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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K |
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管理番号 | 1206533 |
審判番号 | 不服2008-14721 |
総通号数 | 120 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-06-12 |
確定日 | 2009-11-05 |
事件の表示 | 特願2002-221255「三方切換弁」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月26日出願公開、特開2004- 60799〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年7月30日の出願であって、平成20年5月2日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成20年6月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年7月3日付けで明細書に対する手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 2.補正の却下の決定 [結論] 本件補正を却下する。 [理由] 2-1 補正事項 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に対し、以下のような補正を含むものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 弾性体で形成されるボール弁体と、該ボール弁体がその中心を通る回転軸線のまわりに回転可能に収納される弁室を有する弁ケースとを具備し、上記ボール弁体には、その中心部付近で互いに直交して合流する流入路と流出路とからなる流路が穿設されると共に、上記弁ケースには、上記回転軸線方向に上記弁室に対して開口する一つの流入口と、上記ボール弁体の中心を通り上記回転軸線と直交する軸線方向で相反する向きに上記弁室に対して開口する二つの流出口とが形成されており、上記ボール弁体の回転動作において、該ボール弁体の上記流入路は、常時上記弁ケースの上記流入口に接続しており、上記ボール弁体の上記流出路は、上記弁ケースの上記二つの流出口のいずれか一方に択一的に接続するように構成されている三方切換弁において、 上記ボール弁体には、該ボール弁体の上記流出口を含む平面状の平坦部を第1平坦部として第2、第3及び第4までの四つの平坦部が90°の角度間隔で形成されていることを特徴とする三方切換弁。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 弾性体で形成されるボール弁体と、該ボール弁体がその中心を通る回転軸線のまわりに回転可能に収納される弁室を有する弁ケースとを具備し、上記ボール弁体には、その中心部付近で互いに直交して合流する一つの流入路と一つの流出路とからなる流路が穿設されると共に、上記弁ケースには、上記回転軸線方向に上記弁室に対して開口する一つの流入口と、上記ボール弁体の中心を通り上記回転軸線と直交する軸線方向で相反する向きに上記弁室に対して開口する二つの流出口とが形成されており、上記ボール弁体の回転動作に伴い、該ボール弁体の上記流入路は、常時上記弁ケースの上記流入口に接続しており、上記ボール弁体の上記流出路は、上記弁ケースの上記二つの流出口のいずれか一方に択一的に接続するように構成されている三方切換弁において、 上記ボール弁体には、該ボール弁体の上記流出路の開口を含む平面状の第1平坦部と、流出路開口のない平面状の第2、第3及び第4平坦部とを併せた四つの平坦部が90°の角度間隔で形成されていることを特徴とする三方切換弁。」(下線は、審判請求人が付したものである。) 2-2 新規事項追加の有無及び補正の目的 上記補正は、実質的にみて、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されていた「ボール弁体」における「流入路」と「流出路」について、願書に最初に添付した明細書及び図面の段落【0014】、図1等の記載を基に、それぞれ「一つの流入路」、「一つの流出路」であることを限定して特定したものである。また、同様に、「四つの平坦部」について、同図4等の記載を基に、「該ボール弁体の上記流出路の開口を含む平面状の第1平坦部と、流出路開口のない平面状の第2、第3及び第4平坦部とを併せた四つの平坦部が90°の角度間隔で形成されている」とその配置関係を限定して特定したものであると理解される。