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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1206284
審判番号 不服2007-23089  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-23 
確定日 2009-10-29 
事件の表示 特願2005-179666「景品交換システム及び景品交換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月28日出願公開、特開2006-346354〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯

本願の経緯概要は以下のとおりである。

特許出願 平成17年6月20日
審査請求 平成18年10月23日
拒絶理由 平成18年12月6日
手続補正 平成19年2月7日
拒絶理由 平成19年3月15日
手続補正 平成19年5月25日
補正却下・拒絶査定 平成19年7月13日
審判請求 平成19年8月23日
手続補正 平成19年9月18日
拒絶理由・補正却下 平成21年5月15日
手続補正 平成21年7月17日

第2.本願発明

平成21年7月17日付の手続補正に基づく特許請求の範囲の請求項1にかかる発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「遊技客が獲得した遊技媒体を計数し、計数した遊技媒体数を記録媒体に記録して発行する遊技媒体計数機と、
前記記録媒体から遊技媒体数を読み取り、その景品交換処理を行う景品交換装置と、を備える景品交換システムであって、
前記景品交換装置は、
前記遊技媒体計数機で計数された遊技媒体数に基づいて、当該遊技媒体数で交換可能な特殊景品と、特殊景品に交換できない余り遊技媒体数の範囲内で交換可能な小額景品を特定する景品特定手段と、
前記余り遊技媒体数の範囲内で交換可能な小額景品の中から、遊技場が推奨する小額景品又は小額景品の組み合わせからなる所定の推奨小額景品を抽出・提示する推奨小額景品提示手段と、
前記推奨小額景品の交換を選択した遊技客に対する特典付与として、景品交換率の割り増しを行う特典付与手段と、を備え、
前記推奨小額景品提示手段は、
各小額景品の在庫数、在庫金額、交換利益及び/又は賞味期限を含む景品の在庫情報を記憶する手段と、
前記景品の在庫情報に基づき、前記余り遊技媒体数の範囲内で交換可能な小額景品の中から、在庫数、在庫金額又は交換利益の多い小額景品、又は賞味期限の近い小額景品から優先して抽出し、前記推奨小額景品として決定する手段と、
決定された推奨小額景品を画面表示により遊技客側に提示する手段と、
遊技客が入力操作可能な所定の「おすすめ」ボタン及び「おまかせ」ボタンを画面表示により遊技客側に提示する手段と、
遊技客の前記「おすすめ」ボタンへの入力操作に応じて、前記推奨小額景品を抽出・決定して当該遊技客側に提示する手段と、
遊技客の前記「おまかせ」ボタンへの入力操作に応じて、当該遊技客に提示された前記推奨小額景品の交換を一括して確定させる手段と、
を備えることを特徴とする景品交換システム。」

第3.当審の判断

1.当審拒絶理由について

当審において平成21年5月15日付で通知した拒絶の理由の概要は、平成19年2月7日付の手続補正書における請求項1?5に係る発明は、下に記載した引用文献1?7に記載された発明及び技術に基づき、景品交換システムの分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1:実願平5-19455号(実開平6-70784号)のCD-ROM
引用文献2:特開2002-177620号公報
引用文献3:特開2002-18084号公報
引用文献4:特開平10-33824号公報
引用文献5:特開平10-289372号公報
引用文献6:特開2005-84743号公報
引用文献7:特開平8-243250号公報

