• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1205585
審判番号 不服2007-35257  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-28 
確定日 2009-10-15 
事件の表示 特願2004-355404「インクジェット記録用紙及びその製造方法、並びにインクジェット記録方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月21日出願公開、特開2005-193660〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年12月8日(特許法第41条に基づく優先権主張 平成15年12月8日)の出願であって、平成19年9月6日付で通知された拒絶の理由に対して、同年11月8日付で手続補正書が提出されたが、同年11月29日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成20年1月28日付で手続補正がなされたものであって、その後、平成21年4月14日付で、当審の審尋に対する回答書が提出されたものである。

第2.平成20年1月28日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年1月28日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の概要
平成20年1月28日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を以下のとおりとする補正事項を含むものである。

「主として極性溶剤と非極性溶剤の両方を含む溶剤と分散剤と顔料とからなる非水系インクを用いて記録を行うためのインクジェット記録用紙であって、ロゼッタ型軽質炭酸カルシウムを主に含む填料とパルプとを主成分とし、ロジン系サイズ剤が内添され、かつ表面にカチオン系又はアニオン系高分子化合物がサイズ剤として0.25?0.6g/m^(2)含有され、ステキヒトサイズ度が5?80秒であり、かつJIS-P8251に規定された灰分が20?40%である普通紙タイプのインクジェット記録用紙。」

2.補正の適否の判断
上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「溶剤」を「極性溶剤と非極性溶剤の両方を含む溶剤」に限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

3.引用刊行物に記載された発明
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布されたことが明らかな引用文献1(特開2003-127522号公報)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。)

a.「【請求項1】 色材顔料、高沸点溶剤および樹脂分散物を含有する非水系顔料インクを用いてインクジェット記録するインクジェット記録媒体において、該インクジェット記録媒体が主としてパルプと填料からなり、該高沸点溶剤を用いた着色液によるブリストー吸収係数が50ml/m^(2)・sec^(1/2)以上であることを特徴とするインクジェット記録媒体。」

b.「【請求項2】 色材顔料、高沸点溶剤および樹脂分散物を含有する非水系顔料インクを用いてインクジェット記録するインクジェット記録媒体において、該インクジェット記録媒体が主としてパルプと填料からなり、該高沸点溶剤を用いた着色液によるブリストー吸収係数が20ml/m^(2)・sec^(1/2)以上50ml/m^(2)・sec^(1/2)未満、かつ、ベック平滑度が100?500秒であることを特徴とするインクジェット記録媒体。」

c.「【請求項5】 該填料が、焼成カオリン、軽質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムの群から選ばれた少なくとも1種であり、かつ、該インクジェット記録媒体に含まれる該填料の合計含有量が、JIS P8128に規定される灰分として、5質量%以上35質量%以下であることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載のインクジェット記録媒体。」

d.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェット記録媒体に関するものである。より詳しくは、色材顔料、高沸点溶剤および樹脂分散物を含有する非水系顔料インクを用いたインクジェット記録に用いる、記録面に顔料を含有する塗工層を有していない、いわゆる普通紙タイプのインクジェット記録媒体に関するものである。」

e.「【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、非水系顔料インクを用いたインクジェット記録に用いる、記録面に顔料を含有する塗工層を有していない、いわゆる普通紙タイプのインクジェット記録媒体において、記録画像の濃度、精細性、両面印字性、着色剤の定着性などの点で、極めて優れたインクジェット記録媒体を提供することにある。」

f.「【0023】本発明において用いられる非水系顔料インクは、色材顔料、高沸点溶剤、樹脂分散物を含有し、必要に応じて、分散剤、浸透剤、低沸点溶剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有することができる。」

g.「【0028】高沸点溶剤としては、脂肪族炭化水素系溶剤、カルビトール系溶剤、セロソルブ系溶剤、高級脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。なかでも、流動パラフィン、脂肪族炭化水素系溶剤は、臭気が少ないため好適に用いられる。
【0029】脂肪族炭化水素系溶剤としては、日本石油製IPソルベント、シェル化学製シェルゾールD40、シェルゾールD70、シェルゾール70、シェルゾール71、エクソン化学製アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD30、エクソールD40、エクソールD80、エクソールD110、エクソールD130、エクソールD140、エクソールDSP100/140等が挙げられる。
【0030】(省略)
【0031】これらの溶剤は、単独で用いる事ができるが、粘度の調整等、記録媒体へのしみ込みの調整、印字ヘッド及びプリンターのインク接液部分との濡れ性等を調整するため、脂肪族炭化水素系溶剤と極性溶剤を併用する方法を用いてもよい。
【0032】極性有機溶剤としては、例えばアルコール、特に長鎖アルコール、グリコール、ポリグリコール、グリコール及びポリグリコールのエステル、エーテル、特にグリコール及びポリグリコールのモノ-及びジ-アルキルエーテル、ケトン等が挙げられる。また、ジカルボン酸のエステル、例えばセバシン酸ジオクチルエステル等が挙げられる。」

