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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1204850
審判番号 不服2006-12152  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-13 
確定日 2009-10-05 
事件の表示 特願2002- 10455「ウッド型ゴルフクラブヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月29日出願公開、特開2003-210620〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年(2002年)1月18日に出願された特願2002-10455号)であって、平成18年1月19日付けで手続補正がなされ、同年5月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年1月19日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「内部に中空部を有するヘッド体積が320cm^(3) 以上のウッド型ゴルフクラブヘッドであって、
シャフトが装着されるシャフト差込孔の軸中心線を垂直面内に配しかつ規定のライ角で傾けるとともにフェース面を前記垂直面に対して規定のフェース角で傾けて水平面に接地させたヘッド測定状態において、
前記水平面に投影したヘッド輪郭線における前記垂直面からヘッド後方に最も隔たるヘッド最後方点と、
前記垂直面において前記軸中心線からこの軸中心線と直角方向で最もヒール側に隔たるヒール端を前記水平面に投影したヒール端点との間の前記垂直面に沿った長さであるヒール領域長さAを、
前記ヒール端点と、前記垂直面と直角な直線が前記ヘッド輪郭線とトウ側で接するトウ端点との間の前記垂直面に沿った長さであるヘッド長さBの30?52(%)とし、
かつヘッド重心を前記垂直面に直角に投影した重心投影点と前記軸中心線との間の重心距離Cを25?35mmとするとともに、
前記ヒール端は、前記軸中心線から8?16mmの距離Eとすることにより、
前記ヘッド測定状態において、前記ヘッド重心を通る垂直軸回りの慣性モーメントが2800?5000(g・cm^(2) )としたことを特徴とするのいずれかに記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。」

第3 引用例
1 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-288131号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。(下記「2 引用例1に記載された発明の認定」において直接関係する箇所に下線を付した。)

「【0006】本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ヘッド体積が300cc以上のウッド型のゴルフクラブヘッドにおいて、ヘッドのシャフト取付部の中心線からヘッドの重心点までの最短距離である重心距離を31mm以下とすることを基本として、ヘッドの返りを向上させ、スライス等を防いで打球の方向性を安定させうるウッド型ゴルフクラブヘッド及びそれを用いたゴルフクラブを提供することを目的としている。
【0007】なお先行技術として、特開平6-98954号公報が提案されている。このものは、メタルヘッドの重心位置をシャフト側に設定することを示唆しているが、これは「ヘッドのかぶり運動によるフック現象」を抑制するものであって、本発明とは課題が全く異なり、また重心距離、ヘッド体積については何ら具体的に示唆するところはない。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のうち請求項1記載の発明は、ヘッド本体と、シャフトが装着されるシャフト取付部とを有するウッド型ゴルフクラブヘッドであって、ヘッド体積が300cc以上であり、かつ前記シャフト取付部の中心線からヘッドの重心点までの最短距離である重心距離を31mm以下としたことを特徴としている。」

