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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41F
管理番号 1205524
審判番号 不服2006-19979  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-07 
確定日 2009-10-15 
事件の表示 特願2001-337690「スクリーン印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月14日出願公開、特開2003-136674〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年11月2日の出願であって、平成17年1月7日付け拒絶理由通知に対して、同年3月9日付けで手続補正がなされ、同年4月26日付けの最後の拒絶理由通知に対して、同年6月24日付けで手続補正がされたが、平成18年7月31日付けで拒絶査定され、これに対し、同年9月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年10月4日付けで明細書の手続補正がなされ、平成20年4月22日付けで前置報告書の内容を示す審尋がなされ、同年6月23日付けで回答書が提出されたものである。
その後、当審においてこれを審理した結果、平成21年6月4日付けで平成18年10月4日付け手続補正を補正却下するとともに、同日付けで最後の拒絶理由を通知したところ、同年7月16日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 平成21年7月16日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年7月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する

[理 由]
1 補正の内容について
本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであり、その補正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりのものである。

(本件補正前の特許請求の範囲:平成17年6月24日付け手続補正書)
「【請求項1】マスクプレート上でスキージヘッドを移動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、
前記スキージヘッドをマスクプレートに対して水平方向に移動させる水平移動手段と、前記スキージヘッドをマスクプレートに対して昇降させる昇降手段と、スキージヘッドをマスクプレートに対して押圧する押圧手段と、前記スキージヘッドに設けられペーストを収容し下面に形成された開口部を介してマスクプレートの表面に接触させる印刷空間と、
前記印刷空間のスキージング方向の前後壁を形成し前記マスクプレートの上面に摺接する相対向した2つの摺接部と、前記スキージヘッド内のペーストに対してスキージング方向と直交する水平軸方向の移動成分を含む流動を付与する水平流動付与手段とを備え、
前記水平流動付与手段は、前記印刷空間内上部に前記スキージング方向と直交する水平軸方向に所定の間隔をおいて設けられた二つの軸部材と、この軸部材を前記水平軸方向に移動させる移動手段からなり、前記スキージヘッドのスキージング動作によって、前記ペーストが前記軸部材の周囲を周回して前記印刷空間内において上下方向に循環するローリング流動を誘起することを特徴とするスクリーン印刷装置。」

(本件補正後の特許請求の範囲:平成21年7月16日付け手続補正書)
「【請求項1】マスクプレート上でスキージヘッドを移動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、
前記スキージヘッドをマスクプレートに対して水平方向に移動させる水平移動手段と、前記スキージヘッドをマスクプレートに対して昇降させる昇降手段と、スキージヘッドをマスクプレートに対して押圧する押圧手段と、前記スキージヘッドに設けられペーストを収容し下面に形成された開口部を介してマスクプレートの表面に接触させる印刷空間と、
前記印刷空間のスキージング方向の前後壁を形成し前記マスクプレートの上面に摺接する相対向したスキージング方向に前後2つの摺接部と、前記スキージヘッド内のペーストに対してスキージング方向と直交する水平軸方向の移動成分を含む流動を付与する水平流動付与手段とを備え、
前記水平流動付与手段は、前記印刷空間内上部に前記スキージング方向と直
交する水平軸方向に所定の間隔をおいて設けられた二つの軸部材と、この軸部材を前記水平軸方向に水平往復動にて移動させる移動手段からなり、前記スキージヘッドのスキージング動作によって、前記ペーストが前記軸部材の周囲を周回して前記印刷空間内において上下方向に循環するローリング流動を誘起するものであり、且つ前記2つの摺接部は内方へ上下逆八字形に傾斜しており、また前記二つの軸部材は前記2つの摺接部の真上に配設されていることを特徴とするスクリーン印刷装置。」(当審で下線を付した。) そして、本件補正のうち、特許請求の範囲に対する補正は、補正前の特許請求の範囲を、以下に示すとおり補正するものである。

