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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1206454
審判番号 不服2007-8901  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-29 
確定日 2009-11-04 
事件の表示 特願2004- 72926「多層プリント配線板およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月15日出願公開、特開2004-200720〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成9年12月10日(優先権主張:平成9年10月14日)に出願した特願平9-340182号の一部を、平成16年3月15日に新たな特許出願としたものであって、平成19年2月20日付で拒絶査定がなされ、これを不服として、平成19年3月29日付で審判請求するとともに、平成19年5月1日付で手続補正をしたものである。

II.平成19年5月1日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年5月1日付の手続補正を却下する。

[理 由]
1.本件手続補正の内容
本件手続補正により、特許請求の範囲は次のとおりに補正された。

「【請求項1】
基板上に、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、該基板には、スルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板において、
前記スルーホールの直上には、充填材のスルーホールからの露出面を覆う導体層が形成されてなり、当該導体層は、無電解めっき膜と、当該無電解めっき膜上の電解めっき膜とからなり、前記スルーホールの内壁には粗化層が形成され、前記充填材は、金属粒子と、熱硬化性または熱可塑性の樹脂からなり、前記金属粒子は、配合量が全体量に対して30?90wt%であり、前記金属粒子は露出されて前記無電解めっき膜と一体化されてなることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項2】
前記層間樹脂絶縁層の前記スルーホール直上に位置する部分には、バイアホールが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板。
【請求項3】
前記スルーホール直上の導体層には、粗化層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板。」

2.補正の適否について
上記補正の補正事項は、(1)補正前の請求項1に記載の「導体層が形成されてなり、」の後に、「当該導体層は、無電解めっき膜と、当該無電解めっき膜上の電解めっき膜とからなり、」を付加し、(2)同請求項1に記載の「前記金属粒子は、配合量が全体量に対して30?90wt%である」を、「前記金属粒子は、配合量が全体量に対して30?90wt%であり、前記金属粒子は露出されて前記無電解めっき膜と一体化されてなる」に訂正・付加したものである。

上記補正事項(1)、(2)は、「導体層」が、無電解めっき膜と当該無電解めっき膜上の電解めっき膜とからなるとともに、「金属粒子」が、露出されて無電解めっき膜と一体化されてなることを限定したものである。

そうすると、補正後の請求項1に記載された発明は、「導体層」の無電解めっき膜と充填材の「金属粒子」が一体化することにより、「過酷な高温多湿条件下でも導体層と界面で剥離が発生しにくくなる」(本願明細書段落0025)という作用効果を有することからみて、上記限定による補正後の請求項1に記載された発明の解決しようとする課題は、過酷な高温多湿条件下でも導体層と界面で剥離が発生しないようにすることである。

しかしながら、補正前の本願明細書の記載によれば、補正前の請求項1に記載の発明は、「導体層が形成されてな」ることにより、「スルーホール直上にバイアホールを形成することができるので、デッドスペースを無くして配線の高密度化を容易に実現することができる」(本願明細書段落0013)、「レーザ光でバイアホール用開口を形成する際に、導体層が、充填材中の樹脂成分まで浸食されるのを防止する」(同段落0015)という作用効果を有する。
また、同請求項1に記載の発明は、「金属粒子は、配合量が全体量に対して30?90wt%である」ことにより、「30%より少ないと、スルーホールから露出する充填材を覆う導体層の密着性が悪くなり、90%を越えると、印刷性が悪化する」(同段落0025)という作用効果を有する。

してみると、補正前の請求項1に記載された発明の解決しようとする課題は、デッドスペースを無くして配線の高密度化を容易に実現し、導体層が充填材中の樹脂成分まで浸食されるのを防止するとともに、充填材を覆う導体層の密着性と印刷性が悪化しないようにすることである。

そうすると、上記限定による補正後の請求項1に記載された発明の解決しようとする課題は、補正前の請求項1に記載された発明の解決しようとする課題とは明らかに相違するものであって、上記補正事項(1)、(2)は、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の解決しようとする課題が同一であるとすることはできないから、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものには該当しないし、さらに、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明にも該当しないので、上記補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものではない。

3.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

<付記>

なお、仮に、上記補正が同法第17条の2第4項に規定する限定的減縮に該当するとしても、下記のとおり、本件補正は、同じく改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

