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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1205521
審判番号 不服2006-16312  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-27 
確定日 2009-10-15 
事件の表示 平成 9年特許願第239500号「光ディスク装置及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月30日出願公開、特開平11- 86309〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成9年9月4日の出願であって、平成16年11月29日付け拒絶理由通知により、平成17年2月7日付けで手続補正がされたが、平成18年6月20日付けで拒絶査定され、これに対し、平成18年7月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年8月28日付けで明細書について手続補正がされたものである。
そして、平成19年4月2日付けで審査官から前置報告がなされ、平成20年12月3日付けで当審より前記前置報告の内容を利用した審尋がなされ、平成21年2月6日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成18年8月28日付けの手続補正について補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成18年8月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正
本件補正は、明細書についてするもので、そのうち特許請求の範囲については、本件補正前に、
「【請求項1】 回転駆動される光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出して、光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置であって、
前記光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向に関して駆動調整するトラッキングアクチュエータと、
前記光学ピックアップによる検出信号に基づいて生成されたトラッキングエラー信号に基づいて、このトラッキングアクチュエータを制御する制御回路と、
前記光ディスクの偏心を学習して、この学習データに基づく学習制御によって、前記トラッキングエラー信号にフィードバックをかける学習制御手段と
を含んでおり、
前記学習制御手段が、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なうことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】 前記学習制御手段が、デジタルフィルタ及び直線位相デジタルフィルタのうち、少なくとも何れか一方から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク制御装置。
【請求項3】 前記学習制御手段が、トラックジャンプの際には、学習データを保持し、トラックジャンプ終了後に、当該学習データに基づいて、学習制御を行なうことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】 前記学習制御手段が、光ディスクの回転に対応して信号発生回路により発生されるクロック信号に基づいて、駆動されることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】 前記信号発生回路が、光ディスクの回転駆動手段に設けられたエンコーダであることを特徴とする請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項6】 前記光ディスクが、所定周波数でウォブリングされたグルーブ部を有する光ディスクであって、前記信号発生回路が、光学ピックアップによる検出信号から取り出されたウォブリング信号に基づいて、クロック信号を発生することを特徴とする請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項7】 前記光ディスクが、信号を記録するためのランド部及び/またはグルーブ部と、アドレス情報を記録するためのピットアドレス部を有する光ディスクであって、前記信号発生回路が、光学ピックアップによる検出信号から取り出されたアドレス情報に基づいて、クロック信号を発生することを特徴とする請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項8】 前記信号発生回路からのクロック信号を、光ディスクの回転数に対応して、一回転当たりのクロック数を変化させて、学習制御手段に入力する演算回路を備えていることを特徴とする請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項9】 回転駆動される光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出して、光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置であって、
前記光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのフォーカス方向に関して駆動調整するフォーカスアクチュエータと、
前記光学ピックアップによる検出信号に基づいて生成されたフォーカスエラー信号に基づいて、このフォーカスアクチュエータを制御する制御回路と、
前記光ディスクの面振れを学習して、この学習データに基づく学習制御によって、前記フォーカスエラー信号にフィードバックをかける学習制御手段と
を含んでおり、
前記学習制御手段が、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なうことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項10】 前記学習制御手段が、デジタルフィルタ及び直線位相デジタルフィルタのうち、少なくとも何れか一方から構成されていることを特徴とする請求項9に記載の光ディスク装置。
【請求項11】 前記学習制御手段が、トラックジャンプの際には、学習データを保持し、トラックジャンプ終了後に、当該学習データに基づいて、学習制御を行なうことを特徴とする請求項9に記載の光ディスク装置。
【請求項12】 前記学習制御手段が、光ディスクの回転に対応して信号発生回路により発生されるクロック信号に基づいて、駆動されることを特徴とする請求項9に記載の光ディスク装置。
【請求項13】 前記信号発生回路が、光ディスクの回転駆動手段に設けられたエンコーダであることを特徴とする請求項12に記載の光ディスク装置。
【請求項14】 前記光ディスクが、所定周波数でウォブリングされたグルーブ部を有する光ディスクであって、前記信号発生回路が、光学ピックアップによる検出信号から取り出されたウォブリング信号に基づいて、クロック信号を発生することを特徴とする請求項12に記載の光ディスク装置。
【請求項15】 前記光ディスクが、信号を記録するためのランド部及び/またはグルーブ部と、アドレス情報を記録するためのピットアドレス部を有する光ディスクであって、前記信号発生回路が、光学ピックアップによる検出信号から取り出されたアドレス情報に基づいて、クロック信号を発生することを特徴とする請求項12に記載の光ディスク装置。
【請求項16】 前記信号発生回路からのクロック信号を、光ディスクの回転数に対応して、一回転当たりのクロック数を変化させて、学習制御手段に入力する演算回路を備えていることを特徴とする請求項12に記載の光ディスク装置。
【請求項17】 回転駆動される光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出して、光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置であって、
前記光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向及びフォーカシング方向に関して駆動調整するアクチュエータと、
前記光学ピックアップによる検出信号に基づいて生成されたトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号に基づいて、このアクチュエータを制御する制御回路と、
前記光ディスクの偏心及び面振れを学習して、この学習データに基づく学習制御によって、前記トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号にフィードバックをかける学習制御手段と
を含んでおり、
前記学習制御手段が、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なうことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項18】 回転駆動される光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出して、光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置の制御方法であって、
前記光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向に関してトラッキングアクチュエータにより駆動調整する駆動調整工程と、
前記光学ピックアップによる検出信号に基づいて生成されたトラッキングエラー信号に基づいて、このトラッキングアクチュエータを制御する制御工程と、
前記光ディスクの偏心を学習して、この学習データに基づく学習制御によって、前記トラッキングエラー信号にフィードバックをかける学習制御工程と
を含んでおり、
前記学習制御工程において、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なうことを特徴とする光ディスク装置の制御方法。
【請求項19】 回転駆動される光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出して、光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置の制御方法であって、
前記光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのフォーカス方向に関してフォーカスアクチュエータにより駆動調整する駆動調整工程と、
前記光学ピックアップによる検出信号に基づいて生成されたフォーカスエラー信号に基づいて、このフォーカスアクチュエータを制御する制御工程と、
前記光ディスクの面振れを学習して、この学習データに基づく学習制御によって、前記フォーカスエラー信号にフィードバックをかける学習制御工程と
を含んでおり、
前記学習制御工程において、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なうことを特徴とする光ディスク装置の制御方法。
【請求項20】 回転駆動される光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出して、光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置の制御方法であって、
前記光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向及びフォーカシング方向に関してアクチュエータにより駆動調整する駆動調整工程と、
前記光学ピックアップによる検出信号に基づいて生成されたトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号に基づいて、このアクチュエータを制御する制御工程と、
前記光ディスクの偏心及び面振れを学習して、この学習データに基づく学習制御によって、前記トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号にフィードバックをかける学習制御工程と
を含んでおり、
前記学習制御工程において、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なうことを特徴とする光ディスク装置の制御方法。」
とあったものを、