[補正1]
補正前の請求項1における「印刷空間のスキージング方向の前後壁を形成し前記マスクプレートの上面に摺接する相対向した2つの摺接部」を「印刷空間のスキージング方向の前後壁を形成し前記マスクプレートの上面に摺接する相対向したスキージング方向に前後2つの摺接部」とする補正。

[補正2]
補正前の請求項1における「この軸部材を前記水平軸方向に移動させる移動手段」を「この軸部材を前記水平軸方向に水平往復動にて移動させる移動手段」とする補正。

[補正3]
補正前の請求項1における「印刷空間内において上下方向に循環するローリング流動を誘起することを」を「印刷空間内において上下方向に循環するローリング流動を誘起するものであり、且つ前記2つの摺接部は内方へ上下逆八字形に傾斜しており、また前記二つの軸部材は前記2つの摺接部の真上に配設されていることを」とする補正。

2 補正の目的について
次に、本件補正がいかなる事項を目的とするものであるかについて検討する。

[補正1]について
補正前の請求項1の「印刷空間のスキージング方向の前後壁を形成し前記マスクプレートの上面に摺接する相対向した2つの摺接部」における「摺接部」は、スキージング方向の前後壁を形成するものであるから、スキージング方向の前後に配置されているものと理解でき、補正により「印刷空間のスキージング方向の前後壁を形成し前記マスクプレートの上面に摺接する相対向したスキージング方向に前後2つの摺接部」となったが、実質的な内容に変更はない。

[補正2]について
補正前の請求項1の「軸部材」が水平軸方向に水平往復動にて移動されることを限定するものであるので、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求項の範囲の減縮」に相当する。

[補正3]について
補正前の請求項1における「2つの摺接部」が内方へ上下逆八字形に傾斜していること、及び「二つの軸部材」が2つの摺接部の真上に配設されていることを限定するものであるので、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求項の範囲の減縮」に相当する。
上記のとおり、[補正1]乃至[補正3]よりなる本件補正は、全体として、「特許請求項の範囲の減縮」を目的とするものと認められるので、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かを、以下に検討する。

3 独立特許要件について
(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものである。 「【請求項1】マスクプレート上でスキージヘッドを移動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、
前記スキージヘッドをマスクプレートに対して水平方向に移動させる水平移動手段と、前記スキージヘッドをマスクプレートに対して昇降させる昇降手段と、スキージヘッドをマスクプレートに対して押圧する押圧手段と、前記スキージヘッドに設けられペーストを収容し下面に形成された開口部を介してマスクプレートの表面に接触させる印刷空間と、
前記印刷空間のスキージング方向の前後壁を形成し前記マスクプレートの上面に摺接する相対向したスキージング方向に前後2つの摺接部と、前記スキージヘッド内のペーストに対してスキージング方向と直交する水平軸方向の移動成分を含む流動を付与する水平流動付与手段とを備え、
前記水平流動付与手段は、前記印刷空間内上部に前記スキージング方向と直
交する水平軸方向に所定の間隔をおいて設けられた二つの軸部材と、この軸部材を前記水平軸方向に水平往復動にて移動させる移動手段からなり、前記スキージヘッドのスキージング動作によって、前記ペーストが前記軸部材の周囲を周回して前記印刷空間内において上下方向に循環するローリング流動を誘起するものであり、且つ前記2つの摺接部は内方へ上下逆八字形に傾斜しており、また前記二つの軸部材は前記2つの摺接部の真上に配設されていることを特徴とするスクリーン印刷装置。」

(2)引用発明
本願出願前に頒布された刊行物である実開平05-023755号(実開平06-075747号)のCD-ROM(以下「引用文献1」という。)には、図とともに以下(ア)乃至(コ)に示す記載がある。

