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審決分類 審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正する B21D
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する B21D
管理番号 1205416
審判番号 訂正2009-390020  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2009-02-24 
確定日 2009-09-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3727445号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3727445号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 第1.手続の経緯
平成 9年 7月18日 本件出願
平成17年10月 7日 設定登録 (特許第3727445号)
平成19年 1月25日 別件無効審判請求 (無効2007-800014)
平成19年 8月27日 一次審決(請求不成立)
平成19年10月 5日 審決取消訴訟(平成19年(行ケ)第10338号)
平成20年 6月30日 判決(審決取消し)
平成20年 7月16日 判決確定
平成20年 7月18日 訂正請求の申立
平成20年 8月22日 訂正請求
平成20年 9月 4日 二次審決(訂正認容・請求成立)
平成20年12月 4日 審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10464号)
平成21年 2月24日 本件訂正審判(2009-390020)
平成21年 3月12日 手続中止通知
平成21年 5月 1日 上申書(中止解除の申し出)
平成21年 5月22日 中止解除通知
平成21年 5月26日 訂正拒絶理由通知書
平成21年 6月26日 意見書
平成21年 9月10日 上申書

第2.訂正の内容
別件平成20年8月22日付けの訂正請求を認容した平成20年9月4日付け上記二次審決は,確定していない。また,本件における訂正の内容は,上記平成20年8月22日付けの訂正請求の訂正事項を含むもので,以下の通りである。

1 訂正事項A
請求項1に記載の
「ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型を用いて被加工物の成形加工を行うパンチプレス機における成形金型の制御装置であって,
(a)加工プログラムから読み取られる被加工物の材質データおよび板厚データをそれぞれ記憶する材質メモリ部および板厚メモリ部,
(b)加工プロブラム中の金型番号に対応するプレスモーション番号を記憶する金型情報メモリ部,
(c)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質・板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データを記憶する共通データメモリ部,
(d)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質・板厚により変更するプレスモーションの詳細設定データを記憶する変更データメモリ部,
(e)前記加工プログラムによる加工時に,前記金型情報メモリ部から装着金型に対応するプレスモーション番号を参照し,このプレスモーション番号毎に,前記共通データメモリ部から被加工物の材質・板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データを生成するとともに,前記変更データメモリ部から被加工物の材質・板厚により変更するプレスモーションの詳細設定データを生成し,これらの詳細設定データに基づきプレス軸を駆動するための駆動データを生成するプレス駆動データ生成部および
(f)このプレス駆動データ生成部において生成された駆動データに基づいてプレスの駆動制御を行うプレス駆動制御部を備えることを特徴とするパンチプレス機における成形金型の制御装置。」を,
「パンチおよびダイを備え,ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型を用いて被加工物の成形加工を行うとともに,打抜加工の可能なパンチプレス機における成形金型の制御装置であって,
(a)加工プログラムから読み取られる被加工物の材質データおよび板厚データをそれぞれ記憶する材質メモリ部および板厚メモリ部,
(b)加工プロブラム中の金型番号に対応するプレスモーション番号を記憶する金型情報メモリ部,
(c)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを記憶する共通データメモリー部,
(d)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚により,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を変更する材質・板厚の補正データを記憶する変更データメモリ部,
(e)前記加工プロブラムによる加工時に,前記金型情報メモリ部から装着金型に対応するプレスモーション番号を参照し,このプレスモーション番号毎に,前記共通データメモリ部から被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを生成するとともに,前記変更データメモリ部から転送された,参照されたプレスモーション番号毎の材質・板厚の補正データに基づく被加工物の材質および板厚に該当する設定値データにより,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を補正し補正された成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データに基づきプレス軸を駆動するための駆動データを生成するプレス駆動データ生成部および
(f)このプレス駆動データ生成部において生成された駆動データに基づいてプレスの駆動制御を行うプレス駆動制御部
を備えることを特徴とするパンチプレス機における成形金型の制御装置。」
と訂正する。

2 訂正事項B
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

3 訂正事項C
段落番号【0005】の「【課題を解決するための手段および作用・効果】前述の目的を達成するために,本発明によるパンチプレス機における成形金型の制御装置は,
ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型を用いて被加工物の成形加工を行うパンチプレス機における成形金型の制御装置であって,
(a)加工プログラムから読み取られる被加工物の材質データおよび板厚データをそれぞれ記憶する材質メモリ部および板厚メモリ部,
(b)加工プログラム中の金型番号に対応するプレスモーション番号を記憶する金型情報メモリ部,
(c)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質・板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データを記憶する共通データメモリ部,
(d)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質・板厚により変更するプレスモーションの詳細設定データを記憶する変更データメモリ部,
(e)前記加エプログラムによる加工時に,前記金型情報メモリ部から装着金型に対応するプレスモーション番号を参照し,このプレスモーション番号毎に,前記共通データメモリ部から被加工物の材質・板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データを生成するとともに,前記変更データメモリ部から被加工物の材質・板厚により変更するプレスモーションの詳細設定データを生成し,これらの詳細設定データに基づきプレス軸を駆動するための駆動データを生成するプレス駆動データ生成部および
(f)このプレス駆動データ生成部において生成された駆動データに基づいてプレスの駆動制御を行うプレス駆動制御部
を備えることを特徴とするものである。」を,
「【課題を解決するための手段および作用・効果】前述の目的を達成するために,本発明によるパンチプレス機における成形金型の制御装置は,
パンチおよびダイを備え,ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型を用いて被加工物の成形加工を行うとともに,打抜加工も可能なパンチプレス機における成形金型の制御装置であって,
(a)加工プログラムから読み取られる被加工物の材質データおよび板厚データをそれぞれ記憶する材質メモリ部および板厚メモリ部,
(b)加工プログラム中の金型番号に対応するプレスモーション番号を記憶する金型情報メモリ部,
(c)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを記憶する共通データメモリ部,
(d)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚により,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を変更する材質・板厚の補正データを記憶する変更データメモリ部,
(e)前記加工プログラムによる加工時に,前記金型情報メモリ部から装着金型に対応するプレスモーション番号を参照し,このプレスモーション番号毎に,前記共通データメモリ部から被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを生成するとともに,
前記変更データメモリ部から転送された,参照されたプレスモーション番号毎の材質・板厚の補正データに基づく被加工物の材質および板厚に該当する設定値データにより,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を補正し,補正された成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データに基づきプレス軸を駆動するための駆動データを生成するプレス駆動データ生成部および
(f)このプレス駆動データ生成部において生成された駆動データに基づいてプレスの駆動制御を行うプレス駆動制御部
を備えることを特徴とする。」
と訂正する。

4 訂正事項D
段落番号【0009】の記載を削除する。

5 訂正事項E
段落番号【0033】の「…さらに,プレスモーション設定値メモリ部(変更データ部)7からの材質・板厚での補正値データを加味した成形位置を知ることができ,また材質補正量の補正データを加味した成形位置についても同様に知ることができる。これら処理によって作成されたデータはプレス駆動制御部31に転送される。」とあるのを,
「さらに,プレスモーション設定値メモリ(変更データ部)27からの材質・板厚での補正値データを加味した成形位置を知ることができ,また材質補正量の補正データを加味した成形位置についても同様に知ることができる。これら処理によって作成されたデータはプレス駆動制御部31に転送される。」
と訂正する。

6 訂正事項F
段落番号【0034】の「…なお,数値制御部28は,このプレス部の油圧駆動の制御のほか,被加工物WをX軸方向およびY軸方向へ移動位置決めするためのX軸・Y軸モータ制御部32の制御を行う。]とあるのを,
「…なお,数値演算部28は,このプレス部の油圧駆動の制御のほか,被加工物WをX軸方向およびY軸方向へ移動位置決めするためのX軸・Y軸モータ制御部32の制御を行う。」
と訂正する。

