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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1207120 |
審判番号 | 不服2007-32993 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-12-06 |
確定日 | 2009-11-12 |
事件の表示 | 特願2006- 54480「基板及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月13日出願公開、特開2007-234851〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年3月1日の出願であって、平成19年6月1日付けで手続補正がなされた後、同年10月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願発明は、平成19年6月1日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。 「集積回路(11)と、前記集積回路に接続された電源端子(P11)とを有する部品(1)が搭載される基板であって、 電源バス(2)と、 前記電源バスに接続される一端(211)と、前記電源端子(P11)が接続できる他端(212)とを有する第1の配線(21)と、 前記第1の配線とグランドとの間に接続されるコンデンサ(C)と を備え、 前記第1の配線の一部の断面積(W1)は、前記電源バスの断面積(B)より小さく、 前記電源バスは、前記部品が被さる位置に配され、 当該集積回路を前記電源端子を介して前記他端に接続した場合において、前記他端は前記部品の外周側から前記電源端子に接続される、基板。」 第3 原査定の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、本願の請求項1?5に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された次の刊行物1?8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 刊行物1:特開平10-223997号公報 刊行物2:特開2003-198079号公報 刊行物3:特開平8-288626号公報 刊行物4:特開2001-177040号公報 刊行物5:特開平9-139573号公報 刊行物6:特開2003-8153号公報 刊行物7:特開2005-294383号公報 刊行物8:特開平11-261181号公報 第4 刊行物の主な記載事項 刊行物1(特開平10-223997号公報)には、次の事項が記載されている。 (a)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は電磁波放射ノイズを低減するためのプリント配線基板に実装されたICのデカップリング方法に関し、特に電子機器に用いられるプリント配線板において、ノイズを抑制する為に電源供給ライン上に設けられたプリントパターン素子に関するものである。」 (b)「【0013】 【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1、2は本発明の特徴を最も良く表した図面であり、図1は基板にICを搭載した面を上からみた平面図であり、図2は基板断面図である。図1、2ともに2層板について示したものである。 【0014】先ず第一の実施例について説明する。これらの図においては、メインの電源パターン1、メインの電源パターン1からICへ引き込むための分岐した電源パターン2、3端子型のノイズフィルタ3、バイパス・コンデンサ4、メインの電源から分離されデカップリングされたICへの電源供給パターン5、バイパス・コンデンサ4のグランド接続用のスルーホール6、バイパス・コンデンサ4の電源電極とICの電源ピンを接続するためのパターン7、電源供給パターン5の分離された電源パターンと隣接して設けられたグランドパターン8、電源供給パターン5の電源パターンとグランドパターン8の間に設けられたギャップに充填されたシリコン樹脂9、プリント配線基板に搭載されたIC10、ICのリードピン11、信号パターン12、プリント配線基材13、IC搭載面の裏面に形成したメインの電源から分離された電源パターン14、IC搭載面の裏面に形成したグランドパターン15が示されている。」 (c)図1には、以下の事項が図示されている。 (c1)電源供給パターン5から分岐してバイパス・コンデンサ4に接続するパターンと、「バイパス・コンデンサ4の電源電極とICの電源ピンを接続されるためのパターン7」とがバイパス・コンデンサを介して接続されており、また、バイパス・コンデンサ4からは、バイパス・コンデンサ4のグランド接続用のスルーホール6に向けてパターンが形成されていること。 (c2)前記電源供給パターン5から分岐してバイパス・コンデンサ4に接続するパターンの幅は、前記電源供給パターン5の幅よりも狭いこと。 (c3)前記「バイパス・コンデンサ4の電源電極とICの電源ピンを接続されるためのパターン7」の電源ピンとの接続位置は、電源ピンの外周側面部であること。 (d)「【図2】本発明の第一の実施例を説明するためのプリント配線基板の断面図である。」 そして、図2には、以下の事項が図示されている。 (d1)プリント配線基板13の上に配置された電源供給パターン5は、その垂直上方において一定の間隔を置いて配置されるIC10とリードピン11が投影する面からはみ出すことなくその下部に配置されていること。 第5 当審の判断 1.刊行物1発明 刊行物1には、(a)の「【0001】【産業上の利用分野】本発明は電磁波放射ノイズを低減するためのプリント配線基板に実装されたICのデカップリング方法に関し、特に電子機器に用いられるプリント配線板において、ノイズを抑制する為に電源供給ライン上に設けられたプリントパターン素子に関するものである。」との記載によれば、「電源供給ライン上に電磁波放射ノイズを抑制するためのプリントパターン素子を有するプリント配線基板」が記載されているといえる。 そして、(b)の「【実施例】・・・(審決注;「・・・」は記載の省略を示す。以下、同様。)図1は基板にICを搭載した面を上からみた平面図・・・である。・・・これらの図においては、・・・・バイパス・コンデンサ4、メインの電源から分離されデカップリングされたICへの電源供給パターン5、バイパス・コンデンサ4のグランド接続用のスルーホール6、バイパス・コンデンサ4の電源電極とICの電源ピンを接続するためのパターン7、・・・プリント配線基板に搭載されたIC10、ICのリードピン11、・・・が示されている。」との記載によれば、前記プリント配線基板は、ICとICのリードピンとICの電源ピンが搭載されるプリント配線基板であって、ICへの電源供給パターンと、バイパス・コンデンサとICの電源ピンを接続するためのパターンと、バイパス・コンデンサと、バイパス・コンデンサのグランド接続用のスルーホールとを備えたものであるといえる。 ここで、図1には、(c1)のとおり、電源供給パターン5から分岐してバイパス・コンデンサ4に接続するパターンと、「バイパス・コンデンサ4の電源電極とICの電源ピンを接続されるためのパターン7」とがバイパス・コンデンサを介して接続されており、また、バイパス・コンデンサ4からは、バイパス・コンデンサ4のグランド接続用のスルーホール6に向けてパターンが形成されていることが図示されていると認められるから、前記プリント基板は、前記電源供給パターンに接続される一端と、前記電源ピンが接続できる他端とを有する配線パターンを備え、さらに、該配線パターンと前記バイパス・コンデンサのグランド接続用のスルーホールの間に接続されるバイパス・コンデンサを備えているものといえる。 また、図1には、(c2)のとおり、前記電源供給パターン5から分岐してバイパス・コンデンサ4に接続するパターンの幅が、前記電源供給パターン5の幅よりも狭いことが図示されていると認められるから、前記配線パターンの一部の幅は、前記電源供給パターンの幅より小さいものといえる。 さらに、図1には、(c3)のとおり、前記「バイパス・コンデンサ4の電源電極とICの電源ピンを接続されるためのパターン7」の電源ピンとの接続位置は、電源ピンの外周の側面部であることが図示されていると認められるから、前記ICを前記電源ピンを介して前記配線の他端に接続した場合において、前記配線の他端は、電源ピンの外周の側面部において接続されているといえる。 そして、図2には、プリント配線基板13の上に配置された電源供給パターン5は、その垂直上方において一定の間隔を置いて配置されるIC10とリードピン11が投影する面からはみ出すことなくその下部に配置されていることが図示されている(d1)と認められるから、前記電源供給パターンは、前記ICと、前記ICに接続された電源ピンと、前記ICに接続されたリードピンとでなる部材の下部の位置に配されているといえる。 