(ア)「【産業上の利用分野】本考案は、プリント基板にクリームハンダを 印刷するスクリーン印刷機のハンダ印刷用スキージに関する。」【000 1】
(イ)「【従来の技術】従来、プリント基板スクリーン印刷機用スキージは 、例えば実開昭62-82177号公報に開示されるように、マスクとの 当接面にクリームハンダの吐出口が形成され、クリームハンダは、スキー ジの内部を通ってマスクへ供給されるようになっている。すなわち、クリ ームハンダは、基板上に載置したマスク上に上記吐出口を当接するように してスキージを移動し、基板上に印刷されるが、この印刷の際、吐出口内 のクリームハンダは、スキージの移動により、その移動方向に吐出口の吐 出面下部にて回転、すなわちローリングする。」【0002】
(ウ)「【考案が解決しようとする課題】上記従来のスキージでは、クリー ムハンダをハンダ吐出口で囲んだ状態でマスク上に供給することができる ため、必要最小限のクリームハンダで印刷でき、かつ印刷前のクリームハ ンダが劣化しにくいという利点があるが、ハンダ吐出口を形成する吐出面 との流動抵抗により、印刷時にクリームハンダのローリング性が悪くなる という問題点があった。このため、クリームハンダが印刷しにくくなり、 さらに印刷ムラを生じることがあった。本考案は、上記従来技術の問題点 に鑑みてなされたもので、印刷時におけるクリームハンダのローリング性 を向上させ、常に必要とするクリームハンダの量を印刷することができる ハンダ印刷用スキージを提供することを目的とする。本考案は、上記従来 技術の問題点に鑑みてなされたもので、印刷時におけるクリームハンダの ローリング性を向上させ、常に必要とするクリームハンダの量を印刷する ことができるハンダ印刷用スキージを提供することを目的とする。」【0 003】
(エ)「本考案は、クリームハンダを収容するカートリッジの下端部に形成 したハンダ流出部にスキージを取り付け、スキージのハンダ吐出口から上 記クリームハンダを吐出するハンダ印刷用スキージにおいて、上記ハンダ 吐出口を形成するハンダ吐出面もしくはハンダ吐出面付近にクリームハン ダのローリング補助部材を設けて構成した。」【0004】
(オ)「スキージのハンダ吐出口端部をマスク上に当接しつつスキージを移 動するとき、ローリング補助部材によってクリームハンダのローリングが 加速される。これによりマスク開口部にクリームハンダが確実に充填され 、基板上に必要量のクリームハンダが印刷される。」【0005】
(カ)「 図1において、1はスキージで、クリームハンダ2を収容するカ ートリッジ3の下端部においてカートリッジ3のハンダ流出部4と接合し て取り付けられている。カートリッジ3内には、収容したクリームハンダ 2の上面からクリームハンダ2を押圧するピストン5が配置され、クリー ムハンダ2を収容する壁面に沿って上下動自在に設けられている。」【0 006】
(キ)「スキージ1は、スキージゴム6とローリング補助部材7とにより構 成されている。スキージゴム6には、カートリッジ3に収容したクリーム ハンダ2をプリント基板8上に載置したスクリーンマスク9上に供給する ハンダ吐出口10が設けられ、印刷時にクリームハンダ2がハンダ吐出口 10を形成するハンダ吐出口11と常時接触するようになっている。」【 0007】
(ク)「ローリング補助部材7は、スパイラル状のロータ12とロータ12 を回転するモータ13とから構成されている。ロータ12は、その両端軸 部がスキージゴム6に支持されてハンダ吐出口10内に回動自在に設けら れている。モータ13は、スキージゴム6の外側面に固定されており、ロ ータ12の一端軸部と連結されている。」【0008】
(ケ)「スキージ1のハンダ吐出口10端部をスクリーンマスク9上に当接 し、クリームハンダ2を印刷する直前に、ピストン5を下降してクリーム ハンダ2をスクリーンマスク9とスキージゴム6で囲まれたハンダ吐出口 10内に押し出す。次に、スキージ1をA方向に移動させ、それに連動し てモータ13によりロータ12を反時計回り(矢印a)に回転し、ハンダ 吐出口10内のクリームハンダ2をローリングする。このローリングによ り、スクリーンマスク9の開口部9a内にクリームハンダ2が確実に充填 され、プリント基板8上に必要量(設計量)印刷される。 逆に、スキー ジ1をB方向に移動して印刷する際には、モータ13によりロータ12を 時計回り(矢印b)に回転してクリームハンダ2をローリングすることに より、プリント基板8上にクリームハンダ2が必要量印刷される。」【0 009】
(コ)「以上のように、本考案によれば、ローリング補助部材により供給す るクリームハンダのローリング性が良くなるため、印刷性が向上し、クリ ームハンダを設計量どおりに印刷することができる。」【0017】

