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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H01L
管理番号 1205428
審判番号 無効2008-800068  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-04-16 
確定日 2009-09-29 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2589184号発明「半導体装置の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2589184号の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許2589184号についての手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成 元年 8月10日 本件出願(特願平1-208146号)
平成 8年12月 5日 特許権の設定登録
平成20年 4月16日 無効審判請求
平成20年 7月10日 被請求人:訂正請求書、答弁書提出
平成20年 8月27日 請求人:弁駁書提出
平成20年10月 3日 請求人:口頭審理陳述要領書提出
平成20年10月 9日 被請求人:口頭審理陳述要領書提出
平成20年10月16日 被請求人:上申書提出
平成20年10月17日 口頭審理


第2.訂正の適否
1.訂正の内容
平成20年7月10日付訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許明細書を下記のとおり訂正しようとするものである。

訂正事項a.特許請求の範囲中、請求項1に「打ち抜け面」とあるのを、「打ち抜き面」と訂正する。
訂正事項b.特許請求の範囲中、請求項2に「打ち抜け面」とあるのを、「打ち抜き面」と訂正する。
訂正事項c.発明の詳細な説明の特許掲載公報第3欄第26行の「(5)はダフであり、」とあるのを、「(5)はタブであり、」と訂正する。

2.訂正の適否に対する検討
上記訂正事項a、b、cは、誤記の訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書き、及び、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


第3.本件発明1、2
本件訂正は上記のとおりに認められるので、本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、当該訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 金属板を打ち抜いて半導体素子固定用のタブ部と複数本のリードとを有するリードフレームを形成する工程と、
前記リードフレームは打ち抜き面に抜きダレを、反対面に抜きバリを有し、
前記リードフレームの打ち抜き面と反対の面に半導体素子を固着する工程と、
前記半導体素子の電極と前記リードフレームのリードとを金属細線にて電気的に接続する工程と、
前記リードフレームをモールド金型に設置し、前記リードフレームの打ち抜き面側から樹脂を注入し、前記リードフレームの隙間から前記リードフレームの打ち抜き面とは反対の面へ樹脂を回り込ませるようにして樹脂モールドする工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。」

「【請求項2】 金属板を打ち抜いて半導体素子固定用のタブ部と複数本のリードとを有するリードフレームを形成する工程と、
前記リードフレームは打ち抜き面に抜きダレを、反対面に抜きバリを有し、
前記リードフレームの打ち抜き面と反対の面に半導体素子を固着する工程と、
前記半導体素子の電極と前記リードフレームのリードとを金属細線にて電気的に接続する工程と、
前記リードフレームをモールド金型に設置し、前記リードフレームの打ち抜き面側から樹脂を注入し、前記リードフレームの隙間から前記リードフレームの打ち抜き面とは反対の面へ樹脂を回り込ませるようにして樹脂モールドする工程と、
前記樹脂モールドによって前記リード間に生じた樹脂バリを、前記リードフレームの打ち抜き面と逆の方向からパンチを挿入して除去する工程と、
前記リードをカットし、所定形状に折り曲げる工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。」


第4.請求人の主張の概要
請求人は、本件発明1、2の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、以下の無効理由を主張している。

無効理由:本件発明1、2は、甲第1?12号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本件発明1、2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。

そして、その証拠方法として下記甲第1号証?甲第12号証、審判請求書に添付して参考資料8を、また口頭審理陳述要領書に添付して下記参考資料1?参考資料7をそれぞれ提出している。

なお、審判請求書において請求人の主張する無効理由1(特許法第29条第1項第3項違反)及び無効理由3(特許法第29条の2違反)は、口頭審理の際に取下げられた(第1回口頭審理調書参照)。
また、請求人は、審判請求書に添付して甲第13号証を提出しているが、該甲第13号証は、審判請求書において主張した無効理由3を立証するものであるので、口頭審理の際に無効理由3が取下げられたことに伴って、参考資料8となった(第1回口頭審理調書参照)。


甲第1号証:特開昭63-257256号公報
甲第2号証:特開昭63-308358号公報
甲第3号証:特公昭45-1137号公報
甲第4号証:特開昭48-63678号公報
甲第5号証:特開昭48-83780号公報
甲第6号証:特開昭52-14360号公報
甲第7号証:実開平1-70350号公報
甲第8号証:特開昭52-87982号公報
甲第9号証:実開昭55-103970号公報
甲第10号証:実開昭56-9755号公報
甲第11号証:実開昭59-125845号公報
甲第12号証:特開昭61-135145号公報

