ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
---|---|---|
無効200680235 | 審決 | 特許 |
無効2008800265 | 審決 | 特許 |
無効200580062 | 審決 | 特許 |
無効200580107 | 審決 | 特許 |
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 G06F |
---|---|
管理番号 | 1204790 |
審判番号 | 無効2007-800086 |
総通号数 | 119 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-11-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2007-04-25 |
確定日 | 2009-10-16 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3848208号発明「建築物の構造計算装置、コンピュータプログラム、記録媒体及び建築物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3848208号の請求項1ないし9に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 手続の経緯・本件特許発明 (1)手続の経緯 平成14年5月10日 出願 平成18年9月1日 登録 平成19年4月25日 無効審判請求書(請求人) 平成19年7月24日 答弁書(被請求人) 平成19年9月20日 弁駁書(請求人) 平成19年11月9日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成19年11月9日 口頭審理陳述要領書(請求人) 平成19年11月9日 口頭審理陳述要領書(第2回)(被請求人) 平成19年11月14日(差出日) 上申書(被請求人) (2)本件特許発明 本件特許第3848208号に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載の次のとおりのものと認められる(便宜上、符号1Aないし9Aを付記する)。 「【請求項1】 1A 面状の基礎スラブを有する基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置において、 1B 上部構造の架構、該上部構造に作用する荷重、基礎構造の形状、及び地盤特性を受け付ける第1受付手段と、 1C 該第1受付手段により架構を受け付けた上部構造に、前記第1受付手段により受け付けた荷重が作用することによって生じる応力及び変形を計算する計算手段と、 1D 該計算手段により計算した応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付ける第2受付手段と、 1E 前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記第1受付手段により受け付けた地盤特性を示すばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、 1F 前記第1受付手段により形状を受け付けた基礎構造に、前記第2受付手段により受け付けた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成手段により作成した力学モデルを用いて有限要素法により計算する手段と 1G を備えることを特徴とする建築物の構造計算装置。 【請求項2】 2A 面状の基礎スラブを有する基礎構造により上部構造を支える建築物の前記基礎構造を、前記上部構造に生じる応力を用いて計算する装置において、 2B 基礎構造の形状、地盤特性、及び前記応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付ける受付手段と、 2C 前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受付手段により受け付けた地盤特性を示すばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、 2D 前記受付手段により形状を受け付けた基礎構造に、前記受付手段により受け付けた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成手段により作成した力学モデルを用いて有限要素法により計算する手段と 2E を備えることを特徴とする建築物の構造計算装置。 【請求項3】 3A 前記建築物を支持すべく杭を打設する又は杭状地盤改良を行う箇所の配置、及び前記杭又は前記杭状地盤改良の特性を受け付ける手段をさらに備え、 3B 前記作成手段は、前記基礎スラブの全面を分割する節点のうち、前記杭を打設する又は前記杭状地盤改良を行う箇所に対応する節点を除く節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受け付けた地盤特性を示すばね要素又は杭基礎の特性を考慮したばね要素、又は前記杭若しくは前記杭状地盤改良された地盤により支持される前記基礎構造の特性を考慮したばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成すべくなしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築物の構造計算装置。 【請求項4】 4A コンピュータに、面状の基礎スラブを有する基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算させるためのコンピュータプログラムにおいて、 4B コンピュータに、上部構造の架構を受け付けさせる第1受付ステップと、 4C コンピュータに、前記上部構造に作用する荷重を受け付けさせる第2受付ステップと、 4D コンピュータに、前記第1受付ステップにより架構を受け付けさせた上部構造に、前記第2受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力及び変形を計算させる計算ステップと、 4E コンピュータに、基礎構造の形状及び地盤特性を受け付けさせる第3受付ステップと、 4F コンピュータに、前記計算ステップにより計算させた応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付けさせる第4受付ステップと、 4G コンピュータに、前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記第3受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、 4H コンピュータに、前記第3受付ステップにより形状を受け付けさせた基礎構造に、前記第4受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成ステップにより作成させた力学モデルを用いて有限要素法により計算させるステップと 4I を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。 【請求項5】 5A コンピュータに、面状の基礎スラブを有する基礎構造により上部構造を支える建築物の前記基礎構造を、前記上部構造に生じる応力を用いて計算させるためのコンピュータプログラムにおいて、 5B コンピュータに、基礎構造の形状、地盤特性、及び前記応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付けさせる受付ステップと、 5C コンピュータに、前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、 5D コンピュータに、前記受付ステップにより形状を受け付けさせた基礎構造に、前記受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成ステップにより作成させた力学モデルを用いて有限要素法により計算させるステップと 5E を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。 【請求項6】 6A コンピュータに、前記建築物を支持すべく杭を打設する又は杭状地盤改良を行う箇所の配置、及び前記杭又は前記杭状地盤改良の特性を受け付けさせるステップをさらに備え、 6B 前記作成ステップは、コンピュータに、前記基礎スラブの全面を分割する節点のうち、前記杭を打設する又は前記杭状地盤改良を行う箇所に対応する節点を除く節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受け付けさせた地盤特性を示すばね要素、又は前記杭若しくは前記杭状地盤改良された地盤により支持される前記基礎構造の特性を考慮したばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成させるべくなしてあることを特徴とする請求項4又は5に記載のコンピュータプログラム。 