h.「【0043】本発明の非水系顔料インクにおける分散剤としては、水酸基含有カルボンエステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテル-エステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等を用いる事が出来る。」

i.「【0050】焼成カオリン、軽質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムの群から選ばれた少なくとも1種を填料として使用することにより、インクジェット記録媒体のインク溶媒に対する吸収性が良好で吸収容量が大きくなるため、着色剤が記録媒体に深く浸透せず、画像の濃度や精細性を改良する事ができる。焼成カオリン、軽質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムの群から選ばれた少なくとも1種がなぜ画像の濃度や精細性を改良することができるかは定かではないが、これらの填料が非水系インクの溶媒に対して極めて親和力が強く、浸透してきたこれら溶媒を填料表面に吸着、保持する能力が通常の支持体に使用されている填料であるタルク、重質炭酸カルシウム等より優れている為ではないかと考えられる。」

j.「【0053】一般に軽質炭酸カルシウムは、一次粒子が紡錘状、針状、柱状或いは局部が円みを帯びた立方体又は直方体等の形状をしており、その一次粒子径は0.05?1.0μm程度のものである。そして、通常は、このように微細な軽質炭酸カルシウムの一次粒子は、複数個乃至多数個が結合した凝集体、所謂二次粒子を形成していることが多い。」

k.「【0056】記録媒体中の焼成カオリン、軽質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムの含有量としては、JIS P8128に規定される灰分として、5質量%以上35質量%以下であることが好ましい。5質量%未満の場合にはインク溶媒吸収に対する効果が十分に得られず、一方、35質量%を越えると、記録媒体の紙層強度が極端に悪くなり、印字作業性が悪化する。これらの填料は一種でも或いは二種以上を併用しても差し支えない。二種以上併用する場合は、合計の含有量が上記灰分の範囲になれば良い。・・・JIS P8128に規定される灰分とは、炭酸カルシウムを含有しない場合は900℃、炭酸カルシウムを含有する場合は550℃で灰化した灰分を言う。
【0057】また、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、通常抄紙で添加される内添サイズ剤、紙力増強剤等を添加することが出来る。内添サイズ剤としては、中性抄紙に用いられる中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー、石油樹脂系サイズ剤などが使用できるが、本発明では、耐裏抜け対策として中性ロジンサイズ剤を用いることが望ましい。」

l.「【0060】本発明の抄紙方法において、抄紙機は・・・適宜使用できる。また抄紙の途中で、コンベンショナルサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、フィルムトランスファーサイズプレス等によるオンマシンで各種樹脂、表面サイズ剤等を付与することも出来る。
【0061】サイズプレスで付与される樹脂としては、例えば酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、自製変性澱粉、カチオン化澱粉または各種変性澱粉、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ハイドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコールまたはそれらの誘導体などを単独或いは併用して使用することができる。
【0062】また、水性インクの定着剤または耐水化剤として使用されることの多い水溶性カチオン性樹脂は、非水系インクを用いるインクジェット記録媒体の場合は、定着効果がないばかりか、むしろインク溶剤の浸透を助長するような働きもあり、裏抜けを悪化させる為、含有することは好ましくない場合がある。
【0063】また、表面サイズ剤は、非水系インクの浸透性をコントロールするため、適宜用いられるが、その主成分は例えばスチレン/アクリル酸系共重合体、スチレン/メタアクリル酸系共重合体、アクリロニトリル/ビニルホルマール/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸系共重合体、オレフィン/マレイン酸系共重合体、AKD系、ロジン系などの表面サイズ剤などが挙げられる。」