上記記載及び認定事項を、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明が記載されているといえる(以下、「刊行物1発明」という)。 「ICと、前記ICに接続された電源ピンと、前記ICに接続されたリードピンとが搭載されるプリント配線基板であって、 電源供給パターンと、 前記電源供給パターンに接続される一端と、前記電源ピンが接続できる他端とを有する配線パターンと、 前記配線パターンとグランド接続用スルーホールとの間に接続されるバイパス・コンデンサと を備え、 前記配線パターンの一部の幅は、前記電源供給パターンの幅より小さく、 前記電源供給パターンは、前記ICと、前記ICに接続された電源ピンと、前記ICに接続されたリードピンの下部の位置に配され、 前記ICを前記電源ピンを介して前記配線の他端に接続した場合において、前記配線の他端は、電源ピンの外周の側面部において接続される、プリント配線基板。」 2.本願発明1と刊行物1発明との対比 そこで、本願発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「プリント配線基板」、「IC」、「電源ピン」、「電源供給パターン」、「配線パターン」、「グランド接続用のスルーホール」及び「バイパス・コンデンサ」は、それぞれ、本願発明1の「基板」、「集積回路」、「電源端子」、「電源バス」、「第1の配線」、「グランド」及び「コンデンサ」に相当するものである。 また、刊行物1発明において、「ICと、前記ICに接続された電源ピンと、前記ICに接続されたリードピン」は、「ICと、前記ICに接続された電源ピンとを有する部品」と言い換えることができるから、本願発明の「集積回路と、前記集積回路に接続された電源端子とを有する部品」に相当する。 そうすると両者は、 「集積回路と、前記集積回路に接続された電源端子とを有する部品が搭載される基板であって、電源バスと、前記電源バスに接続される一端と、前記電源端子が接続できる他端とを有する第1の配線と、前記第1の配線とグランドとの間に接続されるコンデンサとを備え、前記電源バスは、前記部品の下部の位置に配された、基板。」 である点で一致し、下記の点で相違するものである。 相違点イ:第1の配線の一部の断面積が、本願発明1では、電源バスの断面積より小さいのに対して、刊行物1発明では、配線パターンの幅は、電源供給パターンの幅より小さいものの、その断面積が、電源供給パターンの断面積よりも小さいものであるかは不明である点。 相違点ロ:電源バスが、本願発明1では、部品が被さる位置に配されるのに対して、刊行物1発明では、前記ICと、前記ICに接続された電源ピンと、前記ICに接続されたリードピンの下部の位置に配されるものではあるが、部品が被さる位置であるかは不明である点。 相違点ハ:第1の配線の他端と電源端子の接続について、本願発明1では、前記他端は、部品の外周側から電源端子に接続されるのに対して、刊行物1発明では、前記他端は電源ピンの外周の側面部から電源ピンに接続される点。 3.相違点についての判断 そこで、上記相違点イ、ロ及びハについて検討する。 3-1.相違点イについて プリント配線において、配線の膜厚は、通常同一と考えるのが自然であり、配線幅が小さいパターンの方が、断面積が小さいといえるから、刊行物1発明において、電源供給パターンに対して、小さい配線幅を有する、前記配線パターンの一部である電源供給パターンとバイパス・コンデンサとの間の配線の断面積は、電源供給パターンの断面積よりも小さいということができる。 そうすると、相違点イは、実質的な相違点ということはできない。 また、仮に、前記配線幅の関係が正確ではなく、前記配線パターンの一部である前記配線の断面積が、電源供給パターンの断面積よりも小さくないとしても、例えば、刊行物5にも記載されているように(【0013】【0016】【0019】等を参照)、インダクタンスの大きな、配線化したインピーダンス付加回路をコンデンサと組み合わせて、放射ノイズの発生の低減を図ることは周知技術であるし、インダクタンスは、配線の長さが長いときや断面積が小さいときに大きくなることは、技術常識であるから、刊行物1発明において、放射ノイズの発生を低減するために、前記配線パターンの一部である前記配線の断面積を電源供給パターンの断面積よりも小さくすることは、当業者が上記周知技術及び技術常識に基いて容易になし得ることである。 