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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1206022
審判番号 不服2007-32166  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-29 
確定日 2009-10-26 
事件の表示 平成10年特許願第 34576号「超音波診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月24日出願公開、特開平11-226019〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成10年2月17日の出願であって,平成19年10月25日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年11月29日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに,同年12月13日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成19年12月13日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年12月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成19年12月13日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,明細書の特許請求の範囲を補正するものであって,そのうち請求項1についてする補正は,補正前(平成19年8月29日付け手続補正書。以下同様。)の特許請求の範囲の
「【請求項1】
超音波探触子から走査される各超音波ビームに対する反射エコー信号をそれぞれ受信し、各受信信号に基づいて各フレーム毎に画像を再構成すると共に、少なくとも2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算して差分処理画像を生成する超音波診断装置において、
前記2つのフレームの同一ポイントのデータと、第一の閾値とを入力して評価基準とし、入力された画像データの当該ポイントが動いている組織の境界か否かを判定し、この判定結果を出力する判定回路部と、
前記2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算した差分処理結果のうち、前記判定回路部からの動いている組織の境界か否かの判定結果に基づいて動きのある組織の境界部分をフィルタリングにより抽出して出力するフィルタ回路部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。」
を,
「【請求項1】
超音波探触子から走査される各超音波ビームに対する反射エコー信号をそれぞれ受信し、各受信信号に基づいて各フレーム毎に画像を再構成すると共に、少なくとも2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算し、2つのフレーム間で動きのある部分を抽出して差分処理画像として擬似カラー表示する超音波診断装置において、
前記2つのフレームの同一ポイントのデータと、第一の閾値とを入力して評価基準とし、入力された画像データの当該ポイントが動いている組織の境界か否かを判定し、この判定結果を出力する判定回路部と、
前記2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算した差分処理結果のうち、前記判定回路部からの動いている組織の境界か否かの判定結果に基づいて動きのある組織の境界部分をフィルタリングにより抽出して出力するフィルタ回路部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。」(下線部分は補正箇所である。以下,補正後の請求項1に記載された発明を「本願補正発明」という。)と補正するものである。

上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「超音波診断装置」について,補正前に「少なくとも2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算して差分処理画像を生成する」とあったものを,補正後に「少なくとも2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算し、2つのフレーム間で動きのある部分を抽出して差分処理画像として擬似カラー表示する」として限定するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下単に「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものである。

そこで,本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

2 引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用した,本願出願日前に頒布された刊行物である,特開昭62-114539号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている(下線は当審にて付加した)。

ア 「2.特許請求の範囲
(1) 不均質流体に対して超音波パルス信号を送出して走査し、その反射エコー信号を処理して該不均質流体の流動状況を可視化表示する装置であって、
同一走査線位置に対して微小時間(ΔT)間隔で複数回超音波パルス信号を送出し、それらの反射エコー信号について相連続する2回のエコー信号間の差を求めることにより、前記不均質流体の流動に基づくエコー画像中の変化部分の移動軌跡を抽出し、これを各走査線について実行して2次元画像に合成して流線片表示することを特徴とする超音波利用の流動表示装置。」(第1頁左下欄第4行目から第16行目。)

イ 「〔発明の目的〕
本発明の目的は血液の如き不均質な構成の流体の流動状況を超音波パルスの反射波から得られるエコー信号を用いて処理することにより、流線片像を形成し、流動を表示する手段を提供するにある。
〔発明の要点〕
本発明は流体の不均質性に起因するスペックルパターン像やエコー増強粒像に着目し、その映像を相互の位置的相関が残留する程度の短かい時間差で2回測定し、その差の映像から流線片像を形成し流動状況を表示するもので、短かい時間差の測定を行うために全画面をm分割してサブ画面とし、先ず1つのサブ画面内で該2回の測定を行い流線片像を形成し、ついで次のサブ画面内の流線片像を形成するという様にして順次全流線片表示画面を形成するようにしたものである。」(第2頁左下欄第15行目から右下欄第12行目。)

