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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1206977
審判番号 不服2007-1534  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-17 
確定日 2009-11-12 
事件の表示 特願2002-124570「パラバン酸骨格を有する有機重合体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 6日出願公開、特開2003-313244〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年4月25日に特許出願され、平成18年8月7日付けで拒絶理由が通知され、同年10月20日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年11月13日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成19年1月17日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。

第2.本件審判請求について

1.本願発明
本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年10月20日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項2】一般式(3)
【化4】


(R_(1)?R_(4)は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表す。但し、水素原子またはメチル基の一部または全部が、ヒドロキシ基で置換されてもよい。Y_(1)、Y_(2)は、それぞれ独立して、O、S、NH、またはNCH_(3)を表す。c、dは、それぞれ独立して、2?6の整数を表す。g、hは、それぞれ独立して、1?3の整数を表す。)で表される化合物。」

2.原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶の理由1の概要は、平成18年8月7日付けの拒絶理由通知及び同年11月13日付けの拒絶査定からみて、以下のとおりである。

「本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。



請求項1?7について
引用文献1: 特開昭47-38967号公報 」

3.引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の記載がある。
ア: 「一般式II:

(II)
〔式中R_(3)及びR_(3)’はそれぞれ独立に水素原子、またはメチル基を表わし、R_(2)及びR_(2)’はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、酸素原子で中断されたアルキル基あるいはフェニル基、さもなければR_(2)とR_(3)あるいはR_(2)’と R_(3)’は一緒になってトリメチレン基、あるいはテトラメチレン基を表わし、m及びnはそれぞれ整数1?30を表わす。
そしてAは次の基:

(1)
(式中Zは5員あるいは6員、未置換あるいは置換のヘテロ環式環を形成するのに必要な2価の基を表わす。)を少なくとも1つ含む有機基を表わす。〕で示されるジヒドロキシ化合物を常法でアクリル酸および/あるいはメタクリル酸でエステル化させるか、あるいはアクリル酸エステルおよび/あるいはメタクリル酸エステルでエステル交換させることを特徴とする一般式I:

(式中R_(2)、R_(2)’,R_(3),R_(3)’,m,nおよびAは一般式IIに与えられている意味を表わし、R_(1)及びR_(1)’はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表わす。)で示されるN ヘテロ環式化合物のジアクリル酸エステル誘導体の製造方法。」 (特許請求の範囲)
イ: 「一般式Iで示されるヘテロ環式基中のZは好ましくは炭素原子及び水素原子だけを含むか、あるいは炭素原子、水素原子及び酸素原子を含む、それは例えば次式の基である:

(式中、R’、R”、R”’及びR””はそれぞれ独立に水素原子、あるいは例えばアルキル基、好ましくは炭素原子数1?4個の低級アルキル基、アルケニル基、好ましくは炭素原子数1?4個の低級アルキレン基、シクロアルキル基、あるいは場合により置換フェニル基、を表す)」(第2頁右上欄4?14行)
ウ:「一般式IIで示されるジヒドロキシ化合物は公知化合物であり、そして適当な触媒の存在で次の基:

(式中、Zは5員あるいは6員、未置換あるいは置換ヘテロ環式環を形成するのに必要な2価の基を表す)を少なくとも1個を含むN-ヘテロ環式化合物のNH-基に一般式IIIaあるいはIIIb

