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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1206190
審判番号 不服2007-32841  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-06 
確定日 2009-10-28 
事件の表示 特願2006-107132「エコドライブ支援装置、カーナビゲーションシステム及びエコドライブ支援プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月25日出願公開、特開2007-278911〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成18年4月10日の出願であって、平成19年2月16日付けで拒絶理由が通知され、平成19年3月31日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年10月26日付けで拒絶査定がなされ、平成19年12月6日付けで拒絶査定に対する審判請求がされたものであって、その請求項1ないし9に係る発明は、平成19年3月31日付けの手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
車両に搭載されて経済的且つ安全な車両の運転を支援するエコドライブ支援装置であって、
GPS衛星からの電波を受信して測位データを所定時間間隔で出力するGPS受信手段と、
画面表示可能なディスプレイと、
前記GPS受信手段からの前記測位データに基づいて走行状況の履歴を記憶する走行履歴記憶手段と、
前記GPS受信手段からの前記測位データに基づいて、現在の速度が所定値以上である場合、現在の速度を表すインジケータ及び現在の加速度を表すインジケータを前記ディスプレイに表示させ、一方、現在の速度が所定値未満である場合、前記走行履歴記憶手段に記憶された前記走行状況の履歴に基づいて、直前の所定時間分の速度履歴を表す速度履歴グラフ及び加速度履歴を表す加速度履歴グラフを前記ディスプレイに表示させるグラフ表示制御手段と
を備えたことを特徴とするエコドライブ支援装置。」

2.引用文献記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-57484号公報(平成18年3月2日出願公開、以下、「引用文献」という。)には、例えば、以下の記載がある。

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、空車、積車における車両総質量の差の大きな、例えば、貨物自動車や、バスなどの燃料消費量に関わる車両の運転状態を評価するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の運転技術の改善を促し、運転操作の改善により燃費を向上させる技術が公開されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
然るに、上記技術では、燃費を悪化させる運転の判定方法として、(一)加速度、(二)減速度、(三)車速、(四)シフトアップが可能にも拘らずシフトアップをしない走行、(五)空吹かし、の五つのパラメータによって判定していた。
このうち(一)?(三)は、所定値を超えた場合には「燃費を悪化させる運転」と判定していた。そのような方法では、判定値を超えさえしなければ、「燃費を悪化させる運転」と判定しない。しかし、現実的には各々の項目で、その程度に応じて省燃費運転を評価するべきである。
また、(三)の車速に関して、発進から停止までの走行距離の長短を考慮することなく、単純に車速の大小のみで判定することは不適切であり、評価結果が必ずしも実態を反映するものではないと言う問題を抱えていた。
【0004】
そうした問題点に対処するため、本発明者らは、平均的な運転の仕方に対して、燃料を節約する運転をしているのか、それとも燃料を無駄に消費するような運転をしているのかを定量的に求め、その求めたデータを基に、ドライバ及び/又は運転管理者に対して具体的な省燃費運転の指導を可能とする燃料消費量評価システムを提供してきた。
かかる技術は、運転の仕方に対して、単位距離当りの燃料消費量を関係付けていた。然るに、実際の道路は勾配があったり、交通の流れもその時々で異なり、実際の燃料消費量に影響を与えてしまう。そのため、同じような運転の仕方をしていても、前もって関連付けた単位距離当りの燃料消費量との関係もずれ易い。
さらに、燃料消費量は、積荷、或いは乗客を含めた車両総質量の大小によって左右されるが、これら、勾配や、車両総質量の大小の影響は、反映されないものであった。
そして、それらの技術は、本来ドライバに対して、省燃費運転を促すことが第1の目的であるにもかかわらず、その様にドライバに対して、リアルタイムで、省燃費運転を促すことの出来る手段が規定されていない。」(段落【0001】ないし【0004】)

