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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1207146 |
審判番号 | 不服2008-9809 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-04-17 |
確定日 | 2009-11-12 |
事件の表示 | 特願2003- 83697「リンク方式間の移行方法及びモバイル・コンピューティング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月21日出願公開、特開2003-333080〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成15年3月25日(パリ条約による優先権主張2002年3月29日、米国)の出願であって、平成20年3月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年4月17日に審判請求がなされ、同年5月19日に手続補正書の提出があったものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年5月19日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、 補正前の平成20年2月15日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項4に記載された、 「 【請求項4】 継続中の通信を維持した状態でIPベースのサブネットの装置に接続されるリンク方式間を移行するモバイル・コンピューティング装置であって、 リンクを選択し、関係のあるホストに選択されたリンクのアドレスを通知するリンク移行モジュールと、 選択されたリンクに基づいてIPアドレスをMACアドレスへ動的に結合するMACからIPへの動的結合モジュールと、 を有するモバイル・コンピューティング装置。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、請求項の削除に伴い、 「 【請求項2】 継続中の通信を維持した状態で、IPベースのサブネットの装置に接続される複数のリンク方式間を移行するモバイル・コンピューティング装置であって、 移行するリンクを選択し、関係のあるホストに選択されたリンクのMACアドレスを通知するリンク移行モジュールと、 選択されたリンクに基づいて、IPアドレスを選択されたリンクのMACアドレスへ動的に結合するMACからIPへの動的結合モジュールと、 を有するモバイル・コンピューティング装置。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。 なお、上記両発明ともに、その手続補正書の請求項の記載には、「モバイル・コンピューティング装置あって、」とあるが、「モバイル・コンピューティング装置であって、」の誤記と判断し、上記のように認定した。 2.補正の適否 (1)新規事項の有無、補正の目的要件 上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項4に記載された、 「リンク方式間を移行する」という記載を、「複数のリンク方式間を移行する」と構成を追加して限定し、 同じく「リンクを選択し」という記載を、「移行するリンクを選択し」と構成を追加して限定し、 同じく「選択されたリンクのアドレスを通知する」という記載を、「選択されたリンクのMACアドレスを通知する」と構成を追加して限定し、 同じく「IPアドレスをMACアドレスへ動的に結合する」という記載を、「IPアドレスを選択されたリンクのMACアドレスへ動的に結合する」と構成を追加して限定することにより特許請求の範囲を減縮するものであるから、 平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 (2)独立特許要件 上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 [補正後の発明] 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。 [引用発明] A.原審の拒絶理由に引用された特開平11-355322号公報(以下、「引用例」という。)には、「無線端末装置をデ?タ伝送ネットワ?