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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F22B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F22B
管理番号 1206361
審判番号 不服2007-19013  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-06 
確定日 2009-10-30 
事件の表示 平成9年特許願第259049号「ボイラ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年4月9日出願公開、特開平11-94204号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成9年9月24日の出願であって、平成19年5月25日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年6月5日)、これに対し、同年7月6日に拒絶査定不服審判が請求され、さらに、同年8月1日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成19年8月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年8月1日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。
「火炉で燃料を燃焼させて生じた燃焼ガスを用いて火炉壁及び火炉天井部に配置された天井壁(31)と伝熱管群(55,59)と火炉後流側のガス流路にある後部伝熱壁(41)と後部伝熱管群(3,51,72)を含む流体流路内を流れる内部流体から蒸気を発生させるボイラにおいて、
前記流体流路を流れる内部流体の循環運転と貫流運転の切替を達成させるための汽水分離器(20)を後部伝熱壁(41)の前流側の前記流体流路に配置し、前記汽水分離器(20)から分離した流体を天井壁(31)を経由して後部伝熱壁(41)の流体入口部に設けられる入口管寄せ(40)に乾き蒸気として流入させる蒸気流路(32,33)を形成し、該後部伝熱壁入口管寄せ(40)から2つに分岐した分岐流路を形成し、一方の分岐流路を乾き状態の前記流体が流れる後部伝熱壁(41)に接続し、他方の分岐流路を乾き状態の前記流体が流れる後部伝熱管群(3,51,72)の支持管(42)に接続したことを特徴とするボイラ。」(以下「本件補正発明」という。)

上記補正は、補正前の発明特定事項である「前記汽水分離器(20)から分離した蒸気を天井壁(31)を経由して後部伝熱壁入口管寄せ(40)に流入させる蒸気流路を形成し、該後部伝熱壁入口管寄せ(40)から2つに分岐した分岐流路を形成し」を「前記汽水分離器(20)から分離した流体を天井壁(31)を経由して後部伝熱壁(41)の流体入口部に設けられる入口管寄せ(40)に乾き蒸気として流入させる蒸気流路(32,33)を形成し、該後部伝熱壁入口管寄せ(40)から2つに分岐した分岐流路を形成し」と限定するとともに、補正前の発明特定事項である「一方の分岐流路を後部伝熱壁(41)に接続し、他方の分岐流路を後部伝熱管群(3,51,72)の支持管(42)に接続した」を「一方の分岐流路を乾き状態の前記流体が流れる後部伝熱壁(41)に接続し、他方の分岐流路を乾き状態の前記流体が流れる後部伝熱管群(3,51,72)の支持管(42)に接続した」と限定するものであって、特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願平2-21194号(実開平3-112606号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(a)「第5図はボイラの一例を示すもので、図中1は火炉、2は後部伝熱部、3は副側壁、4は天井管を示し、前記火炉1は火炉前壁5と、火炉後壁6を、左右の火炉側壁7と、バーナ8と、上部に有したノーズ管9を備えており、又後部伝熱部2は前壁10と後壁11と、側壁12と、区画壁13とからなる後部伝熱部壁2’と、前記区画壁13によって区画された一方の流路に有した再熱器14と、他方の流路に有した過熱器15及び節炭器16とを備えており、又、前記副側壁3は左右の壁17と底壁18とを有して前記火炉1の上部と後部伝熱部2の上部とを連通するようにしている。
節炭器16に供給されたボイラ水は、該節炭器16にて予熱された後、火炉1の下部に導かれて火炉前、後壁5、6及び左右の火炉側壁7内を上昇する間に、バーナ8の燃焼による火炉1内の高温ガスによって加熱されて火炉出口ヘッダ19に導かれる。
火炉出口ヘッダ19に集められた熱水は、ノーズ管下部ヘッダ20に導かれ、更にノーズ管9を通る間に加熱されてノーズ管上部ヘッダ21に集められて気水分離器22に導かれる。
気水分離器22にて分離された蒸気は、天井管4内を通って加熱された後、天井管ヘッダ23に集められ、更に後部ヘッダ24に導かれて、該後部ヘッダ24から、後部伝熱部2の前後左右の壁10、11、12及び区画壁13からなる後部伝熱部壁2’に導入されると共に、副側壁3の左右の壁17と連通する副側壁下部ヘッダ25に導くようにしている。
又、後部伝熱部2及び副側壁3に導かれた蒸気は、夫々出口ヘッダ26、27を介して集められ、過熱器15に導かれるようになっている。再熱器14には、図示しないタービン出口の再熱蒸気が導かれるようになっている。」(第1頁下第1行ないし第3頁第15行)
(b)上記摘記事項(a)および図5によれば、節炭器16にて予熱された後、火炉前、後壁5、6及び左右の火炉側壁7内を上昇する間に加熱され熱水となり、更にノーズ管9内を通る間に加熱され、気水分離器22に導かれ、気水分離器22にて分離された蒸気は、天井管4内を通って加熱された後、後部伝熱部2内に導入され、過熱器15内、再熱器14内に導かれ、これら管路内を流れることによりボイラ水から蒸気を発生させるボイラについて記載されていることから、火炉前、後壁5、6、左右の火炉側壁7および天井管4とノーズ管9と、後部伝熱部壁2’と、後部伝熱部2に設けられた節炭器16、過熱器15および再熱器14を含む管路内を流れることによりボイラ水から蒸気を発生させるボイラが示されている。同じく、後部伝熱部壁2’の上流側の管路に気水分離器22を配置し、気水分離器22にて分離された蒸気を天井管4を経由して、後部伝熱部壁2’の後部ヘッダ24に加熱された蒸気として導入させるための、天井管ヘッダ23と天井壁ヘッダ23と後部ヘッダ24とを接続する管路とを配置したことが示されている。
(c)上記摘記事項(a)によると、気水分離器22にて分離された蒸気は、天井管4内を通って加熱された後、天井管ヘッダ23に集められ、更に後部ヘッダ24に導かれて、該後部ヘッダ24から、後部伝熱部2の前後左右の壁10、11、12及び区画壁13からなる後部伝熱部壁2’に導入されることから、気水分離器22にて分離された蒸気がボイラを貫流することが示されている。