引用文献1には、スキージを水平方向に移動させる具体的な手段については明示されていないが、「次に、スキージ1をA方向に移動させ、それに連動してモータ13によりロータ12を反時計回り(矢印a)に回転し」(摘記(ケ)を参照。)と記載され、スキージの移動とモータの回転を連動させていることから、スキージを水平方向に移動させる何らかの「水平移動手段」を備えていることは明らかである。
引用文献1には、「ローリング補助部材7は、スパイラル状のロータ12とロータ12を回転するモータ13とから構成されている。」(摘記(ク)参照。)と記載され、このスパイラル状のロータを回転させれば、ハンダ吐出口内のクリームハンダに対してロータの軸方向の移動成分を含む流動を付与し得ることは明らかであるので、上記「ローリング補助部材7」は、スキージング方向と直交する水平軸方向の移動成分を含む流動を付与する「水平流動付与手段」と呼べるものである。
引用文献1の図1、2から、スキージゴム6はハンダ吐出口10の相対向したスキージング方向に前後2つの壁を有する形状であることが看取れる。

引用文献1の明細書及び図面全体を参酌しつつ、上記(ア)乃至(ケ)を検討すると、引用文献1には次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)と認められる。

「スクリーンマスク上でハンダ印刷用スキージを移動させることにより、スクリーンマスクの開口部内にクリームハンダが充填されプリント基板にクリームハンダを印刷するスクリーン印刷機であって、
前記スキージをスクリーンマスクに対して水平方向に移動させる水平移動手段と、スクリーンマスクとスキージゴムで囲まれたハンダ吐出口と、
ハンダ吐出口の相対向したスキージング方向に前後2つの壁を形成し、スクリーンマスクの上面に当接しつつ移動するスキージゴムと、
ハンダ吐出口内のクリームハンダに対してスキージング方向と直交する水平軸方向の移動成分を含む流動を付与する水平流動付与手段とを備え、
前記水平流動付与手段は、ハンダ吐出口内にスキージング方向と直交する水平軸方向に設けられたスパイラル状のロータと、このロータを回転するモータとからなり、ハンダ印刷用スキージの移動により吐出口内のクリームハンダをローリングさせるスクリーン印刷機。」

