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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1205010
審判番号 不服2007-20142  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-19 
確定日 2009-10-07 
事件の表示 特願2005-145745「スキャナ装置の平面光源」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 8日出願公開、特開2005-341570〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯

本願は、平成17年5月18日(パリ優先権主張、2004年5月24日、台湾)の出願であって、平成18年9月6日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成18年12月15日付けで意見書が提出されるとともに第1回目の手続補正がなされたが、本願は、平成19年4月17日付けで拒絶査定された。これに対し、平成19年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年8月14日付けで第2回目の手続補正がなされたものである。



第2.平成19年8月14日付けの手続補正について

平成19年8月14日付けの手続補正は、特許請求の範囲の全文、及び、明細書の全文を変更するものである。当該手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内でする補正であり、特許請求の範囲についてする補正は、原審での拒絶理由に示された事項についてする、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、適法なものである。



第3.本願発明の認定

本願の発明は、平成19年8月14日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりである。

「 【請求項1】
走査されるべき対象物をその上に置く走査台と、
前記対象物の画像をデジタル信号へと処理するキャリッジ・モジュールと
前記走査台の上方に前記キャリッジ・モジュールに対向して置かれた平面光源とを有し、
前記平面光源は、
前記キャリッジ・モジュールの移動方向に対して平行な方向に延び、前記走査台の上方中央に配設された、光を供給する発光素子と、
前記走査台を通り前記キャリッジ・モジュールに与えられるべき第1および第2の平面光として前記発光素子を源とする光を拡散するよう、前記発光素子に隣接して両側を囲むように配置された、第1および第2の導光部とを有する、
スキャナ装置。 」

(以下、これを本願発明という。)



第4.引用刊行物記載の発明

原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1( 実願昭63-135064号(実開平2-58229号)のマイクロフィルム )には、第1図、第4図、第5図とともに、以下のア?オの記載がある。


ア.「 [ 作 用 ]
この考案においては、背面照射用ランプの光は発光ガラスの入射面に入射し、反射面の全面で反射して発光面から外部に射出され、透明な原稿台上を原稿背面側より一様に照射する。従って、原稿照明用ランプと同期して移動する画像読取部は副走査方向に移動しながら発光ガラスの照射光と原稿を同時に読み取っていく。 」(第6頁第11行?第18行)

イ.「 [ 実施例 ]
第1図及び第4図は同実施例の概略を示す構成図および平面図である。
( 中略 )
この実施例の画像読取部9は原稿照射用ランプとCCDセンサがケーシングに内蔵されており、そのケーシングが副走査方向に移動することによって原稿8を読み取るように構成されている。20は原稿押え3の枢着側に設置された背面照射用ランプである螢光灯、21は原稿押え3の枢着側に設置され、螢光灯20の光を一方向に集約させる集光板、22は原稿押え3の裏面に取り付けられた楔状の緩衝材、23は緩衝材22に貼り合わされた楔状の発光ガラスである。 」(第6頁第19行?第7頁第12行)

ウ.「 第5図は発光ガラスの動作説明図で、楔状の発光ガラス23は螢光灯20に面し、螢光灯20の光が入射される底面をなす研磨された入射面23aと、原稿押え3の裏面側に位置し、入射面23aから入射した光を全面で散乱光として反射する反射面23bと、反射面23bの散乱光である反射光を外部に射出して原稿台ガラス2上を原稿8の背面側より全面照射する研磨された発光面23cを有している。 」(第7頁第13行?第7頁第20行)

エ.「 上記のように構成された原稿サイズ検知装置においては、まず、原稿8を原稿台ガラス2上にセット後、原稿押え3で原稿8を押さえる。そして、画像読取部9が副走査方向に移動する原稿走査時に螢光灯20が点灯すると、螢光灯20の光は集光板21により集光されて発光ガラス23の入射面23aに入射し、反射面23bにより乱反射されて散乱光となった反射光は発光面23cに達し、発光面23cから外部に射出される。このとき発光面23cはその全面にわたって一様に発光して原稿台ガラス2上を原稿8の背面側より一様に照射する。このように発光ガラス23が原稿台ガラス2上を一様に照射するから螢光灯20を移動させる必要はなくなった。そこで、画像読取部9は副走査方向に移動しながら発光ガラス23の照射光と原稿8を同時に読み取っていく。 」(第8頁第1行?第8頁第16行)

