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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1206957 |
審判番号 | 不服2006-17472 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-08-10 |
確定日 | 2009-11-12 |
事件の表示 | 特願2002-115135「通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月31日出願公開,特開2003-308282〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は,平成14年4月17日の出願であって,平成18年7月6日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年8月10日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに,同月29日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成18年8月29日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年8月29日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [補正却下の決定の理由] (1)本件補正の内容 本件補正により,少なくとも特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。 「複数の動作対象,及び複数の動作指令情報に対応した複数の動作パターンを記憶する記憶手段と, 送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報を相手情報又はテキストに含む電子メールを作成するメール作成手段と, 前記電子メールを送受信する送受信手段と, 前記送受信手段が前記電子メールを受信したときに前記電子メールに含まれる前記送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報を読み取り,前記記憶手段から前記複数の動作対象のうち受信側のユーザーが選択した動作対象,及び前記送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報に対応する前記動作パターンを読み出してその動作パターンに従って前記受信側のユーザーが選択した動作対象を動作させる制御手段とを備えたことを特徴とする通信装置。」 上記補正は,本件補正前の請求項1に記載された「前記動作指令情報を含む電子メール」を「送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報を相手情報又はテキストに含む電子メール」と限定し,「前記電子メールに含まれる前記動作指令情報」を「前記電子メールに含まれる前記送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報」と限定し,「前記複数の動作対象のうちユーザーが選択した動作対象」を「前記複数の動作対象のうち受信側のユーザーが選択した動作対象」と限定し,「前記動作指令情報に対応する」を「前記送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報に対応する」と限定し,「前記ユーザーが選択した動作対象」を「前記受信側のユーザーが選択した動作対象」と限定するものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて以下検討する。 (2)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願日前に頒布された刊行物である特開2002-32306号公報(平成14年1月31日公開,以下,「引用刊行物」という。)には,図面とともに,以下の事項(ア)?(エ)が記載されている。 (ア)「【0021】 【実施例】図1を参照して,この実施例のメーリング装置10は,インターネット100を介して他のメーリング装置10と接続される。各々のメーリング装置10は,図2に示すようにCPU12を含む。CPU12は,バス18によってメモリ14およびディスクドライブ16と接続されるとともに,バス18およびI/F回路20を介してディスプレイ22,キーボード24,スピーカ26,マウス28およびインターネット100と接続される。 【0022】ディスクドライブ16は,CPU12からの命令に応答してCD-ROMのような記録媒体30にアクセスし,これに記録されたメーリングソフト(メーリングプログラム)をメモリ14にインストールする。