m.「【0064】本発明でいう、ブリストー吸収係数とは、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51、紙及び板紙の液体吸収性試験方法(ブリストー法)に規定される吸収係数Kaを言う。詳しくは「短時間での液体浸透量測定法-Bristow法について-」(紙パ技協紙41,8,P33)に記載されている。本発明では試験液体として、非水系溶剤着色液を使用した。該試験液体は、高沸点溶剤80部、オレイルアルコール20部、染料(Fat Red 7B)0.1部から調製された非水系顔料インクに使用される溶剤に類似の非水系着色液である。染料は試験結果を目認するために添加している。この測定法によるブリストー吸収係数を調べることにより、インクジェット記録媒体における非水系顔料インクに使用される溶剤に対する吸収挙動を類推することができる。
【0065】(省略)
【0066】ブリストー吸収係数が50ml/m^(2)・sec^(1/2)以上である本発明のインクジェット記録媒体に前記非水系顔料インクを用いてインクジェット記録を行った場合、インク中の溶媒は速やかに記録媒体内に吸収されるが、色材顔料は、樹脂分散物と共にあるため記録媒体内深くまでは吸収されず記録媒体表面近傍に存在する状態となり、樹脂分散物が乾燥する段階で色材顔料と共に固着するため、色材顔料の定着性が高くなると共に、濃度、精細性が高い記録画像が得られるものと考えられる。
【0067】また、本発明のインクジェット記録媒体は、前記測定法によって測定したブリストー吸収係数が20ml/m^(2)・sec^(1/2)以上50ml/m^(2)・sec^(1/2)未満、かつ、ベック平滑度が100?500秒であることが好ましい。
【0068】(省略)
【0069】ブリストー吸収係数が20ml/m^(2)・sec^(1/2)以上50ml/m^(2)・sec^(1/2)未満かつベック平滑度が100?500秒である本発明のインクジェット記録媒体に前記非水系顔料インクを用いてインクジェット記録を行った場合、インク中の溶媒は前記のインクジェット記録の場合ほどは速やかには記録媒体内に吸収されないが、記録媒体の高い表面平滑のため、樹脂分散物と共にある色材顔料はインク中の溶媒と分離し記録媒体内深くまでは吸収されず、記録媒体表面近傍に存在する状態となり、樹脂分散物が乾燥する段階で色材顔料と共に固着するため、色材顔料の定着性が高くなると共に、濃度、精細性が高い記録画像が得られるものと考えられる。
【0070】インクジェット記録媒体のブリストー吸収係数が20ml/m^(2)・sec^(1/2)未満であると、インク溶媒の吸収速度が不足し、本発明の所望の効果が得られず、また、ベック平滑度が500秒より大きいと、インクジェット記録媒体内部が潰れすぎるため、インク溶媒の吸収容量が不足し、本発明の所望の効果が得られない。」

n.「【0071】
【実施例】以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例中、特に断らない限り、部、%はそれぞれ質量部、質量%を表すものとする。
【0072】<樹脂分散物の合成>
樹脂分散物例1
(省略)
【0074】樹脂分散物例2
(省略)
【0075】樹脂分散物例3
(省略)
【0076】?【0077】(省略)
【0078】<非水系顔料インクの調整>
インク例1
サンドミルに、高沸点溶剤(エクソールD110)50部、カーボンブラック30部、ポリエステルアミン系分散剤20部を入れて分散を3時間行った。
【0079】容器に、上記分散液30部、エクソールD110を33部、オレイルアルコール12部を投入し、攪拌機で30分間混合した。・・・さらに、樹脂分散物例1を25部投入し30分間混合して、インク例1の非水系顔料インクを得た。
【0080】(省略)
【0081】インク例2
樹脂分散物例1の代わりに樹脂分散物例2を用いた他は、インク1と同様に調整を行い、インク例2の非水系顔料インクを得た。
【0082】インク例3
樹脂分散物例1の代わりに樹脂分散物例3を用いた他は、インク1と同様に調整を行い、インク例3の非水系顔料インクを得た。
【0083】インク例4
樹脂分散物例1の代わりにIPソルベント25部を用いた他は、インク1と同様に調整を行い、インク例4の非水系顔料インクを得た。
【0084】<インクジェット記録媒体の作製>
記録媒体例1
LBKP(濾水度450ml csf)95部、NBKP(濾水度500ml csf)5部、填料としてタルク(兵庫クレー製)40部、両性澱粉(日本NSC製Cato3210)1.0部、中性ロジンサイズ剤(ハリマ化成製NeuSize M-10)0.3部、歩留まり向上剤(ハイモ製NR-11LS)0.02部を配合し、0.3%スラリーとした。これを長網抄紙機で抄造し、サイズプレスで、酸化澱粉(日本食品加工製MS-3800)を乾燥量で1.2g/m^(2)付着させ、3ニップのマシンカレンダー処理を行って、坪量80g/m^(2)、ブリストー吸収係数61ml/m^(2)・sec^(1/2)、ベック平滑度45秒、灰分33.5%の、記録媒体例1のインクジェット記録媒体を作製した。
【0085】記録媒体例2?21
下記表2に示す填料(種類及び量)を用いた他は記録媒体例1と同様にして、坪量80g/m^(2)で、表2に示すブリストー吸収係数、ベック平滑度および灰分を有するインクジェット記録媒体を作製した。なお、記録媒体例3?5、9、13、17、21は、ベック平滑度の調整のため更にスーパーカレンダー処理を行った。
【0086】
【表2】

