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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05B
管理番号 1206523
審判番号 不服2007-34357  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-20 
確定日 2009-11-05 
事件の表示 特願2003-394652「超音波霧化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月16日出願公開、特開2005-152779〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年11月25日の出願であって、平成19年8月9日付けで拒絶理由が通知され、同年10月15日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月20日に拒絶査定不服審判が請求されるととともに、平成20年1月21日付けで手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、同年5月18日付けで当審より書面による審尋がなされ、それに対して、同年7月21日に回答書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1ないし6に係る発明は、上記平成20年1月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「超音波を発生する超音波発生素子を備え超音波発生手段から発生する超音波を利用して対象液体を霧化する超音波霧化装置であって、超音波発生手段が、基板と、基板の厚み方向の一表面側に形成された多孔質半導体層からなる断熱層と、断熱層上に形成され断熱層よりも熱伝導率および導電率それぞれが大きな発熱体とを備えて発熱体への交流電流の通電に伴う発熱体と媒体との熱交換により超音波を発生する超音波発生素子であり、超音波発生素子の発熱体へ印加する交流電圧の周波数を調整することにより超音波発生素子から発生させる超音波の周波数を調整して液滴の粒径をマイクロメータサイズからナノメータサイズまで制御可能とする周波数調整手段を備え、前記対象液体が水であり、前記超音波発生手段から発生させる超音波の周波数が10MHz以上であることを特徴とする超音波霧化装置。」

なお、上記平成20年1月21日付けの手続補正書による手続補正は、当該補正前の請求項1又は2を引用する請求項7を新たな請求項1及び2とし、当該補正前の請求項1又は2を引用する請求項3又は4をさらに引用する請求項7を新たな請求項3及び4とし、当該補正前の請求項3又は4を引用する請求項5をさらに引用する請求項7を新たな請求項5とし、当該補正前の請求項5を引用する請求項6をさらに引用する請求項7を新たな請求項6とし、当該補正前の請求項7を削除したものであるから、請求項の削除を目的とするものに該当する。

2.原査定の拒絶の理由に引用された引用例
2-1.特公昭49-24928号公報(以下、「引用例1」という。)
(1)引用例1の記載事項
引用例1には、次の事項が特に第3図とともに記載されている。
なお、下線は、発明の理解の一助として、当審において付したものである。
(ア)「本発明は超音波を用いて液体を微粒化せしめ、煙霧質(エアゾル)を作る方法及び装置に関するものであり液体燃料用の各種気化器、燃焼器、液体薬剤の煙霧質を作る製薬、医薬機器、その他理科学実験装置等に用いることができる。従来上記の如き目的に対して種々の形式の微粒化装置が用いられている。」(第1ページ1欄20ないし26行)
(イ)「例えば第3図は医療用に用いられている公知例であり、チタン酸バリウムの凹面振動子41を、該振動子の音響的焦点位置43が噴霧される液体42の自由表面近くに依存するように設けてある。超音波回路により振動子41を振動せしめると液体42に液中超音波が発生し、これが液体42の自由表面近くで集束されて自由表面に強い振動を与え、微粒化して煙霧質(エアゾル)44を形成する。別に送風機45により煙霧質44の位置に気流をおくりこみ、煙霧質44を出口46に導いて外部へ放出する。
斯かる装置において振動子を200万乃至300万ヘルツの周波数で振動せしめると、全煙霧質の70%以上が0.5乃至5ミクロンの液滴となりスプレー等では得られない小液滴が得られる。」(第1ページ1欄27行ないし同ページ2欄4行)

(2)引用例1に記載された発明
上記記載事項(1)から、引用例1には、
「超音波回路により振動せしめられる振動子41を備え振動子41から発生する超音波を利用して医療用に用いられる液体42を微粒化せしめ、煙霧質(エアゾル)44を作る微粒化装置であって、振動子41が、チタン酸バリウムの凹面振動子41であり、該振動子41を200万乃至300万ヘルツの周波数で駆動せしめると、全煙霧質の70%以上が0.5乃至5ミクロンの液滴となる微粒化装置。」
の発明(以下、「引用例1に記載された発明」という。)が記載されている。

