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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B65D
管理番号 1205072
審判番号 無効2005-80197  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-06-28 
確定日 2009-05-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3681379号「収納袋の排気弁」の特許無効審判事件についてされた平成19年5月21日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において、本件の請求項1に係る発明についての審判請求が成り立たないとした部分を取り消す旨の判決(平成19年(行ケ)第10241号 平成20年5月21日判決言渡)があったので、当該取り消された部分についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 平成21年1月7日付け訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおりに訂正を認める。 特許第3681379号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判の総費用はこれを2分し、その1を被請求人の、その余を請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯及び本審決の対象
1.特許出願:平成15年5月19日(特願2003-140075号)
2.設定登録:平成17年5月27日
3.審判請求:平成17年6月28日(無効2005-80197号)
請求の趣旨:「特許第3681379号の請求項1、2及び3に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」
4.訂正請求:平成17年9月20日
5.一次審決:平成18年7月11日
一次審決の結論:「訂正を認める。特許第3681379号の請求項1,3に係る発明についての特許を無効とする。特許第3681379号の請求項2に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」
6.一次審決に対する被請求人による審決取消訴訟提起:
平成18年8月21日
7.訂正審判請求:平成18年10月4日(訂正2006-39166号)
8.一次審決に対する取消決定:平成18年10月16日
一次審決に対する取消決定の主文:「特許庁が無効2005-80197号事件について平成18年7月11日にした審決のうち,『特許第3681379号の請求項1,3に係る発明についての特許を無効とする。』との部分を取り消す。」
なお、請求人は、一次審決のうちの「特許第3681379号の請求項2に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」とした部分に対し、出訴期間内に審決取消しの訴えを提起しなかったので、一次審決のうちの請求項2に係る発明についての無効審判請求を不成立とした部分が独立して確定した。
9.二次審決:平成19年5月21日
二次審決の結論:「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。」
10.二次審決に対する請求人による審決取消訴訟提起:
平成19年6月30日
11.二次審決に対する取消判決:平成20年5月21日判決言渡
二次審決に対する取消判決の主文:「特許庁が無効2005-80197号事件について平成19年5月21日にした審決中,特許第3681379号の請求項1に係る発明についての審判請求が成り立たないとした部分を取り消す。原告のその余の請求を棄却する。」
なお、二次審決に対する取消判決のうちの「原告のその余の請求を棄却する。」とした部分については、請求人は、上告申立期間内に判決取消しの上告申立をしなかった。このため、二次審決のうち請求項3に係る発明についての無効審判請求を不成立とした部分が、独立して確定した。
12.訂正請求:平成20年7月7日(被請求人)
13.無効理由通知:平成20年12月4日付け(同月8日発送)
14.訂正請求:平成21年1月7日(本件訂正請求)
15.意見書:平成21年1月7日(被請求人)
上記3に記したように本件無効審判は、本件特許の請求項1、2及び3に係る発明についての特許を無効とするとの審決を求めるものであるところ、上記8及び11に記したように、請求項2及び請求項3に係る発明については審判請求が成り立たないことが既に独立して確定している。したがって、本審決の対象は、本件特許の請求項1に係る発明が無効か否かに関する事項、及び本件無効審判においてなされた訂正請求が適法か否かに関する事項である。
第2.請求人主張の概要
無効審判請求書、平成18年3月29日付けの口頭審理陳述要領書(1)、平成18年12月20日付けの弁駁書、平成20年8月20日付けの弁駁書等を総合すると、本件特許の請求項1に係る発明についての特許に対し、請求人が主張する無効理由は、概略、次のとおりである。
「本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、参考資料1ないし4、及び参考資料7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項により特許を受けることができない発明であるから、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。」
第3.無効理由通知の概要
平成20年12月4日付け(同月8日発送)の無効理由通知は、概略、次のとおりである。
「本件特許の請求項1に係る発明は、本件の特許出願前に頒布された刊行物である引例1ないし引例3に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項により特許を受けることができない発明であるから、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。」
【引例及び周知例】
引例1:実公平8-6754号公報
引例2:特表2002-510783号公報
引例3:特開2003-34379号公報
周知例1:実願昭59-193944号(実開昭61-110349号)のマイクロフィルム
周知例2:実願昭54-108679号(実開昭56-26033号)のマイクロフィルム
周知例3:実願昭54-53121号(実開昭55-153030号)のマイクロフィルム
周知例4:特開平10-248726号公報
第4.被請求人主張の概要
答弁書、口頭審理陳述要領書、意見書等を総合すると、被請求人の主張は、概略、次のとおりである。
「本件訂正請求による訂正は適法であり、訂正後の本件特許の請求項1に係る発明は、請求人が提出した証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、無効理由通知に示された引例1ないし引例3に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。」
第5.本件訂正請求の適否についての判断
1.訂正の内容
被請求人が平成21年1月7日請求した本件訂正請求の訂正事項は、特許登録時の明細書の記載を以下のとおりに訂正するというものである(以下本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)。
(1)特許請求の範囲について
a.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1において、「上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、」とあるのを、「上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、該吸気用孔を中心とする蓋体部分の数箇所に蓋体の上下面間に貫通する外気取り入れ口を設けて該外気取り入れ口からの外気の吸入を可能にしており、」と訂正する。
b.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1において、「一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するロック機構」とあるのを、「しかも、上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構」と訂正する。
c.訂正事項c
特許請求の範囲の請求項2において、「ロック機構は、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の収納袋の排気弁。」とあるのを、「収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けており、上記ロック機構は、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする収納袋の排気弁。」と訂正する。
d.訂正事項d
特許請求の範囲の請求項4において、「弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成していることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の収納袋の排気弁。」とあるのを、「収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けており、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成していることを特徴とする収納袋の排気弁。」と訂正する。
e.訂正事項e
特許請求の範囲の請求項5を、「収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に一定角度回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に同角度回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設け、該ロック機構は、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成し、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成していることを特徴とする収納袋の排気弁。」と訂正する。
f.訂正事項f
特許請求の範囲の請求項5?7において、請求項4を二つの請求項に分割したので、項数を繰り下げるべく、「【請求項5】」、「【請求項6】」及び「【請求項7】」とあるのを、「【請求項6】」、「【請求項7】」及び「【請求項8】」と訂正する。
(2)発明の詳細な説明について
g.訂正事項g
特許明細書の段落【0014】において、「上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、」とあるのを、「上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、該吸気用孔を中心とする蓋体部分の数箇所に蓋体の上下面間に貫通する外気取り入れ口を設けて該外気取り入れ口からの外気の吸入を可能にしており、」と訂正する。
h.訂正事項h
特許明細書の段落【0014】において、「一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するロック機構」とあるのを、「しかも、上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構」と訂正する。
i.訂正事項i
特許明細書の段落【0018】において、「請求項4」とあるのを、「請求項4及び5」と訂正する。
j.訂正事項j
特許明細書の段落【0019】において、「請求項5」とあるのを、「請求項6」と訂正する。
k.訂正事項k
特許明細書の段落【0020】において、「請求項6」とあるのを、「請求項7」と訂正する。
l.訂正事項l
特許明細書の段落【0021】において、「請求項7に係る発明においては、上記請求項6に記載の」とあるのを、「請求項8に係る発明においては、上記請求項7に記載の」と訂正する。
m.訂正事項m
特許明細書の段落【0024】において、「一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するように構成したロック機構」とあるのを、「上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するように構成したロック機構」と訂正する。
n.訂正事項n
特許明細書の段落【0063】において、「ロックした状態においていは、」あるのを、「ロックした状態においては、」と訂正する。
o.訂正事項o
特許明細書の段落【0064】において、「請求項4」とあるのを、「請求項4及び5」と訂正する。
p.訂正事項p
特許明細書の段落【0065】において、「請求項5」とあるのを、「請求項6」と訂正する。
q.訂正事項q
特許明細書の段落【0067】において、「請求項6」とあるのを、「請求項7」と訂正する。
r.訂正事項r
特許明細書の段落【0068】において、「請求項7」とあるのを、「請求項8」と訂正する。
(3)本件訂正後の特許請求の範囲
上記訂正事項a?fにより訂正された、本件訂正後の特許請求の範囲は、以下のとおりになる。
「【請求項1】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、該吸気用孔を中心とする蓋体部分の数箇所に蓋体の上下面間に貫通する外気取り入れ口を設けて該外気取り入れ口からの外気の吸入を可能にしており、しかも、上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項2】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けており、
上記ロック機構は、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項3】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設け、該ロック機構は、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項4】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けており、
上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成していることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項5】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に一定角度回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に同角度回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設け、該ロック機構は、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成し、
上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成していることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項6】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記蓋体の上面を吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成していると共に、この上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設してあり、この規制突部と上記吸気用孔との周囲に外気取り入れ口を設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項7】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、基板の下面における排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の空間部を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成していることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項8】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ等の多孔質板を突設していることを特徴とする収納袋の排気弁。」
2.本件訂正についての当審の判断
(1)訂正請求についての判断の基礎となる、訂正前の明細書
ア.本件特許は、特許登録時点において8つの請求項、請求項1ないし請求項8を有するものであるところ、本件無効審判請求は、上記第1.3に記したように、請求項1、2及び3に係る発明についての特許を無効とするとの審決を求めたものであり、請求項4ないし請求項8に係る発明については、特許を無効とすることは請求していない。
その後、上記第1.5及び8に記したように、平成17年9月20日付けの訂正請求(以下、「第一次訂正請求」という。)を認めたうえで、請求項2に係る発明についての審判請求が成り立たないとした一次審決がなされ、請求項2に係る発明についての一次審決部分が独立して確定したので、請求項2に係る発明については、この確定以降、本件無効審判請求の対象ではなくなった。
さらに、上記第1.9及び11に記したように、平成18年10月4日付けの訂正審判請求を援用した訂正請求とみなされた訂正請求(以下、「第二次訂正請求」という。)を認めたうえで、審判請求が成り立たないとした二次審決がなされ、二次審決の取消しを求めた訴訟において、請求項3に係る発明についての訴えが棄却され、この判決が確定したので、請求項3に係る発明についての二次審決が独立して確定した。したがって、この確定以降、請求項3に係る発明についても、本件無効審判請求の対象ではなくなった。
イ.平成18年(行ケ)第10455号判決(平成20年2月12日判決言渡)の第32頁ないし第34頁の(2)に記載された判示事項などに照らせば、特許無効審判の手続において、無効審判請求の対象とされていない請求項について訂正請求がされた場合、当該請求項の訂正についての審決の内容は、審決の送達により効力を生じるものである。また、無効審判請求の対象とされた請求項が複数ある場合、審決は各請求項に係る審決部分毎に確定するものであり、これら請求項について訂正請求がされた場合には、該当する請求項に係る審決部分が確定した時に当該請求項の訂正についての審決の内容も確定するものである。
ウ.特許登録時点の本件請求項2は、請求項1を引用する形式で発明を特定しており、同じく請求項4は請求項3を引用する形式で、請求項5は請求項1と請求項3とを引用する形式で発明を特定しているところ、第一次訂正請求は、請求項1と請求項3についての訂正を含んでいる。このため、第一次訂正請求は、実質的に、請求項2、4、5の訂正をも請求しているものである。そして、請求項4と請求項5は、本件無効審判請求の対象とされていないから、請求項4と請求項5についての訂正は、これら訂正を認めた平成18年7月11日付けの一次審決の送達によって、効力を生じたものである。また、請求項2に係る発明についての審判請求は成り立たないとした一次審決の部分が、上記第1.8に記したように確定したので、この確定により実質的に訂正請求された請求項2の訂正も確定した。
その後、第二次訂正請求がなされたので、特許法第134条の2第4項の規定により、第一次訂正請求のうち確定していない部分(請求項1と請求項3に関する訂正)は、取り下げたものとみなされたが、既に請求項2、4、5の訂正は確定しているので、請求項2、4、5が引用する請求項1と請求項3については、第一次訂正請求で訂正された内容の請求項1と請求項3である。
エ.上記のように、第一次訂正請求のうち請求項2、4、5についての訂正が確定したので、第二次訂正請求による訂正前の明細書(基準明細書)は、第一次訂正請求のうち請求項2、4、5についての訂正がなされた明細書であるところ、この基準明細書の請求項2、4、5は、請求項1又は請求項3を引用する形式で発明を特定している。第二次訂正請求は、請求項1、3及び請求項4ないし請求項8の訂正請求を含んでいるので、請求項1又は請求項3を引用する形式の請求項2及び請求項5は、実質的に、請求項1、3の訂正請求に伴う訂正も請求されたものである。なお、請求項4は、第二次訂正請求によって削除の請求がされた。
平成19年5月21日の二次審決は、第二次訂正請求を認めたので、この時点で本件審判請求の対象となっていない請求項2及び請求項4ないし8についての訂正は、二次審決の送達によって、効力を生じたものである。なお、第二次訂正請求による訂正で請求項4が削除されるとともに、訂正前の請求項5?8の項番が請求項4?7に繰り上げられた。
また、二次審決のうち、請求項3に係る発明についての審判請求は成り立たないとした部分が、上記第1.11に記したように確定したので、この確定により請求項3についての第二次訂正請求による訂正も確定した。
その後、平成20年7月7日付けの訂正請求(以下、「第三次訂正請求」という。)がなされたので、特許法第134条の2第4項の規定により、第二次訂正請求のうち確定していない部分(請求項1に関する訂正)は、取り下げたものとみなされたが、既に請求項2以降の訂正は確定しているので、請求項2、4(第二次訂正後の項番。第二次訂正前の請求項5に当たる。)が引用する請求項1については、第二次訂正請求で訂正された内容の請求項1である。
オ.平成20年12月4日付けで無効理由を通知したところ、平成21年1月7日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされた。この時点まで第三次訂正請求に関する審決はなかったため、第三次訂正請求はその全体が未確定の状況であった。したがって、特許法第134条の2第4項の規定により、第三次訂正請求は全体として取り下げたものとみなされる。このため、本件訂正請求の許否判断をする際の基準明細書は、請求項2以降は第二次訂正請求によって訂正されており、請求項1は特許登録時点のままである明細書である。
(2)訂正の適否の判断
ア.請求項1について
請求項1の訂正事項は、訂正事項aとbである。これらは、いずれも訂正前の請求項1に記載された事項に、新たな技術的限定を付加するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、これら訂正によって付加される事項は、いずれも特許登録時の明細書又は図面に記載されていた事項であり、また、これら訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。したがって、請求項1についての訂正は、適法である。
イ.請求項2について
請求項2の訂正事項は、訂正事項cである。これは、第二次訂正請求による訂正が確定している本件訂正前の請求項2を、独立形式の記載に訂正したものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。この訂正は、第二次訂正請求時の明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。したがって、請求項2についての訂正は、適法である。
ウ.請求項4について
請求項4の訂正事項は、訂正事項dである。これは、第二次訂正請求による訂正が確定している本件訂正前の請求項4が、請求項1と請求3とを択一的に引用する形式で記載されていたところ、請求項1を引用して特定した発明のみとするとともに、独立形式の記載に訂正したものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号の特許請求の範囲の減縮及び同第3号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。この訂正は、第二次訂正請求時の明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。さらに、本件訂正後の請求項4によって特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができない理由も発見しない。したがって、請求項4についての訂正は、適法である。
エ.請求項5について
請求項5の訂正事項は、訂正事項eである。これは、第二次訂正請求による訂正が確定している本件訂正前の請求項4が、請求項1と請求3とを択一的に引用する形式で記載されていたところ、請求項3を引用して特定した発明を分割して新たに請求項5とするとともに、独立形式の記載に訂正し、さらに引用した請求項3によって特定される事項である「一方向に回動」と「他方向に回動」を、それぞれ「一方向に一定角度回動」と「他方向に同角度回動」として、「一定角度」及び「同角度」という技術的限定を付加するものである。したがって、請求項5についての訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号の特許請求の範囲の減縮及び同第3号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。この訂正は、第二次訂正請求時の明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。さらに、本件訂正後の請求項5によって特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができない理由も発見しない。したがって、請求項5についての訂正は、適法である。
オ.請求項6ないし8について
請求項6ないし8の訂正事項は、訂正事項fである。これは、本件訂正前の請求項4が、本件訂正によって、訂正後の請求項4と請求項5に分割されたため、本件訂正前の請求項5ないし7の項番を1つづつ繰り下げて訂正後の請求項6ないし8としたものであり、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。これら訂正は、第二次訂正請求時の明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。したがって、請求項6ないし8についての訂正は、適法である。
カ.発明の詳細な説明について
発明の詳細な説明についての訂正事項は、訂正事項gないしrである。これら訂正は、特許請求の範囲を訂正したことに伴い発明の詳細な説明の欄の記載を整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。これら訂正は、出願当初の明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。したがって、発明の詳細な説明についての訂正は、適法である。
キ.以上のとおり、本件訂正請求によって請求された訂正は、すべて適法であるから、結論に記載したとおり、本件訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおりに訂正を認めることとする。
第6.無効理由についての当審の判断
1.本件発明1(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、本件訂正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの発明(以下「本件発明1」という。)であるところ、請求項1の記載を分説して示せば以下のとおりである。
「A.収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、
B.この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、
C.上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共に
D.この排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、
E.上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、
F.該吸気用孔を中心とする蓋体部分の数箇所に蓋体の上下面間に貫通する外気取り入れ口を設けて該外気取り入れ口からの外気の吸入を可能にしており、しかも、
G.上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けていることを特徴とする
H.収納袋の排気弁。」
2.引例1に記載された発明
無効理由通知で引用した引例1の段落0021?0025、0031?0033、0036?0039や図1?4,7,8の記載からみて、引例1には、次の発明が記載されている。(以下「引用発明」という。請求項1の分説に合わせて分説して示す。)
「a.収納袋Zの一部を内外面から挟着して収納袋Zに装着する基体1と、
b.この基体1に着脱自在に取付けた蓋体2とからなり、
c.上記基体1の中央部に収納袋Zの内外面間に連通する通風口5を設けていると共に
d.この通風口5の上端開口部上に上記収納袋Z内の排気時には上動して該通風口5を解放させ、排気後には下動して通風口5を閉止する弁体3を配設している一方、
e.上記蓋体2の隆起部22の中心を囲むように排気口6を設けていると共に、
g.蓋体2を一方向に回転操作することにより上記弁体3を下方に押圧して通風口5を閉止状態に保持し、蓋体2を他方側に回転操作することにより弁体の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けている
h.収納袋の脱気弁。」
3.本件発明1と引用発明との対比・判断
(1)一致点
本件発明1と引用発明とを比較すると、引用発明の「収納袋Z」、「基体1」、「蓋体2」、「通風口5」、「弁体3」及び「排気孔6」は、その機能からみて、本件発明1の「収納袋」、「弁本体」、「蓋体」、「排気孔」、「弁板」及び「吸気用孔」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は、
「Aa.収納袋の一部を内外面から挟着して収納袋に装着する弁本体と、
Bb.この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、
Cc.上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共に
Dd.この排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、
E’.上記蓋体には吸気用孔を設けていると共に、
G’.水平方向の一方側へ操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、水平方向の他方側へ操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けている
Hh.収納袋の排気弁。」
である点で一致する。
(2)相違点
そして、本件発明1と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
ロック機構の操作部材について、本件発明1では、操作部材が蓋体から端部が突出しているのに対し、引用発明では、蓋体2が操作部材でもある点。(G、gを参照)
<相違点2>
ロック機構の操作手段として、本件発明1では、操作部材を一方側の位置へ移動操作することによって弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するのに対し、引用発明では、蓋体2を一方向に回転操作することにより上記弁体3を下方に押圧して通風孔5を閉止状態に保持し、蓋体2を他方側に回転操作することにより弁体の上下動を許容するものである点。(G、gを参照)
<相違点3>
本件発明1では、蓋体の中央部に吸気用孔を設けているのに対し、引用発明では、排気孔6は隆起部22の中心を囲むように配されている点。(E、eを参照)
<相違点4>
本件発明1では、吸気用孔を中心とする蓋体部分の数箇所に蓋体の上下面間に貫通する外気取り入れ口を設けて該外気取り入れ口からの外気の吸入を可能にしているのに対し、引用発明では、排気孔6の周りに外気取り入れ口が設けられていない点。(Fを参照)
(3)相違点についての検討
ア.相違点1及び2について検討する。
引例2には,操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することにより,弁板を押圧して開放状態に保持し,他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容する技術が開示されているものと認められる。また、蓋体とは別体として設けられ(周知例1,3,4),又は蓋体を兼ねて設けられた(周知例2)操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することにより,弁体を押圧して開放状態(周知例1,4)又は閉止状態(周知例2,3)に保持(固定)し,操作部材を他方側の位置へ移動操作することにより上記保持された状態を解除する技術が周知である。
すると、引用発明の相違点1、2に係る構成を本件発明1の構成とする程度のことは,引例2に開示された技術及び前記の周知技術に基づいて,当業者が容易になし得たものというべきである。
イ.相違点3について検討する。
引例3の段落0030には、「一方、上記可動蓋2は弁本体1と同径で且つ中央部から外周縁に向かって下方に緩やかな凸円弧状に傾斜したドーム形状に形成されてあり、そのドーム形状の上面全面を突起等が存在しない滑らかな面に形成していると共に、中央部に上下面間に亘って貫通した吸気用孔13を設けてあり、この吸気用孔13の下端開口部の下方に上記スプリング受け5の上面を所定間隔を存して臨ませている。」と記載されている。また、図1?5には、可動蓋2の中央に吸気用孔13が設けられていることが図示されている。すると引用発明の相違点3に係る構成を本件発明1の構成とする程度のことは、引例3に開示された技術に基づいて、当業者が容易になし得たものというべきである。
相違点3に関し、被請求人は、平成21年1月7日付けの意見書第2頁9行?21行において、引例1の図6の形態では、蓋体の中央部に「孔」を設けることは可能であるが、ここに「孔」を設けて「吸気用孔」とした場合、弁体3が負圧によって浮き上がって、弁体3の上面が受容部25の下方開口部の周縁37に当接して吸引空気の流れを塞ぐことになる、あるいは、弁体3の上部34の上端面が直接「孔」を塞いで吸引空気の流れを塞ぐことになる。したがって、引例1の図6の形態では、蓋体の中央部に「孔」を設けても「吸気用孔」とすることはできない旨主張している。
しかしながら、引例3に記載されたものでは、吸気用孔13の下方に、吸気用孔13より径の大きいスプリング受け5を備えているところ、吸気用孔13とスプリング受け5とは、上下方向に所定間隔を存して配置されており、スプリング受け5を支える脚片5aは、スプリング受け5の周縁において複数の開口部5bを形成するように、複数の脚片5aが断続して配置されているものである。そして、引例3に記載されたものでは、図5に空気の流れが矢示されているように、開口部5bとスプリング受け5上方の空間が吸気用孔13に通じる空気の通路として機能するものである。
これらを考慮すると、蓋の中央に吸気用孔を設けるという、引例3に開示された技術を引用発明に適用するにあたり、同じく引例3に開示された、吸気用孔に通じる空気の通路を確保するための技術をも適用して、吸気用孔下方に配置されている弁体3の上部34の上端面と吸気用孔との間に所定間隔を設け、受容部25周縁の壁部を周方向に断続して適宜数の開口部を形成するようにすることは、当業者が容易になし得たものというべきである。
したがって、引例1の図6の形態のものでは、蓋体の中央部に「孔」を設けても「吸気用孔」とすることはできない旨の被請求人の主張は、根拠を欠くものであり、採用することができないものである。
ウ.相違点4について検討する。