クと結合する方法及び無線端末装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【請求項1】 パケット交換データ伝送のために通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)にデータ伝送接続を設定する少なくとも1つのネットワーク・インタフェースカード(NIC1 、NIC2、NIC3) を有し、伝送される情報のパケットを形成し、受信パケットから情報を取り出す手段(PD)を有する端末装置(A) であって、 前記端末装置(A) は、前記端末装置を識別する少なくとも1つの第一のアドレスと、少なくとも1つのデータネットワーク特定の第二アドレスを割り当てられており、 パケットを形成する前記手段(PD)は、前記第一アドレスを前記パケットに結合する手段を有し、 前記端末装置(A) はまたネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)を有し、該ドライバ(NISD)が、所定の時刻にデータ伝送に使用される前記通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)を選択する手段、パケットを形成する前記手段(PD)、所定の時刻に使用される前記データ伝送ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)に対応する前記ネットワーク・インタフェースカード(NIC1 、NIC2、NIC3)との間でパケットを伝送する手段、及び所定の時刻に前記パケットで使用される前記データ伝送ネットワークに従って第一アドレスを第二アドレスに変換する手段を有することを特徴とする端末装置。 【請求項2】 パケットを形成する前記手段(PD)と前記ネットワーク・インタフェースカード(NIC1 、NIC2、NIC3) とに対して変更を行うことなく、パケットを形成する前記手段(PD)と前記ネットワーク・インタフェースカード(NIC1 、NIC2、NIC3) との間で前記ネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NASD)が確立されることを特徴とする請求項1 に記載の端末装置。 【請求項3】 所定の時刻に前記パケットで使用される前記データネットワークに従って第一アドレスを第二アドレスに変更する前記アドレス解決プロトコル(ARP) が前記ネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)に配設されていることを特徴とする請求項1 又は2 に記載の端末装置。 【請求項4】 前記データ伝送接続を終了することなく前記アドレス変更を行うようになっていることを特徴とする請求項1 、2 又は3 に記載の端末装置。 【請求項5】 所定の時刻に前記データ伝送接続で使用される前記通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)を前記データ伝送接続を終了することなく変更する手段(NISD 、D1、D2、D3、NIC1、NIC2、NIC3) を有することを特徴とする請求項1 乃至4 のいずれか1項に記載の端末装置。」 (2頁1欄) ロ.「【0005】ポータブルコンピュータとの関係で、データ伝送に必要なGSM 移動局と周辺回路のような内蔵型移動局機能を含むいわゆるPCMCIAカードが開発されてきた。従って、そのような無線データ処理装置からGSM 移動通信ネットワークを介して別のデータ処理装置へ、あるいはオフィスのローカル・エリア・ネットワークにまでデータ呼を設定することが可能である。・・・(中略)・・・図1 は、縮小した略図に前述の様々なタイプのネットワークを示したものである。 【0006】ポータブルコンピュータのサイズがだんだん小型化し、その性能が増していくにつれて、それらはオフィスの中でも使われるほどにますます人気を博している。無線ローカル・エリア・ネットワークでの使用することを意図したネットワーク・インタフェースカードを備えたポータブルコンピュータは、無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)とつないで無線端末装置として使うことができる。オフィスのローカル・エリア・ネットワークは有線ローカル・エリア・ネットワーク(LAN) と無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)の双方から構成することができる。例えば、オフィスの拡張の際に、ローカル・エリア・ネットワークをつくるために固定相互接続が必ずしも行われるわけではなく、ローカル・エリア・ネットワークの拡張は、オフィスでのそのような無線ローカル・エリア・ネットワーク解決策によって実現される。したがってオフィスでは、端末装置は主として有線ローカル・エリア・ネットワークを利用し、有線ローカル・エリア・ネットワーク用ネットワーク・インタフェースカードがポータブルコンピュータと接続される。より良好な移動性を可能にするために、無線ローカル・エリア・ネットワーク用ネットワーク・インタフェースカードがポータブルコンピュータに変更される。しかしこの段階で、端末装置のユーザは、その時点で使用中のネットワーク接続を終了し、ネットワーク・インタフェースカードを変更しなければならない。その後でローカル・エリア・ネットワークとの接続を再度設定することとなる。状況によっては、オフィス外で端末装置を利用し、オフィスのローカル・エリア・ネットワークと接続することが必要となるかもしれない。したがって、現在公知の方法とローカル・エリア・ネットワークを利用するとき、ポータブルコンピュータのネットワークインタフェースカードの変更が可能であり、それによって移動通信網を介して接続を設定することができる。