2.引用発明について

引用文献1には図面と共に、以下の記載がある。
「入力される賞球類数に対して換金可能な第1種の景品群を指定する第1のキーと、換金不可能な第2種の景品群を指定する第2のキー群の操作により第1種の景品群と第2種の景品群を指定可能な景品交換管理装置において、
賞球類との交換レート及び商品種類の異なる複数種の第1種の景品と、第1種の景品のうちの最低交換レートよりも小量の賞球類で交換可能な第2種の景品である第3種の景品とを登録入力する登録入力手段と、
この登録入力手段で入力された登録データを記憶する登録データ記憶手段と、
賞球類総数を記憶する賞球等数総数記憶手段と、
第1のキーが操作されたとき、前記賞球数総数記憶手段と登録データ記憶手段の各記憶内容から、第1種の景品群から交換レートの高い順に自動指定すると共に、最低交換レートの賞球類数に満たない賞球類数に対して登録された第3種の景品の自動指定を行う演算手段と、
指定された第1種の景品と第3種の景品のそれぞれについて少なくとも景品種類、交換賞球類数、交換個数を含む明細を表示する表示手段と、
景品交換確定キーと、
自動設定指定された第3種の景品について前記第2のキー群による修正指定を許容すると共に前記第1のキーの操作時に前記演算手段による第1種の景品、および第3種の景品の自動指定内容又は修正された第3種の景品の指定内容を確定させる制御部と、
を具備したことを特徴とする景品交換管理装置。」(【請求項1】)
「本考案は、パチンコホールなどの遊技店に於いて、パチンコ機やスロットマシン等で獲得したパチンコ玉やゲームコイン等の賞球類と景品とを交換する際に使用される景品交換管理に関するものである。」(段落【0001】)
「また景品専用キー操作は賞球等の残数値と端数商品(端玉景品)の賞球等数とから操作者が暗算等により最も適当な端玉景品を判断して指定する必要があり、より煩雑となる結果、判断ミスやキーの押し間違いを引き起こしやすく、操作に時間がかかるという不都合があった。特に、閉店間際時の混雑時などには、精算に時間がかかり店の混雑が解消できないだけでなくキー操作間違い等のミスをおかしやすくなるといった問題があった。本願考案はこのような問題を解決するためになされたもので、特殊景品の交換を誤りなく効率的に行える景品交換管理装置を提供することを目的とする。」(段落【0006】)
「本考案による景品交換管理装置では、換金可能景品キーの1回のみの操作で換金可能景品を自動的に適用した減算結果について端数景品を自動指定するようにしているので、キー操作回数を減少させ、また店員が行う端数景品の入力についての判断を不要としている。また、端数景品の自動指定結果については修正入力を受け付けることを可能にして、客の希望にも応えられるようにしている。 また、自動指定される換金可能景品および端玉景品の登録入力を可能としており、換金可能景品、端玉景品を店側の希望に応じて任意に登録可能としている。」(段落【0008】)
「図3は本発明にかかる景品交換管理装置1の外観を示す斜視図である。この装置には必要なデータや案内表示を行う、例えばプラズマディスプレイで成る表示部2、係員が手で操作を行って必要なデータを入力するキーボード4、景品交換や景品キーの景品登録時の動作モードを切り替えるためのモード切替スイッチ5、ジャーナルを印字する為のジャーナルプリンタ6を備えている。なお、表示部の裏面側には遊技客用の表示部3が設けられている。」(段落【0009】)
「かかる景品交換管理装置1の内部構成を図4に示す。全体の制御を行うCPU(マイクロコンピュータ等)50には制御のためのプログラムを格納するROM部51、景品に割当られた玉またはメダル数等必要なデータを記憶するRAM部52、景品交換管理装置が操作された時間を知るための時計53、印字を行う印字プリンタ56、異常操作時に警報を出すブザー57が直接接続されている。また、キーの入力をするためのキーボード59及びモード切替スイッチ5がそれらのキー入力を検知するキー入力インターフェイス(I/F)54を介して、オペレータに対する表示を行うプラズマディスプレイ60および遊技客に対する表示を行う客用ディスプレイ61がそれらの表示の制御を行う表示I/F55を介して接続されている。なお、RAM部52は電池バックアップされたものであり、装置1の電源が切断されてもその記憶内容はそのまま保持される。また、このRAM部52には、景品の入出庫についての総量データが景品の種類毎のアドレスに記憶されている。」(段落【0010】)
「また、景品交換管理装置1には外部の大型のプリンタ62を接続して、業務内容をプリントアウトすることができるようになっている。さらに、通信用インタフェース58がCPU50が接続されており、このインタフェースには次のような各種の外部装置を接続してシリアルデータ転送をすることができる。例えば、遊技店の営業時には、遊技客が持ち込むパチンコ玉やメダルを計数して賞球数を景品交換管理装置に入力するために計数機64が接続される。また、レシートを介して賞球数を入力する場合及び景品の名前を入力する場合にはバーコードを読むためのスキャナ65が接続される。磁気カードを使用したシステムでは、カードを読み込むために、カード処理機66が接続される。また、景品払出機67が接続されており、本体から出される景品品種及び数量の信号に基づいて賞球と交換した景品がこの払出機から払い出される。返却機68は、客からの要求に応じて端玉などを現物で返却するものである。ハンディーミナル69は、景品の入庫を専用に行う端末機である。また、親機または子機をつなぐことによって、1台の親機によって複数台の景品交換管理装置の管理を行い、その遊技店の営業内容を把握できるようにしている。これらの外部機器の接続の様子は各接続機器を斜視図として表した接続説明図である図5にも示されている。」(段落【0011】)
「「特殊景品」キー11は換金用景品である特殊景品を取り扱うためのスイッチキーで、このキーを押下することにより、…交換モードにあっては予め登録された特殊景品(換金用景品)を自動的に割付し、残数が在れば端玉景品の自動割付を行う。…本考案では後述するように、この「特殊景品」キーの入力により特殊景品と端玉景品の両方を一括処理で指定できるようにしている。」(段落【0014】)
「遊技客が持ってきた玉、メダル、カード、レシートから賞球数データを入力する(ステップS101)。そして「特殊景品」キーを押下する(ステップS102)ことにより、景品交換の自動演算が行われる。すなわち、まず、特殊景品大の交換レートで交換可能な個数を算出し、残りの個数(余り1)を算出する(ステップS103)。この余り1の個数の範囲内で特殊景品中の交換レートで交換可能な個数を算出し、残りの個数(余り2)を算出する(ステップS104)。この余り2の個数の範囲内で特殊景品小の交換レートで交換可能な個数を算出し、残りの個数(余り3)を算出する(ステップS105)。この余り3の個数の範囲内であらかじめ登録してある端玉景品の交換レートで交換可能な個数を算出し、残りの個数(余り4)を算出する(ステップS106)。この段階での表示画面を図に示す。ここでは従来例と同じく総数13220個とし、端玉景品としてミルクチョコレート(交換レート10個)があらかじめ登録されているので、自動的にミルクチョコレートまでが自動交換されて表示されることになる。このときの画面表示を図7に示す。」(段落【0016】)
「図7に示されたような内容で修正する必要がないときは(ステップS107)、確定キーを入力することにより(ステップS108)、特殊景品および端玉景品が自動払い出し機等から払い出されることになる。一方、端玉景品の内容を客の要求等により変更するときは、景品専用キーによるキー入力を受け付けることにより(ステップS109)交換内容を修正する(ステップS110)ことができる。」(段落【0017】)
また、図5を参照すれば、「玉計数機64」に「カード発行機」が接続され、その傍らに「カード」が描かれているから、すなわち「玉計数機64」の計数結果に基づいて「カード」が発行されることを読み取ることができる。また「メダル計数機64」から矢印が描かれ、その先端に「レシート」が描かれているから、すなわち「メダル計数機64」の計数結果に基づいて「レシート」が発行されることを読み取ることができる。

