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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1205601
審判番号 不服2008-10375  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-24 
確定日 2009-10-15 
事件の表示 特願2001-144466「レーザーダイオード励起固体レーザー」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月29日出願公開、特開2002-344049〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年5月15日に特許出願したものであって、その請求項に係る発明は、平成20年5月22日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1及び請求項2に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は次のものである。
「【請求項1】
希土類元素イオンのうち少なくともHo^(3+)が添加された固体レーザー結晶と、
InGaN、InGaNAsあるいはGaNAsからなる活性層を有し、生じたレーザービームにより前記固体レーザー結晶を励起して、該結晶における^(5)S_(2)→^(5)I_(7)の遷移によって波長がほぼ750nmの固体レーザービームを発生させるレーザーダイオードと、
前記固体レーザービームを波長がほぼ375nmの紫外光である第2高調波に波長変換する光波長変換素子とを有することを特徴とするレーザーダイオード励起固体レーザー。
【請求項2】
希土類元素イオンのうち少なくともHo^(3+)が添加された固体レーザー結晶と、
InGaN、InGaNAsあるいはGaNAsからなる活性層を有し、生じたレーザービームにより前記固体レーザー結晶を励起して、該結晶における^(5)S_(2)→^(5)I_(8)の遷移によって波長がほぼ550nmの固体レーザービームを発生させるレーザーダイオードと、
前記固体レーザービームを波長がほぼ275nmの紫外光である第2高調波に波長変換する光波長変換素子とを有することを特徴とするレーザーダイオード励起固体レーザー。」

第2 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、E.P.CHICKLIS, et al., Deep Red Laser Emission in Ho:YLF, IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS, Vol.QE-13, No.11, 1977, p.893-895(以下「引用例1」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている(当審による和訳を括弧内に付した。)。

a.「Abstract - Laser operation of the ^(5)S_(2)→^(5)I_(7) transition in 2 percent Ho:YLF at room remperature is reported. Oscillations at λ=750 nm were obtained in flashlamp and dye laser pumped experiments.」(893頁左欄1?3行)
(要約 - 室温における2パーセントHo:YLFの^(5)S_(2)→^(5)I_(7)遷移のレーザ動作が報告されている。λ=750nmにおける発振が、フラッシュランプと色素レーザでポンプした実験で得られた。)

b.「We report laser operation of the ^(5)S_(2)→^(5)I_(7) transition at room temperature in 2 percent Ho:YLF at λ=750 nm. Laser operation was obtained with a Xe flashlamp (threshold 4 J/cm) and with a 0.48-μm dye laser pump (threshold 0.3×10^(-3 )J/cm).」(893頁左欄15?19行)
(我々は、室温における2パーセントHo:YLFのλ=750nmで、^(5)S_(2)→^(5)I_(7)遷移のレーザ動作を報告する。レーザ動作は、Xeフラッシュランプ(閾値4J/cm)及び0.48μm色素レーザポンプ(閾値0.3×10^(-3)J/cm)で得られた。)

c.「Fig.1 shows an unpolarized absorption spectrum at room temperature of 2 percent Ho:YLF crystal beginning with the upper laser level. In low concentrations most of the pump bands in the 0.2-0.55μm region are optically thin even through a 0.9-cm path. Higher absorption coefficients at higher Ho concentrations (material quality and ease of growth are essentially independent of Ho^(3+) concentration) would improve the pumping efficiency but probably reduce the fluorescence lifetime of the upper laser level.」(893頁左欄下から9行?末行)
(図1は、室温における2パーセントHo:YLF結晶の、上位のレーザレベルから始まる無偏光の吸収スペクトルを示す。低い濃度では、0.2-0.55μm領域のポンプバンドの大部分は、経路が0.9cmであるにもかかわらず、光学的に薄いものである。より高いHo濃度(材料の品質と成長のし易さは、本質的にHo^(3+)濃度と独立のものである)におけるより高い吸収係数は、ポンピング効率を改善するであろうが、おそらく上位のレーザレベルの発光継続時間を短くする。)

d.「Laser operation using the same rod was also obtained with a flash-pumped dye laser (modified Synergetics Model 1050), tuned at 1200 groove/mm grating. The dye laser output was set to pump the multiplet centered at 480 nm. The rod was pumped transversely by expanding the beam to 20 mm and then focusing with a cylindrical lens along the rod length. The pump beam cross section at the rod was 0.5×20 mm. The resonator consised of 1-m radius high-reflectivity mirror and a flat output mirror with 1 percent transmission.」(893頁右欄下から9行?末行)
(同じロッドを用いたレーザ動作はまた、1200溝/mmのグレーティングで同調した、フラッシュ-ポンプによる色素レーザ(Synergetics Model 1050 を改造)で得られた。色素レーザの出力は、480nmを中心とするマルチプレットをポンプするようにセットされた。ポンプビームのロッドにおける断面は、0.5×20mmであった。共振器は、半径1mの高反射鏡と1パーセント透過の平面鏡により構成された。)