ウ 「〔発明の原理〕
先づ超音波パルスの反射信号による血液の如き不均質流動の映像について説明する。血液は赤血球,白血球,血小板等が血清液中に混入したもので、その平均的密度は、例えば心臓内のどの部位のサンプル空間をとってもほゞ一定しているが、そのサンプル空間内では構成材、例えば赤血球の配列の分布は一定でなくランダムである。超音波の反射はその様な個々の赤血球による反射(散乱)が合成されたもので、個々の反射が合成に際して干渉するため、得られた反射像は白(反射の強い部分)、黒(反射の弱い部分)の斑(スペックル)がほゞ交互にランダムに配列したような映像になる。一般にこの白斑をスペックルと呼ぶ。通常は血液の反射強度は筋肉や、心臓壁・膜等の反射強度に比べて極度に弱く、一般の心臓のBモード像では観測することが出来ないが、後述するように相つづく2画面の差をとると動かない筋肉や心臓壁等の信号は相殺され流動するスペックルの差信号は観測されるようになる。このスペックルをほゞ円形として近似すると、その寸法はトランスジューサーの開口径,電子集束制御,反射体の深さ,使用周波数,周波数帯域等に依存する。以下説明のためにセクター走査で深さ10cmではスペックル径は5mmであると仮定する。
次に流線片の形成について説明する。第1図(a)は流動するスペックル映像を2回測定し、両者を重ね合わせた図で両者測定の時間間隔ΔTは同一のスペックルが若干でも重なる部分がある様に(空間的相関がある様に)短かくした場合である。実線は第2回、点線は第1回である。今第2回の像と第1回の像との輝度の差の像をとると、第1図(b)の如くになる。白い部分は正の輝度、斜線でハッチングした部分は負の輝度、中間部はほゞ0に近い正負混在輝度となる。第1図(b)はΔTがある条件にある時に形成され、ΔTが大きすぎると差像に表われる夫々のスペックル像は第1回と第2回の同一スペックルとの相関を示さなくなるし、ΔTが小さすぎれば差像は微少となり流動を示さない。今、例えば正量を赤、負量を緑で表示すると中央部は赤と緑が入り混った薄い色となる。この一つのスペックル差像は、一つの粒子であるスペックルが緑から赤の方向に移動した事を示し、その色が方向を、その全体のズレ量が流速を示す量となる。又、正は白、負も反転して正として白で表示すると第1図(b)は第1図(c)の如く見える。個々の差スペックルは前後が明るく、中間は薄くみえる。第1図(b),(c)共にその一つのスペックル差像は一つの粒子が短時間の露出ΔTの間にズレて写真に写された場合と近似した流線片の像を形成している。これをq回連続して形成し合成することもできる。q=2の場合を図示すると、第1図(b),(c)の個々のスペックルは第1図(d),(e)の如くなる。(d)では白い部分は赤、点点の部分は赤,緑と重なりほゞ黄、斜線の部分は緑となる。(e)では内部の輝度がほゞ一様となる。(b),(c)に比べて(d),(e)の方がより完全な流線片に近づいているという利点がある。
さらに流線片を見やすくするための手段を次に述べる。本来スペックルは、中央部が最も白色の輝度が高く、周辺に向って順次輝度が低下し遂に黒部に至る性質を有している。したがって形成された流線片も第1図(d),(e)等では、その中央が輝度が大で周辺は輝度が低い。もし適当な輝度レベルを「しきい値」として、それ以下の輝度の部分の輝度を0とするか、その「しきい値」以下の部分は輝度0に、以上の所は輝度1(100%)になるよう2値化するかの処理を行うと、第1図の(d),(e)では個々の流線片の形状が長さに対しかなり巾が広いが、その巾を狭くすることが可能でやせた流線片の形状に変換でき、見やすい画面が得られる。
気泡の如きエコー増強粒子を混入しない場合は、流線片の最大長は隣接流線片と融合しないようにするために制限をうける。スペックル径を5mmφとすると最大長は10mm以下となる。表示上この寸法は若干短く見にくい欠点がある。この解決のために流動表示の場合は、Bモード映像表示と計測系の条件をかえてスペックル径を制御し、例えば大きくすることによって流線片の最大長をより大きく表示することを可能とするものである。スペックル径は、トランスジューサーの開口径,電子集束制御,中心周波数,周波数帯域巾等によって決定されるので此等の何れか、又は組合せで制御すればよい。アレイ・トランスジューサでは開口径制御は容易であり、電子集束では電子的に集束度の制御を行うことは容易であり、中心周波数や帯域巾は送信波形や受信フィルタの制御で容易に行うことができる。
次にΔTの満すべき条件を述べる。予期する最高血流速をVmm/ms、スペックルサイズDmmとすると平均スペックル空間波長は約2Dmmとなる。流線片を形成するにはΔTを隔てた第1回,第2回の映像間で同一のスペックルが若干でも重なっている必要が必要である。即ち、
V・ΔT<D (1)
の条件が必要で、これはまた一つの流線片が隣接流線片と融合しない条件にもなっている。(スペックルの白部、黒部がほゞ同じ寸法と仮定)この場合最大流線片長は平均スペックル空間波長に近い。この条件は流線片の大きさがスペックルサイズで限定されることを示している。もし、気泡の如きエコー増強粒子を人工的に作るならば、その平均間隔を個々のエコー像の大きさに対して十分大きくとることが出来、条件(1)は不必要になる。本発明はこの様なエコー増強粒子を用いる場合をも包括するものである。q回繰返す場合は(1)式は(2)式となる。
V・ΔT・q<D (2)」(第2頁右下欄第13行目から第4頁右上欄第3行目。)