【0087】<略号等の説明>
タルク :タルク(兵庫クレー製)
焼成カオリン:焼成カオリン(エンゲルハード製アンシレックス)
軽質炭カル :軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業製タマパ-ルTP121)水酸化アルミ:水酸化アルミニウム(昭和電工製ハイジライトH-42)
水酸化マグネ:水酸化マグネシウム(協和化学工業製キスマ5A)」

o.「【0091】実施例1?45、比較例1?39
表3?7に示すインクと記録媒体の組み合わせで、以下に示す評価方法で評価を行った。結果を表8?12に示す。
【0092】【表3】?【0096】【表7】(省略)」

ここで、省略した、表3?7、特に表5により、実施例19?21、比較例19は、は、インクと記録媒体の組み合わせが、それぞれ、インク例1?4と記録媒体例10とであることがわかる。

p.「【0097】評価方法
<濃度>記録媒体例のインクジェット記録媒体にインク例のインクを滴下し、No.4のワイヤーバーを用いてインク滴を直ちに展開し、室温中で1時間放置して乾燥させた。その後、インク展開部の中心付近の光学濃度を光学濃度計(マクベス製RD-919)で測定した。この数値が大きいほど濃度が高く、濃度が1.30以上であれば良好であり、1.40以上であれば極めて良好である。
【0098】<裏面濃度>
<濃度>評価のインク展開部の中心付近を、記録媒体の裏面から光学濃度を光学濃度計(マクベス製RD-919)で測定した。この数値が小さいほど両面印字性が高く、裏面濃度が0.30以下であれば良好である。
【0099】<精細性>記録媒体例のインクジェット記録媒体を水平に保ち、内径0.15mmの針を備えた内容量1μLのマイクロシリンジ(ハミルトン製7101)を用いてインク例のインク1滴を滴下して、室温中で1時間放置して乾燥させた。インク滴下部の表面を、顕微鏡(100倍)で観察した画像を、LUZEX5000型画像解析装置(ニレコ製)で解析処理し、下記数式1で計算される形状係数を求めた。この形状係数が小さい(1に近い)値であるほど真円性が高いことを意味しており、プリンターで印字した際にボケや抜けのない高精細の画像が得られる。
【0100】<インク吸収速度>記録媒体例のインクジェット記録媒体を60゜に傾け、上記と同じマイクロシリンジを用いてインク例のインク1滴を滴下した。インク滴下部の傾斜方向の最大径および水平方向の最大径を測定し、下記数式2で示される最大径比を求めた。この値が小さい(1に近い)ほど、インクが記録媒体表面に接触してから吸収されるまでの間に記録媒体表面を流下しなかったこと、すなわちインクの吸収が速かったことを意味しており、プリンターで印字した際にムラのない画像が得られる。
【0101】<定着性>濃度測定に用いたインク展開部の表面を人差し指で片方向に強く5回こすり、インク展開部の様子を評価した。
○ :インク展開部に全く変化が無かった。
△ :インク展開部の濃度に明らかな変化はなかったが、着色剤が元々の展開部の周囲に拡がった。
× :着色剤が拡がり、元々の展開部の濃度が低下した。
良好な定着性を示すのは○であり、△でも実用上問題は無い。
【0102】
【数1】
形状係数=(インク滴下部の輪郭長)^(2)/(4π×インク滴下部の面積)
・・・(数式1)
【0103】
【数2】
最大径比=傾斜方向の最大径/水平方向の最大径 ・・・(数式2)
【0104】
【表8】(省略)
【0105】
【表9】(省略)
【0106】
【表10】

