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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1206457
審判番号 不服2007-10836  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-16 
確定日 2009-11-02 
事件の表示 特願2005-511972号「スピーカケーブル用プラグと該プラグを受入れるスピーカ端子、並びに、前記プラグと端子によるスピーカターミナルシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年2月3日国際公開、WO2005/011067号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成16年3月2日(優先件主張平成15年7月24日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成19年3月14日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年3月16日)、これに対し、同年4月16日に拒絶査定不服審判が請求され、さらに、同年5月15日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年5月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年5月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された(以下「本件補正発明」という。)。
「前面に正,負両極の端子挿入口が形成され後面に前記両極に対応したケーブル挿入口が形成されて内部が中空のプラグ本体であって、その内部に、前記端子挿入口から挿入されるスピーカ端子をその両面からバネ性によって挟持する端子挟持用舌片を配設すると共に、該端子挟持用舌片に接続されて前記ケーブル挿入口から挿入される正,負両極のスピーカケーブルの導線をそれぞれに各導線の両面からバネ性によって挟持するケーブル挟持用舌片を配設したプラグ本体において、前記両極の各ケーブル挟持用舌片のケーブル挟持部を拡開するための当該ケーブル挟持用舌片に結合された操作片でその操作部が前記プラグ本体の外面から突出するように設けられた操作片を、各極のケーブル挟持部ごとに個別の操作片によって独立して拡開できるように形成したことにより、前記操作部を押してケーブル挟持部を拡開させ当該挟持部にケーブルの導線を挿入し、当該操作部を放して挿入した前記導線を挟持させるようにしたことを特徴とするスピーカケーブル用プラグ。」

上記補正は、操作片について、本件補正前の請求項1に「当該ケーブル挟持用舌片に結合された操作片」とあった発明特定事項を「当該ケーブル挟持用舌片に結合された操作片でその操作部が前記プラグ本体の外面から突出するように設けられた操作片」と限定するとともに、操作部の操作について、「各極のケーブル挟持部ごとに個別の操作片によって独立して拡開できるように形成した」とあった発明特定事項を「各極のケーブル挟持部ごとに個別の操作片によって独立して拡開できるように形成したことにより、前記操作部を押してケーブル挟持部を拡開させ当該挟持部にケーブルの導線を挿入し、当該操作部を放して挿入した前記導線を挟持させるようにした」と限定することを含むものであり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