エ 「以上に述べた手段を実現するための具体的な装置構成を第3図に示す。1は送信兼用超音波トランスジューサーである。2は送信・受信回路である。1及び2は通常のBモード医療診断用超音波映像装置と全く同じである。3はエコー信号形成部で、上述した格例に対する種々の手段の何れを用いてもよい。夫々の手段はすでに一般に知られているので説明を省略する。4は流線片形成部で第1回,第2回のサブ画面を5のメモリに入れ、両者の差を計算して6のイメージメモリーに送る。順次サブ画面がmケ送られると、イメージ・メモリー6には流線片の全画面が形成される。7は表示回路でイメージ・メモリーを標準テレビ方式で読み出し、8のCRTに表示する。夫々の時間的順序を指定する制御部が必要であるが第3図には特に示していない。」(第5頁左下欄第6行目から右下欄第1行目。)

以上の記載を総合すると,引用例1には,
「不均質流体に対して超音波パルス信号を送出して走査し,その反射エコー信号を処理して該不均質流体の流動状況を可視化表示する装置であって,
送信兼用超音波トランスジューサー,送信・受信回路,エコー信号形成部,第1回,第2回のサブ画面を5のメモリに入れ,両者の差を計算して6のイメージメモリーに送る流線片形成部,表示回路及びCRTからなり,
同一走査線位置に対して微小時間(ΔT)間隔で複数回超音波パルス信号を送出し,それらの反射エコー信号について相連続する2回のエコー信号間の差を求め,第2回の像と第1回の像との輝度の差の像をとり,正量を赤,負量を緑で表示し,
適当な輝度レベルを「しきい値」として,その「しきい値」以下の部分は輝度0に、以上の所は輝度1(100%)になるよう2値化するような処理を行う,
超音波利用の流動表示装置。」(以下,「引用1発明」という。)
が記載されているものと認められる。

(2)引用例2
本願出願日前に頒布された刊行物である,特開平3-121058号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている(下線は,当審にて付加した)。

ア 「5.超音波送受信手段によつて運動組織を含む被検体内の断層像データを所定周期で繰り返して得る断層走査手段と、この断層走査手段によつて得た時系列の断層画像データとそれらの断層画像データから生成した差分画像データとを別個に記憶する手段と、この記憶手段から読み出した差分画像データへカラー情報を付与する手段と、前記記憶手段から読み出した断層画像データと前記カラー情報を付与された差分画像データとを重畳させて表示するカラー表示手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。」(第1頁右下欄第8行目から第18行目。)

イ 「〔産業上の利用分野〕
本発明は超音波診断装置に係り、特に被検体内の血管や心臓等の運動部位の診断を容易にすることができるようにした超音波診断装置に関するものである。
〔従来の技術〕
被検体内の血流や心臓等を超音波を用いてリアルタイムで画像表示する方法は、Bモード表示,ドプラモード表示等が知られているが、最新の手法として、超音波断層像間の演算により差分画像を得る試みが、ブリティッシュ・ハート・ジャーナル59(1988年)第12頁から第19頁(British Heart Journal 59(1988),PP(12-19))に論じられている。この手法は、造影剤を用いて造影剤の注入の前後の断層像間で引算を行い、心臓の関心領域にコントラストを付けて観察できるようにすることをねらっているもので、第5図にその概念を示す。」(第1頁右下欄末行から第2頁左上欄第17行目。)

