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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1205543
審判番号 不服2007-3056  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-25 
確定日 2009-10-15 
事件の表示 特願2001-242834「顧客支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月28日出願公開、特開2003- 58643〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年8月9日の出願であって、平成18年1月18日付けで拒絶理由が通知され、同年3月22日付けで手続補正がなされ、同年12月12日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成19年1月25日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年3月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「業務従事者の技術を向上させるための顧客支援システムにおいて、
計算機ネットワーク17を介しサービス提供側14より顧客側19へ研修プログラム内容の紹介を行う計算機システム36と、
上記研修プログラム内容に基づいて上記顧客側19のインストラクタに育成するためのインストラクタ研修設備37と、
上記顧客側19の技術研修を計算機ネットワーク17を介して上記サービス提供側14から支援するインストラクタ用遠隔技術研修支援装置38と、
計算機ネットワーク17を介して上記顧客側19から上記サービス提供側14に送信された実機の運転データをもとに診断支援を行い、その結果を計算機ネットワーク17を介して上記顧客側19に送信する計算機システム39と、
から構成されることを特徴とする顧客支援システム。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された「竹岡義夫 他,“プラント運転保守サービス”,東芝レビュー,株式会社東芝,2000年6月1日発行,第55巻 第6号,pp.49?52」(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「当社では,数年前から発電コストの低減をねらった,プラントのライフサイクルを考慮した保守コンセプトを提唱している。これは,プラントや設備のトータルライフにわたる総保守費用の低減を目的とするもので,プラントのライフサイクルを想定し,そのライフサイクルコストを最小にするよう,特に大物機器の更新時期を中心に保守計画を求め実行するものである。
上記のコンセプトに基づき,発電プラントのライフサイクルを通して提供される一貫したサービスにより,トータルコストを最適化しつつ,プラントや設備の使用価値を維持・向上することができる。当社の考える火力発電プラント向け運転保守サービスのコンセプトを図1に示す。
発電プラントにかかわる運転保守サービスとして,運転開始後から始まる各種の保全を支える改良保全サービス,運転及び保守業務の代行サービス,最適保守・環境管理などの実行計画や解決策を提供するコンサルテーション,運転保守要員の育成や能力の維持向上を支援する教育訓練などがある。」(49頁右欄10行?50頁左欄4行)

(イ)「この装置を用いれば,図3に示すように,ネットワークやISDNなどの通信インフラを利用することにより,当社工場などの遠隔地から収集したデータを確認できる。これにより,当社エキスパートエンジニアによる最適なサポートを受けることができ,更に,ユーザー及びメーカー間でデータを共有することでスピーディな問題解決が可能である。
プラントシミュレーションツールや制御パラメータチューニングツールなどの各種解析ツールとの連係により,プラント機器の改善点把握と検証,制御回路改造時の事前シミュレーション確認,機器の経年変化に対応した運転制御パラメータの最適化などが行える。このように,この装置の有効活用によりユーザー満足度の高い予防保全サービスを提供することができる。」(51頁左欄22行?右欄4行)

(ウ)図3には、ユーザーである「発電所」から、「ネットワーク・公衆電話」を介して、「メーカー」へプラントデータを送信するプラントデータ収集システムのシステム構成図が記載されている。

ここで、上記(イ)中の「プラントシミュレーションツールや制御パラメータチューニングツールなどの各種解析ツールとの連係により」との記載から、引用例1の「火力発電プラント向け運転保守サービス」が何らかの計算機システムにより実現されていることは明らかである。

したがって、これらの記載事項によれば、引用例1には以下の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ネットワークを介してユーザーからメーカーに送信されたプラントデータをもとに、プラント機器の改善点把握と検証、制御回路改造時の事前シミュレーション確認、機器の経年変化に対応した運転制御パラメータの最適化などを行う計算機システムから構成される、火力発電プラント向け運転保守システム。」

4.対比
本願発明と引用例1発明を対比すると、以下の対応関係が認められる。
(1)引用例1発明の「ネットワーク」は本願発明の「計算機ネットワーク17」に相当するものである。
(2)引用例1発明の「ユーザー」は本願発明の「顧客側19」に相当するものである。
(3)引用例1発明の「メーカー」は本願発明の「サービス提供側14」に相当するものである。
(4)引用例1発明の「プラントデータ」は、引用例1の上記(イ)中の「プラント機器の改善点把握と検証,制御回路改造時の事前シミュレーション確認,機器の経年変化に対応した運転制御パラメータの最適化などが行える。」との記載から、プラント機器の運転データであることは明らかであるから、本願発明の「実機の運転データ」に相当するものである。
(5)引用例1発明の「プラント機器の改善点把握と検証、制御回路改造時の事前シミュレーション確認、機器の経年変化に対応した運転制御パラメータの最適化など」は本願発明の「診断支援」に相当するものである。
(6)引用例1発明の「火力発電プラント向け運転保守システム」は、上記(5)に記載したように診断支援を行うものであり、該診断支援は顧客支援の一部であるといえるから、引用例1発明も「顧客支援システム」であるといえる。

