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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01B |
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管理番号 | 1207016 |
審判番号 | 不服2007-23117 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-08-23 |
確定日 | 2009-11-12 |
事件の表示 | 特願2002- 44449「被検体の外観・形状検査方法とその装置、及び、被検体の外観・形状検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月27日出願公開、特開2003-240521〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年2月21日の出願であって、平成18年9月21日付けで明細書又は図面の補正がなされ、平成19年7月18日付け(同月24日送達)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月23日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年9月21日付けで明細書又は図面の手続補正がなされたものである。 第2 平成19年9月21日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容・補正の適否 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を補正前の 「被検体の検査対象面にスリット光を照射する投光手段と、上記スリット光の照射部を撮影するカラーエリアカメラとを備えた撮影手段と、上記撮影手段と被検体とを相対的に移動させる手段とを備え、上記撮影手段と被検体とを相対的に移動させて上記被検体を撮影し、この撮影されたスリット像の位置の座標から上記被検体の形状を検出するとともに、上記スリット像のライン幅と輝度データとから上記被検体の濃淡を検出して、上記被検体の形状及び外観を同時に検査するようにしたことを特徴とする被検体の外観・形状検査装置。」 から、補正後の 「被検体の検査対象面に白色のスリット光を照射する投光手段と上記スリット光の照射部を撮影するカラーエリアカメラとを備えた撮影手段と、上記撮影手段と被検体とを相対的に移動させる手段とを備え、上記撮影手段と被検体とを相対的に移動させて上記被検体を撮影し、この白色のスリット光とカラーエリアカメラとを用いて撮影された上記被検体のスリット像の位置の座標から上記被検体の形状を検出するとともに、上記スリット像の輝度データから上記被検体の色彩を検出して、上記被検体の形状及び外観を同時に検査するようにしたことを特徴とする被検体の外観・形状検査装置。」に補正する補正事項を含むものである。 なお、下線は補正箇所を明示するために請求人が付したものである。 該補正により、補正前の「スリット像のライン幅と輝度データとから上記被検体の濃淡を検出」は、「スリット像の輝度データから上記被検体の色彩を検出」に変更されることになる。 その結果、補正前の「スリット像のライン幅と輝度データとから上記被検体の濃淡を検出」では、被検体の濃淡をスリット像のライン幅と輝度データとから検出するのに対し、補正後の「スリット像の輝度データから上記被検体の色彩を検出」では、被検体の色彩を専らスリット像の輝度データから検出することになる。 すなわち、被検体の検出対象を「濃淡」から「色彩」に限定するに当たり、検出に用いられるものが、スリット像のライン幅と輝度データから、スリット像の輝度データに変更したことになるから、該補正は特許請求の範囲を減縮することを目的とする補正であるとはいえない。 また、該補正が請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に掲げる事項のいずれを目的とするものでもないから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 以上、検討したとおり、本件補正は却下すべきものであるが、念のために独立特許要件(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)についても検討しておく。 2.