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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1207118
審判番号 不服2007-32134  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-29 
確定日 2009-11-12 
事件の表示 特願2003-424667「遊技媒体計数装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月 7日出願公開、特開2005-177258〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成15年12月22日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成19年9月25日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、同年11月29日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月14日に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第二.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年12月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は、次のとおりである。
「 遊技の過程で<生じた遊技媒体の増減情報を記録可能とされて>遊技者が携帯可能<とされた>遊技結果記録媒体に記録された遊技媒体数を読み出すための読出手段と、
遊技によって獲得された遊技媒体を計数するための計数手段と、
前記読出手段で読み出された遊技媒体数と前記計数手段で計数された遊技媒体数とを比較する比較手段と、
該比較手段によって比較された数値のうち少ない方の遊技媒体数を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする遊技媒体計数装置。」(下線部は本件補正によって追加又は変更された箇所)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「遊技結果記録媒体」について「生じた遊技媒体の増減情報を記録可能とされて」を新たに付加する補正である。
そして、該補正は「遊技結果記録媒体」の記録内容を限定するものであって、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正に相当するので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-76059号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
【0022】簡単な保持数の推定方法としては、次のようなものが挙げられる。まず計数手段へ玉を投入するのに用いられた貯留箱の記憶手段に格納されている識別情報を読取手段にて読み取り、どのパチンコ機において用いられたかを特定する。そしてそのパチンコ機に関して、貸与数算出手段により検知された玉の数から、投入数算出手段により検知された玉の数、及び計数手段により計数された玉の数を引く。こうして遊技者が保持する玉数が求められる。
【0023】従って、請求項2に記載の管理システムによれば、遊技者が保持している玉(パチスロ機ならばメダル)の数を推定できる。また、こうして保持数が推定できることにより、遊技者間で玉(若しくはメダル)のやり取りが行なわれたか否かも推定できる。すなわち、もし、玉等を他の遊技機の遊技者に渡したのであれば、計数手段による計数結果が、保持数推定手段により推定された玉(若しくはメダル)より少なくなる筈である。受け取った遊技者の遊技機では、逆に、計数結果の方が多くなる。従って、台移動だけではなく、遊技者間の玉のやり取りも検知可能となる。
【0028】・・・使用済みの貯留箱については、例えば計数器(遊技者が獲得した価値担体の数を計数するための機械)の傍らに積み上げておき、適宜、店員がその積み上げられた貯留箱の記憶手段に格納されている識別情報等を消去する。・・・
【0041】本図に示すように、磁気カード27の内容は、大きく分けて4つの情報からなる。第1に、その磁気カード27に固有(すなわち、玉貯留箱23にとっても固有)の番号ID、第2に、その玉貯留箱23が台移動に用いられたことを示すマークM、第3に、玉貯留箱23が使用されたパチンコ機1の台番号N、第4に、その台番号が当該磁気カード27に記録された日付Tである。この内、番号IDは、一旦記録されたら、磁気カード27が廃棄されるまで書き換えられることはないが、その他の情報は後述する処理により適宜更新されていく。本図に示した磁気カード27の内容は、固有の番号が「10154」、マークは台移動が為されたことを示す「*」、延べ5回分、使用されたことを示す台番号及びその日付が記録されている。
【0054】すなわち図7は、磁気カード記録処理を表すフローチャートである。本処理は磁気記録装置21に玉貯留箱23が置かれたことが、光センサ34bにより検出されると起動される。まず、ステップ(以下、単にSと記す)110にて、磁気カード27の内容を読み取る。つまり、図5にて説明したモータ33を駆動させて、磁気ヘッド31をA方向に移動させ、図4に示したような磁気信号を読み取る。
【0064】次に、計数器7の制御回路47にて行なわれる計数処理について図8を用いて説明する。本処理は、玉返却口11に玉が投入されると起動されるものとする。
【0065】押されていれば、S250に進み、計数器7の磁気記録装置20が玉貯留箱23の磁気信号の読み取りに成功したか否かを判定し、失敗していれば、するまで待機する。・・・
【0066】磁気信号の読み取りに成功すると、S260に進み、台移動マークMがあるか否かを判定する。もしなければ、S270に進んで、計数結果を印字されたレシートを発行して本処理を終了する。台移動マークMがあれば、S280に移行してホールコンピュータHCから、その玉貯留箱23によって台移動元のパチンコ機1において、払い出された持ち玉データを受信する。これは、S250にて読み取った磁気信号中の番号IDと、その番号IDを、ホールコンピュータHCが、自らの記憶装置内を検索し、その番号IDに関して、その日に格納された台番号Nと、持ち玉データとを送信することにより可能となる。この番号ID、及び台番号Nは、磁気カード記録処理のS180にてホールコンピュータHCに送信された番号ID、前台の台番号Nである。続くS290では、受信した持ち玉数と、S230にて求められた計数結果とを比較し、計数結果の方が少なければ、S270に進み、計数結果の方が多ければ、S300に進み、持ち玉数とメッセージを印字出力して本処理を終了する。
【0074】これとは異なる変更を計数処理に施すと、遊技者間での玉の横流しを検知可能になる。例えば、同処理のS260を廃止し、S290を「持ち玉数が計数結果より所定個数(例えば500個)以上少ないか否か」に改め、S300を「計数結果から持ち玉数を引いた値とメッセージを印字出力する」に変える。
【0075】もし横流しが発生すると、玉を受け取った側はその分だけ計数結果が増える。受け取った玉数は、計数結果から持ち玉数を引いた値になる。この数が500個よりも多い場合は、これを獲得数として印字する。つまり、受け取った玉を用いた遊技を通じて大量の玉を獲得しても、その分はカウントされず、もらった玉数のみが獲得数となる。従って、適切なペナルティを与えることができる。なお、この方法で、玉貯留箱23を用いた台移動も検知することができる。そしてこのときのメッセージは「お客様は、台移動または玉の横流しを受けたと思われますので、移動された玉数を計数結果に替えさせて頂きます」等とすると良い。

摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 固有の番号ID及び適宜更新されていくその他の情報が記録されている磁気カード27の内容を読み取る磁気ヘッド31と、
遊技者が獲得した価値担体の数を計数するための機械と、を備え、
磁気カード27から読み取った番号IDに関して、ホールコンピュータHCから持ち玉数を受信し、該持ち玉数が前記機械にて求められた計数結果より所定個数以上少ないか否かを判定し、
前記持ち玉数が前記計数結果より所定個数以上少なければ前記計数結果から前記持ち玉数を引いた値を印字出力し、そうでなければ前記計数結果を印字出力する計数器7。」

(2)引用発明と本願補正発明との対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「磁気カード27」は、本願補正発明の「遊技結果記録媒体」に相当し、以下同様に、
「読み取る」は「読み出す」に、
「磁気ヘッド31」は「読出手段」に、
「遊技者が獲得した価値担体の数」は「遊技によって獲得された遊技媒体」に、
「計数するための機械」は「計数するための計数手段」に、
「持ち玉数」は「読み出された遊技媒体数」に、
「前記機械にて求められた計数結果」は「前記計数手段で計数された遊技媒体数」に、
「計数器7」は「遊技媒体計数装置」に、それぞれ相当する。

さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが言える。
a.引用発明の「適宜更新されていくその他の情報」は摘記した段落【0054】等から分かるように、磁気カード27を備えた玉貯留箱23が置かれた台の情報等であるから、遊技の過程で生じた情報ということができ、磁気カード27は玉貯留箱23に備えられて遊技者が携帯可能なものであることも明らかであるから、本願補正発明の「遊技結果記録媒体」と引用発明の「磁気カード27」は、“遊技の過程で生じた情報を記録可能とされて遊技者が携帯可能とされた”ものである点で共通している。
また、本願補正発明の「遊技結果記録媒体に記録された遊技媒体数」と引用発明の「磁気カード27の内容」は、遊技結果記録媒体に“記録された情報”であることに変わりはないから、本願補正発明の「読出手段」と引用発明の「磁気ヘッド31」は、“遊技結果記録媒体に記録された情報を読み出すための”ものである点で共通している。

b.引用発明は「持ち玉数が前記機械にて求められた計数結果より所定個数以上少ないか否かを判定」するものであり、「持ち玉数」及び「前記機械にて求められた計数結果」は、それぞれ本願補正発明の「読み出された遊技媒体数」及び「前記計数手段で計数された遊技媒体数」に相当し、「持ち玉数が前記機械にて求められた計数結果より所定個数以上少ないか否かを判定」することも、「持ち玉数」と「前記機械にて求められた計数結果」とを比較していることに変わりはないから、引用発明は、本願補正発明の「読み出された遊技媒体数と前記計数手段で計数された遊技媒体数とを比較する比較手段」に相当する手段を有しているといえる。

c.引用発明の「前記計数結果から前記持ち玉数を引いた値」も、摘記した段落【0066】や【0075】等の記載から分かるように、比較手段による比較の結果として出力される「遊技媒体数」に他ならず、引用発明における「印字出力」は「出力」の一形態であって、引用発明は本願補正発明の「出力手段」に相当する構成を備えているものということができるから、両者は、比較手段によって比較された結果に基づいて、遊技媒体数を出力する出力手段を備えた点で共通している。