また、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-202988号公報(以下「引用文献2」という。)には、図とともに以下(A)乃至(D)に示す記載がある。
(A)「【請求項1】印刷マスクの貫通孔又は凹部に印刷剤を充填する印刷 剤充填装置であって、印刷剤を収容する印刷剤収容部と、該印刷マスクと の接触する部分に形成した印刷剤の排出口と、該印刷剤収容部に印刷剤を 補給するための補給口と、該印刷剤収容部内の該補給口から該排出口に向 かって移動しようとする印刷剤の一部を該印刷剤の移動方向とは異なる方 向に移動させて該印刷剤を撹拌する撹拌手段とを有する充填部材を用いる とともに、該充填部材の該補給口から該印刷剤収容部内に印刷剤を圧入す る圧入手段を、該撹拌手段とは独立に設けたことを特徴とする印刷剤充填 装置。」
(B)「【0014】図1(a)は本実施形態に係る充填装置の側面図であ り、図1(b)は同充填装置に用いる充填部材などの正面断面図である。 この充填装置は、貫通孔からなる印刷用パターンが形成された印刷マスク (以下「孔版マスク」という。)10に接触する充填部材1と、導電性ペ ーストとしてのクリーム半田を充填部材1に圧入する圧入手段とを備えて いる。充填部材1は、クリーム半田50を収容する印刷剤収容部1aと、 孔版マスク10との接触する部分に形成した排出口1bと、該印刷剤収容 部1aにクリーム半田50を補給するための補給口1cとを有している。 この印刷剤収容部1a及び排出口1bは、クリーム半田の充填時に移動さ せる方向(図中B方向)と交差する交差方向(図中A方向)に延在するよ うに形成されている。また、上記排出口1bは、孔版マスクの貫通孔より も十分大きくなるように設定されている。上記補給口1cは上記交差方向 に沿って複数形成され、印刷剤収容部1a内にクリーム半田が均一に補給 されるようになっている。」
(C)「【0016】また、上記充填部材1の印刷剤収容部1aの内部には 、補給口1cから排出口1bに向かって移動しようとするクリーム半田5 0の一部を該クリーム半田の移動方向とは異なる方向に移動させて撹拌す る撹拌手段が設けられている。この撹拌手段は、表面に凹凸を有する可動 部材2と、可動部材2を長手方向(図中のA方向)方向に往復動させる駆 動装置3とにより構成されている。可動部材2の軸は、充填部材1の長手 方向両端の壁部に図示しない軸受を介して支持されている。また、充填部 材1の外周面は凸部2aが分布するように形成され、長手方向に凹凸が繰 り返し形成された表面となっている。駆動装置3は充填部材1の長手方向 の一方の端部に取り付けられ、例えばソレノイド等を用いて構成すること ができる。」
(D)「上記可動部材2としては、軸体20の長手方向に円盤状の板部材2 1を所定ピッチで取り付けたものを用いてもよい(図2(a)参照)。こ の可動部材を充填部材1の印刷剤収容部1a内に取付けて長手方向(図中 C方向)に往復動させる。また、上記可動部材としては、長手方向に直交 する断面形状22の直径が該長手方向に沿って周期的に変化するものを用 いてもよい(図2(b)参照)。この可動部材を充填部材1の印刷剤収容 部1a内に取付けて長手方向(図中のC方向)に往復動させる。更に、上 記可動部材としては、軸体23の長手方向に円盤状の板部材24を所定ピ ッチで斜めに取り付けたものを用いてもよい(図2(c)参照)。この可 動部材を充填部材1の印刷剤収容部1a内に取付けて図中D方向に回転さ せる。」【0018】

上記(A)乃至(D)の記載からして、引用文献2には、印刷剤収容器内に収容したクリーム半田を撹拌する方法として、下記(a)乃至(c)の方法が開示されていることになる。
(a)軸体の長手方向に円盤状の板部材を所定ピッチで取り付けた可動部材 を長手方向に往復動させる方法。
(b)長手方向に直交する断面形状の直径が該長手方向に沿って周期的に変 化する可動部材を長手方向に往復動させる方法。
(c)軸体の長手方向に円盤状の板部材を所定ピッチで斜めに取り付けた可 動部材を回転させる方法。