(2)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特許第3435132号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】 第1リード線(5)と第2リード線(7)からなり、オーディオ機器のアンプとスピーカとの間に配線される一対のリード線(3)を、アンプまたはスピーカに接続するためのプラグであって、アンプまたはスピーカに設けられるソケット(127)の接続凹部(139)に挿抜自在の外形を有するプラグハウジング(15)と、このプラグハウジング(15)内に設けられ、第1リード線(5)と第2リード線(7)に対応して接続凹部(139)内に突設された一対のピン端子(131)と接触する一対のプラグ側接触端子(25)と、非対称形状の接続凹部(139)に対して特定姿勢でのみ挿抜するように、プラグハウジング(15)の外形を非対称とする逆挿入防止手段と、一対のプラグ側接触端子(25)を、それぞれ第1リード線(5)または第2リード線(7)に接続する接続手段と、を備えたプラグおいて、
接続手段は、第1リード線(5)または第2リード線(7)に着脱自在なクランプ手段であることを特徴とするプラグ。
【請求項2】 クランプ手段は、プラグ側接触端子(25)と一体的に形成された接触板(57)と、この接触板(57)に対向して接触板(57)の方向へ付勢され、第1リード線(5)または第2リード線(7)を接触板(57)との間で挟持してクランプする板バネ(59)と、この板バネ(59)を、付勢方向と反対方向へ押圧することでアンクランプする押しボタン(55)と、を有してなることを特徴とする請求項1に記載のプラグ。」(【特許請求の範囲】、下線は当審にて付与、以下同様。)
イ.「【発明の属する技術分野】この発明は、信号線とアース線からなる一対のリード線を、オーディオ機器などの機器に接続するためのプラグの構造に関する。
【従来の技術】リード線を用いて配線する機器として、例えば、オーディオ機器のアンプとスピーカーは、信号線とアース線の一対のリード線により接続される。リード線とこれらの機器との接続は、通常、リード線の端末を皮むきし、図11に示すように、機器の背面側端子板101に取り付けられたレバーターミナル103と呼ばれる接続具に接続する。」(段落【0001】および【0002】)
ウ.「すなわち、予め、一対のリード線121、123の端末を、それぞれ金属製のコネクターターミナル129に固着しておく。コネクタターミナル129の後端部(図中左端部)の断面は、U字断面を有するバレルであり、皮剥きされたリード線109の端末を挿入された後、バレルを加締めることによってリード線109の固着が行われる。コネクターターミナル129の先端部は、略円筒形状をなし、アンプ側端子131であるピン端子が挿入し接触する接触端子133となっている。リード線109を固着したこれら二本のコネクターターミナル129は、一つのプラグ125に設けられたそれぞれの収納部135に抜け止め収納される。
アンプの背面に設けられた端子板137側には、これらプラグ125に嵌合するソケット127によって接続凹部139が形成される。接続凹部139の内部には、信号線121とアース線123に対応する二つのピン端子131、131が突設されている。」(段落【0008】および【0009】)
エ.「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図13の接続具は、例えばオーディオマニアがスピーカーとの接続をより太いリード線など特殊なリード線で接続しようとする場合には対応せず、図11のレバーターミナル103のようには、接続することができない。つまり、あらかじめプラグ125に取り付けたリード線109しか用いることができないので、汎用性がないものであった。
図13に示すプラグ125の利便性と、図11のレバーターミナル103の汎用性を同時に生かしたい場合には、ソケット127とレバーターミナル103の二種類の接続具を、アンプなどの背面パネルに併設しなければならず、その場合には部品点数が増加するとともに、背面パネルのスペースも不足してしまい、実用的な解決策とはならなかった。
この発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、対となって配置される信号線とアース線の逆挿入を防止でき、隣り合うリード線のショートを防止でき、リード線の接続作業を簡単に行うことができ、しかも他のリード線を用いた接続も行える汎用性を備えたプラグを提供することを目的とする。」(段落【0015】ないし【0017】)
オ.「図1に示すように、このプラグ1に接続されるリード線3は、第1リード線である信号線5と第2リード線であるアース線7とからなる一対のリード線であり、オーディオ機器であるアンプとスピーカーの間に配線される。
すなわち、スピーカー側に接続する信号線5とアース線7の端末に対して一個のプラグ1が設けられ、アンプ背面の端子板137側に設けられたソケット127により構成される接続凹部139に、このプラグ1が挿入される。ソケット127は、図1に示すように、前述の従来例で説明したプラグ125とも嵌合接続するソケット127であり、従って、ソケット127については、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
プラグハウジング15の外形は、この接続凹部139の縦断面形状と概略同一で僅かに小さい縦長長方形の縦断面形状となっていて、プラグ1もプラグ125と同様に、接続凹部139に挿抜自在とするものである。また、接続凹部139の内面には凸部であるリブ141が形成され、プラグハウジング15の外面には、挿入の際に、このリブ141に嵌合する凹部である凹溝19が形成されている。これらリブ141や凹溝19を形成することによって、接続凹部139とプラグハウジング15の外形は、それぞれ非対称となっている。
接続凹部139の内奥には2本のピン端子131が固定され、接続凹部139の開口に向けて突設されている。
図2に示すように、プラグハウジング15の前面には、ピン端子131が挿入される端子挿入孔23が形成され、この端子挿入孔23の内側に、プラグ側接触端子25の略円筒状部分27が臨んでいる。すなわちこの略円筒状部分27は半割り形状となっており、その弾性によってピン端子131との嵌合を弾性的に維持することが可能となっている。
プラグ側接触端子25の一部には、プラグハウジング15の係合窓31に係合する係合爪29が切り起こされている。係合爪29は、プラグ側接触端子25を、プラグハウジング15の後方(図中左方)から挿入して収容した際に、係合窓31に係合することによって、プラグ側接触端子25を抜け止めするように作用する。
このプラグ側接触端子25には、プラグハウジング15の内部後方へ向かって、一体に板バネ33が連設されている。プラグハウジング15の後面には、リード線3を挿入するための挿入孔35が形成され、リード線3の皮剥き部分37は、この挿入孔35を通して、板バネ33と横並びとなる位置まで挿入され、後述するように弾性変形する板バネ33とプラグハウジング15の内壁51との間で挟持される。」(段落【0026】ないし【0032】)
カ.「上述した端子挿入孔23、プラグ側接触端子25、挿入孔35、回動レバー39などの構成は、信号線5とアース線7のそれぞれに対応して、プラグハウジング15の長手方向の上下2段にそれぞれ設けられている。」(段落【0036】)
キ.「オーディオマニアなどが、信号線5やアース線7をより太いリード線など、特殊なリード線に変えて接続を行おうとする場合には、回動レバー39を立ててそれまでのリード線3を取り外し、皮剥きした新たなリード線を挿入して回動レバー39を倒すことで、容易にリード線をプラグへ接続することができ、そのプラグ1を用いて、機器側のソケット127へ接続させることができる。
リード線3のプラグ1への接続作業は、従来のレバーターミナルの接続作業のように作業者の目に見えにくいアンプの背面パネル側で行う必要はなく、容易なので、リード線3の皮剥きされた部分37を充分に深く挿入してプラグ1へ接続でき、互いに露出部分が接触してショートしてしまうことを防止できる。
また、図1に示すように、ソケット127は、従来のコネクタターミナル129にリード線109を圧着したプラグ125を嵌合接続可能とするものであるので、従って、従来のプラグ125とソケット127からなる接続構造のソケット127側の構造を変えずに、リード線3のみを好みに合わせて変えたプラグ1を接続することが可能となる。」(段落【0042】ないし【0044】)
ク.「上述第1、第2実施形態においては、回動レバー39、11を板バネ33、13の方向へ回動させてクランプが行われるものであったが、図9に示す第3実施の形態のように、押しボタン55を押圧することでアンクランプ動作が行われ、離すことでクランプの動作が行われるものとすることも可能である。
すなわち、プラグ側接触端子25と一体に形成された接触板57に対向して板バネ59が配置され、両者57、59の間に信号線5またはアース線7などのリード線3をクランプする構成となっている。そして、接触板57の側には、押しボタン55が回動軸61回りに回動可能に設けられている。押しボタン55の一部は、プラグハウジング15のボタン窓63から露出し外部から指で押せる構成となっている。押しボタン55のプラグハウジング15内部側には押圧突起部65が形成され、この押圧突起部65が、板バネ59を押圧する。板バネ59は、接触板57よりも長く形成され、接触板57の端部よりも外側に露出し、この露出部分67を押圧突起部65によって押圧する。この押圧突起部65は、リード線3の挿入スペース38への挿入の邪魔にならならないように板バネ59の端部に設けられる。
この実施形態によれば、板バネへの押圧を解いた状態で、板バネ59自身の弾性でリード線をクランプするので、クランプ手段の一部が破損しても、クランプ状態、すなわち、リード線3の接続を維持できる。」(段落【0056】ないし【0058】)
ケ.「【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、信号線またはアース線等のリード線を着脱自在のクランプ手段でプラグへ接続することができ、太いリード線などの特殊なリード線でも容易な接続が行え、汎用性を得ることができる。
また、一対のリード線を接続した従来のプラグと接続するソケットに対して、嵌合接続する形状とすることができるので、従来のプラグとソケットの接続構造を変えずに、任意のリード線が接続可能なプラグを併用できる。」(段落【0071】および【0072】)
コ.【図9】の記載によると、プラグハウジング15は、内部が中空であることが示されている。
サ.上記カおよびクの記載によれば、【図9】に示す第3実施形態のものは、第1実施形態の、信号線5とアース線7のそれぞれに対応して設けられた「回動レバー39」に換えて「押しボタン55」を用いるものであるから、第3実施形態のものも「信号線5とアース線7のそれぞれに対応して押しボタン55を設けるもの」であることは、明らかである。

