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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1205953
審判番号 不服2008-2447  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-09 
確定日 2009-10-26 
事件の表示 平成11年特許願第189803号「携帯電話装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月26日出願公開、特開2001- 24745〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成11年7月2日に出願したものであって,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成19年1月24日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「送信・受信回路と,セルラー基地局を介して有線通信網と通話を行う通信モードと,セルラー基地局を介してインターネットに接続する通信モードとを有するディジタル変調・復調回路と,第1および第2の記憶手段と,制御手段と,操作手段を有するとともに圧縮された音楽データの解凍手段を有し,前記第1の記憶手段は不揮発性のメモリーを用いるとともに着脱自在にし,前記第2の記憶手段は動作途中のデータなどを記憶するようにし,
前記ディジタル変調・復調回路の通信モードが音楽データの受信モードに指定された場合は受信された音楽データを前記第1の記憶手段へ格納し,音楽データの再生モードが指定された場合は前記第1の記憶手段に格納された音楽データを前記解凍手段を介して出力するように構成された携帯電話装置。」
なお,平成19年1月24日付けの手続補正書には「圧縮された音声データ」と記載されているが,全体の記載からして,「音声データ」は「音楽データ」の単なる誤記と認められるから,「音楽データ」と認定した。

2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願日前である平成11年6月18日に頒布された特開平11-164058号公報(以下,「引用文献」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
イ)「【0005】
【発明の実施の形態】図1は,本発明の携帯型音楽選曲視聴システムの全体構成図である。全体を符号1で示すシステムは,サーバーである配信センター10を有し,配信センター10はレコード製作会社20から音楽コンテンツの供給を受ける。この配信センター10に対して,公衆回線網30を介して携帯型音楽選曲視聴機50,60,70が接続される。」(第2頁第2欄),
ロ)「【0009】携帯型音楽選曲視聴機70は,本体71に対して着脱可能な記憶装置76を備える。この記憶装置76は,例えば磁気カード,磁気テープ,CD,DVD,ICカードのようなメモリカードである。ユーザは,本体71のプッシュボタン等を操作して,携帯型音楽選曲視聴機70の記憶装置(媒体)76に音楽ソフトをダウンロードすると,この音楽ソフトを携帯型音楽選曲視聴機70のディスプレイ72やレシーバ74で楽しむことできるとともに,この記憶装置(媒体)を抜き出して,他のオーディオユニットに挿入し,より高品質な再生音楽を楽しむことができる。また,他のオーディオユニットで記憶装置76内に音楽ソフトを記憶させ,この記憶装置76を,この携帯型音楽選曲視聴機70に挿入して音楽を楽しむこともできる。」(第2頁第2欄?第3頁第3欄),
ハ)「【0010】図2は,携帯電話の機能を有する本発明の携帯型音楽選曲視聴機の構成図である。全体を符号100で示す携帯型音楽選曲視聴機は,電源部130に接続される総合制御部110を有し,総合制御部110は電話番号登録用記憶部120が接続される。ユーザが操作するボタン入力部182を有するボタン入力制御部180は,総合制御部110に信号を送り,総合制御部110は,ディスプレイ制御部160を介してディスプレイ表示部162に操作内容を表示するとともに,電波送受信制御部140,アンテナ150を介して公衆回線網にアクセルする。ユーザが相手の電話を呼び出すのであれば,交換機は相手電話を呼び出し,送話・受話制御部170に接続される送話器174と受話器172を用いてユーザは相手と通話することができる。
【0011】音楽用制御部200は,総合制御部110,電源部130,電波送受信制御部140,ボタン入力制御部180,ディスプレイし御部160に接続される。ユーザは,ボタン入力部182を操作して配信センターを呼び出す指令を出力すると,その内容はディスプレイ表示部162に表示されるとともに,電波送受信制御部140は,アンテナ150を介して公衆回線網を経由して配信センターにアクセスする。
【0012】配信センターにアクセスができると,ユーザは選曲を指令し,配信センターは選曲された音楽ソフトを送り返す。この音楽ソフトを受信した音楽用制御部200は,音楽用増幅部で信号を増幅し,レシーバジャック220に差し込まれる音楽用レシーバ230に音声を出力する。この音声出力は,受話器172へも出力することができる。歌詞等の情報は,ディスプレイ表示部162に表示される。
【0013】音楽用制御部200に接続される音楽用記憶部240は,音楽ソフトを記憶する。磁気カード,磁気テープ,CD,DVD,ICカードのようなメモリカードのような音楽用記憶媒体250は,音楽ソフトを記憶するとともに,この記憶媒体250を取り出して,他のオーディオユニット等で使用することもできる。」(第3頁第3?4欄)。