またこの状況では、アクティブ接続を終了させることなく従来技術の方法と端末装置を使用することによって接続を変更することはできない。」(3頁4欄?4頁5欄) ハ.「【0009】 【課題を解決するための手段】本発明によって、従来技術による方法と端末装置と比較して著しい利点が得られる。本発明による実施例によって、オペレーティングシステムの動作モジュールやネットワーク・インタフェースソフトウェアの変更を必要とせずに、移動端末装置の機能性を備えた端末装置で使用するオペレーティングシステムを補うことが可能となる。したがって、異なるタイプのいくつかのローカル・エリア・ネットワークや他の通信ネットワークで、そのようなマルチモード端末装置が使用でき、アクティブな接続を終了することなく所定の時刻に使用中の通信ネットワークを変更することができる。ユーザがその移行に気づきさえしないように処理するためにこの移行を行うことができる。したがって、端末装置で使用するアプリケーションがどの物理的データ伝送ネットワークを所定の時刻に使用しているかを知る必要なく、端末装置で1のネットワーク層アドレスを利用することが可能となる。本発明によって、一度に利用できるすべてのデータ伝送ネットワークの中から最良の可能な接続品質が得られるデータ伝送ネットワークを利用することも可能となる。さらに、接続品質が万一悪くなった場合には、その時点でもっと良好な接続品質を得ることができる別のデータ伝送ネットワークへデータ伝送ネットワークを変更することができる。また、本発明による端末装置のユーザは、通信を開始した人が所定の時刻にどのデータ伝送ネットワークと端末装置がつながっているかを知る必要なくいつでも通信することができる。」(4頁6欄) ニ.「【0011】以下に、図2 の簡略ブロック図に示す移動端末装置の一例としてポータブルコンピュータを使って本発明を説明する。コンピュータのオペレーティングシステムは、マイクロソフト社が開発したウィンドウズ(NT オペレーティングシステムであるが、他のオペレーティング・システムに関しても本発明を適用できることは明らかである。さらに、端末装置A には、様々なタイプのデータ伝送ネットワークとの結合に利用できるいくつかのネットワーク・インタフェース用アダプタNIC1、NIC2、NIC3があり、それらのタイプのネットワークの中でイーサネットタイプの有線ローカル・エリア・ネットワーク、IEEE規格802.11に準拠した無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)、GSM 移動通信ネットワークが例として挙げられているが、GSM システムのパケット交換データ伝送システムGPRS(一般パケット無線サービス) と低電力無線シグナリングに基づくLPRF(低電力RF) のような他のデータ伝送ソリューションも本発明との関係で適用できる。そのような端末装置A はマルチモード端末装置とも呼ばれる。 【0012】図3にはウィンドウズNTオペレーティング・システムの構造が簡略した形で示されている。この最下位レベルには、オペレーティングシステム機能とオペレーティング・システムと接続したドライバとによって制御される実際のハードウェア部が含まれる。ハードウェア部には例えばマイクロプロセッサμP 、メモリ手段MEM 、接続論理入出力装置I/O 、ディスプレイ装置D 、キーボードK が含まれる。ドライバを制御するために、オペレーティングシステムには、例えば、ドライバのスタートアップを行い、ドライバとオペレーティングシステム又は残りの他のアプリケーションとの間の通信の役割を果たすI/O マネージャが含まれる。オペレーティングシステムの特定の機能とドライバ機能の大部分とはいわゆるカーネルモードで行われる。オペレーティングシステム機能の一部とユーザが開始したアプリケーションプログラムとはいわゆるユーザモードで動作するように設定される。このユーザモードで動作するアプリケーションは操作上の可能性がもっと制限されている。例えばメモリ空間の一部とプロセッサ命令は当業者に公知のカーネルモードでしか利用できない。本明細書では以後、本発明の理解を得るために本説明の焦点を主としてネットワーク・インタフェース構成すなわちネットワーク・インタフェースカードの機能、ネットワーク・インタフェースドライバ、オペレーティングシステムネットワーク・インタフェース機能並びにアプリケーションプログラムに当てる。図4は一例としてウィンドウズNTオペレーティングシステムのネットワーク・インタフェース構成を簡略化して示すものである。 【0013】ネットワーク・インタフェース構成はネットワーク・インタフェースカード(NIC) を有し、それによって実際の物理的データ伝送接続が確立される。ネットワーク・インタフェースカードとは、例えばイーサネットネットワーク・インタフェースカードやPCMCIAタイプのWLANネットワーク・インタフェースカードなどである。このネットワーク・インタフェースカードの実装は、例えば当該ネットワーク・インタフェースのタイプなどに依存する。例えば無線ローカル・エリア・ネットワーク用として意図されたネットワーク・インタフェースカードは無線モデム又は同種のものを有し、それによってローカル・エリア・ネットワークの無線モデムとの無線データ伝送接続を設定することが可能である。