よって、相違点イは、実質的な相違点ではないか、または、当業者が容易に想到し得る事項である。 3-2.相違点ロについて 刊行物1発明において、電源供給パターンは、ICと、前記ICに接続された電源ピンと、前記ICに接続されたリードピンが投影する面からはみ出すことなく、その下部の位置に配されるものであるから(1f参照)、電源供給パターンは、ICと、前記ICに接続された電源ピンと、前記ICに接続されたリードピン、すなわち、本願発明における、集積回路と、前記集積回路に接続された電源素子とを有する部品が被さる位置に配されているといえる。 そうすると、相違点ロは、実質的な相違点ということはできない。 なお、審判請求人は、審判請求書において、刊行物1の図2には、集積回路ICと、電源供給パターン5の一部が基板に垂直な方向で重なっているものの、被さる位置に配されているとはいえない、そして、刊行物1に記載の技術は、放射ノイズを効果的かつ簡易に低減することを目的として、電源供給パターン5とグランドパターン8を、比誘電率の高い層間絶縁膜を介して対面させ、これらをコンデンサとして機能させ、このコンデンサによる静電容量によって、放射ノズルを低減するものであるから、その解決のために、刊行物1発明において、電源供給パターン5をIC10の内側に配することは、電源供給パターン5とグランドパターン8の対向する面積を小さくし、静電容量が小さくし、放射ノイズを低減するという課題解決に逆行するという阻害要因を有し、当業者が容易に成しえるものではないと主張している。 しかしながら、前述したとおり、刊行物1発明において、電源供給パターンは、集積回路と、前記集積回路に接続された電源素子とを有する部品が投影する面と垂直方向で完全に重なっているから、電源供給パターンは、集積回路と、前記集積回路に接続された電源素子とを有する部品が被さる位置に配されているといえる。 また、仮に、電源供給パターンが、集積回路が被さる位置に配されていないことが、すなわち、電源供給パターンが、集積回路と、前記集積回路に接続された電源素子とを有する部品が被さる位置に配されていないことであるとしても、刊行物1発明は、電子部品の近傍にノイズフィルタの構成要素として用いるパターン素子やグランドパターンを設けるためのスペースを確保する(刊行物1の【0006】参照)とともに、ICに対してバイパス・コンデンサとしてのチップ・コンデンサによる静電容量にさらにICの電源、グラントに対して静電容量を増強させ(刊行物1の【0015】【0016】参照)、これらをバランスさせて、放射ノイズを効果的にかつ簡易に低減することを達成させようとするものであるから、すでに前記スペース確保の観点から、ICと、ICに接続された電源ピンの下部に配置されたものと認められる、電源供給パターンについて、スペース確保の観点、及び、静電容量の増強の観点から、電源供給パターン位置の微調整を行い、ICが被さる位置に配することは当業者が適宜実施する程度の事項である。 3-3.相違点ハについて 電子回路部品が搭載されて電子回路を構成するプリント配線板において、刊行物2の図1、図2にも記載されているように、刊行物1発明の電源供給パターンに相当する、電源パターン配線の他端が、部品である電源ピンの外周側から電源ピンに接続することは、周知であるから、刊行物1発明において、前記周知技術を適用することは、当業者が適宜実施し得る程度の事項であり、配線が長くなり、寄生インダクタンスが高まるとする効果についても、前記「相違点イについて」で述べたとおり、周知、或いは、自明のものと認められる。 よって、相違点ハは、当業者が容易に想到し得る事項である。 4.小括 以上のとおりであるから、本願発明1は、刊行物1発明及び刊行物2、刊行物5に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび したがって、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-03 |
結審通知日 | 2009-09-08 |
審決日 | 2009-09-29 |
出願番号 | 特願2006-54480(P2006-54480) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鏡 宣宏、遠藤 邦喜 |
特許庁審判長 |
山田 靖 |
特許庁審判官 |
山本 一正 植前 充司 |
発明の名称 | 基板及び装置 |
代理人 | 吉竹 英俊 |
代理人 | 福市 朋弘 |
代理人 | 有田 貴弘 |