参考資料1:特開昭64-2329号公報
参考資料2:特開昭64-44026号公報
参考資料3:特開昭50-296782号公報
参考資料4:特開昭52-42551号公報
参考資料5:特開昭59-149027号公報
参考資料6:特開昭60-182141号公報
参考資料7:実開昭63-131127号公報
参考資料8:特開平2-30152号公報


第5.被請求人の主張の概要
これに対し、被請求人は、答弁書、口頭審理陳述要領書、及び下記乙第1号証?乙第6号証を提出して、請求人の主張する無効理由は成り立たない旨主張している。


乙第1号証:特開昭61-115342号公報
乙第2号証:特開昭63-228655号公報
乙第3号証:特開平1-138724号公報
乙第4号証:特開昭63-199619号公報
乙第5号証:特開昭63-255925号公報
乙第6号証:特開昭63-228631号公報


第6.甲号証及び参考資料の記載事項
(1)甲第1号証:特開昭63-257256号公報
(1a)
「半導体チップを搭載する面の反対側面から・・・金属の板材をプレス打ち抜きして形成して成る・・・リードフレーム。」(特許請求の範囲第1項)

(1b)
「樹脂封止型半導体装置(レジンモールド型半導体装置)の製造において、個々の半導体チップ(以下単に、チップという)をパッケージングする工程は・・・第3図に例示するようなリードフレームを用いて行なわれる。同図において、1はチップを取付け(ダイボンディング)するタブである。・・・タブ1の周囲には、このタブ1に向って延びる複数のリード4が適宜間隔をおいて配設されている。」(第1頁右下欄4?15行)

(1c)
「リードフレーム7を用いてレジンモールド型半導体装置を製造するに、第4図に示すように、チップ8をタブ1上にマウントし(ダイボンディング)し、当該チップ8のボンディングパッド・・・とリード4の先端部とを、アルミニウムや金などより成るボンディングワイヤ9により接続する。次いで、第5図に示すように、当該チップ組立品10をモールド金型11に入れ、上金型12、下金型13を閉じ、当該金型11のキャビティ14内に例えばエポキシ樹脂などのレジンを注入し、加圧成形する。・・・当該レジンモールドにより、第6図に示すように、チップ8などが、レジンモールド部15により封止される。続いて、リードフレームの所用箇所を切断して個々のリード4を分離形成し(リードカット)、更に該リード4を所定方向に折り曲げて(リードフォーミング)、・・・レジンモールド型半導体装置16を得る。」(第2頁左上欄6行?右上欄4行)

(1d)
「レジンモールドに際しては、・・・いわゆるレジンバリ17の発生が起る。レジンバリは、レジンモールド部15とタイバー5との間であって、かつ、各リード4,4間に充填される・・・。」(第2頁右上欄5?10行)

(1e)
「リードフレームの作成に際しては、・・・プレス装置により所定の断面をもつようにプレス打ち抜きにより作成する場合もある。
このような、プレス打ち抜きによる場合、従来、一般に金属の板材の表面側すなわちチップ搭載面側から打ち抜きが行われていた。」(第2頁左下欄6?13行)

(1f)
「本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
・・・プレス打ち抜きに際し、・・・金属の板材の裏面側から表面側に向って所定の断面を有するように打ち抜きする。
第1図に示すように、このようにすることにより、リード4の側断面が、チップ搭載面からその反対面にかけて、上部から下部に向って幅狭の形状となり、そのため、落し刃19により、リード4の側面に付着したレジン(封止剤)17を突き落すに、第2図に示す従来例に比して引っかかりがなく、容易に下方に突き落すことができた。」(第3頁左上欄9行?右上欄1行)

(1g)
第1図より、リード4の裏面に抜きダレを、表面に抜きバリを有することが看て取れる。

(1h)
第1図より、リード4の側面にレジンバリ17が付着し、該リード4の表面側にパンチング治具19が配されることが看て取れる。

甲第5号証:特開昭48-83780号公報
(5a)第2図(c)より、半導体素子4の固着面の反対側である下型6より樹脂を注入することが看て取れる。

参考資料1:特開昭64-2329号公報
(参1a)第4図より、半導体チップ6の固着面の反対側である下型2より樹脂を注入することが看て取れる。

参考資料2:特開昭64-44026号公報
(参2a)第4図より、被封止部品6の固着面の反対側である下型2より樹脂を注入することが看て取れる。

参考資料5:特開昭59-149027号公報
(参5a)第2図より、半導体構体11の固着面の反対側である下側のキャビティブロック4より樹脂を注入することが看て取れる。


