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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A41B
管理番号 1206529
審判番号 不服2008-7384  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-26 
確定日 2009-11-05 
事件の表示 特願2002- 26017「テープファスナを備えた使い捨て着用物品」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月 2日出願公開,特開2003-245307〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成14年2月1日の出願であって,平成20年2月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年3月26日付けで拒絶査定不服審判請求がなされるとともに,同年4月8日付けで明細書を対象とする補正がなされたものである。

第2.平成20年4月8日付けの手続補正についての却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成20年4月8日付けの手続補正(以下,「本件補正」という)を却下する。

〔理由〕
1.本件補正
本件補正は,平成20年1月30日付けで補正された明細書をさらに補正するものであり,特許請求の範囲については次のように補正するものである。

〈本件補正前の特許請求の範囲〉
「【請求項1】使い捨て着用物品がその物品着用者の肌と向かい合う第1表面と着衣と向かい合う第2表面とを有し,前記第2表面には粘着性のテープファスナが取り付けられており,前記テープファスナを形成しているテープは,長さ方向で対向する自由端部と固定端部とを有し,前記固定端部が前記第2表面に剥離不能に接合するとともに,前記自由端部を摘持して前記固定端部から前記自由端部へ向かう方向へ伸展し得るように畳まれ,伸展したときに前記第2表面と向かい合う前記テープの内面の一部分に粘着剤が塗布されているテープファスナを備えた使い捨て着用物品において,前記テープファスナを形成しているテープは,畳まれて上方に位置し,長さ方向に前記自由端部とこの自由端部に対向する第1端部とを有する第1テープと,前記第1テープの下方に位置して前記第2表面と向かい合い,前記固定端部とこの固定端部に対向するとともに前記第1テープに対して前記第1端部でつながる第2端部とを有する第2テープとからなり,前記第1テープは前記内面に前記粘着剤が塗布されて前記下方に位置する前記第2テープに剥離可能に接合するとともに,前記第1端部には前記自由端部から前記第1端部へ向かう方向へ前記第2テープの前記第2端部を越えて延びる延出部が含まれていて前記延出部が前記第2表面に剥離可能に接合しており,前記第2テープにおいて前記第1テープの内面が剥離可能に接合している部位は,その部位と向かい合う前記第2表面に接合していない域を有し,前記第2表面に接合していない域は前記第2表面から離れて上方へ移動可能な状態にあることを特徴とする前記使い捨て着用物品。
【請求項2】前記第2テープと前記第2表面との間には,ほぼ全体が前記第2表面に剥離不能に接合している第3テープが介在し,前記固定端部が前記第3テープを介して前記第2表面に接合した状態にある請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】前記第1テープに含まれる延出部が前記第3テープを介して前記第2表面に剥離可能に接合している請求項1または2記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】前記使い捨て着用物品が使い捨ておむつであって,前記おむつが前胴周り域と,後胴周り域と,これら両胴周り域の間に位置する股下域とを有し,前記股下域には吸収性コアを備え,前記両胴周り域が互いの側縁部において連結されていて胴周り開口と一対の脚周り開口とが形成されているパンツ型のものであり,前記両胴周り域いずれかの前記側縁部における前記第2表面に前記第2テープの固定端部がその第2テープの長さ方向を前記おむつの胴周り方向に一致させた状態で接合している請求項1?3のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】前記使い捨ておむつが前記コアの縁部から外方へ延出するシート材料によって形成されたフラップを有し,前記第2テープ固定端部が前記フラップにおける前記第2表面に接合している請求項4記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】前記第2表面を形成しているシートのうちで畳まれた前記テープファスナの直下に位置しているシート部分および前記シート部分に前記シート部分とは別体のシートが重なり互いに接合することにより形成されている積層状態のシート部分いずれかの曲げ剛さが(0.03?0.7)×10-4N・m2/mである請求項1?5のいずれかに記載の使い捨て着用物品。」