「【0011】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の一形態をドライバー(#1)のウッド型のゴルフクラブを例に取り図1、図2に基づき説明する。図1には、本実施形態のウッド型ゴルフクラブ1の部分正面図、図2にはヘッドの断面図を示している。本実施形態のウッド型のゴルフクラブ(以下、単に「クラブ」ということがある。)1は、ウッド型ゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)2と、シャフト3とを含み、該シャフト3の一端には例えばグリップ(図示省略)が装着される。
【0012】前記ヘッド2は、本例ではヘッド本体2aと、前記シャフト3が装着されるシャフト取付部2bとからなり、ヘッド体積が300cc以上で構成される。このようにヘッドでは、体積が300cc以上の大型ヘッドで構成されることにより、構えた際に安心感をうることができる他、ミート率を高めることができる。
【0013】前記ヘッド本体2aは、ボールを打撃する面であるフェース面4aを有するフェース部4の上縁に連なりヘッド上面をなすクラウン部5と、前記フェース部4の下縁に連なりヘッドの下面をなすソール部6と、前記クラウン部5とソール部6との間を継ぎかつトウ部tからバックフェースを通りヒール部hまでのびるサイド部7とを含む。またシャフト取付部2bは、本例では前記フェース部4、クラウン部5、サイド部7がヒール部h側で交わる位置に突出形成された軸状体からなり、その内部にはシャフト3を挿入して例えば接着剤等にて固着しうるシャフト取付孔9を具えているものを例示している。
【0014】また前記ヘッド体積は、ヘッド2の(シャフト取付部2bを含んだ)外表面にて囲まれる全体の体積をいい、実際には次のような方法にて測定される。先ず図3に示すように、比重がρg/ccの水をヘッド2が十分に収まる容器10に満たし、その容器10ごと電子天秤11の上に載せて全体の重量を計る。その後に、針金等の吊り具12にて宙吊りにしたクラブ1のヘッド2のシャフト取付部2bの上端までを容器10の水中に沈める。このとき、容器10の水面はヘッド2の体積に応じてH1からH2まで上昇する。そして、このヘッド2が押しのけた水の分量だけ全体の重量が増加するので、この増加重量dWを電子天秤11にて測定する。そして、この増加重量dWを水の比重ρで除す(dW/ρ)ことにより、ヘッド2の体積を測定しうる。なおヘッド体積は、著しく大きすぎるとヘッド2の重量が増加して振りづらくなるため、好ましくは300?350cc、より好ましくは300?320cc程度に設定するのが特に好ましい。
【0015】また、このようなヘッド2は、例えば、チタン合金(例えば6-4チタン、Ti-6%Al-4%V合金)で構成するのが望ましく、またこれ以外にも他の塑性を有するチタン合金、純チタン、アルミ合金等、高強度かつ低比重の材料の他、各種他の合金や複合材料、その他、例えばフェース部4やソール部6などを他の部分とは異なる金属材料等にて形成することなど種々の材料を用いることができる。
【0016】そして本実施形態では、図1、図2に示す如く、前記クラウン部5、前記ソール部6又は前記サイド部7の厚さを、トウ部t側からヒール部h側に向けて徐々に増大させることにより、ヘッド2は、前記シャフト取付部2bの中心線C(シャフトの中心線CLと合致する。)からヘッド2の重心点Gまでの最短距離である重心距離Lを31mm以下に設定したものを例示している。なお従来のヘッドでは、ヘッド体積が300cc以上の場合、重心距離は31mmよりも大きな値、例えば35mm以上などに設定されているものが多い。
【0017】このように、本実施形態のヘッド2は、体積が300cc以上と大型であることにより構えた際の安心感等が得られると同時に、大型ヘッドにも拘わらず、重心距離Lが31mm以下という小さな値に設定されることにより、ボールを打撃する際、ヘッド2の返りを向上させることができ、フェース面4aがアドレスした状態に戻りやすいものとなる。従って、フェース面4aが開いた状態でボールを打撃することなどを好適に防止でき、スライスなどを抑制して打球の方向性を安定させるのに役立つ。」