そして、上記補正により、本願発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題に変更を生じることもない。 してみれば、上記補正は、新規事項を追加するものではなく、また、その目的は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に合致するものである。 2-3 独立特許要件 上述2-2に記載したとおり、本件補正の目的は、改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を含むものであるから、本件補正後の本願発明は、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。 そこで、この点について以下に検討する。 2-3-1 本件補正後の本願発明 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明は、平成17年7月13日付け手続補正、平成20年2月12日付け手続補正及び本件補正により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上述2-1(2)に記載したとおりである。 2-3-2 刊行物に記載の発明 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本願出願前に日本国内において頒布された特開平1-112087号公報(以下、「刊行物1」という。)、実願昭58-140022号(実開昭60-47963号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)、実願昭59-94616号(実開昭61-11064号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、それぞれ次の発明が記載されている。 (1)刊行物1 刊行物1には、図面とともに以下の記載がある。なお、当審において記載を全角に統一した。 a)「2 特許請求の範囲 1.二方又はそれ以上の開口を有する軸付のボールにおいて、一つの開口の中心が軸芯とほぼ同一であることを特徴とするボールバルブ用軸付ボール。」(第1ページ左下欄第7行?第10行) b)「1つの開口の中心が、軸芯とほぼ同一とは、少なくとも1つの開口が軸の真下(軸を回転させるハンドルその他のアクチュエーターが上方にある場合)に位置することを意味する。勿論、そのまま直線状に貫通することはできないため、その孔は途中から、カーブ又は折曲することとなる。」(第2ページ左下欄第16行?右下欄第2行) c)「カーブ又は折曲の方向は、特に限定するものではないが、通常90度カーブし、水平方向に開口するものが便利である。ここで、途中で分岐し、二方又はそれ以上に分かれて開口してもよい。 このような構造によって、同一入口から多方向への分配が可能になる。」(第2ページ右下欄第3行?第8行) d)「(e) 実施例 第1図は、本発明ボールバルブの概略断面図である。 バルブボディー(5)の下部には下部開口(6)があり左右には、左開口部(7)と右開口部(8)が設けられている。ボール(9)には下方から90度折曲した貫通孔(10)が設けられている。ボール(9)は軸(11)に連結され、ハンドル(12)によって回動される。・・・(途中省略)・・・。 これによって、左右どちらにも流体の流路を切り替えることができる。」(第2ページ右下欄第19行?第3ページ左上欄第11行) 以上の記載を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「ボール(9)と、該ボール(9)が軸(11)に連結されハンドル(12)によって回動されるように収容されたバルブボディー(5)とを具備し、上記ボール(9)には、軸(10)の軸芯とほぼ同一な開口を下方に有しそこから水平方向に90度折曲した貫通孔(10)が設けられるとともに、上記バルブボディー(5)には、下部に下部開口(6)を有し、左右に左開口部(7)と右開口部(8)が設けられており、ボール(9)を回動させることにより、下部開口(6)から流入した流体を貫通孔(10)を通じ左開口部(7)又は右開口部(8)に分配するように流路を切り替えることが可能な、ボールバルブ。」 (2)刊行物2 刊行物2には、図面とともに以下の記載がある。なお、当審において記載を全角に統一した。 a)「本考案は液体用ボールバルブに関するものである。 従来の液体用ボールバルブは、・・・(途中省略)・・・金属製であるため重いし、製造コストも高い。