イ.「【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案するものであり、求めた燃費データを基に、平均的な運転の仕方に対して、省燃費運転をしているのか否か、また、目標値を立て、車両総質量の変化をも考慮し、勾配や交通の流れの影響をも受けることなく、その求めたデータを基に、ドライバ及び/又は運転管理者に対して具体的な省燃費運転の指導を可能とし、とりわけドライバに対しては、リアルタイムで係る省燃費運転を喚起・指導出来る燃料消費量評価システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料消費量評価システムは、車両(1)のエンジン回転数(N)を計測するエンジン回転数計測手段(2)と、アクセル開度(α)を計測するアクセル開度計測手段(3)と、車速(V)を計測する車速計測手段(4)と、燃料流量(Fw)を計測する燃料流量計測手段(5)と、エンジン負荷(L)を計測するエンジン負荷計測手段(6)と、計測されたエンジン回転数(N)、アクセル開度(α)、車速(V)、燃料流量(Fw)及びエンジン負荷(L)の各データを記憶する記憶手段(車載データベース7)と、前記各データから車両(1)の燃料消費量(Q)及び車両質量(m)を演算する制御手段(20)と、車両(1)に搭載された表示手段(モニタ12)とを有し、前記制御手段(20)は走行開始から停止までを複数の領域(E1?E4)に分類し、該複数の領域(E1?E4)の各々について燃料消費に関連するパラメータ(「発進加速シフトアップエンジン回転数N1」P1、「発進加速アクセル開度α1」P2、「定常走行エンジン回転数N2」P3、「車速(V)^(2)/走行距離」P4、「減速惰行割合」P5、「アイドル走行車速」P6)を設定し、前記パラメータ(P1?P6)と平均的な運転をした場合に対する燃料消費量割合(λ)との相関関係に基づいて、実際の運転の、平均的な運転をした場合に対する燃料消費量割合(λ)及び、目標とする運転をした場合の、平均的な運転をした場合に対する燃料消費量割合(λ)を求め、該求めた燃料消費量割合(λ)に基づいて評価を行ない、その評価結果を前記表示手段(モニタ12)に表示する様に構成されている(請求項1)。
【0008】
前記複数の領域(E1?E4)は、比較的低速からアクセル開度(α)を増加させると共に車速(V)或いは移動平均車速が上昇する領域(発進加速領域E1)と、アクセル開度(α)を減少させる領域(減速領域E3)と、アクセル開度(α)が比較的小さく且つエンジン回転数(N)が比較的低い領域(アイドル走行領域E4)と、上述した3つの領域(E1、E3、E4)の何れにも該当しない定常走行領域(E2)とを含んでいる(請求項2)。
【0009】
また、本発明の燃料消費量評価システムは、前記比較的低速からアクセル開度(α)を増加すると共に車速(V)或いは移動平均車速が上昇する領域(発進加速領域E1)における前記パラメータ(P1、P2)はギヤシフトの際のエンジン回転数(シフトアップエンジン回転数N1;P1)とアクセル開度(α1;P2)であり、前記アクセル開度(α)を減少させる領域(減速領域E3)における前記パラメータ(減速惰行割合;P5)は、アクセルとブレーキの何れも踏んでいないで走行(惰行)した距離(A)とブレーキを踏んで走行(減速走行)した距離(B)との和(A+B)におけるアクセルとブレーキの何れも踏んでいないで走行した距離(A)が占める割合であり、前記アクセル開度(α)が比較的小さく且つエンジン回転数(N)が比較的低い領域(アイドル走行領域E4)における前記パラメータ(P6)は車速であり、前記上述した3つの領域の何れにも該当しない定常走行領域(E2)における前記パラメータ(P3)はエンジン回転数(定常走行エンジン回転数N2)である(請求項3)。
また、発進停止間における燃料消費に関するパラメータは、車速の二乗を走行距離で除した値、すなわち「(車速)^(2)/走行距離」であるのが好ましい。」(段落【0006】ないし【0009】)

ウ.「【発明の効果】
【0014】
上述する構成及び評価方法を具備する本発明の燃料消費量評価システムによれば、記録された運行データを、走行開始から停止までを複数の走行領域(E1;発進加速領域、E2;定常走行領域、E3;減速領域、E4;アイドル走行領域)に分類し(図2を参照)、該複数の領域の各々について燃料消費に関連するパラメータ(「発進加速シフトアップエンジン回転数N1」P1、「発進加速アクセル開度α1」P2、「定常走行エンジン回転数N2」P3、「車速(V)^(2)/走行距離」P4、「減速惰行割合」P5、「アイドル走行車速」P6)を設定し、前記パラメータ(P1?P6)と平均の運転の仕方を100%とした場合の任意の運転による燃料消費量割合(λ)との相関関係に基づいて、実際の運転をした場合の、燃料消費量割合及び、目標とする運転をした場合の、燃料消費量割合を求め、さらに、実際の車両総質量によって、その求めた燃料消費量割合を補正するため、燃料消費量に対する評価が精度良く行われる。」
【0015】
燃料消費量に関する評価は、車載の表示手段(モニタ12)によって、リアルタイムで表示されるため、省燃費運転がOJT(On The Job Training)で習得出来る。」(段落【0014】及び【0015】)