第7.当審の判断
1.甲第1号証記載の発明
(1)甲第1号証には、摘示(1c)によれば、「リードフレームを用いてレジンモールド型半導体装置を製造するに、チップをタブ上にダイボンディングし、当該チップのボンディングパッドとリードとを、アルミニウムや金などより成るボンディングワイヤにより接続し、モールド金型に入れ、レジンを注入し、加圧成形してレジンモールドする、レジンモールド型半導体装置の製造方法」が記載されている。
(2)摘示(1b)によれば、上記リードフレームは、チップをダイボンディングするタブと、該タブの周囲に複数のリードを有することが理解できる。
(3)摘示(1e)によれば、上記リードフレームは、金属の板材をプレス打ち抜きすることにより作成されることが理解できる。
(4)摘示(1f)によれば、甲第1号証に記載された実施例は、プレス打ち抜きに際し、金属の板材の裏面側から表面側に向って所定の断面を有するように打ち抜きをするものであって、摘示(1e)に、リードフレームの表面側がチップ搭載面となることが記載され、摘示(1a)に、半導体チップを搭載する面の反対側面から金属の板材をプレス打ち抜きしてリードフレームを形成することが記載されていることを考慮すると、上記実施例は、プレス打ち抜きに際し、チップ搭載面と反対側面である金属の板材の裏面側から、チップ搭載面である表面側に向って所定の断面を有するように打ち抜きをすることが理解できるし、上記実施例を示す要部断面図である第1図には、摘示(1g)のように、リードフレームのリードは、裏面側に抜きダレを有し、表面側に抜きバリを有するものであるから、プレス打ち抜き面である裏面側に抜きダレを、チップ搭載面である表面側に抜きバリを有することも理解できる。

(1)?(4)を考慮して摘示(1a)?(1c)、(1e)?(1h)の記載を総合すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲第1号証記載発明1」という。)が記載されているといえる。
「金属の板材をプレス打ち抜きすることにより、チップをダイボンディングするタブと、複数のリードとを有するリードフレームを形成する工程と、
プレス打ち抜き面である裏面側に抜きダレを、反対面である表面側に抜きバリを有し、
前記リードフレームの打ち抜き面と反対の面である表面側にチップをダイボンディングする工程と、
前記チップのボンディングパッドとリードとを、アルミニウムや金などより成るボンディングワイヤにより接続する工程と、
モールド金型に入れ、レジンを注入し、加圧成形してレジンモールドする工程とを具備する、レジンモールド型半導体装置の製造方法」


(5)次に、甲第1号証の摘示(1c)には、レジンモールドする工程の後に、リードフレームの所用箇所を切断して個々のリードを分離形成するリードカット工程、更に、該リードを所定方向に折り曲げるリードフォーミング工程を設けることが記載されている。
(6)摘示(1d)によれば、レジンモールドよって、各リード間にレジンバリが発生することが理解できる。
(7)摘示(1f)には、落し刃によって、リードの側面に付着したレジンを突き落とすことが記載され、摘示(1h)も考慮すると、リード側面に付着したレジンを、表面側から裏面側へ落し刃を挿入して突き落とすことが理解できる。
そして、上記(4)に述べたように、リードの表面は打ち抜き面と反対の面といえるから、リードの側面に付着したレジンは、リードフレームの打ち抜き面の反対の面から落し刃を挿入して突き落とすものであるといえる。

(1)?(7)を考慮して摘示(1a)?(1h)の記載を総合すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲第1号証記載発明2」という。)も記載されているといえる。
「金属の板材をプレス打ち抜きすることにより、チップをダイボンディングするタブと、複数のリードとを有するリードフレームを形成する工程と、
プレス打ち抜き面である裏面側に抜きダレを、反対面である表面側に抜きバリを有し、
前記リードフレームの打ち抜き面と反対の面である表面にチップをダイボンディングする工程と、
前記チップのボンディングパッドとリードとを、アルミニウムや金などより成るボンディングワイヤにより接続する工程と、
モールド金型に入れ、レジンを注入し、加圧成形してレジンモールドする工程と、
レジンモールドよって各リード間に発生したレジンバリを、リードフレームの打ち抜き面の反対の面から落し刃を挿入して突き落とす工程と、
リードフレームの所用箇所を切断して個々のリードを分離形成するリードカット工程と、
該リードを所定方向に折り曲げるリードフォーミング工程と、を具備するレジンモールド型半導体装置の製造方法」


