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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62K |
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管理番号 | 1204824 |
審判番号 | 不服2008-19399 |
総通号数 | 119 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-31 |
確定日 | 2009-10-09 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 84795号「自動二輪車の車体フレーム構造」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月 3日出願公開、特開2000-272569号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成11年 3月26日の特許出願であって、平成20年 6月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年 7月31日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年 9月 1日付けで手続補正(前置補正)がなされたものである。 II.平成20年 9月 1日付けの手続補正の却下 [補正却下の決定の結論] 平成20年 9月 1日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 ヘッドパイプから後方へ左右一対のメインフレームを延し、これら左右のメインフレームの後端から左右のピボット取付用ロアブラケットを下ろし、これら左右のロアブラケットにスイングアーム用ピボットを設けた自動二輪車の車体フレーム構造において、前記左右のメインフレームは、前記ヘッドパイプから後方へ延びる前半部と、前記左右のロアブラケットから前方へ延びる後半部とから構成され、前記前半部と前記後半部とに分割する斜め下方へ延びる分割線を有し、 前記前半部は、前記ヘッドパイプから後方に延ばしたものであり、前記ヘッドパイプの近傍から後端に渡り、前記後半部を接合する側面視で略直線状の上部接合面を有し、前記後半部は、前記上部接合面に接合するために、矩形状中空断面体を前記分割線に合せて切断した下部接合面を有し、 前記前半部と剛性が異なる前記後半部の下部接合面を前記前半部の略全体に渡り接合し、前記左右のメインフレームの剛性をバランス良く確保し、前記左右のメインフレームの剛性の確保と軽量化との両立を図ったことを特徴とする自動二輪車の車体フレーム構造。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記後半部を接合する略直線状の上部接合面を有し」を「前記後半部を接合する側面視で略直線状の上部接合面を有し」と、また、「前記後半部の下部接合面を前記前半部の略全体に渡り接合し」を、「前記前半部と剛性が異なる前記後半部の下部接合面を前記前半部の略全体に渡り接合し、前記左右のメインフレームの剛性をバランス良く確保し、前記左右のメインフレームの剛性の確保と軽量化との両立を図ったこと」と、それぞれ限定するものであって、この限定した事項は、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載されており、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-107261号公報(以下、「引用例1」という)には、「オートバイのフレーム構造」に関し、図面とともに以下の事項が記載または示されている。 a:「【請求項1】 フロントフォークをヘッドパイプ部を介して装着するフロントフレームとこのフロントフレームの後方に接合して設けられるメインフレームとこのメインフレームの後方に設けられるリヤフレームとからなるオートバイのフレーム構造において、前記フロントフレームと前記メインフレームとは、その容積比がほぼ等しくなるような大きさとされるとともに、両者の接合部をジグソーパズルのピース同士の合わせ縁状に形成し、当該接合部における接合長さが、オートバイのフレームとしての強度を得るために必要十分な接合長さよりも長くなるようにしたことを特徴とするオートバイのフレーム構造。 