上記記載内容および図面の記載からみて、刊行物には、次の発明が記載されている。
「リード線の接続作業を簡単に行うことができ、しかも他のリード線を用いた接続も行える汎用性を備えたプラグを提供することを目的として、
前面には、信号線5とアース線7のそれぞれに対応するピン端子131、131が挿入される端子挿入孔23が形成され、
後面には、信号線5とアース線7のそれぞれに対応して設けられている挿入孔35が形成された内部が中空のプラグハウジング15であって、
この端子挿入孔の内側に、その弾性によって、端子挿入孔23から挿入されるアンプ側端子であるピン端子131、131との嵌合を弾性的に維持する略円筒状部27を有するプラグ側接触端子25を臨ませ、
プラグ側接触端子25と一体に形成された接触板57と板バネ59が配置され、挿入孔35から挿入される信号線5とアース線7のそれぞれに対応して、両者間にクランプする接触板57と板ばね59を設けたプラグハウジング15において、
信号線5とアース線7にそれぞれ対応して設けられた接触板57と板バネ59をアンクランプするため、その押圧突起部65により板ばね59を押圧する押しボタン55であって、その一部がプラグハウジング15のボタン窓63から露出するように設けられたボタン55を、信号線5とアース線7にそれぞれに対応して設け、ボタン55を別々に押圧することでアンクランプすることができ、ボタン55を押して接触板57と板バネ59をアンクランプさせて、接触板57と板バネ59に信号線5またはアース線7を挿入し、ボタン55を離すことで信号線5またはアース線7を挟持してクランプするプラグ1。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物に記載された発明を対比する。
刊行物に記載された発明の「前面には、信号線5とアース線7のそれぞれに対応するピン端子131、131が挿入される端子挿入孔23が形成され」は、その構成および機能からみて、本件補正発明の「前面に正,負両極の端子挿入口が形成され」に相当し、以下同様に、
「後面には、信号線5とアース線7のそれぞれに対応して設けられている挿入孔35が形成され」は「後面に両極に対応したケーブル挿入口が形成され」に、
「プラグハウジング15」は「プラグ本体」に、それぞれ相当する。
そして、刊行物に記載された発明の「この端子挿入孔の内側に、その弾性によって、端子挿入孔23から挿入されるアンプ側端子であるピン端子131、131との嵌合を弾性的に維持する略円筒状部27を有するプラグ側接触端子25を臨ませ」と本件補正発明の「端子挿入口から挿入されるスピーカ端子をその両面からバネ性によって挟持する端子挟持用舌片を配設する」とは、本件補正発明の「スピーカ端子」は、スピーカとアンプなどの端子を含む概念であることから、「端子挿入口から挿入されるスピーカ端子をバネ性によって挟持する端子挟持部を配設する」である点で共通し、以下同様に、
「プラグ側接触端子25と一体に形成された接触板57と板バネ59が配置され、挿入孔35から挿入される信号線5とアース線7のそれぞれに対応して、両者間にクランプする接触板57と板ばね59を設け」と「端子挟持用舌片に接続されてケーブル挿入口から挿入される正,負両極のスピーカケーブルの導線をそれぞれに各導線の両面からバネ性によって挟持するケーブル挟持用舌片を配設し」とは、「端子挟持部に接続されてケーブル挿入口から挿入される正,負両極のスピーカケーブルの導線をそれぞれに各導線の両面からバネ性によって挟持するケーブル挟持用舌片を配設し」である点で、
「信号線5とアース線7にそれぞれ対応して設けられた接触板57と板バネ59をアンクランプするため、その押圧突起部65により板ばね59を押圧する押しボタン55であって、その一部がプラグハウジング15のボタン窓63から露出するように設けられたボタン55を、信号線5とアース線7にそれぞれに対応して設け、ボタン55を別々に押圧することでアンクランプすることができ、ボタン55を押して接触板57と板バネ59をアンクランプさせて、接触板57と板バネ59に信号線5またはアース線7を挿入し、ボタン55を離すことで信号線5またはアース線7を挟持してクランプする」と「両極の各ケーブル挟持用舌片のケーブル挟持部を拡開するためのケーブル挟持用舌片に結合された操作片でその操作部がプラグ本体の外面から突出するように設けられた操作片を、各極のケーブル挟持部ごとに個別の操作片によって独立して拡開できるように形成したことにより、操作部を押してケーブル挟持部を拡開させ当該挟持部にケーブルの導線を挿入し、当該操作部を放して挿入した導線を挟持させるようにした」とは、「両極の各ケーブル挟持用舌片のケーブル挟持部を拡開するための操作片でその操作部がプラグ本体の外面から突出するように設けられた操作片を、各極のケーブル挟持部ごとに個別の操作片によって独立して拡開できるように形成したことにより、操作部を押してケーブル挟持部を拡開させ当該挟持部にケーブルの導線を挿入し、当該操作部を放して挿入した前記導線を挟持させるようにした」である点で共通する。