2.本件発明1と甲第1号証記載発明1との対比
本件発明1と甲第1号証記載発明1とを対比すると、甲第1号証記載発明1の「金属の板材」は、本件発明1の「金属板」に相当し、以下同様に、「チップ」は「半導体素子」に、「ボンディングパッド」は「電極」に、「アルミニウムや金などより成るボンディングワイヤ」は「金属細線」に、「レジン」は「樹脂」に、「レジンモールド型半導体装置」は「半導体装置」に相当する。
すると、甲第1号証記載発明1の「金属の板材をプレス打ち抜きすることにより、チップをダイボンディングするタブと、複数のリードとを有するリードフレームを形成する工程」は、本件発明1の「金属板を打ち抜いて半導体素子固定用のタブ部と複数本のリードとを有するリードフレームを形成する工程」に相当し、以下同様に、「リードフレームの打ち抜き面と反対の面である表面にチップをダイボンディングする工程」は「リードフレームの打ち抜き面と反対の面に半導体素子を固着する工程」に、「チップのボンディングパッドとリードとを、アルミニウムや金などより成るボンディングワイヤにより接続する工程」は「半導体素子の電極とリードフレームのリードとを金属細線にて電気的に接続する工程」にそれぞれ相当し、「モールド金型に入れ、レジンを注入し、加圧成形してレジンモールドする工程」は「リードフレームをモールド金型に設置し、樹脂を注入し、樹脂モールドする工程」に対応する。

そうすると、両者は、
「金属板を打ち抜いて半導体素子固定用のタブ部と複数本のリードとを有するリードフレームを形成する工程と、
前記リードフレームは打ち抜き面に抜きダレを、反対面に抜きバリを有し、
前記リードフレームの打ち抜き面と反対の面に半導体素子を固着する工程と、
前記半導体素子の電極と前記リードフレームのリードとを金属細線にて電気的に接続する工程と、
前記リードフレームをモールド金型に設置し、樹脂を注入し、樹脂モールドする工程と、を具備する半導体装置の製造方法。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本件発明1では、「リードフレームの打ち抜き面側から樹脂を注入し、前記リードフレームの隙間から前記リードフレームの打ち抜き面とは反対の面へ樹脂を回り込ませる」のに対して、甲第1号証記載発明1では、リードフレームのいずれの面から樹脂を注入するか、記載されていない点。


3.本件発明1と甲第1号証記載発明1との相違点についての検討
リードフレームに搭載された半導体素子の電極と、該リードフレームのリードとを金属細線にて電気的に接続した後に、樹脂モールドするにあたり、金属細線がない側、すなわち、リードフレームにおける上記半導体素子の固着面と反対側にあるモールド金型から樹脂を注入することは、甲第5号証及び参考資料1、2、5に記載されているように、本出願前に周知のものといえるし、それによって、上記金属細線の変形や断線、短絡を防止し得ることは、たとえば下記周知文献1?3に記載されているように、本出願前に周知の技術事項と認められる。
一方、甲第1号証記載発明1においても、金属細線の変形や断線、短絡を防止することは、当業者に自明の課題といえるから、上記甲第1号証記載発明1において、リードフレームにおける上記半導体素子の固着面の反対側から樹脂を注入することに、格別の困難性は認められない。
そして、「第7 1.甲第1号証記載の発明 (4)」に述べたように、甲第1号証記載発明1における「リードフレームにおける上記半導体素子の固着面の反対側」とは、「リードフレームの打ち抜き面側」にほかならないから、甲第1号証記載発明1に上記周知技術を適用することによって、「リードフレームの打ち抜き面側から樹脂を注入」する工程となることは明らかであるし、「リードフレームの打ち抜き面側から樹脂を注入すれば、「リードフレームの隙間から前記リードフレームの打ち抜き面とは反対の面へ」樹脂が回り込むものとなることは、その構造上自明のことといえる。