エ. 「 【0019】
上述してきた燃料消費量に関する各データは、前記制御手段(20)から前記出力手段(22)に出力され、各パラメータ(P1?P6)における目標値に対してどの程度の運転の仕方なのか、或いは燃料消費量なのかを定量的に把握出来るため、ドライバ及び/又は運行管理者に渡される出力データ(レポート)において、具体的な運転の仕方の改善方法や、その改善方法によって得られる燃料消費量の改善代を定量的に指導(アドバイス)することが出来る。
又、実運行データの各パラメータ(P1?P6)から求めた燃料消費量と、燃料消費量の平均値及び目標値の合計を比較することによって、平均値及び目標値に対してどの程度燃料を節約したのか、或いはどの程度無駄にしたのかを総合的に評価することが出来る。
以上のことは、運行中に、車両(1)内において、リアルタイムでモニタ12に表示されるため、省燃費運転に対する教育効果が、極めて高い。」(段落【0019】)

オ.「 【0026】
図1において、当該燃料消費量評価システムの第1実施形態は、車両(1)側の装備U1と、管理側の装備U2とによって構成されている。
ここで、管理側とは、例えば、当該車両を所有する運送会社の車両管理部門等を指す。
【0027】
前記車両側の装備U1は、車両(図示の例では貨物自動車)1のエンジン回転数Nを計測するエンジン回転数計測手段(以降、エンジン回転数計測手段をエンジン回転センサという)2と、アクセル開度αを計測するアクセル開度計測手段(以降、アクセル開度計測手段をアクセル開度センサという)3と、車速Vを計測する車速計測手段(以降、車速計測手段を車速センサという)4と、燃料流量Fwを計測する燃料流量計測手段(以降、燃料流量計測手段を燃料メータという)5と、エンジンの負荷Lを計測するエンジン負荷計測手段(以降、エンジン負荷計測手段をエンジン負荷センサという)6と、車載用制御手段10とによって構成されている。
【0028】
前記車載用制御手段10は、図2に示すように、インタフェース9と、コントロールユニット11と、表示手段であるモニタ12と、記憶手段である車載データベース7と無線アンテナ13と、から構成されている。
【0029】
前記インタフェース9と車載データベース7とはラインL1によって、車載データベース7とコントロールユニット11とはラインL2によって、コントロールユニット11とモニタ12とはラインL3によって、コントロールユニット11とインタフェース9とはラインL4によって夫々接続されている。
【0030】
そして、前記計測されたエンジン回転数N、アクセル開度α、車速V、燃料流量Fw、エンジン負荷Lの各車両信号は、インタフェース9、ラインL1を介して一旦車載データベースに7記憶される。
コントロールユニット11は、車載データベース7から適宜ラインL2を介して前記車両信号の全て、或いはそのうちの何れか複数を選択・抽出し、ラインL4、インタフェース9、無線アンテナ13及び、外部のネットワークNを介して、後述する管理側の装備U2にデータを送信するように構成されている。
本実施形態では、後述する管理側の装備U2とは、第1には無線によってデータの授受を行っているが、メモリカード15によって車載データベース7から車両データを取り出し、そのメモリカード15に収録された車両データを管理側に送ることも可能である。
【0031】
一方、管理側の装備U2は、管理側制御手段(以降、管理側制御手段を燃費データ解析用パソコンと言う)20と、該燃費データ解析用パソコン20によって、前記評価結果を出力する出力手段であるプリンタ22と、コントロールユニット20に付帯する入力手段であるキーボード24とによって構成されている。
【0032】
前記燃費データ解析用パソコン20は、前記ネットワークN及び無線アンテナ23によって前記車両データを受信し、計測されたエンジン回転数N、アクセル開度α、車速V、燃料流量Fw、エンジン負荷Lから、当該車両1の運行時の車両総質量m及び燃料消費量Qを求め、後述する方法によって平均的な運転をした時の燃料消費量及び、目標とする運転の仕方による燃料消費量とを比較して適正な運転方法や節約できた燃料の量等についての評価を行うように構成されている。
【0033】
前記燃費データ解析用パソコン20は、図3に示すように、走行開始から停止までを、図示の例では、発進加速領域E1、定常走行領域E2、減速領域E3、アイドル走行領域E4の4つの領域に分類する。
そして、分類した4つの領域E1?E4の各々について燃料消費量Qに関連するパラメータである「発進加速シフトアップエンジン回転数N1」P1、「発進加速アクセル開度α1」P2、「定常走行エンジン回転数N2」P3、「車速(V)^(2)/走行距離」P4、「減速惰行割合」P5、「アイドル走行車速」P6を設定し、それらのパラメータP1?P6と平均の運転の仕方を100%とした場合の燃料消費量割合λとの相関関係(図5の相関線F)に基づいて前記複数の領域E1?E4毎の燃料消費量割合λを決定し、決定された燃料消費量割合λに基づいて評価を行なう様に構成されている。
【0034】
又、発進・停止による走行距離があまり長くない場合、発進して停止するまでの車速が高ければブレーキによって熱として捨てられるエネルギの割合が大きくなる。そこで、所定の距離以下ではブレーキによって熱として捨てられるエネルギの大きさを示す「(車速V)^(2)/走行距離S」を燃費評価のパラメータP4(図示せず)とし、このP4を評価することで、省エネ運転の励行をドライバーに喚起する。
【0035】
前記パラメータP1?P6は、運転の仕方と容易に関連付けられ、これらのパラメータに基づいて算出される各燃料消費量Qの精度を向上させている。
【0036】
ここで、各パラメータP1?P6に関して、運行データの頻度分布を取ると、図4に示すように、正規分布に近く、その様な数多くの運行データを処理することにより、各パラメータP1?P6の頻度分布の平均的な値や、ばらつきの程度を把握できる。
そのようなデータを逐次燃費データ解析用パソコン20に備えた図示しないデータベース、或いは車載データベース7に加えて出来る新たなデータベースの精度を向上させるとともに、車両は年々改良されており、そのような改良された車両1の性能にマッチしたデータベースとすることが出来る。」 (段落【0026】ないし【0036】)

