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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1206514
審判番号 不服2007-6263  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-01 
確定日 2009-11-05 
事件の表示 特願2003-418577「双方向通信売買方法及び双方向通信売買システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月 7日出願公開、特開2005-182202〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年12月16日の出願であって、平成19年1月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月1日に審判請求がなされ、同年3月29日付けで手続補正がなされたものである。その後、当審において平成21年5月12日付けで前置審尋がなされたところ、請求人からは応答なく回答書の提出がなされなかったものである。

2.平成19年3月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年3月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成19年3月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を、本件補正前の
「【請求項1】
店舗が販売している商品やサービスに関する広告情報を一又は複数の販売促進コンピュータを介して複数の携帯端末に送信し、該携帯端末は該広告情報に対して該販売促進コンピュータへ返信可能である双方向通信売買方法であって、
前記販売促進コンピュータのメモリ又は補助記憶装置に前記広告情報を発信条件と関連付けて記録する工程と、
前記発信条件に基づき前記販売促進コンピュータの前記メモリ又は前記補助記憶装置から、前記広告情報を呼び出し、所定の領域にある携帯端末にのみ発信する工程と、
一の携帯端末から返信されてきた何れの携帯端末からの情報であるのかを判別可能にする端末情報を少なくとも含む購入希望情報を受信し、これを前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録する工程と、
を含んで構成されてなることを特徴とする双方向通信売買方法。
【請求項2】
請求項1に記載の双方向通信売買方法において、
前記販売促進コンピュータは、一又は一のグループ毎に一台設置され、前記発信工程が専用の発信装置を介して所定の領域にある携帯端末のみに発信されることを特徴とする双方向通信売買方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の双方向通信売買方法において、
携帯端末の所持者と店舗側との間で、非対面の状態で、値段を含む条件交渉を行う工程と、
を含むことを特徴とする双方向通信売買方法。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載の双方向通信売買方法において、
さらに、
携帯端末の所持者からのオファーが前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録された販売価格より低かった場合、所定の期間経過後に、オークション式で、前記オファーの価格で販売する工程を含むことを特徴とする双方向通信売買方法。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載の双方向通信売買方法において、
さらに、
商店街の入口近傍にある前記一の携帯端末に対し、前記又は特定の販売促進コンピュータから前記店舗の扱う商品やサービスのリストを含む前記広告情報を送信する工程と、
前記一の携帯端末から返信された前記広告情報に対する少なくとも一のジャンルに絞った前記購入希望情報を受信する工程と、
前記一の携帯端末には、前記絞られた一のジャンルに属する商品又はサービスのみの前記広告情報が発信されるよう一又は複数の販売促進コンピュータを制御する工程と、
を備えていることを特徴とする双方向通信売買方法。
【請求項6】
店舗が販売している商品やサービスに関する広告情報を記録するメモリや補助記憶装置を有する一又は複数の販売促進コンピュータと、該販売促進コンピュータと電気通信回線を介して相互に送受信可能な複数の携帯端末と、を備えてなる双方向通信売買システムであって、
前記販売促進コンピュータは、
前記メモリ又は前記補助記憶装置に前記広告情報を発信条件と関連付けて記録する手段と、
