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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1206282
審判番号 不服2007-21180  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-01 
確定日 2009-10-29 
事件の表示 特願2006- 46918「携帯機器」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日出願公開、特開2006-148983〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成12年6月29日に出願した特願2000-196163号の一部を平成18年2月23日に新たな特許出願としたものであって,平成19年6月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年8月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,平成19年8月23日付けで手続補正がなされ,平成21年5月7日付けで審尋がなされ,平成21年6月19日に回答書が提出されたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年8月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下,「本件補正」という。)は,補正前の平成19年6月11日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項2に記載された
「【請求項2】
外部からの指示を入力する操作部を有する本体部と,
この本体部に対し開閉可能に設けられ,閉時には前記操作部の少なくとも一部を覆う蓋部と,
前記本体部および前記蓋部の開動作および閉動作の少なくとも一方を検知する開閉検出部と,
ユーザにより入力された可聴音データを保持する記憶部と,
この記憶部に保持された可聴音データを閉時可聴音として設定する可聴音設定部と,
前記開閉検出部の閉動作検知時,前記可聴音設定部で設定した可聴音データを読出す制御部と,
この制御部の読出した可聴音データを閉時可聴音として出力する可聴音出力部とを備える,携帯機器。」という発明(以下,「本願発明」という。)を,
「【請求項1】
外部からの指示を入力する操作部を有する本体部と,
この本体部に対し開閉可能に設けられ,閉時には前記操作部の少なくとも一部を覆う蓋部と,
前記本体部および前記蓋部の閉動作を検知する開閉検出部と,
予め内部に第1の可聴音データを保持する第1の領域およびユーザにより新たに入力された第2の可聴音データを保持する第2の領域が設けられた記憶部と,
前記第1の領域に予め保持された前記第1の可聴音データおよび前記第2の領域にユーザにより新たに入力された前記第2の可聴音データを選択可能に表示し,この表示された前記第1および第2の可聴音データの中からユーザに選択された前記第1または第2の可聴音データを閉時可聴音として設定する可聴音設定部と,
前記開閉検出部の閉動作検知時,前記可聴音設定部で設定した前記第1または第2の可聴音データを前記第1または第2の領域から読出す制御部と,
この制御部の読出した前記第1または第2の可聴音データを閉時可聴音として出力する可聴音出力部とを備える,携帯機器。」という発明(以下,「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無,補正の目的要件
上記補正は,補正前の特許請求の範囲の請求項2に記載された,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において,「開動作および閉動作の少なくとも一方を検知する開閉検出部」を「閉動作を検知する開閉検出部」と限定し,「ユーザにより入力された可聴音データを保持する記憶部」を「予め内部に第1の可聴音データを保持する第1の領域およびユーザにより新たに入力された第2の可聴音データを保持する第2の領域が設けられた記憶部」と限定し,「この記憶部に保持された可聴音データを閉時可聴音として設定する可聴音設定部」を「前記第1の領域に予め保持された前記第1の可聴音データおよび前記第2の領域にユーザにより新たに入力された前記第2の可聴音データを選択可能に表示し,この表示された前記第1および第2の可聴音データの中からユーザに選択された前記第1または第2の可聴音データを閉時可聴音として設定する可聴音設定部」と限定し,「可聴音データを読出す制御部」を「前記第1または第2の可聴音データを前記第1または第2の領域から読出す制御部」と限定し,「可聴音データを閉時可聴音として出力する可聴音出力部」を「前記第1または第2の可聴音データを閉時可聴音として出力する可聴音出力部」と限定することにより,特許請求の範囲を減縮するものであるから,特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正法の附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

[先願明細書]
原審の拒絶理由に引用された本願の出願日前の他の出願であって,その出願後に出願公開された特願平11-367736号(特開2001-186225号)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下,「先願明細書」という。)には,以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】 折畳み可能な本体と,前記本体の開閉を検出する開閉検出手段とを有する携帯電話機であって,
前記開閉検出手段により前記本体の開動作及び/又は閉動作が検出されたときに,外部に報知を行う開閉報知手段を備えたことを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】 前記開閉報知手段が,一又は二以上の異なる報知態様の少なくとも一の態様により報知を行う請求項1記載の携帯電話機。
【請求項3】 前記開閉報知手段が,音により報知を行う請求項1又は2記載の携帯電話機。」(2頁1欄2?11行)