カ.「【0046】
尚、車両総質量mは、例えば、以下の方法によって求めることが出来る。
(1) エンジン負荷センサ6からのエンジン負荷(L)を求める。
(2) 車両の駆動力(タイヤの回転力)は、エンジン負荷(L)を、例えば、エンジントルクとすれば、動力伝達系(トランスミッション、ディファレンシャル)のギヤ比、及び各伝達系の機械効率、タイヤ半径及びタイヤの摩擦係数等を知ることによって求まる。
(3) 加速度αは、車速センサ4で求めた車両速度Vから求めることが出来る。
(4) 以上によって求めた駆動力F及び加速度αを式「m=F/α」に代入して、車両総質量mを求めることが出来る。
【0047】
次に、図10のフローチャート及び図1の構成を参照して、車両総質量を考慮した燃料消費量の評価方法を以下に説明する。
【0048】
先ず、ステップS1において運行データ(エンジン回転数N、アクセル開度α、車速V、燃料流量Fw及びエンジン負荷L)を読込む。
【0049】
ステップS2に進み、瞬間アクセル開度を車載用制御手段10のモニタ12に表示し、更に瞬間燃費を表示する(ステップS3)。
図11は、走行中の表示(モニタ)画面Md1を示したもので、アクセル開度表示M11と、瞬間燃費表示M12と、現在燃費表示M13と、目標燃費表示14と、目標燃費に対する現在燃費の達成度の割合を示した達成度表示M15と、燃料の節約量を示した節約量表示M16とが成されている。」
【0050】
次のステップS4では、車載用制御手段10のコントロールユニット11は車両が停止しているか否かを判断する。停車していれば(ステップS2のYES)、次のステップS5に進み、停車していなければ(ステップS2のNO)、制御は元に戻る。
【0051】
ステップS5では、前記車両データから運行燃料消費量、走行距離、燃料消費量を演算した後、ステップS6に進み、前述した方法で運行中の車両総質量mを演算する。」(段落【0046】ないし【0051】)