【請求項2】 接合部が曲線または曲線状であることを特徴とする請求項1のオートバイのフレーム構造。 【請求項3】 接合部が直線または直線状であることを特徴とする請求項1のオートバイのフレーム構造。 【請求項4】 フロントフレームが一体成形の鋳造品または鍛造品であるとともにメインフレームがプレス合わせ構造であることを特徴とする請求項1のオートバイのフレーム構造。」 b:「【0008】(実施例1)図1乃至図3は、本発明に係るオートバイのフレーム構造の第1の実施例を示し、図1は、本発明の第1の実施例に係るオートバイのフレーム構造の全体斜視図、図2はフロントフレームとメインフレームとの接合部を示す要部側面図、図3は図2のA-A線断面図である。 【0009】オートバイのフレーム構造1は、前輪を支持するフロントフォーク2を前端に装着するフロントフレーム4とこのフロントフレーム4の後方に接合されるメインフレーム6とこのメインフレーム6の後方に接合されるリヤフレーム8とからなる。 【0010】フロントフレーム4とメインフレーム6とは、その容積比がほぼ等しくなるような大きさとされるとともに、両者の接合部10はジグソーパズルのピース同士の合わさる合わせ縁状に形成されており、両者は、溶接によって(図面上斜線で示してある。)一体化されている。そして、フロントフレーム4とメインフレーム6との接合部10の長さは、オートバイのフレームとしての強度を得るために必要十分な長さよりも長くなっている。 【0011】フロントフレーム4は、フロントフォーク2を回動可能に装着しフロントフレーム4の前端に位置するヘッドパイプ5と、ヘッドパイプ5の左右から後方に向けて外側に湾曲して延びるとともに内側に図示しないエンジンのシリンダーヘッドや燃料タンクなどを抱えるような形状をなすフレーム14A、14Bとが軽合金を用いて鋳造または鍛造によって一体成形されたものである。フレーム14A、14Bの後方下端には、前記図示しないエンジンのシリンダーヘッドと、ビス止め手段その他の適宜な固定手段によって連結されるためのエンジン懸架部16、16が一体成形されている。 【0012】そして、フロントフレーム4のフレーム部14A、14Bの後端縁17A、17Bは、ジグソーパズルのピース同士の合わさる合わせ縁のように湾曲しており、この実施例では、図1乃至図3で示すように、エンジン懸架部16、16の後端から上方に向けて左右に揺動するように延びている。そして、後端縁17A、17Bは、次に詳しく述べるメインフレーム6のフレーム部18A、18Bの前端縁の開口と嵌合するように突起状をなしている。 【0013】メインフレーム6は、フロントフレーム4のフレーム部14A、14Bに対応してそれぞれ接合されるフレーム部18A、18Bと両フレーム部18A、18Bを連結する補強リブ20、20…とからなる。 【0014】フレーム部18A、18Bは、いわゆる”最中タイプ”といわれるプレス合わせ構造でできたものであって、左右の外板22、22と内板24、24とをチャネル状にプレス成形して箱型に合わせて溶着したものである。そして、その前端縁19A、19Bは、フロントフレーム4のフレーム部14A、14Bの後端縁と合致する湾曲形状をしている。また、フレーム部18A、18Bの前端部19A、19Bは開口されており、この開口に上記フレーム部14A、14Bの突起状の後端縁17A、17Bが嵌合して、フレーム部14A、14Bとフレーム部18A、18Bとが一体的になって前後方向へ延びるようになっている。」 c:「【0025】 【発明の効果】請求項1乃至請求項7に記載の本発明オートバイのフレーム構造によれば、フロントフレームとメインフレームとは、その容積比がほぼ等しくなるような大きさとされ、メインフレームがフロントフレームと比べて特に大きくなるということがないため、メインフレームを軽量コンパクトにすることができる。そのため、メインフレームの運搬をしたり製造をしたりするのに便利であるため、オートバイのフレームの生産性を高めることができる。請求項1乃至請求項6に記載の本発明オートバイのフレーム構造によれば、メインフレームとフロントフレームとの接合部をジグソーパズルのピース同士の合わせ縁状に形成し、当該接合部における接合長さが、オートバイのフレームとしての強度を得るために必要十分な長さよりも長くなるようにしたので、フロントフレームとメインフレームとの溶接部分の長さが増える。したがって、その分強度を高めることができるので、オートバイの安全性の向上を一層図ることができる。・・・」 d:図1?