第3.当審の判断
1.訂正の目的
(1)訂正事項Aについて
ア 「パンチおよびダイを備え,」および「とともに,打抜加工の可能な」との訂正事項(以下「訂正事項A1」という。)は,「成形金型」がパンチおよびダイを備えることおよびパンチプレス機が被加工物の成形加工とともに打抜加工も行うことができるものであることを限定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ (c)の「プレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データ」との訂正事項(以下「訂正事項A2」という。)は,「詳細設定データ」が前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むことを限定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ (d)の「・・・により変更するプレスモーションの詳細設定データを記憶する変更データメモリ部」を「・・・により,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を変更する材質・板厚の補正データを記憶する変更データメモリ部」とする訂正事項(以下「訂正事項A3」という。)は,「変更するプレスモーションの詳細設定データ」がパンチおよびダイのいずれかの成形位置を変更する材質・板厚の補正データであることを限定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
エ (e)の「プレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを生成するとともに, 前記変更データメモリ部から転送された,参照されたプレスモーション番号毎の材質・板厚の補正データに基づく被加工物の材質および板厚に該当する設定値データにより,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を補正し,補正された成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データに基づきプレス軸を駆動するための駆動データを生成するプレス駆動データ生成部」との訂正事項(以下「訂正事項A4」という。)は,「詳細設定データ」が「前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置」を含むとともに「前記変更データメモリ部から転送された,参照されたプレスモーション番号毎の材質・板厚の補正データに基づく被加工物の材質および板厚に該当する設定値データにより,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を補正し,補正された成形位置」を含むことを限定するものである。
オ (c),(d),(e)の「材質・板厚」を「材質および板厚」とする訂正事項は,上記ウにおける「材質・板厚の補正データ」とそれ以外の「材質・板厚」とを区別するためのものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり,また,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
カ 訂正事項A1は本件特許明細書の段落【0012】および【0017】の記載に基づくものであり,訂正事項A2は同段落【0022】の記載及び表2の「ダイ成形位置」,「パンチ成形位置」との記載に基づくものであり,また,訂正事項A3は同段落【0024】及び【0033】の記載に基づくものであり,さらに,訂正事項A4は同段落【0032】及び【0033】の記載に基づくものであるから,訂正事項A1?A4は,新規事項の追加には該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
したがって,訂正事項Aは,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって,新規事項の追加には該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(2)訂正事項Bについて
訂正事項Bは,請求項を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としており,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(3)訂正事項C及びDについて
訂正事項C及びDは,それぞれ訂正事項A及びBに伴い,発明の詳細な説明の記載を整合させたものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的としており,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(4)訂正事項E及びFについて
本件特許明細書の段落【0028】?【0034】,【符号の説明】及び図3には,「プレスモーション設定値メモリ部(変更データ部)27」及び「数値演算部28」と記載されていることから,訂正事項E及びFは,誤記の訂正を目的としており,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(5)まとめ
したがって,上記訂正は,いずれも,特許法第126条第1項第1乃至3号に該当し,同第3項,第4項の規定に適合する。

2.独立特許要件
そこで,本件訂正後の上記請求項1に係る発明(以下「訂正発明」という。)が,特許出願の際,独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第126条第5項)について検討する。

(1)訂正発明
本件訂正発明は,訂正明細書の記載からみて,上記第2.の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

(2)刊行物記載の発明
訂正発明の出願前に頒布された刊行物である特開平3-294135号公報(以下「引用刊行物」という。(無効2007-800014の審決における甲第1号証と同じ。))には,以下の記載がある。
ア 第2頁左上欄第19行?左下欄第6行
「第8図は穴明機の構成概要を示すブロック図である。図で,1は穴明機を示し,この穴明機1は穴明機本体2および自動工具交換装置3で構成される。4は自動工具交換装置3に備えられている工具格納領域を示し,P1?Pnは径の異なる各工具が格納される工具格納場所を示す。これら工具格納場所P1?Pnにはそれぞれ番号が付されている。このような穴明機lは,加工プログラムが記録されている記録媒体,例えば紙テープ等の指令内容を図示しない制御装置で読取り,これに従つて穴明機本体2において,プリント基板の穴明け加工を行なう。なお,このような穴明機1は周知である。
第9図は記録媒体としてのテープの記録内容の説明図である。図で,5はテープを示す。テープ5には記録領域51,52,53・・・が設定されている。記録領域51には,穴明加工に使用すべき工具番号(T1)が記録され,記録領域52には,記録領域51で指示された工具により穴明けすべき位置(X座標,Y座標により指定される),当該位置への移動指令,および当該位置での穴明指令が記録されている。又,記録領域53には記録領域52で指示された穴明加工に引続く穴明加工に使用される工具番号T2が記録され,記録領域54には工具番号T2の工具で穴明加工すべき指令内容が記録されている。以下,工具番号とその工具番号の工具を用いて穴明加工すべき指令内容が順次記録されている。」

イ 第2頁右下欄第5行?第3頁右上欄第7行
「即ち,各格納工具に対してテープ5で指定されている工具番号が付与されることになる。作業者は,上記のように付与した格納工具番号を他にデータとともに制御装置の記憶部にキーボードを用いて記憶させる。
第10図は上記記憶部のデータテーブルの記憶内容の説明図である。図の上欄で,アドレスはこのデータテーブルのアドレス,格納場所番号は工具格納場所P1?Pnのそれぞれに設定された番号(例えば工具格納場所P1は1番,P2は2番,・・・Pnはn番),格納工具径は各工具格納場所に格納されている工具の径である。格納工具番号は上述のようにして各格納工具に付与された番号である。穴明回数は各工具が穴明けに使用された回数,寿命設定回数は各工具の寿命を穴明回数で表わしたものである。加工条件データは各工具に対する加工条件,例えば工具回転数や穴明速度等のデータである。この加工条件は,加工対象のプリント基板の材質や,それが両面板の場合,多層板の場合等により異なり,又,それらを何枚か重ねて同時に穴明加工する場合も重ねた枚数により加工条件が異なるものであって,これら加工条件は作業者の経験等に基づいて決定される。・・・
次に,上記穴明機1の動作の概略を説明する。穴明機1の制御装置は,まずテープ5の記録領域51に記録されている工具番号T1を読取る。この工具番号T1が「1番」であるとすると,制御装置は第10図に示すデータテーブルから格納工具番号が「1番」の工具を探し,これが工具格納場所「(n-1)番」に格納されていることを見出す。次いで,制御装置は寿命設定回数(3000)と穴明回数(600)とを比較し,後者が前者未満であることを確認した後,穴明機本体2のスピンドル(図示されていない)を工具格納場所Pn-1(工具格納番号は工具格納場所に付された符号の添字の数字と一致するものとする。)まで移行させ,格納されている工具(径5.0mm)をスピンドルに装着せしめる。次いで,データテーブルのアドレスAn-1に格納されている加工条件データに従い,テープ5の記録領域52に記録されている穴明指令を実行する。」

ウ 第3頁左下欄第4?11行
「上記従来の穴明機においては,穴明加工されるプリント基板の材質,それが両面板か多層板か,何枚重ねか等,加工対象のプリント基板の形態により加工条件データが変更されることになり,又,テープ5が変更される毎に格納工具番号も変更される。即ち,第10図に示すデータテーブルの格納工具番号と加工条件データが書換えられることになる。」

これら記載事項を,技術常識を勘案しつつ,訂正発明に照らして整理すると,甲第1号証には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「穴明加工を行う穴明機の工具の制御装置において,
加工に使用すべき工具番号が記録された加工プログラムを読み取る手段と,
加工プログラム中の工具番号に対応する,基板の材質,枚数に応じた,工具回転数や穴明速度等の加工条件データを記憶する記憶部と,
加工プログラムによる加工時に,加工プログラムから読み取った工具番号により,当該工具に対応する加工条件データに従い工具を駆動する,
穴明機の工具の制御装置。」