本願補正発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 被検体の検査対象面に白色のスリット光を照射する投光手段と上記スリット光の照射部を撮影するカラーエリアカメラとを備えた撮影手段と、上記撮影手段と被検体とを相対的に移動させる手段とを備え、上記撮影手段と被検体とを相対的に移動させて上記被検体を撮影し、この白色のスリット光とカラーエリアカメラとを用いて撮影された上記被検体のスリット像の位置の座標から上記被検体の形状を検出するとともに、上記スリット像の輝度データから上記被検体の色彩を検出して、上記被検体の形状及び外観を同時に検査するようにしたことを特徴とする被検体の外観・形状検査装置。」 3.刊行物1に記載された発明 原審で引用され本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-249012号公報(以下、「刊行物1」という。)は、「被検体の外観形状検査方法及び装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の記載がある。 a 「【0020】請求項8記載の発明は、被検体に第1のスリット光を照射する第1投光手段と、前記第1のスリット光により照射したライン部分を撮像し外観データを入手する第1撮像手段と、被検体の前記ライン部分に第2のスリット光を照射する第2投光手段と、前記第2のスリット光により照射した同一ライン部分を撮像し形状データを入手する第2撮像手段と、前記同一ライン部分の前記外観データと前記形状データとから被検体の外観形状の良否を判定する判定手段とを備えた被検体の外観形状検査装置である。 【0021】判定手段が被検体の同一ライン部分の外観データと形状データとから被検体の外観形状の良否を判定するので、両データのそれぞれの判定の弱い点を互いに補完し合うとともに、同一ライン部分の外観データと形状データとを同時に入手できるので、両データを容易につき合わせることができ、一方のデータで判定が微妙な点も他方のデータと照合することで明瞭な判定がつく場合があり、判定精度を大幅に向上させることができる。」 b 「【0026】 【発明の実施の形態】以下本発明に係る一実施の形態について図1ないし図5に基づき説明する。本実施の形態に係る外観形状検査装置1は、タイヤTの外観及び形状を同時に検査する装置であり、特にタイヤTの内面の良否を判定するものである。」 c 「【0033】ラインカメラ4の上にエリア投光器7が取り付けられている。エリア投光器7は、波長が780nmのレーザ光を投光するレーザ投光器であり、前記反射ミラー8に向けてレーザ光をスリット状に投光する姿勢でラインカメラ4の上に取り付けられている。」 d 「【0036】該ライン投光器6は、タイヤTの上側サイドウオールの内面近くに同内面に沿って配置され、ライン投光器6のLEDから上方に出射した単色光は上側サイドウオールの内面の前記レーザ光が照射される同じライン部分Lに帯状に照射され、同ライン部分Lで反射された単色光のうち前記反射ミラー8で反射したスリット光がラインカメラ4に入射されて撮像が行われる。」 e 「【0041】本1組の撮像機構におけるライン投光器6とエリア投光器7が照射するタイヤTの内面のライン部分Lは、タイヤTの上側サイドウオールの内面であり、この上側サイドウオールの内面におけるライン部分LをタイヤTを回転させることで連続的に移動させて全周に亘ってラインカメラ4とエリアカメラ5により撮像する。」 f 「【0043】ラインカメラ4により回転するタイヤTの内面を連続的に撮像して入手されたデータは白黒の外観データであり、この外観データからタイヤTの表面の外観画像が白黒の濃淡画像で再構成される。したがって外観画像からタイヤTの表面の変色や汚れ、しみなどが判別できる。 【0044】一方エリアカメラ5は、回転するタイヤTの内面のライン部分Lを所定タイミングで順次斜め45度より撮像し、スリット光によってライン部分Lに浮かび上がったタイヤTの表面の稜線を形状データとして捕捉し、この形状データをタイヤ断面方向の形状データに座標変換するとともに、タイヤ1周分の形状データを収集してタイヤTの3次元的な形状画像を再構成する。」 g 「【0048】そしてコンピュータ10は、前記ライン投光器6及びエリア投光器7の投光を制御する投光制御手段18、ディスプレイ21に画像表示させる画像処理手段17を備えるとともに、前記回転テーブル2を回転させるモータ22を駆動制御するモータ制御手段19等を有する。」 h 「【0052】そしてタイヤTの内面の同一ライン部分Lにライン投光器6とエリア投光器7によりそれぞれ第1スリット光、第2スリット光を照射し(ステップ3)、この第1スリット光、第2スリット光により互いに同一ライン部分Lをラインカメラ4とエリアカメラ5が同時に撮像する(ステップ4)。なおタイヤTの外観を撮像し外観データを得るカメラはラインカメラでなく、エリアカメラであってもよい。」 i 「【0066】なお前記ラインカメラ4にカラーラインカメラを用いることができ、カラーラインカメラにより被検体の外観データがカラーデータで入手でき、カラーの外観画像によりタイヤTの良否判定がし易くなる。」 ・上記記載c、d、hから、 タイヤTの内面にスリット光を照射するライン投光器6、エリア投光器7と上記スリット光の同一ライン部分Lを撮像するラインカメラ4、エリアカメラ5を備えた撮像機構、が読みとれる。 上記記載iのラインカメラ4にカラーラインカメラを用いて外観データとしてカラーデータを入手する旨の記載を勘案すると、ラインカメラ4としてカラーラインカメラ4を用いる構成を読み取ることができる。 これらのことを勘案すると、上記記載c、d、h、iから、 (1)タイヤTの内面にスリット光を照射するライン投光器6、エリア投光器7と上記スリット光の同一ライン部分Lを撮像するカラーラインカメラ4、エリアカメラ5を備えた撮像機構、が読みとれる。 ・上記記載e、gから、 (2)撮像機構とタイヤTとを相対的に移動させる回転テーブル2,モータ22、及び、 (3)撮像機構とタイヤTとを相対的に移動させてタイヤTを撮像すること、が読みとれる。 ・上記記載fにおいて、「稜線を形状データとして捕捉」することは、具体的には稜線の位置座標値から稜線の形状を捕捉することを意味するものと解されるから、 上記記載fから、 (4)スリット光とエリアカメラ5とを用いて撮影されたタイヤTの表面の稜線の位置座標値からタイヤTの形状を捕捉すること、が読みとれる。 ・上記記載iにおいて、カラーラインカメラにより被検体の外観データがカラーデータで入手できるとは、上記(1)も勘案すると、スリット光の同一ライン部分Lをカラーラインカメラ4で撮影した輝度データからタイヤTのカラーデータを検出することを意味すると解される。 したがって、上記記載c、d、h、iから (5)スリット光の同一ライン部分Lをカラーラインカメラ4で撮影した輝度データからタイヤTのカラーデータを検出すること、が読みとれる。 ・上記記載bから、 (6)タイヤTの外観及び形状を同時に検査するタイヤTの外観形状検査装置、が読みとれる。 以上のことから、刊行物1には次の発明が記載されているものと認められる。 (刊行物1に記載された発明) 「タイヤTの内面にスリット光を照射するライン投光器6、エリア投光器7と上記スリット光の同一ライン部分Lを撮像するカラーラインカメラ4、エリアカメラ5を備えた撮像機構と、撮像機構とタイヤTとを相対的に移動させる回転テーブル2,モータ22とを備え、上記撮像機構とタイヤTとを相対的に移動させてタイヤTを撮像し、このスリット光とエリアカメラ5とを用いて撮影されたタイヤTの表面の稜線の位置座標値からタイヤTの形状を捕捉するとともに、上記スリット光の同一ライン部分Lをカラーラインカメラ4で撮影した輝度データからタイヤTのカラーデータを検出して、タイヤTの外観及び形状を同時に検査するようにしたことを特徴とするタイヤTの外観形状検査装置。」(以下「刊行物1に記載された発明」という。) 4.刊行物2に記載された発明 同じく原審で引用され本願出願前に頒布された刊行物である特表平11-509928号公報(以下、「刊行物2」という。)は、物体表面をスキャニングして物体表面の位置及びカラーを検出する装置(特に、次の記載j参照。)に関し、図面とともに以下の記載がある。 j 「23.上記スキャニング手段が、物体の表面から位置およびカラーのデータを続けて取り込めるよう操作できることを特徴とする請求の範囲第10項から第13項および第15項から第22項のいずれかに記載のスキャニング装置。」(第4頁【特許請求の範囲】の欄) k 「プローブ3はストライプ8を供給し、ストライプはターンテーブル上に置かれた物体9の上に投影される。」(第22頁下から3行?下から2行) l 「図3a;3b;3c;3dにはプローブ3の1つの実施例が記述される。・・・・・レンズ集合体24は高解像度CCDカメラ25の上にイメージの焦点を合わせるのに使用される。・・・・・表面のカラーの強度スケール評価は、高解像度CCDカメラ25上に結像される各ポイントにおける反射光レベルを記録して得られてもよい。・・・・・表面のカラーのカラー評価はカラーCCDアレイから成るカラーカメラ29によって得ることもできる。」(第23頁第23行?第24頁第14行) m 「ストライプ発生器22が白色光を発生するプローブ3において、はカラーと位置が同期して捕捉できる」(第26頁第8行?第9行) n 「この発明のスコープの中には種々の変形が有り得る。たとえば:・・・1つのカメラをカラーと位置センサーの両方に使用してもよい。」(第60頁第11行?第13行) 上記記載j、k、lから、ストライプ発生器22によりストライプ光を物体の上に投影し、高解像度CCDカメラ25とカラーカメラ29により物体表面の位置及びカラーを検出するスキャニング装置、が読みとれ、かつ、上記記載mを加味すると、ストライプ光を白色とすることにより位置とカラーを同期して捕捉することが読み取れる。 