ウ 「〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するために、本発明は、超音波送受信手段によつて運動組織を含む被検体内の断層像データを所定周期で繰り返して得る断層走査手段と、この断層走査手段によって得た時系列の画像間で引算を行ってそれらの差分画像データを生成する手段と、前記差分画像データを表示する画像表示手段とを備えて超音波診断装置を構成したことを特徴としている。
そして、差分画像の生成は、超音波送受信手段によつて順次取り込まれた断層像データを少なくとも、時系列的に隣接する画像同志で行う手段を設けると良い。
また、差分画像の生成は、超音波送受信手段によつて順次取り込まれた断層像データから、時系列的にm枚毎に指定して行う手段を設けても良い。
さらに、臓器の動作1周期分の断層画像データから生成した差分画像を記憶する手段を設けると良い。
そしてさらに、時系列的に取り込んだ断層像データと、それらの断層像データから生成した差分画像データを各別に記憶する手段と、差分画像データにカラー情報を付与する手段と、断層像データとカラー情報が付与された差分画像データとを重畳して表示するカラー表示手段を設けると良い。
〔発明の原理〕
本発明が前記従来技術と異なる点は、造影剤を用いることなく、かつ、固定のマスク像を使うことなく、順繰りに一方の画像が他方の画像のマスク像となる点にある。これは対象像の時間微分を求めることに相当し、これにより臓器の運動情報を描出するものである。」(第2頁左下欄第9行目から右下欄末行。)

エ 「〔作用〕
超音波送受信手段は断層走査手段によつて制御され、超音波の送受信方向を順次変更し被検体内から運動組織を含む断面の断層像データを時系列的に取り込む。そして、取り込まれた断層像データは順次、差分画像データ生成手段へ送られる。差分画像データ生成手段は、時系列的に入力した画像データの一方をマスク像とし、このマスク像ともう一つの画像とを、各画像の画素データが対応するようにして引算を行い、その結果として差分画像データを生成する。この差分画像データは、差分を行つた各画像の静止部位は零となり、運動部分のデータのみが残ることとなる。差分画像データは画像表示手段へ出力されて表示される。表示画像は結局運動情報のみを表示する。
この差分画像を時系列に入力する断層像データの隣接するもの同志で行うと、高速で移動する組織を表示することができ、m枚毎に行うと低速で移動する組織を適度な速さの動画像にできるので見易くすることができる。
また、差分画像を記憶する手段を設けたので、任意の時に、かつ繰り返して観察できる。
そして、断層像データと差分画像データとを別別に記憶する手段と、差分画像データへカラー情報を付与する手段とを設け、断層像データと差分画像データとを同時に読み出してカラー表示手段へ重畳して表示すると、差分画像データによつて表示される運動部位の位置関係が解かるようになる。」(第3頁左上欄第1行目から右上欄第9行目。)

以上の記載を総合すると,引用例2には,
「超音波送受信手段によつて運動組織を含む被検体内の断層像データを所定周期で繰り返して得る断層走査手段と、この断層走査手段によつて得た時系列の断層画像データと、それらの断層画像データから各画像の画素データが対応するようにして引算を行って生成した差分画像データとを別個に記憶する手段と、この記憶手段から読み出した差分画像データへカラー情報を付与する手段と、前記記憶手段から読み出した断層画像データと前記カラー情報を付与された差分画像データとを重畳させて表示するカラー表示手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置」(以下,「引用2発明」という。)
が記載されているものと認められる。

(3)引用例3
本願出願日前に頒布された刊行物である,特開平8-98837号公報(以下「引用例3」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている(下線は,当審にて付加した)。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波式心臓画像形成に関し、特に、心室壁の運動を精確に画像化するための方法と装置に関する。」

イ 「【0007】
【課題を解決するための手段】超音波表示装置は、流体で満たされた腔部とそれを取り囲む壁の組織の二次元表示を、表示画面上に示される一連の画素画像フレームという形態で提供する。本装置は、画面上に心壁組織の変位をフレーム毎に表示するための回路を備えている。本装置は、それぞれの画素画像フレーム内の画素を2つのタイプ、即ち、組織と流体とに分類するための画素分類回路を備えている。フレーム比較器は、例えば2つの連続するフレーム間でどの画素が1つのタイプから他のタイプへと変化したかを判定する。色割当回路は、1フレーム中のタイプが変化した画素に、そのタイプが変化した画素をそれを見ているユーザーが容易に識別できるような色値を割り当てる。心内膜の拡張サイクルおよび収縮サイクルの両方についてフレーム毎に異なる色値が用いられる。異なる色値を用いる代わりに、他のマッピング機能を用いて、増分的な心壁組織の動きを区別するようにすることも可能である。」

