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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1206252 |
審判番号 | 不服2007-518 |
総通号数 | 120 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-01-10 |
確定日 | 2009-10-29 |
事件の表示 | 特願2003-368743「光ピックアップ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年5月26日出願公開、特開2005-135476〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判の請求に係る特許出願(以下、「本願」という。)は、平成15年10月29日の出願であって、平成18年3月6日付けの拒絶理由通知に対して、同年4月25日付けで手続補正がされたが、同年12月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成19年1月10日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年2月9日付けで手続補正がされたものである。 そして、前置報告書の内容に基づく平成21年5月12日付けの審尋に対して、同年6月22日付けで回答書が提出されたものである。 第2 平成19年2月9日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年2月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 平成19年2月9日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 対物レンズを備える可動体に具備された孔部がベースに設けられた支軸に嵌合されてその可動体が支軸に対しフォーカス方向及びトラッキング方向に摺動変位自在とされ、上記可動体をフォーカス方向及びトラッキング方向に変位させるための磁気駆動機構に、上記ベースに立ち上げられた一対の取付片に各別に固着されて上記支軸に嵌合された上記可動体を挟む両側に位置する一対の永久磁石と、上記支軸を挟む両側で上記可動体に具備された磁性部とが含まれていると共に、一対の上記永久磁石と上記磁性部との引き合いによって上記支軸と上記孔部との当接箇所に側圧が印加されている光ピックアップにおいて、 上記ベースは、上記支軸が垂直に立設された底板と、上記支軸を挟む両側に垂直に立ち上げられた一対の上記取付片とを有し、 上記取付片に、上記支軸の軸線に対する前後方向の間隔が所定広さに定められた位置決め突起が備わり、この位置決め突起に、上記底板に形成されている凸部に載架された上記永久磁石の端面を当接状態で係合させることによりその永久磁石をその位置決め突起により位置決めした状態で上記取付片に固着することによって上記側圧を適正範囲に定めてあることを特徴とする光ピックアップ。」 と補正された。 上記本件補正後の請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「その永久磁石がその位置決め突起により位置決めされた状態で上記取付片に固着されていること」に対し、「その永久磁石をその位置決め突起により位置決めした状態で上記取付片に固着することによって上記側圧を適正範囲に定めてあること」との限定を加えるものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて、以下に検討する。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-74711号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付した。) (a)「【0006】以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、レンズホルダが支軸周りに回転するときのレンズホルダのがたつきを防止すると共に、安定して動作する光ヘッド装置を提供することにある。」 (b)「【0013】(共通構成)図1は、本発明が適用される光ヘッド装置を示す分解斜視図である。 【0014】図1に示すように、本形態の光ヘッド装置1は、CDあるいはDVDなどの光記録ディスク(光記録媒体)の再生等を行なうものであり、光源から出射されたレーザ光を光記録ディスクに収束させる対物レンズ10を保持するレンズホルダ4と、このレンズホルダ4を保持するフレーム2とを有している。 【0015】フレーム2は、略長方形の底壁20と、底壁20の四辺から垂直に立ち上がった側壁23?26を備えている。