キ.「【0057】
次のステップS14では、E1?E4の、即ち、発進から停止までの区間における省燃費運転の評価を演算する。
【0058】
ステップS15では、(1)平均的な燃料消費量、燃費(各運転の仕方の要因の合計)を演算する。また、ステップS16では、(2)目標の燃料消費量、燃費(各運転の仕方のパラメータの合計)を演算する。
ステップS17に進み、実際の運行燃料消費量、燃費と(1)、(2)の演算結果とを比較し、運転評価を演算する(評価を加える)。
【0059】
図15及び図16は、夫々停車毎に表示される表示画面Ms1、Ms2である。
図15と図16とは、ともに画面左上方隅のパネルスイッチ部Swを押すことによって、互いに画面が(図15から図16に、或は、図16から図15に)切換わる。
図15では、アクセル開度表示M21、シフトアップエンジン回転数M22、定常走行エンジン回転数M23、惰行の活用程度M24、走行車速M25が、夫々目標達成率を100%とした百分率の棒グラフで示されている。
図16では、燃料節約のポイントを示しており、アドバイス内容「アクセルの踏み込みを抑えましょう」Ma4と、目標値を併記した平均アクスル開度表示M31、及び燃料消費量表示M32をデジタルで表示している。更に、運転評価の推移M33を10km毎50kmまで棒グラフで表示している。
【0060】
ステップS18では、ステップS17で得られた燃料消費量に関する種々のデータ、及び運転の評価に関して、例えば、所定の書式にリポートとして纏められ、前記プリンタ22に出力して、ドライバ及び車両運行管理者に提示される。
そして、再びステップS1に戻り、ステップS1以降を繰り返す。」(段落【0057】ないし【0060】)

ク.「【0071】
ドライバ及び/又は運行管理者に渡されるレポートにおいて、具体的な運転の仕方の改善方法や、その改善方法によって得られる燃料消費量の改善代を定量的に、或いは、平均的な運転の仕方及び目標とする運転の仕方と比較して、指導(アドバイス)することが出来る。
【0072】
また、運転の仕方を具体的にどのように改善すると、どの程度燃料消費量を節約できるかがリアルタイムでモニタ12に表示されるので、ドライバの省エネ運転の励みになる。
【0073】
燃料消費量に対する評価が絶対量のみならず、前記各パラメータ毎に平均的な運転の仕方及び目標運転と比較しているので、評価が身近なものとして捕らえられ、燃費改善(省エネ運転の実行)に現実的な対応策が、即時に打てる。
【0074】
運行管理者にとっては、ドライバが実際にどの程度省燃費運転をしていたかを、燃料節約量と言う定量値で把握でき、ドライバの努力をドライバの評価に反映できる。また、運転の指導についても、データベースで具体的に行うことが出来る。」(段落【0071】ないし【0074】)

ケ.【図1】には、各種センサからの信号が車載用制御手段10に入力されている。

コ.以上ア.ないしケ.及び図面の記載からすれば、引用文献には以下(ア)ないし(ウ)の事項が記載されていることがわかる。

(ア)燃料消費量に関わる車両1の運転状態を評価するシステムであって、勾配や交通の流れの影響を受けない旨の記載があることから、車両1に搭載されて経済的且つ安全な車両の運転を支援する燃料消費評価システムが開示されていることがわかる。

(イ)車両1のエンジン回転数Nを計測するエンジン回転数計測手段2と、アクセル開度αを計測するアクセル開度計測手段3と、車速Vを計測する車速計測手段4と、燃料流量Fwを計測する燃料流量計測手段5と及びエンジン負荷Lを計測するエンジン負荷計測手段6(以下、「計測データA」という。)とに基づいて、走行状況の履歴を記憶する車載データベース7があることがわかる。

(ウ)前記計測データAに基づいて、走行中である場合、現在の走行状況データを画面Md1として画面表示可能なモニタ12に表示させており、具体的には、アクセル開度表示M11、瞬間燃費表示M12、現在燃費表示M13、目標燃費表示14、達成度表示15及び節約量表示M16(以下、「表示データB」という。)を前記モニタ12に表示させ、一方、停車している場合、車載データベース7に基づいて、直前の発進から停車までの区間におけるアクセル開度表示M21、シフトアップエンジン回転数M22、定常走行エンジン回転数M23、慣行の活用程度M24、走行車速M25の状況を表す棒グラフ(以下、「履歴グラフC」という。)を画面Ms1として前記モニタ12に表示させるコントロールユニット11があることがわかる。

