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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1205555
審判番号 不服2007-11264  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-19 
確定日 2009-10-15 
事件の表示 特願2001-315691「端子ユニット装置およびインターホン装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月25日出願公開、特開2003-125089〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成13年10月12日に出願したものであって,平成18年12月12日付けで拒絶の理由が通知され,平成19月3月12日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年4月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年5月21日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年5月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
本件補正は,出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1について,次のように補正することを含むものである。

(1)補正前
「信号線と電源用コードの各々を接続するための複数の接続端子を有する端子基板と,裏面側に前記端子基板を取り付け,表面側に前記接続端子に接続された信号線のコネクタおよび前記接続端子に接続された電源用コードのコネクタを突出させた壁掛金具と,を備えたことを特徴とする端子ユニット装置。」

(2)補正後
「壁間を経由して来る信号線と電源用コードの各々を接続するための複数の接続端子を有する端子基板と,裏面側に前記端子基板を取り付け,表面側に前記接続端子に接続された信号線のコネクタおよび前記接続端子に接続された電源用コードのコネクタを突出させた壁掛金具と,を備えており,端子基板が壁内に収納されることを特徴とする端子ユニット装置。」(当審注:アンダーラインは補正箇所を示す。)

2.新規事項の有無,補正の目的要件について
上記補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において,補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「信号線」,及び「端子基板」に関し,前記「信号線」が「壁間を経由して来る」と,また,前記「端子基板」が「壁内に収納される」と,限定することにより,特許請求の範囲を減縮するものであるから,特許法第17条の2第3項(新規事項),及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記1.(2)で認定したとおりである。

(2)引用例
A.拒絶査定の拒絶理由に引用され,本件出願前に公開された特開平4-357740号公報(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,マンション等の共同玄関に設置されて,来訪者が居住者の呼出しを行って通話することのできる機能を備えたロビーインターホンに関する。」(2ページ左欄16行?20行)
ロ.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,このような事情に鑑みてなされたもので,取付け施工が容易で,壁部より埋込みボックス内に信号線を引き込み内器ボックス内の回路基板などに接続させる場合にも,内器ボックス内に切り線が入り込むことがなく,しかも配線接続作業の簡単なロビーインターホンを提供することを目的としている。」(2ページ左欄39行?46行)
ハ.「【0006】
【実施例】以下,本発明の一実施例を図面とともに説明する。図1は本発明の要部である化粧パネルブロックと取付枠部材とを示したもの,図2は取付枠部材の構造を示した側面図である。これらの図に見るように,表パネル4と内器ブロック3とをネジ7で一体的に組付けられて化粧パネルブロック10が構成されており,該化粧パネルブロックの裏面,つまり内器ボックス3の囲壁3aに被せた裏板の開口6aからは先端にコネクタ9aを設けたフラットケーブル9が導出されており,壁面Wに取付けられた埋込みボックス1にネジ7で固着された取付枠材2の後方に設けた裏板2dには端子台2cを設け,この端子台2cには先端にコネクタ8aを設けたフラットケーブル8が接続されている。そして,この取付枠材2の端子台には,壁W内に取付けた埋込みボックス1内に導入された信号線や電源線(不図示)が接続されている。
【0007】(略)
【0008】このような本発明のロビーインターホンの分解斜視図を図3に示す。本発明のロビーインターホンは,この図に見るように,埋込みボックス1,取付枠部材2,内器ボックス3,表パネル4より構成されている。ここに,埋込ボックス1は,・・・(中略)上面には,壁内に配線された信号線,電源線を挿通する穴径の異なる複数の入線孔1bが形成され,・・・(中略)・・・。また,取付枠部材2は,内器ボックス3のフランジ部3bに合わせた矩形の金属枠フレーム2bの後方に端子台2cを設けた金属横枠フレーム2dを一体に組み付けたフレーム体を構成しており,この端子台2cには,先端にコネクタ8aを設けたフラットケーブルなどの信号線8が導出している。そして,この端子台2cには,埋込みボックス1の入線孔1bより埋込みボックス1内に導出された信号線が接続される。また,この取付枠部材2の金属枠フレーム2bの上下枠片,左右の両枠片には,内器ボックス3のフランジ部3b側に設けた複数の係合孔3fに嵌入係合される係合突片2fが打抜加工によって切起し形成されており,その下枠片には,内器ボックス3のフランジ部3bの下片側のコーナ部に形成された1組の切欠部3cを受け止める押上片2aを折曲形成している。・・・(中略)・・・。
【0009】一方,内器ボックス3は・・・(中略)・・・裏面を開口させた囲壁3aを周設したボックス体を構成している。そして,内器ボックス3のフランジ部3bの四隅には切欠部3cを設けるとともに,その上,下片,左,右両側片には,後述する取付枠部材2の係合突片2fに対応させた係合孔3fを形成しており・・・(中略)・・・。また,このような内器ブロック3の囲壁3a内には,テンキー,ドアホン,その他の回路基板などが実装されており,その背面には裏板6が被せられ,裏板6の一部に形成した開口6aからは,先端にコネクタ9aを設けたフラットケーブルなどの信号線9が導出されている。・・・(中略)・・・。」(2ページ左欄29行?3ページ右欄4行)
ニ.「【0013】
【発明の効果】本発明のロビーインターホンによれば,内器ブロック側での配線作業と,埋込みボックス1内に導入された取付枠部材の端子台側での配線作業とを予め別に行っておけるので,このような配線作業を双方で完了させておけば,化粧パネルブロックの裏面より導出した信号線の先端に設けたコネクタを,壁面の埋込みボックスに取付けた取付枠部材の後方に設けた端子台より導出させた信号線の先端に設けたコネクタに接続するだけで,ロビーインターホンに必要な配線作業を簡単に行うことができる。・・・(中略)・・・。」(4ページ左欄25行?右欄7行)