前記発信条件に基づき前記メモリ又は前記補助記憶装置から、前記広告情報を呼び出し、所定の領域にある携帯端末にのみ発信する手段と、
一の携帯端末から返信されてきた何れの携帯端末からの情報であるのかを判別可能にする端末情報を少なくとも含む購入希望情報を受信し、これを前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録する手段と、
を含んで構成されてなることを特徴とする双方向通信売買システム。
【請求項7】
請求項6に記載の双方向通信売買システムにおいて、
前記販売促進コンピュータは、
一又は一のグループ毎に一台設置され、前記広告情報が、専用の発信装置を介して所定の領域にある携帯端末のみに発信されることを特徴とする双方向通信売買システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の双方向通信売買システムにおいて、
前記販売促進コンピュータは、
携帯端末の所持者と店舗側との間で、非対面の状態で、値段を含む条件交渉を行う手段と、
を含むことを特徴とする双方向通信売買システム。
【請求項9】
請求項6?8のいずれか一項に記載の双方向通信売買システムにおいて、
さらに、
携帯端末の所持者からのオファーが前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録された販売価格より低かった場合、所定の期間経過後に、オークション式で、前記オファーの価格で販売する手段を含むことを特徴とする双方向通信売買システム。
【請求項10】
請求項6?9のいずれか一項に記載の双方向通信売買システムにおいて、
さらに、
商店街の入口近傍にある前記一の携帯端末に対し、前記又は特定の販売促進コンピュータから前記店舗の扱う商品やサービスのリストを含む前記広告情報を送信する手段と、
前記一の携帯端末から返信された前記広告情報に対する少なくとも一のジャンルに絞った前記購入希望情報を受信する手段と、
前記一の携帯端末には、前記絞られた一のジャンルに属する商品又はサービスのみの前記広告情報が発信されるよう一又は複数の販売促進コンピュータを制御する手段と、
を備えていることを特徴とする双方向通信売買システム。」

を、補正後の
「【請求項1】
店舗が販売している商品やサービスに関する広告情報を一又は複数の販売促進コンピュータを介して複数の携帯端末に送信し、該携帯端末は該広告情報に対して該販売促進コンピュータへ返信可能である双方向通信売買方法であって、
前記販売促進コンピュータのメモリ又は補助記憶装置に前記広告情報を発信条件と関連付けて記録する工程と、
前記発信条件に基づき前記販売促進コンピュータの前記メモリ又は前記補助記憶装置から、前記広告情報を呼び出し、所定の領域にある携帯端末にのみ発信する工程と、
一の携帯端末から返信されてきた何れの携帯端末からの情報であるのかを判別可能にする端末情報を少なくとも含む購入希望情報を受信し、これを前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録する工程と、を含み、
前記双方向通信が、販売促進用コンピュータと所定の領域にある特定の携帯端末との間の通信を可能ならしめる専用の1又は複数の送受信設備を介して行われることを特徴とする双方向通信売買方法。
【請求項2】
請求項1に記載の双方向通信売買方法において、
前記販売促進コンピュータは、一又は一のグループ毎に一台設置され、前記発信工程が専用の発信装置を介して所定の領域にある携帯端末のみに発信されることを特徴とする双方向通信売買方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の双方向通信売買方法において、
携帯端末の所持者と店舗側との間で、非対面の状態で、値段を含む条件交渉を行う工程と、
を含むことを特徴とする双方向通信売買方法。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載の双方向通信売買方法において、さらに、
携帯端末の所持者からのオファーが前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録された販売価格より低かった場合、所定の期間経過後に、オークション式で、前記オファーの価格で販売する工程を含むことを特徴とする双方向通信売買方法。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載の双方向通信売買方法において、さらに、
商店街の入口近傍にある前記一の携帯端末に対し、前記又は特定の販売促進コンピュータから前記店舗の扱う商品やサービスのリストを含む前記広告情報を送信する工程と、
前記一の携帯端末から返信された前記広告情報に対する少なくとも一のジャンルに絞った前記購入希望情報を受信する工程と、