これに対応して、GSM 移動通信ネットワークと接続するとき、ネットワーク・インタフェースカードはデータ伝送接続を設定する移動局(たとえばノキアセルラーデータセット) とつながるデータインタフェースを有するか、ネットワーク・インタフェースカードが移動通信網ネットワーク(ノキアセルラーカードフォンなど) と接続を設定するための移動局送受信装置も有することができるかのいずれかである。したがって、ネットワーク・インタフェースカードは前記物理的層を構成しリンク層の機能をも含むことができる。」(4頁6欄?5頁8欄) ホ.「【0026】インターネットプロトコルIPは、パケットデータ伝送(“データグラム”)を指定する。ホスト又はルータが、データネットワーク又はプロトコルスタックの上位レベルのいずれかからIPレベルでパケットを受信すると、第一ステップは当該ルータすなわち端末装置用としてパケットが正確に意図されているかどうかを調べることである。パケットがこのルータすなわち端末装置用として正確に意図されている場合、パケットはネットワーク層からこのノードの上位層へ転送される。パケットが別のノードへ意図されている場合、パケットをどのように処理すべきかを決定するためにいわゆるルーティングアルゴリズムがネットワーク層で実行される。まず、同じネットワークの別のノード用としてパケットが意図されているかどうかが調べられる。これが意図されている場合、リンク層の仕組みを利用してノードは宛先アドレスへパケットを伝送することができる。したがって、ネットワーク層レベルのIPアドレスは、本説明で以下に説明するいわゆるアドレス解決プロトコル(ARP) を用いることによって対応するリンク層アドレスと接続される。このノードでパケットはリンク層に対応するパケットに組み立てられ更に伝送される。 【0027】パケットが別のネットワーク用として意図されている場合、どのアドレスへパケットを伝送すべきかを発見するためにルーティング表を通してルーティングアルゴリズムが動作する。このルーティング表には通常、ルーティング表の中に見つけることのできないルーティングアドレスを持つようなすべてのパケットを伝送先とするいわゆるデフォルト・アドレスが含まれる。 【0028】図6の状況は、上で説明したルーティングの一例として使用することができ、第一ホストA と第二ホストB とがルータR を介して相互に通信する。第一ホストA が第二ホストB へ伝送すべきパケットを持っている状況では、ルーティングアルゴリズムはパケットの宛先アドレスが第一ホストA と同じネットワークに配置されていないことを検出する。したがって、ルーティングアルゴリズムはルーティング表の中を走りはじめ、適正なルータR についてのデータを見つける。したがって、第一ホストA は例えば、IEEE802.11規格に準拠するデータ伝送を利用してルータへパケットを伝送する。ルータR は、フレームを受信し、その内容を取り出し、その中からネットワーク層パケットに従ってヘッダを調べる。ルータRは、第二ホストB と同じネットワークに配置されており、そこでこのネットワークでルータR はイーサネットデータ伝送を利用して第二ホストB へ直接パケットを伝送することができる。 【0029】ネットワーク層レベルでの、結合された異なるデータネットワーク間のIPパケットの伝送はIPアドレスに基づいて行われる。IPアドレスに加えて、インターネットデータネットワークと接続した装置は装置アドレスとも呼ばれるいわゆるリンク層アドレスも有している。端末装置は、同じデータネットワークと接続された端末装置とパケット伝送におけるリンク層サービスを利用するので、該端末装置は、対応するリンク層アドレスとIPアドレスを接続するためのアドレス解決プロトコル(ARP) を必要とする。逆アドレス解決プロトコル(RARP)はリンク層アドレスを対応するIPアドレスと接続する。アドレス解決プロトコル(ARP) の機能は所定の時刻に使用されるデータ伝送接続の構造に依存する。例えば、直列接続を行うためのシリアルラインインターネットプロトコル(SLIP)とポイント・ツー・ポイントプロトコル(PPP) とは、アドレス解決プロトコル(ARP) をまったく必要としない。その理由は、この直列接続には公知の2つのエンドポイント(end point) しか含まれないからである。」(7頁11?12欄) へ.「【0034】図8は本発明が有利に適用されるシステムのネットワーク構成を示す。本発明による端末装置A を無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)やGSM 移動通信ネットワーク(MNW) などに接続することができる。無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)は、一つ又はそれ以上のセルから構成されるものであって、端末装置A がローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)と通信することができるWLANのアクセスポイント3 を各セルが含む。図8のシステムでは、WLANのアクセスポイント3 は、インターネット・データネットワークのようなIPデータネットワーク(NW1) とルータR を介してデータ伝送接続をしている。