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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07C
管理番号 1204910
審判番号 不服2006-20973  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-21 
確定日 2009-10-08 
事件の表示 平成7年特許願第158906号「N-メチル第3級アミンの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成9年1月14日出願公開、特開平9- 12520〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成7年6月26日の出願であって、平成16年8月10日付けで拒絶理由が通知され、同年10月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年8月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年10月23日に手続補正書が提出され、その後、平成20年6月30日付けで審尋がされ、同年8月28日に回答書が提出されたものである。

第2 平成18年10月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年10月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成18年10月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に
「一般式(II)

〔式中、Rは炭素数7?21のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、m及びnは同一又は異なって1?6の整数を示す。〕で表される第2級アミンを、ホルムアルデヒド及び水素化触媒の存在下で還元メチル化し、一般式(I)

〔式中、R,m及びnは前記と同様の意味を示す。〕
で表されるN-メチル第3級アミンを製造するに際し、一般式(III)
R’COOH (III)
〔式中、R’はH又は炭素数1?3のアルキル基を示す。〕
で表される低級脂肪酸の存在下に還元メチル化を行うことを特徴とする、N-メチル第3級アミンの製造方法。」
とあるのを
「一般式(II)

〔式中、Rは炭素数7?21のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、m及びnは同一又は異なって1?6の整数を示す。〕
で表される第2級アミンを、ホルムアルデヒド及び水素化触媒の存在下で還元メチル化し、一般式(I)

〔式中、R,m及びnは前記と同様の意味を示す。〕
で表されるN-メチル第3級アミンを製造するに際し、ホルムアルデヒドとして35?37重量%ホルムアルデヒド水溶液を用い、ホルムアルデヒドを一般式(II)で表される第2級アミンに対して1.0?1.2倍モル用いて、一般式(III)
R’COOH (III)
〔式中、R’はH又は炭素数1?3のアルキル基を示す。〕
で表される低級脂肪酸の存在下に還元メチル化を行うことを特徴とする、N-メチル第3級アミンの製造方法。」
とする補正事項を含むものである。(なお、下線は平成18年10月23日付けの補正により追加された部分を示す。)

2 新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否
上記補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0010】に記載された「溶液中のホルムアルデヒド濃度は30?60重量%が好ましく、35?37重量%ホルムアルデヒド水溶液として用いるのが特に好ましい。用いられるホルムアルデヒドの量は、一般式(II)で表される第2級アミンに対して少なくとも等モル量であり、1.0 ? 1.2倍モルの範囲が好ましい。」という記載に基づき限定して特定するものであるから、同明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであって、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たすものであるので、上記補正は、特許法17条の2第3項の規定に適合するものである。
また、上記補正は、補正前の特許請求の範囲に記載されていたホルムアルデヒドの濃度と量を限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであって、その補正前の請求項1に係る発明とその補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号における特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(すなわち、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するものであるか)否かについて検討する。

(1) 本件補正発明
平成18年10月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(本件補正発明)は以下のとおりのものである。
「一般式(II)

〔式中、Rは炭素数7?21のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、m及びnは同一又は異なって1?6の整数を示す。〕
で表される第2級アミンを、ホルムアルデヒド及び水素化触媒の存在下で還元メチル化し、一般式(I)

〔式中、R,m及びnは前記と同様の意味を示す。〕
で表されるN-メチル第3級アミンを製造するに際し、ホルムアルデヒドとして35?37重量%ホルムアルデヒド水溶液を用い、ホルムアルデヒドを一般式(II)で表される第2級アミンに対して1.0?1.2倍モル用いて、一般式(III)
R’COOH (III)
〔式中、R’はH又は炭素数1?3のアルキル基を示す。〕
で表される低級脂肪酸の存在下に還元メチル化を行うことを特徴とする、N-メチル第3級アミンの製造方法。」

(2) 刊行物について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-138876号公報、特公昭39-17905号公報及び特開平6-72969号公報(以下、それぞれ、「刊行物1」?「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 刊行物1(特開平7-138876号公報)
a-1 「第4級アンモニウム塩(I)は例えば次式に従って製造される。