インストールされたメーリングソフトは,文章に加えて所定のキャラクタを宛先のディスプレイ22に表示し,かつ宛先のスピーカ26から所定のBGMを出力する機能を持っている。オペレータがメール文章を作成すると,作成された文章データから感情フレーズデータが検出され,検出された感情フレーズデータにキャラクタの動き制御情報およびBGMの曲調制御情報が割り当てられる。このため,宛先に発信されるメールには,文章データに加えてキャラクタの動き制御情報およびBGMの曲調制御情報が含まれる。なお,動き制御情報は,キャラクタの顔の表情を制御する顔表情制御情報と,キャラクタの振る舞いを制御する振る舞い制御情報とからなる。 【0023】発信されたメールは,インターネット100を通じて宛先のメーリング装置10に到達する。受信側のメモリ14にもまた上述のメーリングソフトがインストールされており,受信側のCPU12は,このメーリングソフトに従って受信メールに関連する情報をディスプレイ22およびスピーカ26から出力する。具体的には,受信した文章データに対応する文章,ならびにメーリングソフトのインストールによってメモリ14に用意されたキャラクタデータに対応するキャラクタをディスプレイ22に表示し,メーリングソフトのインストールによってメモリ14に用意されたBGMデータに対応するBGMをスピーカ26から出力する。 【0024】さらに,ディスプレイ22に表示された文章を朗読する音声をスピーカ26から出力する。ここで,感情フレーズが朗読されるときは,この感情フレーズに割り当てられた顔表情制御情報,振る舞い制御情報および曲調制御情報に従って,キャラクタの表情および振る舞いとBGMの曲調とが変更される。つまり,朗読される感情フレーズがたとえば“うれしー”のような喜びを表すフレーズであれば,キャラクタが笑顔で手のひらを見せるとともに,BGMが明るい曲調に変更される。 【0025】メモリ14には,メーリングソフトのインストールによって図3に示すデフォルト感情フレーズテーブル14aが形成される。デフォルト感情テーブル14aは,たとえば10種類の感情(感謝,おわび,哀しみ,親しみ,怒り,からかい,愛想つかし,驚き,怖れ,喜び)に分類され,各分類には関連するデフォルト感情フレーズが設定される。デフォルト感情フレーズはいずれのオペレータも使用すると思われるフレーズであり,複数フレーズが当初から用意されている。各々のデフォルト感情フレーズには,顔表情制御情報であるパラメータXおよびY,振る舞い制御情報であるパラメータα,曲調制御情報であるパラメータβ,メール作成時に使用されたトータルの使用回数,ならびに過去1週間においてメール作成時に使用された回数が割り当てられる。 【0026】キャラクタの顔の表情を決定するパラメータXおよびYのうち,Xは感情の快・不快を示し,Yは感情の強弱を示す。メモリ14には,メーリングソフトのインストールによって図5に示すようなXを横軸としYを縦軸とするパラメータシート14cが形成される。上述の10種類の感情は,パラメータシート14c上に同図に示す要領で分布する。つまり,“喜び”,“驚き”および“感謝”は第1象限に分布し,“おわび”,“怒り”および“愛想つかし”は第2象限に分布する。また,“哀しみ”は第3象限に分布し,“怖れ”,“からかい”および“親しみ”は第4象限に分布する。 【0027】図3に示す各々のデフォルト感情フレーズに割り当てられたパラメータXおよびYは,このパラメータシート14c上の感情分布の範囲に含まれる座標値を示す。たとえば,“ありがとう”は感謝を示す感情フレーズであるため,この感情フレーズに割り当てられるパラメータXおよびYは,たとえば“2”および“7”となる。また,“こらー”は怒りを示す感情フレーズであるため,この感情フレーズに割り当てられるパラメータXおよびYは,たとえば“-9”および“9”となる。(X,Y)=(2,7)のパラメータが割り当てられた感情フレーズが宛先で朗読されるとき,キャラクタの顔は感謝の表情を現す。また,(X,Y)=(-9,9)のパラメータが割り当てられた感情フレーズが宛先で朗読されるとき,キャラクタの顔は怒りの表情を現す。 【0028】キャラクタの振る舞い(アニメーション)を決定するパラメータαは,2桁の数字で表される。メモリ14には,メーリングソフトのインストールによって図6に示すアニメーションテーブル14dが形成される。図6によれば,このテーブル14dもまた10種類の感情に分類され,各々のカテゴリには感情の程度を示すレベル1?3が割り当てられる。パラメータαを表す2桁の数字の上位桁が感情のカテゴリを示し,下位桁が感情の程度(レベル)を示す。 【0029】図3に戻って,たとえば“こらー”は怒りを示す感情フレーズであり,これに割り当てられたパラメータαは“43”である。このα=43のパラメータが割り当てられた感情フレーズが朗読されるとき,キャラクタはかなり怒った振る舞いをする。