本件補正後
「【請求項1】 回転駆動される光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出して、光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置であって、
前記光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向又はフォーカシング方向に関して駆動調整するアクチュエータと、
前記光学ピックアップによる検出信号に基づいて生成されたトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号に基づいて、このアクチュエータを制御する制御回路と、
クロック信号を、光ディスクの回転数に対応して、一回転当たりのクロック数を変化させて発生させる信号発生回路と、
光ディスクの回転に対応して前記信号発生回路により発生されるクロック信号に基づいて駆動され、前記光ディスクの偏心及び面振れを学習して、この学習データに基づく学習制御によって、前記トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号にフィードバックをかける学習制御手段と
を含んでおり、
前記学習制御手段が、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なうことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】 回転駆動される光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出して、光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置の制御方法であって、
前記光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向に関してトラッキングアクチュエータにより駆動調整する駆動調整工程と、
前記光学ピックアップによる検出信号に基づいて生成されたトラッキングエラー信号に基づいて、このトラッキングアクチュエータを制御する制御工程と、
光ディスクの回転数に対応して、一回転当たりのクロック数を変化させてクロック信号を発生させるクロック発生工程と、
光ディスクの回転に対応して発生される前記クロック信号に基づいて駆動され、前記光ディスクの偏心を学習して、この学習データに基づく学習制御によって、前記トラッキングエラー信号にフィードバックをかける学習制御工程と
を含んでおり、
前記学習制御工程において、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なうことを特徴とする光ディスク装置の制御方法。
【請求項3】 回転駆動される光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出して、光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置の制御方法であって、
前記光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのフォーカス方向に関してフォーカスアクチュエータにより駆動調整する駆動調整工程と、
前記光学ピックアップによる検出信号に基づいて生成されたフォーカスエラー信号に基づいて、このフォーカスアクチュエータを制御する制御工程と、
光ディスクの回転数に対応して、一回転当たりのクロック数を変化させてクロック信号を発生させるクロック発生工程と、
光ディスクの回転に対応して発生される前記クロック信号に基づいて駆動され、前記光ディスクの面振れを学習して、この学習データに基づく学習制御によって、前記フォーカスエラー信号にフィードバックをかける学習制御工程と
を含んでおり、
前記学習制御工程において、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なうことを特徴とする光ディスク装置の制御方法。
【請求項4】 回転駆動される光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出して、光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置の制御方法であって、
前記光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向及びフォーカシング方向に関してアクチュエータにより駆動調整する駆動調整工程と、
前記光学ピックアップによる検出信号に基づいて生成されたトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号に基づいて、このアクチュエータを制御する制御工程と、
光ディスクの回転数に対応して、一回転当たりのクロック数を変化させてクロック信号を発生させるクロック発生工程と、
光ディスクの回転に対応して発生される前記クロック信号に基づいて駆動され、前記光ディスクの偏心及び面振れを学習して、この学習データに基づく学習制御によって、前記トラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号にフィードバックをかける学習制御工程と
を含んでおり、
前記学習制御工程において、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なうことを特徴とする光ディスク装置の制御方法。」
と補正しようとするものである。