【0107】
【表11】(省略)
【0108】
【表12】(省略)
【0109】実施例1?45と比較例1?39を比較すれば明らかであるように、色材顔料、高沸点溶剤および樹脂分散物として、少なくとも前記一般式(1)で示されるモノマーを重合して得られる、該高沸点溶剤に可溶な重合体の存在下で、該溶剤に可溶で重合により該溶剤に不溶性の重合体を形成するモノマーを重合して得られる樹脂分散物、あるいは、少なくとも前記一般式(1)で示されるモノマーと、前記一般式(2)で示されるモノマーを重合して得られる、該高沸点溶剤に可溶な共重合体の存在下で、該溶剤に可溶で重合により該溶剤に不溶性の重合体を形成するモノマーを重合して得られる樹脂xs分散物を含有する非水系顔料インクを用いてインクジェット記録するインクジェット記録媒体において、該インクジェット記録媒体が主としてパルプと填料からなり、該高沸点溶剤を用いた着色液によるブリストー吸収係数が50ml/m^(2)・sec^(1/2)以上であること、あるいは、高沸点溶剤を用いた着色液によるブリストー吸収係数が20ml/m^(2)・sec^(1/2)以上50ml/m^(2)・sec^(1/2)未満、かつ、ベック平滑度が100?500秒であることにより、画像記録の濃度、精細性、両面印字性、着色剤の定着性のいずれも良好であることがわかる。
【0110】また、実施例1?9と実施例10?45を比較すれば明らかであるように、本発明のインクジェット記録媒体に含まれる填料が、焼成カオリン、軽質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムの群から選ばれた少なくとも1種であり、かつ、該インクジェット記録媒体に含まれる該填料の合計含有量が、JIS P8128に規定される灰分として、5質量%以上35質量%以下であることにより、記録画像の濃度、精細性、両面印字性、着色剤の定着性のいずれもが、更に良好であることがわかる。」

これら記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「色材顔料、脂肪族炭化水素系溶剤と極性溶剤を併用した高沸点溶剤および樹脂分散物、分散剤を含有する非水系インクを用いてインクジェットを用いてインクジェット記録するインクジェット記録媒体において、該インクジェット記録媒体が、主としてパルプと填料からなり、該高沸点溶剤を用いた着色液によるブリストー吸収係数が50ml/m^(2)・sec^(1/2)以上であるか、該高沸点溶剤を用いた着色液によるブリストー吸収係数が20ml/m^(2)・sec^(1/2)以上50ml/m^(2)・sec^(1/2)未満、かつ、ベック平滑度が100?500秒であり、該填料が軽質炭酸カルシウムであり、合計含有量が、JIS P8128に規定される灰分として、5質量%以上35質量%以下であり、内添サイズ剤として中性ロジンサイズ剤を用い、サイズプレスで樹脂を付与した、普通紙タイプのインクジェット記録媒体。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布されたことが明らかな引用文献2(特開昭62-206100号公報)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。)

「内添填料としては各種の無機、有機填料を用いることができるが、インクジェット記録用紙に対しては・・・二次粒子の形状が複雑で比表面積の大きいアルバカー5970(ALBACAR^(R)5970、ファイザー社製)がさらに好適である。」(第3頁右上欄第8?18行)(ただし、上記「^(R)」は、原文では丸囲いされている。当審注)

(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布されたことが明らかな引用文献3(特開2000-264630号公報)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。)

「【0010】
【発明が解決しようとする課題】以上のような状況に鑑み、苛性化工程を利用により、抄紙時には、ウェットエンドでの歩留まりが良く、ワイヤ磨耗性に優れ、またこれを紙の製造に用いた場合には、不透明度が高く、印刷品質等の優れた上質紙や塗工紙を提供するという長所を生かしたまま、特に白液分離性及び洗浄性が大幅に改善された安価なアラゴナイト系イガグリ状炭酸カルシウムを得ることを本発明の課題とした。」

(4)引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布されたことが明らかな引用文献4(特開2002-284522号公報)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。)

「【0011】
【発明が解決しようとする課題】以上のような状況に鑑み、苛性化工程を利用した製紙用填料、及び塗工顔料として有用なアラゴナイト系炭酸カルシウムを製造する方法であって、紙の製造に用いた場合に不透明度等が更に良好となる範囲の短径を有する、針状又はイガグリ状アラゴナイト系炭酸カルシウムを製造する方法の提供を本発明の課題とした。」

