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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1206246
審判番号 不服2006-24728  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-01 
確定日 2009-10-29 
事件の表示 特願2003-345877「プリンタ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月28日出願公開、特開2005-111712〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成15年10月3日の出願であって、平成18年5月1日付けで通知した拒絶理由に対して、指定した期間内に意見書及び手続補正書の提出がなされず、平成18年9月29日付けで拒絶査定がなされたものであって、これに対し、同年11月1日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月8日付けで手続補正書が提出され、その後、平成20年7月4日付けで、当審の審尋に対する回答書が提出されたものである。

上記平成19年11月8日付けの手続補正は、上記平成18年5月1日付けで通知した拒絶理由に示す事項についてするもので、請求項1及び3の記載において、補正前の「エラー発生前の」を補正後の「前回の」と、請求項2の記載において、補正前の「前記第1の位相信号および前記第2の位相信号の何れか一方にエラーが発生したとき、エラー発生前の」を補正後の「今回のカウント値が前回のカウント値に比べ所定値以上異なる場合、該前回の」と補正するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1号によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号に規定する「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものに該当する適法な補正と認める。
そして、本願の請求項1?3に係る発明は、上記手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項2に係る発明は次のとおりである。(以下、請求項2に係る発明を「本願発明」という。)

「【請求項2】
印字ヘッドのキャリアを駆動させる駆動手段の速度を検出するエンコーダから出力される位相信号に基づいて生成されたタイマ値に従って前記駆動手段および前記印字ヘッドを制御し、記録用紙に印字を行うプリンタにおいて、前記位相信号としては第1の位相信号と該第1の位相信号に対して所定角度位相がずれた第2の位相信号とがあり、前記第1の位相信号および前記第2の位相信号の各エッジ間で所定周波数のパルス数をカウントし、前回のカウント値を前記駆動手段および前記印字ヘッドを制御するための今回のタイマ値とし、今回のカウント値が前回のカウント値に比べ所定値以上異なる場合、該前回のカウント値を使用して今回のタイマ値を設定し、前記駆動手段および前記印字ヘッドを制御する印字制御部を備えたことを特徴とするプリンタ。」


2.引用例に記載された発明
(1)引用例1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開2000-141803号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】キャリッジに担持されたプリントヘッドを記録紙の搬送方向に直交する方向に移動させながら当該プリントヘッドにより印字を行うプリンタの駆動制御装置において、
前記キャリッジの移動方向に沿って配置したリニアスケールと、前記キャリッジに搭載されたリニアスケールの反射形スリットを検出するエンコーダセンサとを備えたリニアエンコーダと、
前記リニアエンコーダの分解能をmとし、前記プリントヘッドによる印字解像度をnとした場合に、前記リニアエンコーダから得られるエンコーダ信号の1周期(t)のm/n倍の周期の吐出信号を生成する吐出タイミング生成手段とを有し、前記吐出信号に基づき、前記プリントヘッドの各印字要素を駆動することを特徴とするプリンタの駆動制御装置。
【請求項2】請求項1において、
前記リニアエンコーダのエンコード信号に基づき、キャリッジ移動経路上に定めた基準位置に前記キャリッジが到ったことを検出し、前記基準位置から予め設定されているキャリッジのホームポジションまでの距離に対応するステップ数だけキャリッジ駆動用のステップモータを駆動することにより、前記キャリッジを前記ホームポジションに移動させるようになっていることを特徴とするプリンタの駆動制御装置。
【請求項3】キャリッジに担持されたプリントヘッドを記録紙の搬送方向に直交する方向に移動させながら当該プリントヘッドにより印字を行うプリンタの駆動制御装置において、
前記キャリッジの移動方向に沿って配置したリニアスケールと、前記キャリッジに搭載されたリニアスケールの反射形スリットを検出するエンコーダセンサとを備えたリニアエンコーダを有しており、
前記リニアエンコーダのエンコード信号に基づき、キャリッジ移動経路上に定めた基準位置に前記キャリッジが到ったことを検出し、前記基準位置から予め設定されているキャリッジのホームポジションまでの距離に対応するステップ数だけキャリッジ駆動用のステップモータを駆動することにより、前記キャリッジを前記ホームポジションに移動させるようになっていることを特徴とするプリンタの駆動制御装置。」