また,“うれしー”は喜びを示す感情フレーズであり,これに割り当てられたパラメータαは“92”である。このα=92のパラメータが割り当てられた感情フレーズが朗読されるとき,キャラクタは中程度に喜んだ振る舞いをする。さらに,“ごめん”はお詫びを示す感情フレーズであり,これに割り当てられたパラメータαは“11”である。このα=11のパラメータが割り当てられた感情フレーズが朗読されるとき,キャラクタはちょっと詫びた振る舞いをする。」(段落【0021】?【0029】) (イ)「【0034】メモリ14にインストールされたメーリングソフトは,図8?図14および図17に示すフロー図に対応する。CPU12は,メール作成モードが選択されたとき図8?図14に示すフロー図を,メール受信モードが選択されたとき図17に示すフロー図を処理する。」(段落【0034】) (ウ)「【0058】メール受信モードが選択されると,CPU12は図17に示すフロー図を処理する。まず,ステップS201でメール受信画面をディスプレイ22上に形成し,ステップS203で受信メールに含まれる文章をメール受信画面の中央に表示するとともに,ステップS205でキャラクタを同じメール受信画面の右下に表示する。さらに,ステップS207でBGMをスピーカ26から出力する。 【0059】図15に示す文章を含むメールを受信した場合,メール受信画面には図18に示す要領で文章が表示される。また,画面の右下に表示されたキャラクタは,自律的に所定の動き(たとえば軽く微笑みながらの緩やかなダンス)をし,スピーカ26から出力されるBGMは所定の曲調(たとえば軽やかなリズム)を奏でる。 【0060】ここで,オペレータがマウス28によって再生操作(文章の朗読操作)を行なうと,ステップS209からステップS211に進み,文章の朗読を開始する。ステップS213では,朗読位置が感情フレーズの先頭に達したかどうか判断し,YESと判断されると,ステップS215でこの感情フレーズに割り当てられたパラメータX,Y,αおよびβを検出する。ステップS217では検出されたパラメータX,Yおよびαに応じてキャラクタを動かし,ステップS219では検出されたパラメータβに応じてBGMの曲調を変更する。ステップS219の処理を終えると文章の朗読が終了したかどうかをステップS221で判断し,NOであればステップS213?S219の処理を繰り返すが,YESであればステップS209に戻る。 【0061】したがって,文章を朗読するときは,感情フレーズの先頭が検出される毎にキャラクタの動きおよびBGMの曲調が変更される。つまり,感情フレーズが朗読されない間は,キャラクタは軽く微笑みながら緩やかなダンスをし,BGMは軽やかな曲調を奏でるが,たとえば図18に示す“泣けますね”が朗読されるときは,キャラクタの顔が哀しそうな表情に変わり,両手がこの哀しそうな顔を覆う。また,BGMが哀しそうな曲調に変わる。 【0062】文章の朗読が終了した後,オペレータが終了操作をすると,ステップS223でYESと判断し,ステップS225におけるメール受信画面のクローズ処理を経て処理を終了する。」(段落【0058】?【0062】) (エ)図10には,「メール作成モードにおけるCPUの処理のその他の一部を示すフロー図」として,「送信処理」を含むフロー図が記載されている。 したがって,上記引用刊行物には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。 「メール作成モード及びメール受信モードに対応したメーリングソフト(メーリングプログラム)がインストールされたメモリと,メーリングソフトに従った処理を行うCPUと,ディスプレイを備えたメーリング装置であって, メール作成モードが選択されたときは, オペレータが作成した文章データから感情フレーズデータを検出し,検出した感情フレーズデータにキャラクタの動き制御情報を割り当て,文章データに加えてキャラクタの動き制御情報が含まれたメールを宛先に発信し, 動き制御情報は,キャラクタの顔の表情を制御する顔表情制御情報と,キャラクタの振る舞い(アニメーション)を制御する振る舞い制御情報とからなり, 発信されたメールは,宛先のメーリング装置に到達し, メール受信モードが選択されたときは, メール受信画面をディスプレイ上に形成し(ステップS201), 受信メールに含まれる文章をメール受信画面の中央に表示するとともに(ステップS203), メーリングソフトのインストールによってメモリに用意されたキャラクタデータに対応するキャラクタを同じメール受信画面の右下に表示し(ステップS205),表示されたキャラクタは,自律的に所定の動きをし, ここで,オペレータが再生操作(文章の朗読操作)を行なうと(ステップS209), 文章の朗読を開始し(ステップS211), 朗読位置が感情フレーズの先頭に達したかどうか判断し(ステップS213), YESと判断されると,この感情フレーズに割り当てられた顔表情制御情報(パラメータX,Y),及び振る舞い制御情報(パラメータα)を検出し(ステップS215), 検出された顔表情制御情報,及び振る舞い制御情報に応じてキャラクタを動かし(ステップS217), 処理を終えると文章の朗読が終了したかどうかを判断し(ステップS221), NOであればステップS213?S219の処理を繰り返すが,YESであればステップS209に戻ることにより,文章を朗読するときは,感情フレーズの先頭が検出される毎にキャラクタの動きが変更される, メーリング装置。」 