上記a.ないしd.によれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「0.48μm色素レーザポンプにより、室温においてλ=750nmで、^(5)S_(2)→^(5)I_(7)遷移の動作をする、2パーセントHo^(3+):YLF結晶のロッドを用いたレーザ。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、M.C.BRIERLEY, et al., LASING AT 2.08μm AND 1.38 μm IN A HOLMIUM DOPED FLUORO-ZIRCONATE FIBRE LASER, ELECTRONICS LETTERS, Vol.24, No.9, 1988, p.539-540(以下「引用例2」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている(当審による和訳を括弧内に付した。)。

a.「2.08μm-wavelength laser operation: The fibre was a ZBLANP^(10) fibre with a core diameter of 40μm doped with 993 ppm of Ho^(3+) ions. A 0.5 m length of this fibre was set up in a Fabry-Perot cavity and longitudinally pumpued by 488 nm CW radiation from an argon ion laser exciting ground state electrons of the Ho^(3) ions into ^(5)K_(3) energy level. 」(539頁右欄15?21行)
(2.02μm-波長レーザ動作: ファイバは、コア径が40μmのHo^(3+)イオンを993ppmドープしたZBLANP^(10)ファイバであった。0.5m長のこのファイバは、ファブリ-ペローキャビティ内に設置され、Ho^(3+)イオンの基底状態の電子を^(5)K_(3)エネルギーレベルに励起する、アルゴンイオンレーザからの488nmCW放射により、長さ方向にポンプされた。)

b.「1.38μm-wavelength laser operation: In addition to the 2μm fluorescence band holmium also exhibits strong fluorescence around 550 nm, 750 nm, 1.01μm, 1.19μm and 1.35μm in this fibre (Fig.2). Potentially the most useful of these bands for communications is that around 1.35μm. This radiation is obtained from a cascade transition between the ^(5)S_(2) +^(5)F_(4) and ^(5)I_(5) enegy levels.^(11) Replacing the mirros in the experiment above by an input mirror with >99% reflectivity at 1.35μm and >95% transmission at 488 nm and an output mirror with 98% reflectivity at 1.35μm, and again pumping at 488 nm reveals that this transition will indeed support laser action in this host (Fig.3).・・・・The lasing wavelength was 1.38μm, longer than the peak of flourescence which occurs at 1.35μm. Emission at this wavelength was CW. 」(539頁右欄下から16行?末行)
(1.38μm-波長レーザ動作: 2μm発光バンドに加え、ホルミウムはまた、このファイバの中で550nm、750nm、1.01μm、1.19μm及び1.35μm付近に強い発光を示す(図2)。これらのバンドで潜在的に通信に最も有用なのは、1.35μm付近のバンドである。この放射は、^(5)S_(2)+^(5)F_(4)と^(5)I_(5)エネルギーレベル間の段階的な遷移から得られる。上述の実験における鏡を、1.35μmで>99%の反射率を有し488nmで>95%の透過率を有する入射鏡と、1.35μmで98%の反射率を有する出射鏡に置き換え、再度488nmでポンプすることは、この遷移が、このホストにおけるレーザの動作を実際にサポートするであろうことを明らかにする(図3)。・・・・レイジング波長は1.38μmで、1.35μmで生じる発光のピークに比べて長い。この波長における放射は、CWである。)

上記a.及びb.によれば、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「コア径が40μm、長さの0.5mのHo^(3+)イオンを993ppmドープしたZBLANPファイバをファブリ-ペローキャビティ内に設置し、アルゴンイオンレーザからの488nmCW放射により、長さ方向にポンプしたレーザにおいて、
2μm発光バンドに加え、ホルミウムはまた、このファイバの中で550nm、750nm、1.01μm、1.19μm及び1.35μm付近に強い発光を示す、レーザ。」

第3 対比・判断
1.本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「ポンプ」、「Ho^(3+)」及び「^(5)S_(2)→^(5)I_(7)遷移」は、それぞれ、本願発明1の「励起」、「希土類元素イオンのうち少なくともHo^(3+)」及び「^(5)S_(2)→^(5)I_(7)の遷移」に相当する。

イ 引用発明1の「(^(5)S_(2)→^(5)I_(7)遷移の動作をするときの)λ=750nm」は、本願発明1の「(^(5)S_(2)→^(5)I_(7)の遷移によって発生させる)波長がほぼ750nm」に相当する。

ウ 引用発明1の「2パーセントHo^(3+):YLF結晶」は、本願発明1の「希土類元素イオンのうち少なくともHo^(3+)が添加された固体レーザー結晶」に相当し、引用発明1の「2パーセントHo^(3+):YLF結晶のロッドを用いたレーザ」は、本願発明1の「固体レーザー」に相当する。