オ.「 この画像読取部9からの出力は背景信号分離部10によって発光ガラス23の直接照射光と画像読取部9の原稿照明用ランプの原稿8からの反射光との白レベル出力差から画像信号Aと原稿外背景部信号Bとに分離され、画像信号Aは画像処理部11に送られ、原稿外背景部信号Bは原稿サイズ検知部12に送られる。 」(第8頁第16行?第9頁第2行)


前掲ア、イによれば、刊行物1の第1図に示されている原稿サイズ検知装置は、透明な原稿台ガラス2上にある原稿8に、原稿背面側より光を一様に照射し、原稿台ガラス2の下方にある画像読取部9が副走査方向に移動しながら、照射光と原稿を同時に読み取っていくものと解される。
また、前掲イ、オ及び同第1図によれば、画像読取部9は、原稿照射用ランプとCCDセンサを内蔵し、画像読取部9からの出力は、背景信号分離部11に伝えられ、ここで画像信号Aが分離されて画像処理部11へ送られるようになっているので、この原稿サイズ検知装置は、画像を読み取るスキャナ装置でもある。
一方、原稿背面側より一様に照射される光は、前掲ウ、エ及び刊行物1の第5図の記載によれば、蛍光灯(螢光灯)からの光を発光ガラスに入射し、発光ガラスの反射面23bの散乱光である反射光を、原稿8に向けて上方から全面照射するようにしたものであることが分かる。すなわち、原稿8及び原稿台ガラス2の上方には、原稿に散乱光を全面照射するように構成された、蛍光灯と発光ガラスとからなる、いわゆる平面光源が配置されているといえる。

したがって、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「 原稿の画像を読み取るスキャナ装置であって、
透明な原稿台ガラス上にある原稿に、原稿背面側より、照射光として、散乱光を一様に全面照射する、蛍光灯と発光ガラスとからなる平面光源を備え、
原稿台ガラスの下方にある、原稿照射用ランプとCCDセンサを内蔵した画像読取部が、副走査方向に移動しながら、発光ガラスの照射光と原稿を同時に読み取って、背景部信号と画像信号に分離される前の信号を出力し、該信号から画像信号を分離して画像処理部へ送るようにしたスキャナ装置。 」

(以下、これを引用発明という。)


次に、原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物2( 実願平3-83072号(実開平5-33130号)のCD-ROM )には、図1ないし4とともに、以下のカ?タの記載がある。

カ.「 【請求項1】 背面に点刻の形成された点刻導光板が容器状の灯具ボディ内に設けられ、この点刻導光板の背面には溝が形成されて、この溝内に蛍光管が挿通され、導光板の前面には、入射光の一部を反射するとともに、略平行な出射光を形成する角溝状プリズムステップ又は角錐や円錐状プリズム点刻が全面に均一に形成されたプリズムレンズが設けられ、前記点刻導光板には蛍光管対応領域からの出射光量を低減させるための手段が設けられたことを特徴とする照明装置。 」

キ.「 【0004】
本考案は前記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的は蛍光管の発光を配光上有効に利用するとともに、レンズの発光面全体を均一に発光させて視認性の良好な灯具を提供することにある。 」

ク.「 請求項1に係る照明装置においては、背面に点刻の形成された点刻導光板が容器状の灯具ボディ内に設けられ、この点刻導光板の背面には溝が形成されて、この溝内に蛍光管が挿通され、導光板の前面には、入射光の一部を反射するとともに、略平行な出射光を形成する角溝状プリズムステップ又は角錐や円錐状プリズム点刻が全面に均一に形成されたプリズムレンズが設けられ、前記点刻導光板には蛍光管対応領域からの出射光量を低減させるための手段を設けるようにしたものである。 」(段落【0005】)

ケ.「 請求項1では、蛍光管からの発光は溝の壁面から点刻導光板に入射し、点刻導光板全体に導かれ、導光板背面の点刻で反射されて導光板の前面から拡散光となって出射してプリズムレンズの全面に導かれ、プリズムレンズによって略平行な出射光が形成される。そして点刻導光板に設けられた光量低減手段が導光板の蛍光管対応領域からの出射光量を低減し、蛍光管近傍における光量過多を修正する。 」(段落【0008】)