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明は,顔表情制御情報と振る舞い制御情報とからなる動き制御情報に応じて,キャラクタの表情および振る舞い(アニメーション)を変更するものであるから,引用発明の「キャラクタ」及び「動き制御情報」は,本願補正発明の「動作対象」及び「動作指令情報」にそれぞれ相当する。 引用発明は,メーリングソフトのインストールによってメモリに用意されたキャラクタデータに対応する動作対象(キャラクタ)を表示するものであるから,引用発明の「メモリ」と,本願補正発明の「複数の動作対象,及び複数の動作指令情報に対応した複数の動作パターンを記憶する記憶手段」とは,「動作対象」「を記憶する記憶手段」である点において一致する。 引用発明のメーリングソフトは,オペレータが作成した文章データから感情フレーズデータを検出し,検出した感情フレーズデータに動作対象(キャラクタ)の動作指令情報(動き制御情報)を割り当て,文章データに加えて動作対象の動作指令情報が含まれたメールを宛先に発信するためのものであり,引用発明の「文章データ」及び「メール」は,それぞれ本願補正発明の「テキスト」及び「電子メール」に相当する。 また,引用発明には電子メール(メール)のデータフォーマットは記載されていないものの,引用発明においては,感情フレーズの先頭が検出される毎に,この感情フレーズに割り当てられた動作指令情報が検出されて動作対象の動きが変更されることから,動作指令情報の検出と動作対象の動き変更は,テキスト(文章データ)を処理する合間に行われるものであって,引用発明における動作指令情報は,テキストに含まれているといえる。 さらに,本願補正発明の「動作指令情報を相手情報又はテキストに含む電子メール」という文言は,「動作指令情報を相手情報に含む電子メール」と「動作指令情報をテキストに含む電子メール」のうちの少なくとも一方を意味すると認める。 よって,引用発明においてメーリングソフトに従った処理を行う「CPU」と,本願補正発明の「送信側のユーザーが選択した」「動作指令情報を相手情報又はテキストに含む電子メールを作成するメール作成手段」とは,「送信側」「が選択した前記動作指令情報を相手情報又はテキストに含む電子メールを作成するメール作成手段」である点において一致する。 引用発明のメーリングソフトは,電子メール(メール)を発信するメール作成モードと,メール受信画面の表示を行うメール受信モードに対応しているから,引用発明においてメーリングソフトに従った処理を行う「CPU」は,本願補正発明の「前記電子メールを送受信する送受信手段」に相当するといえる。 引用発明は,メーリングソフトに従って,受信メールに含まれる文章と,記憶手段(メモリ)に用意されたキャラクタデータに対応する動作対象(キャラクタ)とをメール受信画面に表示するとともに,朗読操作を受けると,送信側メーリング装置で感情フレーズに割り当てられた動作指令情報(動き制御情報)を検出し,検出された動作指令情報に応じて動作対象を動かすものであるから,引用発明においてメーリングソフトに従った処理を行う「CPU」と,本願補正発明の「前記送受信手段が前記電子メールを受信したときに前記電子メールに含まれる前記送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報を読み取り,前記記憶手段から前記複数の動作対象のうち受信側のユーザーが選択した動作対象,及び前記送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報に対応する前記動作パターンを読み出してその動作パターンに従って前記受信側のユーザーが選択した動作対象を動作させる制御手段」とは,「前記送受信手段が前記電子メールを受信したときに前記電子メールに含まれる前記送信側」「が選択した前記動作指令情報を読み取り,前記記憶手段から前記」「動作対象」「を読み出して」「前記」「動作対象を動作させる制御手段」である点で一致する。 そして,引用発明の「メーリング装置」は,「通信装置」である。 したがって,本願補正発明と引用発明は,以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「動作対象を記憶する記憶手段と, 送信側が選択した動作指令情報を相手情報又はテキストに含む電子メールを作成するメール作成手段と, 前記電子メールを送受信する送受信手段と, 前記送受信手段が前記電子メールを受信したときに前記電子メールに含まれる前記送信側が選択した前記動作指令情報を読み取り,前記記憶手段から前記動作対象を読み出して前記動作対象を動作させる制御手段とを備えたことを特徴とする通信装置。」