引例3の段落0031には「…可動蓋2の外周部に、上記弁本体1の上面外周部における数カ所に突設している上記各ガイド突片12に対向させて可動蓋2の中央部を中心とする仮想円上に円弧状孔14、14、14を上下面間に亘って貫通させて設けてあり…」と記載され、段落0040には「…収納袋B内の脱気作業中においては、吸引ノズルDの吸気力は吸排気室3内を通じてこの吸排気室3内に連通している可動蓋2側の円弧状孔14にも作用し、収納袋B内の空気と共に外気が円弧状孔14から吸排気室3、吸気用孔13を通じて吸引ノズルDに吸入され、収納袋内が完全に脱気されたのちにおいては、円弧状孔14からの外気の吸入を続行するので、電気掃除機のモータに殆ど負担をかけることなく、収納袋B内の脱気を行うことができる。」と記載され、段落0051にも段落0040と同様の記載がある。また、図1?5には、可動蓋2の吸気用孔13を中心とする蓋体部分の3箇所に円弧状孔14を設けたものが図示されている。
すると、引用発明の相違点4に係る構成を本件発明1の構成とする程度のことは、引例3に開示された技術に基づいて、当業者が容易になし得たものというべきである。
相違点4に関し、被請求人は、平成20年9月29日付けの答弁書第4頁末行?5頁22行において、(a)引用発明は「蓋体の水平方向での移動操作によって弁の開閉を行う」ものであるが「蓋体の中央部に吸気用孔を設けている」ことを積極的に除外するものであり、また、(b)引例3に記載された発明は「蓋体の中央部に吸気用孔を設けている」ものであるが「蓋体の水平方向での移動操作によって弁の開閉を行う」ことを積極的に除外するものである旨主張し、引用発明と引例3に記載された発明のそれぞれに相手と組み合わせることを阻害する要因があると主張している。
しかしながら、上記イで指摘したように、引用発明において蓋体の中央部に吸気用孔を設けることが可能であることが明らかであるから、被請求人の上記主張(a)は、根拠を欠くものであり、採用することができない。
また、本件発明1が容易に発明できたものであるかを検討する際に相違点4に関して検討すべきことは、引例3に記載された「吸気用孔を中心とする蓋体部分の数箇所に蓋体の上下面間に貫通する外気取り入れ口を設けて該外気取り入れ口からの外気の吸入を可能にしている」構成を引用発明に適用することが容易か否かである。しかしながら、被請求人の上記主張(b)は、引例3に記載された発明に引用発明の構成を適用することに阻害要因があるという主張であって、引例3に記載された発明を引用発明に適用することが容易か否かに関する主張ではないから、採用することができない。
エ.相違点に係る効果について
以上のとおりであるから、引用発明に引例2、3に記載された発明及び周知技術を適用し、相違点1?4に係る構成を本件発明1の構成にすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、引用発明の相違点1?4に係る構成を本件発明1の構成にすることよって奏される効果は、当業者の予測の範囲内のものであって格別顕著なものとはいえない。
したがって、本件発明1は、引例1?3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第7.むすび
以上のとおり、本件発明1は、引例1?3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
別掲 (参考)平成19年5月21日付け審決
無効2005- 80197
和歌山県海南市藤白759番地
請求人 東和産業株式会社
大阪府大阪市北区中之島2丁目2番2号 ニチメンビル 三協国際特許事務所
代理人弁理士 小谷 悦司
大阪府大阪市北区中之島2丁目2番2号 ニチメンビル 三協国際特許事務所
代理人弁理士 樋口 次郎
和歌山県御坊市島584
被請求人 大洋化学株式会社
大阪府大阪市中央区南船場1丁目15番14号 堺筋稲畑ビル2階 藤本昇特許事務所
代理人弁理士 藤本 昇
大阪府大阪市中央区南船場1丁目15番14号 堺筋稲畑ビル2階 藤本昇特許事務所
代理人弁理士 薬丸 誠一
大阪府大阪市中央区南船場1-15-14 堺筋稲畑ビル2階藤本昇特許事務所
代理人弁理士 平井 隆之
上記当事者間の特許第3681379号「収納袋の排気弁」の特許無効審判事件についてされた平成18年7月11日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成18年(行ケ)第10376号 平成18年10月16日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。
結 論
訂正を認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理 由
1.手続の経緯
本件特許第3681379号の請求項1?7に係る発明は、平成15年5月19日に出願され、平成17年5月11日付で特許査定がなされ、平成17年5月27日に設定登録がなされたものである。
本件はこれに対して平成17年6月28日に審判請求人 東和産業 株式会社(以下、「請求人」という。)より、請求項1?3に係る発明について特許無効審判の請求がなされ、その答弁の期間である平成17年9月20日に訂正請求がなされ、双方より口頭審理陳述要領書(第1回及び第2回)が提出され、平成18年4月21日に口頭審理が実施され、平成18年7月11日付けで「特許第3681379号の請求項1、3に係る発明についての特許を無効とする。特許第3681379号の請求項2に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」との審決(一次審決)がなされた。
これに対し、平成18年8月21日に審判被請求人 大洋化学 株式会社(以下、「被請求人」という。)より知的財産高等裁判所に審決の取消しを求める訴訟が提起され(平成18年(行ケ)第10376号)、出訴後90日の期間内の平成18年10月4日付けで本件特許の特許請求の範囲の減縮等を目的とする訂正審判の請求(訂正2006-39166号)がなされたところ、当該裁判所は、平成18年10月16日付けで、特許法第181条第2項を適用して審決を取り消す決定をし、同決定は確定した。
その後、特許法第134条の3第5項の規定により、上記訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書、特許請求の範囲を同条第3項の規定により援用して、特許法第134条の2第1項に規定された本件無効審判の上記訂正請求がされたものとみなされ(以下、「本件訂正」という。)、訂正審判は取り下げられたものとみなされることになった。
これに対して、請求人より平成18年10月26日付けで弁駁書が提出された。
2.本件訂正
本件訂正は、以下のとおりのものである。
2-1.特許請求の範囲について
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1において、「一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するロック機構」とあるのを、「上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構」と訂正する。
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項3において、「ロック機構を設けている」とあるのを、「ロック機構を設け、該ロック機構は、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成した」と訂正する。
訂正事項c
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
訂正事項d
特許請求の範囲の請求項1?8において、請求項4を削除したので、項数を繰り上げるべく、「請求項5」、「請求項6」、「請求項7」及び「請求項8」とあるのを、「請求項4」、「請求項5」、「請求項6」及び「請求項7」と訂正する。
2-2.発明の詳細な説明について
訂正事項e
特許明細書の段落【0014】において、「一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するロック機構」とあるのを、「上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構」と訂正する。
訂正事項f
特許明細書の段落【0017】において、「このように構成した収納袋の排気弁において、請求項4に係る発明は、上記ロック機構の構造として、」とあるのを、「このように構成した収納袋の排気弁において、上記ロック機構の構造として、」と訂正する。
訂正事項g
特許明細書の段落【0018】において、「請求項5」とあるのを、「請求項4」と訂正する。
訂正事項h
特許明細書の段落【0019】において、「請求項6」とあるのを、「請求項5」と訂正する。
訂正事項i
特許明細書の段落【0020】において、「請求項7」とあるのを、「請求項6」と訂正する。
訂正事項j
特許明細書の段落【0021】において、「請求項8に係る発明においては、上記請求項7の記載の」とあるのを、「請求項7に係る発明においては、上記請求項6の記載の」と訂正する。
訂正事項k
特許明細書の段落【0024】において、「一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するように構成したロック機構」とあるのを、「上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するように構成したロック機構」と訂正する。
訂正事項l
特許明細書の段落【0063】において、「請求項3に記載の収納袋の排気弁において、請求項4に係る発明は、上記ロック機構の構造として、」とあるのを、「請求項3に記載の収納袋の排気弁において、上記ロック機構の構造として、」と訂正する。
訂正事項m
特許明細書の段落【0064】において、「請求項5」とあるのを、「請求項4」と訂正する。
訂正事項n
特許明細書の段落【0065】において、「請求項6」とあるのを、「請求項5」と訂正する。
訂正事項o
特許明細書の段落【0067】において、「請求項7」とあるのを、「請求項6」と訂正する。
訂正事項p
特許明細書の段落【0068】において、「請求項9」とあるのを、「請求項7」と訂正する。
3.訂正の適否
3-1.訂正に係る無効審判請求人の主張概要
訂正後の請求項1に係る発明についての特許は、依然として無効とされるべき旨主張しているが、本件訂正の適否については、格別の主張はなされていない。
3-2.訂正に係る無効審判被請求人の主張概要
各訂正事項について、訂正事項a?cは特許請求の範囲の減縮を目的とし、訂正事項d?pは明りょうでない記載の釈明を目的とするものと主張している。
3-3.本件訂正についての当審の判断
3-3-1.訂正の目的、新規事項の有無
訂正事項aについて
訂正前の特許請求の範囲の請求項1には、「一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するロック機構」が発明の構成として記載されている。
また、特許明細書の段落番号【0057】に「蓋体2に棒状の操作部材10aを水平方向に往復動自在に貫通、支持させている」、段落番号【0058】に「蓋体2から突設している操作部材10aの両端部を摘んで該操作部材10aを水平方向に往動させ、?操作部材10aを水平方向に復動操作することより、」、及び図6、図7の図示内容からみて上記構成は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「原明細書等」という。)に記載された事項といえる。
したがって、訂正事項aは、特許請求の範囲に記載された構成を、同構成に係る技術的事項として原明細書等に記載した事項の範囲内で限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項bについて
訂正前の特許請求の範囲の請求項3には、「ロック機構を設けている」とロック機構をその構成として記載しており、特許明細書中の請求項4の記載に「ロック機構は、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したこと」と記載されている。
そして、訂正事項bは、特許請求の範囲に記載された構成を同構成に係る技術的事項として原明細書等に記載された事項により限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、原明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項cについて
訂正事項cは、特許請求の範囲の請求項4を削除するものであるから、当然特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項d?pについて
訂正事項d?pは、特許請求の範囲を訂正したことに伴い、他の請求項の記載及び発明の詳細な説明欄の記載を整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項d?pが、原明細書等に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
3-3-2.独立特許要件について
無効審判が請求されていない請求項4は、請求項1又は請求項3の記載を引用して特定されているため、それら請求項に係る発明は、訂正事項a,bにより、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がなされることとなるので、訂正後の請求項4に係る発明がその出願の際、独立して特許を受けるものであるか、以下検討する。
請求項4に係る発明は、「弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成していること」をその構成の一部とするものである。
そして、上記構成は、請求人が提出したいずれの証拠にも記載されておらず、しかも当該構成を有することにより、請求項4に係る発明特有の効果を奏するものである。
したがって、請求項4に係る発明が、その出願の際、独立して特許を受けることができないとする事実を発見しない。
3-4.むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
4.請求人の主張及び証拠
本件に係る出願の願書の最初に添付された明細書及び図面の記載を立証するために、
甲第3号証:平成15年5月19日提出の特許願及び明細書
を提出し、平成17年2月10日付け手続補正により補正された本件請求項1?3の記載を立証するために、
甲第4号証:平成17年2月10日提出の手続補正書
を提出し、本件請求項1及び2の記載に係る補正は、以下の理由1に述べるとおり、所謂新規事項を追加するものであるとし、しかも、請求項1及び2の記載は、理由2に述べるように記載が不備であるとしている。そして、
甲第5号証:平成17年4月4日提出の手続補正書
を提出して、本件特許明細書の記載を立証するとともに、上述の新規事項の追加、及び、記載の不備は解消されていないと主張している。
また、甲第1号証、甲第2号証及び参考資料1?4を提出し、本件請求項1及び2に係る発明は、当業者が容易に発明できたものであり、本件請求項3に係る発明は、実質的に甲第1号証に記載されている発明であると主張している。
4-1.[理由1]特許法第17条の2第3項について
平成17年2月10日付け手続補正による補正後の請求項1は、補正前の請求項3に対応するものであって、補正前の請求項3のロック機構に係る記載中「水平方向の往動操作」及び「復動操作」が、補正後の請求項1では、「一方側の位置への移動操作」及び「他方側の位置への移動操作」と補正され、しかも補正により「水平方向」が削除されている。
したがって、この補正により、願書に最初に添付された明細書及び図面に記載されていない上下方向などを含む方向にその方向が拡張されているから、請求項1に係る同補正は新規事項を追加するものである旨主張している。
また、請求項2について、補正前の請求項4の「往復移動自在」という記載を「一方側と他方側との位置間を移動自在」と補正しているが、これも、同様に補正前の請求項4を拡張するものであり、その拡張した事項は出願当初の明細書に記載されていないから、請求項2に係る同補正は新規事項を追加するものである旨主張している。
そして、訂正によっても、上記新規事項が追加された事実は、解消していない旨主張している。
4-2.[理由2]特許法第36条第6項第2号について
甲第4号証によれば、本件請求項1には、ロック機構に係る記載として、「【請求項1】・・一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するロック機構・・」と記載され、「一方側」と「他方側」及び「一方側の位置」並びに「他方側の位置」については、上下方向なども含むものであるが、上下方向などを含むものについては明細書中に記載がなく、発明の外延が不明確であるから、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない旨主張するとともに、訂正後の請求項1の記載も、発明の外延が不明確であることには変わりなく、上記記載の不備が解消されたものではない旨主張している。
さらに、請求人は、本件に係る出願の出願前に頒布された刊行物に記載された発明を立証するために、
甲第1号証:実公平8-6754号公報
甲第2号証:特表2002-510783号公報
を提出し、本件出願時に、(1)操作部材が蓋体と別体である点、(2)弁板のロックとロック解除の操作が操作部材の水平方向の切り替え操作である点、の2点が周知であることを立証するために、後日
参考資料1:実願昭59-193944号(実開昭61-110349号)のマイクロフィルム
参考資料2:実願昭54-108679号(実開昭56-26033号)のマイクロフィルム
参考資料3:実願昭54-53121号(実開昭55-153030号)のマイクロフィルム
を提出し、(3)蓋体から両端部が突出した操作部材が周知であることを立証するために、さらに後日
参考資料4:特開平10-248726号公報
を提出して以下の主張をなしている。
4-3.[理由3]特許法第29条第2項について
甲第2号証のバルブ構造におけるナット67とバルブベース71との螺合によるロック機構を、甲第1号証の脱気弁における蓋体2と基体1との螺合によるロック機構に置き換えることは容易であるから、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができるものである。
また、訂正請求によって、蓋体から両端部が突出する操作部材を有する点、及びこの操作部材を水平方向の一方側の位置と他方側の位置に移動操作することにより弁板を押圧して排気孔を閉止する状態と弁板の上下動を許容する状態とに変更できるようにした点を限定しているが、操作部材の両端部が蓋体から突出しているものは参考資料4に、それ以外の部分は参考資料1?3に示されるように、本願出願前に周知である。
そして、甲第1号証に記載されている収納袋用脱気弁の構造と、参考資料1?4に示されている技術とは、袋ないし容器から流体を排出させる孔(開口部)を開閉する弁部材と、この弁部材を外部からの操作で上下動させて、孔(開口部)を閉止するロック状態とロック解除状態とに切り替えることができる機構を備えているという点で基本的構成が共通するため、甲第1号証に記載されている収納袋用脱気弁において、蓋体を回動操作することに替えて、参考資料1?4に示される、周知技術を適用することに進歩性はない。
したがって、訂正前の請求項1に係る発明及び訂正後の請求項1に係る発明はいずれも特許法第29条第2項により特許を受けることができないものである。
4-4.[理由4]特許法第29条第1項第3号について
甲第1号証の脱気弁は、蓋体2の締め付け方向への回動操作によって上記弁体3を下方に押圧して通風孔5を閉止状態に保持し、蓋体2の緩み方向への回動操作によって、弁体3の上下動を許容する螺刻部11及び21を備える。これら螺刻部11及び21は、本件の請求項3に係る発明におけるロック機構に相当し、このロック機構が蓋体2の下面側に設けられているから、甲第1号証のロック機構は本件の訂正前の請求項3に係る発明のロック機構と同一の構成である。
したがって、本件の訂正前の請求項3に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明であるから、特許を受けることができないものである。
なお、請求項3に係る発明は甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得る、という請求人が陳述要領書(1)に記載した主張は口頭審理において撤回されている。
5.被請求人の主張及び根拠
被請求人は、本件訂正請求を行い、同訂正請求が認められることを前提として、請求人の主張に対して以下のとおり反論し、請求人の主張はいずれも失当である旨主張している。
5-1.[理由1]特許法第17条の2第3項について
「往復」とは、広辞苑にも掲載されるとおり、「行ってまた戻ること。行きと帰り。」という意義を有する用語であり、「行き」とは、出発の地から目的の地への移動を意味することから、「一方側の位置への移動」を観念でき、「帰り」とは行きの反対であって、目的の地から出発の地への移動を意味することから、「他方側の位置への移動」を観念でき、「一方側の位置への移動」及び「他方側の位置への移動」は、「往復」という記載から自明な事項である。一般に、所定の動作を繰り返し行うように構成されたものにあっては、動作の経路が一巡するといった特殊な場合を除いて、必ず始点と終点とを有するものであり、この場合には、当然に係る始点又は終点がそれぞれ一方又は他方の位置となる。この点、当初明細書においては、蓋体若しくは操作部材が二つの姿勢間で切り替わることが明確に記載されていることから、一方の位置及び他方の位置がどの位置であるかについても、当初明細書中に記載されているに等しい。
また、当初明細書には、「往復移動自在に操作部材を支持」なる記載があり、「移動」という文言が明確に記載されている。しかも、実際に操作部材の操作に供される部位は、蓋体から突出している操作部材の両端部であり、当初明細書には、「蓋体から突出している操作部材の両端部が『往復移動』すること」が明記されている。
したがって、「蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作すること」及び「上記操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作すること」は、当初明細書に記載されているに等しい自明な事項である。
訂正後の請求項1に係る発明の技術思想は、蓋体とは別に操作部材を設け、その操作部材を操作することによって弁板のロック/ロック解除操作を行うために、明細書中に具体例として「往復動操作される操作部材の駆動力を弁板の上下動方向に変換して伝達する機構を採用した排気弁」を採用した排気弁を開示しており、「直線運動間の駆動力伝達機構」及び「回転運動から直線運動への駆動力伝達機構」は、機構学において動力伝達手段として同等に取り扱われているものであり、これらの機構がいずれの部材に対しても適用されるものであることは当初明細書の記載から明らかである。
そして、上述のように、当初明細書には、操作部材を二つの姿勢に切り替えるという技術思想が開示されている。係る技術思想に基づいて、蓋体から突出する操作部材の両端部に着目すれば、両端部が二つの姿勢間で移動するという技術思想が開示されていることは自明である。
5-2.[理由2]特許法第36条第6項第2号について
請求人の主張する記載不備は、訂正によりここで論ずるまでもなくもはや該当しないものとなっている。
5-3.[理由3]特許法第29条第2項について
5-3-1.本件訂正後の請求項1に係る発明と、甲第1号証に記載された発明との対比
本件訂正後の請求項1に係る発明は、蓋体とは別に設けられる操作部材を操作して弁板のロック/ロック解除操作を行うものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、蓋体そのものを操作して弁板のロック/ロック解除操作を行うものである点で相違する。また、訂正後の請求項1に係る発明では、弁板のロック/ロック解除操作が二つの姿勢間での切り替え操作であるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、弁板のロック/ロック解除操作が締め付け方向若しくは緩み方向への数回転の回動操作である点で相違する。
本件訂正後の請求項1に係る発明は、「収納袋の排気弁に外力が作用したとしても、操作部材にはその外力の作用が及びにくくなっているため、不測に弁板の押圧が解除されることがなく、閉止状態(弁板のロック状態)を確実に保持することができる。」、「弁板がロック状態であるのか若しくはロック解除状態であるのかを一見して把握することができる。」、「操作量が小さくて済み、蓋体そのものを操作しなくてよいことと併せて、作業量が少なく抑えられる。」という効果を奏するが、甲第1号証に記載された発明は、そのような効果を奏さない。
よって、本件訂正後の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明とは明らかな構成の差異を有し且つ顕著な効果を有するものである。
5-3-2.本件訂正後の請求項1に係る発明と甲第2号証に記載された発明との対比
本件訂正後の請求項1に係る発明は、弁板が上動して排気孔を開放し、下動して閉止するものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明は、バルブアクチュエータ61及びバルブメンバー62が下動して開口72を開放し、上動して開放するものである点で相違し、開閉の方向性が正反対である。また、本件訂正後の請求項1に係る発明は、弁閉状態にロックするものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明は、バルブを弁開状態にロックするものである点で相違し、ロックされる状態が正反対である。さらに、訂正後の請求項1に係る発明は、蓋体とは別に設けられる操作部材を操作して弁板のロック/ロック解除操作するものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明は、蓋体に相当するナット67を操作して弁板のロック/ロック解除操作するものである点で相違する。なお、甲第1号証に記載された発明は、本件訂正後の請求項1に係る発明にはない「バルブアクチュエータ61を上方から押し下げ操作することにより、バルブメンバー62を直接上下動させる」構成を有する点で訂正後の請求項1に係る発明と相違する。
よって、本件訂正後の請求項1に係る発明は甲第2号証に記載された発明とは明らかな構成の差異を有し且つ奏される効果も全く異質なものである。
5-3-3.甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明との組み合わせ
甲第1号証に記載された発明は、「掃除機による吸引完了後の空気の逆流をより簡単な操作で確実に防止する」という課題を有するものである。一方、甲第2号証に記載された発明は、内部に収容される弾性体の圧縮-非圧縮状態の変化を利用して膨張収縮させる自己膨張型のクッションに関するものであることから、「バルブの開放状態を好適に実現して空気の出し入れを容易とすること」を本質的な課題として有するものであり、両発明は、全く異なる課題を有するものである。さらに、甲第1号証に記載された発明は、弁閉状態を確実に維持するためにロックするものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明は、弁開状態を確実に維持するためにロックするものであり、目的や作用・機能が全く相反する。したがって、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号に記載された発明を結び付けたり一方を他方に適用することは物理的に困難であり、適用阻害要因が存在する。
また、請求人は、甲第1号証に記載された発明における蓋体2及び基体1を、甲第2号証に記載された発明のナット67及びバルブベース71によって置換すれば、本件請求項1に係る発明と同じになると主張しているが、請求項1に係る発明は、二つの構成(蓋体及び弁本体)だけでなく、訂正により加えられた操作部材を含む三つの部材を構成として有するものとなっており、請求人の上記主張の如く二つの構成同士を置換するのみでは、三つの構成を有する訂正後の請求項1に係る発明に至るとすることはできない。
5-3-4.甲第1号証に記載された発明と参考文献1?3に示されている技術との組み合わせ
参考文献1?3に開示された技術(以下、「参考技術」という)は、ポットやまほうびんの栓に関するものであり、甲第1号証に記載された発明との技術分野の関連性が全くなく、また、甲第1号証に記載された発明と参考技術との間に課題の共通性も一切ない。
甲第1号証に記載された発明や訂正後の請求項1に係る発明の属する技術分野における当業者が、技術分野の全く異なる、参考技術の属する技術分野(ポットやまほうびん業界)における技術を転用しようとする動機付けはなく、甲第1号証に記載された発明及び参考技術を結び付けたり一方を他方に適用することが当業者にとって全く想定されない。
さらに、「弁板のロック/ロック解除操作を行うための操作部材が蓋体とは別にして設けられており、しかも、操作部材は、突出する両端部を除いて蓋体の下面側に設けられているため、複数の収納袋が収納や移送の際に積み重ねられたり上に物を置かれたりして収納袋の排気弁に外力が作用したとしても、操作部材にはその外力の作用が及びにくくなっている。したがって、不測に弁板の押圧が解除されにくく、閉止状態(弁板のロック状態)を確実に保持することができる。」という訂正後の請求項1に係る発明の奏する効果については、甲第1号証に記載された発明、参考技術には一切内在しない。参考技術において、複数のポットやまほうびんが積み重ねられたり上に物を置かれたりするといったシチュエーションが起こり得るはずもない。
さらに、請求人は、参考技術が周知であるとまで断定するが、本件訂正後の請求項1に係る発明の「操作部材を蓋体の下面側に設け、操作部材の端部を蓋体から突出させる」構成は、参考文献1に開示されるのみである。
以上のように、本件訂正後の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び参考技術1?3の組み合わせによって想到できるものではなく、進歩性を有するのは明らかである。
5-4.[理由4]特許法第29条第1項第3号について
本件訂正後の請求項3に係る発明は、訂正前の請求項3に、一次審決において独立特許要件を満たすとされた訂正前の請求項4に係る発明特定事項を取り込んだものであり、本件訂正後の請求項3に係る発明は、進歩性を有することは明らかである。
6.無効理由についての当審の判断
6-1.[理由1]特許法第17条の2について
本件特許明細書の請求項1及び2には、請求人が主張するとおり、ロック機構に係る移動操作に係る記載として、「水平方向の一方側の位置へ移動操作」、「水平方向の他方側の位置へ移動操作」及び「水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在」と記載され、且つ、願書に最初に添付された明細書(以下、「当初明細書」という。)には、前記「水平方向の一方側の位置へ移動操作」、「水平方向の他方側の位置へ移動操作」及び「水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在」なる用語自体は記載されていない。
6-1-1.審査段階における「水平方向」の記載の削除について
(a)訂正後の特許請求の範囲には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
・・上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けている・・
【請求項2】
ロック機構は、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持する・・」
(b)審査段階において「水平方向」を削除した補正は、例えそれが新規事項の追加に該当するものであるとしても、本件訂正請求により、移動が「水平方向」であることは記載されたので、もはや解消されている。
したがって、「水平方向」の削除が新規事項の追加に該当するか否かを判断するまでもなく、前記「水平方向」が削除されたことを前提とする部分の請求人の主張は採用できない。
(c)よって、「一方側の位置への移動操作」、「他方側の位置への移動操作」及び「一方側と他方側との位置間を移動自在」なる記載に補正したことが、当初明細書に記載された事項の範囲内でなされた補正であるか否か、以下に検討する。
6-1-2.「一方側の位置への移動操作」、「他方側の位置への移動操作」及び「一方側と他方側との位置間を移動自在」なる記載について
(a)本件請求項1における「一方側の位置への移動操作」、「他方側の位置への移動操作」なる事項に対応する記載として、当初明細書には、「往動操作」及び「復動操作」なる記載が認められ、同じく「一方側と他方側との位置間を移動自在」なる事項に対応する記載として、「往復移動自在」という記載が認められる。
(b)例えば広辞苑に記載されているとおり、「往復移動」とは一般に「行ってまた戻ること」を意味するものであり、「また戻ること」とは元の場所に戻ることである。本件において、当初明細書及び図面、補正後の明細書及び図面を詳細に対比しても、別異の意味を表すものと解すべき特段の理由は見当たらない。
そして、本件請求項1における「往動操作」は、元の位置に対応する位置から他の位置に行く操作を意味するものであり、同じく「復動操作」は、前記元の位置に戻る操作を意味するものである。
したがって、往復移動は、二つの位置に関して行くという移動と戻るという移動を意味するものである。
(c)また、二つの位置の一つについて「一方」なる形容をすることは、その形容に起因して直接的に新たな技術概念を付加するものではなく、同形容に応じて残余の位置を「他方」なる形容をすることも、直接的に新たな技術概念を付加するものではない。
(d)よって、「一方側の位置への移動操作」、「他方側の位置への移動操作」及び「一方側と他方側との位置間を移動自在」なる事項を記載する補正が、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないとする請求人の主張は採用しない。
(e)なお、請求人は、「一方側の位置への移動操作」及び「他方側の位置への移動操作」に補正したことが新規事項の追加に該当する論拠として、ロック機構が水平方向に直線的に往復動するものに限定されていたものが、水平方向の回動など他の態様の往復動するロック機構をも含むことになったため、ロック機構の範囲が拡張されていると主張している。
しかしながら、前記6-1-2(a)?(d)に記載したとおり、「一方側の位置への移動操作」及び「他方側の位置への移動操作」が当初明細書に記載されていたものであるから、「一方側の位置への移動操作」及び「他方側の位置への移動操作」なる記載を挙げて、新たに往復回動などを包含したとする請求人の主張は採用できない。
以上説示したように、請求項1及び2に係る発明が、特許法第17条の2第3項の要件を満たさないものとすることはできない。
6-2.[理由2]特許法第36条第6項第2号について
6-2-1.
本件特許明細書の請求項1には、請求人が発明が不明確と主張するロック機構に関する記載として、「一方側の位置への移動操作」及び「他方側の位置への移動操作」と記載され、請求項2には、「一方側と他方側との位置間を移動」と記載されている。
そして、訂正後の請求項1及び2にも、それらは記載されており、以下に検討する。
6-2-2.
ロック機構については、請求項1には、「・・上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けている・・」と移動操作部材が「蓋体から両端部が突出している」と明確に記載されている。
また、請求項2の「一方側と他方側との位置間を移動」については、移動する部材が操作部材であることが明確に記載されているとともに、「蓋体に・・・・・を支持すると」その配置も明確に記載されている。
6-2-3.
請求項1の記載は、「一方側の位置」、「他方側の位置」及び「一方側と他方側との位置」がより具体的位置として特定されてはいないが、「一方側」及び「他方側」の記載により各位置が別異の位置であることは明らかであるから、不明確な記載とはいえない。
さらに、それらの位置がより具体的な特定位置にあることを特定することにより、初めて請求項1に記載されたものが技術的意義を有するという記載は見当たらない。
なお、訂正された明細書には、「一方側の位置への移動操作」、「他方側の位置への移動操作」及び「一方側と他方側との位置間を移動」により、所期の目的を達成するものが、例えば図6,7に示される例をもって、発明の詳細な説明の欄中に記載されている。
6-2-4.