〔上記式中、R^(1),R^(2),R^(3),R^(4)及びX^(-)は前記の意味を表す。R^(13)は、H、炭素数1?3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。〕」(段落【0013】?【0015】)
a-2 「式中、R^(1)及びR^(2)は同一又は異なって炭素数1?4のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。R^(3)及びR^(4)は同一又は異なって直鎖又は分岐鎖の炭素数7?35のアルキル基又はアルケニル基を示す。」(段落【0007】)
a-3 「開環物(XI)について通常の条件にてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド(XII)を使用してLeukart(ロイカルト)反応、又は還元アルキル化反応(開環物(XI)とアルデヒド(XII)とを反応させた後、水素化触媒存在下、水素化する)を行い、アミド化第3級アミン(XIII)を得る。」(段落【0017】)
a-4 「合成例1〔第4級アンモニウム塩(I-1)の合成〕
・・・次の構造式(1)で表されるアミドアミン200gを得た。

次に、攪拌機、温度計、冷却管のついた4つ口フラスコに上記アミドアミン111g、イソプロピルアルコール150mlを入れ、80℃まで昇温した。そのままの温度で35%ホルマリン28gを滴下し、続いてギ酸、15.5gを滴下した。80℃で4時間反応後、水100mlで3回洗浄した。アセトンから再結晶して次の構造式(2)で表されるメチル化物80gを得た。

」(段落【0077】?【0080】)

イ 刊行物2(特公昭39-17905号公報)
b-1 「本発明は第3級脂肪族メチルアミンを製造する改良法に関するものである。」(1頁左欄発明の詳細な説明1?2行)
b-2 「米国特許第2373705号には第2級および第3級アミンの製法が説明されているが、この方法は長鎖第3級脂肪族メチルアミンの製造に適用し得ない。この方法は、水素および脂肪族アルデヒドをアンモニアおよび未置換水素原子を有するアミンのようなアミノ化剤と反応させることからなる方法であつてそして水素圧下において液相に維持された水素添加触媒を含有するアミノ化剤中にアルデヒドを徐々に導入してゆく方法である。この方法は第3級脂肪族メチルアミンの製造に対して有利な商業的方法であると思われるが、収率および望ましくない副生成物の生成に関する限り、長鎖第1級あるいは第2級アミンおよびホルムアルデヒドを使用して達成される結果は満足でない。しかしながら、本発明者は、驚くべきことには、これらの欠点は、アミンあるいはホルムアルデヒド中にアミンを基にして非常に少量の例えば約0.5?3重量%の以下に詳述する触媒物質を含有せしめることによつて実質的に克服できるということを発見した。これによつて、第1級アミンを使用したときには90%以上の収率そして第2級アミンを使用して出発したときは実際に定量的収率が達成できる。」(1頁右欄7?26行)
b-3 「本発明の方法に使用されるアルデヒドは、ホルムアルデヒドであつて、これはその線状重合体パラホルムアルデヒドの形態にあつてもよいあるいはメタノールのような非干渉溶剤と一緒にした溶液であつてもよい。」(2頁左欄21?24行)
b-4 「本発明の最も重要な特徴は、貧弱な収率および望ましくない副生成物の形成の問題を克服するのに特に有効であることを知つた触媒である。これらの触媒は,出発アミン物質の量を基にして約0.5?3重量%の範囲の非常に少量で使用されそして液相に維持されたアミン物質に全量を添加することによつてあるいは反応の過程中に単独であるいはホルムアルデヒドと一緒に徐々に添加することによつて使用することができる。これらの触媒は、酢酸、プロピオン酸および酪酸のような短鎖脂肪族一塩基性酸、乳酸のような短鎖脂肪族ヒドロキシ一塩基性酸、アヂピン酸のような二塩基性脂肪族酸および安息香酸のような芳香族酸からなる群から選択された弱酸である。」(2頁左欄29?40行)