4.対比、判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
・引用発明の「色材顔料」、「脂肪族炭化水素系溶剤」、「インクジェット記録媒体」、「内添サイズ剤として中性ロジンサイズ剤を用い」は、それぞれ、本願補正発明の「顔料」、「非極性溶剤」、「インクジェット記録用紙」、「ロジン系サイズ剤が内添され」に相当する。
・引用発明の「填料が軽質炭酸カルシウム」であることと、本願補正発明の「ロゼッタ型軽質炭酸カルシウムを主に含む填料」とは、「軽質炭酸カルシウムを主に含む填料」である点で共通する。
・引用発明の「サイズプレスで樹脂を付与した」点と、「表面にカチオン系又はアニオン系高分子化合物がサイズ剤として0.25?0.6g/m^(2)含有され」る点とは、「表面に高分子化合物が含有され」る点で共通する。
・引用発明の「高沸点溶剤を用いた着色液によるブリストー吸収係数が50ml/m^(2)・sec^(1/2)以上であるか、該高沸点溶剤を用いた着色液によるブリストー吸収係数が20ml/m^(2)・sec^(1/2)以上50ml/m^(2)・sec^(1/2)未満、かつ、ベック平滑度が100?500秒であり」と、本願補正発明の「ステキヒトサイズ度が5?80秒であり」とは、ともに、液体吸収性に関する指標の範囲を設定しているから、「適宜の液体吸収性」を有する点で共通する。
・引用発明の「合計含有量は、JIS P8128に規定される灰分として、5質量%以上35質量%以下」である点は、本願補正発明の「JIS-P8251に規定された灰分が20?40%である」ことと、「所定の灰分」を有する点で共通する。

こうしたことから、本願補正発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「極性溶剤と非極性溶剤の両方を含む溶剤と分散剤と顔料とからなる非水系インクを用いて記録を行うためのインクジェット記録用紙であって、軽質炭酸カルシウムを主に含む填料とパルプとを主成分とし、ロジン系サイズ剤が内添され、かつ表面に高分子化合物が含有され、適宜の液体吸収性を有し、所定の灰分を有する、普通紙タイプのインクジェット記録用紙。」

[相違点1]「非水系インク」に関して、
本願補正発明は、「主として極性溶剤と非極性溶剤の両方を含む溶剤と分散剤と顔料とからなる非水系インク」であって、「樹脂分散物」を成分とする規定がないのに対し、
引用発明は、「樹脂分散物」を必須成分とする点。

[相違点2]填料の主成分としての「軽質炭酸カルシウム」が、
本願補正発明は、「ロゼッタ型軽質炭酸カルシウム」であるのに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

[相違点3]「表面に高分子化合物が含有され」る点に関し、
本願補正発明が、「カチオン系又はアニオン系高分子化合物がサイズ剤として0.25?0.6g/m^(2)含有され」ることを特定しているのに対し、
引用発明は、そのような特定がなく、サイズプレスで樹脂が付与されている点。

[相違点4]「適宜の液体吸収性」に関して、
本願補正発明においては、「ステキヒトサイズ度が5?80秒」に特定されているのに対し、
引用発明では、「高沸点溶剤を用いた着色液によるブリストー吸収係数が50ml/m^(2)・sec^(1/2)以上であるか、高沸点溶剤を用いた着色液によるブリストー吸収係数が20ml/m^(2)・sec^(1/2)以上50ml/m^(2)・sec^(1/2)未満、かつ、ベック平滑度が100?500秒であり」、ステキヒトサイズ度に関して特に記載がない点。

[相違点5]「所定の灰分」に関して、
本願補正発明では、「JIS-P8251に規定された灰分が20?40%」であるのに対して、
引用発明では、「JIS P8128に規定される灰分として、5質量%以上35質量%以下」である点。

以下、相違点1?5について検討する。

(相違点1について)
本願補正発明では、例えば、明細書段落【0050】に、「本発明に用いられる非水系インクは、所定の樹脂組成物を含まない。この樹脂組成物は、例えば、特開2003-127521号公報、・・・・ものである。」として、「樹脂分散物を含まない」と記載している。
しかしながら、本願補正発明にある「主として極性溶剤と非極性溶剤の両方を含む溶剤と分散剤と顔料とからなる非水系インク」の定義から、「樹脂分散物を含まない」ことを意味すると考えることはできない。
特に、同じ段落【0050】には、「なお、上記した色材顔料との固着、定着機能のない樹脂であって、通常の分散剤その他の添加剤として使用する樹脂であれば、本発明に用いるインクに含んでいてもよい。」とあり、特定の一部の「樹脂分散物」のみを含まず、「通常の」樹脂は含んでもよいと解釈できる根拠はない。
このように、本願補正発明の記載からみて、「樹脂分散物」を含まない点が本願補正発明の構成であるとすることはできず、[相違点1]は実質的には相違点ではない。