同様に請求項1がロック機構を備えていることが明らかに記載されているから、ロック機構そのものの具体的構成を記載しなければ、請求項1が不明確とする理由もない。ロック機構の具体的構成を記載しなければ、発明の外縁が不明確とする請求人の主張は失当である。
してみれば、特許請求の範囲の請求項1の記載を不備とする理由はない。
6-3.[理由3]特許法第29条第2項、及び[理由4]特許法第29条第1項第3号について
6-3-1.本件発明
上記本件訂正が認められ、前記「[理由2]について」に述べたとおり、その記載に不備の認められない本件明細書の記載からみて、本件特許の請求項1?3に係る発明(以下、「本件発明1?3」という。)は、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりの事項により特定されるものである。
【請求項1】
収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項2】
ロック機構は、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の収納袋の排気弁。
【請求項3】
収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設け、該ロック機構は、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする収納袋の排気弁。
6-3-2.証拠の記載事項
<甲第1号証>
甲第1号証には、次に示す記載事項a?cが記載されている。
記載事項a
「・・・この筒状部13の内部は、隔壁4の上面から底面へ貫通する通風口5となっているのである。・・・収納袋Zの外部より基体1の上面に螺合部10を囲むように環状部材14を装着して・・・上記蓋体2は、上述の通り、螺合部10の螺刻部11と螺合する螺刻部21が内周面に設けられたキャップである。・・・図4へ示す通りこの排気孔6は、隆起部22の中心を囲むように配されている。貫通孔23は、蓋体2が基体1へ螺合した状態において、前述の通風口5の真上に位置する。」(段落0021?0025)
記載事項b
「先ず蓋体2は、基体1に対して緩められた状態にあり・・・掃除機から受ける負圧によって、弁体3は、上方に吸い寄せられ、通風口5を開放する。・・・脱気終了後・・・脱気された収納袋Z内部の負圧及び必要に応じ発条33によって、弁体3は下に引き寄せられ、通風口5を塞ぐ。・・・不必要であれば、この発条33は設けなくてもよい。他方、通常上述の脱気された収納袋Z内部の負圧によって充分に弁体3の吸い寄せがなされる・・・掃除機の吸引口Wを蓋体2の対応部20より外した後、蓋体2を回して、基体1への締め付けを完了する(図3)。この状態において、弁体3は、蓋体2の裏面に押さえられ、通風口5の完全な遮断がなされる。」(段落0031?0033)
記載事項c
「図7へ、蓋体2を基体1から緩めた際に、この蓋体2が脱落しないため該構成について、説明する。・・・以上のように、規制部7等を設けることによって、基体1から蓋体2を緩めた際、蓋体2が、基体1より外れず、便利である。」(段落0036?0039)
したがって、記載事項a?c及び図1?4,7,8からみて、甲第1号証には、
「収納袋Zの一部を内外面から挟着して収納袋Zに装着する基体1と、この基体1に着脱自在に取付けた蓋体2とからなり、上記基体1の中央部に収納袋Zの内外面間に連通する通風口5を設けていると共にこの通風口5の上端開口部上に上記収納袋Z内の排気時には上動して該通風口5を解放させ、排気後には下動して通風口5を閉止する弁体3を配設している一方、上記蓋体2の隆起部22の中心を囲むように排気口6を設けていると共に、蓋体2を一方向に数回転回転操作することにより上記弁体3を下方に押圧して通風口5を閉止状態に保持し、蓋体2を他方側に数回転回転操作することにより弁体の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けている収納袋の脱気弁」が記載されている。
また、(1)甲第1号証(段落0036?0039)において、図7,8の構成を設けることにより、「蓋体2を基体1から緩めた際に、この蓋体2が脱落しないため」との記載から、該構成を設けない実施例である図2,3においては、蓋体2が基体1から外れるものであるから、蓋体2は基体1に着脱自在に取付けられているものと認めた。
(2)甲第1号証(段落0031?0033)において、「掃除機の吸引口Wを蓋体2の対応部20より外した後、蓋体2を回して、基体1への締め付けを完了する(図3)。この状態において、弁体3は、蓋体2の裏面に押さえられ、通風口5の完全な遮断がなされる。」との記載から、この機構がロック機構であるものと認めた。
<甲第2号証>
甲第2号証には、次の記載がある。
記載事項d
「・・・バルブ60はバルブアクチュエータ61と、バルブメンバー62と、バルブシート63と、バルブシート63の上面の溝65に据え付けられたOリング64とを含んでなる。・・・図7に示すように、スプリング66は、バルブメンバー62が閉じた状態に偏らせる。バルブアクチュエータ61を押し下げると、バルブメンバー62はバルブシート63から動き、クッション内の空気圧力の調整のために空気が出入りすることを許容する。」(段落0022)
記載事項e
「バブル60の全開状態への、および全開状態からの動作は(図8参照)、バルブベース71の直立するチューブ状部の外面のネジ山69の下面に位置し、内側に向けられた面68にかみ合わせられるネジ山を有する回転式のナット67によってなされる。」(段落0023)
記載事項f
「ナット67の半時計周りの回転は、ネジ山を面68にかみ合わせてネジ山69に半回転捻ってねじ込むようにし、バルブアクチュエータ61のフランジ73のナット67との噛み合いは、バルブアクチュエータ61およびバルブメンバー62を下向きに押しつけ、図8に示すようにバルブを開く。」(段落0024)
上記の記載事項d?f及びFig.6?8からみて、甲第2号証には、「クッションに装着されたバルブベース71と、上記バルブベース71の中央部にクッションの内外面間に連通する穴を設けていると共に、前記穴を閉じた状態と開いた状態にするバルブメンバー62を配設し、ナット67を一方側の位置へ移動操作することによってスプリング66に抗して前記バルブメンバー62を開いた状態に保持し、上記ナット67を他方側の位置へ移動操作することによってバルブメンバーの上下動を許容する機構を設けているバルブ。」が記載されている。
6-3-3.[理由3]についての対比・判断
甲第1号証に記載された発明と、本件発明1とを比較すると、甲第1号証に記載された発明の「収納袋Z」、「基体1」、「蓋体2」、「通風口5」、「弁体3」及び「排気孔6」は、その機能からみて、本件発明1の「収納袋」、「弁本体」、「蓋体」、「排気孔」、「弁板」及び「吸気用孔」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は、
「収納袋の一部を内外面から挟着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体には吸気用孔を設けていると共に、水平方向の一方側へ操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、水平方向の他方側へ操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けている収納袋の排気弁。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
ロック機構の操作部材について、本件発明1では、操作部材が蓋体から両端部が突出しているのに対し、甲第1号証に記載された発明では、蓋体2が操作部材でもある点。
<相違点2>
ロック機構の操作手段として、本件発明1では、操作部材を一方側の位置へ移動操作することによって弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するのに対し、甲第1号証に記載された発明では、蓋体2を一方向に数回転回転操作することにより上記弁体3を下方に押圧して通風孔5を閉止状態に保持し、蓋体2を他方側に数回転回転操作することにより弁体の上下動を許容するものである点。
<相違点3>
本件発明1では、蓋体の中央部に吸気用孔を設けているのに対し、甲第1号証に記載された発明では、排気孔6は隆起部22の中心を囲むように配されている点。
上記相違点1及び2について検討する。
(a)本件発明1における、相違点1及び2に係る構成の技術的意義は、訂正後の明細書及び図面を参酌すると、次のように解することができる。
<脱気時の操作>
収納袋を掃除機により脱気後、蓋体から両端部が突出するロック機構を一方側の位置に移動操作することにより、収納袋の排気弁の弁板を下方に押圧して閉止状態にロックし、この状態を保持することができる。
<外気導入時の操作>
収納袋に外気を導入する際は、蓋体から両端部が突出するロック機構を他方側の位置に移動操作することにより、収納袋の排気弁の弁板の閉止状態のロックを解除することができる。
これに対して、甲第1号証に記載された発明においては、
<脱気時の操作>
収納袋を掃除機により脱気後、蓋体を一方側の位置に数回転も回転操作することにより、収納袋の排気弁の弁板を下方に押圧して閉止状態にロックし、この状態を保持することができる。
<外気導入時の操作>
収納袋に外気を導入する際は、蓋体を他方側の位置に数回転も回転操作することにより、収納袋の排気弁の弁板の閉止状態へのりロックを解除することができる。
したがって、本件発明1は、上述のように、収納袋の排気弁の弁板をロック及びロック解除するに当たり、甲第1号証に記載された発明とは、当該弁体のロック機構はもとより、操作性においても大きく異なるものである。
(b)そして、ロック機構の操作部材が蓋体から両端部が突出しているものは、甲第2号証には記載されていなく、参考資料1?4にも記載されていない。
参考資料1?4は、ポットの栓体に設けられた弁体を操作部材で開閉操作するものであり、そもそも弁体のロック機構ではなく、参考資料4の操作手段は蓋体から操作部材の両端部が突出しているものの、収納袋の排気弁とは技術分野、技術的課題が全く異なるものであり、甲第1号証に記載された発明にこれら参考資料1?4に記載された技術を適用することを動議付ける技術的関連性を何ら見出せない。
(c)また、甲第2号証のロック機構の操作手段は、操作部材を他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するものではあるが、スプリングに抗して排気孔を開状態に保持するものであり、閉止状態に保持するものではない。
甲第2号証の発明及び参考資料1?4の弁体の開閉手段には、その操作機構からみて、スプリングを使用することが必須であり、本件の課題では、段落0008「また、収納袋内を脱気する際に、電気掃除機の吸気ノズルを可動蓋上に押し付けてスプリング力に抗して弁板を開放させた状態を保持しておかねばならないために、操作が煩雑化して使用勝手が悪くなるばかりでなく、スプリングは金属材料で形成されているために、錆が発生して円滑な作動が行えなくなる事態が発生する虞れがある。」と記載されており、本件発明1はスプリングを使用しないことをその技術的課題としていることは明らかであるから、甲第1号証に記載された発明と組み合わせて本件発明1とすることはできないことは明らかである。
(d)さらに、参考資料4の操作手段は、操作部材を一方側の位置へ移動操作することによって弁板を押圧して孔を閉止状態に保持するものではあるものの、そもそも弁体のロック機構ではなく、弁体を開状態と閉状態に操作するものであり、操作部材を他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するものでもない。
(e)したがって、甲第2号証の発明及び参考資料1?4の発明は、その操作手段からみて、それぞれ全く別個のものであるから、甲第1号証の発明に組み合わせて本件発明1とすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、前記相違点1及び2の検討結果から、相違点3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
また、本件発明1を引用する本件発明2も同様に、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
6-3-4.[理由4]について
本件発明3の一部を構成する「該ロック機構は、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したこと」は、訂正前の本件請求項4に係る発明である。
そして、甲第1、2号証及び参考資料1?4には、前記訂正後の本件請求項3に係る発明に関する事項は全く見当たらない。
したがって、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に規定される発明とすることはできない。
7.むすび
以上のとおり、本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
また、本件請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明でなく、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しないから、特許を受けることができないとはいえない。
いずれも同法第123条第1項第2号に該当しなく、無効とすべきではない。
よって結論のとおり審決する。
平成19年 5月21日
(参考)平成18年7月11日付け審決
無効2005-80197
和歌山県海南市藤白759番地
請求人 東和産業株式会社
大阪府大阪市北区中之島2丁目2番2号 ニチメンビル 三協国際特許事務所
代理人弁理士 小谷 悦司
大阪府大阪市北区中之島2丁目2番2号 ニチメンビル 三協国際特許事務所
代理人弁理士 樋口 次郎
和歌山県御坊市島584
被請求人 大洋化学株式会社
大阪府大阪市中央区南船場1丁目15番14号 堺筋稲畑ビル2階 藤本昇特許事務所
代理人弁理士 藤本 昇
大阪府大阪市中央区南船場1丁目15番14号 堺筋稲畑ビル2階 藤本昇特許事務所
代理人弁理士 薬丸 誠一
大阪府大阪市中央区南船場1-15-14 堺筋稲畑ビル2階藤本昇特許事務所
代理人弁理士 平井 隆之
上記当事者間の特許第3681379号発明「収納袋の排気弁」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結 論
訂正を認める。
特許第3681379号の請求項1、3に係る発明についての特許を無効とする。
特許第3681379号の請求項2に係る発明についての審判請求は、成り立たない。
審判費用は、その3分の1を請求人の負担とし、3分の2を被請求人の負担とする。
理 由
1.手続の経緯
本件特許第3681379号の請求項1?8に係る発明は、平成15年5月19日に出願され、平成17年5月27日に設定登録がなされたものであり、本件は、これに対して審判請求人東和産業株式会社より、請求項1?3に係る発明について、特許無効審判の請求がなされ、その答弁の期間である平成17年9月20日に訂正請求がなされ、双方より口頭審理陳述要領書(第1、2回)が提出され、平成18年4月21日に口頭審理が実施された。
2.被請求人が請求した訂正
被請求人が請求した訂正は、以下のとおりのものである。
2-1 特許請求の範囲について
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1において、「一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するロック機構」とあるのを、「上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構」と訂正する。
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項3において、「この蓋体を弁板回りの一方向に回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構」とあるのを、「この蓋体を弁板回りの一方向に一定角度回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に同角度回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構」と訂正する。
2-2 発明の詳細な説明について
訂正事項c
特許明細書の段落【0014】において、「一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するロック機構」とあるのを、「上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構」と訂正する。
訂正事項d
特許明細書の段落【0016】において、「この蓋体を弁板回りの一方向に回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構」とあるのを、「この蓋体を弁板回りの一方向に一定角度回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に同角度回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構」と訂正する。
訂正事項e
特許明細書の段落【0024】において、「蓋体を弁板回りに一方向に回動させると、」とあるのを、「蓋体を弁板回りに一方向に一定角度回動させると、」と訂正する。
訂正事項f
特許明細書の段落【0024】において、「一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するように構成したロック機構」とあるのを、「上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するように構成したロック機構」と訂正する。
3.訂正の適否
3-1 訂正に係る無効審判請求人の主張概要
訂正後の請求項1?3に係る発明についての特許は、依然として無効とされるべき旨主張しているが、請求された訂正訂正の適否については、格別の主張はなされていない。
3-2 訂正に係る無効審判被請求人の主張概要
各訂正事項について、訂正事項a,bは、特許請求の範囲の減縮を目的とし、訂正事項c?fは明りょうでない記載の釈明を目的とするものと主張している。
3-3 訂正についての当審の判断
3-3-1 訂正の目的、新規事項の有無
訂正事項aについて
訂正前の特許請求の範囲の請求項1には、「一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するロック機構」と「一方側の位置への移動操作」及び「他方側の位置への移動操作」を伴う「ロック機構」が発明の構成として記載されており、同構成に係る技術的事項として、特許明細書の段落番号【0058】に、「蓋体2から突設している操作部材10aの両端部を摘んで該操作部材10aを水平方向に往動させ、・・・閉止状態にロックする一方、操作部材10aを水平方向に復動操作することより、カム突起11を係合突起12から離脱させて弁板6のロックを解くようにしている。」と、移動操作が「蓋体2から突設している操作部材」の「水平方向」の移動操作であることが記載されているから、訂正事項aは、特許請求の範囲に記載された構成を同構成に係る技術的事項として特許明細書中に記載された事項により限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書である特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項bについて
訂正前の特許請求の範囲の請求項3には、「この蓋体を弁板回りの一方向に回動させた時に、・・閉止状態に保持し、他方向に回動させた時に・・上下動を許容するロック機構」と、蓋体の回動により閉止状態の保持及び上下動の許容を行うロック機構をその構成として記載しており、特許明細書中の、段落番号【0038】の記載に「蓋体2の一方向(時計方向)の回動によりこの係合突起12の係合端面12aをカム突起11の傾斜端面11aに接して水平頂面11bに乗り上げた状態にした時には弁板6を開放不能にロックし、蓋体2の他方向(反時計方向)の回動により係合突起12の係合端面12aをカム突起11の水平頂面11bから傾斜端面11aを介して離脱させた時にはロックを開放して弁板6を自由に上下動させるように構成している。」と、蓋体の回動の特定の位置において、ロック行われることが記載されている。してみれば、初期位置から特定の位置迄の回動は、角度で表現すれば、一定角度の回動であり、それを初期位置に戻す行為も回動量は同角度であるので、
そして、訂正事項bは、特許請求の範囲に記載された構成を同構成に係る技術的事項として特許明細書中に記載された事項により限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項c?fについて
訂正事項c?fは、特許請求の範囲を訂正したことに伴い、発明の詳細な説明欄の記載を整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項が、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
3-3-2 独立特許要件について、
無効審判が請求されていない請求項4,5は、請求項1又は請求項3の記載を引用して特定されているため、それら請求項に係る発明は、訂正事項a,bにより、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がなされることとなるので、訂正後の請求項4,5に係る発明がその出願の際、独立して特許を受けるものであるか、以下検討する。
請求項4に係る発明は、「ロック機構は、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したこと」をその構成の一部とし、請求項5に係る発明は、「弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成していることを」をその構成の一部とするものである。
そして、これら発明は、これら構成を有することにより、請求項4,5に係る発明特有の効果を奏するものであるのに対して、これら構成を公知又は周知とする客観的証拠は認められない。
したがって、これら発明が、その出願の際、独立して特許を受けることができないとする事実を発見しない。
3-4 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
4 請求人の主張及び証拠
本件に係る出願の願書の最初に添付された明細書及び図面の記載を立証するために、
甲第3号証:平成15年5月19日提出の特許願及び明細書
を提出し、平成17年2月10日付け手続補正により補正された、本件請求項1?3の記載を立証するために、
甲第4号証:平成17年2月10日提出の手続補正書
を提出し、本件請求項1、2の記載に係る補正は、以下の理由1に述べるとおり、所謂新規事項を追加するものであるとし、しかも、請求項1、2の記載は、理由2に述べるように不備であるとしている。そして、
甲第5号証:平成17年4月4日提出の手続補正書
を提出して、本件特許明細書の記載を立証するとともに、上述の新規事項の追加、及び、記載の不備は、解消されていないとしている。
4-1 [理由1]特許法第17条の2第3項について
平成17年2月10日付け手続補正による補正後の請求項1は、補正前の請求項3に対応するものであって、補正前の請求項3のロック機構に係る記載中「水平方向の往動操作」及び「復動操作」が、補正後の請求項1では、「一方側の位置への移動操作」及び「他方側の位置への移動操作」と補正され、しかも補正により「水平方向」が削除されている。
したがって、この補正により、願書に最初に添付された明細書及び図面に記載されていない上下方向などを含む方向にその方向が拡張されているから、請求項1に係る同補正は新規事項を追加するものである旨主張している。
また、請求項2について、補正前の請求項4の「往復移動自在」という記載を「一方側と他方側との位置間を移動自在」と補正しているが、これも、同様に補正前の請求項4を拡張するものであり、その拡張した事項は出願当初の明細書に記載されていないから、請求項2に係る同補正は新規事項を追加するものである旨主張している。
また、訂正によっても、上記新規事項が追加された事実は、解消していない旨主張している。
4-2 [理由2]特許法第36条第6項第2号について
甲第4号証によれば、本件請求項1には、ロック機構に係る記載として、「【請求項1】・・一方側の位置への移動操作によって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方側の位置への移動操作によって弁板の上下動を許容するロック機構・・」と記載され、「一方側」と「他方側」及び「一方側の位置」並びに「他方側の位置」については、上下方向なども含むものであるが、上下方向などを含むものについては明細書中に記載がなく、発明の外延が不明確であるから、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない旨主張するとともに、訂正後の請求項1の記載も、発明の外延が不明確であることには変わりなく、上記記載の不備が解消されたものではない旨主張している。
さらに、請求人は、本件に係る出願の出願前に頒布された刊行物に記載された発明を立証するために、
甲第1号証:実公平8-6754号公報
甲第2号証:特表2002-510783号公報
を提出し、本件出願時に、(i)操作部材が蓋体と別体である点、(ii)弁板のロックとロック解除の操作が操作部材の水平方向の切り替え操作である点、の2点が周知であることを立証するために、後日
参考資料1:実願昭59-193944号(実開昭61-110349号)のマイクロフィルム
参考資料2:実願昭54-108679号(実開昭56-26033号)のマイクロフィルム
参考資料3:実願昭54-53121号(実開昭55-153030号)のマイクロフィルム
を提出して以下の主張をなしている。
4-3 [理由3]特許法第29条第2項について
甲第2号証のバルブ構造におけるナット67とバルブベース71との螺合によるロック機構を、甲第1号証の脱気弁における蓋体2と基体1との螺合によるロック機構に置き換えることは容易であるから、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができるものである。
また、訂正請求によって、蓋体から端部が突出する操作部材を有する点、及びこの操作部材を水平方向の一方側の位置と他方側の位置に移動操作することにより弁板を押圧して排気孔を閉止する状態と弁板の上下動を許容する状態とに変更できるようにした点を限定しているが、これらはいずれも参考資料1?3に示されるように、本願出願前に周知である。
そして、甲第1号証に記載されている収納袋用脱気弁の構造と、参考資料1?3に示されている技術とは、袋ないし容器から流体を排出させる孔(開口部)を開閉する弁部材と、この弁部材を外部からの操作で上下動させて、孔(開口部)を閉止するロック状態とロック解除状態とに切り替えることができる機構を備えているという点で基本的構成が共通するため、甲第1号証に記載されている収納袋用脱気弁において、蓋体を回動操作することに替えて、参考資料1?3に示される、操作部材を設けてロック/ロック解除を行う技術を適用することに進歩性はない。
したがって、訂正前の請求項1に係る発明及び訂正後の請求項1に係る発明はいずれも特許法第29条第2項により特許を受けることができないものである。
4-4 [理由4]特許法第29条第1項第3号について
甲第1号証の脱気弁は、蓋体2の締め付け方向への回動操作によって上記弁体3を下方に押圧して通風孔5を閉止状態に保持し、蓋体2の緩み方向への回動操作によって、弁体3の上下動を許容する螺刻部11及び21を備える。これら螺刻部11及び21は、本件の請求項3に係る発明におけるロック機構に相当し、このロック機構が蓋体2の下面側に設けられているから、甲第1号証のロック機構は本件の請求項3に係る発明のロック機構と同一の構成である。
訂正により限定された「一定角度」に関して、一般に各種の回転可能な部材の回転角を、1回転以上でも「一定角度」と表現することは多々あり、単に「一定角度」と言うだけで1回転未満を意味するとは解されず、「一定角度」が、回動操作量が1回転(360°)未満を意味するものではない。さらに、甲第1号証の明細書には、回動操作を数回転行うことが必須とする記載はなく、甲第1号証の螺合部10の螺刻部11及びこれに螺合する蓋体2の螺刻部21のリード角を大きくすれば、蓋体を略半回転すれば閉止状態とすることは可能であり、このように回動操作量を少なくするという程度の変更は、単なる設計事項に過ぎないので、請求項3において蓋体の回動操作量が1回転未満であると限定解釈しても、甲第1号証に示された構造でも蓋体の回動操作量を1回転未満にする程度のことは単なる設計事項に過ぎないから、本件の請求項3に係る発明は、甲第1号証に示された発明とは相違しない。
したがって、本件の請求項3に係る発明は、訂正が認められるか否かにかかわらず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明であるから、特許を受けることができないものである。
なお、請求人が陳述要領書(1)に記載した、訂正後の請求項3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得る、という主張は口頭審理において撤回されている。
5 被請求人の主張及び根拠
被請求人は、訂正請求を行い、同訂正請求が認められることを前提として、請求人の主張に対して以下のとおり反論し、請求人の主張はいずれも失当である旨主張している。
5-1 [理由1]について
「往復」とは、広辞苑にも掲載されるとおり、「行ってまた戻ること。行きと帰り。」という意義を有する用語であり、「行き」とは、出発の地から目的の地への移動を意味することから、「一方側の位置への移動」を観念でき、「帰り」とは行きの反対であって、目的の地から出発の地への移動を意味することから、「他方側の位置への移動」を観念でき、「一方側の位置への移動」及び「他方側の位置への移動」は、「往復」という記載から自明な事項である。一般に、所定の動作を繰り返し行うように構成されたものにあっては、動作の経路が一巡するといった特殊な場合を除いて、必ず始点と終点とを有するものであり、この場合には、当然に係る始点又は終点がそれぞれ一方又は他方の位置となる。この点、当初明細書においては、蓋体若しくは操作部材が二つの姿勢間で切り替わることが明確に記載されていることから、一方の位置及び他方の位置がどの位置であるかについても、当初明細書中に記載されているに等しい。
また、当初明細書には、「往復移動自在に操作部材を支持」なる記載があり、「移動」という文言が明確に記載されている。しかも、実際に操作部材の操作に供される部位は、蓋体から突出している操作部材の端部であり、当初明細書には、「蓋体から突出している操作部材の端部が『往復移動』すること」が明記されている。
したががって、「蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作すること」及び「上記操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作すること」は、当初明細書に記載されているに等しい自明な事項である。
訂正後の請求項1に係る発明の技術思想は、蓋体とは別に操作部材を設け、その操作部材を操作することによって弁板のロック/ロック解除操作を行うために、明細書中に具体例として「往復動操作される操作部材の駆動力を弁板の上下動方向に変換して伝達する機構を採用した排気弁」を採用した排気弁を開示しており、訂正後の請求項3に係る発明は、蓋体を操作することによって弁板のロック/ロック解除操作を行うために、明細書中に具体例として「回動操作される蓋体の駆動力を弁板の上下動方向に変換して伝達する機構を採用した排気弁」を開示しており、これら「直線運動間の駆動力伝達機構」「回転運動から直線運動への駆動力伝達機構」は、機構学において動力伝達手段として同等に取り扱われているものであり、これらの機構がいずれの部材に対しても適用されるものであることは当初明細書の記載から明らかである。
そして、上述のように、当初明細書には、操作部材を二つの姿勢に切り替えるという技術思想が開示されている。係る技術思想に基づいて、蓋体から突出する操作部材の端部に着目すれば、端部が二つの姿勢間で移動するという技術思想が開示されていることは自明である。
5-2 [理由2]について
被請求人の主張する記載の不備は、訂正によりここで論ずるまでもなくもはや該当しないものとなっている。
5-3 [理由3]について
5-3-1 訂正後の第1特許発明と、甲第1号証に記載された発明との対比