コ.「 図1及び図2は、本考案を大型液晶表示器におけるバック照明装置に適用した実施例を示すもので、( 後略 ) 」(段落【0011】)

サ.「 灯具ボディ10の内側には白色系(銀色を含む)塗装面11が形成されて、光を前方に反射するようになっている。灯具ボディ10内には点刻導光板12が収容配置されるとともに、点刻導光板12の背面側に蛍光管20が配設されている。点刻導光板12は灯具ボディ10の内側に略倣った上下方向中央部程厚肉の矩形状体で、上下方向中央部には背面側に開口し左右に延びる横断面円形の溝16が延設されており、この溝16内には両端部をコネクター21に支持された蛍光管20が挿通配置されている。 」(段落【0012】)

シ.「 導光板12の背面には多数の点刻13が形成されており、溝16の壁面から導光板12内に入射した蛍光は導光板内で反射をくり返して導光板の上下の側端部にまで導かれ、導光板の背面に形成されている点刻13によって反射されて導光板の前面から拡散光となって前方に出射する。 」(段落【0013】)

ス.「 蛍光管配設用の溝16の底面16aに臨む蛍光管20の外側面には、光量低減手段であるアルミニウム蒸着やホットスタンプ処理等によって光反射膜22が形成されている。このため蛍光管20の発した光のうち前方に向かう直射光は、図2の符号Lに示されるように、この光反射膜22によって後方に反射され、ランプボディ内側の白色系塗装面11で反射されて再び導光板12内に導かれる。 (中略) 光反射膜22によって蛍光管20に対応する導光板の上下方向中央部領域からの出射光量が低下するためこのようなことがなく、導光板12から出射する光の光量が全面において均一化されている。 」(段落【0014)】

セ.「 導光板12の前面には、表面しぼ加工処理され、光を平滑化するための光拡散板24が、さらには裏面にプリズムステップ27が形成され、上下方向に略平行な出射光を形成するプリズムレンズ26が配置され、灯具ボディ10の前面開口部には液晶表示パネル28が組付一体化されている。(中略)そして導光板12から出射した拡散光は、光拡散板24でさらに拡散され、散乱光となってプリズムレンズ26に導かれる。散乱光のうち入射角が臨界角より小さい光はプリズムレンズ26を透過して略平行光となるが、入射角が臨界角より大きい光はプリズムステップ27で反射されて導光板12側に戻される。そしてプリズムレンズ26全体から光量の平滑化された平行光が得られ、液晶表示パネル28を照明する。 」(段落【0015】)

ソ.「 図4は本考案の第3の他の実施例である照明装置の縦断面図である。
前記第1の実施例は液晶表示器用の照明装置であったが、この第2の実施例は天井や壁等に取付けて使用する照明具に適用したものである。前記第1の実施例と異なる点は、蛍光管20に光反射膜が形成されておらず、蛍光管20から前方に向かう光は反射されることなく、導光板12に入射するようになっており、そして、蛍光管配設用の溝16に対応する導光板の表面に溝底面16aから導光板12に入射した光の一部を反射するための反射プリズム14が設けられ、溝16の開口部側には反射プリズム14で反射された光を積極的に上下方向前方に反射する反射板30が設けられていることである。 」(段落【0017】)

タ.「 またプリズムレンズ26の前面には、前記実施例の液晶表示パネル28に代えて、左右に延びる帯状スリット42が上下方向に連続形成された遮光枠40が組付けられている点も相違する。この遮光枠40は、スリット42を透過できる光だけ、即ち遮光枠40の延在方向と略直交する方向に進行する光だけを透過させて、透過光に指向性をもたせているので、(後略) 」(段落【0019】)