上記のとおりではあるが、本願明細書には、一応差違として認識する記載があるので、一応相違点としても検討する。

まず、本願補正発明において、インクの構成は、用途を規定するものの、「普通紙タイプのインクジェット記録用紙」の構成を規定するものではない。
また、引用発明において、比較例の位置づけであるとはいえ、「樹脂分散物」を含まない、本願補正発明の非水系インクを用いることも記載されており、「裏面濃度」は大きいものの、ある程度の画像濃度を得ている。
そして、「樹脂分散物」を含まない、「主として極性溶剤と非極性溶剤の両方を含む溶剤と分散剤と顔料とからなる非水系インク」は、例えば、前置報告書に記載の文献2003-291501号公報(【0023】【0037】)、本願明細書の背景技術の【特許文献3】特開2002-292994号公報(【0036】【0049】)に記載されている、本願優先日に周知のものである。
よって、引用発明において、「樹脂分散物」を含まない、「主として極性溶剤と非極性溶剤の両方を含む溶剤と分散剤と顔料とからなる非水系インク」を用いることは適宜なしうることである。

(相違点2について)
引用発明の軽質炭酸カルシウムは、実施例19から21等に本願比較例使用の軽質炭酸カルシウムが用いられているにすぎないが、引用文献1(摘記事項j)には、「一次粒子が紡錘状・・・等の形状」、「通常はこのように微細な・・・」とあり、「紡錘形状の軽質炭酸カルシウムの一次粒子が放射状に凝集してロゼッタ型の2次粒子を形成したもの」である本願補正発明のロゼッタ型軽質炭酸カルシウムをも包含するものである。
そして、紙用の填料として、ロゼッタ型炭酸カルシウムは周知であり、例えば、水系インク用であるがインクジェット記録用紙の填料として好適であること、刊行物3、4には、製紙用填料であって、不透明性に優れることが記載されている。
よって、刊行物2?4記載の技術的事項を勘案すれば、引用発明において、裏面濃度を低下させるべく不透明性を向上させるため、軽質炭酸カルシウムとして、「ロゼッタ型軽質炭酸カルシウム」を採用することは当業者が容易に想到しうることである。

そして、本願比較例において、ロゼッタ型ではない軽質炭酸カルシウムを用いたものは、ステキヒトサイズ度の小さいため印字濃度が不十分であるもの(比較例1)、灰分が小さいため、裏抜防止ができないもの、灰分が多すぎるため、腰が弱くプリンターの通紙が不能となり、評価ができないもののみであり、ロゼッタ型軽質炭酸カルシウムを用いたことによる格別顕著な作用効果は示されていない。

(相違点3について)
引用発明には、サイズプレスで樹脂、具体的には、酸化澱粉のみをサイズプレスしており、他の表面サイズ剤を含有しない(摘記事項n.)。
しかしながら、引用文献1(摘記事項e.)には、表面サイズ剤は、非水系インクの浸透性をコントロールするため、適宜用いられることが記載されており、例示された「スチレン/アクリル酸系共重合体、スチレン/メタアクリル酸系共重合体」、「スチレンマレイン酸系共重合体、オレフィン/マレイン酸系共重合体」は、通常、特に変性したものを除きアニオン系高分子化合物である。
また、本願明細書【0026】で述べられているように、高分子化合物は「そのイオン性によってノニオン性、カチオン性、アニオン性および両性のものに分類できる」のであって、インクジェット記録用紙において、インクとの親和性等を考慮して、カチオン性、アニオン性の高分子化合物を選択することに困難性はない。
そして、本願明細書【0026】においても、「従って、紙の用途に応じ、適宜これらの液体の浸透に対し抵抗を与える必要があり、このためサイズ剤が使用される。」と記載されているように、製紙分野では、サイズ剤を適用しインク受理性等を調整するものであるから、インクジェット記録材料において、イオン性のインクを用いる、インクジェット記録材料において、カチオン系又はアニオン系高分子化合物を用いることは適宜なし得ることである。
その量も、非水系インクの浸透性をコントロールするため、適宜調整すべきである。
よって、引用発明において、「カチオン系又はアニオン系高分子化合物」をサイズ剤として0.25?0.6g/m^(2)含有」させることは容易である。

なお、フェノール性酸化防止剤による黄変に対し、酸性pH領域で黄変が抑制される知見が本願の優先日前に既にあり(特開平11-334199号公報【0088】、特開2001-246833号公報【0030】)、アニオン性のものを選択してpHが抑制されたことによる黄変防止の作用効果は予測しうることである。
本願比較例1、5の酸化澱粉のみの場合、サイズ剤の量が少ない場合は、適切なサイズ度にないものであり、作用効果を比較できない。