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物1には、次の発明が記載されている。
「火炉1でバーナ8の燃焼による火炉1内の高温ガスによって、火炉前、後壁5、6、左右の火炉側壁7および天井管4とノーズ管9と、後部伝熱部壁2’と、後部伝熱部2に設けられた節炭器16、過熱器15および再熱器14を含む管路内を流れることによりボイラ水から蒸気を発生させるボイラにおいて、
気水分離器22にて分離された蒸気がボイラを貫流し、
後部伝熱部壁2’の上流側の管路に気水分離器22を配置し、気水分離器22にて分離された蒸気を天井管4を経由して、後部伝熱部壁2’の後部ヘッダ24に加熱された蒸気として導入させるための、天井管ヘッダ23と天井壁ヘッダ23と後部ヘッダ24とを接続する管路とを配置し、
後部ヘッダ24を加熱された蒸気が流れる後部伝熱部壁2’に接続したボイラ。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-307602号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(a)「【産業上の利用分野】本発明は、火炉における燃焼により生じた燃焼ガスにより加熱或いは過熱する再熱器或いは過熱器等の被加熱器の支持を撓みを生じることなく行って燃焼ガスの通過面積の拡大化を無理なく行い得ると共に、被加熱器の支持に特別な手段を施工する必要がなくてロウコストで製作し得るボイラに関するものである。」(段落【0001】)
(b)「本発明は、上述の実情に鑑み、過熱器或いは再熱器等の被加熱器における熱交換量の増大を図るために、伝熱部の前壁と後壁(対向壁)間の寸法を大きくして燃焼ガスの通過面積の拡大を行っても、被加熱器の伝熱管の水平部に撓みが生じないようにでき、しかも別個に被加熱器の伝熱管を支持するための支持管を伝熱部内に配管する必要がなくて廉価に製作できるボイラを提供することを目的とするものである。」(段落【0014】)
(c)「後部伝熱部4の前壁4a(又は後壁4b)を形成する炉壁管11の内、任意の炉壁管11を、後部伝熱部4の内側に向けて突出せしめて支持管41とし、図2に示すように被加熱器6を形成する、前後方向Aに交互に向きを変え且つ上下方向に蛇行せしめた伝熱管7の間にその2本おきに前記支持管41を上下方向に挿入位置せしめる。図2の場合には1本おきに炉壁管11を後部伝熱部4の内側に向けて突出せしめて支持管41としているが、被加熱器6を形成する伝熱管7の、後部伝熱部4の幅方向のピッチに合せて複数本(例えば2本或いは3本)おきに炉壁管11を後部伝熱部4の内側に向けて突出して支持管41としてもよい。
前記のように後部伝熱部4の内側に向けて突出配管した支持管41の、伝熱管7の間に位置し且つ伝熱管7に面する両側の部分には、図12及び図13に示すように伝熱管7を下側から受け止める凹み20付き受け金具19が後部伝熱部4の幅方向に設けられていて、伝熱管7を凹み20に収納した状態で下側から支持するようになっている。」(段落【0019】、【0020】)
(d)「図7は、図5に示すものの一変形例にして、過熱器流路23において図4に示す実施例と同様にして後部伝熱部4の後壁4bを形成する炉壁管11の内、任意の炉壁管11を仕切り壁22側に向かって突出して形成した支持管47により、過熱器25,26を形成する伝熱管31、及び過熱器52を形成する伝熱管56の後部伝熱部4の後壁4b側の曲折端部の内側(仕切り壁22側)を支持するようにしたものであり、この場合も前述の実施例と同様に過熱器25,26、及び過熱器52の水平部に撓みが生じないように対処し得ると共に、専用の支持管を後部伝熱部4内に配管する必要がなくて機構簡単にして経済的である。」(段落【0030】)
(e)「発明の効果】以上述べたように請求項1及び請求項2に記載の本発明のボイラのいずれにおいても、過熱器或いは再熱器等の被加熱器を撓みを生じることなく支持できて好都合であり、過熱器或いは再熱器等の被加熱器の支持に別個に専用の支持管を伝熱部内に設ける必要がなくて機構簡単にして経済的である、等種々の優れた効果を奏し得る。」(段落【0032】)
(f)上記摘記事項(a)、(c)および【図1】、【図2】の記載によると、後部伝熱部4に形成された管寄せ42から2つに分岐した分岐流路を形成し、一方の分岐流路を後部伝熱部4の炉壁管11に接続し、他方の分岐流路を、被加熱器を形成する伝熱管7を支持する後部伝熱部4の内側に向けて突出する支持管41に接続したボイラが示されている。
上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物2には、次の発明が記載されている。
「別個に被加熱器の伝熱管を支持するための支持管を伝熱部内に配管する必要がなくて廉価に製作できるボイラを提供するという課題を解決するために、
後部伝熱部4に形成された管寄せ42から2つに分岐した分岐流路を形成し、一方の分岐流路を後部伝熱部4の炉壁管11に接続し、他方の分岐流路を、被加熱器を形成する複数の伝熱管7を支持する後部伝熱部4の内側に向けて突出する支持管41に接続したボイラ。」