訂正後の第1特許発明は、蓋体とは別に設けられる操作部材を操作して弁板のロック/ロック解除操作を行うものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、蓋体そのものを操作して弁板のロック/ロック解除操作を行うものである点で相違する。また、訂正後の請求項1に係る発明では、弁板のロック/ロック解除操作が二つの姿勢間での切り替え操作であるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、弁板のロック/ロック解除操作が締め付け方向若しくは緩み方向への数回転の回動操作である点で相違する。
訂正後の請求項1に係る発明は、「収納袋の排気弁に外力が作用したとしても、操作部材にはその外力の作用が及びにくくなっているため、不測に弁板の押圧が解除されにくく、閉止状態(弁板のロック状態)を確実に保持することができる。」「弁板がロック状態であるのか若しくはロック解除状態であるのかを一見して把握することができる。」「操作量が小さくて済み、蓋体そのものを操作しなくてよいことと併せて、作業量が少なく抑えられる。」という効果を奏するが、甲第1号証に記載された発明は、そのような効果を奏さない。
よって、訂正後の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明とは明らかな構成の差異を有し且つ顕著な効果を有するものである。
5-3-2 訂正後の請求項1に係る発明と甲第2号証に記載された発明との対比
訂正後の請求項1に係る発明は、弁板が上動して排気孔を開放し、下動して閉止するものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明は、バルブアクチュエータ61及びバルブメンバー62が下動して開口72を開放し、上動して開放するものである点で相違し、開閉の方向性が正反対である。また、訂正後の請求項1に係る発明は、弁閉状態にロックするものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明は、バルブを弁開状態にロックするものである点で相違し、ロックされる状態が正反対である。さらに、訂正後の請求項1に係る発明は、蓋体とは別に設けられる操作部材を操作して弁板のロック/ロック解除操作するものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明は、蓋体に相当するナット67を操作して弁板のロック/ロック解除操作するものである点で相違する。なお、甲第1号証に記載された発明は、訂正後の請求項1に係る発明にはない「バルブアクチュエータ61を上方から押し下げ操作することにより、バルブメンバー62を直接上下動させる」構成を有する点で訂正後の請求項1に係る発明と相違する。
よって、訂正後の請求項1に係る発明は甲第2号証に記載された発明とは明らかな構成の差異を有し且つ奏される効果も全く異質なものである。
5-3-3 甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明との組み合わせ
甲第1号証に記載された発明は、「掃除機による吸引完了後の空気の逆流をより簡単な操作で確実に防止する」という課題を有するものである。一方、甲第2号証に記載された発明は、内部に収容される弾性体の圧縮-非圧縮状態の変化を利用して膨張収縮させる自己膨張型のクッションに関するものであることから、「バルブの開放状態を好適に実現して空気の出し入れを容易とすること」を本質的な課題として有するものであり、両発明は、全く異なる課題を有するものである。さらに、甲第1号証に記載された発明は、弁閉状態を確実に維持するためにロックするものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明は、弁開状態を確実に維持するためにロックするものであり、目的や作用・機能が全く相反する。したがって、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号に記載された発明を結び付けたり一方を他方に適用することは物理的に困難であり、適用阻害要因が存在する。
また、請求人は、甲第1号証に記載された発明における蓋体2及び基体1を、甲第2号証に記載された発明のナット67及びバルブベース71によって置換すれば、本件請求項1に係る発明と同じになると主張しているが、請求項1に係る発明は、二つの構成(蓋体及び弁本体)だけでなく、訂正により加えられた操作部材を含む三つの部材を構成として有するものとなっており、請求人の上記主張の如く二つの構成同士を置換するのみでは、三つの構成を有する訂正後の請求項1に係る発明に至るとすることはできない。
5-3-4 甲第1号証に記載された発明と参考文献1?3に示されている技術との組み合わせ
請求人は、「甲第1号証に記載されている収納袋用脱気弁の構造と、参考文献1?3に示されている技術とは、袋ないし容器から流体を排出させる孔(開口部)を開閉する弁部材と、この弁部材を外部からの操作で上下動させて、孔(開口部)を閉止するロック状態とロック解除状態とに切り替えることができる機構を備えているという点で基本的構成が共通するため、甲第1号証に記載されている収納袋脱気弁において、ロック/ロック解除のための機構として参考文献1?3に示されている技術を適用することに、格別の阻害要因があるとは認められない。」と主張するが、参考文献1?3に開示された技術(以下、「参考技術」という)は、ポットやまほうびんの栓に関するものであり、甲第1号証に記載された発明との技術分野の関連性が全くなく、また、甲第1号証に記載された発明と参考技術との間に課題の共通性も一切ない。
甲第1号証に記載された発明や請求項1に係る発明の属する技術分野における当業者が、技術分野の全く異なる、参考技術の属する技術分野(ポットやまほうびん業界)における技術を転用しようとする動機付けはなく、甲第1号証に記載された発明及び参考技術を結び付けたり一方を他方に適用することが当業者にとって全く想定されない。
さらに、「弁板のロック/ロック解除操作を行うための操作部材が蓋体とは別にして設けられており、しかも、操作部材は、突出する端部を除いて蓋体の下面側に設けられているため、複数の収納袋が収納や移送の際に積み重ねられたり上に物を置かれたりして収納袋の排気弁に外力が作用したとしても、操作部材にはその外力の作用が及びにくくなっている。したがって、不測に弁板の押圧が解除されにくく、閉止状態(弁板のロック状態)を確実に保持することができる。」という訂正後の請求項1に係る発明の奏する効果については、甲第1号証に記載された発明、参考技術には一切内在しない。参考技術において、複数のポットやまほうびんが積み重ねられたり上に物を置かれたりするといったシチュエーションが起こり得るはずもない。
さらに、請求人は、参考技術が周知であるとまで断定するが、本件第1特許発明の「操作部材を蓋体の下面側に設け、操作部材の端部を蓋体から突出させる」構成は、参考文献1に開示されるのみである。
以上のように、訂正後の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び参考技術1?3の組み合わせによって想到できるものではなく、進歩性を有するのは明らかである。
5-4 [理由4]について
訂正後の請求項3に係る発明は、弁板のロック/ロック解除操作が蓋体を一方向若しくは他方向に一定角度回動させる操作であるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、弁板のロック/ロック解除操作が蓋体を締め付け方向若しくは緩み方向への数回転の回動操作である点で相違する。係る相違により、訂正後の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に比べて、弁板のロック/ロック解除操作における操作量が小さくて済み、作業量が少なく抑えられるという効果を奏するものである。
ここで、「角度」という用語は、広辞苑にも掲載されるとおり、「角の大きさ。」という意義を有する用語であり、「角」とは、「とがった所。かど。」や「一点に発する二つの半直線のなす図形。」という意味であるから、一定角度と言った場合には、角度を画定する二つの要素のうちの一方から他方に至るのに、該他方の要素を一旦通り越して周回を経るようなものではなく、少なくとも一周回を超えない程度の限られた範囲に収まるものを指している。
甲第1号証のロック機構においては、「締め付け方向への数回転の回動操作」という行為を行った場合に初めて「弁体3を下方に押圧して通風口5を閉止状態に保持」するという結果が得られ、「緩み方向への数回転の回動操作」という行為を行った場合に初めて「弁体3の上下動を許容する」という結果が得られる。
蓋体の回動操作は人間の手で行われることを踏まえると、人間が一度に手を回転させる(ひねる)ことのできる角度範囲は通常180°以下(最大でも360°未満)である。そのため、「数回転の回動操作」という行為を行おうと思えば、手を回転させることのできる角度範囲内で蓋体を回転させ、手を元の位置に戻して蓋体を持ち替えるという行為が何度となく必要となる。即ち、甲第1号証の構成要件e1に係るロック機構は、「複数回の行為を断続的に行った後に、漸く一つの結果が得られるもの」である。
なお、甲第1号証の構成要件e1に係るロック機構においては、脱気が行われた際の状態として図2が記載されており、また、ロック機構に弾性変形可能なパッキング31が設けられていることからも分かるように、一回転に満たないような回動操作によって二つの状態(許容/閉止)を切り替えるものではなく、また、不可能であり、且つ、そういった意図も存在しない。
各構成を対比すると、訂正後の請求項3に係る発明に係るロック機構は、「行為と結果とが一対一で対応するもの」、言い換えれば、「結果を得るための行為が一回で済むもの」であるのに対し、甲第1号証の構成要件e1に係るロック機構は、「複数回の行為を断続的に行った後に、漸く一つの結果が得られるもの」、言い換えれば、「結果を得るための行為が一回ではなく、行為を複数回繰り返さなければならないもの」である点において相違する。係る構成の差異により、訂正後の請求項3に係る発明に係るロック機構は、甲第1号証の構成要件e1に係るロック機構に比べて、弁板のロック/ロック解除操作における操作量が小さくて済み、作業量が少なく抑えられるという効果を奏する。
6 無効理由についての判断
6-1 [理由1]特許法第17条の2について
本件特許明細書の請求項1、2には、請求人が主張するとおり、ロック機構に係る移動操作に係る記載として、「一方側の位置」、「他方側の位置」及び「一方側と他方側」と記載され、且つ、願書に最初に添付された明細書には、「一方側の位置」、「他方側の位置」及び「一方側と他方側」なる用語は記載されていない。そして、訂正後の特許請求の範囲には、
【請求項1】
・・上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けている・・
【請求項2】
ロック機構は、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持する・・」
と記載され、「一方側の位置への移動操作」、「他方側の位置への移動操作」及び「一方側と他方側との位置間を移動自在」との記載は認められるものの、移動が「水平方向」であることは記載されるので、「水平方向」を削除する補正は、例えそれが新規事項の追加に該当するものであるとしても、もはや解消されており、「水平方向」の削除が新規事項の追加に該当するかを判断するまでもなく、「水平方向」が削除されたことを前提とする部分の請求人の主張は、採用できない。
したがって、以下、「一方側の位置への移動操作」、「他方側の位置への移動操作」及び「一方側と他方側との位置間を移動自在」なる記載に補正したことが、願書に最初に添付された明細書の範囲でなされた補正であるか、以下検討する。
請求人も主張するとおり、
「一方側の位置への移動操作」、「他方側の位置への移動操作」なる事項に対応する記載として、願書に最初に添付された明細書には、「水平方向の往動操作」及び「復動操作」なる記載が認められ、「一方側と他方側との位置間を移動自在」なる事項に対応する記載として、「往復移動自在」という記載が認められる。
そして、願書に最初に添付された明細書に記載される「往復移動」とは、一般に、「行ってまた戻ること」を意味する用語であり、本件において、特に別異の用語と介すべき特段の記載は認められない。ここで、「また戻ること」とは、元の場所に戻ることである。
そして、願書に最初に添付された明細書に記載される「往動操作」及び「復動操作」が、往復動の操作の「往動操作」と「復動操作」を意味することは明らかであり、この「復動操作」は、元の位置に戻る操作と換言可能である。そして「往動操作」は、前記元の位置に対応する位置から他の位置に行く操作を意味する言葉である。したがって、往復動は、二つの位置に関して行くという移動と戻るという移動を意味するものである。
そして、二つの位置の一つについて「一方」なる形容をすることは、その形容に起因して直接的に新たな技術概念を創作するものではなく、同形容に応じて残余の位置を「他方」なる形容をすることも、技術の開示が明りょうとなすことがあるとしても、直接的に新たな技術概念を創作するものではない。
したがって、「一方側の位置への移動操作」、「他方側の位置への移動操作」及び「一方側と他方側との位置間を移動自在」なる事項を記載する補正が、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載される範囲においてなされたものではないとする主張は採用しない。
なお、請求人は、「一方側の位置への移動操作」「他方側の位置への移動操作」という記載に補正したことが新規事項の追加に当たることの論拠として、ロック機構が水平方向に往復動するものに限定されていたものが、他の態様の往復動するロック機構を含むことになったため、ロック機構の範囲が拡張されていると主張している。
この記載が水平方向に回動するものなど他の態様の往復動するものを包含するかどうかはさておき、「一方側の位置への移動操作」、「他方側の位置への移動操作」が往復回動等を包含させる旨の主張は、同主張が成立するのであれば、往復動は、往復回動を何等排除するものではなく、水平方向に往復回動するもの等が当初から含まれているものとすることの論拠となることがあるとしても、「一方側の位置への移動操作」、「他方側の位置への移動操作」なる記載により、新たに「往復回動」等を包含したとする主張は採用できない。
よって、請求項1,2に係る発明が、特許法第17条の2第3項の要件を満たさないものとすることはできない。
6-2 [理由2]特許法第36条第6項第2号について
本件特許明細書の請求項1には、請求人が主張するとおり、ロック機構に係る移動操作に係る記載として、「一方側の位置への移動操作」及び「他方側の位置への移動操作」と記載され、請求項2には、「一方側と他方側との位置間を移動」と記載されている。そして、訂正後の請求項1、2にも、それらは記載されているので、これら記載について検討する。
指摘される「一方側の位置への移動操作」及び「他方側の位置への移動操作」は、ロック機構に係る記載であり、ロック機構については、請求項1には、「・・上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けている・・」と移動操作の対象のロック機構が「蓋体から端部が突出している」ものであり、各移動操作される部材が「操作部材」であることは明確でる。また、「一方側と他方側との位置間を移動」は、移動する部材は、「操作部材」であることが明記され、「蓋体に・・を支持すると」その配置も明記されている。
この意味においては、請求項1の記載は、操作の対象部材及びその配置を特に不明とする記載ではなく、「一方側の位置」、「他方側の位置」及び「一方側と他方側との位置」が具体的位置として特定されていないが、「一方側」及び「他方側」の記載により各「位置」が別異の位置であることは、明らかであるとともに、それらの位置が特定位置にあることのみによって、請求項1に係る発明が所期の目的を達成するとする開示は何等なされておらず、それら位置を発明の構成として特定すべき特段の事情は認められない。
そして、訂正された明細書には、「一方側の位置への移動操作」、「他方側の位置への移動操作」及び「一方側と他方側との位置間を移動」により、所期の目的を達成するものが、例えば図6,7に示される例をもって、発明の詳細な説明の欄中に記載されている。
してみれば、この範囲において、特許請求の範囲の請求項1の記載を不備とする特段の理由はない。
さらに、これら記載により、その外縁が明確ではないとする主張について検討する。
明細書の段落番号【0061】に、「さらに、ロック機構として、請求項1、2に係る発明によれば、・・、上記操作部材を一方側の位置へ移動させた時に・・弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置へ移動させた時に・・係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成しているので、収納袋内の脱気後にはこのロック機構によって排気孔が不測に解放するのを確実に防止しておくことができると共に、・・また弁板のロック及びロック解除操作が簡単かつ確実に行うことができる。」と「一方側の位置への移動」及び「他方側の位置への移動」について、請求項1に係る発明が期待する作用が記載されており、請求項1の記載中の移動操作をもって特定した構成について、同操作に関して、発明が期待する機能が明確に記載されている。
したがって、移動操作による特定は、同機能を果たす範囲において移動操作が特定されていると解すべきであり、限定される外縁は、その機能からみて明らかと言うべきであり、これら記載により、発明の外縁を不明とする旨の主張は採用しない。
よって、請求項1に係る記載を敢えて不備とする特段の理由を発見しないから、請求項1に係る発明が、特許法第36条第6項第2号の要件を満たさないものとすることはできない。
6-3 [理由3][理由4]について
6-3-1 本件発明
上記訂正が認められ、前記「[理由2]について」に述べたとおり、その記載に不備の認められない本件明細書の記載からみて、本件無効審判に係る請求項1?3に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】
収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項2】
ロック機構は、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の収納袋の排気弁。
【請求項3】
収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に一定角度回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に同角度回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
6-3-2 証拠の記載事項
甲第1号証には、次に示す記載事項a?cが記載されている。
・記載事項a「・・・この筒状部13の内部は、隔壁4の上面から底面へ貫通する通風口5となっているのである。・・・収納袋Zの外部より基体1の上面に螺合部10を囲むように環状部材14を装着して・・・上記蓋体2は、上述の通り、螺合部10の螺刻部11と螺合する螺刻部21が内周面に設けられたキャップである。・・・図4へ示す通りこの排気孔6は、隆起部22の中心を囲むように配されている。貫通孔23は、蓋体2が基体1へ螺合した状態において、前述の通風口5の真上に位置する。」(段落0021?0025)という記載から、収納袋Zの一部を内外面から挟着して収納袋Zに装着する基体1と、この基体に螺合した蓋体2と、基体1の中央部に収納袋の内外面間に連通する通風孔5を設け、蓋体2の隆起部22の中心を囲むように排気孔6が設けられていることが記載されていると認められる。さらに、
・記載事項b「先ず蓋体2は、基体1に対して緩められた状態にあり・・・掃除機から受ける負圧によって、弁体3は、上方に吸い寄せられ、通風口5を開放する。・・・脱気終了後・・・脱気された収納袋Z内部の負圧及び必要に応じ発条33によって、弁体3は下に引き寄せられ、通風口5を塞ぐ。・・・不必要であれば、この発条33は設けなくてもよい。他方、通常上述の脱気された収納袋Z内部の負圧によって充分に弁体3の吸い寄せがなされる・・・掃除機の吸引口Wを蓋体2の対応部20より外した後、蓋体2を回して、基体1への締め付けを完了する(図3)。この状態において、弁体3は、蓋体2の裏面に押さえられ、通風口5の完全な遮断がなされる。」(段落0031?0033)という記載から、蓋体の下面に弁体3を閉止状態に保持する状態と上下動許容状態とに切り替える機構を設けたことが記載され、その具体的な構成として、通風孔5の上端開口部上に上記収納袋Z内の排気時には上動して該通風孔5を解放させ、排気後には下動して通風孔5を閉止する弁体3を配設し、蓋体2を一方向に回して基体1への締め付けを行い、締め付けられた状態において弁体3が筒状部13に押さえられ、通風口5の遮断がなされるとともに、締め付けられた状態から、蓋体2を他方向に回して基体から緩めることにより、筒状部13に押さえられた弁体3の上昇を許容し、通風口5を開放可能とすることが記載されていると認められる。加えて、
・記載事項c「図7へ、蓋体2を基体1から緩めた際に、この蓋体2が脱落しないための構成について、説明する。・・・以上のように、規制部7等を設けることによって、基体1から蓋体2を緩めた際、蓋体2が、基体1より外れず、便利である。」(段落0036?0039)という記載から、図7,8の構成を設けることにより、基体1から蓋体2を緩めた際、蓋体2が基体1より外れないようにしたことが記載されていることからして、該構成を設けない実施例である図2,3においては、蓋体2が基体1から外れる、即ち蓋体2は基体1に着脱自在に取付けられているものと認められる。
したがって、記載事項a?cからみて、甲第1号証には、
収納袋Zの一部を内外面から挟着して収納袋Zに装着する基体1と、この基体1に着脱自在に取付けた蓋体2とからなり、上記基体1の中央部に収納袋の内外面間に連通する通風孔5を設けていると共にこの通風孔5の上端開口部上に上記収納袋Z内の排気時には上動して該通風孔5を解放させ、排気後には下動して通風孔5を閉止する弁体3を配設し、上記蓋体2に排気孔6を設け、弁体3を閉止状態に保持する状態と上下動許容状態とに切り替える機構を蓋体の下面側に設けた脱気弁が記載されており、
上記蓋体の下面に弁体3を閉止状態に保持する状態と上下動許容状態とに切り替える機構の具体例として、蓋体2を一方向に回して基体1への締め付けを行い、締め付けられた状態において弁体3が筒状部13に押さえられ、通風口5の遮断がなされるとともに、締め付けられた状態から、蓋体2を他方向に回して基体から緩めることにより、筒状部13に押さえられた弁体3が上昇し、通風口5を開放する機構
が記載されているものと認める。
甲第2号証には、次の記載がある。
・記載事項d「・・・バルブ60はバルブアクチュエータ61と、バルブメンバー62と、バルブシート63と、バルブシート63の上面の溝65に据え付けられたOリング64とを含んでなる。・・・図7に示すように、スプリング66は、バルブメンバー62が閉じた状態に偏らせる。バルブアクチュエータ61を押し下げると、バルブメンバー62はバルブシート63から動き、クッション内の空気圧力の調整のために空気が出入りすることを許容する。」(段落0022)
・記載事項e「バブル60の全開状態への、および全開状態からの動作は(図8参照)、バルブベース71の直立するチューブ状部の外面のネジ山69の下面に位置し、内側に向けられた面68にかみ合わせられるネジ山を有する回転式のナット67によってなされる。・・・」(段落0024)
・記載事項f「ナット67の半時計周りの回転は、ネジ山を面68にかみ合わせてネジ山69に半回転捻ってねじ込むようにし、バルブアクチュエータ61のフランジ73のナット67との噛み合いは、バルブアクチュエータ61およびバルブメンバー62を下向きに押しつけ、図8に示すようにバルブを開く。」(段落0025)
上記の記載時効d?fからみて、甲第2号証には、
クッションに装着されたバルブベース71と、上記バルブベース71の中央部にクッションの内外面間に連通する穴を設けていると共に、前記穴を閉じた状態と開いた状態とに選択できるバルブメンバー62を配設し、ナット67を一方側の位置へ移動操作することによって前記バルブメンバー62を開いた状態に保持し、上記ナット67を他方側の位置へ移動操作することによってバルブメンバーの上下動を許容する機構を設けているバルブ。
が記載されているものと認める。
6-3-3 [理由3]についての対比・判断
甲第1号証に記載された発明と、請求項1に係る発明とを比較する。
甲第1号証に記載された「収納袋Z」「基体1」「蓋体2」「通風口5」「弁体3」「排気孔6」は、その機能からみて、それぞれ請求項1に係る発明の「収納袋」「弁本体」「蓋体」「排気孔」「弁板」「吸気用孔」に相当する。
また、請求項1に係る発明の「蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、操作部材を水平方向の他方側へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体」は、具体的な構成は異なるものの、甲第1号証に記載された発明の、「弁板を閉止状態に保持する状態と上下動許容状態とに切り替える機構」に対応するものであるから、両発明は、
収納袋の一部を内外面から挟着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設し、上記蓋体に吸気用孔を設け、弁板を閉止状態に保持する状態と上下動許容状態とに切り替えるロック機構を蓋体の下面側に有している収納袋の排気弁。
の発明である点で一致し、以下の点で両発明は相違している。
<相違点1>弁板を閉止状態に保持する状態と上下動許容状態とに切り替える機構が、請求項1に係る発明では、蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けているものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、蓋体2を一方向に回して基体1への締め付けを行い、締め付けられた状態において弁体3が筒状部13に押さえられ、通風口5の遮断がなされるとともに、締め付けられた状態から、蓋体2を他方向に回して基体から緩めることにより、筒状部13に押さえられた弁体3が上昇し、通風口5を開放するものである点。
<相違点2>請求項1に係る発明では、蓋体の中央部に吸気用孔を設けているのに対し、甲第1号証に記載された発明では、排気孔6は、隆起部22の中心を囲むように配されている点。
上記相違点1,2について検討する。
<相違点1>について
請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明は、弁体の作動を固定するロック機構である点で両者は共通するものであるから、作動をロックするという技術思想を具体的に設計するに当たり、公知周知の機構より選択することが設計手段の一つであるところ、甲第2号証には、バルブ本体に切り替え用の操作部材(ナット67)を別途設け、この操作部材の一方側の位置へ移動操作/他方側の位置への移動操作によって、バルブの開放状態・閉止状態を切り替えるロック手段を設けたバルブ構造が記載されている。
したがって、甲第1号証に記載された発明の蓋体と基体からなるロック機構に替えて、甲第2号証に記載される別体の操作部材を設けるロック機構を採用することは、当業者であれば容易になし得ることであると認められる。また、操作部材を別体としたロック機構の具体的な構造として、「水平方向の一方側/他方側の位置へ移動操作」したものは、参考文献1,2に記載されるように、操作部材として従来より分野を問わず周知の一形式であり、そのようなものを採用することに格別の困難性は認められない。
被請求人は、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明とは、全く異なる課題を有するものであると主張しているが、甲第1号証、甲第2号証ともに、バルブ(弁)の開放状態若しくは閉止状態をロックするという課題を有するものであるから、両者を組み合せることに格別の困難性はないものである。また、被請求人は、甲第1号証に記載された発明は、弁閉状態を維持するためのものであり、甲第2号証に記載された発明は、弁開状態を維持するものであるから、目的や作用・機能が相反するとも主張しているが、いずれも弁を機構的に特定の位置で維持することにおいて同一であり、単にその特定位置の機能が相違するにすぎず、機能への適用による構成は変わりはない。さらに弁閉状態の位置でのロックも甲第1号証に記載されている以上、被請求人の主張は採用できない。
また、被請求人は、参考資料1?3に開示された技術(以下、「参考技術」という)は、ポットやまほうびんの栓に関するものであり、甲第1号証に記載された発明との技術分野の関連性が全くなく、技術を転用しようとする動機付けも存在しないため、参考技術を甲第1号証に記載された発明に適用することはできないと主張している。
しかしながら、往復動する操作部材を具体化するにあたり、広く様々な分野における周知技術を検討することは、設計者であれば当然に期待されることであり、その周知技術を適用することは所謂設計的事項に過ぎないものである。
また、被請求人は「弁板のロック/ロック解除操作を行うための操作部材が蓋体とは別にして設けられており、しかも、操作部材は、突出する端部を除いて蓋体の下面側に設けられているため、複数の収納袋が収納や移送の際に積み重ねられたり上に物を置かれたりして収納袋の排気弁に外力が作用したとしても、操作部材にはその外力の作用が及びにくくなっている。したがって、不測に弁板の押圧が解除されにくく、閉止状態(弁板のロック状態)を確実に保持することができる。」という効果を主張しているが、この効果は、甲第1号証に記載された発明に、別体の操作部材からなるロック装置を適用により、当然に期待する効果である。
<相違点2>について
請求項1に係る発明では、蓋体の中央部に吸気用孔を設けているのに対し、甲第1号証に記載された発明では、排気孔6は、隆起部22の中心を囲むように配されいるが、いずれも蓋体の中心を囲む中央部に吸気口を設けたものであり、吸気口として、いずれを採用するかは当業者であれば適宜採用し得る設計上の事項に過ぎない。
よって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
6-3-4 [理由4]についての対比・判断
甲第1号証の記載を改めて、本件請求項3に係る発明とを比較する。
上記「6-3-3」で検討したように、
甲第1号証には、
収納袋の一部を内外面から挟着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設し、上記蓋体に吸気用孔を設け、弁板を閉止状態に保持する状態と上下動許容状態とに切り替えるロック機構を蓋体の下面側に有している収納袋の排気弁。
が記載されている。
また、甲第1号証のロック機構は、蓋体2を一方向に回して基体1への締め付けを行い、弁体3が筒状部13に押さえられ、通風口5の遮断がなされ、蓋体2を他方向に回して基体から緩めることにより、筒状部13に押さえられた弁体3が上昇し、通風口5を開放するものである。
口頭審理で請求人被請求人の双方が一致した解釈として、請求項3に係る発明の「蓋体を弁板回りの一方向に一定角度回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持」は、特定の一方向に回動した位置で押圧の状態に変化するもの、及びその特定の位置に行った時には既に押圧の状態になっているが、押圧状態への変化が特定のどの位置で起こるかが明確でないもの、の両者を包含するものを意味するものである。
甲第1号証のロック機構は、蓋体を一方向に回して基体への締め付けを行うことにより、どの位置で弁体が押圧状態となるかは定かでないものの、締め付け状態においては、弁体は押圧状態即ち閉状態となるものであり、逆に他方向に回して緩めることにより、同じくどの位置で押圧解除されるかは定かではないものの、開状態となるものであるから、甲第1号証に記載された発明のロック機構は、「蓋体を弁板回りの一方向に一定角度回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に同角度回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構」である。
してみると、甲第1号証には、
収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に一定角度回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に同角度回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
が記載されているものと認められる。
