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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07F |
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管理番号 | 1206098 |
審判番号 | 不服2008-1866 |
総通号数 | 120 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-01-24 |
確定日 | 2009-10-29 |
事件の表示 | 特願2000-307916「自動販売機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月19日出願公開、特開2002-117447〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 この出願は、平成12年10月6日の特許出願であって、同19年8月29日付で拒絶の理由が通知され、同19年11月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同19年12月19日付で拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、同20年1月24日に本件審判の請求がされ、同20年2月25日に明細書を補正対象書類とする手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 2.本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 2.1 補正の内容の概要 本件補正は特許請求の範囲を含む明細書について補正をするものであって、補正前後の請求項1の記載は以下のとおりである。 a.補正前の請求項1 「商品収納室を有する本体と、前記本体の前面開口部を開閉する収納扉と、前記本体の内面に、発泡体からなる基材の表面に金属薄板からなる防湿層が設けられた断熱部材を添設して、前記商品収納室を形成してなる自動販売機において、 自動販売機体の前面に取り付けられ前面扉のコーナーがアール形状をなし、前記本体における天面の左右両端を曲面で形成したことを特徴とする自動販売機。」 b.補正後の請求項1 「商品収納室を有する本体と、前記本体の前面開口部を開閉する収納扉と、前記本体の内面に、発泡体からなる基材の表面に金属薄板からなる防湿層が設けられた断熱部材を添設して、前記商品収納室を形成してなる自動販売機において、 自動販売機体の前面に取り付けられ前面扉のコーナーがアール形状をなし、前記本体における天面の左右両端を前記前面扉のコーナーのアール形状に対応した曲面で形成したことを特徴とする自動販売機。」 なお、下線は補正箇所を明りょうにする目的で当審にて付した。 2.2 補正の適否 請求項1における補正は、本体における天面の左右両端に形成された曲面が前面扉のコーナーのアール形状に対応したものであるという限定事項を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。 2.2.1 補正発明 補正発明は、本件補正により補正がされた明細書及び図面の記載からみて、上記2.1のbの補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 2.2.2 引用例記載事項 この出願前に頒布された刊行物である特開2000-163639号公報(以下「引用例」という。)には、以下のとおり記載されている。 a.(第1欄第23-35行) 「【従来の技術】従来、この種の自動販売機においては、図5及び図6に示すように、機体1の商品収納室2を外郭構造体を兼ねる板金(鉄板)からなる外箱3Aと内箱3Bとの二重構造にて形成し、ドア(図示せず)が開閉可能に組付けられる機体1の前面に開口する商品収納室2の開口部2aの周縁にブレーカ4を周設してなるとともに、商品収納室2を囲繞形成する天井壁面部位、左右両側壁面部位及び背壁面部位に対応する内箱3Bとの間の外箱3Aの各々の内面にパネル状の断熱部材5をそれぞれ添設する一方、その底壁面部位に内箱3Bの底面に絞り加工にて形成された排水通路Sの形態に対応させて異形状の底面断熱部材6を添設してなる構成を有するものがある。」 b.(第3欄第14-44行) 「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1から図4に示す図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明の図示の実施形態において、図5及び図6に示す従来の自動販売機と構成が重複する部分は同一符号を用いて説明する。 【0016】本発明に係る自動販売機は、図1に示すように、機体1の商品収納室2が外郭構造体を兼ねる板金(鉄板)からなる外箱3にて形成されているとともに、ドア(図示せず)が開閉可能に組付けられる機体1の前面に開口する商品収納室2の開口部2aの周縁には、ブレーカ4が周設されている。 【0017】そして、商品収納室2を囲繞形成する天井壁面部位、左右両側壁面部位及び背壁面部位に対応する外箱3の各々の内面には、パネル状の断熱部材10がそれぞれ接着またはビス止め等にて添設されているとともに、その底壁面部位に対応する外箱3の内面には、排水通路Sが絞り加工された板金(鉄板)からなる表面材6Aと、この表面材6Aの排水通路Sの形態に対応させて接着される異形状の断熱材6Bとの積層構造からなる底面断熱部材6が添設されて、商品収納室2の内箱を構築してなる構成を有するもので、各々の断熱部材10,6相互の接合部位には、図示しないシリコン樹脂等のシール材が設けられ、それらの間に生じる隙間を水密的にシールするようになっている。 【0018】このような内箱を構築する断熱部材10は、図2に示すように、例えばウレタン樹脂またはスチレン系樹脂などの発泡体を基材11とし、この基材11の表面に、例えば厚さが0.4mmの板金(鉄板)や、例えば厚さ0.1mmのアルミ箔などの金属薄板からなる低透湿係数を有する防湿層12が設けられた形態を有する。」 