(1b)「【0082】(駆動制御系)図15は、本例のインクジェットプリンタ1の駆動制御を司るコントローラの概略ブロック図である。コントローラ200のCPU201は、各モータ83、23、94等の駆動制御、ホスト側との間でのデータの送受信等の制御を行う。プリント制御回路(LCA)210は、主に印字タイミングの生成とプリントヘッド60へ転送するデータの作成、プリントヘッドモジュール60Aのプリントヘッドドライバ60Bとのインタフェースを行う。プリントバッファ202からは、プリント制御回路(LCA)210がプリントドライバ60Bに転送するデータが読み出される。EEP-ROM203には機体毎に変更する必要のあるパラメータが格納される。パラレルインタフェース204によって、ホスト側からの印字データの受信が行われる。」

(1c)上記(1b)において参照する【図15】は、以下のとおりである。



(1d)「【0084】エンコーダセンサ222の検出信号(エンコーダ出力)はプリント制御回路(LCA)210に入力され、この回路内に組み込まれているデジタルフィルタ(図示せず)によってノイズが除去された後に、CPU201に入力される。CPU201には、90度位相差のある2相のエンコーダ信号ENC-A、ENC-Bをカウントする位相計数モードをもったカウンタ230が内蔵されており、このカウンタ230によって、プリントヘッド60の移動位置を検出可能である。また、本例では、カウンタ230の計数値(ENCCNT valu)と、予め算出されている印字開始位置を示す値とが一致したときには、プリントスタート指令を出力する回路機能も内蔵されている。」

(1e)「【0087】モータコントローラ253は、CPU201から相データとPWM信号を受け取り、相データをPWM化してキャリッジモータ83のモータドライバ254、LFモータ23のモータドライバ255(図15参照)に転送する。また、LCA内蔵の相データレジスタおよびPWM生成回路から得られるモータ94用の相データを、当該モータのモータドライバ256(図15参照)に出力する。
【0088】ファイヤータイミング生成回路261は、エンコーダ信号からファイヤ(インク滴の吐出)タイミングを生成する。DMAコントール回路263は、印字データの抽出を行うための制御および抽出するデータのアドレスの生成を行う。SRAMインターフェース回路264は、SRAMバスの制御を行う。データ出力回路267はプリントバッファ内の行方向データをプリントヘッド60の列方向に抽出すると共に、インクノズルが斜めに取り付けられているので、データを斜めに抽出する。ドットカウンタ回路は吐出を行った色毎にそのドット数を計数する。」