2.本件補正についての検討
(1)本件補正について、請求人は、審判請求書において「請求項1は、補正前の請求項8(請求項1及び4に従属した請求項)と、補正前の請求項16(請求項9及び12に従属した請求項)を、1つの請求項で表現したものであります。」と主張している。
まず、この点について検討すると、複数の請求項を単に1つの請求項で表現することは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法第17条の2第4項に規定された、請求項の削除、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正のいずれにも該当しない。

(2)そして、本件補正前の請求項8及び請求項16と、本件補正後の請求項1とを対比すると、本件補正は、本件補正前の請求項8及び請求項16にそれぞれ記載されていた発明を特定するために必要な事項である「光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向に関して駆動調整するトラッキングアクチュエータ」「光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのフォーカシング方向に関して駆動調整するフォーカスアクチュエータ」について、「光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向又はフォーカシング方向に関して駆動調整するアクチュエータ」と択一的記載の要素を付加し、その概念を拡張するものである。
また、本件補正前の請求項8及び請求項16に記載されていた発明を特定するために必要な事項である「前記信号発生回路からのクロック信号を、光ディスクの回転数に対応して、一回転当たりのクロック数を変化させて、学習制御手段に入力する演算回路」を、本件補正前の請求項4及び12に記載された発明を特定するために必要な事項である「信号発生回路」に含め、新たに「クロック信号を、光ディスクの回転数に対応して、一回転当たりのクロック数を変化させて発生させる信号発生回路」とすることにより、「信号発生回路」の役割を変更して、その概念を拡張するものであるから、本件請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮とは認められない。

(3)なお、請求人は審判請求書において「即ち、補正前の請求項1は、光ディスクのトラッキング方向に関してアクチュエータで駆動調整するものであり、補正前の請求項9は、光ディスクのフォーカシング方向に関してアクチュエータで駆動調整するものであり、これらを補正した請求項1として、「光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向又はフォーカシング方向に関して駆動調整するアクチュエータ」として、1つの請求項で記載した上で、補正前の請求項4及び12に記載された「学習制御手段が、光ディスクの回転に対応して信号発生回路により発生されるクロック信号に基づいて、駆動される」点と、補正前の請求項8及び16に記載された「信号発生回路からのクロック信号を、光ディスクの回転数に対応して、一回転当たりのクロック数を変化させて、学習制御手段に入力する演算回路」を備える点を限定したものであり、特許請求の範囲の減縮に相当する。」と主張しているが、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮に該当しない。

3.本件補正についての結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
平成18年8月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至20に係る発明は、平成17年2月7日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至20に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 〔理由〕1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-301996号公報(以下、「引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(a)
【請求項3】 光ディスクのトラッキング動作を行うためのトラッキングアクチュエータと上記トラッキングアクチュエータの制御回路を有するトラッキング制御において、上記トラッキング制御回路におけるトラック誤差信号に基づきディスク偏芯の周期性成分を学習するメモリーを有し、上記メモリーが上記ディスクの回転制御系におけるモータエンコーダから得られるモータ回転角情報に基づいてシフトされるシフトレジスタから成ることを特徴とする光ディスク制御装置。

(b)
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光ディスク制御装置に関し、特に記録再生装置があらゆる状況で記録、再生等が行えるトラッキング・フォーカス制御に関するものである。

(c)
【0059】実施例2. 図5は請求項3の発明の一実施例による光ディスク制御装置を示すブロック図である。図において、5は光ディスク、7はアドレス制御器、8はモーター制御回路、9はディスクモーター、10はエンコーダ、11はシフトレジスタ、12は光ピックアップである。図6は請求項4の発明の一実施例による光ディスク制御装置を示すブロック図である。
【0060】次に、CDプレーヤーやLDプレーヤーのようにCLV回転(線速度一定回転)でディスクを回した場合はどのようになるか説明する。CLV回転ではディスク回転数が光スポット半径位置の変化に従って徐々に変化するため図1や図4で示したように学習メモリーそのものを別々の周期を持つ学習メモリーに切り替えて用いると多くの学習メモリーを用意しなければならない。そこで図5に示したようにディスクの回転速度を検出するために一般的に取り付けられているモーターエンコーダー10の出力に基づいてアドレス制御回路7によりシフトレジスタ6のビットシフトを行うようにすればディスク1回転あたりの歯数は一定であるためディスク回転数に係わらず1回転あたりのシフトレジスタ6のアドレスシフト量は一定となる。
【0061】このようにして、CLV回転のディスク装置においても図5のようにモーターエンコーダ10を用いることで学習制御を行うことができる。図5はCLVディスク装置においてトラッキング制御系に学習制御を適用した場合について示したがフォーカス制御系の場合でも同様に図6のように構成することで対応可能である。

(d)
上記摘記事項(a)(c)及び【図1】を参照すると、【図5】には、トラック誤差信号(トラックエラー)に基づいて、トラッキングアクチュエータを制御するトラッキング制御回路と、ディスク偏芯の周期性成分を学習して、学習制御によってトラック誤差信号にフィードバックをかけるメモリー(シフトレジスタ)が記載されている。

上記引用例記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「CLV回転される光ディスクに対して、光ピックアップにより、記録、再生等が行える光ディスク制御装置であって、
光ディスクのトラッキング動作を行うためのトラッキングアクチュエータと、
トラック誤差信号に基づいて、トラッキングアクチュエータを制御するトラッキング制御回路と、
ディスク偏芯の周期性成分を学習して、学習制御によってトラック誤差信号にフィードバックをかけるメモリーと
を含む
光ディスク制御装置。」