3.対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明を対比する。
刊行物1に記載された発明の「火炉1」は、その構成および機能からみて、本件補正発明の「火炉」に相当し、以下同様に、
「バーナ8の燃焼による火炉1内の高温ガスによって」は「燃料を燃焼させて生じた燃焼ガスを用いて」に、
「火炉前、後壁5、6、左右の火炉側壁7」は「火炉壁」に、
「天井管4」は「(火炉天井部に配置された)天井壁」に、
「ノーズ管9」は「伝熱管群」に、
「後部伝熱部壁2’」は「火炉後流側のガス流路にある後部伝熱壁」に、
「節炭器16、過熱器15および再熱器14」は「後部伝熱管群」に、
「管路」は「流体流路」に、
「ボイラ水から蒸気を発生させる」は「内部流体から蒸気を発生させる」に、
「ボイラ」は「ボイラ」に、
「気水分離器22」は「汽水分離器」に、
「後部伝熱部壁2’の上流側の管路に気水分離器22を配置し」は「汽水分離器(20)を後部伝熱壁(41)の前流側の前記流体流路に配置し」に、
「気水分離器22にて分離された蒸気」は「汽水分離器(20)から分離した流体」に、
「後部伝熱部壁2’の後部ヘッダ24」は「後部伝熱壁(41)の流体入口部に設けられる入口管寄せ(40)」に、
「加熱された蒸気」は「乾き蒸気」と「乾き状態の流体」に、
「天井管ヘッダ23と天井壁ヘッダ23と後部ヘッダ24とを接続する管路とを配置し」は「蒸気流路(32,33)を形成し」に、
それぞれ相当する。

