領域は、一定の範囲を有するアーチ状の範囲である。 また、引用例は、この選択がユーザーの個人的な好みに適した選択であると記載(記載事項11.参照)している。 なお、記載事項9.の「アドレスカード77はそのような一様性なしにプログラムできることが理解できる。」との記載が、異なるオペレーションモードにおいて、一様性を有することを前提に発明を開示するものであるとしても、請求項2,3と請求項4(記載事項1.参照)の対比は、同じオペレーションモードにおいて、フットペダルの角度範囲が異なり、変更可能であることも示されている。 これら記載を総合すると、引用例には、デジタル電子フットコントロールシステムに関して、 論理手段40が、フットペダル54の構成および機能をプログラムするため、かつ、フットペダルのピッチを変更することによるユーザの制御を可能にするために、医療装置12と帯20及びコンジット74を介して通信し、 論理手段40が、フットペダルのピッチ方向の動きの全範囲内で複数のオペレーションモードに対応するフットペダルの角度範囲を画定するように医療装置12とともに機能し、かつ、当該フットペダルの角度範囲を対応するアーチ状の範囲をアドレスカード77の選択により変更可能としてユーザの好みに適させること が記載されている。 これら各記載される事項を、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「医療装置12用のオペレーションモードおよび順次変化する機能の切り替えを画定するためのモードセレクタ22・論理手段40と、オペレーションモードを選択するためのフロントパネルとを有する医療装置12にて使用するデジタル電子フットコントロールシステム14であって、 コンソール16と、 手術中に医療装置12のユーザによって使用されるコンソール16に制御信号を与えられるフットペダル54と、 ピッチ方向の動きの所定の最大範囲であるトータル角度にわたって、ユーザによりピッチ方向に動かされるためのフットペダル54であって、そのオペレーションモードおよび順次選択される機能モードシーケンスにしたがって医療装置12により実行される1以上の線形機能を選択的に制御するフットペダル54を配置することと、 コンソール16内に配置され、医療装置12とデータ通信するためのプロセッサー36及び帯20及びコンジット74からなるネットワークにおいて医療装置12と接続された論理手段40とを備え、 前記論理手段40が、フットペダル54のピッチ方向の動きを電子的に監督し、かつ、そのオペレーションモードにおいて医療装置12の制御のために、そのような動きおよび動作を医療装置12に通知し、 前記論理手段40が、フットペダル54の構成および機能をプログラムするため、かつ、フットペダルのピッチを変更することによるユーザの制御を可能にするために、医療装置12と帯20及びコンジット74を介して通信し、 前記論理手段40が、フットペダルのピッチ方向の動きの全範囲内で複数のオペレーションモードに対応するフットペダルの角度範囲(活性領域)を画定するように医療装置12とともに機能し、かつ、当該フットペダルの角度範囲を対応するアーチ状の範囲をアドレスカード77の選択により変更可能としてユーザの好みに適させるデジタル電子フットコントロールシステム。」 IV.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「医療装置12」は、本願発明の「顕微手術システム」に相当し、以下同様に、「オペレーションモード」は「動作モード」に、「順次変化する機能」は「モードシーケンス」に、「デジタル電子フットコントロールシステム14」は「フットコントロール」に、「コンソール16」は「コンソール」に、「フットペダル54」は「フットペダル」に、「プロセッサー36及び帯20及びコンジット74からなるネットワーク」は「コンピュータネットワーク」に、「論理手段40」は「制御回路」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明が「アドレスカード77の選択により変更可能」であることは、引用例がアドレスカード77の量を特定量にのみ限定するものではなく、本願発明が「選択的に変更可能」とすることがより多様性を有するとは、直ちには認められず、 また、引用発明の「選択により変更可能としてユーザの好みに適させる」ことと、本願発明の「ユーザが定めた基準にしたがって選択的に変更可能」とは、共に、「ユーザーに応じ選択的に変更可能」という概念で共通している。 そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両発明は次の点で一致する。 (一致点) 「システム用の動作モードおよびモードシーケンスを画定するための手段を有する顕微手術システムにて使用するフットコントロールであって、 コンソールと、 手術中にシステムのユーザによって使用されるコンソールに与えられるフットペダルと、 ピッチ方向の動きの所定の最大範囲にわたって、ユーザによりピッチ方向に動かされるためのフットペダルであって、その動作モードおよびモードシーケンスにしたがってシステムにより実行される1以上の線形機能を選択的に制御するフットペダルを配置する手段と、 コンソール内に配置され、顕微手術システムとデータ通信するためのコンピュータネットワークにおいて顕微手術システムと接続された制御回路とを備え、 前記制御回路が、フットペダルのピッチ方向の動きを電子的に監督し、かつ、その動作モードにおいて顕微手術システムの制御のために、そのような動きおよび動作を顕微手術システムに通知し、 前記制御回路が、フットペダルの構成および機能をプログラムするため、かつ、フットペダルのピッチを変更することによるユーザの制御を可能にするために、システムと通信し、 前記制御回路が、フットペダルのピッチ方向の動きの全範囲内で複数の活性領域を画定するようにシステムとともに機能し、かつ、当該活性領域を対応するアーチ状の範囲をユーザーに応じ選択的に変更可能とするフットコントロール。」 そして、両発明は次の点で相違する。 (相違点1) 本願発明は、システム用の動作モードおよびモードシーケンスを画定するための手段として、中央プロセッサと、システムと共働する機能を表示するための電子表示機器とを有するのに対し、引用発明は、モードセレクタ22・論理回路40と、オペレーションモードを選択するためのフロントパネルとを有する点。 (相違点2) 本願発明は、ユーザが定めた基準にしたがって選択的に変更可能であるのに対し、引用発明は、選択により変更可能としてユーザの好みに適させる点。 V.相違点の判断 上記相違点について、以下検討する。 (相違点1について) 引用発明において、フロントパネルにより、オペレーションモードを変更しており、一般的に、変更を選択する補助手段として表示する手段を設けることは、設計にあたり当然になされる事項であり、しかも、電子表示機器は、特段の例示を待つまでもなく、従来周知の表示手段の一形式にすぎない。 また、引用発明のように、モードの選択、各種制御を行うものにおいて、中央プロセッサを用いることも、特段の例示を待つまでもなく、従来周知の一形式と認められる。 そこで、引用発明に、周知技術を適用して、相違点1に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点2について) 選択変更に関して、引用発明も、ユーザの好みに適合させることを述べており、例え、アドレスカード77の仕様がユーザの好みを考慮した設計者の設定であるとしても、その選択は、ユーザーであり、ユーザーの有する選択の基準に基づく選択であることを考慮すれば、相違点2は、必ずしも、引用発明がアドレスカード77の選択により変更可能としてユーザの好みに適させていることを排除して発明を特定するものとは認められないので、相違点2は実質的な相違を構成していない。 そして、本願発明による効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 VI.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-05-07 |
結審通知日 | 2009-05-08 |
審決日 | 2009-05-19 |
出願番号 | 特願平10-511921 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 瀬戸 康平 |
特許庁審判長 |
亀丸 広司 |
特許庁審判官 |
村山 睦 増沢 誠一 |
発明の名称 | 顕微手術システム用のフットコントローラ |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 大賀 眞司 |
代理人 | 稲葉 良幸 |