ルータR2、R3を介してこのIPデータネットワーク(NW1) と接続している他のデータネットワーク(NW2、NW3)もある。図8のシステムでは、接続はそれ自体公知のゲートウェイ(GW)を介してGSM 移動通信ネットワーク(MNW) からIPデータネットワークへも設定されている。したがって、端末装置A に関して、GSM 移動通信ネットワーク(MNW) を介してIPデータネットワークNW1 とデータ伝送接続を設定することができる。 【0035】図8のシステムでは、端末装置A のいわゆるホームネットワークは第二のデータネットワークNW2 であり、端末装置A がホームネットワークNW2 と接続していないときにはホームエージェント(HA)が端末装置の移動管理の責を負うものと仮定している。各データネットワークには更に、ホームネットワーク以外のデータネットワークで通信するための端末装置A の接続が可能となるフォーリンエージェント(foreign-agent) が含まれてもよい。 【0036】図9は簡略化した方法で本発明の有利な実施例による端末装置の機能性を示す。端末装置A はイーサネットNIC ドライバD1、無線ローカル・エリア・ネットワークNIC ドライバD2、データ伝送用移動通信ネットワーク(MNW) と接続するためのNIC ドライバD3を有する。これらのNIC ドライバD1、D2、D3はそれ自体公知の装置ドライバであり、オペレーティング・システムと接続するためのインタフェースを有する。これらのNIC ドライバD1、D2、D3には、通常対応するネットワーク・インタフェースカード(NIC) が設けられている。本発明による端末装置A には、対応するインタフェースがNIC ドライバD1、D2、D3と接続するために確立されるネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)が設けられている。ネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)は、上位レベルインタフェースを有し、このインタフェースによって該選択ドライバはプロトコルドライバ(PD)とネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)との間で情報を伝送するためにプロトコルドライバ(PD)と接続することができる。このインタフェースはそれ自体公知のインタフェースである。ネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)はこれら既存の層の変更を必要とせずに従来技術のプロトコルドライバ(PD)とNIC ドライバD1、D2、D3との間で確立される。プロトコルドライバ(PD)とは例えばTCP/IPプロトコルスタックを実現するTCP/IPタイプドライバであり、該スタックは例えばウィンドウズNTオペレーティングシステムソフトウェアで実現される。プロトコルドライバ(PD)とネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)間のデータ伝送が、端末装置A が所定の時刻に接続されるデータネットワークのタイプとは無関係に好適にはいつでも同じプロトコルを使用することによって行われることが望ましい。ネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)はプロトコルドライバ(PD)とNIC ドライバD1、D2、D3との間で必要なプロトコルとアドレス変更の役割を果たす。図9の略図は、たとえばネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)の機能と所定の時刻に使用されるネットワーク・インタフェースに対応するD1、D2、D3のNIC ドライバの選択を制御するためのネットワーク・インタフェース選択ドライバ用管理アプリケーション(MA)も図示する。」(8頁13?9頁15欄) ト.「【0046】次に、端末装置A が一つのデータネットワークから別のデータネットワークへアクティブ接続をシフトする状況を説明する。接続シフトの理由は、アクティブデータネットワークのサービス・エリア外へ端末装置A が転送されることである場合もあるし、別の理由として、ネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)が別のデータネットワークとの接続変更を開始する程度にまで、アクティブデータネットワークにおける接続品質がその時点で劣化するためである場合もある。接続変更の理由は、端末装置A が、その時点でアクティブなデータネットワークよりも高い優先度をユーザが与えているデータネットワークの動作範囲に入ったためである場合もある。端末装置A は例えばGSM 移動通信ネットワークと接続し、端末装置のユーザは、無線ローカル・エリア・ネットワークを利用できるオフィスに到着する。添付図12はこのデータ伝送ネットワークの変更を矢線図で図示するものである。端末装置A はGSM 移動通信ネットワークを介して第二の端末装置B と接続していると仮定する。この接続は例えばTCP 接続である。