前記一の携帯端末には、前記絞られた一のジャンルに属する商品又はサービスのみの前記広告情報が発信されるよう一又は複数の販売促進コンピュータを制御する工程と、
を備えていることを特徴とする双方向通信売買方法。
【請求項6】
店舗が販売している商品やサービスに関する広告情報を記録するメモリや補助記憶装置を有する一又は複数の販売促進コンピュータと、該販売促進コンピュータと電気通信回線を介して相互に送受信可能な複数の携帯端末と、販売促進用コンピュータと所定の領域にある特定の携帯端末との間の通信を可能ならしめる専用の1又は複数の送受信設備とを備えてなる双方向通信売買システムであって、
前記販売促進コンピュータは、
前記メモリ又は前記補助記憶装置に前記広告情報を発信条件と関連付けて記録する手段と、
前記発信条件に基づき前記メモリ又は前記補助記憶装置から、前記広告情報を呼び出し、所定の領域にある携帯端末にのみ発信する手段と、
一の携帯端末から返信されてきた何れの携帯端末からの情報であるのかを判別可能にする端末情報を少なくとも含む購入希望情報を受信し、これを前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録する手段と、
を含んで構成されてなることを特徴とする双方向通信売買システム。
【請求項7】
請求項6に記載の双方向通信売買システムにおいて、
前記販売促進コンピュータは、
一又は一のグループ毎に一台設置され、前記広告情報が、専用の発信装置を介して所定の領域にある携帯端末のみに発信されることを特徴とする双方向通信売買システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の双方向通信売買システムにおいて、
前記販売促進コンピュータは、
携帯端末の所持者と店舗側との間で、非対面の状態で、値段を含む条件交渉を行う手段と、
を含むことを特徴とする双方向通信売買システム。
【請求項9】
請求項6?8のいずれか一項に記載の双方向通信売買システムにおいて、さらに、
携帯端末の所持者からのオファーが前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録された販売価格より低かった場合、所定の期間経過後に、オークション式で、前記オファーの価格で販売する手段を含むことを特徴とする双方向通信売買システム。
【請求項10】
請求項6?9のいずれか一項に記載の双方向通信売買システムにおいて、さらに、
商店街の入口近傍にある前記一の携帯端末に対し、前記又は特定の販売促進コンピュータから前記店舗の扱う商品やサービスのリストを含む前記広告情報を送信する手段と、
前記一の携帯端末から返信された前記広告情報に対する少なくとも一のジャンルに絞った前記購入希望情報を受信する手段と、
前記一の携帯端末には、前記絞られた一のジャンルに属する商品又はサービスのみの前記広告情報が発信されるよう一又は複数の販売促進コンピュータを制御する手段と、
を備えていることを特徴とする双方向通信売買システム。」
とするものである。

(2)補正の目的について
本件補正は前記のとおりのものであって、その補正の前後の内容を対比してみると、本件補正は以下の補正事項を含むものと認められる。
(ア)補正前の請求項1に「前記双方向通信が、販売促進用コンピュータと所定の領域にある特定の携帯端末との間の通信を可能ならしめる専用の1又は複数の送受信設備を介して行われる」を追加する補正事項。
(イ)補正前の請求項6に「販売促進用コンピュータと所定の領域にある特定の携帯端末との間の通信を可能ならしめる専用の1又は複数の送受信設備」を追加する補正事項。
上記各補正事項について補正の目的を以下に検討する。
補正事項(ア)は、「双方向通信」が「販売促進用コンピュータと所定の領域にある特定の携帯端末との間の通信を可能ならしめる専用の1又は複数の送受信設備を介して行われる」ことに限定し、補正事項(イ)は、「双方向通信売買システム」が「販売促進用コンピュータと所定の領域にある特定の携帯端末との間の通信を可能ならしめる専用の1又は複数の送受信設備」を備えることに限定したものである。
よって、補正事項(ア)、(イ)を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

(3)独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3-1)本願補正発明について
本件補正後の請求項1の記載を再掲すると、次のとおりである。
「【請求項1】
店舗が販売している商品やサービスに関する広告情報を一又は複数の販売促進コンピュータを介して複数の携帯端末に送信し、該携帯端末は該広告情報に対して該販売促進コンピュータへ返信可能である双方向通信売買方法であって、
前記販売促進コンピュータのメモリ又は補助記憶装置に前記広告情報を発信条件と関連付けて記録する工程と、