【請求項7】 7A コンピュータに、面状の基礎スラブを有する基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算させるためのコンピュータプログラムを記録してあるコンピュータでの読み取りが可能な記録媒体において、 7B コンピュータに、上部構造の架構を受け付けさせる第1受付ステップと、 コンピュータに、前記上部構造に作用する荷重を受け付けさせる第2受付ステップと、 コンピュータに、前記第1受付ステップにより架構を受け付けさせた上部構造に、前記第2受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力及び変形を計算させる計算ステップと、 7C コンピュータに、基礎構造の形状及び地盤特性を受け付けさせる第3受付ステップと、 7D コンピュータに、前記計算ステップにより計算させた応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付けさせる第4受付ステップと、 7E コンピュータに、前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記第3受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、 7F コンピュータに、前記第3受付ステップにより形状を受け付けさせた基礎構造に、前記第4受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成ステップにより作成させた力学モデルを用いて有限要素法により計算させるステップと 7G を実行させるコンピュータプログラムを記録してあることを特徴とするコンピュータで読み取りが可能な記録媒体。 【請求項8】 8A コンピュータに、面状の基礎スラブを有する基礎構造により上部構造を支える建築物の前記基礎構造を、前記上部構造に生じる応力を用いて計算させるためのコンピュータプログラムを記録してあるコンピュータでの読み取りが可能な記録媒体において、 8B コンピュータに、基礎構造の形状、地盤特性、及び前記応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付けさせる受付ステップと、 8C コンピュータに、前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、 8D コンピュータに、前記受付ステップにより形状を受け付けさせた基礎構造に、前記受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成ステップにより作成させた力学モデルを用いて有限要素法により計算させるステップと 8E を実行させるコンピュータプログラムを記録してあることを特徴とするコンピュータで読み取りが可能な記録媒体。 【請求項9】 9A 請求項1乃至3に記載の建築物の構造計算装置を用いた構造計算の結果を反映させて建築されたことを特徴とする建築物。」(以下、各請求項に係る発明をそれぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明9」ともいい、これらを総称して「本件特許発明」ともいう) 2 請求人の主張 これに対して、請求人は、本件特許発明1ないし本件特許発明9の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件特許発明は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証(「建築基礎構造設計指針」第2版第1刷、2001年10月1日発行、社団法人 日本建築学会)ないし甲第2号証(特開平9-316994号公報)を提出している。 3 被請求人の主張 一方、被請求人は、本件特許発明1ないし本件特許発明9の構成要件はいずれも甲第1,2号証に記載されていないから、本件特許発明1ないし本件特許発明9の特許を無効とすべき理由はない旨主張している。 4 甲第1号証ないし甲第2号証 (1)甲第1号証には以下の点が記載されている。 ア 「(3)耐震設計の方針に関する事項 a.建築物,杭基礎,地盤系の地震応答性状と杭基礎に作用する荷重 図6.1.4は地震の発生によって建築物が応答するまでの過程を模式的に示したものである.(中略)建築物に入った地震波は,杭や地下壁を介して再び地盤に影響を与える.これらの効果は動的相互作用といわれ,かなり古くから検討され,杭支持建物を対象とした地震観測結果や地震応答解析結果により,最近ではそのメカニズムが明らかにされつつある.これらの検討結果によると,杭基礎には以下の2種類の地震時荷重が作用する. [1] 上部構造の振動によって杭頭部に作用する軸力・水平力,曲げモーメント等の上部構造からの慣性力 [2] 杭と地盤との動的相互作用によって,抗が地盤から受ける荷重 建築物を支持する杭基礎については,上部構造の重量が大きいため,[1]の慣性力が大きく[2]の影響は無視できる場合が少なくない.しかしながら,厚い軟弱層中の杭や剛性が急変する中間層を貫いて設置された抗,液状化層と非液状化層を貫いて設置された杭等,地盤条件によっては[2]の荷重が杭体に発生する応力に大きな影響を与える場合がある.したがって,耐震設計上,杭に作用する荷重として,[1]の慣性力のほか,地盤条件に応じて、[2]の荷重を考慮する. b.解析法の選定 杭基礎の耐震設計を行うための解析法として,本指針では図6.1.3に示す解析モデルによる静的解析を推奨している.この解析では,荷重として上部構造から杭頭に作用する慣性力を想定している.しかし,軟弱地盤に設置される杭基礎あるいは剛性が急変する中間層を貫いて設置される杭基礎に対しては,杭と地盤の動的相互作用によって杭が地盤から受ける荷重の影響を評価する必要があり,上記の解析だけでは不十分である.このような地盤に設置された杭基礎に対しては,上部構造?杭基礎?地盤を一体とした連成系モデルによる動的相互作用解析によって検討することが望ましい.(中略) [1]動的解析 動的解析法は,時空間の取扱いで時刻歴解析法・周波数応答解析法・モード解析法に分類され,建築物と地盤の分割方法によって一体解析法と分離解析法(動的サブストラクチャー法を含む)に分類される.設計に用いる解析モデルを建築物や地盤の離散化方法により分類すると,主なものにスウェイ・ロッキングモデル,質点系モデル(中略),有限要素(FEM)モデル等があげられる.(中略) [EFMモデル]:杭,地盤を有限な要素でモデル化する方法で,杭,地盤の挙動を求めることが容易であるが,その分自由度が多くなって計算には比較的時間を要する.」(183頁3行目ないし185頁10行目。本文中、丸の中に数字のある記号は、括弧[]の中に数字を付して代用表記する。以下同様) イ 「(3)基礎スラブの底面における地盤の支持力 地盤沈下地域で支持杭に支持された杭基礎では,基礎スラブ底面と地盤との間に空隙が生じることがよく知られている.また,地盤沈下地域以外でも,基礎スラブ下の杭間の地盤は,軟弱な場合が多く,施工時の乱れ,地下水位の変動,振動等によって沈下し,基礎スラブと地盤との間に空隙が生じやすい.したがって,杭基礎の基礎スラブ底面下にある地盤の支持力は,通常の設計では無視するのが原則である.しかし,べた基礎形式のスラブを杭間隔の大きな摩擦杭で支持させるような場合には,摩擦杭の支持力に加えて,基礎スラブ底面下の地盤の支持力を期待できる可能性がある.このような基礎の典型例として,べた基礎の基礎スラブ下に沈下抑止のため,少数の摩擦杭を設置したパイルド・ラフト基礎がある.この基礎については,摩擦杭の支持力に基礎スラブ下の地盤の支持力を加算できるとの表現より,むしろ逆に基礎スラブ下の地盤の支持力に摩擦杭の支持力を加算できるとの表現が適切であろう.このようないわば直接基礎の杭基礎の中間的な基礎の設計にあたっては,杭,基礎スラブ,地盤の3者間の支持力,変形に関する相互作用を考慮に入れた検討が必要である.パイルド・ラフト基礎の設計については,7.3節を参照されたい.」(189頁1行目ないし13行目) ウ 「7.3節 パイルド・ラフト基礎 1.一般事項 (1)パイルド・ラフト基礎とは,併用基礎のうち,直接基礎と杭基礎が複合してその両者で上部構造を支持するものをいう. (中略) (2)要求性能の確認は,パイルド・ラフト基礎を適切にモデル化し,各荷重条件下において必要な検討項目の設計用応答値を求め,それらが設計用限界値に達しないことを確認することによって行う.設計用応答値の算定にあたっては適切な地盤定数の評価が重要であることに留意する. (中略) (1)パイルド・ラフト基礎とは,一般に布基礎やべた基礎などの直接基礎と杭基礎を併用した基礎形式であり,荷重に対して直接基礎と杭基礎が複合して抵抗するものをいう. (中略) パイルド・ラフト基礎は,図7.3.1に示すように直接基礎と杭基礎の中間にあたる基礎形式で,その中には直接基礎に近いもの,あるいは杭基礎に近いものも含まれる.このうち本節では,直接基礎単独では設計上の要求性能を満足しない場合に,沈下量および不同沈下量を低減するための杭基礎を直接基礎に付加してパイルド・ラフト基礎とすることにより,基礎全体としての荷重?沈下性状の改善を図ろうとする場合を対象とする.この場合パイルド・ラフト基礎は,直接基礎の適用範囲を拡大する基礎形式とも考えられる。 (中略) 直接基礎をパイルド・ラフト基礎とすることにより,一般に以下の点が改善される. ・基礎の平均沈下量および不同沈下量の低減 ・荷重の偏心や予期しがたい表層の土質性状のばらつきによる基礎の全体傾斜の低減 ・基礎梁,基礎スラブの曲げモーメント,せん断力の低減 ・荷重が大きく異なる部分の境界における沈下量差の低減 ・基礎全体としての地盤破壊に対する支持力安全率の増加 (中略) パイルド・ラフト基礎は,直接基礎と同様にある程度の沈下を許容して地盤となじませる基礎形式であり,地盤の特性をよく理解する必要がある.したがって,設計者は十分な地盤調査に基づいて地盤条件を的確に把握し,基礎と地盤の相互作用を検討するとともに,対象とする建物の形状,規模,構造特性,排土重量などを明確にし,類似の条件での実施例を参照することが望ましい.」(339頁1行目ないし341頁17行目) エ 「b.