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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1206031
審判番号 不服2008-10376  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-24 
確定日 2009-10-26 
事件の表示 特願2001-153578「ファイバーレーザーおよびファイバーアンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 6日出願公開、特開2002-353541〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
(1)手続の経緯
本願は、平成13年5月23日の出願であって、平成20年2月4日に手続補正がなされ、同年3月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月24日に拒絶査定不服審判が請求され、同年5月22日に手続補正がなされたものである。

(2)本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成20年5月22日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「Ho^(3+)が添加されたコアを持つファイバーを、InGaN、InGaNAsあるいはGaNAsからなる活性層を有するGaN系レーザーダイオードによって励起し、該ファイバーにおける ^(5)S_(2) → ^(5)I_(8) の遷移によって波長が540?560nmのレーザービームを発生させる構成を有することを特徴とするファイバーレーザー。」

2 刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、M.C.BRIERLEY, et al., LASING AT 2.08μm AND 1.38 μm IN A HOLMIUM DOPED FLUORO-ZIRCONATE FIBRE LASER, ELECTRONICS LETTERS, Vol.24, No.9, 1988, p.539-540(以下「引用例」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている(当審による和訳を括弧内に付した。)。

(1)「2.08μm-wavelength laser operation: The fibre was a ZBLANP^(10) fibre with a core diameter of 40μm doped with 993 ppm of Ho^(3+) ions. A 0.5 m length of this fibre was set up in a Fabry-Perot cavity and longitudinally pumpued by 488 nm CW radiation from an argon ion laser exciting ground state electrons of the Ho^(3) ions into ^(5)K_(3) energy level. 」(539頁右欄15?21行)
(2.02μm-波長レーザ動作: ファイバは、コア径が40μmのHo^(3+)イオンを993ppmドープしたZBLANP^(10)ファイバであった。0.5m長のこのファイバは、ファブリ-ペローキャビティ内に設置され、Ho^(3+)イオンの基底状態の電子を^(5)K_(3)エネルギーレベルに励起する、アルゴンイオンレーザからの488nmCW放射により、長さ方向にポンプされた。)

(2)「1.38μm-wavelength laser operation: In addition to the 2μm fluorescence band holmium also exhibits strong fluorescence around 550 nm, 750 nm, 1.01μm, 1.19μm and 1.35μm in this fibre (Fig.2). Potentially the most useful of these bands for communications is that around 1.35μm. This radiation is obtained from a cascade transition between the ^(5)S_(2) +^(5)F_(4) and ^(5)I_(5) enegy levels.^(11) Replacing the mirros in the experiment above by an input mirror with 99% reflectivity at 1.35μm and 95% transmission at 488 nm and an output mirror with 98% reflectivity at 1.35μm, and again pumping at 488 nm reveals that this transition will indeed support laser action in this host (Fig.3).・・・・The lasing wavelength was 1.38μm, longer than the peak of flourescence which occurs at 1.35μm. Emission at this wavelength was CW. 」(539頁右欄下から16行?末行)
(1.38μm-波長レーザ動作: 2μm発光バンドに加え、ホルミウムはまた、このファイバの中で550nm、750nm、1.01μm、1.19μm及び1.35μm付近に強い発光を示す(図2)。これらのバンドで潜在的に通信に最も有用なのは、1.35μm付近のバンドである。この放射は、^(5)S_(2)+^(5)F_(4)と^(5)I_(5)エネルギーレベル間の段階的な遷移から得られる。上述の実験における鏡を、1.35μmで>99%の反射率を有し488nmで>95%の透過率を有する入射鏡と、1.35μmで98%の反射率を有する出射鏡に置き換え、再度488nmでポンプすることは、この遷移が、このホストにおけるレーザの動作を実際にサポートするであろうことを明らかにする(図3)。・・・・レイジング波長は1.38μmで、1.35μmで生じる発光のピークに比べて長い。この波長における放射は、CWである。)

(3)上記(1)及び(2)によれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「コア径が40μm、長さの0.5mのHo^(3+)イオンを993ppmドープしたZBLANPファイバをファブリ-ペローキャビティ内に設置し、アルゴンイオンレーザからの488nmCW放射により、長さ方向にポンプしたレーザにおいて、
2μm発光バンドに加え、ホルミウムはまた、このファイバの中で550nm、750nm、1.01μm、1.19μm及び1.35μm付近に強い発光を示す、レーザ。」

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「コア径が40μm、長さの0.5mのHo^(3+)イオンを993ppmドープしたZBLANPファイバ」は、本願発明の「Ho^(3+)が添加されたコアを持つファイバー」に相当する。