したがって、引用刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。

「 蛍光管の発光を配光上有効に利用することにより、レンズの発光面全体を均一に発光させる照明装置であって、
導光板とプリズムからなり、
導光板は、上限方向中央部程肉厚の矩形状体であり、上下方向中央部には開口し左右に延びる横断面円形の溝が延設され、背面に点刻の形成された点刻導光板であって、
この点刻導光板の背面中央部には溝が形成されて、この溝内に蛍光管が挿通され、
蛍光管の発光は、導光板内で反射を繰り返され、背面に形成された点刻密度が溝の上下方向側端部側程密になる点刻により、導光板の前面から拡散光として前方に出射されるものであり、
導光板の前面には入射光の一部を反射するとともに、略平行な出射光を形成するプリズムレンズが設けられている照明装置。 」



第5.本願発明と引用発明との対比

本願発明と引用発明を対比すると、

引用発明における「原稿」は、画像読取部で走査しながら読み取る対象物となるものであるから、本願発明における、「読取走査の対象物」に相当する。また、引用発明における「原稿台ガラス」は、その上に原稿(対象物)がセットされる台であるから、本願発明における「走査台」に相当する。

次に、引用発明における「画像読取部」は、副走査方向に移動しながら原稿を読み取るためのものであり、前掲イ、エ、及び刊行物1の第1図、第4図の記載によると、原稿照射用ランプとCCDセンサがケーシングに内蔵されて、これが移動するようになされたものであって、背景部信号と画像信号とに分離される前の信号を出力する一つの移動するユニットとしてとらえられるから、原稿(対象物)の画像を電気信号へと処理する一種のキャリッジ・モジュールであるといえる。つまり、引用発明における「画像読取部」は、本願発明における「キャリッジ・モジュール」に相当する。ただし、本願発明では、キャリッジ・モジュールが、対象物の画像をデジタル信号へと処理するものであるのに対し、引用発明ではデジタル信号へと処理するものであるかどうかは特定されておらず、発光ガラスの照射光と原稿を同時に読み取って、背景部信号と(対象物の)画像信号とに分離される前の信号を出力しているという点で相違する。しかし、両者とも、対象物の画像を電気信号へと処理するキャリッジ・モジュールである点で変わりはない。

また、引用発明において、「原稿背面側より、照射光として、散乱光を一様に全面照射する、蛍光灯と発光ガラスとからなる平面光源を備える」点は、刊行物1の図1によると、原稿読取部に対向して原稿台ガラスの上方から全面照射するものであるから、本願発明において、「走査台の上方に、キャリッジ・モジュールに対向して置かれた平面光源を有している」点に相当する。
ただし、本願発明では、平面光源が「キャリッジ・モジュールの移動方向に対して平行な方向に延び、前記走査台の上方中央に配設された、光を供給する発光素子と、 前記走査台を通り前記キャリッジ・モジュールに与えられるべき第1および第2の平面光として前記発光素子を源とする光を拡散するよう、前記発光素子に隣接して両側を囲むように配置された、第1および第2の導光部とを有するもの」であるのに対し、引用発明では、「蛍光灯と発光ガラスとからなるもの」という点で相違する。

したがって、本願発明と引用発明の一致点及び相違点をまとめると、次のとおりである。

( 一致点 )
「 走査されるべき対象物をその上におく走査台と、
前記対象物の画像を電気信号へと処理するキャリッジ・モジュールと、
前記走査台の上方に前記キャリッジ・モジュールに対向して置かれた平面光源と、
を有するスキャナ装置。 」 である点。

そして、相違点は以下のとおりである。

( 相違点1 )
キャリッジモジュールが、本願発明では、対象物の画像をデジタル信号という電気信号へと処理するものであるのに対し、引用発明では、対象物の画像をデジタル信号という電気信号へと処理するものという特定はされていない点。

( 相違点2 )
平面光源が、本願発明では、
「キャリッジ・モジュールの移動方向に対して平行な方向に延び、前記走査台の上方中央に配設された、光を供給する発光素子と、 前記走査台を通り前記キャリッジ・モジュールに与えられるべき第1および第2の平面光として前記発光素子を源とする光を拡散するよう、前記発光素子に隣接して両側を囲むように配置された、第1および第2の導光部とを有するもの」であるのに対し、引用発明では、単に「蛍光灯と発光ガラスからなるもの」であり、格別の構造のものではない点。