ウ 刊行物3(特開平6-72969号公報)
c-1 「長鎖脂肪族ニトリルを水素化触媒の存在下で水素と反応させてアミン化させるアミン化工程と、得られた長鎖脂肪族アミンを水素化触媒の存在下でホルムアルデヒドと水素と反応させてメチル化させるメチル化工程からなる長鎖脂肪族基を有する第3級脂肪族アミンの製造方法において、
(i)該アミン化工程における水素化触媒として担体担持ニッケル系触媒を用いること、
(ii)該メチル化工程における水素化触媒として、該アミン化工程で得られる使用済み触媒を用いるとともに、その助触媒として、水に対するPKaが2?6である有機酸を用いること、を特徴とする長鎖脂肪族基を有する第3級脂肪族アミンの製造方法。」(請求項1)
c-2 「メチル化工程で反応剤として用いるホルムアルデヒドは、ホルマリンや、パラホルムアルデヒドとして反応系に供給することができる。ホルムアルデヒドの使用割合は、第1級アミン及び/又は第2級アミンに対して、1当量以上、好ましくは1.05?1.5当量の範囲にするのがよい。」(段落【0009】)
c-3 「実施例1 2lの誘導回転式オートクレーブにラウロニトリル500gとニッケル-ケイ藻土触媒2.5gを充填し、アンモニアと水素をラウロニトリル液中に供給し、反応圧力を30kg/cm^(2)G(ゲージ圧)に維持した。撹拌下加熱に伴い、触媒の還元による水素圧の減少が認められるため、水素の圧力を補正しつつ、反応温度150℃に昇温し、3時間還元反応を行なった。内容物の一部を取り出し、分析を行なったところ、第1級アミン97.0%及び第2級アミン3.0%からなるアミン混合物が得られていることがわかった。ついで、助触媒としてアジピン酸0.40g(原料ニトリルに対して0.1モル%)をメタノールに溶かした溶液をこの触媒を含む粗製第1級アミンに添加後、8kg/cm^(2)G(ゲージ圧)に水素圧を維持しながら水素をオートクレーブ内に置換導入した。撹拌下、加熱して温度が150℃になった時点で37重量%のホルムアルデヒドを含むホルマリンを4時間にわたって連続的に加えた。反応終了後、温度を60℃に下げ、触媒を濾別して第3級アミン100.0%からなるアミンを得た。このアミン中、目標とするラウリルジメチルアミンの割合は97.0%であり、副反応物は主にジラウリルメチルアミンで、その割合は3.0%であった。」(段落【0012】)

(3) 引用発明
刊行物1には、第4級アンモニウム塩を製造する工程が記載されており(摘記a-1)その中間工程として、第2級アミンをアルデヒドを用いて第3級アミンとすること、すなわち、「開環物(XI)について通常の条件にてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド(XII)を使用してLeukart(ロイカルト)反応、又は還元アルキル化反応(開環物(XI)とアルデヒド(XII)とを反応させた後、水素化触媒存在下、水素化する)を行い、アミド化第3級アミン(XIII)を得る」(摘記a-3)方法が記載されている。そして、アルデヒド(XII)としてR^(13)がHであるホルムアルデヒドを使用した場合、メチル化されたアミド化第3級アミン(XIII)が得られることが記載されている(摘記a-4)。
してみると、刊行物1には、
「開環物(XI)について通常の条件にてホルムアルデヒドを使用して還元アルキル化反応を行い、メチル化されたアミド化第3級アミン(XIII)を得る方法」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(4) 対比
引用発明における「開環物(XI)」は、その化学構造式(摘示a-1)及び「R^(4)は・・・直鎖又は分岐鎖の炭素数7?35のアルキル基・・・を示す。」(摘示a-2)ことからみて、本件補正発明の
「一般式(II)

〔式中、Rは炭素数7?35のアルキル基を示し、m及びnは2の整数を示す。〕で表される第2級アミン」に相当する。
また、引用発明における「開環物(XI)」のホルムアルデヒドを使用する還元アルキル化は、ホルムアルデヒド及び水素下触媒の存在下で行われる態様を含むものであり、メチル化された第3級アミンを生成する(摘示a-4)のであるから、本件補正発明でいう還元メチル化に相当する。
そして、引用発明における「メチル化されたアミド化第3級アミン(XIII)」は、その化学構造式(摘示a-1)、「R^(4)は・・・直鎖又は分岐鎖の炭素数7?35のアルキル基・・・を示す。」(摘示a-2)こと、及びメチル化された第3級アミンを生成する(摘示a-4)こと、からみて、本件補正発明の
「一般式(I)