上記摘記事項,及び当該技術分野の技術常識を加味すれば,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。
「壁面Wに取付けられる埋込ボックス1に取り付けられて,表パネル4と内器ボックス3とからなる化粧パネルブロック10に係合により組み付けられるようにしたロビーインターホンにおける端子台付き取付枠部材において,
端子台2cを取付枠部材2の後方に設けられた裏板2dに取付け,該端子台2cに,前記埋込ボックス1の入線孔1bから壁内に配線された信号線や電源線を導入して接続する共に,先端にコネクタ8aを設けたフラットケーブルなどの信号線8を接続し,前記コネクタ8aと前記内器ボックス3から導出したコネクタ9aとを接続するようにしたロビーインターホンにおける端子台付き取付枠部材。」

(3)対比・判断
引用発明と補正後の発明とを対比すると,
イ.引用発明は,「端子台2cを取付枠部材2の後方に設けられた裏板2dに取付け,該端子台2cに,前記埋込ボックス1の入線孔1bから壁内に配線された信号線や電源線を導入して接続する共に,先端にコネクタ8aを設けたフラットケーブルなどの信号線8を接続し」た構成を備えている。ここで,前記「電源線」は「電源コード」といえ,また,前記「信号線」や「電源線」は,「壁内に配線され」るものであるから,「壁間を経由して来る」ことは明らかであり,また,前記「端子台」は,「信号線」や「電源線」を接続することから,「複数の接続端子を有する」ことも明らかである。更に,引用発明は,「壁面Wに取付けられる埋込ボックス1」に「取付枠部材2」が取付けられ,「端子台2cを取付枠部材2の後方に設けられた裏板2dに取付け」ていることから,埋込ボックス1に取付枠部材2を取付けた状態では「端子台2cが壁内に収納される」ことも明らかである。
以上によれば,端子部材が「端子基板」であるか「端子台」であるかの点を除き,「壁間を経由して来る信号線と電源用コードの各々を接続するための複数の接続端子を有する端子部材」を備え,「端子部材が壁内に収納される」点で補正後の発明と一致する。
ロ.引用発明は,「端子台2cを取付枠部材2の後方に設けられた裏板2dに取付け,該端子台2cに,前記埋込ボックス1の入線孔1bから壁内に配線された信号線や電源線を導入して接続する共に,先端にコネクタ8aを設けたフラットケーブルなどの信号線8を接続し」ている。ここで,端子台2cは,「取付枠部材2の後方に設けられた裏板2dに」取り付けられることからみて,その取付位置は,取付枠部材2の「裏面側」であることが明らかであり,また,前記「取付枠部材」は,「壁面Wに・・・取り付けられて,・・・化粧パネルブロック10に,係合により組み付けられ」ており,壁掛金具といえるから,コネクタとして信号線のコネクタに加え,電源用コードのコネクタを備える点,及びこれらのコネクタを壁掛金具の表面側に突出させている点を除き「裏面側に前記端子部材を取り付け,前記接続端子に接続された信号線のコネクタを設けた壁掛金具」を備える点で補正後の発明と一致する。
ハ.引用発明の「端子台付き取付枠部材」は,端子ユニット装置といえるから,「端子ユニット装置」である点で補正後の発明と一致する。