また、本件発明1の奏する効果も、甲第1号証の記載及び上記周知技術から予測できないような格別に顕著なものとは認められない。

したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

周知文献1:特開平1-157539号公報
(周知1a)「ワイヤボンディングはリードフレーム48の上面で行われるので、流れのエネルギーを持った溶融樹脂がリードフレーム48の上側からキャビティ18、26内に入って来るとそのエネルギでボンディングされたワイヤを変形させたり、ワイヤの断線の原因となることが有る。その点、ゲート36がリードフレーム48の下側に有れば直接溶融樹脂が最大のエネルギをもってワイヤと干渉することを防止可能となるのである。」(第3頁左下欄19行?右下欄8行)

周知文献2:特開昭63-143824号公報
(周知2a)「半導体装置を成形封止するための上型と下型よりなる成形金型であって、上型と下型のうち半導体装置のボンディング・ワイヤを収納しない側の金型にキャビティのゲートを設けてな・・・る成形金型」(特許請求の範囲)
(周知2b)「キャビティ7のゲート8が流入ゲート8aも流出ゲート8bもボンディング・ワイヤ3を収納しない金型下型5に設けられているために、ゲート8からキャビティ7に流入した樹脂はそのキャビティ7を満たした後は、主にそのキャビティ7の流入ゲート8aおよび流出ゲート8bのある下型5部分、すなわち、ボンディング・ワイヤ3の無い側を通過することになる。
このようにして、キャビティ7のゲート8がボンディング・ワイヤ3を収納しない下型5部分に設けられているため、下流側のキャビティ7を満たすための多量の樹脂の流れによるワイヤ3への圧力を回避し、ワイヤ3の倒線や断線、さらには隣接するワイヤの相互接触を避けることができる。」(第3頁右下欄15行?第4頁左上欄8行)

周知文献3:特開昭60-9131号公報
(周知3a)「本実施例は、キャビティ36内に注入するゲート35を、第7図に示すように、リードフレーム17の下側、すなわち、ボンディングワイヤ19組付側の反対側に設け、ワイヤ19の下側から樹脂材料を加圧注入するように構成したものである。従って、注入された樹脂材料がワイヤ19を緊張させる方向(矢印3方向)に流れるので、ワイヤ19が変形されてワイヤ19同士又はワイヤ19と半導体チップが接触して短絡(ショート)する危険性が完全に防止される。」(第4頁左下欄19行?右下欄8行)


4.本件発明2と甲第1号証記載発明2との対比
本件発明2と甲第1号証記載発明2とを対比すると、甲第1号証記載発明2の「金属の板材」は、本件発明2の「金属板」に相当し、以下同様に、「チップ」は「半導体素子」に、「ボンディングパッド」は「電極」に、「アルミニウムや金などより成るボンディングワイヤ」は「金属細線」に、「レジン」は「樹脂」に、「レジンモールド型半導体装置」は「半導体装置」に相当する。
すると、甲第1号証記載発明2の「金属の板材をプレス打ち抜きすることにより、チップをダイボンディングするタブと、複数のリードとを有するリードフレームを形成する工程」は、本件発明2の「金属板を打ち抜いて半導体素子固定用のタブ部と複数本のリードとを有するリードフレームを形成する工程」に相当し、以下同様に、「リードフレームの打ち抜き面と反対の面である表面にチップをダイボンディングする工程」は「リードフレームの打ち抜き面と反対の面に半導体素子を固着する工程」に、「チップのボンディングパッドとリードとを、アルミニウムや金などより成るボンディングワイヤにより接続する工程」は「半導体素子の電極とリードフレームのリードとを金属細線にて電気的に接続する工程」に、「レジンモールドよって各リード間に発生したレジンバリを、リードフレームの打ち抜き面の反対の面から落し刃を挿入して突き落とす工程」は「樹脂モールドによってリード間に生じた樹脂バリを、リードフレームの打ち抜き面と逆の方向からパンチを挿入して除去する工程」に、「リードフレームの所用箇所を切断して個々のリードを分離形成するリードカット工程」は「リードをカット」する工程に、「リードを所定方向に折り曲げるリードフォーミング工程」は「所定形状に折り曲げる工程」に、それぞれ相当し、「モールド金型に入れ、レジンを注入し、加圧成形してレジンモールドする工程」は「リードフレームをモールド金型に設置し、樹脂を注入し、樹脂モールドする工程」に対応する。