(3)訂正発明についての対比・判断
ア.対比
訂正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「穴明加工」,「穴明機」,「工具」と,訂正発明の「成形加工」,「パンチプレス機」,「(成形)金型」とは,それぞれ「加工」,「加工機」,「加工具」である限りにおいて一致する。
引用発明の「加工条件データ」は「基板の材質,枚数に応じた,工具回転数や穴明速度等の」データであり,工具の駆動のためのデータであるから,訂正発明の「詳細設定データ」に相当する。
また,引用発明の「加工に使用すべき工具番号が記録された加工プログラムを読み取る手段と,加工プログラム中の工具番号に対応する,基板の材質,枚数に応じた,工具回転数や穴明速度等の加工条件データを記憶する記憶部と,加工プログラムによる加工時に,加工プログラムから読み取った工具番号により,当該工具に対応する加工条件データに従い工具を駆動する」と,訂正発明の「(b)加工プログラム中の金型番号に対応するプレスモーション番号を記憶する金型情報メモリ部,(c)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを記憶する共通データメモリ部,(d)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚により,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を変更する材質および板厚の補正データを記憶する変更データメモリ部,(e)前記加工プログラムによる加工時に,前記金型情報メモリ部から装着金型に対応するプレスモーション番号を参照し,このプレスモーション番号毎に,前記共通データメモリ部から被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを生成するとともに,前記変更データメモリ部から転送された,参照されたプレスモーション番号毎の材質および板厚の補正データに基づく被加工物の材質および板厚に該当する設定値データにより,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を補正し,補正された成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データに基づきプレス軸を駆動するための駆動データを生成するプレス駆動データ生成部および(f)このプレス駆動データ生成部において生成された駆動データに基づいてプレスの駆動制御を行うプレス駆動制御部を備える」とは,
「加工具番号に対応する加工の詳細設定データを記憶するデータメモリ部を有し,加工プログラムによる加工時に,加工プログラムから加工具番号を読み取り,加工具番号に対応する加工の詳細設定データに基づいて,加工軸を駆動するための駆動データを生成する加工駆動データ生成部を有し,この加工駆動データ生成部において生成された駆動データに基づいて加工の駆動制御を行う加工駆動制御部を備える」という限りにおいて,一致する。
したがって,両者の一致点及び相違点は次のとおりと認められる。
訂正発明と引用発明とを対比すると,両者は以下の点で一致する。
「加工具を用いて被加工物の加工を行う加工機における加工具の制御装置であって,
加工具番号に対応する加工の詳細設定データを記憶するデータメモリ部を有し,
加工プログラムによる加工時に,加工プログラムから加工具番号を読み取り,
加工具番号に対応する加工の詳細設定データに基づいて,加工軸を駆動するための駆動データを生成する加工駆動データ生成部を有し,
この加工駆動データ生成部において生成された駆動データに基づいて加工の駆動制御を行う加工駆動制御部
を備える加工機における加工具の制御装置。」である点。

そして,次の点で相違する。
[第1相違点]
訂正発明は,パンチおよびダイを備え,ストローク量に応じて加工量が変更可能な成形金型を有するパンチプレス機により成形加工を行うとともに,打抜加工が可能なものであるが,引用発明は,工具を有する穴明機により穴明加工を行うものである点。
[第2相違点]
訂正発明では,
(a)加工プログラムから読み取られる被加工物の材質データおよび板厚データをそれぞれ記憶する材質メモリ部および板厚メモリ部,
(b)加工プログラム中の金型番号に対応するプレスモーション番号を記憶する金型情報メモリ部,
(c)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを記憶する共通データメモリ部,
(d)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚により,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を変更する材質・板厚の補正データを記憶する変更データメモリ部,を備え,
(e)前記加工プログラムによる加工時に,前記金型情報メモリ部から装着金型に対応するプレスモーション番号を参照し,
このプレスモーション番号毎に,前記共通データメモリ部から被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを生成するとともに,
前記変更データメモリ部から転送された,参照されたプレスモーション番号毎の材質・板厚の補正データに基づく被加工物の材質および板厚に該当する設定値データにより,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を補正し,補正された成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データに基づきプレス軸を駆動するための駆動データを生成しているのに対し,
引用発明では,材質メモリ部および板厚メモリ部を備えているか否かは不明であり,金型番号に対応するプレスモーション番号を記憶する金型情報メモリ部を備えておらず,加工条件データとして共通データと変更データとに分けて記憶し,加工時にプレスモーション番号を参照して両データから駆動データを生成するようにはしていない点。

イ.判断
(ア) 相違点1について検討する。
引用発明の「加工に使用すべき工具番号が記録された加工プログラムを読み取る手段と,加工プログラム中の工具番号に対応する,基板の材質,枚数に応じた,工具回転数や穴明速度等の加工条件データを記憶する記憶部と,加工プログラムによる加工時に,加工プログラムから読み取った工具番号により,当該工具に対応する加工条件データに従い工具を駆動する制御装置」を訂正発明の打抜加工も可能なパンチプレス機の制御装置に適用するに当たり,工具番号を成形金型の番号としても良いこと,パンチプレス機においても,基板の材質,枚数に応じて加工条件を設定する必要があることは明らかであるから,引用発明の制御装置をパンチプレス機の制御装置に適用することに格別の困難性があるものということはできない。
また,一つの制御方法を穴明加工及び成形加工を行う制御装置に共通して適用できることは,特開平1-115508号公報(周知例1),特開昭58-186805号公報(周知例2),特開平6-738号公報(周知例3)に記載されているように従来周知である。これによると,訂正発明のような「パンチプレス機」の制御装置や引用発明のような「穴明け機」の制御装置は,工作機械の数値制御装置である点で共通し,同じような制御方法であれば,相互に適用可能であることは,当業者にとって技術常識であったものと認められる。
そして,パンチプレス機械において打抜加工も可能なものとすることは,前記した特開平1-115508号公報(周知例1)(第4頁左欄1行?6行)及び特開平4-367332号公報(周知例4(無効2007-800014の審決における甲第1号証と同じ。)段落【0002】参照。)にも,また実願昭55-139708号(実開昭57-65720号)のマイクロフィルム(周知例5)(第1頁19行?第2頁2行)にも記載されているように従来周知の事項であり,また,打抜加工も成形加工も同じく金型を使用して加工するものであるから,前記した一つの制御方法を穴明加工及び成形加工を行う制御装置に共通して適用する際,成形加工とともに打抜加工も行うことが可能なパンチプレス機とすることは,当業者が適宜選択して実施する設計的事項であると認められる。

(イ) 相違点2について検討する。
a まず,金型番号に対応するプレスモーション番号を記憶する金型情報メモリ部を備え,加工プログラムによる加工時に,前記金型情報メモリ部から装着金型に対応するプレスモーション番号を参照する点について検討する。
訂正発明における前記金型情報メモリ部の機能は,金型番号に対応するプレスモーション番号を記憶することであるが,その目的は,プレスモーション設定メモリ部に記憶されているプレスモーションに関する詳細データを読み出し,プレス駆動制御のための情報を生成することであり,また,金型番号に対応してプレスモーション番号を設定することの効果は,一つのプレスモーションが複数の金型に適用され得る(したがって,一つのプレスモーション番号が複数の金型番号と対応する)場合を想定し,共通データメモリ部において記憶するデータ量を削減することである。
ところで,例えば,職場や学校等において,実行すべき内容や手順の定まった一群の用務を,各用務ごとに複数又は1人の者に割り当てて管理する場合に,当該複数又は1人の者の各人ごとに,それぞれの実行すべき用務の具体的内容や手順を結び付けるのではなく,各用務に名称を付し,各人とその用務名とを結び付ける一方で,各用務名と当該用務に係る実行すべき具体的内容や手順とを結び付けて管理するようなことは,誰しもが経験しているところであり,このようなことは,事象を整理して把握するために,機械制御の分野に限らず,広く一般に行われている日常的な手法の一つであるにすぎない。そして,上例においては,それぞれの用務に名称を付し,この名称を介して管理する方が,生徒各人ごとにその実行すべき用務の具体的内容や手順を結び付けて管理する場合に比べ,管理のために必要となる情報量が相対的に少なくなることは自明である。
それのみならず,機械制御に用いる複数の制御条件を番号や記号により特定して記憶するとともに,その番号を工具や被加工品の種別と対応させて記憶し,工具や被加工品の種別から,それらに応じた制御条件に関するデータを読み出して設定するようにすることは,特開平2-217200号公報(周知例6)(3頁左上欄末行?右上欄8行,第4図),特開平3-142023号公報(周知例7)(4頁右下欄1行?5頁左上欄9行),特開平2-95527号公報(周知例8)(2頁左上欄18行?右上欄4行,第2図)特開平6-222821号公報(周知例9)(段落【0032 ,図4)等に記載されているように,本件特許出願時において普通に行われていた周知の技術であると認められる。また,上記特開平2-95527号公報(周知例8)に記載されているように,複数の対象に対して,共通して用いられるデータ等を同じ番号や記号によって対応付けて記憶するようにし,データ量を削減するようなことも,通常行われていた程度ものということができる。
b 次に,被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データと,前記材質および板厚により変更される詳細設定データを用いて駆動データを生成することについて検討する。
特開平5-282021号公報(周知例10(無効2007-800014の審決における甲第2号証と同じ。)),特開平4-367332号公報(周知例4(無効2007-800014の審決における甲第3号証と同じ。)),特開平4-270015号公報(周知例11(無効2007-800014の審決における甲第4号証と同じ。))には,「被加工物の材質および板厚に無関係な加工条件を決定するためのデータ」と「被加工物の材質および板厚に応じて加工条件を変更するためのデータ」と入力された被加工物の材質および板厚とを用いて,加工時に「被加工物の材質および板厚に無関係な加工条件を決定するためのデータ」を変更して駆動データを生成することが記載されており,このようにすることは従来周知の技術であったものと認められる。
そして,「被加工物の材質および板厚に無関係な加工条件を決定するためのデータ」と「被加工物の材質および板厚に応じて加工条件を変更するためのデータ」とをそれぞれ別のメモリに記憶することは当業者が適宜なし得る程度の事項にすぎないから,第2相違点のうち「加工のためのデータとして,共通データと変更データとを別のメモリ部に記憶しておき,加工プログラムによる加工時に,被加工物の材質および板厚に応じて,共通データのうち所定のデータを変更して駆動データを生成する」との構成とすることは,当業者が容易に想到し得るところである。
訂正発明では,さらに前記詳細設定データが,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むものであり,変更データメモリ部には,被加工物の材質および板厚により前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を変更する材質・板厚の補正データを記憶するようにして,加工時には,「共通データメモリ部から被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを生成するとともに,前記変更データメモリ部から転送された,参照されたプレスモーション番号毎の材質・板厚の補正データに基づく被加工物の材質および板厚に該当する設定値データにより,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を補正し,補正された成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データに基づきプレス軸を駆動するための駆動データを生成する」ものである。
そして,プレス機における加工のためのデータとして「パンチおよびダイのいずれかの成形位置」があり,被加工物の材質および板厚に応じて当該成形位置を変更すべきであることは,上記特開平4-367332号公報(周知例4(無効2007-800014の審決における甲第3号証と同じ。))の段落【0040】?【0041】及び図9,10にも示されているほか,特開平1-150499号公報(周知例12)の第4頁左上欄第6?19行,特開昭58-205700号公報(周知例13)の第3頁右上欄第15行?左下欄第3行等に記載されているように従来周知の技術にすぎない。
c 加工プログラムから読み取られる被加工物の材質データおよび板厚データをそれぞれ記憶する材質メモリ部および板厚メモリ部について検討する。
材質および板厚は,前記した特開平5-282021号公報(周知例10(無効2007-800014の審決における甲第2号証と同じ。)),特開平4-367332号公報(周知例4),特開平4-270015号公報(周知例11)に記載された発明でも考慮されているところ,駆動データ作成のためには,材質および板厚が,何らかの形で入力・記憶される必要があることは明らかであり,特開平4-367332号公報(周知例4の段落【0002】参照),特開平8-281497号公報周知例14)の段落【0014】,特開平8-141885号公報(周知例15の段落【0015】)等に記載されているように,加工プログラムにより材質,板厚を与えることは,従来周知であるから,「加工プログラムから読み取られる被加工物の材質データおよび板厚データをそれぞれ記憶する材質メモリ部および板厚メモリ部」を備える点については設計的事項にすぎない。