前記発信条件に基づき前記販売促進コンピュータの前記メモリ又は前記補助記憶装置から、前記広告情報を呼び出し、所定の領域にある携帯端末にのみ発信する工程と、
一の携帯端末から返信されてきた何れの携帯端末からの情報であるのかを判別可能にする端末情報を少なくとも含む購入希望情報を受信し、これを前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録する工程と、を含み、
前記双方向通信が、販売促進用コンピュータと所定の領域にある特定の携帯端末との間の通信を可能ならしめる専用の1又は複数の送受信設備を介して行われることを特徴とする双方向通信売買方法。」

(3-2)引用例について
原査定の拒絶理由で引用された特開2003-196534号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、サービス情報の配信システムと配信方法に係わり、特に、商店街の各種のサービス情報等の地域に密着した情報を多数のユーザに配信するのに好適なサービス情報の配信システムと配信方法に関する。」(第3欄23行目?28行目)
(b)「【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、近距離無線通信ネットワークを使って、店舗内又は店舗付近にいる限定的な不特定多数のユーザに対して各種サービス情報を配信する方法を提供するものである。
・・・・・
【0012】ユーザは、上記サービス情報を見て、そのサービスが、予約や整理券が必要な場合、ユーザ端末10から予約や整理券のリクエストをホスト端末20に対して送信し、予約や整理券のリクエストを受信したホスト端末20は、受付処理を行って、その処理結果をユーザ端末10に送信する。」(第6欄7行目?23行目)
(c)「【0014】図1を参照すると、本発明のサービス情報配信システムの第1の具体例は、ユーザ端末10と、ホスト端末20と、双方を接続する近距離無線通信ネットワーク100とで構成される。
【0015】ユーザ端末10は、近距離無線通信機能を備えた携帯型情報端末装置である。このユーザ端末10は、ホスト端末20から受信した店舗情報やサービス情報などを画面に表示する機能、店舗情報及びサービス情報を識別するためのIDを記憶する不揮発性メモリを備えている。
【0016】店舗情報としては、店舗IDや店舗名、所在地や電話番号等店舗に関する情報であり、サービス情報は、情報IDと共にサービスの概要やタイムスケジュール、価格情報、写真などのサービスに関する情報である。
【0017】ユーザ端末10は、不揮発性メモリに記憶している店舗ID及び情報IDと、受信した店舗ID、情報IDとを照合することで、同一の情報を受信した場合に、その情報を廃棄する。又、不必要な店舗のID情報をユーザ端末10に登録することで、当該店舗からの情報を全て破棄するフィルタ機能をも有する。ユーザ端末10は、更に、該サービスが、予約や整理券発行を必要とする場合に、ユーザの操作により、そのリクエスト情報をホスト端末20に送信する機能を有する。
【0018】ホスト端末20は、サービス情報の提供者により使用され、近距離無線通信通信機能を備えたワークステーション・サーバ等の情報処理装置により構成される。ホスト端末20は、サービス情報の提供者が、予め登録しておいた店舗情報やサービス情報を、一定時間間隔で常時繰り返して、複数のユーザ端末10に対して、ブロードキャスト送信する機能を備えている。また、ユーザ端末10から受信した予約や整理券発行のリクエスト処理を行うと共に、その結果をユーザ端末10に送信する機能を有する。」(第6欄30行目?第7欄13行目)
(d)「【0020】図2を参照すると、ホスト端末20は、近距離無線通信ネットワーク100を介して、店舗情報やサービス情報を複数のユーザ端末10にブロードキャスト送信する(ステップA1)。送信対象のユーザ端末10は、近距離無線通信ネットワーク100がカバーするエリア内に存在する全てのユーザ端末であって、不特定多数であり、送信は、一定の間隔で繰り返し行われている。店舗情報は、店舗を識別するための店舗IDと共に、店舗名、所在地、連絡先などの店舗に係わる情報が含まれ、また、サービス情報には、サービスを識別するためのサービス情報IDと共に、サービスの名称、サービスの実施場所、連絡先、タイムスケジュール、特典、予約の必要性・整理券の要/不要などサービスに関する情報が含まれている。
・・・・・
ホスト端末20から受信した情報に基づき、図3に示すような店舗情報を画面に表示する(ステップA7)。ユーザが、ユーザ端末10の画面に表示された店舗情報一覧からサービス情報を見たい店舗を選択すると(ステップA8)、図4に示すような店舗のサービス情報の一覧が画面に表示される(ステップA9)。更に、ユーザが、画面に表示されているサービス情報の一覧から、詳細な情報を見たいサービスを選択すると(ステップA10)、図5に示すような、詳細なサービス情報が画面に表示される(ステップA11)。