第6.相違点についての判断

以下、上記相違点について検討する。

( 相違点1について )
引用発明において、キャリッジ・モジュール(画像読取部)には、前掲イによれば、原稿照射用ランプとCCDセンサが内蔵されており、CCDセンサからの出力信号には、対象物の画像を表す信号が含まれていることから、これは通常のスキャナ構造である。
そして、通常のCCDセンサを有するキャリッジ・モジュールを備えたスキャナでは、CCDセンサからの出力信号を処理するに当たって、通常、アナログ/デジタル変換が行われて、デジタル信号での処理が行われることが極めて普通の処理方法であって、周知技術である。
したがって、引用発明において、キャリッジ・モジュール(画像読取部)が、対象物の画像をデジタル信号という電気信号へと処理するようにすることは、単なる設計的事項にすぎない。

( 相違点2について )
刊行物2には、平面光源としての照明装置が記載されている。
上記した刊行物2に記載の発明は、換言すれば次のものである。

「 導光板とプリズムからなり、
導光板が光を供給する蛍光管(発光素子)を上下方向(両側)から挟むように構成され、該発光素子を源とする光が導光板の前面から平面光となるよう、上方向、下方向の導光部で拡散するものであり、
導光板の前面には入射光の一部を反射するとともに、略平行な出射光を形成するプリズムレンズが設けられている照明装置。」

当該照明装置は、液晶表示パネルのバック照明装置に適用され、また、照明具にも適用される実施形態が示されていることからみて、その意味で汎用性のある照明装置といえる。
刊行物1に記載の発明における平面光源として、刊行物2に記載されている汎用性のある平面光源を用いることに格別の困難性はない。当業者というものは、装置を構成する部分品や機能ユニットなどについて、同様な機能を有するもの、あるいは、より適合性のよいものを探して組み合わせる創作行為を普通に行うものであるから、刊行物2記載の照明装置を、引用発明における平面光源の代わりに採用しようとすることは、当業者における自然の発想である。
そして、引用発明における平面光源として、刊行物2記載の照明装置を採用した場合に、 引用発明における平面光源が、透明な原稿台ガラス上にある原稿に、原稿背面側より、一様に全面照射する、ものであることから、その照射方向について、刊行物2記載の照明装置における照射面であるプリズムレンズの面が、原稿に対して平行に対向するように配置することは、技術常識的にみても当然である。
また、そうした場合、刊行物2の図1ないし4に示されたように、当該照明装置の照射面が矩形状の構造であることからして、照明装置における光を供給する発光素子としての蛍光管は、走査台(原稿台ガラス)の上方中央に、キャリッジ・モジュールの移動方向に対して平行な方向、又は、それと直角な方向に延びるように配設されることになる。
また、照明装置における蛍光管からの発光は、走査台の上方中央から、蛍光管の両側を含む方角に放射され、点刻導光板に入射し、点刻導光板全体に導かれ、点刻導光板背面の点刻で反射されて点刻導光板の前面から拡散光となって出射してプリズムレンズの全面に導かれ、プリズムレンズによって略平行な出射光が形成され、原稿背面より原稿を一様に照射するものとなる。
そして、照明装置における光を供給する発光素子としての蛍光管を、走査台(原稿台ガラス)の上方中央に、キャリッジ・モジュールの移動方向に対して平行な方向とするか、又は、それと直角な方向に延びる方向とするかは、単なる設計的事項にすぎない。

したがって、相違点1ないし2は、いずれも格別な相違点とはいえず、本願発明は、刊行物1ないし2に記載された発明、及び、技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(審判請求人の主張について)

審判請求人は、審判請求書の理由において、引用発明は、蛍光灯を側方に配置する発明であり、この点は、上部筐体に対する小さい厚みと高い適合性で有利であるとする技術常識であるから、蛍光灯を中央に置くことに全く障害のない刊行物2記載の照明装置を、引用発明に適用することには阻害要因がある旨、主張している。また、回答書において、併せて、引用発明の発光デバイスを、刊行物2記載のより複雑な発光デバイスを含むように変形することは考えにくい等の理由を挙げ、組み合わせようと試みる理由はない旨、主張している。これに関して、当審の見解を以下に述べる。