これらの側壁23?26のうち、互いに平行に延びる側壁23、24の内周面には、周方向に分極着磁されたトラッキング駆動マグネット51、52がそれぞれに接着固定されている。 【0016】底壁20からは、トラッキング駆動マグネット51、52が取り付けられた側壁23、24に対して平行に延びる一対の内壁27、28が形成されている。内壁27、28の内周面には、単極に着磁された面を内側に向けるフォーカシング駆動マグネット61、62がそれぞれ接着固定されている。 【0017】一対の内壁27、28によって挟まれた底壁20の中央部には、支軸3が起立した状態に固定されている。この支軸3には、レンズホルダ4が上下動および回転が可能な状態に保持されている。 【0018】レンズホルダ4は、円筒状の受け部44と、この軸受け部44の回りを囲む側面部45とを備えている。軸受け部44と側面部45との間には、この軸受け部44を挟む両側位置に一対の開口411、412が形成されている。さらに、レンズホルダ4の上面側には、外側に向けて薄く張り出すレンズ取付け部42が形成され、この上に対物レンズ10が接着固定されている。 【0019】このレンズホルダ4において、軸受け部44に形成された軸孔41には、フレーム2の底壁20から直立した支軸3が差し込まれている。従って、レンズホルダ4は、支軸3に沿ってその軸線方向(矢印Fで示す上下方向/フォーカシング方向)に移動可能であるとともに、支軸3の周方向(矢印Tで示す方向/トラッキング方向)に回転することも可能である。 【0020】また、レンズホルダ4の一対の開口411、412の内側には、フレーム2の底壁20から直立した一対の内壁27、28がそれぞれに差し込まれている。従って、レンズホルダ4の軸受け部44は、一対の内壁27、28に取り付けられたフォーカシング駆動マグネット61、62の間に配置されている。 【0021】レンズホルダ4の軸受け部44には、フォーカシング駆動コイル63が巻き付けられている。このフォーカシング駆動コイル63とフォーカシング駆動マグネット61、62との間には、レンズホルダ4を支軸3に沿って上下方向(フォーカシング方向)に移動させるフォーカシング磁気駆動回路が構成されている。 【0022】また、レンズホルダ4の外周側面45の外周面には、トラッキング駆動マグネット51、52と対峙するように一対のトラッキング駆動コイル53が取り付けられている。これらのトラッキング駆動コイル53とトラッキング駆動マグネット51、52との間には、レンズホルダ4を支軸3の周り(トラッキング方向)に回転させるトラッキング磁気駆動回路が構成されている。 【0023】このように構成した光ヘッド装置1において、レンズホルダ4が支軸3の外周面の所定位置に接触するように、レンズホルダ1の側圧(矢印Mで示す)を印加するのが一般的である。このような側圧Mは、例えば、トラッキング駆動マグネット51、52などと対峙する位置に磁性片54を配置し、この磁性片54とトラッキング駆動マグネット51、52との間に働く磁気的吸引力などを利用して発生させる。」 (c)図1において、磁性片54は、レンズホルダ4のトラッキング駆動コイル53の内部に設けられている。 上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「対物レンズを保持するレンズホルダと、このレンズホルダを保持するフレームとを有し、 前記フレームは、 底壁と、 底壁から垂直に立ち上がり、互いに平行に延び、内周面にトラッキング駆動マグネットがそれぞれ接着固定されている側壁と、 側壁に対して平行に延び、内周面にフォーカシング駆動マグネットが接着固定されている内壁と、 底壁の中央部に起立した状態に固定されている支軸と を備え、 前記レンズホルダは、 軸受け部に、フォーカシング駆動コイルが巻き付けられ、 外周側面の外周面に、トラッキング駆動マグネットと対峙するようにトラッキング駆動コイルが取り付けられ、 前記レンズホルダにおける軸孔に前記フレームにおける支軸が差し込まれ、レンズホルダは、支軸に沿ってその軸線方向(フォーカシング方向)に移動可能であるとともに、支軸の周方向(トラッキング方向)に回転することも可能であり、 フォーカシング駆動コイルとフォーカシング駆動マグネットとの間には、レンズホルダを支軸に沿って上下方向(フォーカシング方向)に移動させるフォーカシング磁気駆動回路が構成され、 トラッキング駆動コイルとトラッキング駆動マグネットとの間には、レンズホルダを支軸の周り(トラッキング方向)に回転させるトラッキング磁気駆動回路が構成され、 レンズホルダのトラッキング駆動コイルの内部における、トラッキング駆動マグネットなどと対峙する位置に磁性片を配置し、この磁性片とトラッキング駆動マグネットとの間に働く磁気的吸引力などを利用して、レンズホルダが支軸の外周面の所定位置に接触するように、レンズホルダの側圧を発生させる 光ヘッド装置。」 