【0022】選択したサービスが、予約や整理券が必要なサービスなら(ステップA12)、ユーザ端末10から、ホスト端末20に対して、予約又は整理券発行のリクエストを送信する(ステップA13)。
【0023】ホスト端末20は、ユーザ端末10から予約又は整理券発行のリクエストを受信すると(ステップA14)、その処理を行い(ステップA15)、予約の可否や発行する整理券番号等を含む処理結果をユーザ端末10に送信する(ステップA16)。ユーザ端末10には、ホスト端末20から受信したリクエストの処理結果が、図6に示すように、表示される(ステップA17)。
【0024】又、予約や整理券が必要ないサービスであれば、詳細なサービス情報を閲覧の後(ステップA12)、サービスを受けることができるし(ステップA18)、予約や整理券が必要なサービスなら、リクエストの処理結果に従ってサービスを受ける(ステップA18)。
【0025】なお、ユーザ端末10としては、コンピュータ、PDAのような携帯型端末、又は、携帯電話機等が用いられる。」(第7欄16行目?第8欄23行目)

上記(c)における「ホスト端末20は、サービス情報の提供者が、予め登録しておいた店舗情報やサービス情報を、一定時間間隔で常時繰り返して、複数のユーザ端末10に対して、ブロードキャスト送信する機能を備えている。」との記載から、技術常識に照らしてみれば、ホスト端末は、ユーザ端末に送信するサービス情報を記憶する記憶手段を有し、ホスト端末の記憶手段にサービス情報を記録する工程、記憶手段からをサービス情報を読み出す工程を有することは明らかである。
また、上記(c)における「ホスト端末20は、サービス情報の提供者により使用され、近距離無線通信通信機能を備えたワークステーション・サーバ等の情報処理装置により構成される。ホスト端末20は、サービス情報の提供者が、予め登録しておいた店舗情報やサービス情報を、一定時間間隔で常時繰り返して、複数のユーザ端末10に対して、ブロードキャスト送信する機能を備えている。また、ユーザ端末10から受信した予約や整理券発行のリクエスト処理を行うと共に、その結果をユーザ端末10に送信する機能を有する。」との記載から、ホスト端末とユーザ端末との間の通信を近距離無線通信機能を介して行われることは明らかである。

これらの記載事項及び図面の内容を総合すると、引用例には、
「店舗が提供する各種のサービス情報をホスト端末を介して複数のユーザ端末に配信し、該ユーザ端末は該サービス情報に対して該ホスト端末へ送信可能であるサービス情報の配信方法であって、
ホスト端末の記憶手段にサービス情報を記録する工程と、
ホスト端末の記憶手段から、サービス情報を読み出し、一定時間間隔で繰り返して、近距離無線通信ネットワークがカバーするエリア内に存在するユーザ端末に対して送信する工程と、
ユーザ端末からホスト端末に対して、予約のリクエストを送信し、ホスト端末は受信したリクエストの処理を行い、処理結果をユーザ端末に送信する工程と、を含み、
ホスト端末と近距離無線通信ネットワークがカバーするエリア内に存在するユーザ端末との間の通信を近距離無線通信機能を介して行われることを特徴とするサービス情報の配信方法。」
との発明(以下「引用例発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3-3)対比
本願補正発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「サービス情報」は提供する各種サービスに関しユーザに対して広告宣伝する情報であるから、引用例発明の「店舗が提供する各種のサービス情報」は本願補正発明の「店舗が販売している商品やサービスに関する広告情報」に相当し、引用例発明の「ホスト端末」は本願補正発明の「販売促進コンピュータ」に相当し、引用例発明の「ユーザ端末」は携帯電話機等であるから本願補正発明の「携帯端末」に相当し、また、引用例発明の「サービス情報の配信方法」はホスト端末とユーザ端末との間で双方向通信を行い価格情報を含むサービス情報に基づいて取引を行うことから本願補正発明の「双方向通信売買方法」に相当し、したがって、引用例発明の「商店街の各種のサービス情報をホスト端末を介して複数のユーザ端末に配信し、該ユーザ端末は該サービス情報に対して該ホスト端末へ送信可能であるサービス情報の配信方法であって」と本願補正発明の「店舗が販売している商品やサービスに関する広告情報を一又は複数の販売促進コンピュータを介して複数の携帯端末に送信し、該携帯端末は該広告情報に対して該販売促進コンピュータへ返信可能である双方向通信売買方法であって」とは、「店舗が販売している商品やサービスに関する広告情報を販売促進コンピュータを介して複数の携帯端末に送信し、該携帯端末は該広告情報に対して該販売促進コンピュータへ返信可能である双方向通信売買方法であって」である点で共通する。