沈下量 基礎の沈下量の算定にあたっては,図7.3.3に示す杭と地盤と直接基礎の相互作用を考慮し,直接基礎と杭が一体化した基礎としての荷重?沈下関係を評価する必要がある.以下に,鉛直荷重を受けるパイルド・ラフト基礎の沈下量の評価手法を示す. 1)簡易計算法 パイルド・ラフト基礎の平面規模が杭長に比べて大きく,平面形状が整形であり,荷重分布がほぼ均等で杭配置が規則的かつ杭径,杭長がほぼ等しい摩擦杭を用いる場合について,パイルド・ラフト基礎の沈下量,杭と直接基礎の荷重分担比を,簡易に計算する手法が提案されている. この方法は,平面規模が抗長に比べて大きい群杭ではその沈下性状は直接基礎の性状に近づくことから,同様な形状のパイルド・ラフト基礎の沈下性状も,杭の存在を無視した直接基礎の沈下性状と同様になることに基づくものである.パイルド・ラフト基礎における杭の存在が沈下量を均等化させる効果については,直接基礎の沈下量に,直接基礎とパイルド・ラフト基礎の鉛直ばね定数比を乗じてその値を低減することにより評価する。」(343頁6行目ないし343頁18行目) オ 「2)詳細計算法 杭と地盤と直接基礎を一体として解析する方法である.この方法によれば,基礎の沈下量,(中略)のほかに個々の杭の分担荷重,基礎スラブの接地圧,基礎梁,基礎スラブに生じる応力など,基礎部材の設計に必要な情報を得ることができる. (中略) 以下に代表的な解析手法として,有限要素法と弾性論を組み合わせた方法および有限要素法について概要を示す. 有限要素法と弾性論を組み合わせた方法は,図7.3.5に示すように,直接基礎部分を曲げ板要素や梁要素などでモデル化し,杭および地盤は相互作用を考慮したばねでモデル化するものである.杭と地盤と直接基礎の相互作用については,弾性論に基づく方法により評価する。 (中略) 有限要素法は,直接基礎部分だけでなく杭,地盤についても有限要素でモデル化するもので、土の応力?ひずみ関係に弾塑性構成式を用いれば地盤の局所的な塑性化を含めた詳細な解析を行うことができる.この方法では、解析に要する時間や解析可能な基礎の規模についての制約があるが,近年におけるコンピュータの著しい性能向上により実務設計において三次元解析を行うことも可能になり,図7.3.6に示すような地盤・基礎モデルを用いた検討事例も増加している。 (中略) また,地震時の動的相互作用を考慮して,パイルド・ラフト基礎の沈下量,変形角と傾斜角などを評価する方法として,6.1節に示すような上部構造と基礎と地盤の連成系モデルにより動的応答解析を行う方法がある.」(345頁1行目ないし345頁下から3行目) (2)甲第2号証には、以下の点が記載されている。 ア 「本発明は、住宅の設計時にコンピュータを用いて梁、柱及び基礎の強度の判定を行えるようにした住宅の構造計画支援方法に関するものである。 (中略)従来、住宅の設計に際しては、梁、柱及び基礎等の配置を定めた後、これらの梁、柱及び基礎等により前記住宅に充分な強度を付与できるか否かを構造計算により判定し、強度不足の場合、設計の変更を行うようにしている。 (中略)ところが、前記のような住宅の設計及び強度計算等を全て人手で行う場合、計算等が煩雑で長時間を要するとともに、熟練した設計士でないと設計が行えない問題がある。 (中略)本発明は、前記の課題を解決して、コンピュータを用いて、住宅の設計及び強度計算等を簡単に行うことのできる住宅の構造計画支援方法を提供することを目的とする。そのため、請求項1に係る構造計画支援方法は、コンピュータの画面上で住宅の仕様データ及び形状データを入力し、且つ前記形状データ中に梁及び柱を入力した後、前記梁に対する荷重の載加位置及び荷重の大きさを入力し、これらの入力データに基いて前記コンピュータに所望の梁の曲げ及びたわみを計算させて計算結果を前記画面上に表示させ、前記梁の曲げ及び/又はたわみが許容値を超えている場合、前記梁及び/又は柱に関するデータを修正した上で再度前記計算を行わせるようにしたことを特徴とするものである。 ここでは、コンピュータに住宅の仕様及び形状データ、梁、柱の位置等を入力した後、前記コンピュータにより所望の梁の曲げ及びたわみを計算させるようにしたので、人手で計算する場合に比べて短時間で確実、容易に計算でき、画面に表示された計算結果に基いて梁の強度の判定を行える。梁の曲げ又はたわみが許容値を超えている場合は、例えば、梁の数を増すか、或いは柱の数を増す等によりデータの修正を行った上で、再度コンピュータに計算を行わせる。 請求項2に係る住宅の構造計画支援方法は、請求項1の方法において、前記入力データに基いて前記コンピュータに前記柱に加わる圧縮力を計算させて計算結果を前記画面上に表示させ、表示された圧縮力が許容値を超えている場合、前記梁及び/又は柱に関するデータを修正した上で再度前記柱の圧縮力を計算させるようにしたことを特徴とするものである。 ここでは、前記入力データに基いて、柱に加わる圧縮力をコンピュータに計算させるようにしたので、柱の強度の判定も容易に行えるようになる。 請求項3に係る住宅の構造計画支援方法は、請求項1又は2の方法において、前記入力データに加えて、前記住宅の基礎の形状及び大きさを入力するとともに、前記住宅の柱から前記基礎に加わる軸力の大きさを入力し、これらの入力データに基いて前記コンピュータに基礎に加わる圧縮力を計算させて計算結果を前記画面上に表示させ、表示された圧縮力が許容値を超えている場合、前記梁、柱又は基礎の内の少なくとも1つに関するデータを修正した上で再度前記基礎の圧縮力を計算させることを特徴とするものである。 ここでは、基礎に加わる圧縮力の計算をコンピュータを用いて行うようにしたので、住宅の設計が一層容易に行えるようになる。」(1頁1欄段落【0001】ないし2欄段落【0009】) イ 「本発明の実施の形態について、以下、図面に基いて説明する。本実施の形態では、パーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)の画面で住宅の仕様及び形状データを入力しながら住宅の設計を行い、同時に梁、柱及び基礎の強度チェックを行うようになっている。以下、図1及び図2に東側立面図及び南側立面図を、図3及び図4に1階及び2階の平面図を各々示すような2階建の住宅を設計する場合を例に挙げて説明する。まず、該住宅の仕様データ及び形状データをパソコンに入力する手順を図5のフローチャートを参照しながら説明する。 図5において、S1で各種条件を入力し、続いて、S2で、1階、2階(1F、2F)の各々の建物形状(外壁ライン)をパソコンの画面で入力する。すなわち、パソコンの画面に図6に示す建物形状入力画面を表示させ、まず、前記住宅の1階の外形ラインL1をパソコンの画面上で線図を描きながら入力する。具体的には、パソコンに付属したマウス1等の入力具を用いて、図3の平面図を参照しながら、外壁ラインL1を折れ線で入力する。入力方法としては、多角形の各頂点を指定して該多角形を描かせる多角形入力、BOX、つまり、長方形の対角線上に位置する2つの頂点を指定して該長方形を描かせるBOX入力等、適宜の方法を使用すればよい。 続いて、図7に示すように、前記住宅の2階の外壁ラインL2を図4の平面図を参照しながら入力する。この際、入力済の1階の外壁ラインL1を実線或いは点線等で表示しておくと、1階と2階の外壁ラインL1、L2の相互位置が把握し易くなるので、好適である。 次に、図5のS3で壁等の荷重要素、屋根、床等の種類を入力し、S4で屋根形状を入力する。この場合、パソコンの画面に図8に示す屋根形状入力画面を表示させる。ここでは、屋根の形状が、例えば、タイプ1からタイプ9の9通りに分類され、各タイプ毎の形状モデルが前記屋根形状入力画面の右端部近傍に表示される。操作者は、X方向及びY方向の各々について、屋根がタイプ1乃至タイプ9のいずれに属するかを選択して、パソコンに入力する。なお、クロスハッチングAで示す部分は葺き下ろし部である。 前記住宅のX方向の屋根(2階部分の屋根)の形状は、図1の東側立面図に基いて、タイプ3であると見做して、キーボード等で数字“3”を入力する。タイプ3の形状モデルと東側立面図における屋根の形状とは左右対称であるが、左右対称のものは、同一タイプに属するものとする。一方、Y方向の屋根(2階部分の屋根)の形状は、図2の南側立面図からタイプ7であるものと見做して、数字“7”を入力する。又、該住宅の棟高-軒高の高さ〔単位はm〕を、X及びY方向の各々について入力する。 続いて、図5のS5で前記外壁ラインに沿って2階の耐力壁の配置を入力する。具体的には、図9の耐力壁配置画面で、まず、前記住宅の2階の外壁ラインL2の適宜位置に所望数の耐力壁2を配置すると、これらの耐力壁2が太線で表示される。その後、図5のS6でパソコンは入力された各耐力壁2の負担水平力、偏心率(地震荷重時)を算出し、必要により画面に表示する。いずれかの耐力壁2で負担水平力が許容範囲を超えている場合等は、S5に戻って、2階の耐力壁2の配置を修正する。 S6で2階の耐力壁の負担水平力、偏心率が許容範囲内であれば、続いて、S7及びS8で1階の耐力壁について、前記S5及びS6と同様の操作を行う。続いて、S9で荷重まとめ、つまり、荷重計算の結果をまとめてパソコンの画面に表示するとともに、1、2階の耐力壁が重なっている箇所の合力のチェックを行う。チェック結果が不可であれば、S5に戻る。 一方、チェック結果が可であれば、引き続き、S10で水平ブレースの必要の有無を判定するために、せん断力チェックを行う。せん断力チェックの結果が不可であれば、S11で水平ブレースを確保した後、処理を終了する一方、せん断力チェックの結果が可であれば、そのまま終了する。」(1頁2欄段落【0010】ないし2頁4欄段落【0017】) ウ 「住宅の仕様及び形状データの入力が終了すると、次に、該住宅の梁、柱及び基礎に関するデータをパソコンに入力して強度チェックを行い、必要により、梁、柱等に関するデータの修正を行う。