したがって、上記両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点]
「火炉で燃料を燃焼させて生じた燃焼ガスを用いて火炉壁及び火炉天井部に配置された天井壁と伝熱管群と火炉後流側のガス流路にある後部伝熱壁と後部伝熱管群を含む流体流路内を流れる内部流体から蒸気を発生させるボイラにおいて、
汽水分離器を後部伝熱壁の前流側の前記流体流路に配置し、前記汽水分離器から分離した流体を天井壁を経由して後部伝熱壁の流体入口部に設けられる入口管寄せに乾き蒸気として流入させる蒸気流路を形成したボイラ。」

[相違点1]
汽水分離器について、
本件補正発明が、流体流路を流れる内部流体の循環運転と貫流運転の切替を達成させるのに対して、
刊行物に記載された発明は、流体流路を流れる内部流体の貫流運転のためのものではあるものの、流体流路を流れる内部流体の循環運転と貫流運転の切替を達成させるか否か明らかでない点。

[相違点2]
本件補正発明では、後部伝熱壁入口管寄せから2つに分岐した分岐流路を形成し、一方の分岐流路を乾き状態の前記流体が流れる後部伝熱壁に接続し、他方の分岐流路を乾き状態の前記流体が流れる後部伝熱管群の支持管に接続したのに対して、
刊行物に記載された発明では、後部伝熱壁入口管寄せを乾き状態の流体が流れる後部伝熱壁に接続した点。

4.当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
刊行物1に記載された発明では、気水分離器22にて分離された水をどのような経路で流すか特定されていない。しかしながら、汽水分離器にて分離された水を循環運転すること、および、汽水分離器により循環運転と貫流運転の切替を達成することは、通常行われることであり(例えば、特開昭64-19204号公報、特開昭63-311003号公報、特開昭62-134401号公報参照。)、刊行物1に記載された発明においても、気水分離器22にて分離された水を循環運転させ、その結果、流体流路を流れる内部流体の循環運転と貫流運転の切替を達成させるようにすることは当業者が適宜なし得たものである。