また、引用例発明の「記憶手段」と本願補正発明の「メモリ又は補助記憶装置」とは「記憶手段」である点で共通し、引用例発明の「ホスト端末の記憶手段にサービス情報を記録する工程」と本願補正発明の「前記販売促進コンピュータのメモリ又は補助記憶装置に前記広告情報を発信条件と関連付けて記録する工程」とは、「前記販売促進コンピュータの記憶手段に前記広告情報を記録する工程」である点で共通する。
また、引用例発明の「近距離無線通信ネットワークがカバーするエリア」は限定的なユーザに対して配信する所定の領域であるから本願補正発明の「所定の領域」に相当し、引用例発明の「ホスト端末の記憶手段から、サービス情報を読み出し、一定時間間隔で繰り返して、近距離無線通信ネットワークがカバーするエリア内に存在するユーザ端末に対して送信する工程」と本願補正発明の「前記発信条件に基づき前記販売促進コンピュータの前記メモリ又は前記補助記憶装置から、前記広告情報を呼び出し、所定の領域にある携帯端末にのみ発信する工程」とは、「前記販売促進コンピュータの前記記憶手段から、前記広告情報を呼び出し、所定の領域にある携帯端末にのみ発信する工程」である点で共通する。
また、引用例発明の「予約のリクエスト」と本願補正発明の「購入希望情報」とは「注文を要求する情報」である点で共通し、引用例発明の「ユーザ端末からホスト端末に対して、予約のリクエストを送信し、ホスト端末は受信したリクエストの処理を行い、処理結果をユーザ端末に送信する工程」と本願補正発明の「一の携帯端末から返信されてきた何れの携帯端末からの情報であるのかを判別可能にする端末情報を少なくとも含む購入希望情報を受信し、これを前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録する工程」とは、「一の携帯端末から返信されてきた注文を要求する情報を受信する工程」である点で共通する。
また、引用例発明の「近距離無線通信機能」は本願補正発明の「送受信設備」に相当し、引用例発明のホスト端末とユーザ端末は双方向に通信を行うことから、引用例発明の「ホスト端末と近距離無線通信ネットワークがカバーするエリア内に存在するユーザ端末との間の通信を近距離無線通信機能を介して行われる」と本願補正発明の「前記双方向通信が、販売促進用コンピュータと所定の領域にある特定の携帯端末との間の通信を可能ならしめる専用の1又は複数の送受信設備を介して行われる」とは、「前記双方向通信が、販売促進用コンピュータと所定の領域にある携帯端末との間の通信を可能ならしめる送受信設備を介して行われる」点で共通する。

そうすると、両者は、
「店舗が販売している商品やサービスに関する広告情報を販売促進コンピュータを介して複数の携帯端末に送信し、該携帯端末は該広告情報に対して該販売促進コンピュータへ返信可能である双方向通信売買方法であって、
前記販売促進コンピュータの記憶手段に前記広告情報を記録する工程と、
前記販売促進コンピュータの前記記憶手段から、前記広告情報を呼び出し、所定の領域にある携帯端末にのみ発信する工程と、
一の携帯端末から返信されてきた注文を要求する情報を受信する工程と、を含み、
前記双方向通信が、販売促進用コンピュータと所定の領域にある携帯端末との間の通信を可能ならしめる送受信設備を介して行われることを特徴とする双方向通信売買方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明においては、販売促進コンピュータが「一又は複数」であり、販売促進コンピュータの記憶手段が「メモリ又は補助記憶装置」であるのに対し、引用例発明においては、販売促進コンピュータが「一又は複数」であるのか言及されてなく、販売促進コンピュータの記憶手段が「メモリ又は補助記憶装置」であるのか言及されてない点。
[相違点2]
本願補正発明においては、記録する工程が「広告情報を発信条件と関連付けて」記録し、発信する工程が「発信条件に基づき」発信するのに対し、引用例発明においては、記録する工程が「広告情報」を記録し、発信する工程が一定時間間隔で繰り返して発信する点。
[相違点3]
本願補正発明においては、注文を要求する情報が「何れの携帯端末からの情報であるのかを判別可能にする端末情報を少なくとも含む購入希望情報」であり、注文を要求する情報を「前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録する」のに対し、引用例発明においては、注文を要求する情報が「予約のリクエスト」であり、注文を要求する情報を受信するものの「前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録する」のかについて言及されてない点。
[相違点4]