(ウ)相違点1と相違点2との相乗作用について
a 訂正発明は,上記(ア)の相違点1で認定したように,パンチ及びダイを備え,ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型を用いてその被加工物の成形加工を行うとともに打抜加工も可能なパンチプレス機の制御装置に関する発明である。そして,その制御装置は,上記(イ)の相違点2で認定したように,「(a)加工プログラムから読み取られる被加工物の材質データおよび板厚データをそれぞれ記憶する材質メモリ部および板厚メモリ部」と,「(b)加工プロブラム中の金型番号に対応するプレスモーション番号を記憶する金型情報メモリ部」と,「(c)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを記憶する共通データメモリ部,」と,「(d)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚により,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を変更する材質・板厚の補正データを記憶する変更データメモリ部」とを備えており,これらのメモリ部に記憶されたデータを利用して,「(e)前記加工プロブラムによる加工時に,前記金型情報メモリ部から装着金型に対応するプレスモーション番号を参照し,このプレスモーション番号毎に,前記共通データメモリ部から被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを生成する」とともに,「前記変更データメモリ部から転送された,参照されたプレスモーション番号毎の材質・板厚の補正データに基づく被加工物の材質および板厚に該当する設定値データにより,前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を補正し」,この「補正された成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データ」に基づき,「プレス軸を駆動するための駆動データを生成する」ための「プレス駆動データ生成部」を備えるものであり,この「プレス駆動データ生成部」において生成された駆動データに基づいて,相違点1のパンチ及びダイを備えたストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型を用いてその被加工物の成形加工を行うとともに打抜加工も可能なパンチプレス機の駆動制御を行うものである。
そこで,上記(ア)及び(イ)で検討した相違点1及び相違点2についての個別の検討に加え,相違点1と相違点2との発明特定事項による相乗作用について検討する。

b 訂正発明は,パンチ及びダイを備えたパンチプレス機の成形金型の制御装置に関する発明であり,その成形金型は,ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能なものである。そして,その制御装置は,成形金型の金型番号に対応してプレス動作を示すプレスモーション番号を設定・記憶し,そのプレスモーション番号毎に設定された詳細設定データを生成するものである。その金型番号に対応したプレスモーション番号毎の詳細設定データは,被加工物の材質及び板厚に無関係なデータ(共通データ)と,被加工物の材質及び板厚により変更するデータ(変更データ)を生成して,それぞれ共通データメモリ部及び変更データメモリ部に記憶するものである。そして,これらの被加工物の材質・板厚に無関係なデータ(共通データ)と被加工物の材質及び板厚により変更するデータ(変更データ)とに基づいて,プレス駆動データを作成し,その駆動データに基づいてパンチプレス機の制御を行い,成型加工とともに打抜加工も可能とするものである。
(a) すなわち,訂正発明は,パンチ及びダイを備え,ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型を用いて被加工物の成型加工を行うとともに,打抜加工も可能なパンチプレス機に関するものであるから,ある同じ被加工物(板材等)に対し複数の加工を行う際,成形金型は異なるが,プレス動作(例えば,パンチ待機位置,ダイ成型位置,パンチ及びダイの駆動速度等)は共通する場合があるものである。そして,訂正発明のパンチ及びダイを備えたパンチプレス機の成形金型の制御装置は,成形金型の金型番号に対応してプレス動作(プレスモーション)を示すプレスモーション番号を設定・記憶し,そのプレスモーション番号毎に設定された詳細設定データ(被加工物の材質や板厚に無関係なデータ(共通データ))を生成するものであるから,複数の成形金型を使用する際に,共通のプレスモーションがあれば,そのプレスモーション分,詳細設定データを減らすことができ,またその分データの修正の作業量も少なくなる。そして,新たな成形金型を追加する場合でも,すでに利用できるプレスモーションがある場合には,そのデータ入力作業が不要になるという効果も奏する。

(b) また,訂正発明のパンチ及びダイを備えたパンチプレス機の成形金型の制御装置は,その金型番号に対応したプレスモーション番号毎の詳細設定データを,被加工物の材質や板厚に無関係なデータ(共通データ)と被加工物の材質や板厚に関係するデータ(変更データ)とに区分して記憶する構成とし,その材質や板厚に無関係なデータは共通化し(実施の形態として全文訂正明細書の段落【0022】及び表2参照),また,被加工物の材質や板厚に関係するデータは,材質や板厚に応じて補正するもの(実施の形態として,全文訂正明細書の段落【0024】及び表3参照)である。これにより,訂正発明は,被加工物の多種多様な成形加工や打抜加工のために予め準備すべき成形金型の数を少なくてすむことになる。そして,この金型の数が少なくなることにより,金型の調整や試し打ち確認の作業も少なくできる効果を奏するものである。また,同一の成形加工を行う金型の保有個数を減らせるのでランニングコストの低減が期待できるといった利点を有している。(全文訂正明細書の段落【0008】参照)。