図3には、「左右一対のフロントフレーム4」と「左右のメインフレーム6の後端から左右の部材を下ろしたもの」、「フロントフレーム4とメインフレーム6とに分割する部分的に斜め下方に延びる合わせ縁状に形成された接合部10」、「フロントフレーム4は、メインフレーム6を接合する側面視で曲線状の後端縁17A、17B付近の接合される側面を有したもの」、「メインフレーム6は、プレス合わせ構造を合わせ縁状に形成された接合部10に合わせて切断した前端縁19A、19Bを有したもの」が示されている。 e:上記摘記事項aの請求項4により、「フロントフレームが一体成形の鋳造品又は鍛造品であるとともにメインフレームがプレス合わせ構造であること」から、フロントフレームとメインフレームとは、剛性が異なることは明らかである。 さらに、摘記事項cに、「フロントフレームとメインフレームとは、その容積比がほぼ等しくなるような大きさとされ、メインフレームがフロントフレームと比べて特に大きくなるということがないため、メインフレームを軽量コンパクトにすることができる。」とあることにより、「前記左右のフロントフレーム4及びメインフレーム6の剛性の確保と軽量化の両立を図った」ことが示唆されているのは明らかである。 上記記載事項からみて、引用例1には、 「ヘッドパイプ5から後方に向けて左右一対のフロントフレーム4及びメインフレーム6が延び、これら左右のメインフレーム6の後端から左右の部材を下ろしたオートバイのフレーム構造において、前記左右のフロントフレーム4及びメインフレーム6は、前記ヘッドパイプ5から後方に延びるフロントフレーム4と前記左右の部材から前方へ延びるメインフレーム6とから構成され、前記フロントフレーム4と前記メインフレーム6とに分割する部分的に斜め下方に延びる合わせ縁状に形成された接合部10を有し、前記フロントフレーム4は前記ヘッドパイプ5から後方に延ばしたものであり、前記メインフレーム6を接合する側面視で湾曲した後端縁17A、17B付近の接合される側面を有し、前記メインフレーム6は、前記後端縁17A、17B付近の接合される側面に接合するために、プレス合わせ構造を前記合わせ縁状に形成された接合部10に合わせて切断した前端縁19A、19Bを有し、前記左右のフロントフレーム4と剛性が異なる前記メインフレーム6の前端縁19A、19Bを前記フロントフレーム4に接合し、前記左右のフロントフレーム4及びメインフレーム6の剛性の確保と軽量化の両立を図った、オートバイのフレーム構造。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 また、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-69873号公報(以下、「引用例2」という)には、「自動2輪車の車体フレーム」に関し、図面とともに以下の事項が記載または示されている。 f:「【0007】まず図6乃至図9に基づいて車体フレームの概略構造を説明する。この車体フレームは前端部に設けられる略三角柱状(図8参照)のステアリングヘッド1、中間部のメインパイプ2及び後部のリヤフォークブラケット3とをそれぞれ連結して一体にしたものであり、ステアリングヘッドとリヤフォークブラケットはアルミ合金の鋳造品であり、メインパイプはアルミ合金の押し出し成形品である。 【0008】ステアリングヘッド1の前端部にはステアリングシャフト4が上下方向へ貫通して枢支され、このステアリングシャフト4を介してステアリングヘッド1の前端部上下にトップブリッジ5及びボトムブリッジ6が支持されている。各ブリッジの左右にはフロントフォーク7が支持され、これら左右のフロントフォーク7の上部にはハンドル8が取付けられ、かつ両下端部間には前輪9が支持されている。ステアリングシャフト4、トップブリッジ5、ボトムブリッジ6、フロントフォーク7、ハンドル8及び前輪9によって前輪のステアリング機構が構成されている。 【0009】メインパイプ2は左右に対をなして前後方向へ延びる公知の中空部材であり(図9参照)、その各前端部は後述の要領でステアリングヘッド1の後部左右に形成された取付脚10に接続されている。メインパイプ2の下方にはラジエタ11とその後方にV型2気筒の2サイクルエンジン12が支持されている。メインパイプ2の上方には前部に燃料タンク13が支持され、中間部からは後方へシートレール14が延出している。また、後部右側には山形のクッション取付用ステー15が設けられ、この頂部にリヤサスペンションを構成するクッション16の上端部が軸着されている。 