したがって、上記両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点]
「前面に正、負両極の端子挿入口が形成され後面に前記両極に対応したケーブル挿入口が形成されて内部が中空のプラグ本体であって、
その内部に、端子挿入口から挿入されるスピーカ端子をバネ性によって挟持する端子挟持部を配設すると共に、該端子挟持部に接続されて前記ケーブル挿入口から挿入される正、負両極のスピーカケーブルの導線をそれぞれに各導線の両面からバネ性によって挟持するケーブル挟持用舌片を配設したプラグ本体において、前記両極の各ケーブル挟持用舌片のケーブル挟持部を拡開するための操作片でその操作部が前記プラグ本体の外面から突出するように設けられた操作片を、各極のケーブル挟持部ごとに個別の操作片によって独立して拡開できるように形成したことにより、前記操作部を押してケーブル挟持部を拡開させ当該挟持部にケーブルの導線を挿入し、当該操作部を放して挿入した前記導線を挟持させるようにしたスピーカケーブル用プラグ。」
[相違点1]
端子挟持部について、
本件補正発明では、スピーカ端子をその両面からバネ性によって挟持する端子挟持用舌片であるのに対して、
刊行物に記載された発明では、スピーカーのピン端子131、131との嵌合を弾性的に維持する略円筒状部27を有するプラグ側接触端子25である点。