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明における「スクリーンマスク」は、本件補正発明の「マスク プレート」に相当する。
(イ)引用発明の「クリームハンダ」は、本件補正発明の「ペースト」に相 当する。
(ウ)引用発明の「プリント基板」は、本件補正発明の「基板」に相当する 。
(エ)引用発明の「スキージング方向に前後2つの壁」は、本件補正発明の 「スキージング方向に前後2つの摺接部」に相当する。
(オ)引用発明の「当接しつつ移動する」は、本件補正発明の「摺接する」 に相当する。
(カ)引用発明の「スクリーン印刷機」は、本件補正発明の「スクリーン印 刷装置」に相当する。
(キ)引用発明の「スパイラル状のロータ」は、本件補正発明の「軸部材」 に相当する。
(ク)本願明細書に「【0003】このスクリーン印刷のスキージング方法 として、密閉型のスキージヘッドを用いる方法が知られている。この方法 は、通常のスクリーン印刷と異なりマスクプレート上にペーストを直接供 給するのではなく、ペースト貯溜容器を備えたスキージヘッドを用いるも のである。」と記載されていることから、「スキージヘッド」とは、ペー スト貯溜容器を備えたスキージ部材であると解され、引用文献1に記載の 「ハンダ印刷用スキージ」も、クリームハンダを収容するカートリッジを 備えていることから、「スキージヘッド」と呼べるものである。
したがって、引用発明の「ハンダ印刷用スキージ」は、本件補正発明の 「スキージヘッド」に相当する。
(ケ)引用文献1には「クリームハンダ2をスクリーンマスク9とスキージ ゴム6で囲まれたハンダ吐出口10内に押し出す」(摘記(ケ)参照。) と記載され、第1図に、ハンダ流出部4とスキージゴム6で囲まれた空間 内に収容されたクリームハンダがスクリーンマスク9の表面に接触した状 態が看取れることから、「ハンダ吐出口10」は「印刷空間」と呼べるも のである。
したがって、引用発明の「ハンダ吐出口」は、本件補正発明の「印刷空 間」に相当する。
(コ)引用発明の「水平流動付与手段は、ハンダ吐出口内にスキージング方 向と直交する水平軸方向に設けられたスパイラル状のロータと、このロー タを回転する回転手段とからなる」と本件補正発明の「水平流動付与手段 は、前記印刷空間内上部に前記スキージング方向と直交する水平軸方向に 所定の間隔をおいて設けられた二つの軸部材と、この軸部材を前記水平軸 方向に水平往復動にて移動させる移動手段からなり」とは、「水平流動付 与手段は、前記印刷空間内に前記スキージング方向と直交する水平軸方向 に設けられた軸部材と、この軸部材を駆動させる駆動手段からなる」とい う点で共通する。
(サ)引用文献1の【0002】には「従来、プリント基板スクリーン印刷 機用スキージは・・・この印刷の際、吐出口内のクリームハンダは、スキ ージの移動により、その移動方向に吐出口の吐出面下部にて回転、すなわ ちローリングする。」と記載されていることから、引用発明においても、 従来の印刷機用スキージと同様に、スキージの移動により、クリームハン ダは吐出口内の吐出面下部にてローリングし、さらに、スパイラル状のロ ータを回転させることでスキージング方向と直交する水平軸方向の移動成 分を含む流動が付与されることから、ロータの周囲を周回しながら上下方 向に循環するクリームハンダの流れが誘起されているものと認められる。
したがって、引用発明の「ハンダ印刷用スキージの移動により吐出口内 のクリームハンダをローリングさせる」は、本件補正発明の「スキージヘ ッドのスキージング動作によって、前記ペーストが前記軸部材の周囲を周 回して前記印刷空間内において上下方向に循環するローリング流動を誘起 する」に相当する。

してみると、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致している。
<一致点>
「マスクプレート上でスキージヘッドを移動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、
前記スキージヘッドをマスクプレートに対して水平方向に移動させる水平移動手段と、前記スキージヘッドに設けられペーストを収容し下面に形成された開口部を介してマスクプレートの表面に接触させる印刷空間と、
前記印刷空間のスキージング方向の前後壁を形成し前記マスクプレートの上面に摺接する相対向したスキージング方向に前後2つの摺接部と、前記スキージヘッド内のペーストに対してスキージング方向と直交する水平軸方向の移動成分を含む流動を付与する水平流動付与手段とを備え、
前記水平流動付与手段は、前記印刷空間内に前記スキージング方向と直交する水平軸方向に設けられた軸部材と、この軸部材を駆動させる駆動手段からなり、前記スキージヘッドのスキージング動作によって、前記ペーストが前記軸部材の周囲を周回して前記印刷空間内において上下方向に循環するローリング流動を誘起するものであるクリーン印刷装置。」

一方で、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で相違している。
<相違点1>
スキージヘッドの移動手段に関し
本件補正発明が「スキージヘッドをマスクプレートに対して昇降させる昇降手段と、スキージヘッドをマスクプレートに対して押圧する押圧手段」を備えているのに対して、引用発明では上記各手段を有していない点。