【0010】リヤフォークブラケット3は左右に対をなして上下方向へ設けられ(図11参照)、その各上端部が左右のメインパイプ2の各後端へ接続しており、その中間部に設けられたピボット部17にリヤフォーク18の前端部が軸着されている。リヤフォーク18は公知の片持式である。但し、リヤフォーク18のアーム部18aは後輪19の右側に配設され(図9、10参照)、後輪19はアーム部18aの後端部左側一側に支持されている。また、アーム部18aの中間部にはクッション16の下端部が軸着され、クッション16は平面視でアーム部18a上にほぼ沿って配設され、車体右側へオフセットされている(図9)。」 g:「【0013】平面視で三角形の底辺に相当する後部両側からは取付脚10が後方へ突出形成され、それぞれの後端部には段付状にさらに後方へ突出する嵌合部29が形成され、これに各メインパイプ2の前端部が嵌合され、段部30に沿う接合部で溶接される。なお、この段部30の形状は斜めでも直線でもよく、好ましくはメインパイプ2を曲げずに直線的に接続できるようにする。各取付脚10の底部には開口部31が形成されている。また、側板22には各種ステー等を取付けるためのボス部32、33が鋳造時に一体に形成されている。」 h:「【0018】 【発明の効果】この発明は、ステアリングヘッド部を略三角柱状に形成し、上板及び下板の前部にステアリングシャフトの軸受を設けるとともに、軸受の後方に上板と下板とを連結する補強部材を設けた。ゆえに、ステアリングヘッド全体でステアリング機構を枢支でき、従来必要であったヘッドパイプを省略することができるので、ステアリングヘッドの構造が簡単になり、部品点数の削減並びに重量軽減が可能になる。また、補強部材はその形状、大きさ、数及び位置等を任意に設定できるので、これを適宜に設けることによりステアリングヘッドの剛性を自在に変更でき、設計の自由度が向上する。そのうえ、特に鋳造等により成形する場合、製造工数が少なくなり、かつ成形が容易になるので製造上有利である。さらに、複数のガセットを不要にできるため、部品点数を削減しかつ溶接を省略でき、そのうえ溶接に伴う熱歪による製品の変形を防いで製品の品質を高めることができる。」 3.発明の対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ヘッドパイプ5」、「フロントフレーム4及びメインフレーム6」、「メインフレーム6の後端」、「オートバイのフレーム構造」、「フロントフレーム4」、「メインフレーム6」、「合わせ縁状に形成された接合部10」、「後端縁17A、17B付近の接合される側面」、「プレス合わせ構造」、「前端縁19A、19B」は、それぞれ本願補正発明の「ヘッドパイプ」、「メインフレーム」、「メインフレームの後端」、「自動二輪車の車体フレーム構造」、「前半部」、「後半部」、「分割線」、「上部接合面」、「矩形状中空断面体」、「下部接合面」に相当する。 また、引用発明の「ヘッドパイプ5から後方に向けて左右一対のフロントフレーム4及びメインフレーム6が延び」は、本願補正発明の「ヘッドパイプから後方へ左右一対のメインフレームを延し」を意味するものである。 そして、「ピボット取付用ロアブラケット」及び「ロアブラケット」は、それぞれ「部材」であることから、本願補正発明の「左右のメインフレームの後端から左右のピボット取付用ブラケットを下ろし」たものと、引用発明の「左右のメインフレーム6の後端から左右の部材を下ろし」たものは、「左右のメインフレームの後端から左右の部材を下ろし」という限りにおいて一致し、本願補正発明の「左右のロアブラケットから前方へ延びる後半部」と引用発明の「左右の部材から前方へ延びるメインフレーム6」は、「左右の部材から前方へ延びる後半部」という限りにおいて一致する。 そうすると、両者は、 「ヘッドパイプから後方へ左右一対のメインフレームを延し、これら左右のメインフレームの後端から左右の部材を下ろした自動二輪車の車体フレーム構造において、前記左右のメインフレームは、前記ヘッドパイプから後方に延びる前半部と前記左右の部材から前方へ延びる後半部とから構成され、前記前半部と前記後半部とに分割する分割線を有し、前記前半部は前記ヘッドパイプから後方に延ばしたものであり、前記後半部を接合する上部接合面を有し、前記後半部は、前記上部接合面に接合するために、矩形状中空断面体を前記分割線に合わせて切断した下部接合面を有し、前記左右の前半部と剛性が異なる前記後半部の下部接合面を前記前半部に接合し、前記左右のメインフレームの剛性の確保と軽量化の両立を図った、自動二輪車の車体フレーム構造。」 