ロ.「【0013】
【発明の実施の形態】以下,本発明の携帯電話機の実施の形態について,図面を参照しつつ説明する。
[第一実施形態]まず,図1?図5を参照して本発明の携帯電話機の第一実施形態について説明する。 図1?図3は,本実施形態にかかる携帯電話機の構成を模式的に示す概略説明図であり,図1は本体を折り畳んだ状態の側面図,図2は本体を開いた状態の側面図,さらに,図3は本体を開いた状態の背面図を示している。図4は,本実施形態にかかる携帯電話機の制御系を示すブロック図である。さらに,図5は,本実施形態にかかる携帯電話機の本体の開閉報知動作を示すフローチャート図である。
【0014】まず,図1?図3を参照して本実施形態の携帯電話機の本体の概略構造について説明する。これらの図に示すように,本実施形態の携帯電話機1は,折畳み自在に構成された本体1a,1bを有しており,この本体1a,1bにリードスイッチ部2及び磁石部3からなる開閉検出手段と,スピーカ部4を備えている。
【0015】開閉検出手段は,折畳み自在に構成された本体1a,1bのそれぞれ対応する位置に配設されたリードスイッチ部2と磁石部3からなり,本実施形態では,本体1a側にリードスイッチ部2が,本体1b側に磁石部3が配設してある。そして,本体1a,1bの開閉,折畳み動作にともなって,リードスイッチ部2と磁石部3とが互いに対向,離間することにより本体1a,1bの開閉を検出し,後述するように,携帯電話機の制御系10(図4参照)を作動させるようになっている。
【0016】なお,開閉検出手段としては,本実施形態に示したリードスイッチ部2及び磁石部3以外の構成であってもよい。例えば,携帯電話機1の本体の開閉にともなって開閉されるマイクロスイッチや,本体を開いたときに光を検知する光センサ,本体の展開角度を検知するエンコーダ等,電話機本体の開閉を検出できる限り,他の手段によって本実施形態の開閉検出手段を構成することもできる。
【0017】また,本体にはスピーカ部4が備えられており,本実施形態では,図3に示すように,本体1bの背面部に露出するように配設してある。このスピーカ部4が,後述する制御系の制御により所定の音を外部に発するようになっており,本実施形態では,後述するように,本体1a,1bの開動作と同時に一定時間メロディ音が発せられるようになっている。なお,このスピーカ部4の音源として,現在開発の進んでいるFM音源等の高音質LSIを採用することができる。このようにスピーカ部4の音源に高音質音源を用いることで,高音質LSIのもつ音の美しさや豊かさといった優れた特性を本実施形態の携帯電話機において有効に活用することができる。
【0018】さらに,図1?図3では図示を省略してあるが,携帯電話機1の本体には表示部5,照明部6が備えられている(図4参照)。表示部5は液晶表示画面を有し,電話番号等の必要情報を文字,記号,図形等で表示するようになっている。また,照明部6は,外部からの着信時等,一定の場合に光を点灯,点滅させるようになっており,本実施形態では,後述するように,本体1a,1bの開動作と同時に一定時間光を点滅させるようになっている。その他,本実施形態で特に示さない構成部分については,通常の折畳み型携帯電話機と同様の構成となっている。」(3頁3欄32行?4欄41行)