〈本件補正後の特許請求の範囲〉
「【請求項1】使い捨て着用物品がその物品着用者の肌と向かい合う第1表面と着衣と向かい合う第2表面とを有し,前記第2表面には粘着性のテープファスナが取り付けられており,前記テープファスナを形成しているテープは,長さ方向で対向する自由端部と固定端部とを有し,前記固定端部が前記第2表面に剥離不能に接合するとともに,前記自由端部を摘持して前記固定端部から前記自由端部へ向かう方向へ伸展し得るように畳まれ,伸展したときに前記第2表面と向かい合う前記テープの内面の一部分に粘着剤が塗布されているテープファスナを備えた使い捨て着用物品において,前記テープファスナを形成しているテープは,畳まれて上方に位置し,長さ方向に前記自由端部とこの自由端部に対向する第1端部とを有する頂部テープと,前記頂部テープの下方に位置し前記固定端部とこの固定端部に対向するとともに前記頂部テープに対して前記第1端部でつながる第2端部とを有する中間部テープと,前記中間部テープの下方に位置するとともに前記第2表面と向かい合って前記第2表面に剥離不能に接合する底部テープとを含み,前記固定端部は前記底部テープに向かい合う部分と,前記第2表面に向かい合う部分とを含み,これら部分のそれぞれにおいて剥離不能に接合し,前記頂部テープは前記内面に前記粘着剤が塗布されて前記下方に位置する前記中間部テープに剥離可能に接合するとともに,前記第1端部には前記自由端部から前記第1端部へ向かう方向へ前記中間部テープの前記第2端部を越えて延びる延出部が含まれていて前記延出部が前記第2表面に剥離可能に接合しており,前記中間部テープにおいて前記頂部テープの内面が剥離可能に接合している部位は,その部位と向かい合う前記底部テープに接合していない域を有し,前記底部テープに接合していない域は前記第2表面から離れて上方へ移動可能な状態にあることを特徴とする前記使い捨て着用物品。
【請求項2】前記頂部テープに含まれる延出部が前記底部テープを介して前記第2表面に剥離可能に接合している請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】前記使い捨て着用物品が使い捨ておむつであって,前記おむつが前胴周り域と,後胴周り域と,これら両胴周り域の間に位置する股下域とを有し,前記股下域には吸収性コアを備え,前記両胴周り域が互いの側縁部において連結されていて胴周り開口と一対の脚周り開口とが形成されているパンツ型のものであり,前記両胴周り域いずれかの前記側縁部における前記第2表面に前記中間部テープの固定端部がその中間部テープの長さ方向を前記おむつの胴周り方向に一致させた状態で接合している請求項1または2記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】 前記使い捨ておむつが前記コアの縁部から外方へ延出するシート材料によって形成されたフラップを有し,前記中間部テープ固定端部が前記フラップにおける前記第2表面に接合している請求項3記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】 前記第2表面を形成しているシートのうちで畳まれた前記テープファスナの直下に位置しているシート部分および前記シート部分に前記シート部分とは別体のシートが重なり互いに接合することにより形成されている積層状態のシート部分いずれかの曲げ剛さが(0.03?0.7)×10-4N・m2/mである請求項1?4のいずれかに記載の使い捨て着用物品。」

2.目的要件
本件補正前の請求項1に係る発明は,「前記第1テープの下方に位置して前記第2表面と向かい合」う「第2テープ」を備えるとともに,「前記第2テープにおいて前記第1テープの内面が剥離可能に接合している部位は,その部位と向かい合う前記第2表面に接合していない域を有」するものであり,同請求項を引用する請求項2?6に係る発明も,これと同じ構成要件を備える。ところが,本件補正後の請求項1には,該構成要件について記載されていない。本件補正後の請求項1の「頂部テープ」及び「中間部テープ」が,本件補正前の請求項1の「第1テープ」及び「第2テープ」にそれぞれ対応するとしても,本件補正後の請求項1に「前記中間部テープにおいて前記頂部テープの内面が剥離可能に接合している部位は,その部位と向かい合う前記底部テープに接合していない域を有し,」と記載されていることからすれば,中間部テープは,第2表面と向かい合うのではなく,底部テープと向かい合うものである。
また,本件補正後の請求項1に追加された「前記固定端部は前記底部テープに向かい合う部分と,前記第2表面に向かい合う部分とを含み,これら部分のそれぞれにおいて剥離不能に接合し,」は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものとはいえない。
したがって,本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成20年1月30日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「使い捨て着用物品がその物品着用者の肌と向かい合う第1表面と着衣と向かい合う第2表面とを有し,前記第2表面には粘着性のテープファスナが取り付けられており,前記テープファスナを形成しているテープは,長さ方向で対向する自由端部と固定端部とを有し,前記固定端部が前記第2表面に剥離不能に接合するとともに,前記自由端部を摘持して前記固定端部から前記自由端部へ向かう方向へ伸展し得るように畳まれ,伸展したときに前記第2表面と向かい合う前記テープの内面の一部分に粘着剤が塗布されているテープファスナを備えた使い捨て着用物品において,前記テープファスナを形成しているテープは,畳まれて上方に位置し,長さ方向に前記自由端部とこの自由端部に対向する第1端部とを有する第1テープと,前記第1テープの下方に位置して前記第2表面と向かい合い,前記固定端部とこの固定端部に対向するとともに前記第1テープに対して前記第1端部でつながる第2端部とを有する第2テープとからなり,前記第1テープは前記内面に前記粘着剤が塗布されて前記下方に位置する前記第2テープに剥離可能に接合するとともに,前記第1端部には前記自由端部から前記第1端部へ向かう方向へ前記第2テープの前記第2端部を越えて延びる延出部が含まれていて前記延出部が前記第2表面に剥離可能に接合しており,前記第2テープにおいて前記第1テープの内面が剥離可能に接合している部位は,その部位と向かい合う前記第2表面に接合していない域を有し,前記第2表面に接合していない域は前記第2表面から離れて上方へ移動可能な状態にあることを特徴とする前記使い捨て着用物品。」