端末装置A は、トンネリングなしに、GSM 移動通信ネットワークに配置されているサーバ728 を介して直接第二端末装置B へIPパケットを伝送する。これは矢印729 と730 で例示されている。第二端末装置B は、第一端末装置のホーム・エージェント(HA)を介して第一端末装置A へIPパケットを伝送し(矢印731)、第一端末装置A からサーバ728 を介して第一端末装置A までパケットが伝送される(矢印732と733)。第一端末装置A では、ネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)が別のデータネットワーク(この例では無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)) との接続シフトを選択する(ブロック734)。第一端末装置A は、無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)を介してホーム・エージェント(HA)へ登録要求メッセージを伝送し(矢印735 と736)、同時に、伝送すべきパケットがあり、接続品質が適切であれば、GSM 移動通信ネットワークを介してIPパケットを伝送し続ける。ホーム・エージェント(HA)は、登録要求を受信し、それ自身のデータベースに第一端末装置A の新しいロケーションのアドレスを更新し、無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)を介して第一端末装置A へ登録応答メッセージを伝送する(矢印737 、738)。この後で、ホーム・エージェント(HA)は、GSM移動通信ネットワークの代わりに、第一端末装置A へアドレス指定されたパケットを無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)へ伝送する。登録応答メッセージの受信後、第一端末装置A はGSM 移動通信ネットワークとの接続を終了させ、無線ローカル・エリア・ネットワークを使ってパケット伝送を開始する。本発明の有利な実施例による以上説明した方法では、第二端末装置B とそのアプリケーションとは所定の時刻にこのデータネットワークでデータネットワークと第一端末装置A とが使用しているアドレスを知る必要はない。第二端末装置B のアプリケーションはそれでも第一端末装置の同じIPアドレスを使って伝送を行うことができる。 【0047】ネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)の機能についての要約として、この機能の目的はプロトコルドライバ(PD)からNIC ドライバD1、D2、D3へTCP/IPパケットを経路選択することであると言うことができる。ネットワーク・インタフェース選択ドライバの管理アプリケーション(MA)は、NIC ドライバD1、D2、D3がアクティブになるように選択し、それに対応してNIC ドライバD1、D2、D3が受信したパケットをプロトコルドライバ(PD)へ伝送し、伝送され受信されているパケットに必要な変更が行われる。さらに、ネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)は、パケットのトンネリング、登録メッセージの送受信、フォーリンエージェント解決メッセージの送受信及びフォーリンエージェントが伝送した広告メッセージの受信のようなIPプロトコル移動管理機能(モバイルIP) を有する。 【0048】ネットワーク・インタフェース選択ドライバの管理アプリケーション(MA)を用いて、ユーザは、品質パラメータのような端末装置A のネットワーク・インタフェースの機能的アラインメントを制御することができ、このアラインメントに基づいてネットワーク・インタフェース選択ドライバの管理アプリケーション(MA)は、例えばその時点で使用されているデータネットワークで接続品質が適しているかどうかとか、利用可能な別のデータネットワークとの接続を試みるべきかどうかなどについて調べる。ユーザはまたデータネットワークの中の優先度も決定することができ、最高の優先度をもつデータネットワークが適切な接続品質をもつデータネットワークの中から好適に選択される。ネットワーク・インタフェース選択ドライバの管理アプリケーション(MA)は必要な場合移動通信網MNW との接続設定と切断を指示する責務も有している。」(11頁19?20欄) 上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 まず、引用例上記イ.(請求項1)記載の「端末装置(A)」は、上記ロ.?ニ.にあるように「移動端末装置」であって、一例として挙げられるように「ポータブルコンピュータ」(上記ニ.【0011】冒頭)である。 そして、上記イ.(【請求項1】冒頭)、上記ニ.(【0011】図2)ほかにあるように、「ネットワーク・インタフェースカード(NIC1 、NIC2、NIC3) 」によって「通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)」に「パケット交換」による「データ伝送接続」を設定することが可能なものであり、 さらにまた、上記イ.