以下、図10のフローチャートにより、この強度チェックの手順を説明する。S1で、パソコンの画面上に図示しない選択画面を表示させ、梁、基礎等の住宅の各部の中から強度チェックを行うべき箇所を選択する。この場合、例えば、梁を選択する。続いて、S2で、パソコンに梁、柱等に関するデータを入力する前に、まず、当該梁、柱等を含む伏図を図面上等で仮決定するとともに、個々の梁、柱等に対する荷重の載加位置を予めメモ等しておき、且つ荷重の大きさを卓上計算器又は暗算等により求めておく(荷重ひろい)。 続いて、S3で、前記住宅の梁、柱等の伏図をパソコンの画面に入力する。ここでは、前記住宅の1階の梁及び柱の伏図を入力する場合を説明すると、図11に示すように、伏図入力画面において、前記図6で入力した1階の外壁ラインL1を表示させ、この外壁ラインL1に対応させて梁3及び柱4を入力する。入力方法としては、柱4の場合は1点入力、梁3の場合は両端を指定する2点入力等を使用できる。図12は前記図9で入力した2階の耐力壁2を前記梁3及び柱4とともに表示させたもので、このように、2階の耐力壁2を表示することにより、梁3及び柱4に対する2階の耐力壁2の影響を確認できる。 所望数の梁3及び柱4をパソコンの画面で入力した後、まず、梁3について強度チェックを行う。ここでは、2階の床を支持する梁3の強度チェックを行う場合につき説明する。図10のS4で、まず、入力済の複数の梁3について計算順序を指定する。すなわち、図11で入力した3本の梁3について、パソコンのマウスやキーボード(図示せず)等で計算順序を指定すると、図13に示すように、この計算順序が画面上で[1]乃至[3]等の数字で表示される。前記計算順序は、いずれの梁3からいずれの梁3に向かって荷重が伝達されるか等を考慮して順序が定められる。 計算順序の指定が終了すると、続いて、図10のS5で、個々の梁3に関する荷重データを入力する。具体的には、図14の荷重データ入力画面において、まず、梁番号1の梁3について荷重データを入力するが、この梁番号1の梁3には荷重が掛からないので、表中の荷重データは全て0とする。同様に、図15の荷重データ入力画面において、梁番号2の梁3にも荷重が掛からないので、表中の荷重データは全て0とする。 続いて、図16の荷重データ入力画面において、梁番号3の梁3については、荷重が加わるので、図10のS2で、予め求めておいた荷重値をパソコンの画面に表示された表中に入力する。表中の長期荷重は、住宅の自重や住宅内に配置されるものと予想される家具類等に基いて梁3に加わる通常の荷重である。一方、表中の短期積雪荷重は、冬季の積雪時に梁3に加わる荷重であって、長期荷重より大きくなる。 この荷重データ入力画面の左側の模式図における横線は梁3を表している。横線の下部に隣接する△マークは梁3を支持する支点を表し、具体的には梁3を下方で支持する柱4又は梁3に連結される他の梁3である。荷重種類(k)としては、梁3の所定範囲内に大略均一に加わる等分布荷重(種類1:単位はkg/m)と、梁3の一箇所に集中して加わる集中荷重(種類2:単位はkg)との2種類があり、表中の左端に荷重種類(k)が表示される。表中のXは梁3の一端から荷重が載加される位置までの距離(単位はm)であり、Lは等分布荷重の場合の荷重の載加範囲の長さ(単位はm)である。 荷重データの入力が終了すると、入力されたデータ及び予め記憶された計算プログラムに基いて個々の梁3の曲げモーメント及びたわみがパソコンによって計算される。続いて、図10のS6で結果出力の選択を行う。すなわち、ここでは、3本の梁3について荷重データを入力し、曲げ及びたわみを計算したので、いずれの梁3についての計算結果をパソコンの画面上で参照するかを、図17の計算結果出力選択画面で選択する。 例えば、梁番号[3]の梁3の計算結果を参照したい場合、キーボード等で“3”を入力すると、図18の計算結果一覧画面に梁番号[3]の梁3に関する計算結果が表示される。ここでは、前述した長期荷重時、短期積雪荷重時に加えて、短期水平荷重時のデータも表示される。表中のMmaxは計算により求められた梁番号[3]の梁3に加えられ得る曲げモーメントの最大値である。 前記住宅で使用される梁3としては、強度、すなわち、断面積の異なるB梁、Y梁、H梁の3種類(表中にB、Y、Hで表示)の中からいずれかの梁が選択される。3種類の梁は、B梁、Y梁、H梁の順に強度が高くなっている。表中の許容Mは3種類の梁各々の曲げモーメントの許容最大値である。この場合、長期荷重時、短期積雪荷重時及び短期水平荷重時のいずれにおいても、MmaxがB梁、Y梁、H梁のいずれの許容Mよりも小さいので、B梁、Y梁、H梁のいずれを使用しても曲げモーメントに対しては必要強度が得られることになる。許容Mの右隣の判定欄(曲げモーメントの判定欄)における○印はそのことを意味している。この場合、通常、最も強度の低いB梁を選択する。なお、MmaxがB梁、Y梁、H梁の内のいずれかの許容Mより大きければ、当該梁の曲げモーメントの判定欄に×印が表示され、その場合、当該梁を使用することは不適切となる。 表中のたわみσ(cm)の欄には、B梁、Y梁、H梁を使用した場合の各々についてたわみの最大値が表示され、これが予め定められたたわみの許容最大値と比較されて、許容最大値より小さい場合、たわみ欄の右隣の判定欄が○印となる。ここで、たわみの許容最大値は、例えば、梁3のスパンの1/300以下とされる。なお、床振動等を考慮して、長期荷重時のたわみは、0.7cm未満が好適である。 図16の表の下部における支点反力は、梁3から支点に加わる反力であり、支点が柱4である場合、この反力が柱4に対する圧縮力となる。A乃至Cは各支点に対して割り当てられた符号であり、梁番号[3]の梁3は、図13に示したように、3つの柱4a乃至4cによって支持されているので、この場合、A乃至Cは前記柱4a乃至4cに対応する。 パソコンに強度計算を行わせた後、図16中の表により梁3の曲げモーメント及びたわみが許容範囲内であるか否かを確認し、許容範囲内でなければ、図10のS7の判定がOUTであるからS2に戻って伏図の修正(例えば、梁3又は柱4の数の増加)等を行う。一方、図16中の表で曲げモーメント及びたわみが許容範囲内であれば、図10におけるS7の判定がOKとなって、S8に移行し、以下、柱4の圧縮力の判定を行う。 すなわち、S8で必要により、追加荷重ひろいを行う。具体的には、前記図16の表の下部に表示される支点反力が、前述のように、柱4a乃至4cに対する圧縮力となる。ここでは、追加荷重ひろいとして、前記支点反力を柱4a乃至4cの圧縮力として、メモ用紙等に、例えば、以下の表1のような要領で反力の欄に記入しておく。続いて、S9で、図19に示すように、必要により、パソコンの画面上に柱許容圧縮力一覧を表示させる。この柱許容圧縮力一覧から許容圧縮力を読み取り、表1の許容の欄に記入する。」(3頁4欄段落【0018】ないし4頁6欄段落【0030】) エ 「パソコンへの入力時には、画面に図21に示す基礎データ入力画面を表示させ、まず、地耐力を選択する。この地耐力は地盤の固さを示す尺度で、その値が大きい程、固く、良好な地盤である。ここでは、建築予定地の地盤を調査した結果に基き、例えば、5t/m^(2) を選択する。続いて、強度判定を行う部分の基礎形状を1乃至4の4種類のパターン(直線型、L型、T型、十字型)から選択して表中に入力するとともに、a乃至dの部位の長さ(単位m)を表中に入力する。更に、長期軸力、短期積雪軸力及び短期水平軸力の欄には、前記表1中の各柱4a乃至4cの長期荷重時、短期積雪荷重時、短期水平荷重時の反力と追加分の合計値、つまり、各柱4a乃至4cから各々の支持部位5a乃至5cに加わる軸力を入力する。 基礎データの入力が終了すると、パソコンは長期荷重時、短期積雪荷重時及び短期水平荷重時の各々について、基礎5の1m当たりに加わる圧縮力を計算し、図22に示すように、計算結果一覧として表示する。表中の左端の許容値は、許容圧縮力であって、この許容圧縮力は地耐力の大きさによって異なるが、ここでは、地耐力5t/m^(2) の場合の値が表示されている。パソコンにより計算された長期荷重時、短期荷重時の圧縮力がこの許容値より小さい場合は、表中の右端の判定欄の判定結果が○となる。 前記基礎の圧縮力の判定結果が全て○となれば、図10のS11の判定がOKとなって、梁、柱及び基礎の強度チェックが全て終了する。一方、前記いずれかの支持部位5a乃至5cにおいて、判定結果が×となれば、S11の判定がOUTとなってS2に戻り、梁又は柱の設計の修正等を行って前記と同様の手順を繰り返す。なお、上記実施の形態で説明したような内容の処理を行うための手順をコンピュータ言語で表現したプログラムを、フロッピーディスクやCDROM等の適宜の記録媒体に記録して、使用、販売等することは、本発明方法を普及させる上で有益である。」(5頁8欄段落【0037】ないし【0039】) 5 本件各特許発明についての、甲号証との対比及び当審の判断 (1)本件特許発明1について 【請求項1】 1A 面状の基礎スラブを有する基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置において、 1B 上部構造の架構、該上部構造に作用する荷重、基礎構造の形状、及び地盤特性を受け付ける第1受付手段と、 1C 該第1受付手段により架構を受け付けた上部構造に、前記第1受付手段により受け付けた荷重が作用することによって生じる応力及び変形を計算する計算手段と、 1D 該計算手段により計算した応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付ける第2受付手段と、 1E 前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記第1受付手段により受け付けた地盤特性を示すばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、 1F 前記第1受付手段により形状を受け付けた基礎構造に、前記第2受付手段により受け付けた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成手段により作成した力学モデルを用いて有限要素法により計算する手段と 1G を備えることを特徴とする建築物の構造計算装置。 