引用文献1の段落【0011】の「遊技客が持ち込むパチンコ玉やメダルを計数して賞球数を景品交換管理装置に入力するために計数機64が接続される。また、レシートを介して賞球数を入力する場合及び景品の名前を入力する場合にはバーコードを読むためのスキャナ65が接続される。磁気カードを使用したシステムでは、カードを読み込むために、カード処理機66が接続される。」という記載内容に関して、図5の内容を参照すれば、「レシートを介して賞球数を入力する場合」とは、図5における「メダル計数機64」において「レシート」が描かれているものが相当し、「磁気カードを使用したシステム」とは、図5における「玉計数機64」に「カード発行機」が接続され、「カード」が描かれているものが相当すると判断することができる。そして、図5においては「パチンコ玉」の場合に「カード発行機」及び「(磁気)カード」が、「メダル」の場合に「レシート」が描かれているが、引用文献1全体の内容を踏まえても特に組合せとしての意図があるとは考えられないから、これらから「パチンコ玉」、「玉計数機64」及び「レシート」を用いることも想定の範囲内と認められ、この例を採用することとする。
そして、同様に、段落【0001】についても、「パチンコ機」、「パチンコ玉」の例を採用して、引用文献1の記載事項及び図面を総合的に勘案すれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「パチンコホールなどの遊技店に於いて、パチンコ機で獲得したパチンコ玉と景品とを交換する際に使用される景品交換管理装置1であって、
景品交換管理装置1には、遊技客用の表示部3が設けられており、また、遊技客が持ち込むパチンコ玉を計数しレシートを発行する玉計数機64、レシートを介して賞球数を入力する場合及び景品の名前を入力する場合にバーコードを読むためのスキャナ65、景品品種及び数量の信号に基づいて賞球と交換した景品が払い出される景品払出機67、客からの要求に応じて端玉などを現物で返却する返却機68、景品の入庫を専用に行う端末機であるハンディーミナル69、がそれぞれ接続され、
交換モードにあっては予め登録された特殊景品(換金用景品)を自動的に割付し、残数が在れば端玉景品の自動割付を行い、「特殊景品」キーの入力により特殊景品と端玉景品の両方を一括処理で指定できるようにしており、
自動指定される端玉景品の登録入力を可能としており、端玉景品を店側の希望に応じて任意に登録可能としており、
遊技客が持ってきたレシートから賞球数データを入力し、「特殊景品」キーを押下することにより、景品交換の自動演算が行われ、
特殊景品大の交換レートで交換可能な個数を算出し、残りの個数(余り1)を算出し、該余り1の個数の範囲内で特殊景品中の交換レートで交換可能な個数を算出し、残りの個数(余り2)を算出し、該余り2の個数の範囲内で特殊景品小の交換レートで交換可能な個数を算出し、残りの個数(余り3)を算出し、
該余り3の個数の範囲内であらかじめ登録してある端玉景品の交換レートで交換可能な個数を算出し、残りの個数(余り4)を算出し、自動的に端玉景品としてあらかじめ登録されているミルクチョコレートまでが自動交換されて表示され、
端玉景品の内容を客の要求等により変更するときは、景品専用キーによるキー入力を受け付けることにより交換内容を修正することができ、
表示された内容で修正する必要がないときは、確定キーを入力することにより、特殊景品および端玉景品が景品払出機67から払い出される
景品交換管理装置1。」