また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平4-64733号(実開平6-26016号)のCD-ROM(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。 (d)「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、光ピックアップなどに用いられる対物レンズ駆動装置に関する。」 (e)「【0014】 次に、固定ユニット1について説明する。図6ないし図9において、固定ユニット1を構成する外ヨーク板18は円の一部が扇形に切り欠かれた平面形状になっていて、中心孔15を有し、中心孔15を挾んで180°離れた位置の外周縁部が折り曲げられて部分円筒状の周壁が形成されている。外ヨーク板18の上には内ヨーク板20が重ねられている。内ヨーク板20も外ヨーク板18と同様に中心孔17を挾んで180°離れた位置の外周縁部が折り曲げられて部分円筒状の周壁が形成されている。外ヨーク板18にはその中心点に対して角度90°をなす位置であって上記フレーム10の孔58,60と重なる位置にねじ孔70,72が設けられている。 【0015】 外ヨーク板18と内ヨーク板20の各部分円筒状の周壁は所定の間隙をおいて内外で対向している。外ヨーク板18と内ヨーク板20が直接重なり合う部分には外ヨーク板18と内ヨーク板20を貫通する孔が形成されていて、これらの孔を通して樹脂によりリベット部38がモールド一体成形されることにより外ヨーク板18と内ヨーク板20が一体に連結されている。また、上記モールド一体成形と同時に外ヨーク板18の中心孔15に樹脂が充填されてベース部28が形成されるとともに、支持軸26が樹脂により一体成形され、支持軸26は、ベース部28から内ヨーク板20の中心孔17を貫通して立ち上がっている。上記ベース部28の底面は球面になっていて、あとで詳細に説明する支持軸26の傾角調整用の調整面32となっている。 【0016】 また、上記モールド一体成形と同時に、外ヨーク板18の底部の、外ヨーク板18と内ヨーク板20の各部分円筒状の周壁間に、後述の駆動マグネットを位置決めするための突堤44が一体成形され、さらに突堤44の上に突起66が一体成形されている。突堤44は駆動マグネットの高さ方向すなわち支持軸26方向の位置決めを行うものであり、突起66は駆動マグネットの周方向の位置決めを行うものである。 【0017】 このように、外ヨーク板18、内ヨーク板20を樹脂により成形して一体に連結するに当っては、外ヨーク板18、内ヨーク板20を成形金型内に位置決めした状態でモールド一体成形する。従って、外ヨーク板18、内ヨーク板20、支持軸26の相対的な位置関係、特に各ヨーク板18,20に対する支持軸26の垂直度は金型の精度に依存し、金型を精度良く作成しておけば、上記相対位置関係や支持軸26の垂直度は必要にして充分な精度を出すことができる。 【0018】 図1ないし図3に示すように、外ヨーク板18の対をなす部分円筒状周壁の内面にはそれぞれフォーカス用駆動マグネット22とトラッキング用駆動マグネット24が接着等によって固定されている。各駆動マグネット22,24は上記突堤44の上面に当接させられることにより支持軸26方向の位置決めがなされ、また、各駆動マグネット22,24は上記突起66で区分されて周方向の位置決めがなされている。こうして、固定ユニット1が構成されている。」 3.対比 本願補正発明を、引用発明と比較する。 (1)引用発明は、「対物レンズを保持するレンズホルダと、このレンズホルダを保持するフレームとを有し、」「前記レンズホルダにおける軸孔に前記フレームにおける支軸が差し込まれ、レンズホルダは、支軸に沿ってその軸線方向(フォーカシング方向)に移動可能であるとともに、支軸の周方向(トラッキング方向)に回転することも可能であり」との構成を備えており、引用発明における「レンズホルダ」「軸孔」「フレーム」は、本願補正発明における「可動体」「孔部」「ベース」にそれぞれ相当するから、引用発明における前記構成は、本願補正発明における「対物レンズを備える可動体に具備された孔部がベースに設けられた支軸に嵌合されてその可動体が支軸に対しフォーカス方向及びトラッキング方向に摺動変位自在とされ」に相当する。 (2)引用発明において、「フォーカシング駆動コイルとフォーカシング駆動マグネットとの間には、レンズホルダを支軸に沿って上下方向(フォーカシング方向)に移動させるフォーカシング磁気駆動回路が構成され、」「トラッキング駆動コイルとトラッキング駆動マグネットとの間には、レンズホルダを支軸の周り(トラッキング方向)に回転させるトラッキング磁気駆動回路が構成され」ているから、引用発明は、本願補正発明における「上記可動体をフォーカス方向及びトラッキング方向に変位させるための磁気駆動機構」に相当する構成を備えている。 