ハ.「【0019】次に,本実施形態の携帯電話機の制御系について図4を参照して説明する。同図に示すように,本実施形態の携帯電話機の制御系10は,開閉検出手段を構成するリードスイッチ部2からの信号を入力する電池電圧測定部11及び開閉検出部12と,開閉検出部12からの信号によりスピーカ部4,表示部5,照明部6の各部を制御するスピーカ制御部13,表示制御部14及び照明点灯制御部15を備えている。
【0020】電池電圧測定部11は,携帯電話機の電池電圧が所定値以上であるか否かを確認し,電池電圧が所定値以上の場合には,開閉検出部12にリードスイッチ部2からの開閉検出信号を出力する。開閉検出部12は,電池電圧測定部11を介してリードスイッチ部2からの開閉信号を入力し,本体1a,1bの開閉動作を判定する判定部となっており,リードスイッチ部2,磁石部3とともに開閉検出手段を構成している。
【0021】そして,開閉検出部12は,本体1a,1bの開閉動作の判定結果に応じて,スピーカ制御部13,表示制御部14及び照明点灯制御部15に制御信号を出力するようになっている。すなわち,本実施形態では,まず,リードスイッチ部2からの信号により本体1a,1bが開かれたと判定された場合,開閉検出部12からスピーカ制御部13,表示制御部14及び照明点灯制御部15に信号が出力される。また,リードスイッチ部2からの信号により本体1a,1bが閉じられたと判定された場合,開閉検出部12からスピーカ制御部13,表示制御部14及び照明点灯制御部15に信号が出力される。
【0022】スピーカ制御部13は,所定時に所定の音を発するようスピーカ部4を制御するようになっている。例えば,通常の携帯電話機と同様,本実施形態の携帯電話機1が外部から信号を受信すると,スピーカ制御部13がスピーカ部4を制御し,信号の着信を報知する着信音を発するようになっている。
【0023】そして,本実施形態では,スピーカ制御部13が,開閉検出部12から本体1a,1bの開動作の信号を入力すると,スピーカ部4を制御して,開動作を知らせる開動作報知音を発するようになっている。これによって,本実施形態では,本体1a,1bが,折畳まれた状態から開かれると,スピーカ部4がスピーカ制御部13によって鳴動制御され,本体1a,1bの開動作と同時に所定の音が発せられることになる。
【0024】ここで,本実施形態において,スピーカ部4から発せられる音は,スピーカ制御部13に対する設定操作を行うことにより,任意に設定,変更できるようになっている。すなわち,本実施形態の携帯電話機1では,図示しない本体のキーボタンを入力操作することにより,スピーカ制御部13に対し任意の設定を行うことができるようになっており,これによって,スピーカ部4から発せられる音の種類,発音時期,発音時間等を自由に選択,設定することができるようになっている。
【0025】例えば,本実施形態では,本体1a,1bの開動作を報知する音を,信号の着信を知らせる着信音と異なるメロディ音に設定するようにしてある。これにより,本体1a,1bを開くときにだけ特定のメロディ音が流れるように設定することができ,従来にはなかった新しい携帯電話機の利用方法を実現することができる。また,本実施形態では,上述したように,本体1a,1bの開動作時,すなわち,本体1a,1bが開かれた際に音を発するようにしてあるが,これを本体1a,1bの閉動作時,すなわち,本体1a,1bが折畳まれた閉じられた際にもスピーカ部4から音を発するようにすることもできる。」(3頁4欄42行?4頁6欄4行)

ニ.「【0029】次に,以上のような構成からなる本実施形態にかかる携帯電話機の動作について,図5に示すフローチャート図を参照して説明する。まず,本実施形態の携帯電話機1を,本体1a,1bが折畳まれた閉状態(図1に示す状態)から展開された開状態(図2に示す状態)にすると,リードスイッチ部2と磁石部3が離間することにより信号が制御系10に入力される。制御系10では,リードスイッチ部2から開動作信号が入力されると,まず,電池電圧測定部11で携帯電話機1の電池電圧が所定値以上であるか否かが確認され(スッテプ1),所定値以上の電池電圧が確認されると,開閉検出部12において開動作か否かが判定される(ステップ2)。
【0030】開閉検出部12で開動作が確認されると,開閉検出部12からスピーカ制御部13,表示制御部14,照明点灯制御部15の各部に信号が出力される。そして,スピーカ制御部13及び照明点灯制御部15において開動作の報知設定がなされているか否かが判断され(ステップ3),報知設定がなされている場合には所定のメロディ音がスピーカ4から所定時間流れるとともに,照明部6が所定の態様で光を点灯する(ステップ4)。なお,表示制御部14の制御により,表示部5も本体1a,1bの開動作と同時に表示がオンとなる。
【0031】その後,通常の場合と同様,携帯電話機1を使用し,使用後は本体1a,1bを折畳んで収納,携帯する。また,ステップ3において開動作の報知設定がなされていない場合には,そのまま携帯電話機を使用することができる。なお,本実施形態では,本体1a,1bの開動作時のみにメロディ音が発せられ,光が点灯又は点滅する設定となっていたが,本体1a,1bが閉じられた際に所定の音が発せられたり,光が点灯したりするように設定することも勿論可能である。
【0032】以上のように,本実施形態にかかる携帯電話機によれば,折畳み型の電話機1の本体1a,1bの開閉を検出し,その検出結果に応じて外部に報知を行う報知手段を備えることで,電話機本体を展開又は折り畳んだ際に音や光等の方法による外部報知を行うことが可能となる。これにより,折畳み型の携帯電話機1の本体1a,1bの開閉動作にともなって音や光等による報知が行われることになり,従来にはまったく存在しなかった携帯電話機の新たな利用方法を提供することが可能となる。また,特に,近年携帯電話機用として急速に開発の進んでいるFM音源等の高音質LSIのもつ音の美しさや豊かさといった優れた特性も有効に活用することができ,従来にはない多様かつ優れた特徴を有する携帯電話機の実現が可能となる。」(4頁6欄38行?5頁7欄33行)