ア 本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明(以下、「刊行物発明」ともいう)とを対比すると、 (1)上記4(2)アないしウによれば、刊行物発明は、コンピュータを用いて梁、柱及び基礎の強度の判定を行えるようにしたものであって、コンピュータの画面上で住宅の仕様及び形状データを入力し、前記形状データ中に梁及び柱を入力した後、前記梁に対する荷重の載加位置及び荷重の大きさを入力し、これらの入力データに基づいて前記コンピュータに所望の梁の曲げ及びたわみを計算させて計算結果を前記画面に表示させ、さらに、住宅の基礎の形状及び大きさを入力するとともに、住宅の柱から基礎に加わる軸力の大きさを入力し、これらの入力データに基づいて前記コンピュータに基礎に加わる圧縮力を計算させて計算結果を前記画面上に表示させる装置である。 そして、上記梁、柱は上部構造といえるから、基礎構造について面状の基礎スラブを有するものといえないものの、刊行物発明と本件特許発明1とは、「基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置」(以下、構成1A’ともいう)である点で一致している。 上記4(2)エによれば、刊行物発明は、上記の入力に加えて、地耐力を入力するものであり、上記梁、柱は上部構造の架構といえるから、刊行物発明と本件特許発明1とは、「1B 上部構造の架構、該上部構造に作用する荷重、基礎構造の形状、及び地盤特性を受け付ける第1受付手段」を備える点及び「1C 該第1受付手段により架構を受け付けた上部構造に、前記第1受付手段により受け付けた荷重が作用することによって生じる応力及び変形を計算する計算手段」を備える点で一致している。 もっとも、受け付けるデータについては、刊行物発明のものは、布基礎についてのものでありそれについて計算するものであるところ、本件特許発明1のものは、面状の基礎スラブを有する基礎構造についてのものであり、それについて計算するものである点で相違する。 そして、上記4(2)アないしエによれば、刊行物発明と本件特許発明1とは、「1D 該計算手段により計算した応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付ける第2受付手段」を備える点で一致している。 もっとも、受け付けるデータについては、刊行物発明のものは、布基礎についてのものでありそれについて計算するものであるところ、本件特許発明1のものは、面状の基礎スラブを有する基礎構造についてのものであり、それについて計算するものである点で相違する。 なお、この点につき被請求人は、甲2号証のものは、上部構造計算結果をユーザが入力しなければならないものである旨主張している。しかしながら、構成1Dは単に荷重を受け付ける受付手段に止まるものであり、荷重データがどのように入力されるかについて規定されているわけでないので、ユーザによる入力を排除するものでない。被請求人の上記主張は、特許請求の範囲の請求項1の記載に基づくものでなく採用できない。 また仮に、上部構造計算結果をユーザによる入力なしに基礎構造計算に用いられるものであったとしても、ある計算の結果を次の計算にユーザによる入力なしに自動的に反映することは、ある計算とそれに続く次の計算を同じ装置で行うものにおいては常套手段というべきものである。 また、上記4(2)エによれば、刊行物発明は、上記の入力により、圧縮力の計算をするものであり、有限要素法とはいえないものの、基礎構造についてのなんらかの力学モデルの存在が認められるから、刊行物発明と本件特許発明1とは、「前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段」(以下、構成1E’ともいう)を備える点及び、「1F’前記第1受付手段により形状を受け付けた基礎構造に、前記第2受付手段により受け付けた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成手段により作成した力学モデルを用いて計算する手段」を備える点で一致している。 そして、上記4(2)アないしエによれば、刊行物発明のコンピュータは、上記のごとく、建築物の構造計算をする装置といえるから、刊行物発明と本件特許発明1とは、「建築物の構造計算装置。」である点で一致している。 (2)してみると両者は、 「1A’ 基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置において、 1B 上部構造の架構、該上部構造に作用する荷重、基礎構造の形状、及び地盤特性を受け付ける第1受付手段と、 1C 該第1受付手段により架構を受け付けた上部構造に、前記第1受付手段により受け付けた荷重が作用することによって生じる応力及び変形を計算する計算手段と、 1D 該計算手段により計算した応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付ける第2受付手段と、 1E’前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、 1F’前記第1受付手段により形状を受け付けた基礎構造に、前記第2受付手段により受け付けた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成手段により作成した力学モデルを用いて計算する手段と 1G を備えることを特徴とする建築物の構造計算装置。」で一致し、以下の点で相違する。 a 本件特許発明1が、「面状の基礎スラブを有する」基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置において、「前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記第1受付手段により受け付けた地盤特性を示すばね要素を想定して」前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、「有限要素法により」計算する手段を備え、面状の基礎スラブを有する基礎構造についてのデータを受け付け、それについて計算するものであるのに対し、刊行物発明のものは、基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置において、前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、計算する手段を備え、布基礎についてのデータを受け付け、それについて計算するものである点。 イ 相違点についての検討 上記4(1)アないしオによれば、甲第1号証は、パイルド・ラフト基礎について記載されているものであって、図7.3.5に示すように、直接基礎部分を曲げ板要素や梁要素などでモデル化し、杭及び地盤は相互作用を考慮したばねでモデル化するものであり、直接基礎部分(本件特許発明1の「面状の基礎スラブ」に対応する)の節点には、建物荷重がかかり、また、地盤節点における鉛直反力として地盤ばねが想定されている。また、有限要素法は、直接基礎部分だけでなく杭、地盤についても有限要素でモデル化するものである。 そして、甲第2号証のものは、やはり建築の上部構造及び基礎の計算をする装置であり、その受け付けデータ及び計算として、建築分野において普通である面状の基礎スラブについて所定のデータを受け付けし、甲第1号証に記載された所定の計算をすればいいのであるから、そのように構成することは当業者にとって容易に推考し得ることといえる。 なお、この点につき被請求人は、本件特許発明1の基礎構造の力学モデルは、基礎スラブの全面を分割する節点と地盤との間の相互作用のみを考慮したばね要素を想定するものであり、甲第1号証に記載された力学モデルとは相違する旨主張している。しかしながら、甲第1号証のパイルド・ラフト基礎も「面状の基礎スラブを有する」ものに相違なく、本件特許請求の範囲の請求項1の記載に、必ずしも杭があるものを排除する規定があるわけでもないのであるから、本件特許発明1から、面状の基礎スラブと杭とを有するパイルド・ラフト基礎の計算装置が排除されているということはできない。また、本件特許請求の範囲の記載、明細書の記載を参酌しても、地盤との相互作用のみに限定する記載があるわけではなく、むしろ本件明細書段落【0038】によれば、杭を有する場合も考慮されたものといえる。このことは、後ほど論ずる、本件特許発明3が、杭を有するものであり、本件特許発明1(請求項1に係るもの)に従属していることからもいえる。被請求人の上記主張は、特許請求の範囲の請求項1の記載に基づくものでなく採用できない。 (2)本件特許発明2について 【請求項2】 2A 面状の基礎スラブを有する基礎構造により上部構造を支える建築物の前記基礎構造を、前記上部構造に生じる応力を用いて計算する装置において、 2B 基礎構造の形状、地盤特性、及び前記応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付ける受付手段と、 2C 前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受付手段により受け付けた地盤特性を示すばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、 2D 前記受付手段により形状を受け付けた基礎構造に、前記受付手段により受け付けた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成手段により作成した力学モデルを用いて有限要素法により計算する手段と 2E を備えることを特徴とする建築物の構造計算装置。 