【図2】には、内部に中空部を有するゴルフクラブヘッドが記載されている。

2 引用例1に記載された発明の認定
上記記載から、引用例1には、
「内部に中空部を有するヘッド体積が300cc以上のウッド型ゴルフクラブヘッドであって、
クラウン部5、ソール部6又はサイド部7の厚さを、トウ部t側からヒール部h側に向けて徐々に増大させることにより、ヘッド2は、前記シャフト取付部2bの中心線C(シャフトの中心線CLと合致する。)からヘッド2の重心点Gまでの最短距離である重心距離Lを31mm以下に設定したウッド型ゴルフヘッドクラブ。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-289943号公報(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。(下記「第5 当審の判断」において参照する記載に下線を付した。)
「【0041】
【実施例2】図8及び図9を参照して、本発明の第2の実施例を説明する。図8は本発明の第2の実施例に係るヘッドを説明するための図であり、ヘッドのフェース側からみた正面図であり、図9は該ヘッドを上側からみた平面図である。なお、図9において実線aは本実施例を示し、破線bは従来のヘッドの構成を示している。
【0042】図8に示すように、本実施例においては、ヘッドの重心点(Xで示す)が、ヘッドのフェース側からみてシャフトセンタラインの延長線上に置かれる。また、図9に示すようにヘッドの重心(X)はシャフトセンタラインの延長線上に対しスイング方向(振子方向)に後側に置かれる(ヘッドのバック部側に重心が位置する)。これに対して、従来のゴルフクラブにおいては、図9の破線(b)に示すように、そのヘッドの重心はシャフトセンタラインの延長線上にから大きくずれている。
【0043】なお、本実施例においても、好ましくは、前記第1の実施例に説明したように、シャフトセンタラインの延長線上にゴルフボールの打点領域が配置される構成とされる。
【0044】図8を参照して、本実施例においては、シャフトセンタラインの延長線上からヒール部4までの距離を例えばゴルフ規則に規定される範囲内の上限値16mmとし、底部(ソール部)からヘッドの重心(X)までの距離Zは15?25mm程度とされ、ソケット2の長さは多少長めの30mm程度とされる。また、図9を参照して、本実施例においては、ヘッドのスイング方向の長さLは好ましくは8?10cm程度とされ、幅Wは10?12cm程度とされる。そして、ヘッドの重心(X)はシャフトセンタラインからヘッドのバック側に距離Y=略20?35mmだけ離間した位置に置かれている。」

【図9】から、ヘッドフェース側からみてヘッド後方に最も膨らんだ位置であるヘッド後方の最膨張点について、実線aのヘッドの輪郭は、破線bのヘッドの輪郭に対して、上記ヘッド後方の最膨張点がヒール側に位置することが見て取れる。

第4 対比
1 引用発明と本願発明とを対比する。

引用発明の「内部に中空部を有するヘッド体積が300cc以上のウッド型ゴルフクラブヘッド」と、本願発明の「内部に中空部を有するヘッド体積が320cm^(3) 以上のウッド型ゴルフクラブヘッド」とは、ヘッド体積については、320cm^(3) 以上である範囲において共通しており、また、その下限値については、引用発明(300cc)及び本願発明(320cm^(3) )ともに臨界的意義も認められないことを勘案すれば、引用発明の「内部に中空部を有するヘッド体積が300cc以上のウッド型ゴルフクラブヘッド」は、本願発明の「内部に中空部を有するヘッド体積が320cm^(3) 以上のウッド型ゴルフクラブヘッド」に相当するといえる。

引用発明の「ヘッド2は、前記シャフト取付部2bの中心線C(シャフトの中心線CLと合致する。)からヘッド2の重心点Gまでの最短距離である重心距離Lを31mm以下に設定した」点と、本願発明の「ヘッド重心を前記垂直面に直角に投影した重心投影点と前記軸中心線との間の重心距離Cを25?35mmとする」点との対比については、引用発明の「重心距離L」が、本願発明の「重心距離C」に相当し、その重心距離に関しては、25?31mmの範囲において共通しており、また、その上限値及び下限値については、引用発明(上限値31mm)及び本願発明(下限値25mm 、上限値35mm)ともに臨界的意義も認められないことを勘案すれば、両者の重心距離に関する範囲に実質的に意義を有する差異も認められないから、引用発明の「ヘッド2は、前記シャフト取付部2bの中心線C(シャフトの中心線CLと合致する。)からヘッド2の重心点Gまでの最短距離である重心距離Lを31mm以下に設定した」点が、本願発明の「ヘッド重心を前記垂直面に直角に投影した重心投影点と前記軸中心線との間の重心距離Cを25?35mmとする」点に相当するといえる。

2 一致点
よって、本願発明と引用発明は、
「内部に中空部を有するヘッド体積が320cm^(3) 以上のウッド型ゴルフクラブヘッドであって、
かつヘッド重心を前記垂直面に直角に投影した重心投影点と前記軸中心線との間の重心距離Cを25?35mmとするウッド型ゴルフクラブヘッド。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