第4.引用刊行物
原審の拒絶の理由に引用され,本願の出願日前に頒布された特開平10-85254号公報(以下,「引用刊行物1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
(イ)
「【発明の属する技術分野】この発明は,使い捨ておむつや生理用ナプキン,吸尿パッドなどの使い捨ての体液吸収性着用物品に関し,より詳しくは,該物品を着用したり廃棄したりするときに該物品を所要の形状に保持することが可能な形状保持手段を有する該物品に関する。」(段落【0001】)
(ロ)
「図1に部分破断斜視図で示された使い捨ておむつ1は,パンツ型のものであって,熱可塑性合成繊維からなる不織布性の透液性内面シート2と,熱可塑性合成樹脂フィルム製の不透液性外面シート3と,これら両シート間に介在する吸液性コア4とによって構成され,」(段落【0012】)
「図2は,図1のC-C線部分断面図であって,外面シート3の外面には,熱可塑性合成樹脂フィルム製の剥離用シート10がホットメルト接着剤(図示せず)を介して固着され,フィルム10の外面に廃棄処理手段16が位置している。」(段落【0013】)
「廃棄処理手段16は,互いに重なり合って並行する第1帯状片17と第2帯状片18とによって構成されている。第1帯状片17は,外面シート3と向かい合う内面26とその裏面側である外面27とを有し,おむつ1の上下方向に第1端部(上端部)21と,第2端部(下端部)22と,第1,2端部間に位置する第1中間部23とを有する。第1端部21は,その内面26がホットメルト接着剤24を介して剥離用シート10に固着される一方,第2端部22は,その外面27が第2帯状片18の後記内面28に固着され,第1中間部23は自由な変形が可能である。第2帯状片18は,第1帯状片17と向かい合う内面28とその裏面側である外面29とを有し,第1帯状片17の第1端部21から延出してその先に位置する第3端部(上端部)33と,第2端部22から延出してその先に位置する第4端部(下端部)34と,第3,4端部間に位置する第2中間部36とを有する。第3端部33には内外面28,29が非粘着性の先端摘持部37と,摘持部37に隣接する部位の内面28に粘着剤38が塗布された第1粘着域41とが形成されている。第4端部34の内面28には第2粘着剤39が塗布された第2粘着域42が形成されている。これら第1,2粘着域41,42は,剥離用シート10に剥離可能に接着されている。」(段落【0014】)
「このように構成されたおむつ1では,第2帯状片18の摘持部37を持って矢印A方向へ引っ張ると,第1,2粘着域41,42が剥離用シート10から剥れ,第1,2帯状片17,18が仮想線のように1条となって長く延びる(図1を併せて参照)。」(段落【0015】)
(ハ)
「図3は,廃棄処理手段16を使用して丸められたおむつ1の斜視図である。汚れたおむつ1は,胴周り開口部11から股下域8へ向かって上から下へと丸められた後に,長く延びた第1,2帯状片17,18が巻きつけられ,第1粘着域41が外面シート3の適宜の部位に接着される。」(段落【0016】)
「また,この発明における形状保持手段には,前記物品を廃棄するときに丸めたり,折り畳んだりするために使用する廃棄処理手段の他に,前記物品を着用するときに使用するテープファスナが含まれる。」(段落【0020】)