したがって、本願発明と引用例1発明の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「計算機ネットワークを介して顧客側からサービス提供側に送信された実機の運転データをもとに診断支援を行う計算機システムから構成される顧客支援システム」である点。
(相違点1)
本願発明の顧客支援システムは「業務従事者の技術を向上させるための」システムであって、「計算機ネットワーク17を介しサービス提供側14より顧客側19へ研修プログラム内容の紹介を行う計算機システム36」と、「上記研修プログラム内容に基づいて上記顧客側19のインストラクタに育成するためのインストラクタ研修設備37」と、「上記顧客側19の技術研修を計算機ネットワーク17を介して上記サービス提供側14から支援するインストラクタ用遠隔技術研修支援装置38」とを備えているのに対し、引用例1発明の顧客支援システムは「業務従事者の技術を向上させるための」システムではなく、該計算機システム、該インストラクタ研修設備、及び該インストラクタ用遠隔技術研修支援装置のいずれも備えていない点。
(相違点2)
本願発明は診断支援を行った結果を計算機ネットワークを介して上記顧客側に送信するが、引用例1発明は診断支援を行った結果を計算機ネットワークを介して上記顧客側に送信するものではない点。

5.判断
(相違点1)について
引用例1には以下の記載がある。
(エ)「3.7 教育訓練サービス
当社では,従来から国内外のユーザー向けに火力発電スクールを開講し,火力発電設備の設計・運用・保守などに関してユーザーの支援に努力してきた。また,発電所やユーザーの研修所に赴いて講習会を開催することも多い。最近,ユーザーからは,更に専門的な教育訓練を望む声がわりに多いので,当社が提供できる教育訓練サービスを見直している。今後は,当社施設での集合教育だけでなく,Web技術を利用してユーザーの席から専門的な知識の習得や訓練を行えるような形の遠隔教育も充実させたいと考えている。」(52頁左欄15?24行)

上記記載から、引用例1の顧客支援システム(火力発電プラント向け運転保守システム)に、ユーザーを教育するためのメーカー内の研修設備(当社施設)と、メーカーからネットワークを介してユーザーの技術研修(遠隔教育)を支援する遠隔技術研修支援装置とを設け、引用例1発明を業務従事者の技術を向上させるための顧客支援システムとすることは当業者が容易になし得たことである。
また、研修を修了したユーザーが自社にてインストラクタとなって当該研修内容を他のユーザーに指導するようなことは通常行われていることであるから、上記研修設備をユーザーを顧客側のインストラクタに育成するためのインストラクタ研修設備とし、上記遠隔技術研修支援装置をインストラクタ用遠隔技術研修支援装置とすることも同様に当業者が容易になし得たことである。

また、原査定の拒絶の理由に引用された「佐藤修,ネットラーニング 事例に学ぶ21世紀の教育,株式会社中央経済社,2001年1月25日発行,第1版,pp.77?97」には以下の記載がある。
(オ)「教育コースや教育機関の紹介・宣伝・受講生募集にインターネットホームページを使うことは,今日では当たり前に行われている。」(77頁16?17行)

(カ)「オンラインシラバスでは,科目ごとの教育内容や教育目標,教育計画を学部や担当教員のホームページに掲示する。受講生あるいはその候補はこれを見てその科目の内容や開講する日の勉強内容を事前に知ることができる。」(78頁16行?79頁3行)

上記記載から、ネットワークを介して教育機関が受講生あるいはその候補へ教育プログラム内容の紹介をホームページで行うことは周知技術であると認められ、一般にホームページは何らかの計算機システムで提供されるものであるから、引用例1発明において、ネットワークを介してメーカーがユーザーに遠隔教育を支援する装置を設ける際に、ネットワークを介してメーカーがユーザーへ教育プログラム内容の紹介を行う計算機システムを設けることも当業者が容易になし得たことである。

よって、引用例1の顧客支援システムに、「計算機ネットワークを介しサービス提供側より顧客側へ研修プログラム内容の紹介を行う計算機システム」と、「上記研修プログラム内容に基づいて上記顧客側のインストラクタに育成するためのインストラクタ研修設備」と、「上記顧客側の技術研修を計算機ネットワークを介して上記サービス提供側から支援するインストラクタ用遠隔技術研修支援装置」とを設け、引用例1発明を業務従事者の技術を向上させるための顧客支援システムとすることは引用例1の上記(エ)の記載、及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。

(相違点2)について
クライアント装置がサーバ装置にネットワークを介してデータを送信し、サーバ装置がそのデータを処理した結果を同じくネットワークを介してクライアント装置に送信することは一般的に行われている周知技術であり、引用例1発明は、ネットワークを介してユーザーからメーカーにプラントデータを送信し、メーカーが該プラントデータをもとに診断支援を行うものであるので、その診断支援の結果を同じくネットワークを介してユーザーに送信する構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-07 
結審通知日 2009-08-18 
審決日 2009-09-01 
出願番号 特願2001-242834(P2001-242834)
審決分類 P 1 8・ 1- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智康小山 和俊  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 池田 聡史
飯田 清司
発明の名称 顧客支援システム  
代理人 村上 啓吾  
代理人 竹中 岑生  
代理人 大岩 増雄  
代理人 村上 啓吾  
代理人 児玉 俊英  
代理人 大岩 増雄  
代理人 児玉 俊英  
代理人 竹中 岑生  

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