引用発明における「トラッキング駆動マグネット」は、フレームの底壁から垂直に立ち上がり、互いに平行に延びる側壁の内周面にそれぞれ接着固定されており、かつ、レンズホルダの外周側面の外周面におけるトラッキング駆動コイルと対峙するものであるから、「上記ベースに立ち上げられた一対の取付部に各別に固着されて上記支軸に嵌合された上記可動体を挟む両側に位置する一対の永久磁石」である点で本願補正発明と共通することは明らかである。 引用発明における「磁性片」は、レンズホルダのトラッキング駆動コイルの内部における、トラッキング駆動マグネットなどと対峙する位置に配置されているから、本願補正発明における「上記支軸を挟む両側で上記可動体に具備された磁性部」に相当する。 そして、引用発明における上記「トラッキング駆動マグネット」は、上記トラッキング磁気駆動回路を構成するものであり、また、上記「磁性片」は、トラッキング磁気駆動回路を構成するトラッキング駆動コイルの内部に配置されているものであるから、当該構成は、「上記可動体をフォーカス方向及びトラッキング方向に変位させるための磁気駆動機構に、上記ベースに立ち上げられた一対の取付部に各別に固着されて上記支軸に嵌合された上記可動体を挟む両側に位置する一対の永久磁石と、上記支軸を挟む両側で上記可動体に具備された磁性部とが含まれている」という点で本願補正発明と実質的に共通するものといえる。 (3)引用発明における「磁性片とトラッキング駆動マグネットとの間に働く磁気的吸引力などを利用して、レンズホルダが支軸の外周面の所定位置に接触するように、レンズホルダの側圧を発生させる」は、本願補正発明における「一対の上記永久磁石と上記磁性部との引き合いによって上記支軸と上記孔部との当接箇所に側圧が印加されている」に相当する。 (4)引用発明における「光ヘッド装置」は、本願補正発明における「光ピックアップ」に相当する。 (5)引用発明における「底壁」は、本願補正発明における「底板」に相当し、引用発明における「前記フレームは、」「底壁と、」「底壁から垂直に立ち上がり、互いに平行に延び、内周面にトラッキング駆動マグネットがそれぞれ接着固定されている側壁と、」「底壁の中央部に起立した状態に固定されている支軸と」「を備え」るとの構成は、「上記ベースは、上記支軸が垂直に立設された底板と、上記支軸を挟む両側に垂直に立ち上げられた一対の上記取付部とを有」する構成である点で、本願補正発明と共通する。 すると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。 「対物レンズを備える可動体に具備された孔部がベースに設けられた支軸に嵌合されてその可動体が支軸に対しフォーカス方向及びトラッキング方向に摺動変位自在とされ、上記可動体をフォーカス方向及びトラッキング方向に変位させるための磁気駆動機構に、上記ベースに立ち上げられた一対の取付部に各別に固着されて上記支軸に嵌合された上記可動体を挟む両側に位置する一対の永久磁石と、上記支軸を挟む両側で上記可動体に具備された磁性部とが含まれていると共に、一対の上記永久磁石と上記磁性部との引き合いによって上記支軸と上記孔部との当接箇所に側圧が印加されている光ピックアップにおいて、 上記ベースは、上記支軸が垂直に立設された底板と、上記支軸を挟む両側に垂直に立ち上げられた一対の上記取付部とを有する光ピックアップ。」 一方で、両者は、次の各点で相違する。 (A)上記「取付部」の形態が、本願補正発明では「片」であるのに対し、引用発明では「壁」である点。 (B)本願補正発明では「上記取付片に、上記支軸の軸線に対する前後方向の間隔が所定広さに定められた位置決め突起が備わり、この位置決め突起に、上記底板に形成されている凸部に載架された上記永久磁石の端面を当接状態で係合させることによりその永久磁石をその位置決め突起により位置決めした状態で上記取付片に固着することによって上記側圧を適正範囲に定めてある」との構成を有するのに対し、引用発明では前記構成について特定されていない点。 4.判断 そこで、上記各相違点について検討する。 (相違点Aについて) トラッキング駆動マグネット(永久磁石)を取り付ける部分の形態として「片」状のものは、周知であるから(特開昭63-10330号公報(第1図の「7ヨーク」等)、特開平11-339289号公報(図3、4の「32aヨーク」等)等参照)、当該周知の形態を、引用発明におけるトラッキング駆動マグネット(永久磁石)の取付部である側壁に採用することに格別の困難性はない。 (相違点Bについて) 引用例2には、光ピックアップなどに用いられる対物レンズ駆動装置において、トラッキング用駆動マグネット等を外ヨーク板の周壁の内面に接着等によって固定するにあたり、外ヨーク板の底部にトラッキング用駆動マグネット等の支持軸方向の位置決めを行うための突堤を設け、さらに突堤の上にトラッキング用駆動マグネット等の周方向の位置決めを行う突起を設けた構成が記載されている。 