(c) 更に,訂正発明のパンチ及びダイを備えたパンチプレス機の成形金型の制御装置は,被加工物の材質・板厚に無関係なデータ(共通データ)に基づいて,プレスモーション番号毎に,パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを生成し,そして,そのパンチおよびダイのいずれかの成形位置を含む詳細設定データを,被加工物の材質及び板厚により変更するデータ(変更データ)とに基づいて補正し,補正された成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データに基づきプレス軸を駆動し,パンチプレス機の制御を行うものであるから,加工対象としての被加工物の材質や板厚に変更が生じても,金型の調整や交換などの段取り作業を不要にし,1つの金型で所望の成形加工を行うことが可能となり,材料供給装置等を連動させた自動運転・連続運転で材質・板厚の変更が生じた場合でも,オペレータによる手動のプレスモーション変更作業が不要になるので無人化・省人化運転が可能となり,生産性の向上を図ることができるものである(全文訂正明細書の段落【0008】参照)。
c したがって,訂正発明は,相違点1で認定した発明特定事項,及び相違点2で認定した発明特定事項により,上記bの(a)乃至(c)で述べた相乗作用及び効果を奏するものである。
d そして,引用発明乃至上記(1)(2)で引用した周知例1?15に示した刊行物には,パンチ及びダイを備え,ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型を用いてその被加工物の成形加工を行うとともに打抜加工も可能なパンチプレス機の制御装置において,金型番号に対応したプレスモーション番号毎の詳細設定データを,被加工物の材質及び板厚に無関係なデータ(共通データ)と,被加工物の材質及び板厚により変更するデータ(変更データ)とに分けて生成して,それぞれ共通データメモリ部及び変更データメモリ部に記憶し,それらの被加工物の材質・板厚に無関係なデータ(共通データ)と被加工物の材質及び板厚により変更するデータ(変更データ)とに基づいて,プレス駆動データを作成し,その駆動データに基づいてパンチプレス機の制御を行い,成型加工とともに打抜加工も可能とすることは,記載も示唆もされていない。

e 周知例として示した刊行物について詳述すると,
(a)特開平5-282021号公報(周知例10(無効2007-800014の審決における甲第2号証と同じ。))には,「加工プログラムの主軸回転速度,切削送り速度という加工条件を決定するための関数を,ワーク材質の影響を受けない第1の関数部(基準値)とワーク材質の影響を受ける第2の関数部(補正値)とに分割し,加工プログラムの作成時に第1の関数部を加工プログラムと一体に保存すると共に,加工プログラムの実行段階で,オペレータから入力されたワークの材質から,材質に対応して補正値を記憶したファイルを利用して,NC工作機械の制御装置に第2の関数部を設定し,第1の関数部と第2の関数部とを合成して加工条件を生成して加工を行うNC工作機械の加工条件生成方式。」の発明が記載されていると認められるが,加工機がNC工作機であり,訂正発明のように,パンチ及びダイを備え,ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型を用いてその被加工物の成形加工を行うとともに打抜加工も可能なパンチプレス機ではないので,成形金型を有するものではなく,金型番号に対応したプレスモーション番号毎の詳細設定データを生成すること,更には,被加工物の材質・板厚に無関係なデータ(共通データ)と被加工物の材質及び板厚により変更するデータ(変更データ)とから生成し,プレス駆動データを作成することを想到ことはできない。

(b)特開平4-367332号公報(周知例4(無効2007-800014の審決における甲第3号証と同じ。))には,プレス機械のNCプログラム上で「工具のみ,或いは加工パターンの基本形のみ」を示すことを前提として,「各工具に各工具の識別情報の他に該工具に関連して定められる各軸制御条件を記憶するメモリチップ(IDチップ)を設け,NCプログラム上で指定された工具番号により,選択工具のメモリチップの記憶内容を読出して,NCプログラム上で指定された加工条件に,材質,板厚に関連する前記軸制御条件を加えて,実際軸制御のための加工パターンを自動的に演算するプレス機械の加工パターン発生装置。」の発明が記載されていると認められる。
そして,上記刊行物には,その段落【0010】に「【作用】本発明のプレス機械の加工パターン発生装置では,各工具に各工具の識別情報の他に該工具に関連して定められる各軸制御条件を記憶するメモリチップ(IDチップ)を設け,選択工具のメモリチップの記憶内容を読出して,NCプログラム上で指定された加工条件に前記軸制御条件を加えて実際軸制御のための加工パターンを演算する。例えば,前記制御軸がパンチ金型駆動用のラムである場合,前記メモリチップには他のパンチ金型に対する駆動速度の比率が記憶され,前記軸制御演算部は,前記NCプログラムで規定される速度値に前記比率を乗じてラム駆動速度を演算する。また,例えば,前記制御軸が成形金型駆動用のラムである場合,前記メモリチップには,加圧保持時間が記憶され,前記軸制御演算部は,前記NCプログラム上で規定される材料板厚に応じて時間及びラム動作の加工パターンを演算する。従って,NCプログラム上では,加工パターンの全てを記述する必要がなく,工具のみ,或いは加工パターンの基本形のみを示すことにより,全工具に対して最適加工パターンが自動的に設定でき,高精度,高効率のプレス加工が行える。」と,段落【0036】?【0044】には,「補助コード適正化部58は,NCプログラム入力部38より入力されたNCプログラムのデフォルト値に対し,IDチップ26の加工制御情報を優先し,Mコードの内容を変更させるものである。例えば,バーリング金型のIDチップ26にパンチ完了と軸移動までの遅延時間であるドウェル時間(100ms)が与えられていた場合,NCパラメータで与えられるデフォル値60msに対して,100msが優先され,実行されるが如くである。また,補助コード適正化部57は,金型に対し当然に記述されなければならないMコードにつき,この挿入を忘れたNCプログラムに対し,これを自動的に与えることもできる。一方,軸制御条件演算部57は,図5に示すIDチップ26の情報のうち,主には軸制御条件の情報を入力し,各金型に対して最適の加工パターンを演算し,NCプログラム修正部61に提供するものである。図8は穴明け金型についての加工パターンを示す。横軸は時間を縦軸はラム位置を示す。この加工パターンは材質,板厚に応じストライカの下端が材料上面に接近ないし接触するまでは高速V1 で下降され,その後の打ち抜きを区間では低騒音の目的を達成する速度V2 とされ,打ち抜き完了で高速値V3 にて元の位置へ戻らせるよう定められる。ここに,打ち抜き速度V2 は,IDチップ26に記憶させたプレス速度をそのまま代入してもよく,また,材質,板厚と,IDチップ26の他の軸制御条件から算出しても良い。この軸制御条件としては,材質,板厚等に関連して使用金型に応じた値を算出しても良く,また金型との間の比較値として定めた比率を定める例がある。比率を乗ずることにより,打ち抜き速度V2 を定める場合には,この比率は全金型に対し同一騒音を呈する値であるので,全ての金型に対し同一の低騒音,低振動性能で穴明け加工が行える。図9はセンターポンチ刻印についての加工パターンを示す説明図である。この加工パターンは,板厚dに対するポンチ先端下降位置と,下限位置での停止時間と,下降速度と上昇速度とで定められる。この場合の加工パターンはポンチに対し一定で良いので,板厚dに応じて求めれば良い。図10は,ルーバ,ランス,カウンターシンク,バーリング等の成形金型に対する加工パターンを示す説明図である。この加工パターンは,接触位置P0 と,下限位置での加圧保持時間tと,各区間速度で定められるので,他は全て金型固有のパラメータを用い,材質,板厚dの関数として求められば良い。図11はタッピングの加工パターンを示す説明図である。この加工パターンでは,ネジ径に応じて切込み,切込み開始,終了位置と,タッピング終了位置と,各区間速度を定めれば良い。図12はスロッテイングの加工パターンを示す説明図である。。この加工パターンは板厚dに応じ金型下限位置と加工,上昇速度を定める。図8?図11に示す加工パターンにつき,NCプログラム上では,金型と,板厚dと,必要に応じては基本速度を指定すれば,後は全て軸制御条件演算部57でパターン生成されるので,NCプログラムは極めて簡潔に書くことができる。また,金型識別部56で金型識別を行ってのち,加工パターンを生成するので,金型制御を誤り,金型破損を生じたり,異常騒音を発生する等の虞れも無い。しかも,生成された加工パターンは全て各金型に対して最適の加工パターンであるので,所謂くいつき等も生ずることがなく加工精度も向上する。」との記載があることから,訂正発明における「各成形金型毎の成形加工のプレスモーションのデータを,被加工物の材質や板厚に無関係なデータ(共通データ)と被加工物の材質や板厚に関係するデータ(変更データ)とに区分し,その材質や板厚に無関係なデータは共通化し,被加工物の材質や板厚に関係するデータは,材質や板厚に応じて補正する」ことが,示唆されているともいえる。
しかしながら,上記刊行物には,段落【0035】に,「金型識別部56は,図5に示す金型固有番号または金型形状により,NCプログラム入力部59に入力されたNCプログラムで指定された通りの金型が各金型装着ステーションSiに装着されているかを確認するものである。識別方式は,一個一個の金型について順次識別する方式と,一度全ての装着金型を認識し,使用金型リストと照合する方式とがある。」との記載はあるが,その金型は,ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能なものではなく,また,加工パターン発生装置は,「成形金型の金型番号に対応してプレス動作を示すプレスモーション番号を設定・記憶し,そのプレスモーション番号毎に設定された詳細設定データを生成するもの」でもない。
そして,訂正発明は,これらの発明特定事項を備えた,パンチ及びダイを備えたパンチプレス機の成形金型の制御装置において,「各成形金型毎の成形加工のプレスモーションのデータを,被加工物の材質や板厚に無関係なデータ(共通データ)と被加工物の材質や板厚に関係するデータ(変更データ)とに区分し,その材質や板厚に無関係なデータは共通化し,被加工物の材質や板厚に関係するデータは,材質や板厚に応じて補正する」ものであるから,前記b,cでのべた作用及び効果を奏するものであり,前記刊行物から容易に想到することができた発明であるとはいえない。