である点。 <相違点1> 本願補正発明においては,「複数の」動作対象を記憶手段に記憶し,前記記憶手段から前記「複数の動作対象のうち受信側のユーザーが選択した」動作対象を読み出し,前記「受信側のユーザーが選択した」動作対象を動作させるのに対して,引用発明においては,記憶手段(メモリ)に記憶する動作対象(キャラクタ)が「複数」であり,前記記憶手段から読み出す動作対象が「複数の動作対象のうち受信側のユーザーが選択した」ものであり,動作させる動作対象が「受信側のユーザーが選択した」ものであるとは,記載されていない点。 <相違点2> 本願補正発明では,記憶手段に「複数の動作指令情報に対応した複数の動作パターン」を記憶し,電子メールを作成するときは送信側「のユーザー」が前記動作指令情報を選択し,電子メールを受信するときは前記電子メールに含まれる前記送信側「のユーザーが」選択した前記動作指令情報を読み取り,前記記憶手段から「前記送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報に対応する前記動作パターンを読み出してその動作パターンに従って」前記動作対象を動作させるのに対して,引用発明では,記憶手段に「複数の動作指令情報に対応した複数の動作パターン」を記憶することは記載されておらず,電子メールを作成するときに感情フレーズに割り当てる動作指令情報(動き制御情報)は,メーリングソフトに従った送信側のCPUが選択するものであり,電子メールを受信するときには前記電子メールに含まれる前記送信側「のユーザーが」選択した前記動作指令情報を読み取り,前記記憶手段から「前記送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報に対応する前記動作パターンを読み出してその動作パターンに従って」前記動作対象を動作させることは記載されていない点。 (4)当審の判断 各相違点について検討する。 <相違点1について> ディスプレイ上に動作対象(キャラクタ)を表示させつつ,電子メールに関連した処理を行う通信装置において,受信側の通信装置に予め複数の動作対象を記憶しておき,当該通信装置のユーザ,すなわち電子メールの受信者自身が,好みに応じて動作対象を選択できるようにすることは周知(例えば,特開2001-350756号公報の段落【0015】,【0043】,【0045】,【0113】?【0130】,特開2000-207313号公報の【0031】?【0032】,【0087】?【0088】,【0091】?【0092】,【0137】を参照。)であって,引用発明に周知技術を適用して,「複数の」動作対象を記憶手段に記憶し,前記記憶手段から前記「複数の動作対象のうち受信側のユーザーが選択した」動作対象を読み出し,前記「受信側のユーザーが選択した」動作対象を動作させるようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 <相違点2について> 本願補正発明における「動作パターン」の具体的内容については,請求項1,及び本願明細書の発明の詳細な説明のいずれにも記載されていないが,発明の詳細な説明の段落【0010】?【0011】には,「記憶部60から読み出されたキャラクタを動作させるためのキャラクタ動作データ(プログラムを含む)に基づいて画像を再生する画像再生部70と,画像再生部70により再生された画像や文字等を表示する表示部80とを備える。制御部40は,電子メールにメール本文であるテキストの他に,キャラクタの動作指令情報としての動作コードを含む場合,動作コードとテキストを分離し,テキストを表示部80に送り,動作コードに応じたキャラクタ動作データを記憶部60から読み出し,画像再生部70に送る」と記載されているから,本願補正発明における「動作パターン」は,具体的には「キャラクタを動作させるためのキャラクタ動作データ(プログラムを含む)」を意味するものと解される。 ところで,テキスト情報とともに画像制御内容指定情報を送受信する装置において,受信側の記憶装置に複数の画像制御内容指定情報に対応した複数の画像制御データを記憶し,送信する情報を作成するときは送信側のユーザーが前記画像制御内容指定情報を選択し,情報を受信するときは送られた情報に含まれる送信側のユーザーが選択した画像制御内容指定情報を読み取り,受信側記憶手段から送信側のユーザーが選択した画像制御内容指定情報に対応する画像制御データを読み出してその画像制御データに従ってアニメーションの表示を制御することは周知(例えば,特開2000-123191号公報の段落【0021】?