エ 上記イ及びウから、引用発明1のレーザの動作による「λ=750nm」の光が、本願発明1の「『該結晶における^(5)S_(2)→^(5)I_(7)の遷移によって』発生する『波長がほぼ750 nmの固体レーザービーム』」に相当するのは明らかである。

オ 引用発明1は、「0.48μm色素レーザポンプ」における「0.48μm色素レーザ」により生じたビームで、「固体レーザー結晶」(上記ウ参照。)をポンプすなわち励起し、それによって^(5)S_(2)→^(5)I_(7)遷移の動作をするから、引用発明1における「0.48μm色素レーザ」と、本願発明1の「レーザーダイオード」は、いずれも、「生じたビームにより固体レーザー結晶を励起して、該結晶における^(5)S_(2)→^(5)I_(7)の遷移によって波長がほぼ750nmの固体レーザービームを発生させる」(上記エ参照。)励起光源である点で一致する。

カ 以上アないしオより、本願発明1と引用発明1とは、
「希土類元素イオンのうち少なくともHo^(3+)が添加された固体レーザー結晶と、
生じたレーザービームにより前記固体レーザー結晶を励起して、該結晶における^(5)S_(2)→^(5)I_(7)の遷移によって波長がほぼ750nmの固体レーザービームを発生させる励起光源と、
を有する固体レーザー。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
本願発明1は、励起光源が「『InGaN、InGaNAsあるいはGaNAsからなる活性層を有』する『レーザーダイオード』」であり、「レーザーダイオード励起」のものであるのに対し、引用発明1は、励起光源が「0.48μm色素レーザ」であり、「レーザーダイオード励起」のものではない点。

<相違点2>
本願発明1は、「固体レーザービームを波長がほぼ375nmの紫外光である第2高調波に波長変換する光波長変換素子とを有する」ものであるのに対し、引用発明1は、そのような光波長変換素子を有していない点。

(2)上記相違点1について検討する。
ア 引用発明1において、波長0.48μmの励起光を発生する光源として、具体的にどのようなものを用いるかは、当業者が適宜選択すべき設計上の事項である。

イ 他方、波長480nmのレーザを発生する「InGaNからなる活性層を有するレーザーダイオード」は、本願出願前に周知である(例.特開2000-236142号公報(【0046】?【0048】参照。)、特開2001-57461号公報(【0073】?【0081】参照。)。

ウ そして、引用発明1における波長0.48μm、すなわち、波長480nmの励起光を発生する励起光源として、上記周知技術を適用し、上記相違点1に係る本願発明1の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。

(3)上記相違点2について検討する。
ア 引用発明1の固体レーザー(上記(1)ウ参照。)をどのような構成と組み合わせて用いるかは、当業者が適宜選択すべき設計上の事項である。

イ 他方、固体レーザーの分野において、「固体レーザービームを光波長変換素子により、紫外光である第2高調波に波長変換する技術」は、本願出願前の慣用技術である(例.特開2001-36175号公報(【0013】参照。)、特開2001-66718号公報(【0030】、図2(B)参照。)、特開7-99360号公報(【0021】?【0023】、図2参照。)、特開2000-91673号公報(【0002】、【0003】及び図4参照。))。

ウ したがって、引用発明1の固体レーザーを、上記慣用技術と組合せ、波長750nmの光を、その第2高調波であるほぼ375nmの紫外光に変換した上記相違点2に係る構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。

(4)まとめ
以上から、本願発明1は、引用発明1、上記周知技術及び上記慣用技術から、当業者が容易に想到できたものである。

2.本願発明2について
(1)本願発明2と引用発明2とを対比する。
ア 引用発明2の「Ho^(3+)イオン」、「ドープ」、「ポンプ」及び「550nm」は、それぞれ、本願発明2の「希土類元素イオンのうち少なくともHo^(3+)」、「添加」、「励起」及び「波長がほぼ550nm」に相当する。

イ 引用発明2の「コア径が40μm、長さの0.5mのHo^(3+)イオンを993ppmドープしたZBLANPファイバ」は、本願発明2の「希土類元素イオンのうち少なくともHo^(3+)が添加された固体レーザー結晶」に相当する。また、引用発明2の「レーザ」は、本願発明2の「固体レーザー」に相当する。

ウ 引用発明2は、「アルゴンイオンレーザ」により、「ファブリ-ペローキャビティ内に設置し」た「コア径が40μm、長さの0.5mのHo^(3+)イオンを993ppmドープしたZBLANPファイバ」をポンプすなわち励起し、このファイバの中で「550nm」付近に強い発光を示すものであるから、引用発明2の「アルゴンイオンレーザ」と本願発明2の「レーザーダイオード」は、いずれも、「生じたレーザービームにより固体レーザー結晶を励起して、波長がほぼ550nmの固体レーザービームを発生させる」励起光源である点で一致する。