また、上記記載nから、高解像度CCDカメラ25とカラーカメラ29に換えてひとつのカメラによりカラーと位置の両方を検出することが読みとれ、該ひとつのカメラは、物体表面に投影されたストライプ光の位置とカラーの両方を検出するものであるから、カラーエリアカメラであることは明らかである。 以上のことから、刊行物2には次の発明が記載されているものと認められる。 「白色のストライプ光とひとつのカラーエリアカメラにより物体表面の位置及びカラーを検出するようにしたスキャニング装置」(以下「刊行物2に記載された発明」という。) 5.対比 本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、 イ.刊行物1に記載された発明における 「タイヤT」、「内面」、「同一ライン部分L」、「撮像機構」、「相対的に移動させる回転テーブル2,モータ22」、「表面の稜線の位置座標値」、「捕捉」、「カラーデータ」は、 本願補正発明における 「被検体」、「検査対象面」、「照射部」、「撮影手段」、「相対的に移動させる手段」、「スリット像の位置の座標」、「検出」、「色彩」に相当する。 ロ.刊行物1に記載された発明における「ライン投光器6、エリア投光器7」も本願補正発明における「投光手段」も、ともに「投光手段」である点で共通する。 ハ.刊行物1に記載された発明における「スリット光」も本願補正発明における「白色のスリット光」も、ともに「スリット光」である点で共通する。 ニ.刊行物1に記載された発明における「カラーラインカメラ4、エリアカメラ5」も本願補正発明における「カラーエリアカメラ」も、ともに「カメラ」である点で共通する。 ホ.刊行物1に記載された発明における「スリット光の同一ライン部分Lをカラーラインカメラ4で撮影した輝度データ」も本願補正発明における「スリット像の輝度データ」も、ともに「スリット光の照射部を撮影した輝度データ」である点で共通する。 したがって、両者は、 (一致点) 「被検体の検査対象面にスリット光を照射する投光手段と上記スリット光の照射部を撮影するカメラとを備えた撮影手段と、上記撮影手段と被検体とを相対的に移動させる手段とを備え、上記撮影手段と被検体とを相対的に移動させて上記被検体を撮影し、このスリット光とカメラとを用いて撮影された上記被検体のスリット像の位置の座標から上記被検体の形状を検出するとともに、上記スリット光の照射部を撮影した輝度データから上記被検体の色彩を検出して、上記被検体の形状及び外観を検査するようにしたことを特徴とする被検体の外観・形状検査装置。」 で一致し、以下の点で相違している。 (相違点) 相違点1:「カメラ」、「投光手段」、「スリット光の照射部を撮影した輝度データ」について、 本願補正発明では、カメラはひとつの「カラーエリアカメラ」であり、それに伴い投光手段もひとつの「投光手段」であり、スリット光の照射部を撮影した輝度データも「スリット像の輝度データ」であるのに対し、刊行物1に記載された発明では、カメラは「カラーラインカメラ4、エリアカメラ5」で構成されており、それに対応して投光手段も「ライン投光器6、エリア投光器7」で構成されており、スリット光の照射部を撮影した輝度データも「スリット光の同一ライン部分Lをカラーラインカメラ4で撮影した輝度データ」である点。 相違点2:「スリット光」について、 本願補正発明では、スリット光は「白色」であるのに対し、刊行物1に記載された発明では、カラーラインカメラ4に対するスリット光の色について明示されていない点。 6.当審の判断 相違点1について 刊行物2には、上記「4」のとおり、次の発明が記載されている。 白色のストライプ光とひとつのカラーエリアカメラにより物体表面の位置及びカラーを検出するようにしたスキャニング装置。 刊行物1に記載された発明も刊行物2に記載された発明も、共に被検体表面の位置の座標及び色彩を検出することを目的とした装置である点で共通するから、刊行物2に記載された発明が備える構成を刊行物1に記載された発明に適用し、カメラをひとつの「カラーエリアカメラ」とし、それに伴い投光手段もひとつの「投光手段」に変更し、スリット光の照射部を撮影した輝度データも「スリット像の輝度データ」として上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 相違点2について 刊行物2に記載された発明は白色のストライプ光とひとつのカラーエリアカメラを用いるものであるから、上記相違点1で説示したように、刊行物1に記載された発明において刊行物2に記載された発明を適用してカメラをひとつのカラーエリアカメラに変更することに伴い、カラーエリアカメラに対するスリット光として白色のものを採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本願補正発明の効果も、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 7.