上記補正事項(1)については、無電解めっき膜と無電解めっき膜上に電解めっき膜を施すようなことは常套手段にすぎないから、充填材のスルーホールからの露出面を覆う導体層を、無電解めっき膜と無電解めっき膜上の電解めっき膜とすることは適宜に決定できる程度の設計的事項にすぎない。

上記補正事項(2)については、本願の実施例1によれば、「銅粒子を含む充填剤・・・を・・・充填し、・・・研磨を行う」ことで露出した金属粒子は、「常法に従って無電解銅めっきを施すことにより」(本願明細書段落0053)、無電解銅めっき膜と一体化されているにすぎないから、下記の刊行物1の第37段落?第39段落に記載された工程と実質的に同一であり、露出した金属粒子を無電解めっき膜と一体化した点に技術的な困難性は認められないし、この点に格別顕著な作用効果も認められない。

そうすると、次に示す「III.本願発明について」における対比・判断に、上記補正事項(1)、(2)についての判断を加味しても、上記補正による補正後の請求項1に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

III.本願発明について
1.本願発明
平成19年5月1日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成18年10月16日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであるところ、その内、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
基板上に、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、該基板には、スルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板において、
前記スルーホールの直上には、充填材のスルーホールからの露出面を覆う導体層が形成されてなり、前記スルーホールの内壁には粗化層が形成され、前記充填材は、金属粒子と、熱硬化性または熱可塑性の樹脂からなり、前記金属粒子は、配合量が全体量に対して30?90wt%であることを特徴とする多層プリント配線板。」


2.引用刊行物及びその摘記事項
原査定の拒絶の理由に引用した本願出願前に国内において頒布された下の刊行物1及び刊行物2には、次の事項が記載されている。

刊行物1:特開平7-283538号公報
刊行物2:特開平8-78842号公報

<刊行物1の摘記事項>
a)「【0030】
【実施例】
〔実施例1〕以下、本発明を多層プリント配線板の製造方法に具体化した実施例1を図1?図8に基づいて詳細に説明する。
【0031】図1には、多層プリント配線板1が示されている。この多層プリント配線板1は、基材2の両面に薄膜配線層3を備える6層板である。基材2の両面には導体パターン4が形成されている。これらの導体パターン4は、基材2を貫通するように設けられためっきスルーホール5によって接続されている。・・・
【0032】めっきスルーホール5を構成している銅めっき層5bは、その中央部に空洞部5aを有している。そして、その空洞部5aには、導電性を有する充填材としての銅ペースト7が充填されている。めっきスルーホール5の両端面は、銅ペースト7が充填されることによって平坦化されている。平坦化されためっきスルーホール5の両端面には、金属膜としてのめっき膜8が形成されている。つまり、めっきスルーホール5から露呈している銅ペースト7が、めっき膜8によって被覆された状態となっている。
・・・
【0035】この多層プリント配線板1の場合、めっきスルーホール5の端面から露呈している銅ペースト7に、内層側の層間絶縁層9に属するバイアホール15の底面がめっき膜8を介して電気的に接続されている。」

b)「【0036】次に、この多層プリント配線板1を製造する手順を図2?図8に基づいて説明する。・・・従来公知の手法に従ってパネルめっき及びスルーホールめっきを行い、・・・図2に示されるように銅張積層板17にめっきスルーホール5が形成される。
【0037】次に、めっきスルーホール5が形成された銅張積層板17に、各めっきスルーホール5の形成位置と対応する位置に孔を有するメタルマスクを配置する。そして、・・・図3に示されるようにめっきスルーホール5の空洞部5aに銅ペースト7を充填する。本実施例では、主成分である銅粉末及び熱硬化性樹脂に少量の溶剤・・・等を添加した銅ペースト7が使用されている。
【0038】次に充填された銅ペースト7の乾燥を行い、表面をバフ研磨により整面した後、・・・銅張積層板17の両面にめっき膜8を形成する。なお、銅ペースト7を充填する場合、・・・銅ペースト7の露呈面の高さがめっきスルーホール5のランド5c面の高さとほぼ同じになることが好ましい。
【0039】金属膜であるめっき膜8を形成する手段としては、電解めっき法や無電解めっき法がある。・・・なお、本実施例では電解銅めっき法によって、・・・銅からなるめっき膜8を形成することとしている。
【0040】次にめっき膜8の表面にエッチングレジストを形成した後、パターンエッチングを行う。すると、図4に示されるように、所定形状をした内層の導体パターン4が形成される。・・・
【0041】次に、・・・図5に示されるように、開口部としてのバイアホール形成用孔19を有する内層側の層間絶縁層9を形成する。・・・
【0042】次に、・・・内層側の層間絶縁層9に対する化学的な粗化処理を行う。その後、・・・めっき前処理及び無電解銅パターンめっきを行う。
【0043】上記のめっき処理を経ると、・・・銅めっき層15bが析出する。よって、図6に示されるように、内層側の層間絶縁層9に・・・バイアホール15が形成される。・・・また、内層側の層間絶縁層9の表面には、外層の導体パターン12が形成される。」