で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 <相違点1> 左右のメインフレームから下ろした左右の部材が、本願補正発明では、「ピボット取付用ロアブラケット」であり、「これら左右のロアブラケットにスイングアーム用ピボットを設けた」のに対して、引用発明では、そのような言及がない点、 <相違点2> 本願補正発明では、前半部と後半部の分割線が「斜め下方に延び」、前半部は、「ヘッドパイプの近傍から後端に渡り」、後半部を接合する「側面視で略直線状の」上部接合面を有し、後半部の下部接合面を前半部の「略全体に渡り」接合したのに対して、引用発明では、前半部と後半部の分割線が「部分的に斜め下方に延び」、前半部は、「略後端側部分において」、後半部を接合する「側面視で湾曲した」上部接合面を有し、後半部の下部接合面を前半部の「略後端側部分において」接合した点、 <相違点3> 本願補正発明では、「左右のメインフレームの剛性をバランス良く確保し」たのに対して、引用発明では、そのような言及がない点。 4.相違点の検討 <相違点1>について 引用例2の摘記事項f:【0010】及び図6?図9からみて、引用例2には、「左右のメインパイプ2の後端から下ろした左右のリヤフォークブラケット3にリヤフォーク18用のピボット部17を設けたもの」が記載されている。 そして、上記引用例2に記載された事項の「メインパイプ2」、「リヤフォークブラケット3」、「リヤフォーク18」、「ピボット部17」は、それぞれ本願補正発明の「メインフレームの後半部」、「ピボット取付用ロアブラケット」、「スイングアーム」、「ピボット」に相当し、引用例2には、「左右のメインフレームの後半部の後端から下ろした左右のピボット取付用ロアブラケットにスイングアーム用ピボットを設けたもの」が開示されているものと認められる。 してみれば、上記相違点1に係る本願補正発明の構成は、上記引用例2に開示された事項に基づいて、当業者が適宜想到し得たものである。 <相違点2>について 引用例1の摘記事項cによれば、「メインフレームとフロントフレームとの接合部をジグソーパズルのピース同士の合わせ縁状に形成し、当該接合部における接合長さが、オートバイのフレームとしての強度を得るために必要十分な長さよりも長くなるようにしたので、フロントフレームとメインフレームとの溶接部分の長さが増える。」と記載されており、前半部と後半部の溶接部分の長さを長くすることが開示されている。 また、引用例2の摘記事項gの「・・・後方へ突出する嵌合部29が形成され、これに各メインパイプ2の前端部が嵌合され、段部30に沿う接合部で溶接される。なお、この段部30の形状は斜めでも直線でもよく、好ましくはメインパイプ2を曲げずに直線的に接続できるようにする。」なる記載と、図1,図2からみて、「段部30の形状」というのは、図1における段部30の引き出し線が示すようにステアリングヘッド1の嵌合部29に沿った線分のことを意味しているものと認められる。 そして、図1においては、上記ステアリングヘッド1の嵌合部29に沿った線分は、直線状であり、さらに、段部30の形状は斜めでもよいということは、ステアリングヘッド1とメインパイプ2の段部30に沿う接合部の線が、ステアリングヘッド1とメインパイプ2の長手方向に対して斜めでもよいことを意味するものと認められる。 そして、引用例2に記載された事項の「ステアリングヘッド1」、「メインパイプ2」、「段部30に沿う接合部の線」が、それぞれ本願補正発明の「前半部」、「後半部」、「分割線」に相当するから、上記引用発明の「メインフレームの前半部と後半部の分割線が部分的に斜め下方に延びるもの」において、上記引用例1に開示された「前半部と後半部の溶接部分の長さを長くする」という技術思想を考慮しつつ、上記記引用例2に開示された「前半部と後半部の分割線を直線状としメインフレームの長手方向に対して斜めにすること」を適用し、後半部の下部接合面を前半部の略全体に渡り接合して、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が適宜想到し得たことである。 さらに、上記適用については、上記引用発明、上記引用例1及び上記引用例2に開示された事項が、いずれも自動二輪車のフレーム構造に関するものであり、かつ、メインフレーム自体を溶接して形成することも共通していることから、当業者にとって格別の困難性はない。 <相違点3>について 左右一対のメインフレームを有する自動二輪車において、「左右のメインフレームの剛性をバランス良く確保」することは、当業者にとって自明の課題に過ぎず、この点に何ら困難性は見いだせない。 