そうすると、両者は、
「金属板を打ち抜いて半導体素子固定用のタブ部と複数本のリードとを有するリードフレームを形成する工程と、
前記リードフレームは打ち抜き面に抜きダレを、反対面に抜きバリを有し、
前記リードフレームの打ち抜き面と反対の面に半導体素子を固着する工程と、
前記半導体素子の電極と前記リードフレームのリードとを金属細線にて電気的に接続する工程と、
前記リードフレームをモールド金型に設置し、樹脂を注入し、樹脂モールドする工程と、
前記樹脂モールドによって前記リード間に生じた樹脂バリを、前記リードフレームの打ち抜き面と逆の方向からパンチを挿入して除去する工程と、
前記リードをカットし、所定形状に折り曲げる工程と、を具備する半導体装置の製造方法。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点2:本件発明2では、「リードフレームの打ち抜き面側から樹脂を注入し、前記リードフレームの隙間から前記リードフレームの打ち抜き面とは反対の面へ樹脂を回り込ませる」のに対して、甲第1号証記載発明2では、リードフレームのいずれの面から樹脂を注入するか、記載されていない点。


5.本件発明2と甲第1号証記載発明2との相違点についての検討
上記相違点2について検討するに、上記相違点2は、上記「第7 2.本件発明1と甲第1号証記載発明1との対比」の相違点1と同じであって、その検討は「第7 3.本件発明1と甲第1号証記載発明1との相違点についての検討」で述べたとおりである。

そして、本件発明2の奏する効果も、甲第1号証の記載及び上記周知技術から予測できないような格別に顕著なものとは認められない。

したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.被請求人の主張についての検討
(1)半導体素子の固着面について
被請求人は、答弁書第9頁23行?第10頁4行、口頭審理陳述要領書第4頁13行?第5頁15行において、本件発明における「リードフレームの打ち抜き面と反対の面に半導体素子を固着する」という技術思想は、甲第1号証には開示がない旨主張する。

しかし、甲第1号証の摘示(1a)には、「半導体チップを搭載する面の反対側面から・・・金属の板材をプレス打ち抜きして形成して成る・・・リードフレーム。」と明記されているように、甲第1号証にも、リードフレームの打ち抜き面と反対の面に半導体素子を固着することが技術思想として開示されているといえるし、本件発明1における固着工程は、
(a)リードフレームの打ち抜き面を下面とするとともに、半導体素子を、打ち抜き面の反対の面である上面に固着する態様と、
(b)リードフレームの打ち抜き面を上面とするとともに、半導体素子を、打ち抜き面の反対の面である下面に固着する態様と
を包含するものであるところ、上記「第7 1.甲第1号証記載の発明 (1)」において検討したように、甲第1号証には、
(c)リードフレームの打ち抜き面を下面とするとともに、半導体素子を、打ち抜き面の反対の面である上面に固着する工程
という、本件発明1の固着工程(a)に相当する工程が記載されているものといえるから、本件発明1の固着工程は、甲1発明の固着工程を包含するものであって、かかる工程は両者の相違点とはなり得ない。

(2)樹脂の注入面について
被請求人は、乙第1?6号証を提出するとともに、口頭審理陳述要領書第6頁1行?第7頁28行、上申書第3頁1行?第4頁13行において、樹脂を半導体素子の固着面側又はその反対面側から注入するに際して、いずれの場合も阻害要因及び動機付けが存在し、半導体素子の固着面の反対面から注入する場合には、半導体素子が浮き上がることによりワイヤが露出したり、場合によってはワイヤが半導体素子と接触すること、また、半導体素子側の樹脂厚が薄くなることにより周囲の熱の影響を受けやすくなり、その結果、半導体素子の特性に悪影響を与えたり、樹脂に閉じ込められていたガス、気泡が膨張・破裂すること、等の阻害要因が生じる旨主張する。
しかし、前述のとおり、リードフレームにおける半導体素子の固着面と反対側にあるモールド金型から樹脂を注入することによって、金属細線の変形や断線、短絡を防止し得るという長所も存在するように、半導体素子の固着面側又はその反対面側のいずれの方向から樹脂を注入するかは、それぞれの長所、短所を考慮して決定し得るものといえ、被請求人が主張するように、半導体素子の固着面の反対面側から樹脂を注入することによって、場合によってはワイヤの露出等の問題点が発生し得るとしても、かかる問題点が、必ずしも常に発生する致命的なものともいえないことに照らすと、上記問題点を阻害要因とまでいうことはできない。

