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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1204922 |
審判番号 | 不服2007-8175 |
総通号数 | 119 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-03-22 |
確定日 | 2009-10-08 |
事件の表示 | 特願2002- 23276「携帯通信端末機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月 8日出願公開、特開2003-224648〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成14年1月31日の出願であって、平成19年1月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月16日付けで審判請求時の手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年4月16日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成18年12月27日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「情報カード(7)を該バッテリー取付け面(32)に挿脱可能に装填した携帯通信端末機において、 バッテリー取付け面(32)にはカード(7)が該取付け面(32)に沿う様に収まり底部に端子部(38)を有する浅い凹部(33)が形成され、該凹部(33)の両端寄りにカードの一端側及び他端に被さって引っ掛かり可能な引っ掛り片(4)(5)が設けられ、少なくとも一方の引っ掛かり片(5)は、凹部(33)を解放する様に端末機本体(1)のバッテリー取付け面(32)上を後退可能な可動引っ掛かり片であり、該可動引っ掛り片(5)は薄板にて形成されて、カード(7)の脱出を防止する引っ掛かり位置と、取り出しの為にカード(7)の持ち上がりを許す開放位置の間をスライドすることを特徴とする携帯通信端末機。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「情報カード(7)をバッテリー(6)が取り付けられるバッテリー取付け面(32)に挿脱可能に装填した携帯通信端末機において、 バッテリー取付け面(32)にはカード(7)が該取付け面(32)に沿う様に収まり底部に端子部(38)を有する浅い凹部(33)が形成され、該凹部(33)の両端寄りにカードの一端側及び他端に被さって引っ掛かり可能な引っ掛り片(4)(5)が設けられ、少なくとも一方の引っ掛かり片(5)は、凹部(33)を解放する様に端末機本体(1)のバッテリー取付け面(32)上を後退可能な可動引っ掛かり片であり、 該可動引っ掛り片(5)は、バッテリー(6)に覆われ、バッテリー(6)を外すことにより、カード(7)の脱出を防止する引っ掛かり位置と、取り出しの為にカード(7)の持ち上がりを許す開放位置の間をスライド可能となることを特徴とする携帯通信端末機。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の「バッテリー取付け面」の構成を「バッテリー(6)が取り付けられるバッテリー取付け面」に、また補正前の「・・・スライドする」という構成を「バッテリー(6)に覆われ、バッテリー(6)を外すことにより、・・・スライド可能となる」という構成に、それぞれ限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 3.独立特許要件について 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。 (2)引用発明及び周知技術 A.原審の拒絶理由に引用された特開2001-307027号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【請求項1】 カードリーダおよび壁を有するケーシングを含む移動体装置であって、前記カードリーダは前記カード(15)の支持区域(30、102)を規定する本体(12)を有し、前記カードリーダは前記支持区域(30、102)を超えて突出する少なくとも1つの接触端子(32)を有し、そのまたは各々の接触端子(32)は前記カード(15)上の少なくとも1つの対応する接触端子と相互作用するように設計され、本体(12)は前記支持区域(30、102)の一方の側の上に部分的に前記支持区域(30)に面して延在する、カードを保持するための少なくとも1つのタブ(34、101)を有し、そのまたは各々の保持タブ(34、101)は前記支持区域(30)とともに前記カードの一方の端縁を保持するためのチャネル(36)の範囲を定め、リーダは前記カードを保持するためのロックをさらに有し、ロックは前記カードを保持するための可動ラッチ(52、110)を有し、前記ラッチ(52、110)は、前記ラッチ(52、110)が前記支持区域(30、102)に対して前記カードをロックする、前記カードの保持位置と、前記ラッチ(52、110)が前記支持区域から前記カードのロックを解除する前記カードの解放位置との間で可動であり、 前記カードリーダはケーシングの前記壁に一体化され、前記ラッチ(52、110)は前記本体(12)と一体で作られ、前記カードリーダの前記本体(12)は前記壁と一体で作られることを特徴とする、カードリーダおよび壁を有するケーシングを含む移動体装置。」(2頁1欄、請求項1) ロ.「【0002】 【発明の背景】そのようなカードリーダは特に、携帯電話などの移動体通信装置の部材に用いられる。