請求人は、答弁書において、「「角度」という用語は、広辞苑にも掲載されるとおり、「角の大きさ。」という意義を有する用語であり、「角」とは、「とがった所。かど。」や「一点に発する二つの半直線のなす図形。」という意味であるから、一定角度と言った場合には、角度を画定する二つの要素のうちの一方から他方に至るのに、該他方の要素を一旦通り越して周回を経るようなものではなく、少なくとも一周回を超えない程度の限られた範囲に収まるものを指している。」と主張しているが、同主張は図形の角が形成する角度としては理解しえるものの、移動の量としての角度としては、540°(1回転半)、720°(2回転)といった表現を用いることが一般的であることを考慮すれば、周回を経るものつまり360°以上の角度をも含むと解するのが妥当である。
また、請求人は「蓋体の回動操作は人間の手で行われることを踏まえると、人間が一度に手を回転させる(ひねる)ことのできる角度範囲は通常180°以下(最大でも360°未満)である。そのため、「数回転の回動操作」という行為を行おうと思えば、手を回転させることのできる角度範囲内で蓋体を回転させ、手を元の位置に戻して蓋体を持ち替えるという行為が何度となく必要となる。・・・請求項3に係る発明に係るロック機構は、「行為と結果とが一対一で対応するもの」、言い換えれば、「結果を得るための行為が一回で済むもの」であるのに対し、甲第1号証の構成要件e1に係るロック機構は、「複数回の行為を断続的に行った後に、漸く一つの結果が得られるもの」、言い換えれば、「結果を得るための行為が一回ではなく、行為を複数回繰り返さなければならないもの」である点において相違する。」と主張しているが、甲第1号証に記載された発明のものが、実際に手で操作を行った場合に何度かに分けて行う必要があるものであったとしても、本件請求項3に係る発明が「一方向/他方向に一定角度回動させる」を手で一度に行うものという限定がない以上、甲第1号証に記載された発明が「一定角度回動させる」ものではないとすることはできない。
また、請求項3に係る発明と甲第1号証に記載された発明とは、請求項1に係る発明と同様に、蓋体に設けられる吸気用孔の構成に差異を有するが、この点については、前記したとおり、吸気口としていずれを採用するかは当業者であれば適宜採用し得る設計上の事項に過ぎないものであって、発明としての実質的な差異を構成しない。
そうしてみると、請求項3に係る発明は甲第1号証に実質的に記載された発明であると言わざるを得ない。
よって、請求項3に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に規定される発明であるから、特許を受けることができないものである。
7 むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項3に係る発明は、甲第1号証刊行物に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に規定する発明であるから、特許を受けることができないものであるので、いずれも同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
一方、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件請求項2に係る特許を無効とすることはできない。
よって結論のとおり審決する。
平成18年 7月11日
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
収納袋の排気弁
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、該吸気用孔を中心とする蓋体部分の数箇所に蓋体の上下面間に貫通する外気取り入れ口を設けて該外気取り入れ口からの外気の吸入を可能にしており、しかも、上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項2】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けており、
上記ロック機構は、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項3】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設け、該ロック機構は、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項4】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けており、
上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成していることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項5】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に一定角度回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に同角度回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設け、該ロック機構は、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成し、
上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成していることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項6】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記蓋体の上面を吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成していると共に、この上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設してあり、この規制突部と上記吸気用孔との周囲に外気取り入れ口を設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項7】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、基板の下面における排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の空間部を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成していることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項8】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ等の多孔質板を突設していることを特徴とする収納袋の排気弁。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、布団や毛布などの寝具類や衣服などを収納する収納袋に装着して、この収納袋内を電気掃除機等の吸気ノズルを使用して脱気し、収納物をコンパクトに圧縮するための収納袋の排気弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、布団や衣類などを押し入れやタンスに収納、保管する際に、限られた収納場所にできるだけ多くの布団や衣類等を収納するために、偏平な合成樹脂製収納袋内に布団等を収納したのち、電気掃除機を使用してこの収納袋内の空気を排除することにより、収納物を圧縮することが行われている。このような収納物の圧縮は、一般家庭に限らず寝具類を取り扱う業者においても行われ、また、旅行する際に、鞄に衣類等を収納する場合においても収納袋を圧縮することが行われている。
【0003】
布団等を収納した袋を圧縮するには、通常、収納袋の開口部に装着されているフアスナーによってその開口部の一部を開き、この開口部から電気掃除機の吸気ノズルを挿入して袋内を脱気することにより行われているが、吸気ノズルを直接収納袋内に挿入すると、袋内の収納物が吸気ノズルの吸引力によって該吸気ノズルの開口端に吸着され、収納物が損傷する虞れがあるばかりでなく、吸気ノズルが詰まって袋内の脱気が困難になると共に電気掃除機のモータに大きな負荷がかかって故障の原因となる。
【0004】
このため、電気掃除機の吸気ノズルを収納袋内に挿入することなく、該収納袋に排気弁を装着しておき、この排気弁を通じて外部から電気掃除機の吸気ノズルにより袋内の空気を排気して収納袋を圧縮することが行われている。
【0005】
このような排気弁としては、中央部に収納袋内に連通させる排気孔を設けた弁本体に、中央部に上下面間に貫通した吸気用孔を設けているドーム形状の可動蓋を上下動自在に取付け、この可動蓋と弁本体との対向面間で形成している室内に上記排気孔の開閉用弁板と、この弁板を上方から押圧して排気孔に密着させているスプリングと、このスプリング力に抗して上記弁板を上動させて開弁させる弁板作動機構とを配設し、該弁板作動機構を上記可動蓋の押し下げによって作動させて弁板を開弁させ、この状態にして電気掃除機の吸気ノズルにより上記吸気用孔から収納袋内の空気を排気すると共に、排気後には弁板作動機構を不作動状態にロックするように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2003-34379号公報(第4?6頁、第1図)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような排気弁構造によれば、排気後において弁板作動機構を不作動状態にロックする機構としては、弁本体の外周部数個所にガイド突片を突設し、このガイド突片の上端部を上記可動蓋の外周部数個所に設けている円弧状長孔内に挿通して可動蓋を下動可能にする一方、該円弧状長孔内の一端部に係合突起を一体に設けて、上記ガイド突片の上方にこの係合突起が対向する位置まで可動蓋を回動させた時に、係合突起がガイド突片に受止されて可動蓋が下動するのを防止するように構成しているために、可動蓋に収納袋の積み重ね等による過大な荷重がかかると、係合突起が破損してロックがきかなくなり、可動蓋が下動して開弁し、収納袋が膨脹するといった問題点が生じる。
【0008】
また、収納袋内を脱気する際に、電気掃除機の吸気ノズルを可動蓋上に押し付けてスプリング力に抗して弁板を開放させた状態を保持しておかねばならないために、操作が煩雑化して使用勝手が悪くなるばかりでなく、スプリングは金属材料で形成されているために、錆が発生して円滑な作動が行えなくなる事態が発生する虞れがある。
【0009】
さらに、収納袋内が完全に脱気されたのちにおいても、電気掃除機の吸気ノズルによる吸気力が収納袋内に作用してモータに大きな負荷がかかり、故障の原因となる。そのため、上記可動蓋の外周部に外気取り込み用の孔を設けているが、この可動蓋は上述したようにドーム形状に形成して、電気掃除機の吸気ノズルを垂直方向のみならず、斜め方向からも自由に押し付けた状態で使用できるようにしているため、吸気ノズルが可動蓋上を前後左右に大きく傾動した場合には、吸気用孔から外れる虞れがあった。
【0010】
さらにまた、排気弁の弁本体は、中央部に排気口を設けている円板形状の基板とこの排気口を開閉させる上記弁板を設けた弁配設部材とからなり、これらの基板と弁配設部材とを収納袋の一部における内外面にそれぞれ当てがって収納袋における通気孔を開設している一部を挟着した状態で一体に結合させた構造としているため、排気弁を開放させて収納袋内の空気を上記通気孔から排気口を通じて吸引、排除する際に、その吸気力が排気口の下方の収納物表面に集中的に作用して該表面がその強力な吸気力によって排気口に吸着し、袋内の脱気が完了するまでの比較的長時間を要することになるばかりでなく、電気掃除機のモータに大きな負荷がかかって故障の原因となる。
【0011】
このような問題点は、弁本体の基板の下面に一定高さの排気通路を排気口の周囲から基板の外周端に向かって放射状に突設してなる構造としてもおいても、この排気通路を通じての吸気力により、排気通路の開口端周囲の収納物の表面が収納袋の内面に密着し、特に、収納物が通気性に劣る羽毛布団のような袋地の場合には、この袋地の微細な織目を通じての排気が困難であった。
【0012】
このため、弁本体の基板の外周面から外方に向かって一定厚みを有する多孔板を一体に設けて、この多孔板により収納物の表面と収納袋の内面との間に多孔板の大きさに相当する隙間を設けるように構成することも行われているが、各孔は、多孔板の厚みに相当する一定高さの孔壁によって隣接する孔間の連通が阻止された独立した通気孔に形成されているために、排気孔を通じての吸気力を通気孔に円滑に作用させることはできず、上記した問題点を充分に解消することができないといった問題点があった。
【0013】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、排気後において弁板を排気口に積極的に押し付けた状態で簡単且つ確実にロックしておくことができ、また、排気口に対して電気掃除機の吸気ノズルが傾動する方向に移動しても該吸気ノズルを常に排気口に連通させた状態を保持して電気掃除機に大きな負担をかけることなく能率よく収納袋内を脱気することができると共に脱気後、吸気力を解くと同時に自動的に閉弁させることができ、さらにまた、収納物が羽毛布団のような通気性に劣る物品であっても、円滑にその内部を脱気することができる収納袋の排気弁構造を提供するにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の収納袋の排気弁は、請求項1に記載したように、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、該吸気用孔を中心とする蓋体部分の数箇所に蓋体の上下面間に貫通する外気取り入れ口を設けて該外気取り入れ口からの外気の吸入を可能にしており、しかも、上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を設けてなる構造を有している。
【0015】
このように構成した収納袋の排気弁において、請求項2に記載したように、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成している。
【0016】
一方、請求項3に係る発明は、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設けていることを特徴とする。
【0017】
このように構成した収納袋の排気弁において、上記ロック機構の構造として、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成している。
【0018】
さらに、請求項4及び5に係る発明は、上記弁本体を、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成している。
【0019】
また、請求項6に係る発明は、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記蓋体の上面を吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成していると共に、この上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設してあり、この規制突部と上記吸気用孔との周囲の数個所に外気取り入れ口を設けていることを特徴とする。
【0020】
一方、請求項7に係る発明は、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、基板の下面における排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の空間部を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成していることを特徴とする。
【0021】
また、請求項8に係る発明においては、上記請求項7に記載の水平通気路とリング状通気路に代えて、基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ等の多孔質板を突設していることを特徴とする。
【0022】
【作用】
収納袋内に布団等を収納したのちその開口部をファスナーにより閉止し、収納袋に装着している排気弁における蓋体の上面に電気掃除機の吸気ノズルの開口端を押し付けて蓋体に設けている吸気用孔に連通させた状態にし、電気掃除機を作動させると、弁板が上動して排気孔が開放され、吸気ノズルからの吸気力によって排気孔を通じて収納袋内の空気が吸気ノズル側に排気され、収納袋内が脱気される。
【0023】
収納袋内が脱気されて布団等の収納物が圧縮状態になると、蓋体に対する電気掃除機の吸気ノズルの押し付けを解く。そうすると、収納袋内が真空状態であるから、この収納袋側に発生する吸気力によって弁板が下動して排気孔を自動的に閉止し、収納袋内に外気が入るのを阻止する。
【0024】
しかるのち、蓋体を弁板回りに一方向に回動させると、該蓋体の下面側に設けているロック機構が作動して該ロック機構により弁板が直接、下方に押圧され、排気孔を密閉した状態に保持する。このように、ロック機構による弁板の閉止状態の保持は、蓋体を弁本体側に押圧する力によって行われているので、収納物を圧縮状態で収納している収納袋を積み重ねても、その積み重ねた荷重が弁板をさらに押し下げようとする力として作用し、不測に弁板を開放させることなく、弁板のロック状態を確実に保持しておくことができる。また、この蓋体の回動によるロック機構に代えて、上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するように構成したロック機構を蓋体の下面側に設けたものであっても同様な作用効果を奏する。
【0025】
収納袋から収納物を取り出す時には、該収納袋の開口部を閉止しているファスナーを開放すればよく、再び、この収納袋を使用する際には、上記ロック機構による弁板の閉止状態を解き、上述したように吸気ノズルによって収納袋内を脱気すればよい。
【0026】
また、上記蓋体の上面をその中央部に設けている吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成しているので、電気掃除機の吸気ノズルを弁本体に対して垂直方向のみならず、斜め方向に向けた状態にしても、該吸気ノズルの開口下端面を蓋体の上面に全面的に密接した状態にして排気操作を行うことができる。
【0027】
従って、操作性が良くて円滑な排気作業を可能にすることができるばかりでなく、上記蓋体の上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設していると共にこの規制突部と上記吸気用孔との周囲に外気取り入れ口を設けているので、吸気ノズルが蓋体の外周縁側に大きく移動するのを規制突部によって確実に阻止して吸気ノズルを常に排気口に全面的に連通させた状態にして排気作業を行うことができると共に、吸気用孔の少なくとも一部分を吸気ノズルから外部に露出させた状態にしておくことができ、そのため、収納袋内が完全に脱気された後においては、吸気ノズルからの吸気力を蓋体内から上記吸気用孔を通じて外気に作用させて外気を吸引することができ、電気掃除機のモータに大きな負荷がかかるのを防止することができる。
【0028】
さらにまた、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成しているので、この弁本体を収納袋の所定部分に簡単且つ強固に装着することができる。
【0029】
その上、収納袋の内面側に装着している上記基板の下面において、排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の隙間を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成しているので、これらの水平通気路とリング状通気路を収納袋の内面と収納物の表面との間に介在させて排気口に発生している吸気ノズルからの吸気力を放射状に設けている多数の水平通気路を通じて広い範囲に亘る収納物表面部から該収納物内の空気を吸引、排除することができ、収納物が通気性に劣る羽毛布団であっても、能率のよい脱気が可能となる。
【0030】
さらに、吸引力によって水平通気路の一部に収納物の一部が吸着されて該水平通気路の一部を閉止しても、この水平通気路の上面側はリング状通気路を通じて他の水平通気路に連通しているので、この他の水平通気路内に発生している吸気作用がその上方のリング状通気路を介して上記閉止している水平通気路の上方に迂回的に作用し、脱気作用を殆ど妨げることなく、収納袋内の空気を効率よく排出して収納袋を円滑に圧縮することができる。また、上記水平通気路とリング状通気路に代えて、基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ或いは不織布等の多孔質板を突設しておいても、同様な作用効果を奏することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1、図2において、排気弁Aは合成樹脂製であって、収納袋Bの一部を内外から挟着又は融着して該収納袋Bに装着し、外部からの吸気力によってその中央部に設けている排気孔3を通じて収納袋B内の空気を排除するように構成した弁本体1と、この弁本体1に左右方向に往復回動自在に取付け且つ中央部に吸気用孔4を設けている蓋体2とからなり、これらの弁本体1と蓋体2との対向面間の空間部を吸排気室5に形成している。
【0032】
弁本体1は、径が6cm程度の円板形状の弁配設部材1Aと基板1Bとからなり、弁配設部材1Aの中央部に上記排気孔3の上側排気孔部3aを上下面間に亘って貫通、形成している一方、基板1Bの中央部に上記排気孔3の下側排気孔部3bを上下面間に亘って貫通、形成している。この下側排気孔部3bは上側排気孔部3aよりも小径に形成されていて弁配設部材1Aと基板1Bとを上下に重ね合わせて一体に連結した状態においては、上側排気孔部3aの開口下端の内周面から該下側排気孔部3bの周縁部を内方に向かって円環状に露出させて該露出上面で弁板6の弁座7を形成している。
【0033】
上記弁配設部材1Aと基板1Bとを収納袋Bの一部を内外面から挟着して互いに重ね合わせた状態で収納袋Bの一部に装着するには、弁配設部材1Aの排気孔部3aの外周縁部の3方に上下面間に貫通した係止孔21を設けている一方、基板1Bの上記排気孔部3bの外周縁部の3方に断面逆L字状に形成しているフック片22を突設し、これらのフック片22をそれぞれ対向する上記係止孔21に挿通して、フック部22aを係止孔21の上端縁部に係止させることによって行うように構成している。なお、この弁本体1の取付部における収納袋Bには、内外の排気孔部3a、3bに連通した孔bが設けられている。
【0034】
さらに、上記弁配設部材1Aの外周部は下方に向かって該弁配設部材1Aの厚みに略相当する寸法だけ低位置に設けられたフランジ部1A1に形成されていて、その下面側に上記フランジ部1A1によって囲まれた円形凹部1A2を形成してあり、同様に、上記基板1Bの外周部も中央部よりも低位置に設けられたフランジ部1B1に形成してこのフランジ部1B1から上方に突出する円形状の中央部1B2を上記円形凹部1A2に嵌着させるように構成してあり、これらの弁配設部材1Aと基板1Bとで収納袋Bの所定部分をその位置からずらすことなく強固に挟着するように構成している。なお、収納袋Bの内外面に対する上記弁配設部材1Aと基板1Bとの装着は、収納袋Bの一部を加熱によって弁配設部材1Aと基板1Bとの対向面に融着させることによって行ってもよい。
【0035】
また、弁配設部材1Aの上面における上記上側排気孔部3aの開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片8を周方向に一定間隔毎に突設して、これらのガイド突片8によって囲まれた短円筒状空間部内に上記弁板6を上下動自在に配設している。この弁板6の外周端の数個所(図においては3方)に水平突起6aを突設してあり、これらの水平突起6aを隣接するガイド突片8、8間の隙間8aに上下摺動自在に挿入して、弁板6を回動させることなく正確に上下動させるように構成している。なお、弁板6の下面には弾性的に圧縮変形可能な一定厚みのシール材9を接着等により固着している。
【0036】
一方、上記蓋体2の下面側には、この蓋体2を上記弁板6を中心として該弁板回りの一方向に回動操作した時に、弁板6を下方に押圧して上記排気孔3の上端開口部を閉止状態に保持し、他方向に回動操作した時に該弁板6の上下動を許容するロック機構10を設けている。
【0037】
このロック機構10は、上記弁板6の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎(図においては3方)に上方に向かって突設している複数個のカム突起11と、これらの各カム突11の上方にそれぞれ対向させて、蓋体2の下面における上記吸気用孔4の外周部に周方向に一定間隔毎(図においては3方)に下方に向かって突設している係合突起12とからなり、上記カム突起11の上端面の一半部を一端側から時計回り方向に向かって徐々に緩やかな角度でもって上向きに傾斜した傾斜端面11aを形成していると共に、他半部をこの傾斜端面11aの上傾端から水平に連続した水平頂面11bに形成している一方、上記係合突起12の下端面を上記傾斜端面11aから水平頂面11bにかけた連続的に摺接可能な係合端面12aに形成している。
【0038】
そして、蓋体2の一方向(時計方向)の回動によりこの係合突起12の係合端面12aをカム突起11の傾斜端面11aに接して水平頂面11bに乗り上げた状態にした時には弁板6を開放不能にロックし、蓋体2の他方向(反時計方向)の回動により係合突起12の係合端面12aをカム突起11の水平頂面11bから傾斜端面11aを介して離脱させた時にはロックを開放して弁板6を自由に上下動させるように構成している。なお、蓋体2側にカム突起11を、弁板6側に係合突起12を突設しておいてもよい。
【0039】
さらに、上記蓋体2はその上面を中央部に設けている上記吸気用孔4の周縁から蓋体2の外周端に向かって下方に緩やかに凸円弧状に傾斜したドーム形状に形成されていると共に、その上面の外周部数個所(図においては四方)に周方向に一定間隔毎に、収納袋B内を脱気する時に蓋体2の上面に当てがう電気掃除機の吸気ノズルCが蓋体2の上面から必要以上に外周方に移動するのを規制するための規制突部13、13を突設している。
【0040】
また、この規制突部13と上記吸気用孔4との間の蓋体部分の数個所(図においては3方)に、蓋体2の上下面間に貫通した外気取り入れ口14、14、14を設けている。この外気取り入れ口14は吸気用孔4を中心とする円弧状に湾曲した長孔に形成されてあり、且つ吸気用孔4の中心からその内周縁または孔幅の中間部までの半径を上記吸気ノズルCの外径に略等しくしている。即ち、蓋体2の上面中央部に吸気ノズルCの開口下端を押し付けて該吸気ノズルCを弁本体1に対して垂直状態に立設した時に、上記各外気取り入れ口14の少なくとも一部が吸気ノズルCに連通するように構成している。
【0041】
蓋体2の下面側においては、上記各外気取り入れ口14の内周縁から下方に向かって一定の突出長を有し且つ下端に外向き係止突条部15aを一体に設けている円弧状に湾曲した係止突片15を突設している一方、上記弁本体1の弁配設部材1Aにおける排気孔部3aの外周縁部の3方に設けている係止孔21、21、21の外周縁から、上端に上記係止突片15の係止突条部15aに係脱自在に係止する内向き係止突部16aを一体に設けた一定高さの結合用突片16を突設してあり、この結合用突片16の内向き係止突部16aを上記係止突片15の外向き係止突条部15aに係止させることによって弁本体1と蓋体2とを一体に結合、連結するように構成している。
【0042】
さらにまた、上記弁本体1において、収納袋Bの内面に装着する基板1Bの下面には、図2、図4に示すように、該基板1Bの中央部に設けている上記排気孔3の下側排気孔部3bの開口下端の周縁から基板1Bの外周縁に向かって一定高さを有する多数本の水平条体17、17、17を放射状に突設していると共にこれらの水平条体17、17・・・を基板1Bの下面外周縁からさらに外方に向かって一定長、突出させてあり、さらに、基板1Bの外周縁から突出した隣接する水平条体17、17間の中央部に基板1Bの下面外周縁から突出した水平条体17’によって2分割して各隣接する水平条体17、17’間の空間部を上記排気孔3の開口下端に連通する水平通気路18、18、18・・・に形成している。
【0043】
上記基板1Bの下面外周端から外方に一定の突出長でもって放射状に突出している多数の水平条体17、17’の上面には、これらの全ての水平条体17、17’の上面間を一体に連結した一定高さ(基板1Bの厚みに略等しい高さ)を有する大小径のリング条体19、19’を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体19、19’間の空間部をリング状通気路20、20に形成してあり、これらの各リング状通気路20、20の下方を上記全ての水平通気路18、18・・・に連通させている。
【0044】
次に、以上のように構成した排気弁Aを、柔軟性を有する合成樹脂製シートによって形成された偏平矩形状の合成樹脂製収納袋Bの一部に装着するには図1、図2に示すように、弁本体1の基板1Bを収納袋B内の内面に沿わせて該収納袋Bの適所に設けている孔bにその排気孔部3bを連通するように合致させると共に該排気孔部3aの外周縁部の3方に突設しているフック片22を収納袋Bを貫通かせて外部に突出させる。
【0045】
この状態にして収納袋Bの外面から弁本体1の弁配設部材1Aを押し付けてその排気孔部3aの外周縁部の3方に設けている係止孔21に上記フック片22を挿通させて該フック部22aを係止孔21の上端縁部に係止させると共に弁配設部材1Aの下面側に形成している円形凹部1A2に基板の円形状の中央部1B2を嵌着させることにより、これらの弁配設部材1Aと基板1Bとで収納袋Bの所定部分を挟着した状態に装着する。なお、収納袋Bに対する弁本体1の装着は、上述したように、収納袋Bに弁配設部材1Aと基板1Bとを融着させることによって行ってもよい。
【0046】
しかるのち、蓋体2を上記弁本体1の弁配設部材1A上に配してこの弁配設部材1Aにおける排気孔部3aの外周縁部の3方に突設している隣接する結合用突片16、16間に蓋体2の下面の3方に下方に向かって突設している係止突片15を介在させた状態にして該蓋体2を時計方向に回動させることにより各係止突片15の係止突条部15aを対応する結合用突片16の内向き係止突部16aに係止させ、弁本体1に蓋体2を一体に連結させる。なお、予め、この蓋体2を弁本体1の弁配設部材1Aに一体に連結しておき、しかるのち、この弁配設部材1Aを上記基板1Bに連結させてもよい。
【0047】
この排気弁Aを装着している収納袋Bを用いて、該収納袋B内の収納物Dを圧縮させた状態にするには、まず、収納袋Bの開口端から布団等の収納物Dを収納したのち、開口端の対向内面にそれぞれ設けている凸条部と凹条部とからなるファスナを収納袋Bの一端側から他端側に向かって嵌合させることにより気密状態に閉止する。また、排気弁Aの蓋体2を反時計方向に回動することによって、該蓋体2の下面から突設している係合突起12を弁板6の上面から突設しているカム突起11から外して弁板6のロックを解き、弁板6を上下動可能にしておく。
【0048】
しかるのち、図2に示すように、排気弁Aの蓋体2の上面に電気掃除機の吸気ノズルCの開口下端を当てがって吸気用孔4に該吸気ノズルCを連通させた状態にする。この際、蓋体2の上面はドーム状に湾曲しているので、吸気ノズルCを弁本体1に対して垂直方向のみならず、斜め方向から押し付けても、その開口下端を蓋体2の上面に全面的に当接した状態にすることができ、しかも、その状態で吸気ノズルCを前後左右方向に移動させても該開口下端全面を常に蓋体2の上面に接した状態にしておくことができ、操作性並びに使用勝手が良好となって収納袋B内の脱気作業が円滑に行えるものである。
【0049】
さらに、蓋体2の外周縁部には吸気ノズルCが必要以上に蓋体2の外周端側に移動するのを阻止する規制突部13を突出しているから、吸気ノズルCが蓋体2上で前後左右に移動しても、その開口下端を常に吸気用孔4に全面的に連通させた状態にしておくことができる。
【0050】
こうして、吸気ノズルCの開口下端を排気弁Aの蓋体2上に当てがって吸気用孔4に連通させた状態を保持し、この状態で電気掃除機を作動させると、図5に示すように、吸気ノズルCからの吸気力が蓋体2の吸気用孔4を通じて吸排気室5内に作用し、さらに、この吸排気室5から排気孔3に作用して弁板6が上動する。従って、排気孔3が解放されて収納袋B内の空気が該排気孔3から吸排気室5、吸気用孔4を通じて吸気ノズルCに吸入、排気され、布団等の収納物Dが偏平状に圧縮される。
【0051】