(3)審判請求の理由の要旨変更について
被請求人は、口頭審理陳述要領書第7頁12行?第8頁17行において、請求人の口頭審理陳述要領書における主張は、無効請求理由の趣旨を実質的に変更するものである旨主張する。
しかし、無効理由は、甲第1号証または甲第2号証を主引例とし、本件特許発明との相違点であるリードフレームの打ち抜き面側から樹脂を注入することが容易になし得るとするものであり、そのような無効理由の論旨は審判請求書と弁駁書とで相違しない。


7.無効理由についての検討のまとめ
上記3.及び5.において検討したとおり、本件発明1、本件発明2は、いずれも、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第8.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1、2に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当する。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体装置の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】金属板を打ち抜いて半導体素子固定用のタブ部と複数本のリードとを有するリードフレームを形成する工程と、
前記リードフレームは打ち抜き面に抜きダレを、反対面に抜きバリを有し、
前記リードフレームの打ち抜き面と反対の面に半導体素子を固着する工程と、
前記半導体素子の電極と前記リードフレームのリードとを金属細線にて電気的に接続する工程と、
前記リードフレームをモールド金型に設置し、前記リードフレームの打ち抜き面側から樹脂を注入し、前記リードフレームの隙間から前記リードフレームの打ち抜き面とは反対の面へ樹脂を回り込ませるようにして樹脂モールドする工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】金属板を打ち抜いて半導体素子固定用のタブ部と複数本のリードとを有するリードフレームを形成する工程と、
前記リードフレームは打ち抜き面に抜きダレを、反対面に抜きバリを有し、
前記リードフレームの打ち抜き面と反対の面に半導体素子を固着する工程と、
前記半導体素子の電極と前記リードフレームのリードとを金属細線にて電気的に接続する工程と、
前記リードフレームをモールド金型に設置し、前記リードフレームの打ち抜き面側から樹脂を注入し、前記リードフレームの隙間から前記リードフレームの打ち抜き面とは反対の面へ樹脂を回り込ませるようにして樹脂モールドする工程と、
前記樹脂モールドによって前記リード間に生じた樹脂バリを、前記リードフレームの打ち抜き面と逆の方向からパンチを挿入して除去する工程と、
前記リードをカットし、所定形状に折り曲げる工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
(イ)産業上の利用分野
本発明は半導体装置の製造方法に関するものである。
(ロ)従来の技術
一般に、リードフレームに半導体素子を固着し樹脂モールドする技術は、例えば特公昭55-24694号公報が詳しい。
これは、リードフレームの打抜き面を下部金型と対面させ、フレームの反りを防止するものである。
しかし現在は、打抜き技術が進歩し打抜き面の角部の丸みを極力抑えることが可能となり、打抜き面とこの打抜き面と対向する面とが実質的に同じ面積となっている。しかも対向する面の周辺に生じる抜きバリを平坦にできない理由と相俟って、第4図の如く、打抜き面を上にして半導体装置(1)を製造している。
第4図を参照しながら半導体装置(1)の構成を説明すると、先ずリードフレーム(2)があり、このリードフレーム(2)の打抜き面は上にしてある。図からも判る通り、打抜き面の角部(3)は丸みを生じ、この打抜き面と反対の面の周辺には抜きバリ(4)が形成されている。(5)はタブであり、(6)はリード、(7)は金属細線である。
(ハ)発明が解決しようとする課題
前述の半導体装置(1)を樹脂モールドする時の概略図を第5図に示す。現在は益々リード(6)の数が増え、リード(6)下面のトータル面積が増大しているので、矢印の如く樹脂注入口が下金型にあると、抜きバリ(4)が流入抵抗となって樹脂の流動性を低下させていた。
またタイバー部の樹脂バリ(8)を、タイバーカット時に第6図の如くパンチ(9)で除去するが、樹脂がリード部(6)の抜きダレ部(角部の丸み)に強固に接着しているため、このタイバーカット工程で完全に除去できず、第6図で示した黒い部分(10)が残ってしまう問題を有していた。そのためウォータジェット等で樹脂バリを完全に取り除く工程が必要となっていた。
(ニ)課題を解決するための手段
本発明は前述の課題に鑑みて成され、前記樹脂バリ(29)をリード(24)の打抜き方向と逆の方向からパンチ(30)を挿入して除去し、更にはリードフレームの打抜き面を下にして、打抜き面の方より樹脂を流入することで解決するものである。