特に、このようなリーダは、ユーザ識別カード、特にSIMカードを収容することが意図される。 【0003】本体がカードのくぼみ(imprint)を規定する空隙を有するカードリーダを設けることは携帯電話においては実際に公知である。この空隙の端縁の1つは、カードを保持するためのタブを有し、空隙の対向する端縁はカードを保持するための動くロックを有する。 【0004】このロックは、リーダの本体の中に規定されるガイドレールを摺動できるように取付けられた金属ブレードにより形成される。したがってロックは、ラッチを形成する金属ブレードの一方端がカードの上に延在しかつそれを固定するカードの保持位置と、カードを動かせるようにラッチが引込められるカードの解放位置との間で動くことができる。ロックは付加される金属部品から形成され、したがって一般的にはプラスチックからなるコネクタの本体とは別個のものである。」(3頁3欄、段落2?4) ハ.「【0011】 【詳細な説明】図1に示されるカードリーダは、携帯電話用のユーザ識別カードを、特にそれが読取られるように収容することが意図される。このタイプのカードは一般的にSIMカードと呼ばれる。 【0012】リーダ10は、携帯電話のケーシングの背面に作製される。電話のこの背面は、電話がその使用状態にあるときは、電源バッテリにより覆われ、それによりカードはバッテリが存在するときにはアクセスされ得ない。 【0013】リーダ10は、携帯電話の後方の壁の一部により形成される本体12を有する。 【0014】本体12は、参照番号15で示されかつ図2に示されるSIMカードの形状に対して相補的である空隙14の範囲を定める。したがって、空隙14はカードのくぼみを形成し、それは後者を収容することができしたがってカードを収容するためのハウジングを形成する。 【0015】空隙14は一般的には矩形の形状であり、対になって平行な4つの横壁16、18、20、22により範囲を定められる。横方向の壁16および18は縦方向の壁20および22よりも短い。 【0016】参照番号18および22で示された壁が接続される領域は、カード15の切取られた角26と相互作用するように設計された傾斜面24を有する。」(3頁4欄、段落11?4頁5欄、段落16) ニ.「【0019】電気的接触端子32は空隙の底部30上に突出する。これらの接触端子32は弾性ブレードにより形成される。それらはカード15にプリントされた集積回路の対応する端子と相互作用するように設計される。」(4頁5欄、段落19) ホ.「【0020】さらに、本体12は、空隙の縦方向の端縁20上に、カードを保持するための3つのタブ34を有する。他の異なる実施例(図示せず)に従うと、本体12は、空隙の縦方向の端縁20上に、カードを支持するための少なくとも1つのタブ34を有する。これらのタブ34は、端縁20の長さに沿って配される突起により形成される。これらの突起は部分的に底部30に面して延在する。それらはカード15の厚みにほぼ対応する距離分、底部から間隔をあけられる。したがって、タブ34は底部30上にオーバーハングとして延在する。タブ34はカードの一方の端縁を保持するためのチャネル36を底部30とともに規定する。 【0021】保持タブ34に面して、底部30は図3に見られるような、カードを外すための凹部38を有する。この凹部は、底部30の平坦部分から端縁20まで傾斜するランプ40により範囲を定められ、それにより空隙14の厚みは端縁20に向かって徐々に増加する。 【0022】カードを保持するためのタブ34を有する端縁20と対向する、空隙の横方向の端縁22は、カードを保持するためのラッチ52を支える弾性アーム50により形成される。アーム50およびラッチ52は、カードを保持するためのロックを形成する。それらは両者ともカードリーダの本体12の一体化した部分である。」(4頁5欄、段落20?22) ヘ.「【0030】図2に示されたように、リーダにカードを取付けるには、切取られた角26を有する端縁と対向する、カードの前方端縁が空隙14に挿入される。それは保持チャネル36に収容されるまで押し込まれる。底部30と保持タブ34の間に規定されるチャネル36へのカードの嵌め込みは、カードが底部30に対して傾斜して保持されるのを可能にする凹部38の存在によりさらに容易になる。」(4頁6欄、段落30) ト.「【0034】リーダからカードを取出すには、ユーザは、たとえば爪を用いて、スロット56の方向にそれを押し戻すことにより、ラッチ52をその引込められた位置に戻す。ラッチに与えられた力の作用により、アーム50はスロット56の内側に弾性変形し、これによりラッチ52はカードの上面から外れる。カードはこのように解放される。」(4頁6欄?5頁7欄、段落34) 上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「ユーザ識別カード(SIMカード)」は「電源バッテリにより覆われ」る「携帯電話のケーシングの背面」に「挿脱可能に装填」され、前記「背面」には前記「カード」が前記「背面」に沿う様に収まり底部に「端子32」を有する「くぼみ」(即ち、浅い凹部)が形成され、該凹部の両端には「カードを保持する」ための「オーバハングした」(即ち、カードに被さって引っ掛かる)「タブ34」と「ラッチ52」(即ち、引っ掛かり片)が設けられ、少なくとも前記「ラッチ52」は「前記凹部を解放する様に後退可能な可動引っ掛かり片」である。また上記「保持位置」とは「カードの脱出を防止する引っ掛かり位置」のことであり、上記「開放位置」とは「取り出しの為にカード(7)の持ち上がりを許す」位置のことである。