3.対比

ここで、本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明における「パチンコ玉」及び「賞球」は本願発明における「遊技媒体」に相当し、以下同様に「レシート」、「玉計数機64」及び「端玉景品」は、それぞれ「記録媒体」、「遊技媒体計数機」及び「小額景品」に相当する。
引用発明において「景品交換管理装置1」が景品交換の処理を行うことは明らかであって、本願発明の「景品交換装置」に相当する。また引用発明の「景品交換管理装置1」は「玉計数機64」、「スキャナ65」、「景品払出機67」、「返却機68」、「ハンディーミナル69」が接続されてなるものであるから、これら全体として、本願発明の「景品交換システム」に相当すると判断することができる。
引用発明において「レシートを介して賞球数を入力する場合」に「バーコードを読む」点は、本願発明の「記録媒体から遊技媒体数を読み取り」という点に相当し、また「レシートを発行」とは、その後「レシートを介して賞球数を入力する」ことからみて、「計数した遊技媒体数」を「記録して発行する」ことに相当するものであると云える。
引用発明において「予め登録された特殊景品(換金用景品)を自動的に割付し、残数が在れば端玉景品の自動割付を行い」とあり、この自動割付が「賞球数データ」に基づくことは当然であるから、引用発明における「自動割付」を行う手段は、本願発明の「交換可能な…景品を特定する景品特定手段」に相当する。
また、引用発明における前記自動割付は「特殊景品大の交換レートで交換可能な個数を算出し、残りの個数(余り1)を算出し、該余り1の個数の範囲内で特殊景品中の交換レートで交換可能な個数を算出し、残りの個数(余り2)を算出し、該余り2の個数の範囲内で特殊景品小の交換レートで交換可能な個数を算出し、残りの個数(余り3)を算出し、該余り3の個数の範囲内であらかじめ登録してある端玉景品の交換レートで交換可能な個数を算出」するものであるから、「余り3」とは本願発明における「特殊景品に交換できない余り遊技媒体数」に相当する。

また、引用発明においては「端玉景品を店側の希望に応じて任意に登録可能」なものであり、さらに「端玉景品の内容を客の要求等により変更するときは、景品専用キーによるキー入力を受け付けることにより交換内容を修正することができ」るのであるから、端玉景品が1種類(「ミルクチョコレート」のみ)であるとは解されない。とすれば、複数ある端玉景品からミルクチョコレートが選択され登録されているのであるから、その理由は不明であるとしても、遊技店が任意で登録するという行為は「遊技場が推奨」していることに他ならない。さらに、引用文献1の図7を参照すれば、ミルクチョコレートが2個(ミルクチョコレート同士の「組み合わせ」に相当する。)割り付けられている例が示されているが、余り玉数(「余り3」に相当)の量に応じてミルクチョコレートが1個となる場合も当然あるから、引用発明も「小額景品又は小額景品の組み合わせ」を提示し得るものである。よって、引用発明において「該余り3の個数の範囲内であらかじめ登録してある端玉景品の交換レートで交換可能な個数を算出」及び「自動的に端玉景品としてあらかじめ登録されているミルクチョコレートまでが自動交換されて表示」する手段は、本願発明における「前記余り遊技媒体数の範囲内で交換可能な小額景品の中から、遊技場が推奨する小額景品又は小額景品の組み合わせからなる所定の推奨小額景品を抽出・提示する推奨小額景品提示手段」に相当するものである。