上記ロ.の【0018】には「その他,本実施形態で特に示さない構成部分については,通常の折畳み型携帯電話機と同様の構成となっている。」と記載されいることからして,本体1aは「外部からの指示を入力する操作部」を有し,その操作部は,本体1aに対する本体1bの閉時に,本体1bで覆われることは自明である。

上記ロ.の【0017】には「本実施形態では,後述するように,本体1a,1bの開動作と同時に一定時間メロディ音が発せられるようになっている。なお,このスピーカ部4の音源として,現在開発の進んでいるFM音源等の高音質LSIを採用することができる。このようにスピーカ部4の音源に高音質音源を用いることで,高音質LSIのもつ音の美しさや豊かさといった優れた特性を本実施形態の携帯電話機において有効に活用することができる。」と,上記ハ.の【0024】には「本実施形態において,スピーカ部4から発せられる音は,スピーカ制御部13に対する設定操作を行うことにより,任意に設定,変更できるようになっている。すなわち,本実施形態の携帯電話機1では,図示しない本体のキーボタンを入力操作することにより,スピーカ制御部13に対し任意の設定を行うことができるようになっており,これによって,スピーカ部4から発せられる音の種類,発音時期,発音時間等を自由に選択,設定することができるようになっている。」と,上記ハ.の【0025】には「本実施形態では,本体1a,1bの開動作を報知する音を,信号の着信を知らせる着信音と異なるメロディ音に設定するようにしてある。これにより,本体1a,1bを開くときにだけ特定のメロディ音が流れるように設定することができ,従来にはなかった新しい携帯電話機の利用方法を実現することができる。また,本実施形態では,上述したように,本体1a,1bの開動作時,すなわち,本体1a,1bが開かれた際に音を発するようにしてあるが,これを本体1a,1bの閉動作時,すなわち,本体1a,1bが折畳まれた閉じられた際にもスピーカ部4から音を発するようにすることもできる。」と記載されているから,携帯電話機1は当然に「記憶部」を有し,その記憶部には「第1のメロディ音データを保持する第1の領域および第2のメロディ音データを保持する第2の領域」が設けられ,また,携帯電話機1は自明に「メロディ音設定部」を有し,そのメロディ音設定部は「第1のメロディ音データおよび第2のメロディ音データ」を選択可能に提供し,かつ「第1および第2のメロディ音データの中からユーザに選択された第1のメロディ音データまたは第2のメロディ音データ」を閉時メロディ音として設定していることは,それぞれ自明である。

したがって,先願明細書には,以下の発明(以下,「先願発明書に記載された発明」という。)が記載されている。

(先願発明書に記載された発明)
「外部からの指示を入力する操作部を有する本体1aと,
この本体1aに対し開閉可能に設けられ,閉時には前記操作部の少なくとも一部を覆う本体1bと,
前記本体1aおよび前記本体1bの閉動作を検知する開閉検出部12と,
予め内部に第1のメロディ音データを保持する第1の領域および第2のメロディ音データを保持する第2の領域が設けられた記憶部と,
前記第1の領域に予め保持された前記第1のメロディ音データおよび前記第2の領域の前記第2のメロディ音データを選択可能とし,この提供された前記第1および第2のメロディ音データの中からユーザに選択された前記第1または第2のメロディ音データを閉時メロディ音として設定するメロディ音設定部と,
前記開閉検出部12の閉動作検知時,前記メロディ音設定部で設定した前記第1または第2のメロディ音データを前記第1または第2の領域から読出すスピーカ制御部13と,
このスピーカ制御部13の読出した前記第1または第2のメロディ音データを閉時メロディ音として出力するスピーカ部4とを備える,携帯電話機。」