摘記事項イ)に開示された「携帯型音楽選曲視聴機70」は,その細部が摘記事項ハ)に示されているが,これによると「携帯型音楽選曲視聴機70」には,「携帯電話の機能」を有しているから,携帯電話装置であり,
この携帯電話装置は,同摘記事項ハ)の「携帯電話の機能」「電波送受信制御部140」「アンテナ150」等の記載によれば,送信・受信回路を当然備えており,
同携帯電話装置は,「携帯電話の機能」を有している以上,セルラー基地局を介して,通信網と通話を行う通信モードを有する変調・復調回路を備えており,
摘記事項ハ)の「総合制御部110」「電波送受信制御部140」「ディスプレイ制御部160」「ボタン入力制御部180」「送話・受話制御部170」「音楽用制御部200」等は制御手段であり,
摘記事項ロ)の「着脱可能な記憶装置(媒体)76」は「ICカードのようなメモリカード」を一例としており,しかも「着脱可能」であるから,不揮発性といえ,
摘記事項ロ)の「ダウンロード」は,「記憶装置(媒体)76」に格納することであり,
摘記事項ロ)の「この記憶装置76を,この携帯型音楽選曲視聴機70に挿入して音楽を楽しむこともできる。」によれば,ダウンロードされた「音楽ソフト」を出力している。
したがって,上記引用文献の記載及び技術常識によれば,上記引用文献には,
「送信・受信回路と,セルラー基地局を介して通信網と通話を行う通信モードを有する変調・復調回路と,記憶装置(媒体)と,制御手段と,プッシュボタン等を有するとともに前記記憶装置(媒体)は不揮発性のメモリーを用いるとともに着脱自在にし,前記プッシュボタン等を操作して,受信された音楽ソフトを前記記憶装置(媒体)へ格納し,前記記憶装置(媒体)に格納された音楽ソフトを出力するように構成された携帯電話装置。」(以下,「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

3.対比
そこで,本願発明と引用発明とを対比する。
a)引用発明の「記憶装置(媒体)」は記憶手段である。
b)引用発明の「プッシュボタン等」は,操作手段である。
c)引用発明の「プッシュボタン等を操作」することは,音楽ソフトの受信を行うためにすることであるから,通信モードを音楽ソフトの受信モードに指定することに当たる。
d)本願発明の「音楽データ」は音楽ソフトの一形態である。

したがって,本願発明と引用発明は,次の点で一致し,相違する。

(一致点)
送信・受信回路と,セルラー基地局を介して通信網と通話を行う通信モードを有する変調・復調回路と,記憶手段と,制御手段と,操作手段を有するとともに前記記憶手段は不揮発性のメモリーを用いるとともに着脱自在にし,通信モードが音楽ソフトの受信モードに指定された場合,受信された音楽ソフトを前記記憶装手段へ格納し,前記記憶手段に格納された音楽ソフトを出力するように構成された携帯電話装置。