[相違点2]
操作片について、
本件補正発明では、ケーブル挟持用舌片に結合されているのに対して、
刊行物に記載された発明では、押圧突起部65により板ばね59(本件補正発明の「ケーブル挟持用舌片」に相当する。)を押圧するものである点。

(4)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
(4-1)相違点1について
プラグの技術分野において、プラグ内に収納する端子挟持部を、端子をその両面からバネ性によって挟持する端子挟持用舌片により構成することは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-45413号公報(段落【0013】、【図3】参照。)に記載されているように、本願の優先権主張の日前に周知の技術事項である。
そして、刊行物に記載された発明のプラグ側接触端子25に上記周知の技術事項を適用して、両面からバネ性によって端子を挟持する端子挟持用舌片とすることは当業者が適宜なし得たものである。

(4-2)相違点2について
プラグの技術分野において、操作片をケーブル挟持用舌片に結合させることは、本願の優先権主張の日前に周知の技術事項である(例えば、特開平5-152017号公報の段落【0024】、【図2】、【図3】や特開平9-266019号公報の段落【0027】、【0028】、【図5】参照)。
そして、刊行物に記載された発明の操作片に上記周知の技術事項を適用して、上記相違点2における本件補正発明が備える構成に到達することは、当業者が容易に想到し得たものである。

(4-3)まとめ
本件補正発明が奏する効果についてみても、刊行物に記載された発明および周知の技術事項が奏する効果から当業者が予測できる範囲内のものである。
ゆえに、本件補正発明は、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成19年5月15日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年1月15日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「前面に正,負両極の端子挿入口が形成され後面に前記両極に対応したケーブル挿入口が形成されて内部が中空のプラグ本体であって、その内部に、前記端子挿入口から挿入されるスピーカ端子をその両面からバネ性によって挟持する端子挟持用舌片を配設すると共に、該端子挟持用舌片に接続されて前記ケーブル挿入口から挿入される正,負両極のスピーカケーブルの導線をそれぞれに各導線の両面からバネ性によって挟持するケーブル挟持用舌片を配設したプラグ本体において、前記両極の各ケーブル挟持用舌片のケーブル挟持部を拡開するため、当該ケーブル挟持用舌片に結合された操作片を、各極のケーブル挟持部ごとに個別の操作片によって独立して拡開できるように形成したことを特徴とするスピーカケーブル用プラグ。」

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項、および、刊行物に記載された発明は、前記「2[理由](2)刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

(3)対比および判断
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
本願発明は、前記「2[理由]」で検討した本件補正発明において、操作片についての特定事項である「当該ケーブル挟持用舌片に結合された操作片でその操作部が前記プラグ本体の外面から突出するように設けられた操作片」について、「当該ケーブル挟持用舌片に結合された操作片」とその限定を省くとともに、操作部の操作についての発明特定事項である「各極のケーブル挟持部ごとに個別の操作片によって独立して拡開できるように形成したことにより、前記操作部を押してケーブル挟持部を拡開させ当該挟持部にケーブルの導線を挿入し、当該操作部を放して挿入した前記導線を挟持させるようにした」について、「各極のケーブル挟持部ごとに個別の操作片によって独立して拡開できるように形成した」とその限定を省くものを含むものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2[理由](3)対比および(4)当審の判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-03 
結審通知日 2009-08-11 
審決日 2009-09-03 
出願番号 特願2005-511972(P2005-511972)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 豊島 唯
長崎 洋一
発明の名称 スピーカケーブル用プラグと該プラグを受入れるスピーカ端子、並びに、前記プラグと端子によるスピーカターミナルシステム  
代理人 入江 一郎  
代理人 加藤 静富  

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