(1f)「【0090】次に、本例のインクジェットプリンタ1における印字制御動作を説明する。図17、図18のタイミングチャートから分かるように、印字は、CPU201からの印字開始信号PrintStartがハイレベルに立ち上がることにより開始される。前述のようにCPU201には2相のエンコーダ信号ENC-A、ENC-Bが入力される。印字開始信号PrintStartをハイレベルに立ち上げるエンコーダカウント値は予めCPU201内のレジスタに設定されている。カウンタ230のカウント値がレジスタに設定されている値に一致すると、印字開始信号PrintStartが立ち上がる。
【0091】プリント制御回路(LCA)210は、印字開始信号PrintSartを受け取ると、プリントヘッド60が行う1回目の印字データをプリントバッファ202から読み出し、プリントヘッド60に転送する。次に、印字開始信号PrintSartの立ち上げに用いたエンコーダ出力のエッジから所定の遅延時間(Delay)後に、1回目のインク吐出を行なわせる。遅延時間を設けている理由は、プリントヘッド60の往動時の印字と復動時の印字の場合における縦方向(紙送り方向)の印字ずれを調整ためである。これら双方向の印字ずれは、インク滴の吐出速度、ヘッドノズル面61と記録紙の距離、プリントヘッド60の移動速度に応じて設定される。
【0092】本例では、エンコーダセンサ222として解像度が70?75lpiのものを使用しており、エンコーダのスケール221として解像度が71.7lpiのものを使用している。この結果、印字の解像度を203.2dpiとすると、これとスケール221の解像度71.71lpiの比がほぼ6:17になる。
【0093】印字のタイミングは次のように設定されている。すなわち、エンコーダ出力の1周期の時間を測定し、その時間の6/17の時間を吐出(ファイヤ)の間隔としている。
【0094】ここで、プリントヘッド60の移動速度の変動に起因して吐出位置の変動を抑制するために、次のようにして、吐出信号PIXCLKを生成している。
【0095】すなわち、プリントヘッド60は定速で移動するように設計されているが、実際には立ち上げ直後では急速な立ち上げによる振動が発生しており、そのために速度が変動している。そこで、速度変動が印字タイミングに影響を与えないように、エンコーダ出力の1周期の時間の測定は、エンコーダの2相の出力信号ENC-A、ENC-Bの4つのエッジ(信号ENC-Aの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジ、信号ENC-Bの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジ)毎に行い、それぞれのエッジが入力される毎に、エンコーダ1周期の時間を格納しているレジスタENCCNTの値を更新していく。
【0096】このようにすることによって、吐出のタイミングを生成するために使用する値は、71.7×4=286.8lpi毎に更新される。この程度の距離でプリントヘッド60の移動速度が急激に変化することはない。よって、吐出タイミングがプリントヘッド60の移動速度の変化の影響を受けてしまうことを回避あるいは抑制できる。
【0097】次に、本例では、図19、図20のタイミングチャートから分かるように、システムクロックSYSCLKを17分周したクロックENCCLKでカウントアップし、そのカウント値をシステムクロックSYSCLKを6分周したクロックPRTCLKでカウントダウンしている。カウント値が零になるまでの時間はリニアエンコーダの1周期の時間tの6/17の時間となる。このt×6/17の時間を吐出タイミングとしている。
【0098】このように、本例では、分解能がm(lpi)(71.7)のエンコーダを使用し、水平解像度がn(dpi)(203.2)となる印字を行うに当たり、エンコード出力の周期t(sec)のm/n(6/17)の時間で印字を行うようにしている。従って、目標とする印字解像度nよりも低い解像度のエンコーダを用いることができる。また、このようにすれば、分解能がmのエンコーダを用いて、任意の印字解像度nの印字を行うことができる。」

(1g)上記(1f)において参照する【図17】?【図20】は、以下のとおりである。
【図17】



【図18】



【図19】



【図20】



上記(1a)?(1g)の摘記事項等を総合して勘案すると、引用例1には以下の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が実質的に記載されている。
「プリントヘッド60は定速で移動するように設計されており、
また、リニアエンコーダのエンコーダ出力の1周期の時間を測定し、前記リニアエンコーダの分解能をmとし、前記プリントヘッドによる印字解像度をnとした場合に、そのm/n倍の時間をインク滴の吐出の間隔として、記録紙に印字を行うプリンタにおいて、
前記エンコーダ出力としてはエンコーダ信号(ENC-A)と該エンコーダ信号(ENC-A)に対して90度位相差のあるエンコーダ信号(ENC-B)とがあり、
前記エンコーダ信号(ENC-A)および前記エンコーダ信号(ENC-B)のそれぞれのエッジが入力される毎に、エンコーダ1周期の時間を格納しているレジスタENCCNTの値を更新することにより、
前記プリントヘッドを制御する駆動制御装置を備えたプリンタ。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平3-198684号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(2a)「この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、ノイズ等によって、一時的に速度検出信号が大きく変動しても、その変動の影響を受けることなく、正確な速度を得られるモータ制御装置を提供することを目的とする。」(2頁右下欄6行?10行)