エ 以上アないしウから、本願発明2と引用発明2とは、
「希土類元素イオンのうち少なくともHo^(3+)が添加された固体レーザー結晶と、
生じたレーザービームにより前記固体レーザー結晶を励起して、波長がほぼ550nmの固体レーザービームを発生させる励起光源と、
を有する固体レーザー。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点3>
本願発明2は、励起光源が「『InGaN、InGaNAsあるいはGaNAsからなる活性層を有』する『レーザーダイオード』」であり、「レーザーダイオード励起」のものであるのに対し、引用発明2は、励起光源が「波長『488nm』の『アルゴンイオンレーザ』」であり、「レーザーダイオード励起」のものではない点。

<相違点4>
波長がほぼ550nmの固体レーザービームにつき、本願発明2は、「固体レーザー結晶晶における^(5)S_(2)→^(5)I_(8)の遷移」によるものであるのに対し、引用発明2は、そのようなものであるか否か明らかでない点。

<相違点5>
本願発明2は、「波長がほぼ275nmの紫外光である第2高調波に波長変換する光波長変換素子とを有する」ものであるのに対し、引用発明2は、そのような光波長変換素子を有していない点。

(2)上記相違点3について検討する。
ア 引用発明2において、波長488nmの励起光を発生する光源として、具体的にどのようなものを用いるかは、当業者が適宜選択すべき設計上の事項である。

イ 他方、波長488nmのレーザを発生する「InGaNからなる活性層を有するレーザーダイオード」は、本願出願前に周知である(例.特開平8-316528号公報(【0001】、【0034】及び図2参照。同図の線βにおいて、井戸層膜厚が120Å程度で、発光ピーク波長は488nmとなる。)、特開平6-260683号公報(【0032】?【0034
】参照。In_(x)Ga_(1-x)NのInのモル比xを0<x<0.5とし、発光色を430nmから590nmまで変える間で、発光色は488nmとなる。))。

ウ そして、引用発明2における波長488nmの励起光を発生する励起光源として、上記周知技術を適用し、上記相違点3に係る本願発明2の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。

(3)上記相違点4について検討する。
ア 「^(5)S_(2)→^(5)I_(8)の遷移」について、本願明細書には、「【0053】また、上述のHo:YAG結晶14は、GaN系レーザーダイオードにより励起されて(励起波長は同様に420nm)、^(5)S_(2)→^(5)I_(8)の遷移によって波長がほぼ550nmの固体レーザービームを発生させる。」と記載されている。

イ 本願明細書の上記記載は、本願発明2における「^(5)S_(2)→^(5)I_(8)の遷移によって波長がほぼ550nmの固体レーザービームを発生」の技術的意味について、励起された固体レーザが波長がほぼ550nmの固体レーザービームを発生し、該波長が「(Hoの)^(5)S_(2)→^(5)I_(8)の遷移」に起因する大きさのものであることを示唆するにとどまる。

ウ しかるところ、引用発明2における発光も、ホルミウムの準位間の遷移によってなされるのは明らかであり、引用発明2における「ホルミウムは・・・550nm・・・付近に強い発光を示す」ときの遷移は、波長550nmの大きさに対応する準位である「^(5)S_(2)→^(5)I_(8)の遷移」であるものといえる。

エ したがって、引用発明2における「550nm付近に強い発光を示す」遷移は「^(5)S_(2)→^(5)I_(8)の遷移」であるものといえるから、引用発明2は上記相違点4を備えており、上記相違点4は実質的な相違点ではない。

(4)上記相違点5について検討する。
ア 引用発明2の固体レーザー(上記(1)イ参照。)をどのような構成と組み合わせて用いるかは、当業者が適宜選択すべき設計上の事項である。

イ 他方、固体レーザーの分野において、「固体レーザービームを光波長変換素子により、紫外光である第2高調波に波長変換する技術」は、本願出願前の慣用技術である(上記1.(3)イ参照。)。

ウ したがって、引用発明2の固体レーザーを、上記慣用技術と組合せ、波長550nmの光を、その第2高調波であるほぼ275nmの紫外光に変換した上記相違点5に係る構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。

(5)まとめ
以上から、本願発明3は、引用発明2、上記周知技術及び上記慣用技術から、当業者が容易に想到できたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例1に記載の発明、周知技術及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願発明2は、引用例2に記載の発明、周知技術及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-13 
結審通知日 2009-08-18 
審決日 2009-08-31 
出願番号 特願2001-144466(P2001-144466)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 傍島 正朗  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 三橋 健二
吉野 公夫
発明の名称 レーザーダイオード励起固体レーザー  
代理人 柳田 征史  
代理人 佐久間 剛  

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