c)「【0048】さて、以上のような本実施例の多層プリント配線板1の製造方法の作用効果について説明する。この製造方法によると、めっきスルーホール5・・・の端面から露出している銅ペースト7は、粗化処理工程を行う前に、予めめっき膜8によって保護される。・・・このため、銅ペースト7の露出面に凹凸等が少なくなり、銅ペースト7部分とその上部に形成される銅めっき層15b・・・との接続状態が確実に向上する。この結果、接続信頼性に優れた多層プリント配線板1が得られることとなる。
・・・
【0050】更に、この製造方法によると、銅ペースト7の充填によってめっきスルーホール5の端面が平坦化されるため、その部分を接続用パッドとして使用することができる。つまり、めっきスルーホール5のほぼ軸線上にバイアホール15の底面を接続することが可能となる。・・・
【0051】そして、めっきスルーホール5側とバイアホール15側・・・がめっき膜8を介して電気的に接続可能となる。」

<刊行物2の摘記事項>
a)「【0007】
【課題の解決手段】本発明は,絶縁基板に,該絶縁基板を貫通するスルーホールを穿設し,次いで,上記絶縁基板の表面及び上記スルーホールの内壁に金属めっき膜を施し,次いで,化学的表面処理により,上記金属めっき膜の表面に粗化表面層を形成し,次いで,上記スルーホールの内部及びその開口周辺部に充填材を供給し,硬化させ,次いで,上記絶縁基板の表面に突出した充填材及び上記粗化表面層を研磨除去し,その後,上記絶縁基板の表面にパターン回路を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法にある。
【0008】本発明において最も注目すべきことは,絶縁基板の表面及びスルーホールの内壁に設けた金属めっき膜の表面に,化学的表面処理により,粗化表面層を形成すること,及び上記スルーホール内に充填材を供給し,硬化させた後,絶縁基板の表面に突出した上記充填材及び上記粗化表面層を研磨除去することである。」

b)「【0016】
【作用及び効果】本発明にかかるプリント配線板の製造方法においては,スルーホールの内壁に金属めっき膜を形成し,この金属めっき膜の表面に化学的表面処理を施して,粗化表面層を形成している。このスルーホールの内部には,充填材が充填される。充填材は,粗化表面層の凹凸により,スルーホールの内壁に対し密着する。そのため,例え,熱衝撃を受けても,充填材がスルーホールの内壁から剥がれることもない。従って,スルーホールから湿気が浸入するのを防止することができる。」

3.当審の判断
(1)刊行物1記載の発明
ア)上記摘記事項a)、b)によれば、基材の両面に形成した導体パターンにめっき膜を形成して内層の導体パターンとした後、内層側の層間絶縁膜を形成し、さらに、内層側の層間絶縁膜の表面に外層の導体パターンを形成していることからみて、基材上に層間絶縁膜を介して外層の導体パターンが形成されているものと認められる。

そこで、上記ア)の事項を考慮しつつ、上記摘記事項a)?c)を整理すると、上記刊行物1には、「基材の両面に導体パターンが形成され、基材を貫通するめっきスルーホールによって、両面の導体パターンが接続された多層プリント配線板において、めっきスルーホールの空洞部に主成分が銅粉末及び熱硬化性樹脂からなる銅ペーストが充填され、基材の両面に形成した導体パターンに銅めっき膜を形成するとともに、めっきスルーホールの両端面に銅ペーストを被覆する銅めっき膜を形成して内層の導体パターンが形成され、さらに、内層側の層間絶縁層が形成され、この内層側の層間絶縁層を介して外層の導体パターンが形成された、多層プリント配線板」に関する発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていることになる。

(2)対比・判断
そこで、本願発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「基材」、「外層の導体パターン」は、本願発明の「基板」、「導体回路」に相当し、刊行物1発明の「銅ペースト」、「銅めっき膜」は、本願発明の「充填材」、「導体層」に相当し、さらに、刊行物1発明の「銅粉末」は、本願発明の「金属粒子」に相当する。