この際、収納袋B内においては、弁本体1の基板1Bの下面に排気孔3の開口下端の外周縁から外方に向かって多数本の水平条体17を突設していると共に、基板1Bの下面外周端からさらにこれらの水平条体17と共に水平条体17’を放射状に突設しているので、基板1Bから突出したこれらの水平条体17、17’が収納袋Bの内面と収納物Dとの間に介在して広い範囲に亘って収納物Bの内面と収納物Dとを離間させた状態にしておくことができる上に、排気孔3からの吸気力が排気孔3から隣接する水平条体17、17’間の多数の水平通気路18を通じて外方に拡がり、従って、排気孔3から水平条体17、17’の先端に至る半径を有する円内の広い区域から収納袋B内及び収納物Dに吸気力が作用して収納物Dが通気性の劣る羽根布団であっても円滑に且つ能率よく収納袋B内の空気を排出することができる。
【0052】
さらに、基板1Bの下面外周端から放射状に突出している上記多数の水平条体17、17’の上面に大小径のリング条体19、19’を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体19、19’間の空間部をリング状通気路20、20に形成しているので、水平通気路18からの吸引力によって該水平通気路18内に収納物Dが吸着されて、この水平通気路18が閉止されても、他の水平通気路18内に発生している吸気力が該水平通気路18の上方のリング状通気路20を通じて上記閉止している水平通気路18の上方にまで迂回してこの水平通気路18内に吸着されている収納物Dに対して吸気作用を奏すことができ、従って、電気掃除機のモータに過大な負荷をかけることなく、収納袋B内の空気を効率よく排出することができる。
【0053】
また、収納袋B内の脱気作業中において、吸引ノズルCの吸気力は吸排気室5内を通じて蓋体2に設けている外気取り入れ口14にも作用し、収納袋B内の空気と共に外気が該取り入れ口14から吸排気室5、吸気用孔4を通じて吸引ノズルCに吸入され、収納袋B内の脱気が完全に行われたのちにおいては、該外気取り入れ口14からの外気の吸入が続行されて、電気掃除機のモータに殆ど負荷をかけることなく、収納袋B内の脱気を行うことができる。
【0054】
こうして、収納袋B内が脱気されたのち、排気弁Aの蓋体2上から吸引ノズルCの吸引口を離脱させると、真空状態の収納袋B側からの吸気力が排気口3に作用して弁板6がその吸気力より瞬時に排気口3の便座7に圧着し、収納袋B内に外気が入るのを阻止する。なお、上記外気取り入れ口14は規制突部13の外側に設けておいてもよい。
【0055】
しかるのち、蓋体2を時計方向に回動させると、この蓋体2の下面に突設している係合突起12の係合端面12aが上記弁板6の外周端縁部から上方に突出しているカム突起11の傾斜端面11a上に当接したのち、さらに該傾斜端面11a上を摺動しながらカム突起11の水平頂面11bに乗り上げ、弁板6のシール材9を便座7に圧縮状態で圧着させて排気孔3を閉止状態にロックする。なお、このロック作動時においては、蓋体2の回動にもかかわらず、弁板6はその外周端の数個所から突設している水平突起6aを排気孔3の周囲に突設している複数のガイド突片8、8における隣接するガイド突片8、8間に挿入しているので、回動することなくロック動作を確実に行わせることができる。
【0056】
図6、図7は本発明の別な実施の形態を示すもので、上記実施の形態においては弁板6のロック機構10として、該弁板6の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起11と、蓋体2の下面における吸気用孔4の外周部に突設された係合突起12とからなり、この係合突起12を上記蓋体2の一方向の回動操作により対向するカム突起11の上端面に係止させて弁板6を閉止状態に保持し、該蓋体2の他方向の回動操作により対向するカム突起11の上端面からの係合突起12の係止を解いて弁板6の上下動を許容するように構成しているが、この図6、図7に示す実施の形態においては弁板6のロック機構10’として、蓋体に水平方向に往復動する操作部材10aを設けてこの操作部材10aの往復操作により、行うように構成している。
【0057】
具体的には、ロック機構10’は、蓋体2に棒状の操作部材10aを水平方向に往復動自在に貫通、支持させていると共に、この操作部材10aの長さ方向の中央部下面に傾斜端面11aと水平頂面11bとを有するカム突起11を下方に向かって突設する一方、弁板6の上面中央部に該カム突起11の傾斜端面11aに対向させて該カム突起11と係脱自在に係合する係合突起12を突設してなるものである。
【0058】
そして、上記蓋体2から突設している操作部材10aの両端部を摘んで該操作部材10aを水平方向に往動させ、係合突起12の頂面にカム突起11をその傾斜端面11aから水平頂面11bに乗り上げさせることにより、弁板6を下方に押圧してそのシール材9を便座7に圧縮状態で圧着させて排気孔3を閉止状態にロックする一方、操作部材10aを水平方向に復動操作することより、カム突起11を係合突起12から離脱させて弁板6のロックを解くようにしている。なお、操作部材10aに係合突起12を、弁板1にカム突起11を設けておいてもよい。その他の構成については上記実施の形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
また、上記いずれの実施の形態においても、弁本体1における基板1Bの下面外周端から放射状に突出している多数の水平条体17、17’によって水平通気路18を形成していると共にこれらの水平条体17、17’の上面に大小径のリング条体19、19’を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体19、19’間の空間部をリング状通気路20、20に形成することによって、収納袋B内に広範囲に亘り吸気力を作用させて能率のよい脱気を行っているが、これらの水平条体17、17’とリング条体19、19’とによる通気路の形成に代えて、弁本体1における基板1Bの外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ又は不織布等からなる円環状の多孔質板を突設しておいても、この多孔質板の無数の孔が厚み方向、水平方向に互いに連通しているので、上記と同じ作用効果を奏することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように本発明の請求項1に記載した収納袋の排気弁によれば、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けているので、この蓋体の上面に電気掃除機の吸気ノズルを押し付けて該吸気ノズルからの吸気力を弁本体内に作用させることによって、弁板を自動的に解放させて直ちに収納袋内の脱気作業を行うことができ、脱気後においては、電気掃除機の作動を停止させることによって弁板を排気口に確実に密着させることができる。
【0061】
さらに、ロック機構として、請求項1、2に係る発明によれば、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置へ移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置へ移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成しているので、収納袋内の脱気後にはこのロック機構によって排気孔が不測に解放するのを確実に防止しておくことができると共に、収納物を圧縮状態で収納している収納袋を積み重ねても、その積み重ねた荷重が弁板をさらに押し下げようとする力として作用させることができてロック状態を確実に保持しておくことができ、また弁板のロック及びロック解除操作が簡単かつ確実に行うことができる。
【0062】
さらに、上記ロック機構として、請求項3に係る発明によれば、蓋体の下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設けているので、収納袋内の脱気後にはこのロック機構によって排気孔が不測に解放するのを確実に防止しておくことができ、その上、このロック機構による弁板の閉止状態の保持は、蓋体を弁本体側に押圧する力によって行われているので、収納物を圧縮状態で収納している収納袋を積み重ねても、その積み重ねた荷重が弁板をさらに押し下げようとする力として作用してロック状態を確実に保持しておくことができるものである。
【0063】
請求項3に記載の収納袋の排気弁において、上記ロック機構の構造として、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止して弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成しているので、弁板のロック及びロック解除操作が簡単かつ確実に行うことができ、ロックした状態においては、収納袋内への外気の浸入を阻止した閉弁状態を確実に保持しておくことができる。
【0064】
請求項4及び5に係る発明によれば、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成しているので、この弁本体を収納袋の所定部分に簡単且つ強固に装着することができるばかりでなく、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成しているので、弁板を前後左右に妄動させることなく短円筒状空間部内で正確に上下動させることができ、その上、蓋体の回動操作によるロック時には弁本体を供回りさせることなく円滑にロックすることができる。
【0065】
また、請求項6に係る発明によれば、上記蓋体の上面をその中央部に設けている吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成しているので、電気掃除機の吸気ノズルを弁本体に対して垂直方向のみならず、斜め方向に向けた状態にしても、該吸気ノズルの開口下端面を蓋体の上面に全面的に密接した状態にして排気操作を行うことができ、従って、操作性に優れていると共に排気作業が円滑に行うことができる。
【0066】
さらに、上記蓋体の上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設していると共にこの規制突部と上記吸気用孔との周囲に外気取り入れ口を設けているので、吸気ノズルが蓋体の外周縁側に大きく移動するのを規制突部によって確実に阻止して吸気ノズルを常に排気口に全面的に連通させた状態にして排気作業を行うことができると共に、吸気用孔の少なくとも一部分を吸気ノズルから外部に露出させた状態にしておくことができ、そのため、収納袋内が完全に脱気された後においては、吸気ノズルからの吸気力を蓋体内から上記吸気用孔を通じて外気に作用させて外気を吸引することができ、電気掃除機のモータに大きな負荷がかかるのを防止することができる。
【0067】
また、請求項7に係る発明によれば、上記基板の下面における排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の空間部を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成しているので、基板から突出した上記水平条体が収納袋の内面と収納物との間に介在して広い範囲に亘って収納物の内面と収納物とを離間させた状態にしておくことができる上に、排気孔からの吸気力を隣接する水平条体間の多数の水平通気路を通じて広い範囲に亘り収納袋内に作用させることができ、従って、収納袋内の空気を円滑に且つ能率よく排出することができる。
【0068】
その上、水平通気路を通じての吸引力によって該水平通気路に収納物の一部が吸着されて該水平通気路が閉止されても、この水平通気路の上面側はリング状通気路を通じて他の水平通気路に連通しているので、この他の水平通気路内に発生している吸気作用をその上方のリング状通気路を介して上記閉止している水平通気路の上方に迂回的に作用させることができ、従って、脱気作用を殆ど妨げることなく、収納袋内の空気を効率よく排出して収納袋を円滑に圧縮することができる。このような作用効果は、請求項8に記載したように、弁本体の基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ又は不織布等の多孔質板を突設しておいても奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
排気弁の分解斜視図、
【図2】
収納袋に装着した状態の縦断正面図、
【図3】
その簡略平面図、
【図4】
弁本体の基板の平面図、
【図5】
排気状態を示す縦断正面図、
【図6】
本発明の別な実施の形態を示す排気弁の縦断正面図、
【図7】
その平面図。
【符号の説明】
A 排気弁
B 収納袋
C 吸気ノズル
D 収納物
1 弁本体
1A 弁配設部材
1B 基板
2 蓋体
3 排気孔
4 吸気用孔
6 弁板
10 ロック機構
11 カム突起
12 係合突起
13 規制突部
14 外気取り入れ口
17 水平条体
18 水平通気路
19 リング条体
20 リング状通気路
(参考)平成18年10月4日付け訂正審判の請求書に添付した全文訂正明細書
【発明の名称】収納袋の排気弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項2】ロック機構は、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の収納袋の排気弁。
【請求項3】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設け、該ロック機構は、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項4】弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成していることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の収納袋の排気弁。
【請求項5】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記蓋体の上面を吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成していると共に、この上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設してあり、この規制突部と上記吸気用孔との周囲に外気取り入れ口を設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項6】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、基板の下面における排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の空間部を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成していることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項7】収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ等の多孔質板を突設していることを特徴とする収納袋の排気弁。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、布団や毛布などの寝具類や衣服などを収納する収納袋に装着して、この収納袋内を電気掃除機等の吸気ノズルを使用して脱気し、収納物をコンパクトに圧縮するための収納袋の排気弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、布団や衣類などを押し入れやタンスに収納、保管する際に、限られた収納場所にできるだけ多くの布団や衣類等を収納するために、偏平な合成樹脂製収納袋内に布団等を収納したのち、電気掃除機を使用してこの収納袋内の空気を排除することにより、収納物を圧縮することが行われている。このような収納物の圧縮は、一般家庭に限らず寝具類を取り扱う業者においても行われ、また、旅行する際に、鞄に衣類等を収納する場合においても収納袋を圧縮することが行われている。
【0003】
布団等を収納した袋を圧縮するには、通常、収納袋の開口部に装着されているフアスナーによってその開口部の一部を開き、この開口部から電気掃除機の吸気ノズルを挿入して袋内を脱気することにより行われているが、吸気ノズルを直接収納袋内に挿入すると、袋内の収納物が吸気ノズルの吸引力によって該吸気ノズルの開口端に吸着され、収納物が損傷する虞れがあるばかりでなく、吸気ノズルが詰まって袋内の脱気が困難になると共に電気掃除機のモータに大きな負荷がかかって故障の原因となる。
【0004】
このため、電気掃除機の吸気ノズルを収納袋内に挿入することなく、該収納袋に排気弁を装着しておき、この排気弁を通じて外部から電気掃除機の吸気ノズルにより袋内の空気を排気して収納袋を圧縮することが行われている。
【0005】
このような排気弁としては、中央部に収納袋内に連通させる排気孔を設けた弁本体に、中央部に上下面間に貫通した吸気用孔を設けているドーム形状の可動蓋を上下動自在に取付け、この可動蓋と弁本体との対向面間で形成している室内に上記排気孔の開閉用弁板と、この弁板を上方から押圧して排気孔に密着させているスプリングと、このスプリング力に抗して上記弁板を上動させて開弁させる弁板作動機構とを配設し、該弁板作動機構を上記可動蓋の押し下げによって作動させて弁板を開弁させ、この状態にして電気掃除機の吸気ノズルにより上記吸気用孔から収納袋内の空気を排気すると共に、排気後には弁板作動機構を不作動状態にロックするように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2003-34379号公報(第4?6頁、第1図)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような排気弁構造によれば、排気後において弁板作動機構を不作動状態にロックする機構としては、弁本体の外周部数個所にガイド突片を突設し、このガイド突片の上端部を上記可動蓋の外周部数個所に設けている円弧状長孔内に挿通して可動蓋を下動可能にする一方、該円弧状長孔内の一端部に係合突起を一体に設けて、上記ガイド突片の上方にこの係合突起が対向する位置まで可動蓋を回動させた時に、係合突起がガイド突片に受止されて可動蓋が下動するのを防止するように構成しているために、可動蓋に収納袋の積み重ね等による過大な荷重がかかると、係合突起が破損してロックがきかなくなり、可動蓋が下動して開弁し、収納袋が膨脹するといった問題点が生じる。
【0008】
また、収納袋内を脱気する際に、電気掃除機の吸気ノズルを可動蓋上に押し付けてスプリング力に抗して弁板を開放させた状態を保持しておかねばならないために、操作が煩雑化して使用勝手が悪くなるばかりでなく、スプリングは金属材料で形成されているために、錆が発生して円滑な作動が行えなくなる事態が発生する虞れがある。
【0009】
さらに、収納袋内が完全に脱気されたのちにおいても、電気掃除機の吸気ノズルによる吸気力が収納袋内に作用してモータに大きな負荷がかかり、故障の原因となる。そのため、上記可動蓋の外周部に外気取り込み用の孔を設けているが、この可動蓋は上述したようにドーム形状に形成して、電気掃除機の吸気ノズルを垂直方向のみならず、斜め方向からも自由に押し付けた状態で使用できるようにしているため、吸気ノズルが可動蓋上を前後左右に大きく傾動した場合には、吸気用孔から外れる虞れがあった。
【0010】
さらにまた、排気弁の弁本体は、中央部に排気口を設けている円板形状の基板とこの排気口を開閉させる上記弁板を設けた弁配設部材とからなり、これらの基板と弁配設部材とを収納袋の一部における内外面にそれぞれ当てがって収納袋における通気孔を開設している一部を挟着した状態で一体に結合させた構造としているため、排気弁を開放させて収納袋内の空気を上記通気孔から排気口を通じて吸引、排除する際に、その吸気力が排気口の下方の収納物表面に集中的に作用して該表面がその強力な吸気力によって排気口に吸着し、袋内の脱気が完了するまでの比較的長時間を要することになるばかりでなく、電気掃除機のモータに大きな負荷がかかって故障の原因となる。
【0011】
このような問題点は、弁本体の基板の下面に一定高さの排気通路を排気口の周囲から基板の外周端に向かって放射状に突設してなる構造としてもおいても、この排気通路を通じての吸気力により、排気通路の開口端周囲の収納物の表面が収納袋の内面に密着し、特に、収納物が通気性に劣る羽毛布団のような袋地の場合には、この袋地の微細な織目を通じての排気が困難であった。
【0012】
このため、弁本体の基板の外周面から外方に向かって一定厚みを有する多孔板を一体に設けて、この多孔板により収納物の表面と収納袋の内面との間に多孔板の大きさに相当する隙間を設けるように構成することも行われているが、各孔は、多孔板の厚みに相当する一定高さの孔壁によって隣接する孔間の連通が阻止された独立した通気孔に形成されているために、排気孔を通じての吸気力を通気孔に円滑に作用させることはできず、上記した問題点を充分に解消することができないといった問題点があった。
【0013】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、排気後において弁板を排気口に積極的に押し付けた状態で簡単且つ確実にロックしておくことができ、また、排気口に対して電気掃除機の吸気ノズルが傾動する方向に移動しても該吸気ノズルを常に排気口に連通させた状態を保持して電気掃除機に大きな負担をかけることなく能率よく収納袋内を脱気することができると共に脱気後、吸気力を解くと同時に自動的に閉弁させることができ、さらにまた、収納物が羽毛布団のような通気性に劣る物品であっても、円滑にその内部を脱気することができる収納袋の排気弁構造を提供するにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の収納袋の排気弁は、請求項1に記載したように、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を設けてなる構造を有している。
【0015】
このように構成した収納袋の排気弁において、請求項2に記載したように、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成している。
【0016】
一方、請求項3に係る発明は、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設けていることを特徴とする。
【0017】
このように構成した収納袋の排気弁において、上記ロック機構の構造として、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成している。
【0018】
さらに、請求項4に係る発明は、上記弁本体を、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成している。
【0019】
また、請求項5に係る発明は、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記蓋体の上面を吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成していると共に、この上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設してあり、この規制突部と上記吸気用孔との周囲の数個所に外気取り入れ口を設けていることを特徴とする。
【0020】
一方、請求項6に係る発明は、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、基板の下面における排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の空間部を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成していることを特徴とする。
【0021】
また、請求項7に係る発明においては、上記請求項6に記載の水平通気路とリング状通気路に代えて、基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ等の多孔質板を突設していることを特徴とする。
【0022】
【作用】
収納袋内に布団等を収納したのちその開口部をファスナーにより閉止し、収納袋に装着している排気弁における蓋体の上面に電気掃除機の吸気ノズルの開口端を押し付けて蓋体に設けている吸気用孔に連通させた状態にし、電気掃除機を作動させると、弁板が上動して排気孔が開放され、吸気ノズルからの吸気力によって排気孔を通じて収納袋内の空気が吸気ノズル側に排気され、収納袋内が脱気される。
【0023】
収納袋内が脱気されて布団等の収納物が圧縮状態になると、蓋体に対する電気掃除機の吸気ノズルの押し付けを解く。そうすると、収納袋内が真空状態であるから、この収納袋側に発生する吸気力によって弁板が下動して排気孔を自動的に閉止し、収納袋内に外気が入るのを阻止する。
【0024】
しかるのち、蓋体を弁板回りに一方向に回動させると、該蓋体の下面側に設けているロック機構が作動して該ロック機構により弁板が直接、下方に押圧され、排気孔を密閉した状態に保持する。このように、ロック機構による弁板の閉止状態の保持は、蓋体を弁本体側に押圧する力によって行われているので、収納物を圧縮状態で収納している収納袋を積み重ねても、その積み重ねた荷重が弁板をさらに押し下げようとする力として作用し、不測に弁板を開放させることなく、弁板のロック状態を確実に保持しておくことができる。また、この蓋体の回動によるロック機構に代えて、上記蓋体から両端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するように構成したロック機構を蓋体の下面側に設けたものであっても同様な作用効果を奏する。
【0025】
収納袋から収納物を取り出す時には、該収納袋の開口部を閉止しているファスナーを開放すればよく、再び、この収納袋を使用する際には、上記ロック機構による弁板の閉止状態を解き、上述したように吸気ノズルによって収納袋内を脱気すればよい。
【0026】
また、上記蓋体の上面をその中央部に設けている吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成しているので、電気掃除機の吸気ノズルを弁本体に対して垂直方向のみならず、斜め方向に向けた状態にしても、該吸気ノズルの開口下端面を蓋体の上面に全面的に密接した状態にして排気操作を行うことができる。
【0027】
従って、操作性が良くて円滑な排気作業を可能にすることができるばかりでなく、上記蓋体の上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設していると共にこの規制突部と上記吸気用孔との周囲に外気取り入れ口を設けているので、吸気ノズルが蓋体の外周縁側に大きく移動するのを規制突部によって確実に阻止して吸気ノズルを常に排気口に全面的に連通させた状態にして排気作業を行うことができると共に、吸気用孔の少なくとも一部分を吸気ノズルから外部に露出させた状態にしておくことができ、そのため、収納袋内が完全に脱気された後においては、吸気ノズルからの吸気力を蓋体内から上記吸気用孔を通じて外気に作用させて外気を吸引することができ、電気掃除機のモータに大きな負荷がかかるのを防止することができる。
【0028】
さらにまた、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成しているので、この弁本体を収納袋の所定部分に簡単且つ強固に装着することができる。
【0029】
その上、収納袋の内面側に装着している上記基板の下面において、排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の隙間を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成しているので、これらの水平通気路とリング状通気路を収納袋の内面と収納物の表面との間に介在させて排気口に発生している吸気ノズルからの吸気力を放射状に設けている多数の水平通気路を通じて広い範囲に亘る収納物表面部から該収納物内の空気を吸引、排除することができ、収納物が通気性に劣る羽毛布団であっても、能率のよい脱気が可能となる。
【0030】
さらに、吸引力によって水平通気路の一部に収納物の一部が吸着されて該水平通気路の一部を閉止しても、この水平通気路の上面側はリング状通気路を通じて他の水平通気路に連通しているので、この他の水平通気路内に発生している吸気作用がその上方のリング状通気路を介して上記閉止している水平通気路の上方に迂回的に作用し、脱気作用を殆ど妨げることなく、収納袋内の空気を効率よく排出して収納袋を円滑に圧縮することができる。また、上記水平通気路とリング状通気路に代えて、基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ或いは不織布等の多孔質板を突設しておいても、同様な作用効果を奏することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1、図2において、排気弁Aは合成樹脂製であって、収納袋Bの一部を内外から挟着又は融着して該収納袋Bに装着し、外部からの吸気力によってその中央部に設けている排気孔3を通じて収納袋B内の空気を排除するように構成した弁本体1と、この弁本体1に左右方向に往復回動自在に取付け且つ中央部に吸気用孔4を設けている蓋体2とからなり、これらの弁本体1と蓋体2との対向面間の空間部を吸排気室5に形成している。
【0032】
弁本体1は、径が6cm程度の円板形状の弁配設部材1Aと基板1Bとからなり、弁配設部材1Aの中央部に上記排気孔3の上側排気孔部3aを上下面間に亘って貫通、形成している一方、基板1Bの中央部に上記排気孔3の下側排気孔部3bを上下面間に亘って貫通、形成している。この下側排気孔部3bは上側排気孔部3aよりも小径に形成されていて弁配設部材1Aと基板1Bとを上下に重ね合わせて一体に連結した状態においては、上側排気孔部3aの開口下端の内周面から該下側排気孔部3bの周縁部を内方に向かって円環状に露出させて該露出上面で弁板6の弁座7を形成している。
【0033】
上記弁配設部材1Aと基板1Bとを収納袋Bの一部を内外面から挟着して互いに重ね合わせた状態で収納袋Bの一部に装着するには、弁配設部材1Aの排気孔部3aの外周縁部の3方に上下面間に貫通した係止孔21を設けている一方、基板1Bの上記排気孔部3bの外周縁部の3方に断面逆L字状に形成しているフック片22を突設し、これらのフック片22をそれぞれ対向する上記係止孔21に挿通して、フック部22aを係止孔21の上端縁部に係止させることによって行うように構成している。なお、この弁本体1の取付部における収納袋Bには、内外の排気孔部3a、3bに連通した孔bが設けられている。
【0034】
さらに、上記弁配設部材1Aの外周部は下方に向かって該弁配設部材1Aの厚みに略相当する寸法だけ低位置に設けられたフランジ部1A1に形成されていて、その下面側に上記フランジ部1A1によって囲まれた円形凹部1A2を形成してあり、同様に、上記基板1Bの外周部も中央部よりも低位置に設けられたフランジ部1B1に形成してこのフランジ部1B1から上方に突出する円形状の中央部1B2を上記円形凹部1A2に嵌着させるように構成してあり、これらの弁配設部材1Aと基板1Bとで収納袋Bの所定部分をその位置からずらすことなく強固に挟着するように構成している。なお、収納袋Bの内外面に対する上記弁配設部材1Aと基板1Bとの装着は、収納袋Bの一部を加熱によって弁配設部材1Aと基板1Bとの対向面に融着させることによって行ってもよい。
【0035】
また、弁配設部材1Aの上面における上記上側排気孔部3aの開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片8を周方向に一定間隔毎に突設して、これらのガイド突片8によって囲まれた短円筒状空間部内に上記弁板6を上下動自在に配設している。この弁板6の外周端の数個所(図においては3方)に水平突起6aを突設してあり、これらの水平突起6aを隣接するガイド突片8、8間の隙間8aに上下摺動自在に挿入して、弁板6を回動させることなく正確に上下動させるように構成している。なお、弁板6の下面には弾性的に圧縮変形可能な一定厚みのシール材9を接着等により固着している。
【0036】
一方、上記蓋体2の下面側には、この蓋体2を上記弁板6を中心として該弁板回りの一方向に回動操作した時に、弁板6を下方に押圧して上記排気孔3の上端開口部を閉止状態に保持し、他方向に回動操作した時に該弁板6の上下動を許容するロック機構10を設けている。
【0037】