したがって,補正後の発明と引用発明は,以下の点で一致し,相違する。

(一致点)
「壁間を経由して来る信号線と電源用コードの各々を接続するための複数の接続端子を有する端子部材と,裏面側に前記端子基板を取り付け,前記接続端子に接続された信号線のコネクタを設けた壁掛金具と,を備えており,端子部材が壁内に収納される端子ユニット装置。」

(相違点1)
補正後の発明は,端子部材が「端子基板」であるのに対して,引用発明は,「端子台」である点。
(相違点2)
補正後の発明は,「前記接続端子に接続された電源用コードのコネクタ」備えるのに対して,引用発明は,前記接続端子に接続された信号線のコネクタを備えるものの,電源コードのコネクタについては明記しない点。すなわち,電源線を接続した接続端子と内器ボックス側の電源線との間の接続手段について明示しない点。
(相違点3)
補正後の発明は,信号線のコネクタ,及び電源用コードのコネクタを壁掛金具の「表面側」に「突出させ」ているのに対して,引用発明は,この点について明示しない点。

そこで,まず,相違点1について検討する。
信号線や電源用コードを接続するための複数の接続端子を有する端子基板は,例示するまでもなく周知であるから,引用発明において,信号線や電源線(電源用コード)を接続するための複数の接続端子を有する端子台を「端子基板」で構成することは,当業者が容易になし得ることである。
次に,相違点2について検討する。
電源線(電源用コード)を接続するコネクタは,例示するまでもなく周知であるから,引用発明において,電源線を接続した接続端子と内器ボックス側の電源線との間を電源コードのコネクタで行うこと,すなわち,「前記接続端子に接続された電源用コードのコネクタ」を備えるものとすることは,当業者が容易になし得ることである。
次に,相違点3について検討する。
引用発明において,信号線のコネクタ8aを取付枠部材2の表面に突出させることは,コネクタ8aと内器ボックス3から導出したコネクタ9aとの接続作業を容易に行うために当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。また,これは,コネクタとして,電源用コードのコネクタを備えるものとした場合も同様である。したがって,引用発明において,信号線のコネクタ,及び電源用コードのコネクタを壁掛金具の「表面側」に「突出させ」た構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。

そして,補正後の発明の効果は,引用発明,及び周知技術から当業者が容易に予測し得るものであって,格別のものではない。

(4)まとめ
以上のとおり,補正後の発明は,引用例に記載された発明(引用発明),及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成19年5月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,出願当初の明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(第2.1.(1)補正前,参照)と認められる。

2.引用発明
引用発明は,上記第2.3.(2)で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで,本願発明と引用発明とを対比すると,本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記第2.3.(3)で検討したとおり,引用発明,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明(引用発明),及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-11 
結審通知日 2009-08-18 
審決日 2009-09-03 
出願番号 特願2001-315691(P2001-315691)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 角張 亜希子戸次 一夫  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 土居 仁士
新川 圭二
発明の名称 端子ユニット装置およびインターホン装置  
代理人 森 厚夫  
代理人 西川 惠清  

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