(2b)「<課題を解決するための手段>
この発明は、モータ回転速度が指令速度に等しくなるように、モータをフィードバック制御するモータの制御装置であって、所定タイミングごとに、モータ回転速度に関するデータを算出する算出手段、モータ回転速度に関するデータを所定の複数回分、新しいもの順に記憶できる複数の記憶エリアを有する第1記憶手段、モータ回転速度に関するデータを少なくとも1回分記憶できる第2記憶手段、モータ回転速度に関するデータが算出されるごとに、前回算出されたデータが誤データと判定されていたか否かを確認する手段、前回算出されたデータが誤データと判定されていなかったときには、第1記憶手段に既に記憶されているデータを順次1つずつシフトして最古データを捨て、かつ今回算出されたデータを最新データ記憶エリアに記憶させる第1記憶制御手段、前回算出されたデータが誤データと判定されていたときには、第1記憶手段の最新データ記憶エリアに記憶されている前回算出されたデータを第2記憶手段へ移し、第1記憶手段の該最新データ記憶エリアに今回算出されたデータを記憶させる第2記憶制御手設、最新データ記憶エリアに記憶された今回算出されたデータが、第1記憶手段に記憶されている複数回分のデータの内、大小中央に相当するデータに該当するかまたは大小中央に相当するデータに対して所定範囲内であるか否かを判別する第1判別手段、第1判別手段によって、今回算出されたデータが、大小中央に相当するデータに該当するかまたは大小中央に相当するデータに対して所定範囲内であると判別されたとき、今回算出されたデータを、モータ制御に用いるべき速度データとして取出す手段、第1判別手段によって、今回算出されたデータが、大小中央に相当するデータに対して所定範囲外であると判別されたとき、さらに、今回算出されたデータを第2記憶手段に記憶されている前回算出されたデータと比較し、今回算出されたデータが前回算出されたデータの所定範囲内か否かを判別する第2判別手段、第2判別手段によって、所定範囲内であると判別されたとき、今回算出されたデータを、モ-タ制御に用いるべき速度データとして取出すと共に、第1記憶手段に記憶されているデータの内、最新データ記憶エリアに記憶されている今回算出されたデータ以外のデータを順次1つずつシフトして最古データを捨て、かっ第2記憶手段に記憶されている前回算出されたデータを第1記憶手段の最新データ記憶エリアの次の記憶エリアに記憶させる第3記憶制御手段、および第2判別手段によって、所定範囲外であると判別されたとき、今回算出されたデータが誤データであると判定して、第1記憶手段に記憶されている複数回分のデータの内、大小中央に相当するデータを、モ-タ制御に用いるべき速度データとして取出す手段を含むことを特徴するモ-タ装置装置である。」(2頁右下欄11行?3頁左下欄5行)


3.本願発明と引用例1記載の発明の対比
引用例1記載の発明の「プリントヘッド」、「記録紙」、「駆動制御装置」、「エンコーダ信号」、「エンコーダ信号(ENC-A)」、「エンコーダ信号(ENC-B)」、「90度」、「リニアエンコーダ」は、それぞれ、本願発明の「印字ヘッド」、「記録用紙」、「印字制御部」、「位相信号」、「第1の位相信号」、「第2の位相信号」、「所定角度」、「印字ヘッドのキャリアを駆動させる駆動手段の速度を検出するエンコーダ」に相当する。
また、本願発明の「エッジ間で所定周波数のパルス数をカウントし、前回のカウント値を前記駆動手段および前記印字ヘッドを制御するための今回のタイマ値」として制御することと、引用例1記載の発明の「エッジが入力される毎に、エンコーダ1周期の時間を格納しているレジスタENCCNTの値を更新し」制御することは、ともに、エッジ毎にタイマ値(時間)を計測し、当該タイマ値(時間)に基づいて印字ヘッドを制御する点で共通する。
したがって、両者は、
「印字ヘッドのキャリアを駆動させる駆動手段の速度を検出するエンコーダから出力される位相信号に基づいて生成された値に従って前記駆動手段および前記印字ヘッドを制御し、記録用紙に印字を行うプリンタにおいて、
前記位相信号としては第1の位相信号と該第1の位相信号に対して所定角度位相がずれた第2の位相信号とがあり、
前記第1の位相信号および前記第2の位相信号のエッジ毎にタイマ値を計測し、
前記タイマ値に基づいて、
前記印字ヘッドを制御する印字制御部を備えたプリンタ。」
で一致し、以下の点で相違する。