ウ 「【0017】対数圧縮器36の出力は組織/血液インジケータ38に与えられる。この組織/血液インジケータ38は、デジタルサンプルを基準レベルと比較するものである。その基準レベルは、血液戻り信号の振幅と組織戻り信号の振幅との間に選定される。組織/血液インジケータ38の出力は、入力信号が血液を表すときの第1の状態と入力信号が組織を表すときの第2の状態とを有している。組織/血液の分析は、それぞれのデジタル化されたサンプル入力に対して行われる。したがって、それぞれのデジタル化された戻りサンプルについて、組織/血液判定が行われて、ある1つの画素位置が、血液から組織へまたは組織から血液へと変化したか否かに関して、フレーム間で識別を行うことが可能になる。」

3 引用1発明との対比
本願補正発明と引用1発明とを対比する。

(1)引用1発明の「送信兼用超音波トランスジューサー,送信・受信回路,エコー信号形成部」は,摘記事項(1)エに「1は送信兼用超音波トランスジューサーである。2は送信・受信回路である。1及び2は通常のBモード医療診断用超音波映像装置と全く同じである。3はエコー信号形成部で、上述した格例に対する種々の手段の何れを用いてもよい。夫々の手段はすでに一般に知られているので説明を省略する。」と記載されていることからして,医療診断用超音波映像装置として通常用いられる構成であり,本願補正発明の「超音波探触子から走査される各超音波ビームに対する反射エコー信号をそれぞれ受信し、各受信信号に基づいて各フレーム毎に画像を再構成する」構成に相当する。

(2)引用1発明の「同一走査線位置に対して微小時間(ΔT)間隔で複数回超音波パルス信号を送出し,それらの反射エコー信号について相連続する2回のエコー信号間の差を求め,第2回の像と第1回の像との輝度の差の像をとり,正量を赤,負量を緑で表示」することは,このことにより流動を表示する,すなわち,2つの像の間で動きのある部分を表示しようとするものであるから,本願補正発明の「少なくとも2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算し、2つのフレーム間で動きのある部分を抽出して差分処理画像として擬似カラー表示する」ことに相当する。

(3)引用1発明の「適当な輝度レベルを「しきい値」として,その「しきい値」以下の部分は輝度0に、以上の所は輝度1(100%)になるよう2値化するような処理を行う」構成のうち,輝度についてしきい値と比較する構成については,本願補正発明の「前記2つのフレームの同一ポイントのデータと、第一の閾値とを入力して評価基準とし、入力された画像データの当該ポイントが動いている組織の境界か否かを判定し、この判定結果を出力する判定回路部」と,「輝度についての閾値処理を行う構成」である点で共通する。

(4)引用1発明の「適当な輝度レベルを「しきい値」として,その「しきい値」以下の部分は輝度0に、以上の所は輝度1(100%)になるよう2値化するような処理を行う」構成のうち,「しきい値」以下の部分は輝度0に、以上の所は輝度1(100%)になるよう2値化する構成は,しきい値に基づいて輝度を変化させるフィルタリング処理をしていると言えるから,本願補正発明の「前記2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算した差分処理結果のうち、前記判定回路部からの動いている組織の境界か否かの判定結果に基づいて動きのある組織の境界部分をフィルタリングにより抽出して出力するフィルタ回路部」と,「輝度についての閾値処理の結果に基づいてフィルタリングにより抽出して出力する構成」である点で共通する。

(5)引用1発明の「超音波利用の流動表示装置」も,本願補正発明の「超音波診断装置」も,いずれも超音波を利用した画像を表示する装置であるから,両者は「超音波画像表示装置」で共通する。

そうすると,本願補正発明と引用1発明とは,
「超音波探触子から走査される各超音波ビームに対する反射エコー信号をそれぞれ受信し、各受信信号に基づいて各フレーム毎に画像を再構成すると共に、少なくとも2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算し、2つのフレーム間で動きのある部分を抽出して差分処理画像として擬似カラー表示する超音波画像表示装置において、
輝度についての閾値処理を行う構成と、
輝度についての閾値処理の結果に基づいてフィルタリングにより抽出して出力する構成と、
を備えた超音波画像表示装置。」
である点で一致しており,次の3点で相違する。