3 相違点
(1)相違点1;
本願発明は、「シャフトが装着されるシャフト差込孔の軸中心線を垂直面内に配しかつ規定のライ角で傾けるとともにフェース面を前記垂直面に対して規定のフェース角で傾けて水平面に接地させたヘッド測定状態において、前記水平面に投影したヘッド輪郭線における前記垂直面からヘッド後方に最も隔たるヘッド最後方点と、前記垂直面において前記軸中心線からこの軸中心線と直角方向で最もヒール側に隔たるヒール端を前記水平面に投影したヒール端点との間の前記垂直面に沿った長さであるヒール領域長さAを、前記ヒール端点と、前記垂直面と直角な直線が前記ヘッド輪郭線とトウ側で接するトウ端点との間の前記垂直面に沿った長さであるヘッド長さBの30?52(%)とし」たものであるのに対して、引用発明は、「クラウン部5、ソール部6又はサイド部7の厚さを、トウ部t側からヒール部h側に向けて徐々に増大させる」ものである点。

(2)相違点2;
本願発明は、「前記ヒール端は、前記軸中心線から8?16mmの距離Eとする」ものであるのに対して、引用発明には、その点の限定がない点。

(3)相違点3;
本願発明は、「ヘッド測定状態において、前記ヘッド重心を通る垂直軸回りの慣性モーメントが2800?5000(g・cm^(2) )とした」ものであるのに対して、引用発明には、その点の限定がない点。

第5 当審の判断
1 上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
上記引用例2の記載事項(下線部参照)から、引用例2においては図9に破線bで示される従来のヘッドの重心が図8の正面図において本実施例のヘッドの重心よりトウ側に位置していることは明らかであるから、引用例2には、ヘッド重心をヒール側に寄せるため、すなわち、重心距離を小さくするために、ヘッドフェース側からみてヘッド後方に最も膨らんだ位置であるヘッド後方の最膨張点をヒール側に位置するように構成したものが記載されているといえる。そして、上記の「ヘッドフェース側からみてヘッド後方に最も膨らんだ位置であるヘッド後方の最膨張点をヒール側に位置するように構成する」ことは、要するに、ヘッドの膨らみをヒール側に寄せるものであり、その意味において、本願発明における「ヘッド輪郭線における垂直面からヘッド後方に最も離れたヘッド最後方点」をヒール側に位置するように構成することと技術的に等価な意味を有するものであるといえる。
そして、本願発明においては、本願明細書には【0017】段落に次のように記載されている。
「発明者らの調査によれば、従来の一般的な大型ヘッドは、前記ヒール領域長さAがヘッド長さBの52%よりも大に設定されていることが分かった。このようなヘッドでは、トウ側の体積が大きくなる傾向があり、ひいてはヘッド重心Gもシャフトから遠くなって重心距離を大とする傾向があった。これに対して、本発明のヘッドではヒール領域長さAを従来に比して小とする(ヘッド最後方点Pを従来に比してヒール側に近づける)ことにより、例えば該ヒール側の体積を増大させ、これに伴ってヘッド重心Gもヒール側に位置させることが可能となる。」
上記の記載から、本願発明においては、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項によって、ヘッド重心Gをヒール側に位置させるもの、すなわち、重心距離を小さくするものであることがわかる。
また、引用発明においては、重心距離を小さくすることを技術的課題として、「クラウン部5、ソール部6又はサイド部7の厚さを、トウ部t側からヒール部h側に向けて徐々に増大させる」ものであることは明らかである。
上記のように、引用例2に記載された発明、本願発明、及び、引用発明の技術課題及び作用が、いずれも、重心距離を小さくするものである点で共通していることにかんがみれば、引用発明において、引用例2に記載された発明を採用し、「クラウン部5、ソール部6又はサイド部7の厚さを、トウ部t側からヒール部h側に向けて徐々に増大させる」ことに換えて、「ヘッドフェース側からみてヘッド後方に最も膨らんだ位置であるヘッド後方の最膨張点をヒール側に位置するように構成」して、すなわち、「ヘッド輪郭線における垂直面からヘッド後方に最も離れたヘッド最後方点をヒール側に位置するように構成し」て重心距離を小さくするようにし、本願発明を導出することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、その際に、ヘッド輪郭線における垂直面からヘッド後方に最も離れたヘッド最後方点をどの程度ヒール側に寄るように位置させるか、すなわち、本願発明におけるヒール領域長さAのヘッド長さBに対する割合をどの程度にするかは、当業者が必要に応じて適宜設定し得ることであり、本願発明において「30?52%」としたことに格別の困難性は認められない。なお、上記の数値範囲について、付記すれば、上記の本願明細書の【0017】段落の記載から、従来の一般的な大型ヘッドとの差別化を図るために、上限値を52%にしたことに格別の困難性は認められず、また、下限値の30%については、臨界値的意義が認められず、当業者が適宜設定し得たものと認める。