(ホ)作用
第2図の如く、打抜き面を下にして形成してあるので、前記抜きダレ部(27)が下に形成される。従って樹脂注入口が下金型にあっても、第3図の矢印の如く抵抗なく流入させることができる。
また第1図の如く、抜きバリ(28)の生じている面からパンチ(30)で打抜く際、樹脂バリ(29)はリード(24)の縦側面のみにしか付着していないので、このパンチを使って良好に樹脂バリ(29)を除去できる。
(ヘ)実施例
以下に本発明の実施例を詳述する。
先ず説明の都合上第2図に示した半導体装置(21)の構成について述べてゆく。
半導体素子(22)がリードフレームの一部であるタブ(23)に固着されており、半導体素子(22)とリードフレームの一部である複数本のリード(24)との間を金属細線(25)で電気的に接続されている。更には半導体素子(22)、タブ(23)、金属細線(25)およびリード(24)の一部が樹脂(26)によってモールドされており、このリード(24)は下方に所定形状に折り曲げられている。
次にこの半導体装置(21)の製造方法について説明してゆく。
先ずリードフレームを打抜き形成するために、例えば銅を主成分とした金属基板が用意される。この金属基板はプレスによって一連のリードフレームが形成される。従って図にも示されるように、下面に抜きダレ部(27)が生じ、上面には抜きバリ(28)が生じる。またリード(24)の一端は金属細線(25)の接合領域として平坦化されている。
次にこのリードフレームの一部であるタブ(23)に半導体素子(22)が固着され、金属細線(25)にて前記リード(24)の接合領域とこの半導体素子(22)のボンディングパッド部が電気的に接合される。
続いて第3図の如く金型にこのリードフレームを組込み、図の如く樹脂を注入する。リードフレームの下面は前述した如く抜きダレ(27)が生じ丸みが生じているため、矢印の如くスムーズに流れる。その結果、第5図の樹脂の流動性とは異なり大幅に改善される。従って樹脂厚2mm前後の薄いものでも、リードフレームは上下せず良好な位置に固定できる。
更に第1図の如く、リード(24)間に固着された樹脂バリ(29)を取り除く工程がある。この時は同時にタイバーカットも実施される。点でハッチングした領域が樹脂バリ(29)であり、図からも判る通り、リードの側面にしか付いていない領域を先にパンチ(30)で押してゆくので、固着力の強い抜きダレ部(27)の樹脂バリは樹脂バリ(29)と一体となって除去されてゆく。従って樹脂バリを完全に取除くことができる。
最後に第2図で示したように、リード(24)を折り曲げる工程がある。樹脂バリ(29)が完全に除去できるので、折り曲げ治具(31)と樹脂(26)の間に樹脂バリ(29)が入り込まず良好な寸法で折り曲げられる。
(ト)発明の効果
以上の説明からも明らかな如く、抜きダレを下面にするため樹脂の流動性が向上し、リードフレームに与える樹脂注入時の抵抗を低下させることができる。従って樹脂厚の薄いものでも良好にリードフレームを固定でき、不良を防止できる。
またリード間に発生する樹脂バリは、打抜き面とは反対の面から打抜き除去されるので、完全に除去できる。従って折り曲げ寸法を精度良く加工できる。しかも別にウォータージェット等で樹脂バリを除去する工程が省け、工程を短かくすることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の樹脂バリ除去の工程を説明する断面図、第2図は本発明で達成できる半導体装置の断面図、3図は本発明の樹脂モールド工程を説明する断面図、第4図は従来の半導体装置の断面図、第5図は従来の樹脂モールド工程を説明する断面図、第6図は従来の樹脂バリ除去の工程を説明する図である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-10-30 
結審通知日 2008-11-04 
審決日 2008-11-27 
出願番号 特願平1-208146
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 浩一  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 市川 裕司
國方 康伸
登録日 1996-12-05 
登録番号 特許第2589184号(P2589184)
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 鹿股 俊雄  
代理人 大橋 雅昭  
代理人 岡田 和加子  
代理人 大橋 雅昭  
代理人 鹿股 俊雄  
代理人 岡田 和加子  
代理人 沢田 雅男  
代理人 沢田 雅男  

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