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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1206993 |
審判番号 | 不服2007-9845 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-05 |
確定日 | 2009-11-12 |
事件の表示 | 特願2002-111899号「セラミック被覆医療用器具」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月28日出願公開、特開2003-305047号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成14年4月15日の出願であって、平成19年2月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、平成18年12月28日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「生体と直接接触する部位を有する金属製の医療用器具であって、少なくとも生体と直接接触する部位については、その表面を、抵抗率ρが10^(5) Ω・m 以上の絶縁性のAl,BおよびSiの窒化物、炭化物または酸化物のうちから選んだ少なくとも一種からなるセラミック膜でドライプレーティングによって被覆したことを特徴とするセラミック被覆医療用器具。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特公平3-52287号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 a.「1 挿入部の先端に鉗子部を設けるとともに挿入部の手元側に操作部を設け、かつ前記鉗子部には一対の鉗子片を開閉自在に取り付けるとともにこの鉗子片を前記操作部に遠隔的にて開閉操作することができるように構成した内視鏡用鉗子において、前記一対の鉗子片の少なくとも一方の鉗子片に低温焼成セラミツクコート剤による被膜を形成することにより構成したことを特徴とする内視鏡用鉗子。」(【特許請求の範囲】) b.「本発明は開閉する鉗子片により、例えば体腔内の組織を採取する内視鏡用鉗子に関し、特に鉗子片にセラミツク被膜を施すことにより、組織採取に際する切れ味の向上とともにその耐久性をも向上された内視鏡用鉗子の提供を目的とするものである。」(1ページ1欄16行?21行) c.「しかして、かゝる構成から成る内視鏡用鉗子の使用は前記挿入部2の操作部11において、操作体13を前後にスライド操作することにより挿入部2内に挿通した操作ワイヤーを押し引きして挿入部2の先端に設けた鉗子部10の鉗子片5,6をリンク板7,8を介して開閉操作するとともにこの開閉操作により、体腔内における組織採取作業等を実施する。」(1ページ2欄20行?2ページ3欄6行) d.「以下には本発明にかゝる内視鏡用鉗子の具体的な実施例を図面とともに説明する。 しかして、第1図示の構成から成る内視鏡用鉗子1において、鉗子部10の一対の鉗子片5,6の構成は第2図示の構成と同一に構成した場合を示すのが第3図示の第1実施例で、かゝる実施例は第2図示の構成から成る一対の鉗子片5,6のうちの刃部14を備える一方の鉗子片5の内外側表面にセラミツク被膜16を被覆形成したものである。 これに換えて、第4図は本発明の第2実施例を示すもので、かゝる実施例の場合には、一対の鉗子片5,6の周縁部先端をそれぞれ尖鋭に研磨し、鋭利な刃部14,17は設けることにより構成した鉗子片5,6の両者の内外側表面にセラミツク被膜16を被覆形成したものである。 さて、前記鉗子片5,6の形成素材としては、前記刃部14,15,17における硬度および耐久性からマルテンサイト系のステンレス材が使用されている。ちなみにマルテンサイト系のステンレスを熱処理することにより得られる硬度はHv500?600程度である。 加えて、現在一般の切削工具へのセラミツクコーテイングにあたつては、アルミナ(Al_(2)O_(3))、窒化チタン(TiN)、炭化チタン(TiC)等が施されており、特に超硬合金切削工具へのセラミツクコーテイングは化学蒸着法(CVD)が採用されるとともにハイス等の炭素鋼の場合は、基材の温度を低くすることが可能なイオンプレーテイング等の物理蒸着法(PVD)が採用され、コーテイング材としてはTiNとTiCが主に使用されている。」(2ページ4欄16行?3ページ5欄3行) e.「したがつて、本発明の第3,4図示の実施例の鉗子片5,6に対するセラミツク被膜16の被覆形成に当つては、前記切削工具へのセラミツクコーテイング方法、例えばイオンプレーテイング等の物理蒸着法によつて形成することができるとともに、例えばTiNを1?4μmの膜厚でコーテイングすることによりHv1500以上の硬度を有するセラミツク被膜16を形成することができる。 鉗子片5,6のセラミツク被膜16の形成に当つては、前記実施例に加えて、低温焼成セラミツクコーテイング剤を用いて形成することも可能である。」(3ページ5欄11行?22行) これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、 「体腔内の組織を採取する鉗子片を有する、形成素材としてステンレス材が使用されている内視鏡用鉗子であって、鉗子片の内外側表面を、アルミナからなるセラミック被膜で化学蒸着法(CVD)または物理蒸着法(PVD)によって被覆したセラミック被膜で被覆した内視鏡用鉗子。」(以下、「引用発明」という。) が記載されている。 3.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「形成素材としてステンレス材が使用されている」は、文言の意味、機能又は構成等からみて本願発明の「金属製の」に相当し、以下同様に、「内視鏡用鉗子」は「医療用器具」に、「セラミック被膜」は「セラミック膜」に、「化学蒸着法(CVD)または物理蒸着法(PVD)」は「ドライプレーティング」に、「セラミック被膜で被覆した」は「セラミック被覆」に、それぞれ相当する。 体腔内の組織を採取する鉗子片は、生体と直接接触する部位であるといえる。したがって、引用発明の「体腔内の組織を採取する鉗子片を有する、形成素材としてステンレス材が使用されている内視鏡用鉗子であって、鉗子片の内外側表面を」は、本願発明の「生体と直接接触する部位を有する金属製の医療用器具であって、少なくとも生体と直接接触する部位については、その表面を」に相当する。 アルミナは、Alの酸化物であり、絶縁性を有している。したがって、引用発明の「アルミナ」は、本願発明の「絶縁性のAl,BおよびSiの窒化物、炭化物または酸化物のうちから選んだ少なくとも一種」に相当する。 してみると、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、 「生体と直接接触する部位を有する金属製の医療用器具であって、少なくとも生体と直接接触する部位については、その表面を、絶縁性のAl,BおよびSiの窒化物、炭化物または酸化物のうちから選んだ少なくとも一種からなるセラミック膜でドライプレーティングによって被覆したセラミック被覆医療用器具。」 である点で一致し、次の点で相違する(かっこ内は対応する引用発明の用語を示す。)。 相違点:本願発明は、セラミック膜の抵抗率ρが10^(5) Ω・m 以上であるのに対して、引用発明は、セラミック膜(セラミック被膜)の抵抗率の範囲について限定されていない点。 4.当審の判断 次に、上記相違点について検討する。 一般に、室温における抵抗率が10^(14) Ω・cm 以上である「アルミナを主成分とするセラミック」を用いることは、本願出願前周知の事項(例えば、浜野健也,「ファインセラミックスハンドブック」,株式会社朝倉書店,1984年12月20日,p.650参照。)であり、また、本願発明において、セラミック膜の抵抗率ρが10^(5) Ω・m 以上であることに、臨界的意義があるとはいえない。 したがって、相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に基いて当業者が容易に想到できたものである。 そして、本願発明の効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものとはいえない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-03 |
結審通知日 | 2009-09-08 |
審決日 | 2009-09-25 |
出願番号 | 特願2002-111899(P2002-111899) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮部 愛子 |
特許庁審判長 |
亀丸 広司 |
特許庁審判官 |
豊永 茂弘 吉澤 秀明 |
発明の名称 | セラミック被覆医療用器具 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 杉村 興作 |
代理人 | 来間 清志 |
代理人 | 澤田 達也 |