相違点1:本願補正発明は「超音波診断装置」であるのに対し,引用1発明は「超音波利用の流動表示装置」である点。

相違点2:「輝度についての閾値処理を行う構成」及び「輝度についての閾値処理の結果に基づいてフィルタリングにより抽出して出力する構成」が,本願補正発明では「前記2つのフレームの同一ポイントのデータと、第一の閾値とを入力して評価基準とし、入力された画像データの当該ポイントが動いている組織の境界か否かを判定し、この判定結果を出力する判定回路部」及び「前記2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算した差分処理結果のうち、前記判定回路部からの動いている組織の境界か否かの判定結果に基づいて動きのある組織の境界部分をフィルタリングにより抽出して出力するフィルタ回路部」であるのに対し,引用1発明では「適当な輝度レベルを「しきい値」として,その「しきい値」以下の部分は輝度0に、以上の所は輝度1(100%)になるよう2値化するような処理を行う」ものである点。

4 引用1発明との相違点の判断
上記各相違点について判断する。
(1)相違点1について
引用1発明は,「血液の如き不均質な構成の流体」について,「流線片像を形成し、流動を表示する」ために,「流体の不均質性に起因するスペックルパターン像やエコー増強粒像に着目し、その映像を相互の位置的相関が残留する程度の短かい時間差で2回測定し、その差の映像から流線片像を形成し流動状況を表示する」ものである(摘記事項(1)イ)。また,引用1発明において,「相連続する2回のエコー信号間の差を求め」ることは,流動するスペックルの差信号が観測できるようにするため(摘記事項(1)ウ)であり,引用1発明ではそれにより「第2回の像と第1回の像との輝度の差の像をと」ることで得られるスペックルの像の差の像を,流線片と見立てることにより,血液の如き不均質な構成の流体の流動状況を表示しようとするものである。
一方,引用1発明における第2回の像と第1回の像との輝度の差の像をとることと同様に,超音波断層像間の演算により差分画像を得て,そのことにより臓器の運動情報を得ることは,例えば引用例2に従来の技術としても記載される(摘記事項(2)イ及びウ)ように,従来周知の技術である。
してみると,引用1発明のような第2回の像と第1回の像との輝度の差の像をとる構成を用いて,血液の如き不均質な構成の流体の流動状況ではなく,動いている臓器の運動情報を得ようとすることは,当業者であれば特段の困難なく為し得たものである。ここで,引用例1には,血液の流速が速いことや,スペックル像の差の像から流線片像を形成するために差をとる前後の像でスペックルが重なるような条件などが示されている(摘記事項(1)ウ)が,上記周知の技術で得ているような動いている臓器の運動は,血液の流速に比べればはるかに遅いものであることは当業者には明らかであり,上記のように引用1発明により動いている臓器の運動情報を得ようとする際には,そのような臓器の動きが得られるような撮像条件を設定することは,当業者であれば当然に行い得たものである。また,引用例1には「相つづく2画面の差をとると動かない筋肉や心臓壁等の信号は相殺され」(摘記事項(1)ウ)と記載されているが,これは血液の如き不均質な構成の流体の流動状況を表示しようとした場合の撮像条件によるものであり,上記のように臓器の動きが得られるような撮像条件を設定すれば,そのような条件において,動いている臓器が,相つづく2画面の差をとることで,その差が観測されるようになることは明らかである。
そうすると,そのように引用1発明を臓器の動きが得られるようなものとしたものは,本願補正発明と同様に,超音波診断装置と言うべきものである。
したがって,相違点1は実質的な相違点とは言えない。