(【請求項1】中段)の記載によれば、「ネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)」を有していて、該「ドライバ(NISD)」が、 「データ伝送に使用される前記通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)を選択する手段」と、 「前記パケットで使用される前記データ伝送ネットワークに従って第一アドレスを第二アドレスに変換する手段」を有しているものであり、 ここで「前記パケットで使用される前記データ伝送ネットワーク」とは、前記「選択する手段」によって選択された通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)のことであるから、「前記選択された通信ネットワークに従って第一アドレスを第二アドレスに変換する手段」ということができるものである。 また、引用例上記イ.(請求項3)の「第一アドレスを第二アドレスに変更する前記アドレス解決プロトコル(ARP)」という記載、および引用例上記ホ.の「ネットワーク層レベルのIPアドレスは、本説明で以下に説明するいわゆるアドレス解決プロトコル(ARP) を用いることによって対応するリンク層アドレスと接続される。」(【0026】後段)、「該端末装置は、対応するリンク層アドレスとIPアドレスを接続するためのアドレス解決プロトコル(ARP) を必要とする。」(【0029】中段)という記載によれば、 前記「第一アドレスを第二アドレスに変換する手段」とは、「アドレス解決プロトコル(ARP)」のことであって、これは「IPアドレスとリンク層アドレスを接続する手段」であるということができる。 そして、このような構成によって、上記イ.(請求項5)にあるように、「前記データ伝送接続で使用される前記通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)を前記データ伝送接続を終了することなく変更する」ものである。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「パケット交換データ伝送接続で使用される通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)を前記データ伝送接続を終了することなく変更するポータブルコンピュータであって、 前記ポータブルコンピュータのネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)が、 データ伝送に使用される前記通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)を選択する手段と、 前記選択された通信ネットワークに従ってIPアドレスとリンク層アドレスを接続する手段 を有するポータブルコンピュータ。」 [対比・判断] 補正後の発明と引用発明を対比すると、 まず、引用発明の「ポータブルコンピュータ」は、「ポータブル」(portable:持ち運び可能)な装置であるから「モバイル」(mobile:移動可能)なコンピュータ装置であって、補正後の発明の「モバイル・コンピューティング装置」に相当する。 また、引用発明の「パケット交換データ伝送接続で使用される通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)を前記データ伝送接続を終了することなく変更するポータブルコンピュータ」において、 引用発明の「パケット交換データ伝送接続」は、「通信」の一種であるのは技術常識であり、通信ネットワークを「前記データ伝送接続を終了することなく変更する」ものであるから、「継続中の通信を維持した状態」で通信ネットワークを変更するものであって、 通信ネットワークを「変更する」とは、ある通信ネットワークから別の通信ネットワークに変更するのであるから、複数の通信ネットワーク間を「移行する」ものであって、 各「通信ネットワーク」がそれぞれの「リンク方式」を有するのも技術常識であり、「複数の通信ネットワーク間を移行」するとは「複数のリンク方式間を移行」するといえることであるから、結局、 引用発明の「パケット交換データ伝送接続で使用される通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)を前記データ伝送接続を終了することなく変更するポータブルコンピュータ」は、補正後の発明の「継続中の通信を維持した状態で、複数のリンク方式間を移行するモバイル・コンピューティング装置」に相当する。 また、引用発明の「データ伝送に使用される前記通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)を選択する手段」において、 前述の様に「通信ネットワークを選択する」とは、それに対応する「リンクを選択する」ということであって、 「データ伝送に使用される」通信ネットワーク(リンク)とは、「移行する」先のリンクのことであり、 選択する「手段」とは、引用例の上記ニ.