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「SIMカードを電源バッテリにより覆われるケーシングの背面に挿脱可能に装填した携帯電話において、 前記背面にはカードが該背面に沿う様に収まり底部に端子を有する浅い凹部が形成され、該凹部の両端寄りにカードの一端側及び他端に被さって引っ掛かり可能なタブとラッチが設けられ、前記ラッチは、凹部を解放する様に後退可能な可動引っ掛かり片であり、 該可動引っ掛り片は、電話がその使用状態にあるときは、電源バッテリにより覆われ、それによりカードはバッテリが存在するときにはアクセスされ得ない前記背面に設けられ、カードの脱出を防止する引っ掛かり位置と、取り出しの為にカードの持ち上がりを許す開放位置の間を可動である携帯電話。」 また上記引用例の段落2?4には、引用発明の従来例として、以下の技術が開示されている。 「摺動(即ち、スライド)機構を用いてカード保持用ロックを構成した携帯電話などの移動体通信装置。」 (3)対比・判断 補正後の発明と引用発明を対比すると、引用発明の「SIMカード」は例えばユーザ識別情報が記憶されるいわゆる「情報カード」であり、引用発明の「携帯電話」は「携帯通信端末機」そのものであるから、引用発明のこれらの構成と補正後の発明の「情報カード」、「携帯通信端末機」の間に実質的な差異はない。 また引用発明の「電源バッテリにより覆われるケーシングの背面」と補正後の発明の「バッテリー(6)が取り付けられるバッテリー取付け面(32)」の間にも実質的な差異はない。 また引用発明の「端子」と補正後の発明の「端子部」の間にも実質的な差異はない。 また引用発明の「タブ」は「カードの一端側に被さって引っ掛かり可能な」引っ掛かり片であるから、引用発明の当該構成と補正後の発明の「引っ掛かり片」(4)の間に実質的な差異はない。また引用発明の「ラッチ」は「カードの他端に被さって引っ掛かり可能な」、「少なくとも一方の引っ掛かり片」であり、「後退可能な可動引っ掛かり片」であるものの、引用発明の「ラッチ」は単に「可動」であり、補正後の発明のように「端末機本体(1)のバッテリー取付け面(32)上を(スライドして)後退可能な」ものではない。また引用発明の「電話がその使用状態にあるときは、電源バッテリにより覆われ、それによりカードはバッテリが存在するときにはアクセスされ得ない前記背面に設けられ、」という構成は前記背面が「バッテリーに覆われ、バッテリーを外すことにより、アクセス(即ち、カードの取り出し操作)が可能である」という構成に他ならないから、引用発明の当該構成と補正後の発明の「バッテリー(6)に覆われ、バッテリー(6)を外すことにより、」取り出し操作が可能である構成との間にも実質的な差異はない。 したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「情報カードをバッテリーが取り付けられるバッテリー取付け面に挿脱可能に装填した携帯通信端末機において、 バッテリー取付け面にはカードが該取付け面に沿う様に収まり底部に端子部を有する浅い凹部が形成され、該凹部の両端寄りにカードの一端側及び他端に被さって引っ掛かり可能な引っ掛り片が設けられ、少なくとも一方の引っ掛かり片は、凹部を解放する様に後退可能な可動引っ掛かり片であり、 該可動引っ掛り片は、バッテリーに覆われ、バッテリーを外すことにより、カードの脱出を防止する引っ掛かり位置と、取り出しの為にカードの持ち上がりを許す開放位置の間を可動である携帯通信端末機。」 (相違点1)「一方の引っ掛かり片」に関し、補正後の発明は「端末機本体(1)のバッテリー取付け面(32)上を後退可能な」部材(引っ掛かり片)であるのに対し、引用発明は単に「後退可能な」部材(ラッチ)である点。 (相違点2)「可動である」構成に関し、補正後の発明は「スライド可能」であるのに対し、引用発明は単に「可動」である点。 そこで、上記相違点1の「一方の引っ掛かり片」及び上記相違点2の「可動である」構成についてまとめて検討するに、引用例には、引用発明の従来例として「摺動(即ち、スライド)機構を用いてカード保持用ロックを構成した携帯電話などの移動体通信装置」(以下、「周知技術」という。)が開示されており、またカード保持用の凹部及びラッチがバッテリー取付け面に設けられることは引用発明に開示されているとおりであるから、これらの技術手段に基づいて、引用発明の「後退可能な」部材である「ラッチ」を補正後の発明のような「端末機本体(1)のバッテリー取付け面(32)上を後退可能な」部材(引っ掛かり片)とする(相違点1)とともに、その動作を「スライド可能」とする(相違点2)程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。 以上のとおりであるから、補正後の発明は、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正(審判請求時の手続補正)は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いた本願発明も、同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-07-27 |
結審通知日 | 2009-07-28 |
審決日 | 2009-08-27 |
出願番号 | 特願2002-23276(P2002-23276) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 萩原 義則 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
小宮 慎司 新川 圭二 |
発明の名称 | 携帯通信端末機 |
代理人 | 北住 公一 |
代理人 | 丸山 敏之 |
代理人 | 長塚 俊也 |
代理人 | 久徳 高寛 |
代理人 | 宮野 孝雄 |