(2)相違点2について
まず,引用1発明の「適当な輝度レベルを「しきい値」として,その「しきい値」以下の部分は輝度0に、以上の所は輝度1(100%)になるよう2値化するような処理を行う」ことが,第1回及び第2回の像に対してか,第2回の像と第1回の像との輝度の差の像に対してか,について,引用例1には「本来スペックルは、中央部が最も白色の輝度が高く、周辺に向って順次輝度が低下し遂に黒部に至る性質を有している。したがって形成された流線片も第1図(d),(e)等では、その中央が輝度が大で周辺は輝度が低い。もし適当な輝度レベルを「しきい値」として、それ以下の輝度の部分の輝度を0とするか、その「しきい値」以下の部分は輝度0に、以上の所は輝度1(100%)になるよう2値化するかの処理を行うと、第1図の(d),(e)では個々の流線片の形状が長さに対しかなり巾が広いが、その巾を狭くすることが可能でやせた流線片の形状に変換でき、見やすい画面が得られる」(摘記事項(1)ウ)と記載されており,しきい値処理を行うことで第1図の(d),(e)のような個々の流線片の形状の巾を狭くすることが可能であるとされている。ここで,第1図の(d)とは,第1図の(b)のような,第2回の像と第1回の像との輝度の差の像をとり,正量を赤,負量を緑で表示した像を,2回連続して形成し合成したものであり,像の輝度として正及び負の量がある像である。もしこのような像に対してしきい値処理を行うと,しきい値以上の輝度の像のみとなり,例えば負量である緑の表示がないような像となり,しきい値処理により流線片の形状を見やすいものとする目的にもとることとなる。一方,第1回及び第2回の像に対してしきい値処理を行うと,第1回及び第2回の像におけるスペックルの形状が中心部が残るように小さなものとなり,そのような像に対して輝度の差の像をとれば,流線片の形状も巾が狭いものとなる。すなわち,引用1発明の「適当な輝度レベルを「しきい値」として,その「しきい値」以下の部分は輝度0に、以上の所は輝度1(100%)になるよう2値化するような処理を行う」ことは,第1回及び第2回の像に対して行っているものである。
そうすると,上記相違点1について示したように,引用1発明を臓器の動きが得られるようなものとした場合に,上記のしきい値を,例えば臓器があるところの輝度と臓器がないところの輝度との間の輝度に設定することで,しきい値処理により動きのある臓器の境界を判定できるようにすることは,当業者であれば容易に為し得たものである。さらにそのような処理を,判定回路として構成することは,当業者において適宜に為し得たものである。
そして,上記のように,引用1発明において,第1回及び第2回の像に対して2値化するようなしきい値処理を行い,第2回の像と第1回の像との輝度の差の像をとった像は,動きのある臓器の境界のみ正量又は負量となり,動きのある臓器の境界のみが抽出されるものとなることは,当業者には明らかである。また,そのような処理を行うことを,フィルタ回路部として構成することは,当業者において適宜に為し得たものである。

(4)まとめ
本願補正発明の作用効果は,引用1発明及び周知の技術から,当業者であれば予測できる範囲のものである。
以上の通り,本願補正発明は,引用1発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 引用2発明との対比
次に,本願補正発明と引用2発明とを対比する。

(1)引用2発明の「超音波送受信手段によつて運動組織を含む被検体内の断層像データを所定周期で繰り返して得る断層走査手段」は,「時系列の断層画像データ」を得るのであるから,本願補正発明の「超音波探触子から走査される各超音波ビームに対する反射エコー信号をそれぞれ受信し、各受信信号に基づいて各フレーム毎に画像を再構成する」構成に相当する。

(2)引用2発明の「断層走査手段によつて得た時系列の断層画像データと、それらの断層画像データから各画像の画素データが対応するようにして引算を行って生成した差分画像データとを別個に記憶する手段と、この記憶手段から読み出した差分画像データへカラー情報を付与する手段と、・・・前記カラー情報を付与された差分画像データとを・・・表示するカラー表示手段」は,本願補正発明の「少なくとも2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算し、2つのフレーム間で動きのある部分を抽出して差分処理画像として擬似カラー表示する」構成に相当する。

そうすると,本願補正発明と引用2発明とは,
「超音波探触子から走査される各超音波ビームに対する反射エコー信号をそれぞれ受信し、各受信信号に基づいて各フレーム毎に画像を再構成すると共に、少なくとも2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算し、2つのフレーム間で動きのある部分を抽出して差分処理画像として擬似カラー表示する超音波診断装置。」
である点で一致しており,次の点で相違する。

相違点4:本願補正発明では「前記2つのフレームの同一ポイントのデータと、第一の閾値とを入力して評価基準とし、入力された画像データの当該ポイントが動いている組織の境界か否かを判定し、この判定結果を出力する判定回路部と、
前記2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算した差分処理結果のうち、前記判定回路部からの動いている組織の境界か否かの判定結果に基づいて動きのある組織の境界部分をフィルタリングにより抽出して出力するフィルタ回路部」を備えているのに対し,引用2発明ではこれらの構成を備えていない点。