(式中、R_(2)とR_(3)あるいはR_(2)’とR_(3)’は一般式Iに与えられている意味を有する)で示されるアルケンオキシドを添加することにより製造できる。適当なアルケンオキシドとしては次のものがある:エテンオキシド、プロペンオキシド、(中略)。」(第2頁右下欄15行?第3頁左上欄16行)
エ:「さらに、パラバン酸の相応するジヒドロキシ化合物を挙げなければならない。」(第4頁右下欄9?10行)
オ:「製造実施例
実施例1
1,3-ビス-(β-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチルヒダントイン432.2g(2モル)、新しい蒸留メタクリル酸361.2g(4.2モル)、フェノチアジン0.1g、ベンゼン1200ml及び濃硫酸10mlからなる混合物を浴温度130℃で激しく攪拌し乍ら加熱すると、内部温度78℃になる。同時に共沸循環蒸留を開始し、それによって、冷却により分離されたベンゼンが還流してくるとき、反応混合物中に存在する水を反応混合物から除去し、分離する。5時間後に水48mlが分離され、そして18時間後に水70mlが除去される(理論値の97.2%)。それから反応混合物を室温で冷却し、そしてベンゼン溶液をまず硫酸アンモニウム5%を含む20%アンモニウム水溶液で洗滌し、次いで5%硫酸アンモニウム水溶液で洗滌する。有機層にヒドロキノン3.5g(完結点で予想される理論量に対応する0.5重量%)を添加し、そして水流ポンプによる真空下50?60℃でロータリー・エヴアポレーターで蒸発により濃縮する;続いて恒量になるまで0.2mmHgした55℃で乾燥する。淡黄色かつ透明な低粘性の樹脂62.1g(理論値の88.2%)がこのようにして得られる。」(第7頁左上欄9行?同頁右上欄15行)
カ:「実施例7
実施例4に示した方法に従つて、1,3-ビス-(β-ヒドロキシ-n-プロピル)-5,5-ジメチル-6-イソプロピル-5,6-ジヒドロウラシル123g(0.41モル)を濃硫酸3mlとフェノチアジン0.04gを使用して、ベンゼン300ml中でアクリル酸62g(0.861モル)と反応させる。
実施例9
実施例4と同様にして、1,1’-メチレン-ビス-〔3-(β-ヒドロキシ-n-プロピル)-5,5-ジメチル-ヒダントイン〕384.5g(1.0モル)をフェノチアジン0.08gの抑制作用下で触媒としてp-トルエンスルホン酸25gを使用してベンゼン1300ml中でアクリル酸151gでエステル化する。
実施例10
実施例1に記した様な方法によつて1,1’-メチレン-ビス-〔3-(β-ヒドロキシ-n-プロピル)-5,5-ジメチル-5,6-ジヒドロウラシル〕135.3g(0.328モル)をベンゼン400ml中においてメタクリル酸59.5gでエステル化する。
実施例11
実施例1に記した方法と同様にして2,2’-ビス-〔1-(β-ヒドロキシプロピル)-5,5-ジメチル-ヒダントイニル-3〕ジエチルエーテル118g(0.261モル)をベンゼン400mlでアクリル酸39.5g(0.548モル)とエステル化する。」(第9頁左上欄11行?第10頁右上欄10行)

4.引用発明及び本願発明との対比
4-1.引用文献1に記載された発明
引用文献1には、摘示事項アからみて、一般式(II)で示され、式中R_(2)、R_(3)、R_(2)’、R_(3)’が水素原子であり、n=1、m=1であり、Aが(1)式(式中Zは5員のヘテロ環を形成するのに必要な2価の基を表す)で示されるジヒドロキシ化合物が記載されている。これらの記載に包含されるジヒドロキシ化合物のうち、引用文献1に記載された発明として認めることができるジヒドロキシ化合物としては、少なくとも、引用文献1に、かかる化合物が明確に記載され、製造・合成することができる程度に記載されていることが必要である。こうした点から、引用文献1を検討する。
摘示事項オには、1,3-ビス-(β-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチルヒダントインとメタクリル酸との具体的な反応手順が記載されるとともに、その反応生成物が記載されており、かかる反応生成物は、摘示事項アにおける、Nヘテロ環式化合物のジアクリル酸エステル誘導体に相当することは明らかである。そして、反応生成物が具体的な収量をもって記載されていることから、1,3-ビス-(β-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチルヒダントインは明確に記載された具体的な化合物であるといえる。そして、かかる具体的な化合物は、摘示事項ウからみて、適当な触媒の存在で、N-ヘテロ環式化合物のNH-基にアルケンオキシドを添加することにより製造したものであると考えるのが自然である。してみると、1,3-ビス-(β-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチルヒダントイン、すなわち、上記摘示事項アにおける一般式(II)で示され、式中R_(2)、R_(3)、R_(2)’、R_(3)’が水素原子であり、n=1、m=1であり、Aが(1)式としてジメチルヒダントイン骨格で示されるジヒドロキシ化合物は、引用文献1に記載された発明として認めることができる化合物である。
そして、かかるジヒドロキシ化合物は、摘示事項イからみて、ヘテロ環式基中のZとして、ジアルキル置換のメチレン基(R’、R’’がメチル基)を選択し、5員のヘテロ環であるヒダントイン骨格を形成した場合に相当するが、Zとして5員のヘテロ環を形成するものとして、カルボニル基も記載されている。そして、かかるZとして、カルボニル基を選択した場合には、5員のヘテロ環としてパラバン酸を形成するものであるが、摘示事項エには、具体的な化合物名は記載されていないものの、「パラバン酸の相応するジヒドロキシ化合物」なる記載がある。また、摘示事項ウに記載された方法が、摘示事項イには、メチレン基とともに記載されたカルボニル基を選択した場合には適用できないとする根拠もない。したがって、引用文献1には、Zとして5員のヘテロ環を形成するものとして、ジメチルヒダントイン骨格とパラバン酸骨格とがいずれも記載され、両者に共通する製造方法も記載されていることから、ジメチルヒダントイン骨格で示されるジヒドロキシ化合物について、上記のとおり引用文献1に記載された発明であると認められる以上、パラバン酸骨格で示されるジヒドロキシ化合物についても、同様に取り扱うのが自然である。
してみると、引用文献1には、「一般式IIにおけるAがパラバン酸骨格、R_(2)、R_(3)、R_(2)’、R_(3)’が水素原子、n=1、m=1で表される化合物であるN,N’-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-パラバン酸」なる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4-2.本願発明と引用発明との対比
上記4-1.のとおり、本願発明(以下、「前者」という。)と引用発明(以下、「後者」という。)とは相違しないから、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。