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に掲げる事項のいずれを目的とするものでもないから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものであり、仮に、本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認めた場合においても、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(本願補正発明)は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 新規事項追加禁止要件違反(特許法第17条の2第3項)について 1.平成18年9月21日付け手続補正(以下、「補正1」という。)の内容 補正1は、特許請求の範囲の請求項2ないし4を削除し、請求項1を補正前の 「【請求項1】 被検体の検査対象面にスリット光を照射する投光手段と上記スリット光の照射部を撮影するエリアカメラとを備えた撮影手段と被検体とを相対的に移動させて上記被検体を撮影し、この撮影されたエリアカメラの画素データから上記被検体の座標と輝度とを算出して上記被検体の形状と濃淡とを検出し、上記被検体の形状及び外観を同時に検査するようにしたことを特徴とする被検体の外観・形状検査方法。」 から、補正後の 「被検体の検査対象面にスリット光を照射する投光手段と、上記スリット光の照射部を撮影するカラーエリアカメラとを備えた撮影手段と、上記撮影手段と被検体とを相対的に移動させる手段とを備え、上記撮影手段と被検体とを相対的に移動させて上記被検体を撮影し、この撮影されたスリット像の位置の座標から上記被検体の形状を検出するとともに、上記スリット像のライン幅と輝度データとから上記被検体の濃淡を検出して、上記被検体の形状及び外観を同時に検査するようにしたことを特徴とする被検体の外観・形状検査装置。」に補正するとともに、それに整合させて本願明細書の段落【0005】を補正する補正事項を含むものである。 なお、下線は補正箇所を明示するために請求人が付したものである。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、補正1は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものである。 3.当審の判断 補正1により、特許請求の範囲の請求項1及び発明の詳細な説明の段落【0005】において「スリット像のライン幅と輝度データとから上記被検体の濃淡を検出」との技術事項が追加されることになる。 そこで、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の記載を検討すると、上記技術事項に関する記載は当初明細書等の段落【0005】に限られる。 そして、段落【0005】には、「照射部によごれや変色などのように色がタイヤの地の色と異なる箇所が含まれている場合には、タイヤTに照射する光の波長分布が広くなると上記スリット像Sのライン幅が一様でなく」と記載されており、この記載からみて、被検体の照射部に地の色と異なる色の箇所が含まれている場合に光の波長分布が広くなるとスリット像のライン幅が一様でなくなるということについては当初明細書等に記載されているということができる。 しかしながら、スリット像のライン幅と輝度データとから被検体の濃淡を検出するとの技術事項については、上記段落【0005】を含め当初明細書等には一切記載されておらず、これを示唆する記載も存在しない。 したがって、当該技術事項を追加する補正1は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。 よって、補正1は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえない。 4.むすび 以上のとおり、補正1(平成18年9月21日付けの手続補正)は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-03 |
結審通知日 | 2009-09-08 |
審決日 | 2009-09-28 |
出願番号 | 特願2002-44449(P2002-44449) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(G01B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小野寺 麻美子 |
特許庁審判長 |
下中 義之 |
特許庁審判官 |
飯野 茂 松下 公一 |
発明の名称 | 被検体の外観・形状検査方法とその装置、及び、被検体の外観・形状検出装置 |
代理人 | 宮園 純一 |