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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1204955
審判番号 不服2008-32783  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-25 
確定日 2009-10-08 
事件の表示 特願2001-229565「合成樹脂製ボトル型容器」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月13日出願公開、特開2003- 40233〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年7月30日の出願であって、平成20年11月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年12月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
本願の請求項1に係る発明は審査段階において平成20年10月15日に補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下「本願発明」という)。
「【請求項1】口部につながる胴部と、底上げ凹部を有し該胴部に引き続く底部を二軸延伸ブロー成形法により一体的に成形した合成樹脂製のボトル型容器であって、
前記ボトル型容器は、口部の開口中心と底部の底面中心を偏心させた少なくも2つの軸心を備え、
容器の底部の正面側の縁に、背面側の縁よりも大きなアール(R)を設けるとともに、底上げ凹部に、容器の正面側に向けてなだらかな傾斜を付与してなることを特徴とする合成樹脂製ボトル型容器。」

2.引用刊行物記載の発明
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である2001年(平成13年)2月8日に頒布された国際公開第01/8868号(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている(訳は当審で付与した。)。
(a)「Referring to Figure 3 …bottle.( 図3を参照すると、偏心首部付きPETボトルを製造する装置の延伸部及びブロー部は、延伸ピン1、ブロー孔2、首部成形型3及びブロー成形型5を有することにおいて従来公知である。しかしながら、延伸ピンは首部成形型3の方向に対して傾斜し、そして首部成形型はブロー成形型5に対して偏心している。換言すれば、ボトルの形状51は、ブロー成形型5によって画定されるように、首部がボトルの一方側に配置されるような形状である。)」(明細書第4頁第1?6行)
(b)「The stretching pin 1 is …bottle.(延伸ピン1は、プリフォーム本体の傾斜角に相当する角度に傾斜させられている。プリフォームが変形させられた後、延伸ピンがプリフォーム内に挿入され、そして成形型が閉鎖される。その後、延伸ピンは、プリフォームを延伸するために前進させられる。それと同時に、プリフォームは、ブロー孔2を介して内部に空気を吹き込まれると共にブロー成形型5により画定されたボトルの形状に成形される。 冷却後、成形型が開放されると共にボトルが離型される。)」(明細書第4頁第18?24行)
(c)FIG.3を参照すると、ブロー成形型5により画定されるボトルの形状は、首部につながる胴部と、胴部に引き続く底部からなり、底部の縁にア-ルが設けられ、底上げ凹部が形成されるものであって、ブロー孔2を介して内部に空気が吹き込まれる首部の開口の軸心(ボトルの形状51においてブロー成形型の首部52から伸びる一点鎖線)と、底部の軸心(ボトルの形状51において首部と逆の底部から伸びる一点鎖線)が偏心していることがみてとれる。

PETボトルは合成樹脂製のボトル型容器であるので、以上の記載及び図1?3によれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

「ブロー成形により一体成形した、首部につながる胴部と、胴部に引き続く底部からなる合成樹脂製ボトル型容器であって、底部の縁にア-ルが設けられ、底上げ凹部を形成するものであり、首部の開口の軸心と底部の軸心が偏心している合成樹脂製ボトル型容器。」

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「首部の開口の軸心」は鉛直方向に伸びる軸心であると認められ、水平な開口面の中心を通るものと認めることができ、引用発明の「底部の軸心」は鉛直方向に伸びる軸線であると認められ、水平な底面の中心を通るものと認めることができるので、引用発明の首部の開口の中心と、底面の中心は偏心していると認めることができ、また、引用発明においては首部の開口部付近が口部となると認められる。
したがって、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「口部につながる胴部と、底上げ凹部を有し該胴部に引き続く底部をブロー成形法により一体的に成形した合成樹脂製のボトル型容器であって、前記ボトル型容器は、口部の開口中心と底部の底面中心を偏心させた少なくも2つの軸心を備え、容器の底部の縁にアールを設けた合成樹脂製ボトル型容器。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、合成樹脂製のボトル型容器を二軸延伸ブロー成形法により一体的に成形しているのに対して、引用発明では二軸延伸ブロー成形法により成形しているのか明らかでない点。
[相違点2]
本願発明では、容器の底部の正面側の縁に、背面側の縁よりも大きなアールを設けるとともに、底上げ凹部に、容器の正面側に向けてなだらかな傾斜を付与してなるのに対して、引用発明では容器の底部の両側の縁のアールの大小関係が明らかではなく、底上げ凹部に、なだらかな傾斜を付与してあるのか否か明記がない点。

4.当審の判断
[相違点1」について
プリフォームを延伸させる容器の一体的成形法として、二軸延伸ブロー成形法は慣用技術にすぎない(例えば、特開昭62-270315号公報を参照)。
よって、引用発明において上記慣用技術を用いることは当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

[相違点2]について
相違点2の技術的意義について検討すると、本願の明細書の段落【0012】には「特に、底部3の縁AのアールR_(1)と縁BのアールR_(2)の関係においては、R_(1)>R_(2)とすることにより、縁Aの肉厚を確保することができ、容器の性能上必要とされる座屈強度、剛性を維持することが可能となる。加えて、実施例の様に、底上げ凹部4の正面側(プリフォーム中心から見た長手方向)に向けてなだらかな傾斜(Rでも良い)を付与することにより、更に縁Aの肉厚を確保し易くすることが可能となる。」と記載されている。
しかし、ブロー成形の技術常識からみて、底部の縁のアールを大きくすれば縁の肉厚が確保されるというものではなく、底部の一方側の縁のアールを他方側の縁のアールよりも大きくすることは、それによって格別な効果を奏するものではなく、任意に行われる設計的事項にすぎないと認められる。
また、底上げ凹部を設ける場合に、適宜傾斜を付与することは慣用技術にすぎない(例えば、特開平2-99313号公報の第3頁右上欄第15行から左下欄第4行を参照)。
したがって、引用発明のボトルの形状を底部の一方側の縁のアールが他方側の縁のアールよりも大きいデザインとしたり、また、底上げ凹部に、当該一方側に向けてなだらかな傾斜を付与することはいずれも当業者が適宜なし得た程度の事項であり、これらの事項によって、上記の明細書に記載されたとおりの効果を奏するものとも認められない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び慣用技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2009-08-05 
結審通知日 2009-08-11 
審決日 2009-08-24 
出願番号 特願2001-229565(P2001-229565)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 村山 禎恒
熊倉 強
発明の名称 合成樹脂製ボトル型容器  
代理人 杉村 憲司  
代理人 澤田 達也  

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