【0048】には,送信側装置においてアニメーションタグを含むテキストを編集してデータを送信し,該データを受信した装置において,アニメーションタグで示される,記憶装置に予め格納されたアニメーションデータ(アニメーションに必要なデータ)を選択してアニメーションの表示制御を行うことが開示されており,特開2002-24143号公報の段落【0053】?【0067】には,メール送信者はメール本文(テキスト)にモーション識別子(ID)を添付して送信し,受信側ではモーションIDに基づいてデータ蓄積部に蓄積されたキャラクタとキャラクタのモーションとの組み合わせデータを選択してアニメーション表示することが開示されている。)であるから,引用発明において,記憶手段に「複数の動作指令情報に対応した複数の動作パターン」を記憶し,電子メールを作成するときは送信側「のユーザー」が前記動作指令情報を選択し,電子メールを受信するときは前記電子メールに含まれる前記送信側「のユーザーが」選択した前記動作指令情報を読み取り,前記記憶手段から「前記送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報に対応する前記動作パターンを読み出してその動作パターンに従って」動作対象を動作させるようにすることは,当業者が容易になし得たことである。 そして,本願補正発明のように構成したことによる効果も,上記引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。 したがって,本願補正発明は,上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (5)補正却下の決定についてのむすび 本願補正発明は,上記「(4)当審の判断」で示したとおり,特許出願の際独立して特許を受けることができないから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明 平成18年8月29日付け手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成17年6月20日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「複数の動作対象,及び複数の動作指令情報に対応した複数の動作パターンを記憶する記憶手段と, 前記動作指令情報を含む電子メールを作成するメール作成手段と, 前記電子メールを送受信する送受信手段と, 前記送受信手段が前記電子メールを受信したときに前記電子メールに含まれる前記動作指令情報を読み取り,前記記憶手段から前記複数の動作対象のうちユーザーが選択した動作対象,及び前記動作指令情報に対応する前記動作パターンを読み出してその動作パターンに従って前記ユーザーが選択した動作対象を動作させる制御手段を備えたことを特徴とする通信装置。」 4.当審の判断 (1)引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物に関する記載事項は,上記「2.(2)引用刊行物」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は,上記「2.(1)本件補正の内容」で検討した本願補正発明において,「前記動作指令情報を含む電子メール」を「送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報を相手情報又はテキストに含む電子メール」とした限定,「前記電子メールに含まれる前記動作指令情報」を「前記電子メールに含まれる前記送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報」とした限定,「前記複数の動作対象のうちユーザーが選択した動作対象」を「前記複数の動作対象のうち受信側のユーザーが選択した動作対象」とした限定,「前記動作指令情報に対応する」を「前記送信側のユーザーが選択した前記動作指令情報に対応する」とした限定,「前記ユーザーが選択した動作対象」を「前記受信側のユーザーが選択した動作対象」とした限定を,すべて省いたものである。 そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,上記「2.(4)当審の判断」に記載したとおり,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,他の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-09 |
結審通知日 | 2009-09-15 |
審決日 | 2009-09-28 |
出願番号 | 特願2002-115135(P2002-115135) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 須藤 竜也 |
特許庁審判長 |
江口 能弘 |
特許庁審判官 |
近藤 聡 圓道 浩史 |
発明の名称 | 通信装置 |
代理人 | 平田 忠雄 |