〔式中、R,m及びnは前記と同様の意味を示す。〕
で表されるN-メチル第3級アミン」に相当する。
以上の点を踏まえて、本件補正発明と引用発明を対比すると、両者は、
「一般式(II)

〔式中、Rは炭素数7?21のアルキル基を示し、m及びnは2の整数を示す。〕
で表される第2級アミンを、ホルムアルデヒド及び水素化触媒の存在下で還元メチル化することによる、一般式(I)

〔式中、R,m及びnは前記と同様の意味を示す。〕
で表されるN-メチル第3級アミンの製造方法。」である点で一致するが、以下のア及びイの点で相違すると認められる。
ア 本件補正発明では「一般式(III)
R’COOH (III)
〔式中、R’はH又は炭素数1?3のアルキル基を示す。〕
で表される低級脂肪酸」の存在下に還元メチル化を行うのに対し、引用発明ではその点が明らかではない点
イ 還元メチル化に際し、本件補正発明ではホルムアルデヒドとして35?37重量%ホルムアルデヒド水溶液を用い、ホルムアルデヒドを一般式(II)で表される第2級アミンに対して1.0?1.2倍モル用いるのに対し、引用発明ではその点が明らかではない点
(以下、これらの相違点を、それぞれ「相違点ア」及び「相違点イ」という。)

(5) 相違点についての判断
ア 相違点アについて
刊行物2には、第3級脂肪族メチルアミンを製造する改良法が記載されており(摘記b-1)、その方法は、収率および望ましくない副生成物の生成に関する限り、長鎖第1級あるいは第2級アミンおよびホルムアルデヒドを使用して達成される結果は満足でないが、これらの欠点は、アミンあるいはホルムアルデヒド中にアミンを基にして非常に少量の触媒物質を含有せしめることによって実質的に克服できることが記載されている(摘記b-2)。そして、酢酸、プロピオン酸および酪酸のような短鎖脂肪族一塩基性酸が触媒として克服するのに有効であると記載されている(摘記b-4)。
してみると、長鎖第2級アミンにホルムアルデヒドを水素及び水素化触媒の存在下反応させる還元メチル化において、酢酸、プロピオン酸および酪酸のような短鎖脂肪族一塩基性酸、すなわち、本件補正発明における一般式(III)で表される低級脂肪酸を含有せしめることにより、収率の向上及び副生成物の低減を図ることは、当業者が容易に想到し得ることであるから、引用発明において、「一般式(III)
R’COOH (III)
〔式中、R’はH又は炭素数1?3のアルキル基を示す。〕で表される低級脂肪酸」の存在下に還元メチル化を行うことは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本件補正発明における、反応率が向上するという効果も、刊行物2の記載から予想し得ることである。

イ 相違点イについて
刊行物3には、長鎖脂肪族アミンを水素化触媒の存在下でホルムアルデヒドと水素と反応させてメチル化させる方法(すなわち、還元メチル化方法)が記載されており(摘記c-1)、具体的には37重量%のホルムアルデヒドが用いられている(摘記c-3)。
しかも、アミンの還元メチル化において35?37重量%のホルムアルデヒドを用いることは周知である(例えば、特開昭61-236751号公報、特開昭63-287752号公報及び特開昭64-16751号公報参照)。
また、還元メチル化におけるホルムアルデヒドの使用量は、化学量論的にみてアミンに対し当量であるし、しかも、刊行物3において「1当量以上、好ましくは1.05?1.5当量の範囲」(摘記c-2)とされていることからも、還元メチル化におけるホルムアルデヒドの使用量をアミンに対し「1.0?1.2倍モル」用いることは当業者が容易になし得ることである。
したがって、還元メチル化に際し、引用発明において、ホルムアルデヒドとして35?37重量%ホルムアルデヒド水溶液を用い、ホルムアルデヒドを一般式(II)で表される第2級アミンに対して1.0?1.2倍モル用いることは当業者が容易になし得ることである。
そして、還元メチル化に際し、ホルムアルデヒドとして35?37重量%ホルムアルデヒド水溶液を用い、ホルムアルデヒドを一般式(II)で表される第2級アミンに対して1.0?1.2倍モル用いることにより、本件補正発明が格別顕著な技術的効果を奏し得たものとも認められない。