6 引用2発明との相違点の判断
上記相違点4について判断する。
引用例3には,超音波表示装置において,特に心室壁の運動を精確に画像化するため(摘記事項(3)ア)として,画素画像フレーム内の画素を2つのタイプ,即ち,組織と流体とに分類するための画素分類回路を備え,また,2つの連続するフレーム間でどの画素が1つのタイプから他のタイプへと変化したかを判定するフレーム比較器を備えること(摘記事項(3)イ),また,画素分類回路の具体的な構成として,デジタルサンプルを基準レベルと比較する組織/血液インジケータにおいて,基準レベルを血液戻り信号の振幅と組織戻り信号の振幅との間に選定することで,組織/血液インジケータの出力が,入力信号が血液を表すときの第1の状態と入力信号が組織を表すときの第2の状態とを有するものとし,デジタル化された戻りサンプルについて,組織/血液判定を行い,ある1つの画素位置が,血液から組織へまたは組織から血液へと変化したか否かに関して,フレーム間で識別を行うことを可能とすること(摘記事項(3)ウ)が記載されている。
ここで,引用2発明は「被検体内の・・・心臓等の運動部位の診断を容易にすることができるようにした」もの(摘記事項(2)イ)であり,差分画像データをとることで臓器の運動情報を描出するものである。すると,このような臓器の運動情報を描出するために,臓器の運動がわかりやすいように表示を行なおうとすることは,引用2発明において当然に要請されている技術課題であり,そのために,引用例3に記載された技術的事項を適用し,画素分類回路及びフレーム比較器を備えることで,臓器の運動情報を表示させようとすることは,当業者において容易に為し得たものである。
そうすると,引用2発明において,差分画像データを生成する基となる時系列の断層画像データのそれぞれに対して,引用例3に記載された技術的事項である画素分類回路により,画素が,組織か血液かのいずれであるかを判定し,フレーム比較器により2つの断層画像データのどの画素が組織と血液との間で変化したかの判定をすることとなり,そのような変化した画素についてのみ臓器の運動情報として差分画像を表示することは,当業者であれば容易に為し得た範囲内のものである。
また,本願補正発明の作用効果は,引用2発明,引用例3に記載された技術的事項及び周知の技術から,当業者であれば予測できる範囲のものである。
以上の通り,本願補正発明は,引用2発明,引用例3に記載された技術的事項及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7 補正案について
請求人は,当審における審尋に対する平成21年3月31日付けの回答書において,特許請求の範囲をさらに限定した補正案を示している。当該補正案は,本願補正発明に対して,判定回路部おける組織の境界の判定について,「前記2つのフレームの同一ポイントのデータが低輝度から中輝度或いは中輝度から低輝度に変化した場合」に組織の境界であると判定すると限定し,フィルタ回路部について,「第二の閾値とを入力して」,「差分処理結果の絶対値が前記第二の閾値よりも大きい場合にその差分処理結果を出力し、その出力に応じて差分処理画像を擬似カラー表示」するように限定しているものである。
しかし,上記判定回路部における限定は,本願の明細書【0015】段落に「心腔は低輝度、心壁は中輝度で表示される」と記載されるように,フレームのデータについて,心腔と心壁との間に第一の閾値を設けているものであり,この点については,上記「6 引用2発明との相違点の判断」で示したように,引用例3に,基準レベルを血液戻り信号の振幅と組織戻り信号の振幅との間に選定することで組織/血液判定を行うこととして記載されているものである。
また,上記フィルタ回路部における限定は,差分処理結果の絶対値が所定値以上のもののみを表示するようにしたものであるが,上記「6 引用2発明との相違点の判断」で示したように,引用2発明は臓器の運動情報を描出しようとするものであり,差分画像データが小さいところは運動による変化が小さいところであることは当業者には明らかである。すると,運動による変化がある程度大きいところのみ表示するように,差分画像データに対して適当な閾値処理を行うことは,臓器の運動がわかりやすいように表示を行なおうとするために,当業者であれば適宜に為し得たことである。
してみると,上記補正案によっても,引用2発明,引用例3に記載された技術的事項及び周知の技術に対して,その進歩性を認めることはできない。

8 むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成19年12月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1乃至3に係る発明は,平成19年8月29日付け手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるとおりのものであって,その請求項1に係る発明は,上記第2,1に記載のとおりのものである(以下,「本願発明」という)。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は,上記第2,2(1)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,上記第2で検討した本願補正発明において,「超音波診断装置」について,「少なくとも2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算し、2つのフレーム間で動きのある部分を抽出して差分処理画像として擬似カラー表示する」と限定されていたものを,「少なくとも2つのフレーム間で同一ポイントのデータの差分を演算して差分処理画像を生成する」としたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,上記第2,4に述べたとおり,引用1発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用1発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用1発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,その余の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本件出願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-21 
結審通知日 2009-08-25 
審決日 2009-09-07 
出願番号 特願平10-34576
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川上 則明  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 田邉 英治
信田 昌男
発明の名称 超音波診断装置  
代理人 西山 春之  

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