以上のことから、引用文献には以下の発明が記載されているといえる。
「 車両に搭載されて経済的且つ安全な車両の運転を支援する燃料消費評価システムであって、
画面表示可能なモニタ12と、
計測データAに基づいて走行状況の履歴を記憶する車載データベース7と、
前記計測データAに基づいて、走行中である場合、現在の表示データBを前記モニタ12に表示させ、一方、停車中である場合、前記車載データベース7に記憶された前記走行状況の履歴に基づいて、直前の発進から停車までの区間における履歴グラフCを前記モニタ12に表示させるコントロールユニット11と
を備えた燃料消費評価システム。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3.対比
本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「モニタ12」は、その機能及び目的からみて、本願発明における「デイスプレイ」に相当する。以下、同様に引用文献記載の発明における「車載データベース7」は「走行履歴記憶手段」に、「燃料消費評価システム」は「エコドライブ支援装置」に、「走行中である場合」は「現在の速度が所定値以上である場合」に、「停車中である場合」は「現在の速度が所定値未満である場合」に相当する。そして、引用文献記載の発明における「直前の発進から停車までの区間」は、本願発明における「直前の所定時間分」に他ならない。
また、引用文献記載の発明における「計測データA」は、「車両の走行状況を計測したデータ」である限りにおいて、本願発明における「GPS受信手段からの測位データ」に相当し、引用文献記載の発明における「表示データB」は、「表示データ」である限りにおいて、本願発明における「現在の速度を表すインジケータ及び現在の加速度を表すインジケータ」に各々相当する。さらに、引用文献記載の発明における「履歴グラフC」は、「履歴グラフ」である限りにおいて、本願発明における「速度履歴を表す速度履歴グラフ及び加速度履歴を表す加速度履歴グラフ」に相当する。
よって、本願発明と引用文献記載の発明とは
「車両に搭載されて経済的且つ安全な車両の運転を支援するエコドライブ支援装置であって、
画面表示可能なディスプレイと、車両の走行状況を計測したデータに基づいて走行状況の履歴を記憶する走行履歴記憶手段と、前記車両の走行状況を計測したデータに基づいて、現在の速度が所定値以上である場合、現在の表示データを前記ディスプレイに表示させ、一方、現在の速度が所定値未満である場合、前記走行履歴記憶手段に記憶された前記走行状況の履歴に基づいて、直前の所定時間分の履歴グラフを前記ディスプレイに表示させるグラフ表示制御手段と
を備えたエコドライブ支援装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
(1)車両の走行状況を計測したデータに関して、本願発明においては、GPS衛星からの電波を受信して測位データを所定間隔で出力するGPS受信手段を用いて、そのGPS受信手段の測位データに基づいているのに対して、引用文献記載の発明においては各種センサからの計測データに基づいている点(以下、「相違点1」という。)。

(2)表示データに関して、本願発明においては、「速度を表すインジケータ及び現在の加速度を表すインジケータ」であるのに対して、引用文献記載の発明においては、車両1のエンジン回転数Nを計測するエンジン回転数計測手段2と、アクセル開度αを計測するアクセル開度計測手段3と、車速Vを計測する車速計測手段4と、燃料流量Fwを計測する燃料流量計測手段5と及びエンジン負荷Lを計測するエンジン負荷計測手段6である点(以下、「相違点2」という。)。

(3)履歴グラフに関して、本願発明においては、速度履歴を表す速度履歴グラフ及び加速度履歴を表す加速度履歴グラフであるのに対して、引用文献記載の発明においては、アクセル開度表示M21、シフトアップエンジン回転数M22、定常走行エンジン回転数M23、慣行の活用程度M24及び走行車速M25のグラフである点(以下、「相違点3」という。)。

4.判断
相違点1ないし3について検討する。
(1)相違点1について
一般に、GPS衛星からの電波を受信して測位データを所定間隔で出力するGPS受信手段を用いて、そのGPS受信手段の測位データに基づいて車両の走行状況を把握することは周知(例えば、特開2000-185676号公報、特開平10-2746号公報、特開2003-256979号公報参照、以下、「周知技術1」という。)であり、引用文献記載の発明における計測データに代えて、上記周知技術1におけるGPS受信手段の測位データを用いることに格別な困難性はない。

(2)相違点2について
車両の現在の運行状況を表すインジケータとして、現在の速度を表すインジケータ及び現在の加速度を表すインジケータを有するものは、周知(例えば、特開平5-286700号公報参照、以下、「周知技術2」という。)であり、上記周知技術2を引用文献記載の発明に適用して、相違点2に係る本願発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものといえる。

(3)相違点3について
車両の運行状況履歴を把握するために、速度履歴を表すグラフ及び加速度履歴を表すグラフを表示させることは周知(例えば、特開2000-185676号公報参照、以下、「周知技術3」という。)であり、上記周知技術3を引用文献記載の発明に適用して、相違点3に係る本願発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-06 
結審通知日 2009-08-11 
審決日 2009-08-31 
出願番号 特願2006-107132(P2006-107132)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉橋 紀夫  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 柳田 利夫
鈴木 貴雄
発明の名称 エコドライブ支援装置、カーナビゲーションシステム及びエコドライブ支援プログラム  
代理人 藤川 敬知  

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