(6) 小括
以上のとおり、上記各相違点は当業者が容易に想到し得たものであり、また本件補正発明が上記各相違点に係る発明特定事項により格別顕著な効果を奏するものとも認められないから、本件補正発明は、刊行物1ないし3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法第159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、この出願の発明は、平成16年10月13日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。
「一般式(II)

〔式中、Rは炭素数7?21のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、m及びnは同一又は異なって1?6の整数を示す。〕
で表される第2級アミンを、ホルムアルデヒド及び水素化触媒の存在下で還元メチル化し、一般式(I)

〔式中、R,m及びnは前記と同様の意味を示す。〕
で表されるN-メチル第3級アミンを製造するに際し、一般式(III)
R’COOH (III)
〔式中、R’はH又は炭素数1?3のアルキル基を示す。〕
で表される低級脂肪酸の存在下に還元メチル化を行うことを特徴とする、N-メチル第3級アミンの製造方法。」
(以下、この発明を「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

1.特開平7-138876号公報
2.特公昭39-17905号公報
3.特開平6-72969号公報

3 刊行物について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-138876号公報(刊行物1)、特公昭39-17905号公報(刊行物2)及び特開平6-72969号公報(刊行物3)の記載事項は、前記「第2 3(2)」に記載したとおりである。

4 刊行物1に記載された発明
先に「第2 3(3)」で述べたのと同様の理由により、刊行物1には、
「開環物(XI)について通常の条件にてホルムアルデヒドを使用して還元アルキル化反応を行い、メチル化されたアミド化第3級アミン(XIII)を得る方法」
の発明(「引用発明」)が記載されていると認められる。

5 対比
先に「第2 3(4)」で述べた点を踏まえて本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「一般式(II)

〔式中、Rは炭素数7?21のアルキル基を示し、m及びnは2の整数を示す。〕
で表される第2級アミンを、ホルムアルデヒド及び水素化触媒の存在下で還元メチル化することによる、一般式(I)

〔式中、R,m及びnは前記と同様の意味を示す。〕
で表されるN-メチル第3級アミンの製造方法。」である点で一致するが、以下のアの点で相違すると認められる。
ア 本願発明では「一般式(III)
R’COOH (III)
〔式中、R’はH又は炭素数1?3のアルキル基を示す。〕
で表される低級脂肪酸」の存在下に還元メチル化を行うのに対し、引用発明ではその点が記載されていない点
(以下、この相違点を「相違点ア」という。)

6 相違点アについての判断
先に「第2 3(5)」の相違点アについて述べたのと同様の理由により、引用発明において、「一般式(III)
R’COOH (III)
〔式中、R’はH又は炭素数1?3のアルキル基を示す。〕
で表される低級脂肪酸」の存在下に還元メチル化を行うことは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願発明における、反応率が向上するという効果も、刊行物2の記載から予想し得ることである。

(6) 小括
以上のとおり、相違点アは当業者が容易に想到し得たものであり、また本願発明が相違点アに係る発明特定事項により格別顕著な効果を奏するものとも認められないから、本願発明は、刊行物1ないし2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-04 
結審通知日 2009-08-11 
審決日 2009-08-26 
出願番号 特願平7-158906
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07C)
P 1 8・ 575- Z (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 泰之小柳 正之  
特許庁審判長 唐木 以知良
特許庁審判官 原 健司
松本 直子
発明の名称 N-メチル第3級アミンの製造方法  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 古谷 聡  
代理人 義経 和昌  
代理人 持田 信二  

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