したがって、本願発明と引用発明は、
「遊技客が獲得した遊技媒体を計数し、計数した遊技媒体数を記録媒体に記録して発行する遊技媒体計数機と、
前記記録媒体から遊技媒体数を読み取り、その景品交換処理を行う景品交換装置と、を備える景品交換システムであって、
前記景品交換装置は、
前記遊技媒体計数機で計数された遊技媒体数に基づいて、当該遊技媒体数で交換可能な特殊景品と、特殊景品に交換できない余り遊技媒体数の範囲内で交換可能な小額景品を特定する景品特定手段と、
前記余り遊技媒体数の範囲内で交換可能な小額景品の中から、遊技場が推奨する小額景品又は小額景品の組み合わせからなる所定の推奨小額景品を抽出・提示する推奨小額景品提示手段と、
を備える景品交換システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明においては「推奨小額景品提示手段」が「各小額景品の在庫数、在庫金額、交換利益及び/又は賞味期限を含む景品の在庫情報を記憶する手段」と「前記景品の在庫情報に基づき、前記余り遊技媒体数の範囲内で交換可能な小額景品の中から、在庫数、在庫金額又は交換利益の多い小額景品、又は賞味期限の近い小額景品から優先して抽出し、前記推奨小額景品として決定する手段」及び「決定された推奨小額景品を画面表示により遊技客側に提示する手段」を備えているのに対して、引用発明がこれらの構成を有しているか不明である点。

[相違点2]
本願発明においては「遊技客が入力操作可能な所定の「おすすめ」ボタン及び「おまかせ」ボタンを画面表示により遊技客側に提示する手段」、「遊技客の前記「おすすめ」ボタンへの入力操作に応じて、前記推奨小額景品を抽出・決定して当該遊技客側に提示する手段」及び「遊技客の前記「おまかせ」ボタンへの入力操作に応じて、当該遊技客に提示された前記推奨小額景品の交換を一括して確定させる手段」を備えているのに対して、引用発明がこれらの構成を有しているか不明である点。

[相違点3]
本願発明においては「推奨小額景品の交換を選択した遊技客に対する特典付与として、景品交換率の割り増しを行う特典付与手段」を備えているのに対して、引用発明が当該構成を有しているか不明である点。

4.相違点にかかる検討

上記相違点について検討する。

[相違点1について]

引用文献2には次の記載がある。
「決定されたメッセージデータの形態が“お勧め景品”であった場合には、自身が有するPOS機能を利用して景品の在庫データを照会する在庫データ照会ルーチンB6を実行し、この後にメッセージデータ作成ルーチンB9へ移行する。尚、上記在庫データは、お勧め景品に供する景品名、その景品交換に必要なパチンコ玉数、在庫数などを含むデータである。」(段落【0036】)
「メッセージデータ作成ルーチンB9では、以下に述べるような動作が行われる。即ち、当該ルーチンB9の直前に在庫データ照会ルーチンB6が行われた場合には、“お勧め景品”のためのメッセージデータ(図5(a)に一例を示すガイドメッセージjのためのデータ)を当該ルーチンB6で照会した在庫データに基づいて作成する。このとき、“お勧め景品”の選択は、在庫データを優先した状態(例えば賞味期限が存在するなど、早期に景品交換に供することが望ましい景品を優先する)で行われる。」(段落【0040】)
「メッセージデータ作成ルーチンB22では、以下に述べるような動作が行われる。即ち、当該ルーチンB22の直前に在庫データ照会ルーチンB6が行われた場合には、“お勧め景品”のためのメッセージデータ(図5(a)に一例を示すガイドメッセージjのためのデータ)を当該ルーチンB6で照会した在庫データに基づいて作成する。このとき、“お勧め景品”の選択は、前記計数終了信号中に含まれる計数データにより示される総玉数の範囲で行われる。」(段落【0050】)
また、ガイドメッセージの例として「お勧め景品 北海道産タラバガニ 通常 玉2300個のところ玉2000個でご奉仕します 残り 10個 お早めに!」と記載されている。(【図5】(a)参照)

以上によれば、引用文献2には、景品の在庫データを照会し、在庫データに基づいて、所定の玉数の範囲内で、在庫データを優先した状態(例えば賞味期限が存在するなど、早期に景品交換に供することが望ましい景品を優先する)でお勧め景品の選択を行うという技術(以下「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。