(2)引用発明は、「アルゴンイオンレーザ」により、「ファブリ-ペローキャビティ内に設置し」た「コア径が40μm、長さの0.5mのHo^(3+)イオンを993ppmドープしたZBLANPファイバ」を「ポンプ」(すなわち励起)し、このファイバの中で550nm付近に強い発光を示すものであるから、引用発明と本願発明は、「Ho^(3+)が添加されたコアを持つファイバー」を励起光源により「励起」し、「波長が540?560nmのレーザービームを発生させる構成を有するファイバーレーザー」である点で一致する。

(3)以上(1)及び(2)から、本願発明と引用発明とは、
「Ho^(3+)が添加されたコアを持つファイバーを、励起光源によって励起し、波長が540?560nmのレーザービームを発生させる構成を有するファイバーレーザー。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
励起光源が、本願発明においては、「InGaN、InGaNAsあるいはGaNAsからなる活性層を有するGaN系レーザーダイオード」であるのに対し、引用発明においては、波長488nmのアルゴンイオンレーザである点。

相違点2
Ho^(3+)が添加されたコアを持つファイバーにおける、波長が540?560nmのレーザービームを発生させる構成が、本願発明においては、「^(5)S_(2) → ^(5)I_(8) の遷移」によるものであるのに対し、引用発明においては、そのようなものであるか明らかでない点。

4 判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
ア 引用発明において、波長488nmの励起光を発生する光源として、具体的にどのようなものを用いるかは、当業者が適宜選択すべき設計上の事項である。

イ 他方、波長488nmのレーザを発生する「InGaNからなる活性層を有するレーザーダイオード」は、本願出願前に周知である(例.特開平8-316528号公報(【0001】、【0034】及び図2参照。同図の線βにおいて、井戸層膜厚が120Å程度で、発光ピーク波長は488nmとなる。)、特開平6-260683号公報(【0032】?【0034】参照。In_(x)Ga_(1)-_(x)NのInのモル比xを0<x<0.5とし、発光色を430nmから590nmまで変える間で、発光色は488nmとなる。))。

ウ そして、引用発明における波長488nmの励起光を発生する励起光源として、上記周知技術を適用し、InGaNからなる活性層を有するレーザーダイオードを用いて、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。

(2)上記相違点2について検討する。
ア 「^(5)S_(2) → ^(5)I_(8) の遷移」について、本願明細書には、「本発明による一つのファイバーアンプは、Ho^(3+)が添加されたコアを持つファイバーをGaN系レーザーダイオードによって励起し、該ファイバーにおける・・・ ^(5)S_(2 )→ ^(5)I_(8)の遷移によって生じる蛍光の波長領域に含まれる波長の入射光を増幅する構成を有するものである。このファイバーアンプは、より具体的には、・・・ ^(5)S_(2 )→ ^(5)I_(8)の遷移によって540?560nmの波長領域の蛍光を発生させて、この領域に含まれる波長の入射光を増幅する構成をとることができる。」(【0026】)と記載されている。

イ 本願明細書の上記記載は、本願発明における、Ho^(3+)が添加されたコアを持つファイバーにおける、波長が540?560nmのレーザービームを発生させる構成が「^(5)S_(2) → ^(5)I_(8) の遷移」によるものであることの技術的意味について、レーザーダイオードによって励起されたHo^(3+)が添加されたコアを持つファイバーが、波長が540?560nmのレーザービームを発生し、該波長がHoの「^(5)S_(2 )→ ^(5)I_(8)の遷移」に起因する大きさのものであることを示唆するにとどまる。

ウ しかるところ、引用発明における発光も、ホルミウムの準位間の遷移によってなされるのは明らかであり、引用発明における「ホルミウムは・・・550nm・・・付近に強い発光を示す」ときの遷移は、波長550nmの大きさに対応する準位である「^(5)S_(2 )→ ^(5)I_(8)の遷移」であるものといえる。

エ したがって、引用発明における「550nm付近に強い発光を示す」遷移は「^(5)S_(2 )→ ^(5)I_(8)の遷移」であるものといえるから、引用発明は上記相違点2を備えており、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

(3)効果
本願発明の奏する効果が、引用発明及び周知技術から当業者が予測可能な域を超える程の格別顕著なものとは認められない。

(4)まとめ
以上の検討によれば、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-24 
結審通知日 2009-08-25 
審決日 2009-09-07 
出願番号 特願2001-153578(P2001-153578)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 傍島 正朗  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 吉野 公夫
右田 昌士
発明の名称 ファイバーレーザーおよびファイバーアンプ  
代理人 佐久間 剛  
代理人 柳田 征史  

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