<相違点2>
摺接部の形状に関し
本件補正発明が「2つの摺接部は内方へ上下逆八字形に傾斜しており」と特定されるものであるのに対して、引用発明は上記特定を有していない点。

<相違点3>
軸部材に関し
本件補正発明が「印刷空間内上部に前記スキージング方向と直交する水平軸方向に所定の間隔をおいて設けられた二つの軸部材」が「2つの摺接部の真上に配設され」るとともに、軸部材を「水平軸方向に水平往復動にて移動させる移動手段」を備えているのに対して、引用発明では上記特定を有していない点。

(4)判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
スキージヘッドを備えたスクリーン印刷機において、スキージヘッドをマスクプレートに対して昇降させる昇降手段と、スキージヘッドをマスクプレートに対して押圧する押圧手段を設けることは、本願出願前に周知である(例えば、特開2001-253047号公報、特開2001-253045号公報、特開2001-246729号公報参照)。
引用発明と上記周知技術とは、スキージヘッドを移動させることで基板にペーストを印刷するスクリーン印刷機として共通していることから、引用発明において上記周知技術を適用し、上記<相違点1>の構成とすることは、容易になし得たことである。

<相違点2>について
内方へ上下逆八字形に傾斜させた摺接部を採用したスクリーン印刷装置は、本願出願前に周知である(例えば、特開2001-246729号公報
特開2001-225443号公報参照。)。
引用発明のスクリーン印刷機と上記周知技術のスクリーン印刷装置とは、ペーストをローリングさせながら充填するという点で共通していることから、引用発明において、内方へ上下逆八字形に傾斜させた摺接部を採用し、上記<相違点2>の構成とすることは、容易なし得たことである。

<相違点3>について
引用文献2に開示された、印刷剤収容器内に収容したクリーム半田を撹拌する(a)乃至(c)の方法のうち、(c)の方法における可動部材は、引用発明における「スパイラル状のロータ」に相当するものである。
他の(a)及び(b)の方法における可動部材も、(c)の方法における可動部材と同様にクリーム半田を攪拌することができるのであるから、引用発明における「スパイラル状のロータ」を引用文献2に記載された(a)又は(b)の方法における可動部材に置き換え、その部材を長手方向に往復動させることは、容易になし得たことである。
また、クリームハンダの粘度、印刷空間の大きさやその形状等に応じて可動部材を複数とするとともに、それらを印刷空間内の適切な箇所に配設することによりローリング流動をより円滑にすることは、適宜なし得ることであるから、可動部材を二つとして、それらを印刷空間内上部の摺接部の真上に配設することは、当業者ならば、適宜なし得る設計事項である。

したがって、引用発明において、上記<相違点3>の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、本件補正発明が奏する効果も、引用文献及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

(5)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正却下の決定のむすび
本件補正は、本件補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反している。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第4 本件審判請求についての判断
1 本願発明
平成21年7月16日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、上記「1.平成17年6月24日付け手続補正について(本件補正前の特許請求の範囲:平成17年6月24日付け手続補正書)」に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「1.平成17年6月24日付け手続補正について(本件補正前の特許請求の範囲:平成17年6月24日付け手続補正書)」で記載したとおりである。

2 引用文献
平成21年6月4日付け当審の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項は、上記「3 独立特許要件について(2)引用文献」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、実質的に、本件補正発明から上記「1 補正の内容について」で述べた、[補正2]及び[補正3]の限定を含まないものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに上記限定を含む本件補正発明が、上記「3 独立特許要件について」に記載したとおり、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用刊行物に記載された発明及び周知技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 結論
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-17 
結審通知日 2009-08-18 
審決日 2009-08-31 
出願番号 特願2001-337690(P2001-337690)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41F)
P 1 8・ 575- WZ (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 裕子  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 上田 正樹
星野 浩一
発明の名称 スクリーン印刷装置  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 永野 大介  

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