刊行物1には、引用発明が解決しようとする課題として、従来の方式では、背面照射用ランプの駆動系の構造が複雑化し、原稿押えが大型化、重量化して操作性が低下するという問題点があったと指摘している。そして、引用発明は、原稿押えを軽量化し、操作性が良好な原稿サイズ検出装置を提供することを目的とする旨の記載がある。(第5頁第4行?第19行)
そして、引用発明の効果として、「 原稿押えに原稿押えの枢着側に設けられた背面照射用ランプと楔状の発光ガラスとからなる背面照射用光源を設け、背面照射用ランプの光を発光ガラスによって、透明な原稿台上を原稿背面側より一様に照射するようにしたので、背面照射用ランプを移動させる必要はなくなり、原稿押えには背面照射用ランプと発光ガラスがあるだけとなって原稿押えの構造が簡単で軽量化され、操作性が向上するという効果が期待できる。 」と記載されている。(第9頁第5行?第13行)

これらのことから、引用発明は、従来必要であった背面照射用ランプの駆動系を省略し、代わりに背面照射用のランプと発光ガラスからなる静的な平面光源に置き換えることにより、従来の課題を解決し、目的を達成したものである。このことは、軽量化もさることながら、複雑な駆動系が必要だった従来の構成を、駆動系の必要のない平面光源に置き換える構成としたところにも、主たる技術的創作があったと認められるものである。したがって、駆動系の必要のない汎用の平面光源であれば、他のものでも、引用発明において、平面光源の代わりに適用し得ることは容易に推察がつき、そのことは引用発明の技術思想の延長線上でもある。

ところで、刊行物2記載の照明装置は、蛍光管を使用したものであり、駆動系を必要とせず、技術常識的にみて、重量的にも、寸法的にも、普通に使用されるサイズの原稿の背面から全体を照射する平面光源としての適性を十分備えており、引用発明における蛍光灯を使用した平面光源に代替し得るものである。当該照明装置が、光源としての蛍光管を中央に備えていることが、この代替を不可能にする要因になるとはいえない。
また、引用発明は、駆動系を必要とせず、しかも一様に照射可能な平面光源を採用することで、小型化又は軽量化を図ったものとみることができ、平面光源自体の簡略化に関する点は、二次的なものである。したがって、たとえ構造的に複雑化する平面光源であっても、一様に照射可能な特性に優れるものならば、引用発明における平面光源と置き換える動機付けを与えるものといえる。刊行物2記載の照明装置は、前掲キ、ス、セの記載からみて、レンズの発光面全体を均一に発光させることを目的としていて、一様に照射可能とすることに貢献する点でも、代替可能性を満たすものである。
すなわち、引用発明における平面光源を、刊行物2記載の照明装置で置き換えようとすることには十分な動機付けが与えられ、その置換えは、当業者が普通に行う創作行為の範囲内で容易に可能である。

したがって、引用発明に刊行物2記載の照明装置を適用することには阻害要因がある旨の審判請求人の主張は、当を得ない。


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(付記)
刊行物1に記載の発明(引用発明)は、キャリッジモジュールが、背景部信号と(対象物の)画像信号とに分離される前の信号を処理するものであり、本願発明の実施例とは一応の相違がある。

しかし、本願発明において、引用発明でいう「背景部信号」に相当するものを扱っているかどうかは定かではないものの、引用発明は、(対象物の)画像信号を含む信号を処理するものである以上、対象物の画像を信号処理するものであることに違いはなく、キャリッジ・モジュールが「対象物の画像を電気信号へと処理する」ものである点について、本願発明と引用発明は相違しない。

また、本願発明の詳細な説明として、実施例が、画像信号は平面光源により照射されて透過型の対象物を走査するものであるとして記載されていても、「光透過型の対象物」を走査する発明は本願請求項7に係る発明であって、本願請求項1に係る発明(本願発明)は、そのように限定されているものではない。
本願請求項1に係る発明(本願発明)において、平面光源による照射が何に寄与するかは発明を特定する構成要件とはなっていない。



第7.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1ないし2に記載された発明、及び、技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-13 
結審通知日 2009-05-15 
審決日 2009-05-28 
出願番号 特願2005-145745(P2005-145745)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮島 潤  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 大野 雅宏
千葉 輝久
発明の名称 スキャナ装置の平面光源  
代理人 有原 幸一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  

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