引用発明においても、景品交換管理装置1には「景品の入庫を専用に行う端末機であるハンディーミナル69」が接続されてなるものであって、また引用文献1にも景品の在庫管理に関する記載がある(段落【0019】参照)から、引用発明の景品交換管理装置1も景品の在庫管理を行っているものである。よって、引用文献1における端玉景品について予め任意に登録する点に代えて、引用文献2記載の技術を適用し、在庫データを照会して、例えば賞味期限が存在するなど早期に景品交換に供することが望ましい景品を優先して端玉景品を選択し、引用発明における遊技客用の表示部3においてお勧め(端玉)景品として画面表示することは、当業者にとって容易に想到できたことである。

よって、本願発明の相違点1にかかる構成とすることは、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて、当業者が容易に想到できたことである。

[相違点2について]

引用発明においては「端玉景品の内容を客の要求等により変更するとき」とあるが、具体的な変更操作については明らかでない。しかし、引用発明においても遊技客用の表示部3は備えられており、また、景品交換において、遊技客が画面を見ながら操作を行って、特殊景品を選択した後に端玉景品の選択を行うことは、引用文献3(図8?図11参照)や引用文献4(段落【0049】-【0055】参照)に記載されているように従来より周知の技術(以下「周知技術」という。)に過ぎない。
そして、本願発明における「おまかせボタン」とは、「おすすめボタン」によって提示された推奨少額景品を一括して確定させるものであり、要は決定する(確定させる)機能の操作手段に他ならないから、引用発明における「確定キー」に相当するものである。
とすれば、本願発明は「おすすめボタン」を備え、これを操作することにより「前記推奨小額景品を抽出・決定して当該遊技客側に提示する」手段を備えているのに対して、引用発明においては、まず推奨される端玉景品を提示した上で、確定キーが入力されるまでは当該端玉景品を変更可能としている点、が実質的な相違である。

この点について検討するに、操作者が所定の意志表示を行った場合にのみ複数の候補商品から推奨商品を選択し提示するといった手法は、引用文献6に「おまかせ31が押されると(S92)、販売者側でおまかせ販売の対象としたい商品の販売可能ランプを点灯あるいは点滅させ(S141)、この時点においての割引価格を表示器26に表示する(S142)。」(段落【0070】)という記載があるように自動販売機の分野において公知の手法である(以下「引用文献6記載の技術」という。)。
引用発明の手法も引用文献6記載の技術における手法も、「推奨される品」又は「操作者(購入者)の選択による品」のいずれも選択することは可能であって、操作上どちらを先とするかの違いに過ぎず、どのような操作態様とするかは装置の設計にあたって当業者が適宜選択・設計できることである。そして、引用文献6記載の技術も購入者自身による操作手段に関する技術であって、遊技者自身が交換操作を行う景品交換装置は上述したように周知であるから、引用発明への適用は当業者にとって容易に想到できたことである。なお、「おすすめ」、「おまかせ」といった具体的な操作ボタンの名称や態様は設計事項に過ぎないことは云うまでもない。

よって、本願発明の相違点2にかかる構成とすることは、引用発明、引用文献6記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できたことである。

[相違点3について]

消費者への商取引にあたって、推奨商品について値引きを行ったり、何らかのサービスを加えたりすることは、例を挙げるまでもなく従来より慣用されている手法(以下「商慣行」という。)である。実際に、引用文献2においても「お勧め景品…通常 玉2300個のところ玉2000個」とあったり、引用文献6においてもおすすめ販売については割引価格を提示している。
さらに、当分野においても、遊技客への特典としての「景品交換率の割り増し」は周知のサービス形態に過ぎない(例えば、特開平6-134133号公報の段落【0087】)。

よって、本願発明の相違点3にかかる構成とすることは、引用発明、商慣行及び周知のサービス形態に基づいて、当業者が容易に想到できたことである。

5.当審の判断についてのむすび

そうすると、相違点1?3にかかる本願発明の構成は、引用発明、引用文献2記載の技術、引用文献6記載の技術、周知技術、商慣行及び周知のサービス形態に基づいて、当業者が容易に想到できたことである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術、引用文献6記載の技術、周知技術、商慣行及び周知のサービス形態から、当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、当審拒絶理由に基づき当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4.むすび

以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-27 
結審通知日 2009-09-01 
審決日 2009-09-15 
出願番号 特願2005-179666(P2005-179666)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥西村 仁志  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
池谷 香次郎
発明の名称 景品交換システム及び景品交換装置  
代理人 渡辺 喜平  

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