4-3.審判請求書における審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書において、
「引用文献1にはN-ヘテロ環式化合物のNH-基に、エテンオキシド等のアルケンオキシドを添加することにより製造できることが記載されております。
しかしながら、パラバン酸骨格に関する詳細な説明もエテンオキシド等をN-ヘテロ環式化合物のNH-基に反応させる場合の反応条件等(触媒、反応温度、溶剤他)の詳細な説明についても一切記載がない。また合成もされていない。
一方、反応箇所であるNH-基について、本発明のパラバン酸骨格と引用文献1の代表的な骨格であるヒダントイン骨格を比較してみますと、文献「COMPERHENSIVE HETEROCYCLIC CHEMISTRY, VOL5,428ページ,1984年,Pergamon Press Ltd出版」によれば


であり、明らかに酸解離度Kaが異なることが報告されおり、当然エテンオキシド等との反応性も異なってくる事は容易に類推される。
従って、当業者であろうとも、「N-ヘテロ環式化合物のNH-基にアルケンオキシドを添加する」しか開示がない引用文献1から、本発明の化合物を容易に製造できる可能性は低い。
そうであるならば、引用文献1に、一般式(3)示される化合物のうち、c=d=2、g=h=1、Y_(1)、Y_(2):Oであるジヒドロキシ化合物は記載されておらず、パラバン酸骨格を分子内に有するアクリル酸エステル誘導体(一般式(2))も同様に記載されていないと判断される。
以上の通り、引用文献1と本願発明とは似て非なる発明であり、本願発明は開示も示唆もされていず、かつ、当業者といえども引用文献1の開示から本願発明に容易に到達し得るものではないと思料いたします。」
と述べている。
しかしながら、摘示事項カからみて、引用文献1には、ヒダントイン骨格やウラシル骨格を有する化合物について、反応条件を含めて具体的実施例が記載されており、パラバン酸骨格を有する化合物の具体的実施例がないとしても、かかる記載に基づいて、ヒダントイン骨格及びウラシル骨格とともに記載されているパラバン酸骨格について、かかる骨格を有する化合物の場合の反応条件を定めることに格別の困難性があるとすることはできない。また、審判請求人は、「パラバン酸骨格におけるNH-基と引用文献1の代表的な骨格であるヒダントイン骨格におけるNH-基との反応性が異なり、エテンオキシド等との反応性も異なってくることは容易に類推される」と主張するが、かかる反応性の違いが、パラバン酸骨格中のNH-基とアルケンオキシドとの反応にどのように影響するものであるのか具体的に示していないことから、かかる主張を、パラバン酸骨格中のNH-基との反応にアルケンオキシドを適用できないとする根拠とすることはできないので、審判請求人の主張は採用し得ない。

5.まとめ
上記のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第3.むすび
以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、原査定の拒絶の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-09 
結審通知日 2009-09-15 
審決日 2009-09-28 
出願番号 特願2002-124570(P2002-124570)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08F)
P 1 8・ 113- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辰己 雅夫久保田 英樹  
特許庁審判長 渡辺 仁
特許庁審判官 一色 由美子
前田 孝泰
発明の名称 パラバン酸骨格を有する有機重合体  
代理人 佐藤 浩司  
代理人 速水 進治  
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