上記摘記事項より、引用例には、次の事項が記載されていると認める。 「商品収納室(2)を有する外箱(3)と、前記外箱(3)の開口部(2a)を開閉するドアと、前記外箱(3)の内面に、発泡体からなる基材(11)の表面に金属薄板からなる防湿層(12)が設けられた断熱部材(10)を添設して、前記商品収納室(2)を形成してなる自動販売機。」(以下「引用例記載の発明」という。) 2.2.3 対比 補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「外箱」は、補正発明の「本体」に相当しており、以下同様に、「開口部」は「前面開口部」に、「ドア」は「収納扉」にそれぞれ相当していることが明らかであるので、両者は、次の点で一致及び相違すると認められる。 <一致点> 「商品収納室を有する本体と、前記本体の前面開口部を開閉する収納扉と、前記本体の内面に、発泡体からなる基材の表面に金属薄板からなる防湿層が設けられた断熱部材を添設して、前記商品収納室を形成してなる自動販売機。」である点。 <相違点> 補正発明では、自動販売機体の前面に取り付けられ前面扉のコーナーがアール形状をなし、本体における天面の左右両端を前記前面扉のコーナーのアール形状に対応した曲面で形成したのに対し、引用例記載の発明では、そのような特定がない点。 2.2.4 相違点の検討 そこで、上記相違している点について検討する。先ず、本体における天面の左右両端の形状について検討すると、冷蔵庫において、収納室を有する本体における天面の左右両端をアール形状の曲面で形成することは、例えば実公昭33-13284号公報、実公昭36-10473号公報、実公昭37-22389号公報等に記載されているように従来周知であり、冷蔵庫と自動販売機とは冷蔵用の収納室を備えている点で技術分野が関連している。そして、コーナー部をアール形状とすると応力の集中が生じにくくなり、強度が向上することは、構造設計技術上の常識である。したがって、天面の左右両端をアール形状の曲面で形成することにより、本体の変形を抑えることができることは、当業者であれば容易に想到し得ることであるので、引用例記載の発明に上記従来周知の事項を採用して、本体における天面の左右両端をアール形状の曲面で形成することに格別の困難性はない。 次に、前面扉のコーナーの形状について検討すると、前面扉のコーナーをどのような形状とするかは、必要に応じて適宜決定する設計的事項であって、上記各周知例にも記載されているように、前面扉のコーナーをアール形状をなすものとすることにも格別の困難性はない。 さらに、前面扉のコーナーの形状と本体における天面の左右両端の形状との対応について検討すると、上記各周知例に記載の図からも、前面扉のコーナーの形状と本体における天面の左右両端の形状とが対応していることが窺えるように、両者の形状を対応させることは、普通になされる程度の設計的事項である。 したがって、引用例記載の発明において、自動販売機体の前面に取り付けられ前面扉のコーナーがアール形状をなし、本体における天面の左右両端を前記前面扉のコーナーのアール形状に対応した曲面で形成することは、上記従来周知の事項を採用することにより、当業者が容易に想到することができたことである。 2.2.5 補正発明の作用効果について 補正発明が奏する作用効果は、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項から当業者が予測できる程度のものであって格別のものではない。 したがって、補正発明は、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 2.3 むすび 以上のとおりであるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 3.1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1及び2に係る発明は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、平成19年11月5日付手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記2.1のaの補正前の請求項1に示したとおりである。 3.2 引用例記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に上記引用例が引用されており、その記載事項は、上記2.2.2に示したとおりである。 3.3 対比・判断 本願発明は、上記2.2で述べたとおり、補正発明の発明特定事項から、本体における天面の左右両端に形成された曲面が前面扉のコーナーのアール形状に対応したものであるという限定事項が省かれたものである。 そうすると、上記2.2.5で検討したとおり、補正発明は、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正発明の発明特定事項から上記限定事項が省かれた本願発明についても、同様の理由により、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、この出願の請求項2に係る発明について判断するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-08-19 |
結審通知日 | 2009-08-25 |
審決日 | 2009-09-14 |
出願番号 | 特願2000-307916(P2000-307916) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G07F)
P 1 8・ 121- Z (G07F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨江 耕太郎 |
特許庁審判長 |
豊原 邦雄 |
特許庁審判官 |
小椋 正幸 今村 亘 |
発明の名称 | 自動販売機 |
代理人 | 松本 洋一 |