2-2.特開平11-300274号公報(以下、「引用例2」という。)(1)引用例2の記載事項
引用例2には、次の事項が図面とともに記載されている。
なお、下線は、発明の理解の一助として、当審において付したものである。
(カ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気などの媒体を加熱して圧力波を発生させる圧力波発生装置に関するものであり、特に超音波発生装置として有用なものである。」(段落【0001】)
(キ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、・・(略)・・、広い周波数範囲で安定に超音波などの圧力波を発生することができ、・・(略)・・圧力波発生装置を提供するものである。」(段落【0004】)
(ク)「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、電気的に駆動される発熱体薄膜を熱絶縁層上に被着された圧力波発生手段を用いることで課題の解決を図るものである。熱的に超音波を発生するには、電気的に駆動される発熱体を用いて表面の空気層に超音波周期の温度変化を与え、圧力波を生じさせればよい。しかし通常は、発熱体自体と発熱体を取り付ける基板の熱容量、および基板の熱伝導率のために発熱体表面の温度変化を大きくすることができず、超音波発生効率はかなり低いものとなる。そのため本発明は、発熱体を薄膜状に形成して表面積を大きくするとともに、発熱体と基板との間に熱伝導率のきわめて小さい多孔質層や高分子層などの熱絶縁層を設けて発熱体を基板から熱的に絶縁することにより、発熱体表面の温度変化が大きくなるようにして、超音波発生効率を向上させている。」(段落【0005】)
(ケ)「【0009】図1は、本発明による圧力波発生装置の基本的な構造を例示的方法で示す図であり、図1の(a)は装置の断面図、(b)は装置の上面図である。図1の(a),(b)において、1はシリコン(Si)などの基板、2は基板1上に形成されたポーラスシリコン(Po-Si)や高分子材料膜などの熱絶縁層、3は熱絶縁層2上に被着されたアルミニウム(Al)などの発熱体薄膜、4,5は発熱体薄膜3の各端部に接続された信号端子、6は駆動用の超音波周波数の信号を発生する信号源である。」(段落【0009】)
(コ)「【0041】本発明の圧力波発生装置は、・・(略)・・超音波の発生周波数の範囲を広くとることが可能である。」(段落【0041】)

(2)上記(1)からわかること
(サ)上記(1)(カ)ないし(コ)から、引用例2には「超音波発生装置」が記載されていることがわかる。
(シ)上記(1)(カ)ないし(ケ)から、「超音波発生装置」は「シリコン(Si)などの基板1と、基板1上に形成されたポーラスシリコン(Po-Si)などの熱絶縁層2と、熱絶縁層2上に被着されたアルミニウム(Al)などの発熱体薄膜3とを備えて、超音波周波数の信号により電気的に駆動される発熱体薄膜3を用いて表面の空気層(媒体)に超音波周期の温度変化を与え、圧力波を生じさせる」手段であり、当該手段は「超音波発生素子」といい得るものであることがわかる。

(3)引用例2に記載された発明
上記記載事項(1)及び(2)から、引用例2には、
「超音波を発生する超音波発生素子を備えた超音波発生装置が、シリコン(Si)などの基板1と、基板1上に形成されたポーラスシリコン(Po-Si)などの熱絶縁層2と、熱絶縁層2上に被着されたアルミニウム(Al)などの発熱体薄膜3とを備えて、超音波周波数の信号により電気的に駆動される発熱体薄膜3を用いて表面の空気層(媒体)に超音波周期の温度変化を与え、圧力波を生じさせる超音波発生素子である超音波発生装置。」
の発明(以下、「引用例2に記載された発明」という)が記載されている。

3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1に記載された発明における「超音波回路により振動せしめられる振動子41」は、その技術的意義からみて、本願発明における「超音波を発生する超音波発生素子、超音波発生手段」に相当し、以下同様に、「医療用に用いられる液体42」は「対象液体」に、「微粒化せしめ、煙霧質(エアゾル)44を作る」は「霧化する」に、「微粒化装置」は「超音波霧化装置」に、それぞれ相当する。
してみると、本願発明と引用例1に記載された発明は、
「超音波を発生する超音波発生素子を備え超音波発生手段から発生する超音波を利用して対象液体を霧化する超音波霧化装置。」
の点で一致し、次の(1)及び(2)の点で相違している。
(1)本願発明においては、超音波発生手段が、基板と、基板の厚み方向の一表面側に形成された多孔質半導体層からなる断熱層と、断熱層上に形成され断熱層よりも熱伝導率および導電率それぞれが大きな発熱体とを備えて発熱体への交流電流の通電に伴う発熱体と媒体との熱交換により超音波を発生する超音波発生素子であるのに対し、引用例1に記載された発明においては、超音波発生手段が、チタン酸バリウムの凹面振動子41(超音波発生素子)である、すなわち、電極間に超音波電気信号を印加することにより機械的振動を発生させる圧電素子である点(以下、「相違点1」という。)。
(2)本願発明においては、超音波発生素子の発熱体へ印加する交流電圧の周波数を調整することにより超音波発生素子から発生させる超音波の周波数を調整して液滴の粒径をマイクロメータサイズからナノメータサイズまで制御可能とする周波数調整手段を備え、対象液体が水であり、超音波発生手段から発生させる超音波の周波数が10MHz以上であるのに対し、引用例1に記載された発明においては、超音波発生素子(振動子41)を200万乃至300万ヘルツ(2MHz乃至3MHz)の周波数で駆動せしめるが、周波数調整手段を備えるものでなく、対象液体は医療用に用いられる液体であって水ではなく、超音波発生手段から発生させる超音波の周波数が10MHz以上でない点(以下、「相違点2」という。)。