(c)特開平4-270015号公報(周知例11(無効2007-800014の審決における甲第4号証と同じ。))には,「予め基本パンチプログラムが入力されたディジタルサーボコントローラと,入力手段により入力された板厚および材質を記憶する記憶部,記憶部に記憶された板厚および材質の値から所定項目のデータを演算する演算部を有する数値制御装置とを備え,数値制御装置の演算部により演算された前記所定項目のデータをディジタルサーボコントローラに転送し,駆動指令を生成するパンチプレス制御装置。」の発明が記載されていると認められるが,各成形金型毎の成形加工のプレスモーションのデータを,被加工物の材質や板厚に無関係なデータ(共通データ)と被加工物の材質や板厚に関係するデータ(変更データ)とに区分し,その材質や板厚に無関係なデータは共通化し,被加工物の材質や板厚に関係するデータは,材質や板厚に応じて補正することは,記載も示唆もされていない。

(d)特開平1-150499号公報(周知例12)には,「制御部に刻印加工速度パターンの指令を与えるため接続された刻印加工速度パターン記憶部を備えたパンチプレス機において,刻印加工速度パターン記憶部47に,板材Wにおける各種の材質ならびに板材の変化に応じた刻印加工速度パターンが記憶され,刻印加工すべき板材の材質ならびに板厚を指定することによってその板材Wに合った刻印加工速度パターンを適宜選択することができ,それによって,従来板材Wに刻印加工を施す場合には板厚に応じて刻印金型における長さの調整を必要としていたが,板厚が変化しても刻印金型における長さの調整が不要となり,刻印加工の作業効率が向上すること,無人運転時の板厚変化に対応して刻印加工を行なうことができる」発明が記載されていると認められるが,上記(c)で述べたと同様に,各成形金型毎の成形加工のプレスモーションのデータを,被加工物の材質や板厚に無関係なデータ(共通データ)と被加工物の材質や板厚に関係するデータ(変更データ)とに区分し,その材質や板厚に無関係なデータは共通化し,被加工物の材質や板厚に関係するデータは,材質や板厚に応じて補正することは,記載も示唆もされていない。

(e)そのほかの周知例に示された刊行物(上記周知例1-3,5-9,13-15)にも,金型番号に対応したプレスモーション番号毎の詳細設定データを生成し,被加工物の材質・板厚に無関係なデータ(共通データ)と被加工物の材質及び板厚により変更するデータ(変更データ)とから生成し,プレス駆動データを作成することは記載も示唆もされておらず,また,上記相乗的な作用効果についても示唆されていない。
よって,訂正発明は,引用発明乃至上記周知例で示した刊行物に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから, 特許出願の際独立して特許を受けることができない発明でもない。