(1)相違点1
本願発明は、タイマ値の計測が、位相信号の各エッジ間で所定周波数のパルス数をカウントすることにより行っているのに対して、
引用例1記載の発明は、エッジが入力される毎に、エンコーダ1周期のタイマ値(時間)を計測することにより行う点。

(2)相違点2
本願発明は、タイマ値に基づいて駆動手段の制御を行っているのに対して、引用例1記載の発明は、タイマ値に基づいて駆動手段の制御を行っているか否か不明な点。

(3)相違点3
本願発明は、前回のカウント値を前記駆動手段および前記印字ヘッドを制御するための今回のタイマ値とし、今回のカウント値が前回のカウント値に比べ所定値以上異なる場合、該前回のカウント値を使用して今回のタイマ値を設定し基づいて生成されたタイマ値に従って制御を行うのに対して、
引用例1記載の発明は、エンコーダ1周期のタイマ値(時間)を計測して当該タイマ値(時間)によって制御を行う点。


4.判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
本願発明のように各エッジ間のタイマ値を計測するか、引用例1記載の発明のようにエンコーダ1周期のタイマ値を計測するかは、ともに計測した結果であるタイマ値を次のエッジ間の印字ヘッドの制御に用いるという点において差異が無く、当業者なら必要に応じてタイマ値を適宜の範囲に設定しうる程度の設計的事項に過ぎない。
よって、引用例1記載の発明において、エンコーダ1周期のタイマ値を計測することに代えて、各エッジ間のタイマ値を計測するようになすことは、当業者なら容易に想到しうるものである。

(2)相違点2について
定速で移動するように設計する手段として、移動速度を検出し、検出結果に基づいて定速で移動するように駆動手段を駆動させるよう制御する技術はいわゆるフィードバック制御として制御の技術分野においては周知の技術である。
従って、引用例1記載の発明において、エンコーダのタイマ値を用いて、移動速度を検出するようにすることは当業者なら容易に想到しうるものである。

(3)相違点3について
制御に利用する取得データにエラーが生じた場合、当該データを用いずに、前回取得した取得データを採用して、エラーの影響を少なくしようとすることが、上記「3.(2)」のとおり、引用例2に記載されている。
そして、引用例1記載の発明においても、エッジ毎に取得する時間においてエラーが生じた場合の対処として、引用例2記載のエラーの影響を少なくしようとする技術的事項を採用して、取得した時間の値にエラーが有った場合に、当該取得した時間の値を利用せず、前回取得した値を利用するように構成することは当業者なら容易に想到しうるものである。
よって、引用例1記載の発明に、引用例2記載の技術的事項を採用して、相違点2に係る構成を有するものとすることは、当業者なら容易に想到しうるものである。

(3)効果について
そして、全体として、本願発明によってもたらされる効果は、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術的事項及び周知技術から、当業者なら予測しうる程度のことであって、格別なものではない。

5.むすび
以上のとおりであり、本願の請求項2に係る発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により、特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-25 
結審通知日 2009-09-01 
審決日 2009-09-14 
出願番号 特願2003-345877(P2003-345877)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 徹弥小松 徹三  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 赤木 啓二
大森 伸一
発明の名称 プリンタ  

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