(相違点4について)
引用発明において、「高沸点溶剤を用いた着色液によるブリストー吸収係数が50ml/m^(2)・sec^(1/2)以上であるか、高沸点溶剤を用いた着色液によるブリストー吸収係数が20ml/m^(2)・sec^(1/2)以上50ml/m^(2)・sec^(1/2)未満、かつ、ベック平滑度が100?500秒であり」として、極性溶剤と非極性溶剤の両方を含む非水系インクの溶媒の浸透性を規定し、インクの浸透性の指標としている(摘記事項m.)。ただし、これらブリストー吸収係数や平滑度の数値は、溶媒の浸透を示す指標となり、ステキヒトサイズ度とある程度の関連はあるが、これら値から、ステキヒトサイズが算出できるというものではない。また、非水系インクに樹脂分散物を包含することを前提として定めされた範囲であるから、本願補正発明の範囲となるとはいえない。
しかしながら、ステキヒトサイズ度も、インクの浸透性を表す指標として一般的なものであり、およそインクジェット記録用紙においては、インクの浸透性を考慮して、適切なサイズ度に調整することは技術常識である。
このステキヒトサイズ度の調整は、本願補正発明においては、特定の表面サイズ剤の量によっていて、相違点3に係る構成と密接な関係にある。
よって、上記相違点3について検討したように、非水系インクの浸透性をコントロールするにあたり、適当なサイズ剤を適量用いて、その適切なサイズ度を得ることは当業者が適宜なし得ることである。
すなわち、引用発明において、「カチオン系又はアニオン系高分子化合物」を「サイズ剤として0.25?0.6g/m^(2)含有」させて、ステキヒトサイズ度を5?80秒とすることは適宜なしうることである。

(相違点5について)
本願補正発明においては本願明細書【0046】にあるように「JIS-P8251に規定する灰分は、試料(紙)を525±25℃の温度で燃焼させた後の灰分残留物の量を、試料の絶乾重量に対する百分率で表したもの」である。引用発明におけるJIS P8128に規定される灰分は、「550℃で灰化した灰分」(摘記事項k.)と記載されているが、紙パルプ技術協会編、「紙パルプの試験法」(新日本印刷株式会社、1995年5月25日発行、第103?104頁)を参照するに、575±25℃での灰分残留物の量の重量百分率を示すものであり、その灰分として表される数値は本願補正発明のものと大きな差がないものといえる。
そして、引用発明において、灰分23.7%の本願補正発明の範囲内にあるものが記載されているから、実質的な差異ではない。

5.進歩性のまとめ
上記相違点2について「ロゼッタ型軽質炭酸カルシウム」を採用した上で、相違点3について検討した適当な表面サイズ剤を適量用いて、相違点4について検討した適切なステキヒトサイズ度として、非水系インクの浸透性を調整することは適宜なし得ることである。

よって、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明や周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願の請求項に係る発明
平成20年1月28日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、平成19年11月8日付の手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という)は次のとおりのものと認める。

「主として溶剤と分散剤と顔料とからなる非水系インクを用いて記録を行うためのインクジェット記録用紙であって、ロゼッタ型軽質炭酸カルシウムを主に含む填料とパルプとを主成分とし、ロジン系サイズ剤が内添され、かつ表面にカチオン系又はアニオン系高分子化合物がサイズ剤として0.25?0.6g/m^(2)含有され、ステキヒトサイズ度が5?80秒であり、かつJIS-P8251に規定された灰分が20?40%である普通紙タイプのインクジェット記録用紙。」

2.引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布されたことが明らかな引用文献1(特開2003-127522号公報)には、上記「第2.3(1)」欄に示したとおりの事項が記載されている。

3.判断
本願発明1は、上記「第2. 1.」欄に示した本願補正発明における、「溶剤」を「極性溶剤と非極性溶剤の両方を含む溶剤」とする限定を含まないものである。

そうすると、本願発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2. 3.」欄?「第2. 5.」に記載したとおり、引用文献1に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明1も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-04 
結審通知日 2009-08-17 
審決日 2009-08-28 
出願番号 特願2004-355404(P2004-355404)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41M)
P 1 8・ 121- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神尾 寧  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 伊藤 裕美
柏崎 康司
発明の名称 インクジェット記録用紙及びその製造方法、並びにインクジェット記録方法  
代理人 赤尾 謙一郎  
代理人 赤尾 謙一郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