また漏液防止のため種々な工夫をしたシール材を必要とするので、構造も複雑であり、部品点数も多い等の問題点がある。」(第1ページ第13行?第2ページ第3行) b)「以下に本考案を図示実施例によって説明する。(A)はバルブ本体で青銅鋳物の如き金属製であり、本体(A)中央に横設の液通孔(1)を介して両側に接続用ネジ部(2)(2)を有するとともに、中央上方にスピンドル挿入用筒部(3)を有する。また内部の中央部分には、後記ボール状弁体(B)を密着状に抱持可能に、弁体受面(5)を球内面状に形成してある。」(第2ページ第11行?第17行) c)「(B)はボール状弁体で、弾性・耐摩耗性・耐薬品性に優れた合成樹脂製とし、例えばポリアセタール(アセタール・コポリマー)やポリカーボネートを用いる。」(第3ページ第2行?第5行) d)「・・・本考案では、ボール状弁体を弾性を有する合成樹脂材で形成して、それをバルブ本体内の弁体受面で直接かつ密着状に抱持させてある。それゆえ、弾性に富むボール状弁体が、広い接触面積で本体内面へ密着状となるので、シール効果に優れたものとなる。」(第4ページ第19行?第5ページ第4行) 以上の記載を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「中央に横設の液通孔(1)を介して両側に接続用雄ネジ部(2)(2)を有するとともに、内部に弁体受面(5)が形成されたバルブ本体(A)と、バルブ本体(A)に密着状に抱持されるボール状弁体(B)とを有するボールバルブにおいて、ボール状弁体(B)が弾性を有する合成樹脂材で形成された、ボールバルブ。」 (3)刊行物3 刊行物3には、図面とともに以下の記載がある。 a)「第1図,第2図において、1は本体であって、弁体3を収容する弁室1aと、この弁室1aより縮径された流路8を形成する長管部1bと、スピンドル5を保持するボス部1cとを有し、ポリエチレン樹脂から作られている。」(第6ページ第3行?第7行) b)「弁体3は球形状に形成され本体1の弁室1a内に回動自在に載置され、その上部嵌合溝にスピンドル5を嵌合させ、スピンドル5を回転させることにより、流路を開放状態及び閉鎖状態にするため、弁体が開,閉の各位置に移行されるようになっており、ポリアセタール樹脂からなるものである。」(第6ページ第16行?第7ページ第2行) c)「上記のように構成した本実施例のガス用ボールバルブは・・・(途中省略)・・・ボール弁体3の上流側及び下流側の流路開口部6,6aの周縁部に逃がし面7,7aが形成されているので、ボール弁体3とシート4,4aとの接触面積が従来のボールバルブよりかなり小さくなり、・・・(途中省略)・・・弁体とシートとの間の摩擦力も小さいものとなる。したがって・・・(途中省略)・・・低いスピンドルトルクで素早く、しかもスムーズに閉の状態に移行させることができる。」(第8ページ第15行?第9ページ第11行) d)「第4図は本考案の第2の実施例を示す。・・・(途中省略)・・・本実施例では、流路開口部6,6aの周縁部、すなわち従来のボールバルブの、シートと接していた部分とこれに連続するシートの内側方向に位置する部分の表面部を、スピンドル5の軸線に対して平行になるように一部カットすることにより逃がし面7,7aを形成するものである。このような逃がし面を形成しても第1実施例と同様な作用効果が得られる。」(第10ページ第3行?第13行) 以上の記載を総合すると、刊行物3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「弁体3を収容する弁室1a、流路8を形成する長管部1b、及びスピンドル5を保持するボス部1cとを有する弁体1と、弁体1の弁室1a内に回動自在に載置させられるボール弁体3とを有するボールバルブにおいて、ボール弁体3の流路開口部6,6aの周縁部にスピンドル5の軸線に対して平行になるように一部カットすることにより逃がし面7,7aを形成した、ボールバルブ。」 2-3-3 対比 (1)一致点 本願補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ボール(9)」は、具体的な材質ないし構造はさておき、その機能ないし構造からみれば、本願補正発明における「ボール弁体」に相当し、同様に、引用発明1の「バルブボディー(5)」は、本願補正発明の「弁ケース」に相当する。 また、引用発明1の「ボール(9)」は、「軸(11)に連結されハンドル(12)によって回動される」ものであるところ、これは、「該ボール弁体がその中心を通る回転軸線のまわりに回転可能」に相当する。