このロック機構10は、上記弁板6の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎(図においては3方)に上方に向かって突設している複数個のカム突起11と、これらの各カム突11の上方にそれぞれ対向させて、蓋体2の下面における上記吸気用孔4の外周部に周方向に一定間隔毎(図においては3方)に下方に向かって突設している係合突起12とからなり、上記カム突起11の上端面の一半部を一端側から時計回り方向に向かって徐々に緩やかな角度でもって上向きに傾斜した傾斜端面11aを形成していると共に、他半部をこの傾斜端面11aの上傾端から水平に連続した水平頂面11bに形成している一方、上記係合突起12の下端面を上記傾斜端面11aから水平頂面11bにかけた連続的に摺接可能な係合端面12aに形成している。
【0038】
そして、蓋体2の一方向(時計方向)の回動によりこの係合突起12の係合端面12aをカム突起11の傾斜端面11aに接して水平頂面11bに乗り上げた状態にした時には弁板6を開放不能にロックし、蓋体2の他方向(反時計方向)の回動により係合突起12の係合端面12aをカム突起11の水平頂面11bから傾斜端面11aを介して離脱させた時にはロックを開放して弁板6を自由に上下動させるように構成している。なお、蓋体2側にカム突起11を、弁板6側に係合突起12を突設しておいてもよい。
【0039】
さらに、上記蓋体2はその上面を中央部に設けている上記吸気用孔4の周縁から蓋体2の外周端に向かって下方に緩やかに凸円弧状に傾斜したドーム形状に形成されていると共に、その上面の外周部数個所(図においては四方)に周方向に一定間隔毎に、収納袋B内を脱気する時に蓋体2の上面に当てがう電気掃除機の吸気ノズルCが蓋体2の上面から必要以上に外周方に移動するのを規制するための規制突部13、13を突設している。
【0040】
また、この規制突部13と上記吸気用孔4との間の蓋体部分の数個所(図においては3方)に、蓋体2の上下面間に貫通した外気取り入れ口14、14、14を設けている。この外気取り入れ口14は吸気用孔4を中心とする円弧状に湾曲した長孔に形成されてあり、且つ吸気用孔4の中心からその内周縁または孔幅の中間部までの半径を上記吸気ノズルCの外径に略等しくしている。即ち、蓋体2の上面中央部に吸気ノズルCの開口下端を押し付けて該吸気ノズルCを弁本体1に対して垂直状態に立設した時に、上記各外気取り入れ口14の少なくとも一部が吸気ノズルCに連通するように構成している。
【0041】
蓋体2の下面側においては、上記各外気取り入れ口14の内周縁から下方に向かって一定の突出長を有し且つ下端に外向き係止突条部15aを一体に設けている円弧状に湾曲した係止突片15を突設している一方、上記弁本体1の弁配設部材1Aにおける排気孔部3aの外周縁部の3方に設けている係止孔21、21、21の外周縁から、上端に上記係止突片15の係止突条部15aに係脱自在に係止する内向き係止突部16aを一体に設けた一定高さの結合用突片16を突設してあり、この結合用突片16の内向き係止突部16aを上記係止突片15の外向き係止突条部15aに係止させることによって弁本体1と蓋体2とを一体に結合、連結するように構成している。
【0042】
さらにまた、上記弁本体1において、収納袋Bの内面に装着する基板1Bの下面には、図2、図4に示すように、該基板1Bの中央部に設けている上記排気孔3の下側排気孔部3bの開口下端の周縁から基板1Bの外周縁に向かって一定高さを有する多数本の水平条体17、17、17を放射状に突設していると共にこれらの水平条体17、17・・・を基板1Bの下面外周縁からさらに外方に向かって一定長、突出させてあり、さらに、基板1Bの外周縁から突出した隣接する水平条体17、17間の中央部に基板1Bの下面外周縁から突出した水平条体17’によって2分割して各隣接する水平条体17、17’間の空間部を上記排気孔3の開口下端に連通する水平通気路18、18、18・・・に形成している。
【0043】
上記基板1Bの下面外周端から外方に一定の突出長でもって放射状に突出している多数の水平条体17、17’の上面には、これらの全ての水平条体17、17’の上面間を一体に連結した一定高さ(基板1Bの厚みに略等しい高さ)を有する大小径のリング条体19、19’を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体19、19’間の空間部をリング状通気路20、20に形成してあり、これらの各リング状通気路20、20の下方を上記全ての水平通気路18、18・・・に連通させている。
【0044】
次に、以上のように構成した排気弁Aを、柔軟性を有する合成樹脂製シートによって形成された偏平矩形状の合成樹脂製収納袋Bの一部に装着するには図1、図2に示すように、弁本体1の基板1Bを収納袋B内の内面に沿わせて該収納袋Bの適所に設けている孔bにその排気孔部3bを連通するように合致させると共に該排気孔部3aの外周縁部の3方に突設しているフック片22を収納袋Bを貫通かせて外部に突出させる。
【0045】
この状態にして収納袋Bの外面から弁本体1の弁配設部材1Aを押し付けてその排気孔部3aの外周縁部の3方に設けている係止孔21に上記フック片22を挿通させて該フック部22aを係止孔21の上端縁部に係止させると共に弁配設部材1Aの下面側に形成している円形凹部1A2に基板の円形状の中央部1B2を嵌着させることにより、これらの弁配設部材1Aと基板1Bとで収納袋Bの所定部分を挟着した状態に装着する。なお、収納袋Bに対する弁本体1の装着は、上述したように、収納袋Bに弁配設部材1Aと基板1Bとを融着させることによって行ってもよい。
【0046】
しかるのち、蓋体2を上記弁本体1の弁配設部材1A上に配してこの弁配設部材1Aにおける排気孔部3aの外周縁部の3方に突設している隣接する結合用突片16、16間に蓋体2の下面の3方に下方に向かって突設している係止突片15を介在させた状態にして該蓋体2を時計方向に回動させることにより各係止突片15の係止突条部15aを対応する結合用突片16の内向き係止突部16aに係止させ、弁本体1に蓋体2を一体に連結させる。なお、予め、この蓋体2を弁本体1の弁配設部材1Aに一体に連結しておき、しかるのち、この弁配設部材1Aを上記基板1Bに連結させてもよい。
【0047】
この排気弁Aを装着している収納袋Bを用いて、該収納袋B内の収納物Dを圧縮させた状態にするには、まず、収納袋Bの開口端から布団等の収納物Dを収納したのち、開口端の対向内面にそれぞれ設けている凸条部と凹条部とからなるファスナを収納袋Bの一端側から他端側に向かって嵌合させることにより気密状態に閉止する。また、排気弁Aの蓋体2を反時計方向に回動することによって、該蓋体2の下面から突設している係合突起12を弁板6の上面から突設しているカム突起11から外して弁板6のロックを解き、弁板6を上下動可能にしておく。
【0048】
しかるのち、図2に示すように、排気弁Aの蓋体2の上面に電気掃除機の吸気ノズルCの開口下端を当てがって吸気用孔4に該吸気ノズルCを連通させた状態にする。この際、蓋体2の上面はドーム状に湾曲しているので、吸気ノズルCを弁本体1に対して垂直方向のみならず、斜め方向から押し付けても、その開口下端を蓋体2の上面に全面的に当接した状態にすることができ、しかも、その状態で吸気ノズルCを前後左右方向に移動させても該開口下端全面を常に蓋体2の上面に接した状態にしておくことができ、操作性並びに使用勝手が良好となって収納袋B内の脱気作業が円滑に行えるものである。
【0049】
さらに、蓋体2の外周縁部には吸気ノズルCが必要以上に蓋体2の外周端側に移動するのを阻止する規制突部13を突出しているから、吸気ノズルCが蓋体2上で前後左右に移動しても、その開口下端を常に吸気用孔4に全面的に連通させた状態にしておくことができる。
【0050】
こうして、吸気ノズルCの開口下端を排気弁Aの蓋体2上に当てがって吸気用孔4に連通させた状態を保持し、この状態で電気掃除機を作動させると、図5に示すように、吸気ノズルCからの吸気力が蓋体2の吸気用孔4を通じて吸排気室5内に作用し、さらに、この吸排気室5から排気孔3に作用して弁板6が上動する。従って、排気孔3が解放されて収納袋B内の空気が該排気孔3から吸排気室5、吸気用孔4を通じて吸気ノズルCに吸入、排気され、布団等の収納物Dが偏平状に圧縮される。
【0051】
この際、収納袋B内においては、弁本体1の基板1Bの下面に排気孔3の開口下端の外周縁から外方に向かって多数本の水平条体17を突設していると共に、基板1Bの下面外周端からさらにこれらの水平条体17と共に水平条体17’を放射状に突設しているので、基板1Bから突出したこれらの水平条体17、17’が収納袋Bの内面と収納物Dとの間に介在して広い範囲に亘って収納物Bの内面と収納物Dとを離間させた状態にしておくことができる上に、排気孔3からの吸気力が排気孔3から隣接する水平条体17、17’間の多数の水平通気路18を通じて外方に拡がり、従って、排気孔3から水平条体17、17’の先端に至る半径を有する円内の広い区域から収納袋B内及び収納物Dに吸気力が作用して収納物Dが通気性の劣る羽根布団であっても円滑に且つ能率よく収納袋B内の空気を排出することができる。
【0052】
さらに、基板1Bの下面外周端から放射状に突出している上記多数の水平条体17、17’の上面に大小径のリング条体19、19’を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体19、19’間の空間部をリング状通気路20、20に形成しているので、水平通気路18からの吸引力によって該水平通気路18内に収納物Dが吸着されて、この水平通気路18が閉止されても、他の水平通気路18内に発生している吸気力が該水平通気路18の上方のリング状通気路20を通じて上記閉止している水平通気路18の上方にまで迂回してこの水平通気路18内に吸着されている収納物Dに対して吸気作用を奏すことができ、従って、電気掃除機のモータに過大な負荷をかけることなく、収納袋B内の空気を効率よく排出することができる。
【0053】
また、収納袋B内の脱気作業中において、吸引ノズルCの吸気力は吸排気室5内を通じて蓋体2に設けている外気取り入れ口14にも作用し、収納袋B内の空気と共に外気が該取り入れ口14から吸排気室5、吸気用孔4を通じて吸引ノズルCに吸入され、収納袋B内の脱気が完全に行われたのちにおいては、該外気取り入れ口14からの外気の吸入が続行されて、電気掃除機のモータに殆ど負荷をかけることなく、収納袋B内の脱気を行うことができる。
【0054】
こうして、収納袋B内が脱気されたのち、排気弁Aの蓋体2上から吸引ノズルCの吸引口を離脱させると、真空状態の収納袋B側からの吸気力が排気口3に作用して弁板6がその吸気力より瞬時に排気口3の便座7に圧着し、収納袋B内に外気が入るのを阻止する。なお、上記外気取り入れ口14は規制突部13の外側に設けておいてもよい。
【0055】
しかるのち、蓋体2を時計方向に回動させると、この蓋体2の下面に突設している係合突起12の係合端面12aが上記弁板6の外周端縁部から上方に突出しているカム突起11の傾斜端面11a上に当接したのち、さらに該傾斜端面11a上を摺動しながらカム突起11の水平頂面11bに乗り上げ、弁板6のシール材9を便座7に圧縮状態で圧着させて排気孔3を閉止状態にロックする。なお、このロック作動時においては、蓋体2の回動にもかかわらず、弁板6はその外周端の数個所から突設している水平突起6aを排気孔3の周囲に突設している複数のガイド突片8、8における隣接するガイド突片8、8間に挿入しているので、回動することなくロック動作を確実に行わせることができる。
【0056】
図6、図7は本発明の別な実施の形態を示すもので、上記実施の形態においては弁板6のロック機構10として、該弁板6の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起11と、蓋体2の下面における吸気用孔4の外周部に突設された係合突起12とからなり、この係合突起12を上記蓋体2の一方向の回動操作により対向するカム突起11の上端面に係止させて弁板6を閉止状態に保持し、該蓋体2の他方向の回動操作により対向するカム突起11の上端面からの係合突起12の係止を解いて弁板6の上下動を許容するように構成しているが、この図6、図7に示す実施の形態においては弁板6のロック機構10’として、蓋体に水平方向に往復動する操作部材10aを設けてこの操作部材10aの往復操作により、行うように構成している。
【0057】
具体的には、ロック機構10’は、蓋体2に棒状の操作部材10aを水平方向に往復動自在に貫通、支持させていると共に、この操作部材10aの長さ方向の中央部下面に傾斜端面11aと水平頂面11bとを有するカム突起11を下方に向かって突設する一方、弁板6の上面中央部に該カム突起11の傾斜端面11aに対向させて該カム突起11と係脱自在に係合する係合突起12を突設してなるものである。
【0058】
そして、上記蓋体2から突設している操作部材10aの両端部を摘んで該操作部材10aを水平方向に往動させ、係合突起12の頂面にカム突起11をその傾斜端面11aから水平頂面11bに乗り上げさせることにより、弁板6を下方に押圧してそのシール材9を便座7に圧縮状態で圧着させて排気孔3を閉止状態にロックする一方、操作部材10aを水平方向に復動操作することより、カム突起11を係合突起12から離脱させて弁板6のロックを解くようにしている。なお、操作部材10aに係合突起12を、弁板1にカム突起11を設けておいてもよい。その他の構成については上記実施の形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
また、上記いずれの実施の形態においても、弁本体1における基板1Bの下面外周端から放射状に突出している多数の水平条体17、17’によって水平通気路18を形成していると共にこれらの水平条体17、17’の上面に大小径のリング条体19、19’を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体19、19’間の空間部をリング状通気路20、20に形成することによって、収納袋B内に広範囲に亘り吸気力を作用させて能率のよい脱気を行っているが、これらの水平条体17、17’とリング条体19、19’とによる通気路の形成に代えて、弁本体1における基板1Bの外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ又は不織布等からなる円環状の多孔質板を突設しておいても、この多孔質板の無数の孔が厚み方向、水平方向に互いに連通しているので、上記と同じ作用効果を奏することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように本発明の請求項1に記載した収納袋の排気弁によれば、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けているので、この蓋体の上面に電気掃除機の吸気ノズルを押し付けて該吸気ノズルからの吸気力を弁本体内に作用させることによって、弁板を自動的に解放させて直ちに収納袋内の脱気作業を行うことができ、脱気後においては、電気掃除機の作動を停止させることによって弁板を排気口に確実に密着させることができる。
【0061】
さらに、ロック機構として、請求項1、2に係る発明によれば、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置へ移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置へ移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成しているので、収納袋内の脱気後にはこのロック機構によって排気孔が不測に解放するのを確実に防止しておくことができると共に、収納物を圧縮状態で収納している収納袋を積み重ねても、その積み重ねた荷重が弁板をさらに押し下げようとする力として作用させることができてロック状態を確実に保持しておくことができ、また弁板のロック及びロック解除操作が簡単かつ確実に行うことができる。
【0062】
さらに、上記ロック機構として、請求項3に係る発明によれば、蓋体の下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設けているので、収納袋内の脱気後にはこのロック機構によって排気孔が不測に解放するのを確実に防止しておくことができ、その上、このロック機構による弁板の閉止状態の保持は、蓋体を弁本体側に押圧する力によって行われているので、収納物を圧縮状態で収納している収納袋を積み重ねても、その積み重ねた荷重が弁板をさらに押し下げようとする力として作用してロック状態を確実に保持しておくことができるものである。
【0063】
請求項3に記載の収納袋の排気弁において、上記ロック機構の構造として、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止して弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成しているので、弁板のロック及びロック解除操作が簡単かつ確実に行うことができ、ロックした状態においていは、収納袋内への外気の浸入を阻止した閉弁状態を確実に保持しておくことができる。
【0064】
請求項4に係る発明によれば、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成しているので、この弁本体を収納袋の所定部分に簡単且つ強固に装着することができるばかりでなく、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成しているので、弁板を前後左右に妄動させることなく短円筒状空間部内で正確に上下動させることができ、その上、蓋体の回動操作によるロック時には弁本体を供回りさせることなく円滑にロックすることができる。
【0065】
また、請求項5に係る発明によれば、上記蓋体の上面をその中央部に設けている吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成しているので、電気掃除機の吸気ノズルを弁本体に対して垂直方向のみならず、斜め方向に向けた状態にしても、該吸気ノズルの開口下端面を蓋体の上面に全面的に密接した状態にして排気操作を行うことができ、従って、操作性に優れていると共に排気作業が円滑に行うことができる。
【0066】
さらに、上記蓋体の上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設していると共にこの規制突部と上記吸気用孔との周囲に外気取り入れ口を設けているので、吸気ノズルが蓋体の外周縁側に大きく移動するのを規制突部によって確実に阻止して吸気ノズルを常に排気口に全面的に連通させた状態にして排気作業を行うことができると共に、吸気用孔の少なくとも一部分を吸気ノズルから外部に露出させた状態にしておくことができ、そのため、収納袋内が完全に脱気された後においては、吸気ノズルからの吸気力を蓋体内から上記吸気用孔を通じて外気に作用させて外気を吸引することができ、電気掃除機のモータに大きな負荷がかかるのを防止することができる。
【0067】
また、請求項6に係る発明によれば、上記基板の下面における排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の空間部を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成しているので、基板から突出した上記水平条体が収納袋の内面と収納物との間に介在して広い範囲に亘って収納物の内面と収納物とを離間させた状態にしておくことができる上に、排気孔からの吸気力を隣接する水平条体間の多数の水平通気路を通じて広い範囲に亘り収納袋内に作用させることができ、従って、収納袋内の空気を円滑に且つ能率よく排出することができる。
【0068】
その上、水平通気路を通じての吸引力によって該水平通気路に収納物の一部が吸着されて該水平通気路が閉止されても、この水平通気路の上面側はリング状通気路を通じて他の水平通気路に連通しているので、この他の水平通気路内に発生している吸気作用をその上方のリング状通気路を介して上記閉止している水平通気路の上方に迂回的に作用させることができ、従って、脱気作用を殆ど妨げることなく、収納袋内の空気を効率よく排出して収納袋を円滑に圧縮することができる。このような作用効果は、請求項7に記載したように、弁本体の基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ又は不織布等の多孔質板を突設しておいても奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
排気弁の分解斜視図、
【図2】
収納袋に装着した状態の縦断正面図、
【図3】
その簡略平面図、
【図4】
弁本体の基板の平面図、
【図5】
排気状態を示す縦断正面図、
【図6】
本発明の別な実施の形態を示す排気弁の縦断正面図、
【図7】
その平面図。
【符号の説明】
A 排気弁
B 収納袋
C 吸気ノズル
D 収納物
1 弁本体
1A 弁配設部材
1B 基板
2 蓋体
3 排気孔
4 吸気用孔
6 弁板
10 ロック機構
11 カム突起
12 係合突起
13 規制突部
14 外気取り入れ口
17 水平条体
18 水平通気路
19 リング条体
20 リング状通気路
(参考)平成17年9月20日付け訂正請求書に添付した全文訂正明細書
【発明の名称】収納袋の排気弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を蓋体の下面側に設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項2】
ロック機構は、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の収納袋の排気弁。
【請求項3】
収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に一定角度回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に同角度回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項4】
ロック機構は、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成したことを特徴とする請求項3に記載の収納袋の排気弁。
【請求項5】
弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成していることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の収納袋の排気弁。
【請求項6】
収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記蓋体の上面を吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成していると共に、この上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設してあり、この規制突部と上記吸気用孔との周囲に外気取り入れ口を設けていることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項7】
収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、基板の下面における排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の空間部を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成していることを特徴とする収納袋の排気弁。
【請求項8】
収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ等の多孔質板を突設していることを特徴とする収納袋の排気弁。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、布団や毛布などの寝具類や衣服などを収納する収納袋に装着して、この収納袋内を電気掃除機等の吸気ノズルを使用して脱気し、収納物をコンパクトに圧縮するための収納袋の排気弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、布団や衣類などを押し入れやタンスに収納、保管する際に、限られた収納場所にできるだけ多くの布団や衣類等を収納するために、偏平な合成樹脂製収納袋内に布団等を収納したのち、電気掃除機を使用してこの収納袋内の空気を排除することにより、収納物を圧縮することが行われている。このような収納物の圧縮は、一般家庭に限らず寝具類を取り扱う業者においても行われ、また、旅行する際に、鞄に衣類等を収納する場合においても収納袋を圧縮することが行われている。
【0003】
布団等を収納した袋を圧縮するには、通常、収納袋の開口部に装着されているフアスナーによってその開口部の一部を開き、この開口部から電気掃除機の吸気ノズルを挿入して袋内を脱気することにより行われているが、吸気ノズルを直接収納袋内に挿入すると、袋内の収納物が吸気ノズルの吸引力によって該吸気ノズルの開口端に吸着され、収納物が損傷する虞れがあるばかりでなく、吸気ノズルが詰まって袋内の脱気が困難になると共に電気掃除機のモータに大きな負荷がかかって故障の原因となる。
【0004】
このため、電気掃除機の吸気ノズルを収納袋内に挿入することなく、該収納袋に排気弁を装着しておき、この排気弁を通じて外部から電気掃除機の吸気ノズルにより袋内の空気を排気して収納袋を圧縮することが行われている。
【0005】
このような排気弁としては、中央部に収納袋内に連通させる排気孔を設けた弁本体に、中央部に上下面間に貫通した吸気用孔を設けているドーム形状の可動蓋を上下動自在に取付け、この可動蓋と弁本体との対向面間で形成している室内に上記排気孔の開閉用弁板と、この弁板を上方から押圧して排気孔に密着させているスプリングと、このスプリング力に抗して上記弁板を上動させて開弁させる弁板作動機構とを配設し、該弁板作動機構を上記可動蓋の押し下げによって作動させて弁板を開弁させ、この状態にして電気掃除機の吸気ノズルにより上記吸気用孔から収納袋内の空気を排気すると共に、排気後には弁板作動機構を不作動状態にロックするように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2003-34379号公報(第4?6頁、第1図)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような排気弁構造によれば、排気後において弁板作動機構を不作動状態にロックする機構としては、弁本体の外周部数個所にガイド突片を突設し、このガイド突片の上端部を上記可動蓋の外周部数個所に設けている円弧状長孔内に挿通して可動蓋を下動可能にする一方、該円弧状長孔内の一端部に係合突起を一体に設けて、上記ガイド突片の上方にこの係合突起が対向する位置まで可動蓋を回動させた時に、係合突起がガイド突片に受止されて可動蓋が下動するのを防止するように構成しているために、可動蓋に収納袋の積み重ね等による過大な荷重がかかると、係合突起が破損してロックがきかなくなり、可動蓋が下動して開弁し、収納袋が膨脹するといった問題点が生じる。
【0008】
また、収納袋内を脱気する際に、電気掃除機の吸気ノズルを可動蓋上に押し付けてスプリング力に抗して弁板を開放させた状態を保持しておかねばならないために、操作が煩雑化して使用勝手が悪くなるばかりでなく、スプリングは金属材料で形成されているために、錆が発生して円滑な作動が行えなくなる事態が発生する虞れがある。
【0009】
さらに、収納袋内が完全に脱気されたのちにおいても、電気掃除機の吸気ノズルによる吸気力が収納袋内に作用してモータに大きな負荷がかかり、故障の原因となる。そのため、上記可動蓋の外周部に外気取り込み用の孔を設けているが、この可動蓋は上述したようにドーム形状に形成して、電気掃除機の吸気ノズルを垂直方向のみならず、斜め方向からも自由に押し付けた状態で使用できるようにしているため、吸気ノズルが可動蓋上を前後左右に大きく傾動した場合には、吸気用孔から外れる虞れがあった。
【0010】
さらにまた、排気弁の弁本体は、中央部に排気口を設けている円板形状の基板とこの排気口を開閉させる上記弁板を設けた弁配設部材とからなり、これらの基板と弁配設部材とを収納袋の一部における内外面にそれぞれ当てがって収納袋における通気孔を開設している一部を挟着した状態で一体に結合させた構造としているため、排気弁を開放させて収納袋内の空気を上記通気孔から排気口を通じて吸引、排除する際に、その吸気力が排気口の下方の収納物表面に集中的に作用して該表面がその強力な吸気力によって排気口に吸着し、袋内の脱気が完了するまでの比較的長時間を要することになるばかりでなく、電気掃除機のモータに大きな負荷がかかって故障の原因となる。
【0011】
このような問題点は、弁本体の基板の下面に一定高さの排気通路を排気口の周囲から基板の外周端に向かって放射状に突設してなる構造としてもおいても、この排気通路を通じての吸気力により、排気通路の開口端周囲の収納物の表面が収納袋の内面に密着し、特に、収納物が通気性に劣る羽毛布団のような袋地の場合には、この袋地の微細な織目を通じての排気が困難であった。
【0012】
このため、弁本体の基板の外周面から外方に向かって一定厚みを有する多孔板を一体に設けて、この多孔板により収納物の表面と収納袋の内面との間に多孔板の大きさに相当する隙間を設けるように構成することも行われているが、各孔は、多孔板の厚みに相当する一定高さの孔壁によって隣接する孔間の連通が阻止された独立した通気孔に形成されているために、排気孔を通じての吸気力を通気孔に円滑に作用させることはできず、上記した問題点を充分に解消することができないといった問題点があった。
【0013】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、排気後において弁板を排気口に積極的に押し付けた状態で簡単且つ確実にロックしておくことができ、また、排気口に対して電気掃除機の吸気ノズルが傾動する方向に移動しても該吸気ノズルを常に排気口に連通させた状態を保持して電気掃除機に大きな負担をかけることなく能率よく収納袋内を脱気することができると共に脱気後、吸気力を解くと同時に自動的に閉弁させることができ、さらにまた、収納物が羽毛布団のような通気性に劣る物品であっても、円滑にその内部を脱気することができる収納袋の排気弁構造を提供するにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の収納袋の排気弁は、請求項1に記載したように、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に、上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するロック機構を設けてなる構造を有している。
【0015】
このように構成した収納袋の排気弁において、請求項2に記載したように、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置に移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成している。
【0016】
一方、請求項3に係る発明は、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けていると共に下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に一定角度回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に同角度回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設けていることを特徴とする。
【0017】
このように構成した収納袋の排気弁において、請求項4に係る発明は、上記ロック機構の構造として、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止させて弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係合突起の係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成している。
【0018】
さらに、請求項5に係る発明は、上記弁本体を、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成している。
【0019】
また、請求項6に係る発明は、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記蓋体の上面を吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成していると共に、この上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設してあり、この規制突部と上記吸気用孔との周囲の数個所に外気取り入れ口を設けていることを特徴とする。