ア 本件特許発明1についての上記検討を勘案すれば、本件特許発明2と刊行物発明とは、 「2A’基礎構造により上部構造を支える建築物の前記基礎構造を、前記上部構造に生じる応力を用いて計算する装置において、 2B 基礎構造の形状、地盤特性、及び前記応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付ける受付手段と、 2C’前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、 2D’前記受付手段により形状を受け付けた基礎構造に、前記受付手段により受け付けた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成手段により作成した力学モデルを用いて計算する手段と 2E を備えることを特徴とする建築物の構造計算装置。」で一致し、以下の点で相違する。 a 本件特許発明2が、「面状の基礎スラブを有する」基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を、前記上部構造に生じる応力を用いて計算する装置において、「前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受付手段により受け付けた地盤特性を示すばね要素を想定して」前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、「有限要素法により」計算する手段を備え、面状の基礎スラブを有する基礎構造についてのデータを受け付け、それについて計算するものであるのに対し、刊行物発明のものは、基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置において、前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、計算する手段を備え、布基礎についてのデータを受け付け、それについて計算するものである点。 イ 本件特許発明1についての上記検討を勘案すれば、上記相違点は当業者が容易に推考し得ることである。 (3)本件特許発明3について 【請求項3】 3A 前記建築物を支持すべく杭を打設する又は杭状地盤改良を行う箇所の配置、及び前記杭又は前記杭状地盤改良の特性を受け付ける手段をさらに備え、 3B 前記作成手段は、前記基礎スラブの全面を分割する節点のうち、前記杭を打設する又は前記杭状地盤改良を行う箇所に対応する節点を除く節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受け付けた地盤特性を示すばね要素又は杭基礎の特性を考慮したばね要素、又は前記杭若しくは前記杭状地盤改良された地盤により支持される前記基礎構造の特性を考慮したばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成すべくなしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築物の構造計算装置。 ア 本件特許発明1、2についての上記検討を勘案しつつ、本件特許発明3と刊行物発明とを対比すると、両者の相違点は以下のとおりである。 a 「面状の基礎スラブを有する」基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を、前記上部構造に生じる応力を用いて計算する装置において、「前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記第1受付手段により受け付けた地盤特性を示すばね要素を想定して」前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、「有限要素法により」計算する手段を備え、面状の基礎スラブを有する基礎構造についてのデータを受け付け、それについて計算するものであるのに対し、刊行物発明のものは、基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置において、前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、計算する手段を備え、布基礎についてのデータを受け付け、それについて計算するものである点。 b 前記建築物を支持すべく杭を打設する又は杭状地盤改良を行う箇所の配置、及び前記杭又は前記杭状地盤改良の特性を受け付ける手段をさらに備え、前記作成手段は、前記基礎スラブの全面を分割する節点のうち、前記杭を打設する又は前記杭状地盤改良を行う箇所に対応する節点を除く節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受け付けた地盤特性を示すばね要素又は杭基礎の特性を考慮したばね要素、又は前記杭若しくは前記杭状地盤改良された地盤により支持される前記基礎構造の特性を考慮したばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成すべくなしてある点。 イ 相違点についての検討 相違点aについて 本件特許発明1、2についての上記検討を勘案すると、当業者が容易に推考しえたものである。 相違点bについて 上記4(1)アないしオによれば、甲1号証は、パイルド・ラフト基礎について記載されているものであって、図7.3.5に示すように、直接基礎部分を曲げ板要素や梁要素などでモデル化し、杭及び地盤は相互作用を考慮したばねでモデル化するものであり、直接基礎部分(本件特許発明1の「面状の基礎スラブ」に対応する)の節点には、建物荷重がかかり、また、地盤節点における鉛直反力として地盤ばねが想定されているとともに、杭がある節点については、杭ばねを想定するものである。また、有限要素法は、直接基礎部分だけでなく杭、地盤についても有限要素でモデル化するものである。 そして、甲2号証のものは、やはり建築の上部構造及び基礎の計算をする装置であり、その受け付けデータ及び計算として、建築分野において普通である面状の基礎スラブについて所定のデータを受け付け、甲1号証に記載された所定の計算をすればいいのであるから、そのように構成することは当業者にとって容易に推考し得ることといえる。 また、上記解析法における計算に際しては、杭等の特性を設定することは普通のことといえる。 してみれば、建築物を支持すべく杭を打設する又は杭状地盤改良を行う箇所の配置、及び前記杭又は前記杭状地盤改良の特性を受け付ける手段をさらに備え、前記作成手段は、前記基礎スラブの全面を分割する節点のうち、前記杭を打設する又は前記杭状地盤改良を行う箇所に対応する節点を除く節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受け付けた地盤特性を示すばね要素又は杭基礎の特性を考慮したばね要素、又は前記杭若しくは前記杭状地盤改良された地盤により支持される前記基礎構造の特性を考慮したばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成すべくなすことは当業者が容易に推考し得ることである。 そして、これら相違点を総合的に考慮しても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず、また本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるともいえない。 (4)本件特許発明4について 【請求項4】 4A コンピュータに、面状の基礎スラブを有する基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算させるためのコンピュータプログラムにおいて、 4B コンピュータに、上部構造の架構を受け付けさせる第1受付ステップと、 4C コンピュータに、前記上部構造に作用する荷重を受け付けさせる第2受付ステップと、 4D コンピュータに、前記第1受付ステップにより架構を受け付けさせた上部構造に、前記第2受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力及び変形を計算させる計算ステップと、 4E コンピュータに、基礎構造の形状及び地盤特性を受け付けさせる第3受付ステップと、 4F コンピュータに、前記計算ステップにより計算させた応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付けさせる第4受付ステップと、 4G コンピュータに、前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記第3受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、 4H コンピュータに、前記第3受付ステップにより形状を受け付けさせた基礎構造に、前記第4受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成ステップにより作成させた力学モデルを用いて有限要素法により計算させるステップと 4I を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。 