また、引用発明1の「ボール(9)」には、「軸(10)の軸芯とほぼ同一な開口を下方に有しそこから水平方向に90度折曲した貫通孔(10)が設けられる」ものであるところ、この「貫通孔(10)」の構造からみれば、本願補正発明における「上記ボール弁体には、その中心部付近で互いに直交して合流する一つの流入路と一つの流出路とからなる流路が穿設される」ものに実質的に相当する。 次に、引用発明1の「バルブボディー(5)」は、「ボール(9)」を「回動するように収容」するものであるところ、この「ボール(9)」を収容する部位は、本願補正発明における「弁室」に相当する。また、引用発明1の「バルブボディー(5)」には、その下部に「下部開口(6)」が形成され、左右に「左開口部(7)」と「右開口部(8)」とが形成されており、「ボール(9)を回動させることにより、下部開口(6)から流入した流体を貫通孔(10)を通じ左開口部(7)又は右開口部(8)に分配するように流路を切り替えることが可能」とされているものであるから、「ボール(9)」及び「貫通孔(10)」の構造とともに併せみれば、この「下部開口(6)」は、本願補正発明の「上記回転軸線方向に上記弁室に対して開口する一つの流入口」に相当するとともに、同様に「左開口部(7)」及び「右開口部(8)」は、本願補正発明における「上記ボール弁体の中心を通り上記回転軸線と直交する軸線方向で相反する向きに上記弁室に対して開口する二つの流出口」に相当する。 そして、引用発明1は、「ボール(9)を回動させることにより、下部開口(6)から流入した流体を貫通孔(10)を通じ左開口部(7)又は右開口部(8)に分配するように流路を切り替えることが可能」とされた「ボールバルブ」であるところ、これは、本願補正発明における「上記ボール弁体の回転動作に伴い、該ボール弁体の上記流入路は、常時上記弁ケースの上記流入口に接続しており、上記ボール弁体の上記流出路は、上記弁ケースの上記二つの流出口のいずれか一方に択一的に接続するように構成されている三方切換弁」にほかならない。 してみれば、本願補正発明と引用発明1とは、本願補正発明の表記にならえば、以下の点で一致する。 「ボール弁体と、該ボール弁体がその中心を通る回転軸線のまわりに回転可能に収納される弁室を有する弁ケースとを具備し、上記ボール弁体には、その中心部付近で互いに直交して合流する一つの流入路と一つの流出路とからなる流路が穿設されると共に、上記弁ケースには、上記回転軸線方向に上記弁室に対して開口する一つの流入口と、上記ボール弁体の中心を通り上記回転軸線と直交する軸線方向で相反する向きに上記弁室に対して開口する二つの流出口とが形成されており、上記ボール弁体の回転動作に伴い、該ボール弁体の上記流入路は、常時上記弁ケースの上記流入口に接続しており、上記ボール弁体の上記流出路は、上記弁ケースの上記二つの流出口のいずれか一方に択一的に接続するように構成されている、三方切換弁。」 (2)相違点 一方、本願補正発明と引用発明1とは、次の点で相違する。 a)相違点1 本願補正発明の「ボール弁体」は、「弾性体」で形成されているのに対し、引用発明1の「ボール(9)」は、弾性体であるか否か不明である点。 b)相違点2 本願補正発明の「ボール弁体」には、「該ボール弁体の上記流出路の開口を含む平面状の第1平坦部と、流出路開口のない平面状の第2、第3及び第4平坦部とを併せた四つの平坦部が90°の角度間隔で形成されている」のに対して、引用発明1の「ボール(9)」には、そのような平坦面が形成されていない点。 2-3-4 相違点の判断 (1)相違点1について 引用発明2は、上述2-3-2(2)に記載したとおり、「ボール状弁体(B)」を「弾性を有する合成樹脂材で形成」、すなわち弾性体で形成したものであり、これによって、同a)、d)に摘記したように、シールを不要とし構造を簡素化にすることを可能としたものである。そして、引用発明1と引用発明2とは、ボールバルブという点で共通する技術分野に属する上、シールを不要とし構造を簡素化するという課題の面からみても、引用発明1、2のようなボールバルブにおいて共通するものである。 そうすると、引用発明1に引用発明2を適用して、「ボール(9)」を弾 性体で形成するようにすることは、当業者にとって容易に想到し得るものである。 (2)相違点2について 引用発明3は、上述2-3-2(3)に記載したとおり、「ボール弁体3の流路開口部6,6aの周縁部」において、「スピンドル5の軸線に対して平行になるように一部カットすることにより逃がし面7,7aを形成」したもの、すなわち、「ボール弁体3」の流入路及び流出路を平面状の平坦部としたものであり、これによって、同c)に摘記したように、ボール弁体の回転時における摩擦力を小さくすることが可能となり、低いスピンドルトルクでボール弁体を回転させることができるようにしたものである。