引用発明と前記引用例2に係る技術とは、トラッキング(用)駆動マグネットをフレームの側壁(外ヨーク板の周壁)に接着固定する点で、共通する技術構成を有するものであり、かつ、部材の接着固定位置を正確に定めることは、技術分野を問わず組立製造時において通常考慮されている事項であるから、引用発明において、トラッキング駆動マグネットを正しい位置に固定するために必要な2方向の位置決めの構成を採用すること、つまり、引用発明において「上記支軸の軸線に対する前後方向の間隔が所定広さに定められた位置決め突起が備わり、この位置決め突起に、上記底壁(底板)に形成されている凸部に載架された上記永久磁石の端面を当接状態で係合させることによりその永久磁石をその位置決め突起により位置決めした状態で上記取付片に固着する」構成は、当業者であれば容易に想到しうる。(なお、前記「取付片」については、上記「相違点Aについて」で検討したとおりである。)また、位置決めを行う手段を、位置決めの機能を果たす範囲内の任意の位置に設けることは、当業者が適宜設計する事項にすぎず、原査定の拒絶理由に引用された特開平11-339289号公報(前掲)(図3、4の「位置決め部38」等)の例の如く、前記「位置決め突起」を側壁(取付片)に備える程度の設計変更は、当業者が適宜なしうることである。 加えて、特開平10-228655号公報(段落【0012】等)の例の如く、上記側圧を適正範囲に定めてあることについても、当業者であれば、上記側圧を付与する構成を採用するにあたり当然に考慮する事項にすぎない。 そして、本願補正発明の奏する効果は、引用例1及び2並びに周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用例1及び2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成19年2月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年4月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 対物レンズを備える可動体に具備された孔部がベースに設けられた支軸に嵌合されてその可動体が支軸に対しフォーカス方向及びトラッキング方向に摺動変位自在とされ、上記可動体をフォーカス方向及びトラッキング方向に変位させるための磁気駆動機構に、上記ベースに立ち上げられた一対の取付片に各別に固着されて上記支軸に嵌合された上記可動体を挟む両側に位置する一対の永久磁石と、上記支軸を挟む両側で上記可動体に具備された磁性部とが含まれていると共に、一対の上記永久磁石と上記磁性部との引き合いによって上記支軸と上記孔部との当接箇所に側圧が印加されている光ピックアップにおいて、 上記ベースは、上記支軸が垂直に立設された底板と、上記支軸を挟む両側に垂直に立ち上げられた一対の上記取付片とを有し、 上記取付片に、上記支軸の軸線に対する前後方向の間隔が所定広さに定められた位置決め突起が備わり、この位置決め突起に、上記底板に形成されている凸部に載架された上記永久磁石の端面を当接状態で係合させることによりその永久磁石がその位置決め突起により位置決めされた状態で上記取付片に固着されていることを特徴とする光ピックアップ。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2 [理由]2.」において記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記「第2 [理由]」で検討した本願補正発明における「その永久磁石をその位置決め突起により位置決めした状態で上記取付片に固着することによって上記側圧を適正範囲に定めてあること」から「その永久磁石がその位置決め突起により位置決めされた状態で上記取付片に固着されていること」へと限定を省いたものである。 そうすると、本願発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 [理由]4.」に記載したとおり、引用例1及び2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に記載された発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶すべきものであり、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-08-24 |
結審通知日 | 2009-08-25 |
審決日 | 2009-09-15 |
出願番号 | 特願2003-368743(P2003-368743) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 古河 雅輝 |
特許庁審判長 |
小松 正 |
特許庁審判官 |
樫本 剛 関谷 隆一 |
発明の名称 | 光ピックアップ |