本願補正発明においては、販売促進用コンピュータとの通信が「所定の領域にある特定の携帯端末」であり、送受信設備が「専用の1又は複数」であるのに対し、引用例発明においては、販売促進用コンピュータとの通信が「所定の領域にある携帯端末」であり、送受信設備が「専用の1又は複数」であるのか言及されてない点。

(3-4)判断
[相違点1について]
引用例発明において、サービス情報を送信するホスト端末を店舗の規模等に応じて一又は複数とすることは単なる設計事項に過ぎない。
また、記憶手段としてメモリや補助記憶装置を用いて記憶管理することは周知の事項である。
そうすると、引用例発明において、販売促進コンピュータを一又は複数とし、販売促進コンピュータの記憶手段をメモリ又は補助記憶装置とすることは当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
[相違点2について]
引用例発明は、ホスト端末の記憶手段から、サービス情報を読み出し、一定時間間隔で繰り返して、近距離無線通信ネットワークがカバーするエリア内に存在するユーザ端末に対して送信するものであるが、広告宣伝するタイミングを時間で管理することは、従来一般に行われている周知の事項であり、発信する時間や発信するエリア等の発信条件と広告情報を関連付けて記録することに技術的に格別の困難性があるとは認められない。
そうすると、引用例発明において、記録する工程が広告情報を発信条件と関連付けて記録し、発信する工程が発信条件に基づき発信するように構成することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
[相違点3について]
上記(c)における「サービス情報は、情報IDと共にサービスの概要やタイムスケジュール、価格情報、写真などのサービスに関する情報である。」との記載から、予約のリクエストの対象であるサービスは、価格情報を含むものであるから、引用例発明の予約のリクエストを購入予約のリクエストとすることは当業者が適宜なし得たことである。
また、引用例発明は、ユーザ端末から予約のリクエストを受信すると、ホスト端末はリクエストの処理を行い、処理結果をユーザ端末に送信することから、ホスト端末はユーザ端末を特定する情報を取得することは明らかであり、また、ホスト端末が受信した予約のリクエストを予約を受け付けた情報としてメモリ又は補助記憶装置のような記憶手段に記憶しておくは当業者が適宜なし得たことである。
そうすると、ユーザ端末からの予約購入のリクエストにユーザ端末を特定する情報を含めることに技術的に格別の困難性があるとは認められないから、引用例発明において、注文を要求する情報を、何れの携帯端末からの情報であるのかを判別可能にする端末情報を少なくとも含む購入希望情報とし、受信した購入希望情報をメモリ又は補助記憶装置に記録することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点3に係る本願補正発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
[相違点4について]
広告情報の配信コンピュータが所定の領域内の特定の携帯端末と通信を行うことは周知(例えば、特開2002-77464号公報、特開2001-359166号公報、等を参照)である。
また、引用例発明において、近距離無線通信機能をホスト端末と分離して専用の1又は複数とすることは単なる設計事項に過ぎない。
そうすると、引用例発明において、販売促進用コンピュータとの通信を所定の領域にある特定の携帯端末とし、送受信設備を専用の1又は複数とすることは当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点4に係る本願補正発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例発明及び周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願補正発明は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件補正は、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものとは認められないので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)平成19年3月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は、出願時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「【請求項1】
店舗が販売している商品やサービスに関する広告情報を一又は複数の販売促進コンピュータを介して複数の携帯端末に送信し、該携帯端末は該広告情報に対して該販売促進コンピュータへ返信可能である双方向通信売買方法であって、
前記販売促進コンピュータのメモリ又は補助記憶装置に前記広告情報を発信条件と関連