3.対比
そこで、本願発明を、引用発明と比較する。

引用発明における「CLV回転される光ディスク」は、本願発明における「回転駆動される光ディスク」に相当し、また、引用発明における「光ピックアップ」は「光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出」していることは明らかである。
すると、引用発明における「回転駆動される光ディスクに対して、光ピックアップにより、記録、再生等が行える光ディスク制御装置」は、本願発明における「回転駆動される光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出して、光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置」に相当する。

引用発明における「トラッキングアクチュエータ」は、トラッキング動作を行う点で本願発明の「トラッキングアクチュエータ」と共通する。

引用発明における「トラック誤差信号」は、光ピックアップによる検出信号に基づいて生成されていることは明らかであるから、本願発明の「光学ピックアップによる検出信号に基づいて生成されたトラッキングエラー信号」に相当し、引用発明の「トラッキング制御回路」は本願発明の「トラッキングアクチュエータを制御する制御回路」に相当する。

引用発明における「ディスク偏芯」は、本願発明の「光ディスクの偏心」に相当し、引用発明における「ディスク偏芯の周期性成分を学習して、学習制御によってトラック誤差信号にフィードバックをかけるメモリー」は、本願発明の「光ディスクの偏心を学習して、この学習データに基づく学習制御によって、前記トラッキングエラー信号にフィードバックをかける学習制御手段」に相当する。

すると、本願発明と、引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「回転駆動される光ディスクの信号記録面に対して、光学ピックアップから光を照射し、その戻り光を光学ピックアップにより検出して、光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置であって、
トラッキングアクチュエータと、
前記光学ピックアップによる検出信号に基づいて生成されたトラッキングエラー信号に基づいて、このトラッキングアクチュエータを制御する制御回路と、
前記光ディスクの偏心を学習して、この学習データに基づく学習制御によって、前記トラッキングエラー信号にフィードバックをかける学習制御手段と
を含む
光ディスク装置。」

一方で、以下の点で相違する。
<相違点>
(相違点1)本願発明は「光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向に関して駆動調整するトラッキングアクチュエータ」であるのに対し、引用発明はそのような特定のない点。
(相違点2)本願発明は「学習制御手段が、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なう」のに対し、引用発明ではそのような特定のない点。

4.判断
(相違点1及び2について)
光ディスクに対する信号の記録及び/または再生を行なう光ディスク装置において、「光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向に関して駆動調整するトラッキングアクチュエータ」、及び、「学習制御手段が、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なう」点は、それぞれ周知技術(例えば、特開平1-184732号公報(第3頁右下欄第1行?6行、及び、第3頁右下欄第19行?第4頁左上欄第14行の記載)、特開平1-189036号公報(第3頁右上欄第13行?18行、及び、第3頁左下欄第11行?右下欄第7行の記載)等参照)であるから、引用発明においても、上記周知技術をそれぞれ適用して、トラッキングアクチュエータを「光学ピックアップの対物レンズを光ディスクのトラッキング方向に関して駆動調整するトラッキングアクチュエータ」とし、かつ「学習制御手段が、制御開始時には、光ディスク装置の電源が投入された際に前以て学習しておいた学習データに基づいて、学習制御を行なう」ようにする点は、当業者が容易に想到できたものである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、引用例に記載された発明及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、審尋に対する回答書において、補正案を提示して手続補正の機会を求めているが、手続補正をすることができる時期ではなく、また、手続補正の機会を与えるべき特段の理由もない。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-12 
結審通知日 2009-08-18 
審決日 2009-09-01 
出願番号 特願平9-239500
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 572- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古河 雅輝  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
横尾 俊一
発明の名称 光ディスク装置及びその制御方法  
代理人 伊藤 仁恭  
代理人 角田 芳末  

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