3 むすび
したがって,本件審判の請求は,特許法第126条第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条第3項ないし第5項の規定に適合する。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パンチプレス機における成形金型の制御装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】パンチおよびダイを備え、ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型を用いて被加工物の成形加工を行うとともに、打抜加工も可能なパンチプレス機における成形金型の制御装置であって、
(a)加工プログラムから読み取られる被加工物の材質データおよび板厚データをそれぞれ記憶する材質メモリ部および板厚メモリ部、
(b)加工プログラム中の金型番号に対応するプレスモーション番号を記憶する金型情報メモリ部、
(c)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって、前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを記憶する共通データメモリ部、
(d)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚により、前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を変更する材質・板厚の補正データを記憶する変更データメモリ部、
(e)前記加工プログラムによる加工時に、前記金型情報メモリ部から装着金型に対応するプレスモーション番号を参照し、
このプレスモーション番号毎に、前記共通データメモリ部から被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって、前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを生成するとともに、
前記変更データメモリ部から転送された、参照されたプレスモーション番号毎の材質・板厚の補正データに基づく被加工物の材質および板厚に該当する設定値データにより、前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を補正し、補正された成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データに基づきプレス軸を駆動するための駆動データを生成するプレス駆動データ生成部および
(f)このプレス駆動データ生成部において生成された駆動データに基づいてプレスの駆動制御を行うプレス駆動制御部
を備えることを特徴とするパンチプレス機における成形金型の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パンチプレス機における成形金型の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タレットパンチプレス機等のパンチプレス機において、例えばハーフシャー金型のような成形金型を用いて板状のワークの成形加工を行う際には、ワークの材質・板厚に応じて加工高さを変える必要があることから、次のような手法が従来より採用されている。
▲1▼プレス部におけるラムの上下動作を機械式で行うパンチプレス機の場合には、ラムのストローク長が固定であるため、事前に、加工する材質・板厚の材料で試し打ちを行う。この試し打ちは、実際に成形された加工形状を見ながら、金型のヘッド部分のネジ調整によって金型先端の下死点位置を変更する方法によりなされる。
▲2▼プレス部の駆動が油圧方式のパンチプレス機の場合に、各成形金型にそれぞれ1つずつのプレスモーションを設定する制御方式を持つものでは、プレスモーションを変更せずに、上記▲1▼と同様にして金型の調整を行う方法の他に、材質・板厚が変わる度にプレスモーションのデータ設定値を変更する方法がある。ただし、この場合には、プレスストローク動作が変化しても対応可能である金型を用いる必要がある。
▲3▼プレスストローク量をある適正範囲内で変化させるようにしたものでは、必ず同じ成形加工を行う金型を複数個準備しておき、材質・板厚毎に金型を使い分ける方法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述されている従来の各手法▲1▼?▲3▼では次のような問題点がある。
▲1▼材質・板厚が変わる生産においては、その都度、金型の調整と試打ち確認が必要になり、生産性が上がらない。
▲2▼油圧駆動のパンチプレス機において、プレスモーションの設定値を変更するものでは、金型の調整と試打ち確認の手間を省くことは可能であるが、材料供給装置等を連動させた自動運転・連続運転で材質・板厚の変更が生じた場合にオペレータによる手動のプレスモーション変更作業が必要になる。
▲3▼上記▲2▼の問題点を回避する方法として、同一の成形加工を行う金型を各々の材質・板厚毎に調整しておき、これら各金型をパンチプレス機に装着して運転する方法もあるが、この方法の場合には複数個の金型を準備しておく必要がありコスト高になる。また、金型を収納するターレットやマガジン部分を必要以上に使用することになるので、生産計画に基づいて連続運転を行う場合に、連続運転に必要な全金型が収納できず、1回の連続運転の生産計画量を少なく、あるいは短縮しなくてはならない。
▲4▼プレスストローク量をある適正範囲内で変化させるようにしたものにおいては、成形加工に必要な種数の個数分の金型を準備することが必要であり、上記▲3▼と同じ問題点が生じる。
【0004】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、加工対象としての被加工物の板厚や材質に変更が生じても、金型の調整や交換などの段取り作業を不要にし、1つの金型により所望の成形加工を行うことのできるパンチプレス機における成形金型の制御装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前述の目的を達成するために、本発明によるパンチプレス機における成形金型の制御装置は、
パンチおよびダイを備え、ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型を用いて被加工物の成形加工を行うとともに、打抜加工も可能なパンチプレス機における成形金型の制御装置であって、
(a)加工プログラムから読み取られる被加工物の材質データおよび板厚データをそれぞれ記憶する材質メモリ部および板厚メモリ部、
(b)加工プログラム中の金型番号に対応するプレスモーション番号を記憶する金型情報メモリ部、
(c)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって、前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを記憶する共通データメモリ部、
(d)各プレスモーション番号毎に被加工物の材質および板厚により、前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を変更する材質・板厚の補正データを記憶する変更データメモリ部、
(e)前記加工プログラムによる加工時に、前記金型情報メモリ部から装着金型に対応するプレスモーション番号を参照し、
このプレスモーション番号毎に、前記共通データメモリ部から被加工物の材質および板厚に無関係なプレスモーションの詳細設定データであって、前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データを生成するとともに、
前記変更データメモリ部から転送された、参照されたプレスモーション番号毎の材質・板厚の補正データに基づく被加工物の材質および板厚に該当する設定値データにより、前記パンチおよびダイのいずれかの成形位置を補正し、補正された成形位置を含むプレスモーションの詳細設定データに基づきプレス軸を駆動するための駆動データを生成するプレス駆動データ生成部および
(f)このプレス駆動データ生成部において生成された駆動データに基づいてプレスの駆動制御を行うプレス駆動制御部
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、ストローク量に応じて被加工物の成形加工量が変更可能な成形金型が用いられ、この成形金型を用いた自動運転が行われると、加工プログラムに記述されている材質データが材質メモリ部に、板厚データが板厚メモリ部にそれぞれ記憶され、この処理の後、加工プログラムの指令にしたがって、順次以下の処理動作が実行される。
まず、加工プログラムの金型交換指令により、成形金型がプレス部に装着されると、この装着された金型番号データに基づいて、金型情報メモリ部に記憶されている該当する金型番号が検索・参照され、この金型番号に基づくプレスモーション番号データが共通データメモリ部および変更データメモリ部に転送される。
共通データメモリ部では、転送されたプレスモーション番号データに基づいて該当するプレスモーション番号の詳細設定値をプレス駆動データ生成部に転送し、また変更データメモリ部では、転送されたプレスモーション番号データに基づいて該当する材質・板厚データを検索し、前記材質メモリ部のデータおよび板厚メモリ部のデータにしたがって、該当する設定値データをプレス駆動データ生成部に転送する。
次いで、このプレス駆動データ生成部では、これら共通データメモリ部および変更データメモリ部より転送されたデータおよび前記板厚メモリ部に記憶されている板厚データに基づいて実際にプレス軸を駆動するためのデータを作成する。
そして、プレス駆動制御部においては、この作成されたデータに基づいてパンチ動作指令によってパンチ軸もしくはダイ軸が駆動されて所要の成形加工が実行される。
【0008】
本発明によれば、加工対象としての被加工物の材質や板厚に変更が生じても、金型の調整や交換などの段取り作業を不要にし、1つの金型で所望の成形加工を行うことが可能となる。こうして、被加工物の材質・板厚が変わる生産であっても、金型の調整と試打ち確認が不要になり、生産性を向上させることができる。
また、材料供給装置等を連動させた自動運転・連続運転で材質・板厚の変更が生じた場合でも、オペレータによる手動のプレスモーション変更作業が不要になるので無人化・省人化運転が可能となり、生産性の向上を図ることができる。
さらに、従来のような同一の成形加工を行う金型を各々の材質・板厚毎に調整しておき、パンチプレス機に装着して運転する方法と異なり、金型をパンチプレス機に実装するタレットステーションが1ステーションになり、余ったステーションに他の金型が実装できるので、段取り回数の削減に繋がりより生産性の向上が期待できる。
また、同一の成形加工を行う金型の保有個数を減らせるのでランニングコストの低減が期待できるといった種々の利点を有している。
【0009】
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明によるパンチプレス機における成形金型の制御装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1,図2には、本発明の一実施例に係る成形金型の断面図が示されている。ここで、図1は成形加工前の状態を、図2は成形加工後の状態((b)は部分拡大図)をそれぞれ示している。
【0012】
本実施例は、下向きハーフシャー成形加工を行う場合に適用されるものである。
この成形加工に用いられる金型1は、パンチ(上金型)2と、このパンチ2に付設されるストリッパ(パンチプレート)3と、ダイ(下金型)4とからなっている。
【0013】
パンチ2は、所要形状のパンチチップ5と、このパンチチップ5を保持するパンチホルダー6とがボルト7にて一体的に連結されてなり、パンチホルダー6の基部外周部に全周にわたって搬送用のパンチリング8が被嵌固着されてなる構造とされている。
ストリッパ3は、パンチ2に対し下方から被嵌されて上下に摺動可能に支持されている。また、このストリッパ3の上面とパンチホルダー6の下面との間にはクッションの役目をするウレタン等の弾性体9が介挿されている。
一方、ダイ4は、ダイ本体10と、このダイ本体10を保持するダイプレート11とがボルト12にて一体的に連結されてなり、このダイ本体10の外周部に全周にわたってダイアダプター13が被嵌固着されてなる構造とされている。
また、ダイ本体10内にはダイエジェクタ14が支持され、このダイエジェクタ14とダイプレート11との間にはやはり、クッションの役目をするウレタン等の弾性体15が介挿されている。
【0014】
このような金型1を用い、パンチ3とダイ4との間に被加工物Wを挿入してパンチ軸,ダイ軸が駆動されると、ストリッパ3の下面が被加工物Wの表面に当接した後に、ストリッパ3上面とパンチホルダー6下面とのクリアランスa(例えば3.5mm)の範囲内で弾性体9が収縮して、ストリッパ3下面からパンチチップ5の先端部が突出するとともに、ダイ4側の弾性体15が収縮してダイエジェクタ14がダイ本体10の表面から所要量没入し、これによって所望のハーフシャー成形加工(ハーフピアス加工)が行われる。
このように本実施例のような金型1を用いると、加工対象としての被加工物Wの板厚に応じてパンチ3のストローク量を変えることで、加工高さ、言い換えれば成形加工量を前記クリアランスaの範囲内で任意に変更することが可能である。
【0015】
次に、前述のような金型1を用いて、材質・板厚が変わる場合のパンチ軸等の制御の具体的内容について、図3?図6および表1?表3を参照しながら説明する。なお、図3は本実施例の制御装置のシステム構成図、図4はこの制御に用いられる加工プログラムをそれぞれ示している。
【0016】
この加工プログラムにおいて、先頭部分にはその加工プログラムで加工する被加工物Wの材質と板厚が記述されている。また、加工のための金型はTコード(図4の例では「T602」として示されている。)により記述され、自動運転時には、このTコードに対応する指定金型がプレス部に装着される。なお、このプレス部に金型を装着する方法としては、一般的に知られているタレットによる方法であっても、あるいはATC(自動金型交換装置)方式による方法であっても良い。
【0017】
表1には、各金型に対して、Tコードで表される金型番号(T001,T002,・・・・)を基準とした金型情報(金型プロフィル)の一例が示されている。この金型情報としては、金型番号に割り付けた金型の種別(打抜・成形・刻印等)や形状(丸・角・長角・バーリング・上ハーフシャー等その金型が被加工物Wに加工する形状を表現したもの)や、その金型が加工するサイズを表す長辺(直径)・短辺(ピッチ)・半径(高さ)などの情報のほか、その金型のプレスモーション番号が設定されている。これらの情報は制御装置内の金型情報メモリ部25(図3参照)に記憶されている。これらの情報は、加工プログラムで使用する金型については自動運転を行う前に予め登録されている。なお、金型の新規登録や削除する場合に備えて、データ変更手段(図示せず)によって外部から各データが修正・変更できるようになっている。
【0018】
【表1】

【0019】
図5には、プレスモーションの詳細設定を行う画面表示の一例が示されている。この例は、プレスモーション番号15のプレスモーションを示すものであって、このプレスモーションは、上向きハーフシャー加工の設定であることを示している。ここで、プレスモーションの詳細設定値としての、パンチ待機位置,パンチ下降速度,ダイ上昇速度,・・・等の各データは図5中の1.?10.の各項目に設定されている。
【0020】
この図5に示される例では、パンチだけでなくダイの昇降装置付きのパンチプレス機が使用されており、図中にあるようにパンチが被加工物Wの上表面に位置決めされた状態でダイが上昇して被加工物Wを上方向に加工する動きをする。
【0021】
図6は、下向きハーフシャー加工のプレスモーション詳細設定画面表示の一例である。この例においては、ダイが被加工物Wの下表面に位置決めされた状態でパンチが下降し被加工物Wを下方向に加工する動きをする。なお、この例の場合にも、プレスモーションの詳細設定値は、図5と同様、図中の1.?10.の各項目に設定されている。
【0022】
表2には、前述のプレスモーションの詳細設定値を制御装置内のプレスモーション設定値メモリ部(共通データ部)26に記憶している状態が示されている。
これらプレスモーションの詳細設定値に係る情報は、加工プログラムで使用する金型については、自動運転を行う前に予め登録しておく必要がある。なお、この表2に係るデータについても、表1に係るデータと同様、金型の新規登録や削除する場合に備えて、修正・変更できるようにされている。
【0023】
【表2】