4.当審の判断
上記相違点1及び2について以下に検討する。
(1)相違点1について
本願発明と引用例2に記載された発明を対比すると、引用例2に記載された発明における「超音波発生装置」は、その技術的意義からみて、本願発明における「超音波発生手段」に相当し、以下同様に、「シリコン(Si)などの基板1」は「基板」に、「基板1上に形成された」は「基板の厚み方向の一表面側に形成された」に、「ポーラスシリコン(Po-Si)などの」は「多孔質半導体層からなる」に、「熱絶縁層2」は「断熱層」に、「熱絶縁層2上に被着された」は「断熱層上に形成され」に、「アルミニウム(Al)などの」は「断熱層よりも熱伝導率および導電率それぞれが大きな」に、「発熱体薄膜3」は「発熱体」に、「超音波周波数の信号により電気的に駆動される発熱体薄膜3を用いて」は「発熱体への交流電流の通電に伴う」に、「表面の空気層(媒体)に超音波周期の温度変化を与え、圧力波を生じさせる」は「発熱体と媒体との熱交換により超音波を発生する」に、それぞれ相当する。
そうすると、引用例2に記載された発明は、本願発明における「超音波発生装置」に相当する「超音波発生手段」が、「基板と、基板の厚み方向の一表面側に形成された多孔質半導体層からなる断熱層と、断熱層上に形成され断熱層よりも熱伝導率および導電率それぞれが大きな発熱体とを備えて発熱体への交流電流の通電に伴う発熱体と媒体との熱交換により超音波を発生する超音波発生素子である」事項を具備しているといえる。
そして、引用例1に記載された発明において、「超音波発生素子」としての「チタン酸バリウムの凹面振動子41」に代えて、上記引用例2に記載された発明における「超音波発生素子」を適用することは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。
(2)相違点2について
超音波霧化装置において、「超音波発生素子へ印加する交流電圧の周波数を調整することにより超音波発生素子から発生させる超音波の周波数を調整して液滴の粒径を制御可能とする周波数調整手段を備える」ことは、周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、原査定の備考において例示した特開2002-95728号公報の段落【0054】,【図13】の記載、本願明細書において従来技術を示すものとして引用された特許文献1である特開2003-79714号公報(平成15年3月18日公開)の段落【0028】,【図3】の記載、参照。)である。
また、超音波霧化装置において、超音波の周波数が高いほど液滴の粒径を小さくできるということは、技術常識(必要なら、原査定の備考において例示した特開昭59-125311号公報の第1ページ左下欄18行ないし右下欄4行の記載及び特開平7-232114号公報の第2ページ1欄27ないし29行の記載、参照。)である。
そして、引用例2には、上記記載事項(キ)及び(コ)によると、引用例2に記載された発明の「超音波発生素子」は、超音波の発生周波数の範囲を広くとることが可能である旨記載されているから、引用例1に記載された発明において、引用例2に記載された発明の「超音波発生素子」を適用するに際し、上記周知技術や技術常識を勘案し、超音波発生素子の発熱体へ印加する交流電圧の周波数を調整することにより超音波発生素子から発生させる超音波の周波数を調整して液滴の粒径をマイクロメータサイズからナノメータサイズまで制御可能とする周波数調整手段を備えるように構成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
さらに、対象液体が水であり、超音波発生手段から発生させる超音波の周波数が10MHz以上である点について検討すると、超音波霧化装置において、対象液体を水とすることは、加湿器において普通におこなわれていることであり、超音波発生手段から発生させる超音波の周波数を10MHz以上とすることは、表面弾性波を用いた超音波霧化装置ではあるが、超音波発生手段を10MHz以上で駆動することが格別特異なことでないこと(例えば、特開平7-232114号公報の第2ページ1欄33ないし36行の「本発明は、係る状況に鑑みて、10MHzから数100MHz程度の周波数で動作する、小型の弾性表面波を用いた超音波霧化装置を提供することを目的とする。」及び特開平11-114467号公報の第2ページ1欄7ないし10行の「第二の液滴吐出装置は表面弾性を発生及び伝播する基板上に櫛形電極(IDT)が形成されており、電極ピッチ80μm、電極線幅30μmとして、約50MHzで駆動し、」、参照。)からみて、当業者が普通に選択する事項にすぎない。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-02 
結審通知日 2009-09-08 
審決日 2009-09-24 
出願番号 特願2003-394652(P2003-394652)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川上 益喜神谷 径  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 加藤 友也
森藤 淳志
発明の名称 超音波霧化装置  
代理人 西川 惠清  
代理人 森 厚夫  
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