そして、上記相違点1?3を併せ備える本願補正発明の奏する作用効果について検討しても、上記引用発明、上記引用例1及び上記引用例2に開示された事項から当業者が予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、上記引用発明、上記引用例1及び上記引用例2に開示された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。 6.回答書において、請求人が提出した補正案の「後半部は、前半部に比べ剛性を低く設定したこと」について 上記引用例1の摘記事項bには、前半部に相当するフロントフレーム4のフレーム14A、14Bは、エンジン懸架部16を一体に形成するとともに、軽合金を用いて鋳造又は鍛造によって一体形成されているのに対して、後半部に相当するメインフレーム6のフレーム部18A、18Bはプレス合わせ構造でできたものが開示されており、当該開示に基づいて、後半部は、前半部に比べ剛性を低く設定する程度のことは、当業者であれば適宜想到し得たものである。 III.本願発明について 1.本願発明の記載事項 平成20年 9月 1日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成20年 4月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 ヘッドパイプから後方へ左右一対のメインフレームを延し、これら左右のメインフレームの後端から左右のピボット取付用ロアブラケットを下ろし、これら左右のロアブラケットにスイングアーム用ピボットを設けた自動二輪車の車体フレーム構造において、前記左右のメインフレームは、前記ヘッドパイプから後方へ延びる前半部と、前記左右のロアブラケットから前方へ延びる後半部とから構成され、前記前半部と前記後半部とに分割する斜め下方へ延びる分割線を有し、 前記前半部は、前記ヘッドパイプから後方に延ばしたものであり、前記ヘッドパイプの近傍から後端に渡り、前記後半部を接合する略直線状の上部接合面を有し、前記後半部は、前記上部接合面に接合するために、矩形状中空断面体を前記分割線に合せて切断した下部接合面を有し、 前記後半部の下部接合面を前記前半部の上面の略全体に渡り接合したことを特徴とする自動二輪車の車体フレーム構造。」 2.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は前記II.2.に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記II.1.で検討した本願補正発明の「前記後半部を接合する側面視で略直線状の上部接合面を有し」を、「前記後半部を接合する略直線状の上部接合面を有し」に、また、「前記前半部と剛性が異なる前記後半部の下部接合面を前記前半部の略全体に渡り接合し、前記左右のメインフレームの剛性をバランス良く確保し、前記左右のメインフレームの剛性の確保と軽量化との両立を図ったこと」を「前記後半部の下部接合面を前記前半部の略全体に渡り接合し」として、それぞれの限定を削除するものである。 そうすると、本願発明の構成よりも更に限定した構成を備える本願補正発明が前記II.4.に記載されたとおり、上記引用発明、上記引用例1及び上記引用例2に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も本願補正発明と同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明、上記引用例1及び上記引用例2に開示された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-07-21 |
結審通知日 | 2009-08-11 |
審決日 | 2009-08-24 |
出願番号 | 特願平11-84795 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B62K)
P 1 8・ 121- Z (B62K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 落合 弘之、田合 弘幸 |
特許庁審判長 |
藤井 俊明 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 金丸 治之 |
発明の名称 | 自動二輪車の車体フレーム構造 |
代理人 | 下田 容一郎 |