ア 本件特許発明1、2についての上記検討を勘案しつつ、本件特許発明4と刊行物発明とを対比すると、上記4(2)エによれば、甲第2号証には、処理を行うための手順をコンピュータ言語で表現したプログラムについても記載があるから、両者は、 「4A’ コンピュータに、基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算させるためのコンピュータプログラムにおいて、 4B コンピュータに、上部構造の架構を受け付けさせる第1受付ステップと、 4C コンピュータに、前記上部構造に作用する荷重を受け付けさせる第2受付ステップと、 4D コンピュータに、前記第1受付ステップにより架構を受け付けさせた上部構造に、前記第2受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力及び変形を計算させる計算ステップと、 4E コンピュータに、基礎構造の形状及び地盤特性を受け付けさせる第3受付ステップと、 4F コンピュータに、前記計算ステップにより計算させた応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付けさせる第4受付ステップと、 4G’コンピュータに、前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、 4H’コンピュータに、前記第3受付ステップにより形状を受け付けさせた基礎構造に、前記第4受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成ステップにより作成させた力学モデルを用いて計算させるステップと 4I を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。」で一致し、以下の点で相違する。 a 本件特許発明4が、「面状の基礎スラブを有する」基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算させるためのコンピュータプログラムにおいて、「前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記第3受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して」前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、「有限要素法により」計算させるステップを実行させ、面状の基礎スラブを有する基礎構造についてのデータを受け付け、それについて計算するものであるのに対し、刊行物発明のものは、基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置において、前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、計算する手段を備え、布基礎についてのデータを受け付け、それについて計算するものである点。 イ 本件特許発明1、2についての上記検討を勘案しつつ、上記相違点について検討すると、上記相違点は、当業者が容易に推考し得ることである。 (5)本件特許発明5について 【請求項5】 5A コンピュータに、面状の基礎スラブを有する基礎構造により上部構造を支える建築物の前記基礎構造を、前記上部構造に生じる応力を用いて計算させるためのコンピュータプログラムにおいて、 5B コンピュータに、基礎構造の形状、地盤特性、及び前記応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付けさせる受付ステップと、 5C コンピュータに、前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、 5D コンピュータに、前記受付ステップにより形状を受け付けさせた基礎構造に、前記受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成ステップにより作成させた力学モデルを用いて有限要素法により計算させるステップと 5E を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。 ア 本件特許発明1、2、4についての上記検討を勘案しつつ本件特許発明5と刊行物発明とを対比すると、 両者は、 「5A’コンピュータに、基礎構造により上部構造を支える建築物の前記基礎構造を、前記上部構造に生じる応力を用いて計算させるためのコンピュータプログラムにおいて、 5B コンピュータに、基礎構造の形状、地盤特性、及び前記応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付けさせる受付ステップと、 5C’コンピュータに、前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、 5D’コンピュータに、前記受付ステップにより形状を受け付けさせた基礎構造に、前記受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成ステップにより作成させた力学モデルを用いて計算させるステップと 5E を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。」で一致し、以下の点で相違する。 a 本件特許発明5が、「面状の基礎スラブを有する」基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算させるためのコンピュータプログラムにおいて、「前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して」前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、「有限要素法により」計算させるステップを実行させ、面状の基礎スラブを有する基礎構造についてのデータを受け付け、それについて計算するものであるのに対し、刊行物発明のものは、基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置において、前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、計算する手段を備え、布基礎についてのデータを受け付け、それについて計算するものである点。 イ 本件特許発明1、2、4についての上記検討を勘案しつつ、上記相違点について検討すると、上記相違点は、当業者が容易に推考し得ることである。 (6)本件特許発明6について 【請求項6】 6A コンピュータに、前記建築物を支持すべく杭を打設する又は杭状地盤改良を行う箇所の配置、及び前記杭又は前記杭状地盤改良の特性を受け付けさせるステップをさらに備え、 6B 前記作成ステップは、コンピュータに、前記基礎スラブの全面を分割する節点のうち、前記杭を打設する又は前記杭状地盤改良を行う箇所に対応する節点を除く節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受け付けさせた地盤特性を示すばね要素、又は前記杭若しくは前記杭状地盤改良された地盤により支持される前記基礎構造の特性を考慮したばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成させるべくなしてあることを特徴とする請求項4又は5に記載のコンピュータプログラム。 ア 本件特許発明1ないし5についての上記検討を勘案しつつ本件特許発明6と刊行物発明とを対比すると、両者は、以下の点で相違する。 a 本件特許発明6が、「面状の基礎スラブを有する」基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算させるためのコンピュータプログラムにおいて、「前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記第3受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して」前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、「有限要素法により」計算させるステップを実行させ、面状の基礎スラブを有する基礎構造についてのデータを受け付け、それについて計算するものであるのに対し、刊行物発明のものは、基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置において、前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、計算する手段を備え、布基礎についてのデータを受け付け、それについて計算するものである点。 b コンピュータに、前記建築物を支持すべく杭を打設する又は杭状地盤改良を行う箇所の配置、及び前記杭又は前記杭状地盤改良の特性を受け付けさせるステップをさらに備え、前記作成ステップは、コンピュータに、前記基礎スラブの全面を分割する節点のうち、前記杭を打設する又は前記杭状地盤改良を行う箇所に対応する節点を除く節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受け付けさせた地盤特性を示すばね要素、又は前記杭若しくは前記杭状地盤改良された地盤により支持される前記基礎構造の特性を考慮したばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成させるべくなしてある点。 イ 相違点についての検討 相違点aについて 本件特許発明1ないし5についての上記検討を勘案しつつ、上記相違点について検討すると、上記相違点は、当業者が容易に推考し得ることである。 