(相違点1)
通信網に関して,本願発明は「有線通信網」であるが,引用発明は有線であるか不明である。
(相違点2)
本願発明は「セルラー基地局を介してインターネットに接続する通信モード」を有しているのに対して,引用発明は有していない。
(相違点3)
変調・復調回路として,本願発明は「ディジタル」方式の回路であるが,引用発明の方式は不明である。
(相違点4)
本願発明は「第2の記憶手段」を有し,「前記第2の記憶手段は動作途中のデータなどを記憶するようにし」ているのに対し,引用発明が第2の記憶手段を有しているのか不明である。
(相違点5)
音楽ソフトに関して,本願発明は「音楽データ」の形式を採用しており,「圧縮された音楽データの解凍手段を有し」ており,「音楽データの再生モードが指定された場合」は「前記解凍手段を介して」出力するようになっているが,引用発明が,音楽ソフトとして音楽データの形式を採用しているか不明であり,音楽データの再生モードの指定についても,不明であり,また,圧縮された音楽データの解凍手段は有していない。

4.当審の判断
そこで,相違点について検討する。
(相違点1)について
セルラー基地局間は通常有線通信網であり,また,携帯電話(装置)と有線電話網の通話機間の通話は当然有線通信網を介しており,さらに,引用文献の図1は,無線通信を点線,有線通信を実線で示していると解するのが相当であるから,引用発明においても,事実上有線通信網が示されているというべきであって,本願発明における「有線通信網」に格別な技術的意義を認めることはできず,周知・慣用技術の付加限定の域を出ない。
(相違点2)について
携帯電話装置をセルラー基地局を介してインターネットに接続することは,原審の拒絶査定で引用した周知例である特開平11-65950号公報,あるいは,特開平10-341487号公報,特開平10-340178号公報,特開平10-336751号公報,特開平10-336345号公報,特開平10-301865号公報等から明らかなように周知技術であるから,引用発明において,セルラー基地局を介してインターネットに接続する通信モードを採用することに格別な創意工夫を認めることはできない。
(相違点3)について
本願出願当時,PDC,CDMAに代表されるように,デジタル方式の携帯電話システムは既に周知・慣用技術になっているから,変調・復調回路として「ディジタル」方式の回路を採用することは格別な創意工夫を要するものといえない。
(相違点4)について
携帯電話装置において,動作途中のデータなどを記憶する記憶手段は必須のものであり,また,摘記事項ハ)における「電話番号登録用記憶部120」も記憶手段であるから,受信された音楽ソフトを記憶する着脱自在な記憶手段の他に,第2の記憶手段を設けることは,当然付加すべき単なる技術的事項にすぎない。
(相違点5)について
上記「(相違点2)について」に記載したように,インターネット上,あるいはデジタル方式の携帯電話システム上で送受信される情報は,ディジタル情報であるから,音楽ソフトして「音楽データ」の形式を採用することは当然の技術的事項である。
そして,通信網の容量を考慮して,データを圧縮して送受信することも周知・慣用技術である。このことは,データ転送の一般論としてばかりでなく,音楽データについても,既に原審の拒絶理由,拒絶査定で周知例として引用した特開平10-271245号公報,特開平11-65950号公報等から明らかなように,当業者であれば,誰でも知っている単なる周知技術である。また,再生に際しては,圧縮されたデータの解凍が必要なことも自明である。
してみると,携帯電話装置の使用者が音楽を聴く場合に,音楽データの再生の指示をすることが自明であることを考慮すれば,引用発明において,音楽ソフトとして「音楽データ」の形式を採用し,「圧縮された音楽データの解凍手段」を付加し,「音楽データの再生モードが指定された場合」は「前記解凍手段を介して」出力するように変更する程度のことに,格別な創意工夫を要するものということはできない。

なお,審判請求人は,審判請求書で,「複数の構成要素によって特有の効果を奏する発明の各構成要素が個々に文献に開示されていたとしても,構成要素の組み合わせかた,特有の効果の示唆がない以上,本願発明は各文献から容易に発明できない」旨主張しているが,上記の通り,引用発明,周知技術,慣用技術は同じ技術分野に属しており,しかも引用発明との技術関連性は強く,また,本願発明の効果も,各々技術自体が有している効果以上の格別なものは認められない。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用文献に記載された発明,周知技術,慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-10 
結審通知日 2008-12-16 
審決日 2009-01-07 
出願番号 特願平11-189803
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鶴谷 裕二  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 萩原 義則
小宮 慎司
発明の名称 携帯電話装置  

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