以上を総合すると、両者は、
「 遊技の過程で生じた情報を記録可能とされて遊技者が携帯可能とされた遊技結果記録媒体に記録された情報を読み出すための読出手段と、
遊技によって獲得された遊技媒体を計数するための計数手段と、
読み出された遊技媒体数と前記計数手段で計数された遊技媒体数とを比較する比較手段と、
該比較手段によって比較された結果に基づいて、遊技媒体数を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする遊技媒体計数装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明は「遊技の過程で生じた遊技媒体の増減情報」を記録し、その中の「遊技媒体数」を読み出すものであるのに対し、引用発明は「固有の番号ID及び適宜更新されていくその他の情報」を記録し読み取るものである点。
[相違点2]本願補正発明は「読み出された遊技媒体数」が「遊技結果記録媒体に記録された」ものであるのに対し、引用発明は「持ち玉数」が磁気カード27から読み取った番号IDに関して、ホールコンピュータHCから受信したものである点。
[相違点3]本願補正発明は「比較手段によって比較された数値のうち少ない方の遊技媒体数を出力する」のに対し、引用発明は「持ち玉数が前記計数結果より所定個数以上少なければ前記計数結果から前記持ち玉数を引いた値を印字出力し、そうでなければ前記計数結果を印字出力する」ものである点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1及び2について]
相違点1及び2は密接に関連しているので、合わせて検討する。
遊技機の分野において、遊技媒体の増減に関連するデータである持ち玉数を遊技者が携帯可能な記録媒体に記録するか、遊技者が携帯可能な記録媒体に記録された情報に対応させて管理コンピュータに記録するかを適宜選択することは、例えば、特開平7-185065号公報(特に段落【0088】を参照)や特開平11-319296号公報(特に段落【0099】を参照)に記載されるように従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)であるから、引用発明において「固有の番号ID及び適宜更新されていくその他の情報」に代えて、「持ち玉数」を含む遊技媒体の増減に関連するデータを「磁気カード27」に記録するとともに、「持ち玉数」を磁気カード27から読み取った番号IDに関して、ホールコンピュータHCから受信するのに代えて、磁気カード27から磁気ヘッド31で読み出すようにして、上記相違点1及び2に係る本願補正発明のような構成とすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得ることである。

[相違点3について]
引用発明は、摘記した段落【0075】の記載等から分かるように、持ち玉数が計数結果より所定個数以上少ない場合、すなわち横流しを受けた玉の数が所定個数以上の時に、計数結果から持ち玉数を引いた値(横流しを受けた玉の数)を印字出力し、そうでない場合、すなわち横流しを受けた玉の数が所定個数未満の時に、計数結果を印字出力するものであり、所定個数としては段落【0075】に「例えば500個」とあるように、ある程度大きな個数が想定されたものである。
しかるに、横流しを受けた玉の数が、それほど大きな個数でない場合にも不正を判定すること、及びそのために計算された遊技媒体数と実際に計数された遊技媒体数とを比較することも、例えば、特開2003-181103号公報(特に段落【0074】【0075】を参照)、特開2003-260249号公報(特に段落【0072】を参照)、特開2001-224830号公報(特に段落【0007】を参照)及び特開平11-253650号公報(特に【請求項2】を参照)に記載されるように従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)であり、引用文献1に、他の実施例ではあるが、台移動する直前のパチンコ機1における持ち玉数と計数結果を比較し、少ない方の数値を印字する技術(以下「引用文献1記載の技術」という。)が開示されているから(特に、段落【0056】【0066】【0067】を参照)、引用発明において、持ち玉数と計数結果とを比較し、そのうちの少ない方の数値を印字出力するようにして、上記相違点3に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者であれば容易に想到できることである。

さらに、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献1記載の技術及び周知技術1、2に基いて、当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献1記載の技術及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成19年12月14日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成19年9月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「 遊技の過程で遊技者が携帯可能な遊技結果記録媒体に記録された遊技媒体数を読み出すための読出手段と、
遊技によって獲得された遊技媒体を計数するための計数手段と、
前記読出手段で読み出された遊技媒体数と前記計数手段で計数された遊技媒体数とを比較する比較手段と、
該比較手段によって比較された数値のうち少ない方の遊技媒体数を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする遊技媒体計数装置。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平10-76059号公報)の記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比及び判断
本願発明は、実質的には前記「第二」で検討した本願補正発明から「遊技結果記録媒体」の限定事項である、「生じた遊技媒体の増減情報を記録可能とされて」という構成を省いたものといえる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明、引用文献1記載の技術及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献1記載の技術及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1記載の技術及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-17 
結審通知日 2009-09-18 
審決日 2009-09-30 
出願番号 特願2003-424667(P2003-424667)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 小林 俊久
吉村 尚
発明の名称 遊技媒体計数装置  
代理人 越川 隆夫  

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