相違点bについて 本件特許発明3についての上記検討を勘案しつつ、上記相違点について検討すると、上記相違点は、当業者が容易に推考し得ることである。 そして、これら相違点を総合的に考慮しても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず、また本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるともいえない。 (7)本件特許発明7について 【請求項7】 7A コンピュータに、面状の基礎スラブを有する基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算させるためのコンピュータプログラムを記録してあるコンピュータでの読み取りが可能な記録媒体において、 7B コンピュータに、上部構造の架構を受け付けさせる第1受付ステップと、 コンピュータに、前記上部構造に作用する荷重を受け付けさせる第2受付ステップと、 コンピュータに、前記第1受付ステップにより架構を受け付けさせた上部構造に、前記第2受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力及び変形を計算させる計算ステップと、 7C コンピュータに、基礎構造の形状及び地盤特性を受け付けさせる第3受付ステップと、 7D コンピュータに、前記計算ステップにより計算させた応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付けさせる第4受付ステップと、 7E コンピュータに、前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記第3受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、 7F コンピュータに、前記第3受付ステップにより形状を受け付けさせた基礎構造に、前記第4受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成ステップにより作成させた力学モデルを用いて有限要素法により計算させるステップと 7G を実行させるコンピュータプログラムを記録してあることを特徴とするコンピュータで読み取りが可能な記録媒体。 ア 本件特許発明1、2、4についての上記検討を勘案しつつ、本件特許発明7と刊行物発明とを対比すると、上記4(2)エによれば、甲第2号証には、処理を行うための手順をコンピュータ言語で表現したプログラムを、フロッピーディスクやCDROM等の適宜の記録媒体に記録する点についても記載があるから、両者は、 「7A’コンピュータに、基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算させるためのコンピュータプログラムを記録してあるコンピュータでの読み取りが可能な記録媒体において、 7B コンピュータに、上部構造の架構を受け付けさせる第1受付ステップと、 コンピュータに、前記上部構造に作用する荷重を受け付けさせる第2受付ステップと、 コンピュータに、前記第1受付ステップにより架構を受け付けさせた上部構造に、前記第2受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力及び変形を計算させる計算ステップと、 7C コンピュータに、基礎構造の形状及び地盤特性を受け付けさせる第3受付ステップと、 7D コンピュータに、前記計算ステップにより計算させた応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付けさせる第4受付ステップと、 7E’コンピュータに、前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、 7F’コンピュータに、前記第3受付ステップにより形状を受け付けさせた基礎構造に、前記第4受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成ステップにより作成させた力学モデルを用いて計算させるステップと 7G を実行させるコンピュータプログラムを記録してあることを特徴とするコンピュータで読み取りが可能な記録媒体。」で一致し、以下の点で相違する。 a 本件特許発明7が、「面状の基礎スラブを有する」基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算させるためのコンピュータプログラムを記録してあるコンピュータでの読み取りが可能な記録媒体において、「前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記第3受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して」前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、「有限要素法により」計算させるステップを実行させ、面状の基礎スラブを有する基礎構造についてのデータを受け付け、それについて計算するものであるのに対し、刊行物発明のものは、基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置において、前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、計算する手段を備え、布基礎についてのデータを受け付け、それについて計算するものである点。 イ 本件特許発明1、2、4についての上記検討を勘案しつつ、上記相違点について検討すると、上記相違点は、当業者が容易に推考し得ることである。 (8)本件特許発明8について 【請求項8】 8A コンピュータに、面状の基礎スラブを有する基礎構造により上部構造を支える建築物の前記基礎構造を、前記上部構造に生じる応力を用いて計算させるためのコンピュータプログラムを記録してあるコンピュータでの読み取りが可能な記録媒体において、 8B コンピュータに、基礎構造の形状、地盤特性、及び前記応力を含む、前記基礎構造に作用する荷重を受け付けさせる受付ステップと、 8C コンピュータに、前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、 8D コンピュータに、前記受付ステップにより形状を受け付けさせた基礎構造に、前記受付ステップにより受け付けさせた荷重が作用することによって生じる応力を、前記作成ステップにより作成させた力学モデルを用いて有限要素法により計算させるステップと 8E を実行させるコンピュータプログラムを記録してあることを特徴とするコンピュータで読み取りが可能な記録媒体。 ア 本件特許発明1ないし7についての上記検討を勘案しつつ、本件特許発明8と刊行物発明とを対比すると、両者は、以下の点で相違する。 a 本件特許発明8が、「面状の基礎スラブを有する」基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算させるためのコンピュータプログラムにおいて、「前記基礎スラブの全面を分割する節点と、建築物を支える地盤との間に、前記受付ステップにより受け付けさせた地盤特性を示すばね要素を想定して」前記基礎構造の力学モデルを作成させる作成ステップと、「有限要素法により」計算させるステップ実行させ、面状の基礎スラブを有する基礎構造についてのデータを受け付け、それについて計算するものであるのに対し、刊行物発明のものは、基礎構造により上部構造を支える建築物の構造を計算する装置において、前記基礎構造の力学モデルを作成する作成手段と、計算する手段を備え、布基礎についてのデータを受け付け、それについて計算するものである点。 イ 相違点についての検討 相違点aについて 本件特許発明1ないし7についての上記検討を勘案しつつ、上記相違点について検討すると、上記相違点は、当業者が容易に推考し得ることである。また本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるともいえない。 (9)本件特許発明9について 【請求項9】 9A 請求項1乃至3に記載の建築物の構造計算装置を用いた構造計算の結果を反映させて建築されたことを特徴とする建築物。 本件特許発明1ないし3についての上記検討を勘案すれば、本件特許発明1ないし3は甲第1,2号証から当業者が容易に推考し得たものといえ、当該発明の構造計算装置を用いた構造計算の結果を反映させて建築された建築物も、他に格別のものがあるといえないから、やはり当業者が容易に推考し得たものである。 7 むすび 以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲第1,2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-11 |
結審通知日 | 2007-12-18 |
審決日 | 2008-01-08 |
出願番号 | 特願2002-135991(P2002-135991) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松浦 功 |
特許庁審判長 |
原 光明 |
特許庁審判官 |
脇岡 剛 砂川 充 |
登録日 | 2006-09-01 |
登録番号 | 特許第3848208号(P3848208) |
発明の名称 | 建築物の構造計算装置、コンピュータプログラム、記録媒体及び建築物 |
復代理人 | 野口 富弘 |
復代理人 | 野口 富弘 |
代理人 | 河野 登夫 |
代理人 | 河野 登夫 |
復代理人 | 野口 富弘 |
代理人 | 加藤 雄二 |
代理人 | 河野 登夫 |