[対比]
本願発明と先願発明書に記載された発明とを対比すると,先願発明書に記載された発明の「本体1a」「本体1b」「開閉検出部12」「第1のメロディ音データ」「第2のメロディ音データ」「閉時メロディ音」「メロディ音設定部」「スピーカ制御部13」「スピーカ部4」「携帯電話機」は,本願発明の「本体部」「蓋部」「開閉検出部」「第1の可聴音データ」「第2の可聴音データ」「閉時可聴音」「可聴音設定部」「制御部」「可聴音出力部」「携帯機器」にそれぞれ相当する。
したがって,両者は,以下の点で一致し,以下の点で一応相違する。
(一致点)
「外部からの指示を入力する操作部を有する本体部と,
この本体部に対し開閉可能に設けられ,閉時には前記操作部の少なくとも一部を覆う蓋部と,
前記本体部および前記蓋部の閉動作を検知する開閉検出部と,
予め内部に第1の可聴音データを保持する第1の領域および第2の可聴音データを保持する第2の領域が設けられた記憶部と,
前記第1の領域に予め保持された前記第1の可聴音データおよび前記第2の領域の前記第2の可聴音データを選択可能とし,前記第1および第2の可聴音データの中からユーザに選択された前記第1または第2の可聴音データを閉時可聴音として設定する可聴音設定部と,
前記開閉検出部の閉動作検知時,前記可聴音設定部で設定した前記第1または第2の可聴音データを前記第1または第2の領域から読出す制御部と,
この制御部の読出した前記第1または第2の可聴音データを閉時可聴音として出力する可聴音出力部とを備える,携帯機器。」

(相違点)
a)第2の可聴音データとして,補正後の発明が「ユーザにより新たに入力された」ものを用いているのに対し,先願明細書に記載された発明はそのように構成されていない点。
b)第1の可聴音データおよび第2の可聴音データを,補正後の発明が選択可能に「表示し」「選択され」ているのに対し,先願明細書に記載された発明は表示に係る構成がない。

[判断]
相違点a)について
携帯端末装置において,可聴音データとして,予め内部に保持されたものや,ユーザにより新たに入力されたものを用いることは,例えば,特開平11-261672号公報,特開平10-294778号公報,「PHS電話機 取扱説明書 品番KX-PH33S/KX-PH033S/KX-PH23F/KX-PH923F」(日本,Panasonic,1999年,p.42,46-47,49,166-175)に示されるように,慣用技術といえるものであるから,第2の可聴音データとして,「ユーザにより新たに入力された」ものを用いることは,慣用技術の単なる付加の域を出ず,しかも,新たな効果を奏するものでもない。
相違点b)について
携帯端末装置において,複数の可聴音データを選択可能に表示してユーザに選択させることや,予め内部に保持された可聴音データおよび新たに入力された可聴音データを選択可能に表示してユーザに選択させることは,上記「相違点a)について」で例示した文献等にも示されており,慣用技術であるから,第1の可聴音データおよび第2の可聴音データを,選択可能に「表示し」,「選択され」るようにする程度のことは,慣用技術の単なる変更にすぎず,しかも,新たな効果を奏するものでもない。

したがって,補正後の発明は先願明細書に記載された発明と実質的に同一であり,しかも,先願明細書に記載された発明をした者が本願発明の発明者であるとも,又,本願の出願の時に,その出願人が先願明細書の出願人と同一であるとも認められないので,補正後の発明は,特許法第29条の2の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)結語
以上のとおり,本件補正は,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,平成18年法律第55号改正法の附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって,本件補正は,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成19年8月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.先願明細書に記載された発明
先願明細書に記載された発明は,上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の[先願明細書]で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり,先願明細書に記載された発明と同一であり,しかも,先願明細書に記載された発明をした者が本願発明の発明者であるとも,又,本願の出願の時に,その出願人が先願明細書の出願人と同一であるとも認められないものであるから,本願発明も,同様の理由により,先願明細書に記載された発明と同一であり,しかも,先願明細書に記載された発明をした者が本願発明の発明者であるとも,又,本願の出願の時に,その出願人が先願明細書の出願人と同一であるとも認められないものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,先願明細書に記載された発明と同一であり,しかも,先願明細書に記載された発明をした者が本願発明の発明者であるとも,又,本願の出願の時に,その出願人が先願明細書の出願人と同一であるとも認められないものであるから,特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-28 
結審通知日 2009-09-01 
審決日 2009-09-15 
出願番号 特願2006-46918(P2006-46918)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 161- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永井 啓司小林 勝広梶尾 誠哉  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 萩原 義則
高野 洋
発明の名称 携帯機器  
代理人 森田 俊雄  
代理人 酒井 將行  
代理人 深見 久郎  
代理人 仲村 義平  
代理人 野田 久登  
代理人 堀井 豊  
代理人 荒川 伸夫  

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