(2)相違点2について
本件補正発明と刊行物2に記載された発明を対比する。
刊行物2に記載された発明の「後部伝熱部4に形成された管寄せ42」は、その構成および機能からみて、本件補正発明の「後部伝熱壁入口管寄せ」に相当し、以下同様に、
「後部伝熱部4の炉壁管11」は「後部伝熱壁」に、
「被加熱器を形成する複数の伝熱管7」は「後部伝熱管群」に、
「支持する後部伝熱部4の内側に向けて突出する支持管41」は「支持管」に、
それぞれ相当する。
したがって、刊行物2に記載された発明は、
「別個に被加熱器の伝熱管を支持するための支持管を伝熱部内に配管する必要がなくて廉価に製作できるボイラを提供するという課題を解決するために、
後部伝熱壁入口管寄せから2つに分岐した分岐流路を形成し、一方の分岐流路を後部伝熱壁に接続し、他方の分岐流路を後部伝熱管群の支持管に接続したボイラ。」と言い換えることができる。
ところで、刊行物1に記載された発明のボイラは、汽水分離器を後部伝熱壁の前流側の流体流路に配置し、後部伝熱壁に常に加熱された乾き上記が流入する構成を有するため、後部伝熱壁の入口部にオリフィス構造を設けることも無く、さらに管肉厚を大きくする必要な無いものである。
そして、刊行物1に記載された発明においては、後部伝熱部2に設けられた節炭器16、過熱器15および再熱器14は、何らかの支持手段により支持されていることは明らかである。また、重量物の支持構造一般の技術分野において、重量物を支持手段により支持するに際して、支持手段の構成を簡素化し、設備費などのコストアップを抑えることは、自明の課題といえる。
したがって、刊行物1に記載された発明は、後部伝熱部2に設けられた節炭器16、過熱器15および再熱器14を支持する支持手段の構成を簡素化し、設備費などのコストアップを抑えるという自明の課題を内在するものである。
ゆえに、刊行物1に記載された発明の節炭器16、過熱器15および再熱器14を支持する支持手段を、支持手段の構成を簡素化し、設備費などのコストアップを抑えるという自明の課題を解決するために、刊行物2に記載された発明に倣って、上記相違点2において本件補正発明が具備する構成に到達するようにすることは、当業者が容易になし得たものである。

(3)まとめ
本件補正発明が、全体として奏する効果についてみても、刊行物1および2に記載された発明が奏する効果から当業者が予測できる範囲内のものである。
ゆえに、本件補正発明は、刊行物1および2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
よって、本件補正発明は、刊行物1および2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成19年8月1日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年3月29日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「火炉で燃料を燃焼させて生じた燃焼ガスを用いて火炉壁及び火炉天井部に配置された天井壁(31)と伝熱管群(55,59)と火炉後流側のガス流路にある後部伝熱壁(41)と後部伝熱管群(3,51,72)を含む流体流路内を流れる内部流体から蒸気を発生させるボイラにおいて、
前記流体流路を流れる内部流体の循環運転と貫流運転の切替を達成させるための汽水分離器(20)を後部伝熱壁(41)の前流側の前記流体流路に配置し、前記汽水分離器(20)から分離した蒸気を天井壁(31)を経由して後部伝熱壁入口管寄せ(40)に流入させる蒸気流路を形成し、該後部伝熱壁入口管寄せ(40)から2つに分岐した分岐流路を形成し、一方の分岐流路を後部伝熱壁(41)に接続し、他方の分岐流路を後部伝熱管群(3,51,72)の支持管(42)に接続したことを特徴とするボイラ。」

2.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1および2、刊行物1および2の記載事項、および、刊行物1および2に記載された発明は、前記「第2[理由]2刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.対比および判断
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
本願発明は、前記「第2[理由]1本件補正発明」で検討した本件補正発明において「前記汽水分離器(20)から分離した流体を天井壁(31)を経由して後部伝熱壁(41)の流体入口部に設けられる入口管寄せ(40)に乾き蒸気として流入させる蒸気流路(32,33)を形成し、該後部伝熱壁入口管寄せ(40)から2つに分岐した分岐流路を形成し」とあったところを「前記汽水分離器(20)から分離した蒸気を天井壁(31)を経由して後部伝熱壁入口管寄せ(40)に流入させる蒸気流路を形成し、該後部伝熱壁入口管寄せ(40)から2つに分岐した分岐流路を形成し」とその限定を省くとともに、本件補正発明において「一方の分岐流路を乾き状態の前記流体が流れる後部伝熱壁(41)に接続し、他方の分岐流路を乾き状態の前記流体が流れる後部伝熱管群(3,51,72)の支持管(42)に接続した」とあったところを「一方の分岐流路を後部伝熱壁(41)に接続し、他方の分岐流路を後部伝熱管群(3,51,72)の支持管(42)に接続した」とその限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]3対比および4当審の判断」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1および刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-28 
結審通知日 2009-09-02 
審決日 2009-09-18 
出願番号 特願平9-259049
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F22B)
P 1 8・ 121- Z (F22B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大屋 静男  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 豊島 唯
長崎 洋一
発明の名称 ボイラ  
代理人 松永 孝義  

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