そして、引用発明1と引用発明3とは、ボールバルブという点で共通する技術分野に属する上、ボール弁体とシールとの摩擦力を小さくするという課題の点からみても、引用発明1、3のようなボールバルブにおいて共通するものであるから、引用発明1に引用発明3を適用し、「ボール(9)」における流入路ないし流出路となる「貫通孔(10)」の開口を平面状の平坦部とすることは、当業者が容易になし得るものである。加えて、ボール弁体に平面状の平坦部を設けることにより、ボール弁体の回転時における摩擦力を小さくすることができるという引用発明3の知見からすれば、引用発明1の「ボール(9)」における他の部分にも平面状の平坦部を設けることは、当業者であれば容易に想起し得るものであり、特に、ボール弁体の流出路だけでなく、それ以外の部位においても平面状の平坦面を設けることが技術水準として知られていた(例えば、特開2000-18405号公報の段落【0012】、図3等参照)ことにかんがみれば、引用発明1の「ボール(9)」において、その流入路ないし流出路となる「貫通孔(10)」の開口以外の部位にも平面状の平坦部を設けることは、その配置を90°の角度間隔とすることも含め、当業者が設計的になし得たものである。 また、本願補正発明は、「ボール弁体10における流出路12の開口部とは反対側の面は、平板状の平坦部15として形成されている。これは、ボール弁体10の流路切換に伴う回転時に、弁ケース20のボール弁体10支持部(摺接部分10a)との摩擦を少なくして回転を円滑に行わせるためである。」(本願明細書の段落【0017】)、「弁ケース側にボール弁体とのシール部品を別途設ける必要が少なくなるから、部品点数を少なくして構成を簡略化でき、組立工数も少なくすることができる。」(本願明細書の段落【0020】)等の作用ないし効果を奏するものであるが、これらは、引用発明1ないし3から当業者が直ちに予測し得るものばかりである。 してみれば、本願補正発明は、引用発明1ないし3から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、審判請求人は、審判請求書及び当審の審尋に対する平成21年8月6日付けの回答書の中で、いずれの刊行物にも平坦部を90°の角度間隔で設ける点について開示されていない旨を主張するが、この点に対する当審の判断は、上述のとおりである。また、本願補正発明が当業者に予測もできなかった効果を有しているとはいえないことも、上述のとおりである。 2-4 補正の却下の決定のむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 3-1 本願発明 本件補正は、上述のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明は、平成17年7月13日付け手続補正及び平成20年2月12日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」)というは、上述2-1(1)に記載したとおりである。 3-2 刊行物に記載の発明 一方、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及び当該刊行物に記載の発明は、上述2-3-2に記載したとおりである。 3-3 対比及び判断 本願補正発明は、本願発明のすべての発明特定事項を含み、その一部をさらに限定して特定したものであるところ、その本願補正発明が上述2-3-4に記載したとおり、引用発明1ないし3から当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、引用発明1ないし3から当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。したがって、本願は、特許請求の範囲の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-08-19 |
結審通知日 | 2009-08-25 |
審決日 | 2009-09-09 |
出願番号 | 特願2002-221255(P2002-221255) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F16K)
P 1 8・ 121- Z (F16K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 刈間 宏信、渡邉 洋 |
特許庁審判長 |
川上 益喜 |
特許庁審判官 |
岩谷 一臣 常盤 務 |
発明の名称 | 三方切換弁 |
代理人 | 特許業務法人第一国際特許事務所 |