上記記載事項(イ)?(ハ)及び図面の記載によれば,引用刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明」という)が記載されているといえる。
「廃棄するときまたは着用するときに使用する形状保持手段を有する使い捨ての体液吸収性着用物品であって,内面シート2,外面シート3及び両シート間に介在する吸液性コア4によって構成される体液吸収性着用物品の外面シート3の外面に剥離用シート10が固着され,形状保持手段は,互いに重なり合って並行する第1帯状片17と第2帯状片18とによって構成され,第1帯状片17は,第1端部21が接着剤24を介して剥離用シート10に固着され,第2端部22が第2帯状片18に固着されるものであり,第2帯状片18は,第1帯状片17の第1端部21から延出する第3端部33と第1帯状片17の第2端部22から延出する第4端部34を有し,第3端部33には先端摘持部37及びこれに隣接する部位の内面に粘着剤38が塗布された第1粘着域41が形成され,第4端部34の内面には第2粘着剤39が塗布された第2粘着域42が形成され,第1粘着域41及び第2粘着域42は剥離用シート10に剥離可能に接着されており,摘持部37を持って第2帯状片18を所定方向へ引っ張ると,第1粘着域41及び第2粘着域42が剥離用シート10から剥れて,第1帯状片17及び第2帯状片18が1条となって長く延び,第1粘着域41が外面シート3の適宜の部位に接着され得るようにした使い捨ての体液吸収性着用物品。」

同じく原審の拒絶の理由に引用され,本願の出願日前に頒布された特表平8-507699号公報(以下,「引用刊行物2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
(ニ)
「好ましい手段は,図8Cに示されるような,三つの部分がZ字状に折り曲げられている接着テープタブである。接着テープタブ70は,第一セクション71,第二セクション72,および第三セクション73からなる。第一セクション71は,感圧接着手段75により胴体20に止め付けられており,またその一方の端は,同じ感圧接着手段75により第二セクション72の一方の端に止め付けられている。第二セクション72は,そのもう一方の端で,当業者に良く知られている感圧接着手段79により第三セクション73に止め付けられている。第二セクション72は,第三セクション73と面する表面に剥離手段77を有することがでる。第三セクションと感圧接着手段79との接着力は中程度である。適当な剥離手段77は,シリコン塗膜,またはポリエチレンでできた剥離ライナーである。剥離手段77は,感圧接着手段79と相溶性のある,第三セクション73に面する表面上に設けた接着力の低い感圧接着剤であってもよい。このことは,接着力の低い感圧接着手段77を接着手段79に接着しても,接着手段77と79のそれぞれの接着性を有意に変化させずにそれらを剥離することができるということを意味する。おむつを留めるために使用する前に,第二セクション72を,接着力のより低い塗膜81により,別に第一セクション71に取り付ける。
Z字に折り曲げられたこのテープタブ70を使用するためには,使用者が,テープタブの第三セクション73の82の部分を引き上げて広げる。これにより第三セクション73が第二セクション72から引き剥がされ,それにより第二セクション72が折り目78で広げられて第一セクション71から引き剥がされ,それにより折り目76で折り曲げられていた第一セクション71が広げられる。この後,第一セクション71,第二セクション72,および第三セクション73のそれぞれの接着手段75,77,および79を,広げられたテープタブ70と,巻き上げられたおむつの胴体20の外側の着衣に面する表面とを留め付けるのに用いることができる。」
(37頁5行?38頁2行)
(ホ)図8Cを参照すると,第3セクション73と第2セクション72は,第3セクション73の下面に設けられた接着手段79と第2セクション72の上面に設けられた剥離手段77を介して剥離可能に重ね合わされること,第2セクションの下面と第1セクション71との間には接合されない域が設けられることが理解される。