そうすると、両者は、「基板上に、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、該基板には、スルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板において、前記スルーホールの直上には、充填材のスルーホールからの露出面を覆う導体層が形成されてなり、前記充填材は、金属粒子と、熱硬化性の樹脂からなる多層プリント配線板」の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点1:スルーホールの内壁について、本願発明1は、スルーホールの内壁には粗化層が形成されているのに対し、刊行物1発明はそのようなものは形成されていない点。
相違点2:金属粒子の配合量について、本願発明1は、配合量が全体量に対して30?90wt%であるのに対し、刊行物1発明の銅粉末の配合量については不明である点。

つぎに、上記相違点1、2について検討する。

<相違点1>
上記刊行物2の摘記事項a)、b)には、スルーホールの内壁に金属めっき膜を施し、化学的表面処理により、金属めっき膜の表面に粗化表面層を形成し、このスルーホールの内部に充填材を充填することにより、充填材は、粗化表面層の凹凸によりスルーホールの内壁に対し密着するため、例え、熱衝撃を受けても、充填材がスルーホールの内壁から剥がれることがないことが記載されている。

そうすると、刊行物1発明においても、めっきスルーホールの空洞部に銅ペーストを充填しており、めっきスルーホールの内壁から銅ペーストが剥がれないようにすることは当然に要求される事項であるから、刊行物1発明において、めっきスルーホールの内壁に、刊行物2に記載された粗化表面層を形成することにより、めっきスルーホールの内壁から銅ペーストが剥がれないようにすることは容易に想到することができるものである。

<相違点2>
刊行物1発明の銅ペーストは、下記に示すように、スルーホール内に充填する充填材における金属の配合量が、30?90wt%の範囲内にあるものは普通に知られているから、刊行物1発明において、銅ペーストの銅粉末の配合量を30?90wt%の範囲内のものを選択するようなことは適宜に決定できる程度の設計的事項にすぎない。

周知例1:特公平6-32368号公報

「[実施例]
・・・
第1図は本発明プリント配線板の実施例を示す要部の断面図である。
・・・かかる封止部材としは、エポキシ樹脂等の熱硬化型の合成樹脂材料・・・から成るものである。
以下には、前記封止部材10に使用するペーストの組成例を示す。
ペーストの組成例 (1)
銀 40?70 wt%
バインダー(エポキシ系樹脂) 10?20 wt%
・・・
ペーストの組成例 (2)
カーボン 20?50 wt%
バインダー(フェノール系樹脂)20?30 wt%
・・・
しかして、これらの組成から成る銀ペーストあるいはカーボンペーストをスクリーン印刷方法等の手段によりプリント配線板11の各導通用スルーホール部6中に充填した後、これを硬化することにより形成する。」(2頁左欄33行?右欄10行)

周知例2:特開平8-279673号公報

「【0033】また部品接続時において、半田濡れ性を向上させるため、硬化性ペーストの硬化体と絶縁基板表裏の回路パターンとに、共通したメッキ層を形成しても良い。かかる態様において使用される硬化性ペーストは、該共通したメッキ層と硬化性ペーストの硬化体との間に十分な密着強度を得ることができることより、金、銀、銅、ニッケル、鉛等の金属製導電粉末を20?60体積%含有するエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の架橋性の熱硬化性樹脂を、必要により有機溶剤と共に混合してペースト状とした公知の銀ペースト、銅ペーストに代表される硬化後に導電性を有する硬化体を与える硬化性導電ペーストが好ましい。」

なお、周知例2の硬化性ペーストの金属製導電粉末の含有量は、20?60体積%として体積%で表されているものの、含有量を重量%で表しても、その一部は30?90wt%の範囲内に含まれるものと認められる。

そして、本願発明1の相違点1の粗化層を形成した点、相違点2の金属粒子の配合量を限定した点については、いずれも格別の作用効果は認められない。

したがって、本願発明1は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1及び刊行物2に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の請求項2?請求項3に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-19 
結審通知日 2009-08-25 
審決日 2009-09-07 
出願番号 特願2004-72926(P2004-72926)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 岡 和久
特許庁審判官 加藤 浩一
國方 康伸
発明の名称 多層プリント配線板およびその製造方法  
代理人 小川 順三  
代理人 中村 盛夫  

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