付けて記録する工程と、
前記発信条件に基づき前記販売促進コンピュータの前記メモリ又は前記補助記憶装置から、前記広告情報を呼び出し、所定の領域にある携帯端末にのみ発信する工程と、
一の携帯端末から返信されてきた何れの携帯端末からの情報であるのかを判別可能にする端末情報を少なくとも含む購入希望情報を受信し、これを前記メモリ又は前記補助記憶装置に記録する工程と、
を含んで構成されてなることを特徴とする双方向通信売買方法。」

(2)引用例について
原査定の拒絶理由で引用された引用例に記載された事項は、前記「2.(3-2)」に記載したとおりである。

(3)対比
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、「双方向通信」について「販売促進用コンピュータと所定の領域にある特定の携帯端末との間の通信を可能ならしめる専用の1又は複数の送受信設備を介して行われること」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明と引用例発明とは、
「店舗が販売している商品やサービスに関する広告情報を販売促進コンピュータを介して複数の携帯端末に送信し、該携帯端末は該広告情報に対して該販売促進コンピュータへ返信可能である双方向通信売買方法であって、
前記販売促進コンピュータの記憶手段に前記広告情報を記録する工程と、
前記販売促進コンピュータの前記記憶手段から、前記広告情報を呼び出し、所定の領域にある携帯端末にのみ発信する工程と、
一の携帯端末から返信されてきた注文を要求する情報を受信し、これを記憶手段に記録する工程と、
を含んで構成されてなることを特徴とする双方向通信売買方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点5]
本願発明においては、販売促進コンピュータが「一又は複数」であり、販売促進コンピュータの記憶手段が「メモリ又は補助記憶装置」であるのに対し、引用例発明においては、販売促進コンピュータが「一又は複数」であるのか言及されてなく、販売促進コンピュータの記憶手段が「メモリ又は補助記憶装置」であるのか言及されてない点。
[相違点6]
本願発明においては、記録する工程が「広告情報を発信条件と関連付けて」記録し、発信する工程が「発信条件に基づき」発信するのに対し、引用例発明においては、記録する工程が「広告情報」を記録し、発信する工程が一定時間間隔で繰り返して発信する点。
[相違点7]
本願発明においては、注文を要求する情報が「何れの携帯端末からの情報であるのかを判別可能にする端末情報を少なくとも含む購入希望情報」であるのに対し、引用例発明においては、注文を要求する情報が「予約のリクエスト」である点。

(4)判断
[相違点5について]
[相違点1について]と同様の理由により当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点5に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
[相違点6について]
[相違点2について]と同様の理由により当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点6に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
[相違点7について]
[相違点3について]と同様の理由により当業者が容易になし得たことである。
したがって、相違点7に係る本願発明の構成は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例発明及び周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願発明は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
したがって、前記「3.」で述べたとおり、本願発明は、引用例発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-04 
結審通知日 2009-09-08 
審決日 2009-09-24 
出願番号 特願2003-418577(P2003-418577)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮久保 博幸金子 幸一  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 小山 満
山本 穂積
発明の名称 双方向通信売買方法及び双方向通信売買システム  
代理人 山崎 行造  
代理人 白銀 博  

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