(2)相違点2について
引用発明においても、ヒール端と軸中心線との間に所定の距離を有することは当然であり、上記のヒール端と軸中心線との間の距離がある範囲にあることまでは両者間で共通するところ、上記相違点2は、本願発明においては上記のヒール端と軸中心線との間の距離の範囲を「8?16mm」と特定したものである。
しかしながら、上記の「8?16mm」の特定により、本願発明の技術課題(本願明細書の【0005】段落等参照)にどのような影響を与えるのかの説明が本願明細書には記載されていない。また、本願明細書の【0026】段落の【表1】に記載された測定結果においては、実施例1ないし4と比較例1,2の間で、テスト結果に差異がみられたとしても、実施例1ないし4は「ヒール領域長さA/ヘッド長さB」「重心距離」及び「ヒール端と軸中心線との距離」の3つ項目が、全て、本願発明に特定された範囲内の値であるのに対して、比較例1,2においては、上記の3つの項目が、全て、本願発明に特定された範囲から外れた値であるから、上記のテスト結果の差異が、どの項目の影響で生じたものか不明で、上記の「8?16mm」の特定の技術的意義が上記【表1】の測定結果によってサポートされているということはできず、上記の「8?16mm」の特定の技術的意義は、明細書の詳細な発明の記載からは不明である。
上記をふまえると、上記のヒール端と軸中心線との間の距離を「8?16mm」とした特定に、特段の技術的意義を認めることができず、また、その臨界値的意義も認められないから、上記の特定は当業者が必要に応じて適宜容易になし得たことである。

(3)相違点3について;
本願明細書の【0026】段落の【表1】に記載された測定結果において、「垂直軸回りのヘッドの慣性モーメント」の項目は、全ての実施例及び比較例において、本願発明に特定された範囲内の値となっていること、また、平成18年4月3日付けの原審での出願人(審判請求人)提出の意見書における、「審査基準にいう「機能・特性等を数値限定」とする項目は本願発明に関して「垂直軸回りのヘッドの慣性モーメント」であってこれは当業者にとって周知の技術的事項でありますから(他の構成要素は機能、特性等を表すものではなく、単に形状についての要件)、記載の具体例から、出願時の技術常識に照らしても、当該具体例から請求項に記載された数値範囲全体にまで拡張ないし一般化しうるのは明らかと考えます。」の記載から、上記相違点3に係る発明特定事項は、技術の前提となる事項である単なる周知技術を記載したものにすぎないといえる。
すなわち、相違点3に係る本願発明の発明特定事項によって発明の進歩性が生じるものではない。

2 本願発明が奏する作用効果
そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用例2に記載された発明から、当業者が予測し得る程度のものである。

3 まとめ
したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上より、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-21 
結審通知日 2009-07-28 
審決日 2009-08-17 
出願番号 特願2002-10455(P2002-10455)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
今関 雅子
発明の名称 ウッド型ゴルフクラブヘッド  
代理人 住友 慎太郎  

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