【0024】
一方、表3には、被加工物Wの材質・板厚毎に設定したデータ構成の一例が示されている。本実施例では、プレスモーションデータの成形位置について材質・板厚毎に補正するデータが与えられており、前述のプレスモーション番号でかつ成形加工のプレスモーションの場合(例えばモーション番号15もしくは16)にのみ一個の材質・板厚毎の補正データが用意されている。この詳細設定値は、制御装置内のプレスモーション設定値メモリ部(変更データ部)27に記憶される。これらプレスモーションの材質・板厚毎のデータについても、自動運転を行う前に予め登録しておく必要がある。なお、この場合も同様に、金型の新規登録や削除する場合に備えて、データの修正・変更が可能である。
【0025】
【表3】

【0026】
次に、制御装置における処理手順について、図3に基づき、成形金型の下向きハーフシャー加工を例にとって説明する。
【0027】
1)加工プログラム(図4参照)は加工プログラム記憶部21に記憶されており、自動運転を行うと、この加工プログラムが加工プログラム読込部22に読み込まれ、加工プログラムの先頭部に記述されている材質データおよび板厚データが材質メモリ部23および板厚メモリ部24にそれぞれ記憶される。また、この加工プログラム読込部22では、加工プログラムで使用する金型が制御装置内に設定してある金型情報に登録・記憶済みであるか否かの照合も行っている。
【0028】
2)加工プログラム読込部22での処理が終了した後、この加工プログラムは、数値演算部(NC装置の自動運転メモリ部)28に転送され、この数値演算部28において、加工プログラムの指令に従って順次処理動作が行われる。
【0029】
3)加工プログラムの金型交換指令(Tコード=T602)で、下向きハーフシヤー金型(表1参照)をプレス部に装着する。プレス部に装着した金型番号データは数値演算部28からプレス部装着金型番号レジスタ29に転送する。なお、この時の金型を装着する方法は、タレットによる方法であってもATC装置による方法であっても良い。
【0030】
4)プレス部装着金型番号レジスタ29に書き込まれた金型番号により、金型情報メモリ部25で記憶している該当金型番号を検索・参照し、金型番号に基づいたプレスモーション番号データをプレスモーション設定値メモリ部(共通データ部)26および材質・板厚毎のプレスモーション設定値メモリ部(変更データ部)27に転送する。今回の例ではT602のTコードより金型情報メモリ部25では、該当金型はプレスモーション番号が16であると識別する。また、この時、より正確な照合を期すため、プレスモーション番号だけでなく、種別や形状データをプレスモーション設定値メモリ部(共通データ部)26およびプレスモーション設定値メモリ部(変更データ部)27に転送しても良い。
【0031】
5)プレスモーション設定値メモリ部(共通データ部)26は、プレスモーション番号に基づいて、該当するプレスモーション番号の詳細設定値(表2のデータ1?データ10)をプレス駆動データ作成処理部30に転送する。今回の例では、プレスモーション番号16のデータ1?データ10を転送する。
【0032】
6)プレスモーション設定値メモリ部(変更データ部)27は、プレスモーション番号に基づいて、該当する材質・板厚データを検索し、上記1)で記憶している材質メモリ部23のデータおよび板厚メモリ部24のデータに従って該当する設定値データをプレス駆動データ作成処理部30に転送する。今回の例では材質SPC、板厚1.2mmであるので表3の設定データより、+0.53のデータをプレス駆動部データ作成処理部30に転送する。また、これと併せて、材質のデータに基づいて該当する材質補正値のデータをプレス駆動データ作成処理部30に転送する。ここで、この表3中に示されている材質補正値のデータ(この例では、全て+0.00となっている。)は、材質・板厚の該当補正データ値に対して、更に補正を掛けることができるようにした値である。これは、金型の切れ味が使用中に悪くなって来たときにその材質毎に補正データを加味することを考慮しているためと、一度設定した材質・板厚設定値を切れ味が変わって来たときに個々に変更した場合に、金型研磨作業をして切れ味が良くなった時に、以前の設定値が判らなくなって再度設定するために試打ち作業をやり直す手間を省くために用意されているものである。
【0033】
7)プレス駆動データ作成処理部30は、上記5)および6)で転送されたデータおよび1)で記憶された板厚データに基づいて実際にプレス軸を駆動するデータを作成する。この例では、材質・板厚で補正されるデータは、成形位置のみであるので、その他のデータはプレスモーション詳細設定値のデータ1?データ6およびデータ8?データ10がそのまま使用される。
パンチ成形位置は以下の様に補正する。すなわち、プレス駆動部は、パンチ軸・ダイ軸共に制御上の原点(0点)をパスライン(被加工物Wの下表面)に設定してあるので、板厚データの情報に基づいて被加工物Wの上表面位置を知ることができる。また、プレスモーション設定値メモリ部(共通データ部)26におけるプレスモーション番号の詳細設定値のデータ7(パンチ成形位置)により被加工物Wの上表面から被加工物Wへの成形するための押し込み位置(成形位置)を知ることができる。さらに、プレスモーション設定値メモリ部(変更データ部)27からの材質・板厚での補正値データを加味した成形位置を知ることができ、また材質補正量の補正データを加味した成形位置についても同様に知ることができる。これら処理によって作成されたデータはプレス駆動制御部31に転送される。
【0034】
8)プレス駆動制御部31は、上記7)で作成されたデータで、数値演算部28からのパンチ動作指令に基づいてパンチ軸・ダイ軸を動かしハーフシャー成形加工を行う。なお、数値演算部28は、このプレス部の油圧駆動の制御のほか、被加工物WをX軸方向およびY軸方向へ移動位置決めするためのX軸・Y軸モータ制御部32の制御を行う。
【0035】
本実施例によれば、被加工物Wの材質や板厚に変更が生じても、金型の調整や交換などの段取り作業が不要であり、1つの金型で所望の成形加工を行うことができる。したがって、生産性の向上が図れるとともに、同一の成形加工を行う金型の保有個数を減らせるのでランニングコストの低減が期待できる。
【0036】
本実施例においては、成形位置を材質・板厚毎に補正する方法について説明したが、成形時間やその他のデータについても補正するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る成形金型の断面図(成形加工前の状態)である。
【図2】図2は、本発明の一実施例に係る成形金型の断面図(成形加工後の状態)(a)および(a)の部分拡大図(b)である。
【図3】図3は、本実施例の制御装置のシステム構成図である。
【図4】図4は、制御に用いられる加工プログラムを示す図である。
【図5】図5は、プレスモーションの詳細設定を行う画面表示の一例を示す図である。
【図6】図6は、下向きハーフシャー加工のプレスモーション詳細設定画面表示の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 金型
2 パンチ(上金型)
3 ストリッパ(パンチプレート)
4 ダイ(下金型)
5 パンチチップ
6 パンチホルダー
7 ボルト
8 パンチリング
9 弾性体
10 ダイ本体
11 ダイプレート
12 ボルト
13 ダイアダプター
14 ダイエジェクタ
15 弾性体
21 加工プログラム記憶部
22 加工プログラム読込部
23 材質メモリ部
24 板厚メモリ部
25 金型情報メモリ部
26 プレスモーション設定値メモリ部(共通データ部)
27 プレスモーション設定値メモリ部(変更データ部)
28 数値演算部(NC装置の自動運転メモリ部)
29 プレス部装着金型番号レジスタ
30 プレス駆動データ作成処理部
31 プレス駆動制御部
32 X軸・Y軸モータ制御部
W 被加工物
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2009-09-16 
出願番号 特願平9-209778
審決分類 P 1 41・ 856- Y (B21D)
P 1 41・ 832- Y (B21D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高山 芳之  
特許庁審判長 小椋 正幸
特許庁審判官 尾家 英樹
豊原 邦雄
登録日 2005-10-07 
登録番号 特許第3727445号(P3727445)
発明の名称 パンチプレス機における成形金型の制御装置  
代理人 中山 寛二  
代理人 中山 寛二  
代理人 木下 實三  
代理人 石崎 剛  
代理人 石崎 剛  
代理人 木下 実三  
代理人 石崎 剛  
代理人 石崎 剛  
代理人 木下 實三  
代理人 中山 寛二  
代理人 木下 実三  
代理人 中山 寛二  

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