第5.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「内面シート2」,「第2帯状片18」,「第1帯状片17」,「第3端部33」,「第1端部21」,「第4端部34」,「第2端部22」,「形状保持手段」及び「使い捨ての体液吸収性着用物品」は,それぞれ本願発明の「着用者の肌と向かい合う第1表面」,「第1テープ」,「第2テープ」,「自由端部」,「固定端部」,「第1端部」,「第2端部」,「テープファスナ」及び「使い捨て着用物品」に相当し,引用発明の「剥離用シート10」は,外面シート3の外面に固着されて外面シート3と一体化された部材であり,これに形状保持手段が取り付けられるものであるから,「外面シート3」とともに,本願発明の「第2表面」に相当するといえる。また,引用発明は,第1帯状片17及び第2帯状片18が1条となって長く延びるようにしたときに,第1粘着域41が外面シート3の適宜の部位に接着され得るようにしたものであるから,本願発明の「伸展したときに前記第2表面と向かい合う前記テープの内面の一部分に粘着剤が塗布されている」との要件を備える。さらに,引用発明は,第2帯状片18が第1帯状片17の第2端部22から延出する第4端部34を有し,該第4端部34に形成された第2粘着域42が剥離用シート10に剥離可能に接着されるものであるから,本願発明の「前記第1端部には前記自由端部から前記第1端部へ向かう方向へ前記第2テープの前記第2端部を越えて延びる延出部が含まれていて前記延出部が前記第2表面に剥離可能に接合しており」との要件を備える。
したがって,本願発明と引用発明は,
「使い捨て着用物品がその物品着用者の肌と向かい合う第1表面と着衣と向かい合う第2表面とを有し,前記第2表面には粘着性のテープファスナが取り付けられており,前記テープファスナを形成しているテープは,長さ方向で対向する自由端部と固定端部とを有し,前記固定端部が前記第2表面に剥離不能に接合するとともに,前記自由端部を摘持して前記固定端部から前記自由端部へ向かう方向へ伸展し得るように畳まれ,伸展したときに前記第2表面と向かい合う前記テープの内面の一部分に粘着剤が塗布されているテープファスナを備えた使い捨て着用物品において,前記テープファスナを形成しているテープは,畳まれて上方に位置し,長さ方向に前記自由端部とこの自由端部に対向する第1端部とを有する第1テープと,前記第1テープの下方に位置して前記第2表面と向かい合い,前記固定端部とこの固定端部に対向するとともに前記第1テープに対して前記第1端部でつながる第2端部とを有する第2テープとからなり,前記第1端部には前記自由端部から前記第1端部へ向かう方向へ前記第2テープの前記第2端部を越えて延びる延出部が含まれていて前記延出部が前記第2表面に剥離可能に接合していることを特徴とする前記使い捨て着用物品。」
である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点)
本願発明では,第1テープは内面に粘着剤が塗布されて第2テープに剥離可能に接合するとともに,第2テープにおいて第1テープの内面が剥離可能に接合している部位は,その部位と向かい合う第2表面に接合していない域を有し,第2表面に接合していない域は第2表面から離れて上方へ移動可能な状態にあるのに対して,引用発明では,第2帯状片18,第1帯状片17及び剥離用シート10がそのような関係になっていない点。

上記相違点について検討する。
引用刊行物2には,第3セクション73の内面に接着手段79が塗布されて第2セクション72に剥離可能に接合することが記載されており(記載事項(ニ)及び(ホ)参照),この「第3セクション73」,「第2セクション72」及び「接着手段79」は,本願発明の「第1テープ」,「第2テープ」及び「粘着剤」に相当する。引用発明において,第2帯状片18の内面に粘着剤を塗布して第1帯状片17に剥離可能に接合することは,引用刊行物2を参酌することにより,当業者が容易になし得たことである。そして,引用発明においてそのように構成を変更すれば,必然的に,第1帯状片17において第2帯状片18の内面が剥離可能に接合している部位は,その部位と向かい合う剥離用シート10に接合していない域を有するものとなる。また,剥離用シート10に接合していない域が剥離用シート10から離れて上方へ移動可能な状態にあることは当然の事項に過ぎない。したがって,上記相違点は,引用刊行物2を参酌することにより,当業者が容易になし得たことである。
なお,本願発明が,上記相違点に係る構成要件を備えることにより,引用発明または引用刊行物2に記載されたものとは異なる格別な作用効果を奏するとはいえない。

以上のことから,本願発明は,引用刊行物1?2に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

第6.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用刊行物1?2に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-02 
結審通知日 2009-09-08 
審決日 2009-09-24 
出願番号 特願2002-26017(P2002-26017)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A41B)
P 1 8・ 572- Z (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 直  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 熊倉 強
谷治 和文
発明の名称 テープファスナを備えた使い捨て着用物品  
代理人 白浜 秀二  
代理人 白浜 吉治  

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