【0020】
一方、請求項7に係る発明は、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けられ且つ中央部に吸気用孔を設けている蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁体を配設してなる排気弁において、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着した状態で一体に結合させるように構成していると共に、基板の下面における排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の空間部を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成していることを特徴とする。
【0021】
また、請求項8に係る発明においては、上記請求項7に記載の水平通気路とリング状通気路に代えて、基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ等の多孔質板を突設していることを特徴とする。
【0022】
【作用】
収納袋内に布団等を収納したのちその開口部をファスナーにより閉止し、収納袋に装着している排気弁における蓋体の上面に電気掃除機の吸気ノズルの開口端を押し付けて蓋体に設けている吸気用孔に連通させた状態にし、電気掃除機を作動させると、弁板が上動して排気孔が開放され、吸気ノズルからの吸気力によって排気孔を通じて収納袋内の空気が吸気ノズル側に排気され、収納袋内が脱気される。
【0023】
収納袋内が脱気されて布団等の収納物が圧縮状態になると、蓋体に対する電気掃除機の吸気ノズルの押し付けを解く。そうすると、収納袋内が真空状態であるから、この収納袋側に発生する吸気力によって弁板が下動して排気孔を自動的に閉止し、収納袋内に外気が入るのを阻止する。
【0024】
しかるのち、蓋体を弁板回りに一方向に一定角度回動させると、該蓋体の下面側に設けているロック機構が作動して該ロック機構により弁板が直接、下方に押圧され、排気孔を密閉した状態に保持する。このように、ロック機構による弁板の閉止状態の保持は、蓋体を弁本体側に押圧する力によって行われているので、収納物を圧縮状態で収納している収納袋を積み重ねても、その積み重ねた荷重が弁板をさらに押し下げようとする力として作用し、不測に弁板を開放させることなく、弁板のロック状態を確実に保持しておくことができる。また、この蓋体の回動によるロック機構に代えて、上記蓋体から端部が突出している操作部材を水平方向の一方側の位置へ移動操作することによって上記弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、上記操作部材を水平方向の他方側の位置へ移動操作することによって弁板の上下動を許容するように構成したロック機構を蓋体の下面側に設けたものであっても同様な作用効果を奏する。
【0025】
収納袋から収納物を取り出す時には、該収納袋の開口部を閉止しているファスナーを開放すればよく、再び、この収納袋を使用する際には、上記ロック機構による弁板の閉止状態を解き、上述したように吸気ノズルによって収納袋内を脱気すればよい。
【0026】
また、上記蓋体の上面をその中央部に設けている吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成しているので、電気掃除機の吸気ノズルを弁本体に対して垂直方向のみならず、斜め方向に向けた状態にしても、該吸気ノズルの開口下端面を蓋体の上面に全面的に密接した状態にして排気操作を行うことができる。
【0027】
従って、操作性が良くて円滑な排気作業を可能にすることができるばかりでなく、上記蓋体の上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設していると共にこの規制突部と上記吸気用孔との周囲に外気取り入れ口を設けているので、吸気ノズルが蓋体の外周縁側に大きく移動するのを規制突部によって確実に阻止して吸気ノズルを常に排気口に全面的に連通させた状態にして排気作業を行うことができると共に、吸気用孔の少なくとも一部分を吸気ノズルから外部に露出させた状態にしておくことができ、そのため、収納袋内が完全に脱気された後においては、吸気ノズルからの吸気力を蓋体内から上記吸気用孔を通じて外気に作用させて外気を吸引することができ、電気掃除機のモータに大きな負荷がかかるのを防止することができる。
【0028】
さらにまた、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成しているので、この弁本体を収納袋の所定部分に簡単且つ強固に装着することができる。
【0029】
その上、収納袋の内面側に装着している上記基板の下面において、排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の隙間を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成しているので、これらの水平通気路とリング状通気路を収納袋の内面と収納物の表面との間に介在させて排気口に発生している吸気ノズルからの吸気力を放射状に設けている多数の水平通気路を通じて広い範囲に亘る収納物表面部から該収納物内の空気を吸引、排除することができ、収納物が通気性に劣る羽毛布団であっても、能率のよい脱気が可能となる。
【0030】
さらに、吸引力によって水平通気路の一部に収納物の一部が吸着されて該水平通気路の一部を閉止しても、この水平通気路の上面側はリング状通気路を通じて他の水平通気路に連通しているので、この他の水平通気路内に発生している吸気作用がその上方のリング状通気路を介して上記閉止している水平通気路の上方に迂回的に作用し、脱気作用を殆ど妨げることなく、収納袋内の空気を効率よく排出して収納袋を円滑に圧縮することができる。また、上記水平通気路とリング状通気路に代えて、基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ或いは不織布等の多孔質板を突設しておいても、同様な作用効果を奏することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1、図2において、排気弁Aは合成樹脂製であって、収納袋Bの一部を内外から挟着又は融着して該収納袋Bに装着し、外部からの吸気力によってその中央部に設けている排気孔3を通じて収納袋B内の空気を排除するように構成した弁本体1と、この弁本体1に左右方向に往復回動自在に取付け且つ中央部に吸気用孔4を設けている蓋体2とからなり、これらの弁本体1と蓋体2との対向面間の空間部を吸排気室5に形成している。
【0032】
弁本体1は、径が6cm程度の円板形状の弁配設部材1Aと基板1Bとからなり、弁配設部材1Aの中央部に上記排気孔3の上側排気孔部3aを上下面間に亘って貫通、形成している一方、基板1Bの中央部に上記排気孔3の下側排気孔部3bを上下面間に亘って貫通、形成している。この下側排気孔部3bは上側排気孔部3aよりも小径に形成されていて弁配設部材1Aと基板1Bとを上下に重ね合わせて一体に連結した状態においては、上側排気孔部3aの開口下端の内周面から該下側排気孔部3bの周縁部を内方に向かって円環状に露出させて該露出上面で弁板6の弁座7を形成している。
【0033】
上記弁配設部材1Aと基板1Bとを収納袋Bの一部を内外面から挟着して互いに重ね合わせた状態で収納袋Bの一部に装着するには、弁配設部材1Aの排気孔部3aの外周縁部の3方に上下面間に貫通した係止孔21を設けている一方、基板1Bの上記排気孔部3bの外周縁部の3方に断面逆L字状に形成しているフック片22を突設し、これらのフック片22をそれぞれ対向する上記係止孔21に挿通して、フック部22aを係止孔21の上端縁部に係止させることによって行うように構成している。なお、この弁本体1の取付部における収納袋Bには、内外の排気孔部3a、3bに連通した孔bが設けられている。
【0034】
さらに、上記弁配設部材1Aの外周部は下方に向かって該弁配設部材1Aの厚みに略相当する寸法だけ低位置に設けられたフランジ部1A1に形成されていて、その下面側に上記フランジ部1A1によって囲まれた円形凹部1A2を形成してあり、同様に、上記基板1Bの外周部も中央部よりも低位置に設けられたフランジ部1B1に形成してこのフランジ部1B1から上方に突出する円形状の中央部1B2を上記円形凹部1A2に嵌着させるように構成してあり、これらの弁配設部材1Aと基板1Bとで収納袋Bの所定部分をその位置からずらすことなく強固に挟着するように構成している。なお、収納袋Bの内外面に対する上記弁配設部材1Aと基板1Bとの装着は、収納袋Bの一部を加熱によって弁配設部材1Aと基板1Bとの対向面に融着させることによって行ってもよい。
【0035】
また、弁配設部材1Aの上面における上記上側排気孔部3aの開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片8を周方向に一定間隔毎に突設して、これらのガイド突片8によって囲まれた短円筒状空間部内に上記弁板6を上下動自在に配設している。この弁板6の外周端の数個所(図においては3方)に水平突起6aを突設してあり、これらの水平突起6aを隣接するガイド突片8、8間の隙間8aに上下摺動自在に挿入して、弁板6を回動させることなく正確に上下動させるように構成している。なお、弁板6の下面には弾性的に圧縮変形可能な一定厚みのシール材9を接着等により固着している。
【0036】
一方、上記蓋体2の下面側には、この蓋体2を上記弁板6を中心として該弁板回りの一方向に回動操作した時に、弁板6を下方に押圧して上記排気孔3の上端開口部を閉止状態に保持し、他方向に回動操作した時に該弁板6の上下動を許容するロック機構10を設けている。
【0037】
このロック機構10は、上記弁板6の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎(図においては3方)に上方に向かって突設している複数個のカム突起11と、これらの各カム突11の上方にそれぞれ対向させて、蓋体2の下面における上記吸気用孔4の外周部に周方向に一定間隔毎(図においては3方)に下方に向かって突設している係合突起12とからなり、上記カム突起11の上端面の一半部を一端側から時計回り方向に向かって徐々に緩やかな角度でもって上向きに傾斜した傾斜端面11aを形成していると共に、他半部をこの傾斜端面11aの上傾端から水平に連続した水平頂面11bに形成している一方、上記係合突起12の下端面を上記傾斜端面11aから水平頂面11bにかけた連続的に摺接可能な係合端面12aに形成している。
【0038】
そして、蓋体2の一方向(時計方向)の回動によりこの係合突起12の係合端面12aをカム突起11の傾斜端面11aに接して水平頂面11bに乗り上げた状態にした時には弁板6を開放不能にロックし、蓋体2の他方向(反時計方向)の回動により係合突起12の係合端面12aをカム突起11の水平頂面11bから傾斜端面11aを介して離脱させた時にはロックを開放して弁板6を自由に上下動させるように構成している。なお、蓋体2側にカム突起11を、弁板6側に係合突起12を突設しておいてもよい。
【0039】
さらに、上記蓋体2はその上面を中央部に設けている上記吸気用孔4の周縁から蓋体2の外周端に向かって下方に緩やかに凸円弧状に傾斜したドーム形状に形成されていると共に、その上面の外周部数個所(図においては四方)に周方向に一定間隔毎に、収納袋B内を脱気する時に蓋体2の上面に当てがう電気掃除機の吸気ノズルCが蓋体2の上面から必要以上に外周方に移動するのを規制するための規制突部13、13を突設している。
【0040】
また、この規制突部13と上記吸気用孔4との間の蓋体部分の数個所(図においては3方)に、蓋体2の上下面間に貫通した外気取り入れ口14、14、14を設けている。この外気取り入れ口14は吸気用孔4を中心とする円弧状に湾曲した長孔に形成されてあり、且つ吸気用孔4の中心からその内周縁または孔幅の中間部までの半径を上記吸気ノズルCの外径に略等しくしている。即ち、蓋体2の上面中央部に吸気ノズルCの開口下端を押し付けて該吸気ノズルCを弁本体1に対して垂直状態に立設した時に、上記各外気取り入れ口14の少なくとも一部が吸気ノズルCに連通するように構成している。
【0041】
蓋体2の下面側においては、上記各外気取り入れ口14の内周縁から下方に向かって一定の突出長を有し且つ下端に外向き係止突条部15aを一体に設けている円弧状に湾曲した係止突片15を突設している一方、上記弁本体1の弁配設部材1Aにおける排気孔部3aの外周縁部の3方に設けている係止孔21、21、21の外周縁から、上端に上記係止突片15の係止突条部15aに係脱自在に係止する内向き係止突部16aを一体に設けた一定高さの結合用突片16を突設してあり、この結合用突片16の内向き係止突部16aを上記係止突片15の外向き係止突条部15aに係止させることによって弁本体1と蓋体2とを一体に結合、連結するように構成している。
【0042】
さらにまた、上記弁本体1において、収納袋Bの内面に装着する基板1Bの下面には、図2R>2、図4に示すように、該基板1Bの中央部に設けている上記排気孔3の下側排気孔部3bの開口下端の周縁から基板1Bの外周縁に向かって一定高さを有する多数本の水平条体17、17、17を放射状に突設していると共にこれらの水平条体17、17・・・を基板1Bの下面外周縁からさらに外方に向かって一定長、突出させてあり、さらに、基板1Bの外周縁から突出した隣接する水平条体17、17間の中央部に基板1Bの下面外周縁から突出した水平条体17’によって2分割して各隣接する水平条体17、17’間の空間部を上記排気孔3の開口下端に連通する水平通気路18、18、18・・・に形成している。
【0043】
上記基板1Bの下面外周端から外方に一定の突出長でもって放射状に突出している多数の水平条体17、17’の上面には、これらの全ての水平条体17、17’の上面間を一体に連結した一定高さ(基板1Bの厚みに略等しい高さ)を有する大小径のリング条体19、19’を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体19、19’間の空間部をリング状通気路20、20に形成してあり、これらの各リング状通気路20、20の下方を上記全ての水平通気路18、18・・・に連通させている。
【0044】
次に、以上のように構成した排気弁Aを、柔軟性を有する合成樹脂製シートによって形成された偏平矩形状の合成樹脂製収納袋Bの一部に装着するには図1、図2に示すように、弁本体1の基板1Bを収納袋B内の内面に沿わせて該収納袋Bの適所に設けている孔bにその排気孔部3bを連通するように合致させると共に該排気孔部3aの外周縁部の3方に突設しているフック片22を収納袋Bを貫通かせて外部に突出させる。
【0045】
この状態にして収納袋Bの外面から弁本体1の弁配設部材1Aを押し付けてその排気孔部3aの外周縁部の3方に設けている係止孔21に上記フック片22を挿通させて該フック部22aを係止孔21の上端縁部に係止させると共に弁配設部材1Aの下面側に形成している円形凹部1A2に基板の円形状の中央部1B2を嵌着させることにより、これらの弁配設部材1Aと基板1Bとで収納袋Bの所定部分を挟着した状態に装着する。なお、収納袋Bに対する弁本体1の装着は、上述したように、収納袋Bに弁配設部材1Aと基板1Bとを融着させることによって行ってもよい。
【0046】
しかるのち、蓋体2を上記弁本体1の弁配設部材1A上に配してこの弁配設部材1Aにおける排気孔部3aの外周縁部の3方に突設している隣接する結合用突片16、16間に蓋体2の下面の3方に下方に向かって突設している係止突片15を介在させた状態にして該蓋体2を時計方向に回動させることにより各係止突片15の係止突条部15aを対応する結合用突片16の内向き係止突部16aに係止させ、弁本体1に蓋体2を一体に連結させる。なお、予め、この蓋体2を弁本体1の弁配設部材1Aに一体に連結しておき、しかるのち、この弁配設部材1Aを上記基板1Bに連結させてもよい。
【0047】
この排気弁Aを装着している収納袋Bを用いて、該収納袋B内の収納物Dを圧縮させた状態にするには、まず、収納袋Bの開口端から布団等の収納物Dを収納したのち、開口端の対向内面にそれぞれ設けている凸条部と凹条部とからなるファスナを収納袋Bの一端側から他端側に向かって嵌合させることにより気密状態に閉止する。また、排気弁Aの蓋体2を反時計方向に回動することによって、該蓋体2の下面から突設している係合突起12を弁板6の上面から突設しているカム突起11から外して弁板6のロックを解き、弁板6を上下動可能にしておく。
【0048】
しかるのち、図2に示すように、排気弁Aの蓋体2の上面に電気掃除機の吸気ノズルCの開口下端を当てがって吸気用孔4に該吸気ノズルCを連通させた状態にする。この際、蓋体2の上面はドーム状に湾曲しているので、吸気ノズルCを弁本体1に対して垂直方向のみならず、斜め方向から押し付けても、その開口下端を蓋体2の上面に全面的に当接した状態にすることができ、しかも、その状態で吸気ノズルCを前後左右方向に移動させても該開口下端全面を常に蓋体2の上面に接した状態にしておくことができ、操作性並びに使用勝手が良好となって収納袋B内の脱気作業が円滑に行えるものである。
【0049】
さらに、蓋体2の外周縁部には吸気ノズルCが必要以上に蓋体2の外周端側に移動するのを阻止する規制突部13を突出しているから、吸気ノズルCが蓋体2上で前後左右に移動しても、その開口下端を常に吸気用孔4に全面的に連通させた状態にしておくことができる。
【0050】
こうして、吸気ノズルCの開口下端を排気弁Aの蓋体2上に当てがって吸気用孔4に連通させた状態を保持し、この状態で電気掃除機を作動させると、図5に示すように、吸気ノズルCからの吸気力が蓋体2の吸気用孔4を通じて吸排気室5内に作用し、さらに、この吸排気室5から排気孔3に作用して弁板6が上動する。従って、排気孔3が解放されて収納袋B内の空気が該排気孔3から吸排気室5、吸気用孔4を通じて吸気ノズルCに吸入、排気され、布団等の収納物Dが偏平状に圧縮される。
【0051】
この際、収納袋B内においては、弁本体1の基板1Bの下面に排気孔3の開口下端の外周縁から外方に向かって多数本の水平条体17を突設していると共に、基板1Bの下面外周端からさらにこれらの水平条体17と共に水平条体17’を放射状に突設しているので、基板1Bから突出したこれらの水平条体17、17’が収納袋Bの内面と収納物Dとの間に介在して広い範囲に亘って収納物Bの内面と収納物Dとを離間させた状態にしておくことができる上に、排気孔3からの吸気力が排気孔3から隣接する水平条体17、17’間の多数の水平通気路18を通じて外方に拡がり、従って、排気孔3から水平条体17、17’の先端に至る半径を有する円内の広い区域から収納袋B内及び収納物Dに吸気力が作用して収納物Dが通気性の劣る羽根布団であっても円滑に且つ能率よく収納袋B内の空気を排出することができる。
【0052】
さらに、基板1Bの下面外周端から放射状に突出している上記多数の水平条体17、17’の上面に大小径のリング条体19、19’を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体19、19’間の空間部をリング状通気路20、20に形成しているので、水平通気路18からの吸引力によって該水平通気路18内に収納物Dが吸着されて、この水平通気路18が閉止されても、他の水平通気路18内に発生している吸気力が該水平通気路18の上方のリング状通気路20を通じて上記閉止している水平通気路18の上方にまで迂回してこの水平通気路18内に吸着されている収納物Dに対して吸気作用を奏すことができ、従って、電気掃除機のモータに過大な負荷をかけることなく、収納袋B内の空気を効率よく排出することができる。
【0053】
また、収納袋B内の脱気作業中において、吸引ノズルCの吸気力は吸排気室5内を通じて蓋体2に設けている外気取り入れ口14にも作用し、収納袋B内の空気と共に外気が該取り入れ口14から吸排気室5、吸気用孔4を通じて吸引ノズルCに吸入され、収納袋B内の脱気が完全に行われたのちにおいては、該外気取り入れ口14からの外気の吸入が続行されて、電気掃除機のモータに殆ど負荷をかけることなく、収納袋B内の脱気を行うことができる。
【0054】
こうして、収納袋B内が脱気されたのち、排気弁Aの蓋体2上から吸引ノズルCの吸引口を離脱させると、真空状態の収納袋B側からの吸気力が排気口3に作用して弁板6がその吸気力より瞬時に排気口3の便座7に圧着し、収納袋B内に外気が入るのを阻止する。なお、上記外気取り入れ口14は規制突部13の外側に設けておいてもよい。
【0055】
しかるのち、蓋体2を時計方向に回動させると、この蓋体2の下面に突設している係合突起12の係合端面12aが上記弁板6の外周端縁部から上方に突出しているカム突起11の傾斜端面11a上に当接したのち、さらに該傾斜端面11a上を摺動しながらカム突起11の水平頂面11bに乗り上げ、弁板6のシール材9を便座7に圧縮状態で圧着させて排気孔3を閉止状態にロックする。なお、このロック作動時においては、蓋体2の回動にもかかわらず、弁板6はその外周端の数個所から突設している水平突起6aを排気孔3の周囲に突設している複数のガイド突片8、8における隣接するガイド突片8、8間に挿入しているので、回動することなくロック動作を確実に行わせることができる。
【0056】
図6、図7は本発明の別な実施の形態を示すもので、上記実施の形態においては弁板6のロック機構10として、該弁板6の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起11と、蓋体2の下面における吸気用孔4の外周部に突設された係合突起12とからなり、この係合突起12を上記蓋体2の一方向の回動操作により対向するカム突起11の上端面に係止させて弁板6を閉止状態に保持し、該蓋体2の他方向の回動操作により対向するカム突起11の上端面からの係合突起12の係止を解いて弁板6の上下動を許容するように構成しているが、この図6、図7に示す実施の形態においては弁板6のロック機構10’として、蓋体に水平方向に往復動する操作部材10aを設けてこの操作部材10aの往復操作により、行うように構成している。
【0057】
具体的には、ロック機構10’は、蓋体2に棒状の操作部材10aを水平方向に往復動自在に貫通、支持させていると共に、この操作部材10aの長さ方向の中央部下面に傾斜端面11aと水平頂面11bとを有するカム突起11を下方に向かって突設する一方、弁板6の上面中央部に該カム突起11の傾斜端面11aに対向させて該カム突起11と係脱自在に係合する係合突起12を突設してなるものである。
【0058】
そして、上記蓋体2から突設している操作部材10aの両端部を摘んで該操作部材10aを水平方向に往動させ、係合突起12の頂面にカム突起11をその傾斜端面11aから水平頂面11bに乗り上げさせることにより、弁板6を下方に押圧してそのシール材9を便座7に圧縮状態で圧着させて排気孔3を閉止状態にロックする一方、操作部材10aを水平方向に復動操作することより、カム突起11を係合突起12から離脱させて弁板6のロックを解くようにしている。なお、操作部材10aに係合突起12を、弁板1にカム突起11を設けておいてもよい。その他の構成については上記実施の形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
また、上記いずれの実施の形態においても、弁本体1における基板1Bの下面外周端から放射状に突出している多数の水平条体17、17’によって水平通気路18を形成していると共にこれらの水平条体17、17’の上面に大小径のリング条体19、19’を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体19、19’間の空間部をリング状通気路20、20に形成することによって、収納袋B内に広範囲に亘り吸気力を作用させて能率のよい脱気を行っているが、これらの水平条体17、17’とリング条体19、19’とによる通気路の形成に代えて、弁本体1における基板1Bの外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ又は不織布等からなる円環状の多孔質板を突設しておいても、この多孔質板の無数の孔が厚み方向、水平方向に互いに連通しているので、上記と同じ作用効果を奏することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように本発明の請求項1に記載した収納袋の排気弁によれば、収納袋の一部を内外面から挟着又は融着して収納袋に装着する弁本体と、この弁本体に着脱自在に取付けた蓋体とからなり、上記弁本体の中央部に収納袋の内外面間に連通する排気孔を設けていると共にこの排気孔の上端開口部上に上記収納袋内の排気時には上動して該排気孔を解放させ、排気後には下動して排気孔を閉止する弁板を配設している一方、上記蓋体にはその中央部に吸気用孔を設けているので、この蓋体の上面に電気掃除機の吸気ノズルを押し付けて該吸気ノズルからの吸気力を弁本体内に作用させることによって、弁板を自動的に解放させて直ちに収納袋内の脱気作業を行うことができ、脱気後においては、電気掃除機の作動を停止させることによって弁板を排気口に確実に密着させることができる。
【0061】
さらに、ロック機構として、請求項1、2に係る発明によれば、蓋体に水平方向に一方側と他方側との位置間を移動自在に操作部材を支持すると共にこの操作部材と弁板との対向面における一方にカム突起を、他方に係合突起を突設してなり、上記操作部材を一方側の位置へ移動させた時にカム突起と係合突起とを係止させて弁板を閉止状態に保持し、操作部材を他方側の位置へ移動させた時にカム突起と係合突起と係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成しているので、収納袋内の脱気後にはこのロック機構によって排気孔が不測に解放するのを確実に防止しておくことができると共に、収納物を圧縮状態で収納している収納袋を積み重ねても、その積み重ねた荷重が弁板をさらに押し下げようとする力として作用させることができてロック状態を確実に保持しておくことができ、また弁板のロック及びロック解除操作が簡単かつ確実に行うことができる。
【0062】
さらに、上記ロック機構として、請求項3に係る発明によれば、蓋体の下面側にこの蓋体を弁板回りの一方向に回動させた時に、弁板を下方に押圧して排気孔を閉止状態に保持し、他方向に回動させた時に弁板の上下動を許容するロック機構を設けているので、収納袋内の脱気後にはこのロック機構によって排気孔が不測に解放するのを確実に防止しておくことができ、その上、このロック機構による弁板の閉止状態の保持は、蓋体を弁本体側に押圧する力によって行われているので、収納物を圧縮状態で収納している収納袋を積み重ねても、その積み重ねた荷重が弁板をさらに押し下げようとする力として作用してロック状態を確実に保持しておくことができるものである。
【0063】
請求項3に記載の収納袋の排気弁において、請求項4に係る発明は、上記ロック機構の構造として、弁板の上面外周端縁部に周方向に一定間隔毎に突設された複数のカム突起と、蓋体の下面における吸気用孔の外周部に突設された係合突起とからなり、この係合突起を上記蓋体の一方向の回動操作により対向するカム突起の上端面に係止して弁板を閉止状態に保持し、該蓋体の他方向の回動操作により対向するカム突起の上端面からの係止を解いて弁板の上下動を許容するように構成しているので、弁板のロック及びロック解除操作が簡単かつ確実に行うことができ、ロックした状態においていは、収納袋内への外気の浸入を阻止した閉弁状態を確実に保持しておくことができる。
【0064】
請求項5に係る発明によれば、上記弁本体は、中央部に上側排気孔部を設けてなる円板形状の弁配設部材と、中央部に下側排気孔部を設けてなる円板形状の基板とからなり、これらの弁配設部材と基板とで収納袋の一部を内外面から挟着又は融着した状態で一体に結合させるように構成しているので、この弁本体を収納袋の所定部分に簡単且つ強固に装着することができるばかりでなく、収納袋体の外面側に装着される上記弁配設部材の上面における上側排気孔部の開口端周縁に、上方に向かって一定高さのガイド突片を周方向に一定間隔毎に突設してあり、隣接するガイド突片間のガイド空間部に、弁板の外周端の数箇所に放射状に突設している水平突起を挿入、係合させてこれらのガイド突片によって囲まれた短円筒状空間部内で弁板を上下動させるように構成しているので、弁板を前後左右に妄動させることなく短円筒状空間部内で正確に上下動させることができ、その上、蓋体の回動操作によるロック時には弁本体を供回りさせることなく円滑にロックすることができる。
【0065】
また、請求項6に係る発明によれば、上記蓋体の上面をその中央部に設けている吸気用孔から外周端に向かって下方に緩やかに湾曲したドーム形状に形成しているので、電気掃除機の吸気ノズルを弁本体に対して垂直方向のみならず、斜め方向に向けた状態にしても、該吸気ノズルの開口下端面を蓋体の上面に全面的に密接した状態にして排気操作を行うことができ、従って、操作性に優れていると共に排気作業が円滑に行うことができる。
【0066】
さらに、上記蓋体の上面外周部に吸気ノズルの移動を規制する規制突部を突設していると共にこの規制突部と上記吸気用孔との周囲に外気取り入れ口を設けているので、吸気ノズルが蓋体の外周縁側に大きく移動するのを規制突部によって確実に阻止して吸気ノズルを常に排気口に全面的に連通させた状態にして排気作業を行うことができると共に、吸気用孔の少なくとも一部分を吸気ノズルから外部に露出させた状態にしておくことができ、そのため、収納袋内が完全に脱気された後においては、吸気ノズルからの吸気力を蓋体内から上記吸気用孔を通じて外気に作用させて外気を吸引することができ、電気掃除機のモータに大きな負荷がかかるのを防止することができる。
【0067】
また、請求項7に係る発明によれば、上記基板の下面における排気孔の開口下端の周縁から基板の外方に向かって多数本の水平条体を放射状に突設して各隣接する水平条体間の空間部を上記排気孔に連通する水平通気路に形成し、且つ、基板から外方に突出した水平条体の上面に大小径のリング条体を同心円上に設けて隣接する大小径のリング条体間でリング状通気路を形成しているので、基板から突出した上記水平条体が収納袋の内面と収納物との間に介在して広い範囲に亘って収納物の内面と収納物とを離間させた状態にしておくことができる上に、排気孔からの吸気力を隣接する水平条体間の多数の水平通気路を通じて広い範囲に亘り収納袋内に作用させることができ、従って、収納袋内の空気を円滑に且つ能率よく排出することができる。
【0068】
その上、水平通気路を通じての吸引力によって該水平通気路に収納物の一部が吸着されて該水平通気路が閉止されても、この水平通気路の上面側はリング状通気路を通じて他の水平通気路に連通しているので、この他の水平通気路内に発生している吸気作用をその上方のリング状通気路を介して上記閉止している水平通気路の上方に迂回的に作用させることができ、従って、脱気作用を殆ど妨げることなく、収納袋内の空気を効率よく排出して収納袋を円滑に圧縮することができる。このような作用効果は、請求項9に記載したように、弁本体の基板の外周端から外方に向かって一定厚みを有するスポンジ又は不織布等の多孔質板を突設しておいても奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】排気弁の分解斜視図、
【図2】収納袋に装着した状態の縦断正面図、
【図3】その簡略平面図、
【図4】弁本体の基板の平面図、
【図5】排気状態を示す縦断正面図、
【図6】本発明の別な実施の形態を示す排気弁の縦断正面図、
【図7】その平面図。
【符号の説明】
A 排気弁
B 収納袋
C 吸気ノズル
D 収納物
1 弁本体
1A 弁配設部材
1B 基板
2 蓋体
3 排気孔
4 吸気用孔
6 弁板
10 ロック機構
11 カム突起
12 係合突起
13 規制突部
14 外気取り入れ口
17 水平条体
18 水平通気路
19 リング条体
20 リング状通気路
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2009-03-26 
結審通知日 2009-04-02 
審決日 2009-04-14 
出願番号 特願2003-140075(P2003-140075)
審決分類 P 1 123・ 121- ZD (B65D)
最終処分 一部成立  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 遠藤 秀明
熊倉 強
登録日 2005-05-27 
登録番号 特許第3681379号(P3681379)
発明の名称 収納袋の排気弁  
代理人 藤本 昇  
代理人 小谷 悦司  
代理人 樋口 次郎  
代理人 薬丸 誠一  
代理人 平井 隆之  
代理人 薬丸 誠一  
代理人 平井 隆之  
代理人 藤本 昇  

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