【0012】および図3にあるような「ポータブルコンピュータ」のソフトウェアとしての「ネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)」の一部であって、「モジュール」ということができるものであるから、結局、 引用発明の「データ伝送に使用される前記通信ネットワーク(NW1、NW2 、NW3 、MNW)を選択する手段」は、 補正後の発明の「移行するリンクを選択するリンク移行モジュール」に相当する。 そして、引用発明の「前記選択された通信ネットワークに従ってIPアドレスとリンク層アドレスを接続する手段」において、 「前記選択された通信ネットワーク」とは、前記「選択されたリンク」にあたり、 「リンク層アドレス」とは、いわゆる「MACアドレス」のことであるのは技術常識であって、「選択されたリンク」におけるものであるのは自明なことであり、 両アドレスを「接続する」とは、2つのアドレスを「結合する」ということができることであり、 引用発明の前記「接続する手段」も、同様にソフトウェアとしての「ネットワーク・インタフェース選択ドライバ(NISD)」の一部の「モジュール」であって、引用発明の認定でも述べたようにその実施例である「アドレス解決プロトコル(ARP)」はIPアドレスから対応するMACアドレスを参照解決するという意味で「MACからIPへの結合」をおこなうものであるから、「MACからIPへの結合モジュール」であり、結局、 引用発明の前記部分を補正後の発明と対比した場合、両者は「選択されたリンクに基づいて、IPアドレスを選択されたリンクのMACアドレスへ結合するMACからIPへの結合モジュール」である点において一致する。 したがって、両者は以下の点で一致し、また相違している。 (一致点) 「 継続中の通信を維持した状態で、複数のリンク方式間を移行するモバイル・コンピューティング装置であって、 移行するリンクを選択するリンク移行モジュールと、 選択されたリンクに基づいて、IPアドレスを選択されたリンクのMACアドレスへ結合するMACからIPへの結合モジュールと、 を有するモバイル・コンピューティング装置。」 (相違点1) 「モバイル・コンピューティング装置」が、補正後の発明では「IPベースのサブネットの装置に接続される」のに対し、引用発明ではそのような構成はない点。 (相違点2) 「リンク移行モジュール」が、補正後の発明では「移行するリンクを選択し、関係のあるホストに選択されたリンクのMACアドレスを通知する」のに対し、引用発明では「移行するリンクを選択」するのみである点。 (相違点3) 「結合モジュール」が、補正後の発明では「動的に」結合する「動的結合モジュール」であるのに対し、引用発明はその様な構成を備えていない点。 そこで、まず、上記相違点1の「IPベースのサブネットの装置に接続される」点について検討する。 例えば、引用例の上記ヘ.及び【図8】によれば、引用発明の「ポータブルコンピュータ」(端末装置A)は、「無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)やGSM 移動通信ネットワーク(MNW) などに接続することができる」(上記ヘ.【0034】冒頭)ものであって、これらのネットワークを介して「インターネット・データネットワークのようなIPデータネットワーク(NW1) 」(上記ヘ.【0034】欄14、4?5行)に接続されるものであるから、引用例の上記ホ.【図6】にあるデータ伝送におけるプロトコル階層をも考慮すれば、「インターネットプロトコル」すなわち「IP」で動作する「IPベース」のものであって、 前記「無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)」や「GSM 移動通信ネットワーク(MNW)」は、全体としてのネットワークの部分、即ち「サブネット」を構成するものであるから、例えば前記【図6】の「WLAN」内にある「WLANアクセスポイント」や、明示はないが「MNW」の「GSMセル」内に当然に存在するいわゆる「基地局」のような「装置」は、「IPベースのサブネットの装置」であって、引用発明の「ポータブルコンピュータ」(端末装置A)は、これらの装置に無線リンクにより「接続される」ことが開示されている。 したがって、補正後の発明が「IPベースのサブネットの装置に接続される」という相違点1は格別のものではない。 つぎに、相違点2の「リンク移行モジュール」が、「関係のあるホストに選択されたリンクのMACアドレスを通知する」点について検討する。 一般にリンクの移行時に限らず、IPベースの通信を行う際には、IPアドレスに対応するMACアドレスを取得するために「アドレス解決プロトコル(ARP)」による要求・応答メッセージがやりとりされるのは、IPベースの通信における周知技術であるが、 引用例の【図7】にもこのようなメッセージの構造が開示されていて、それによるとARP要求メッセージには、「センダ-リンク層アドレス」として、送信者(センダー、即ち端末装置A)自身の「MACアドレス」(リンク層アドレス)が記入されており、これが相手方の受信装置にブロードキャスト送信、即ち「通知」されるものであり、これに対するARP応答メッセージには、求めるIPアドレスを有する相手方の受信装置のMACアドレスが記入されて、返信応答として「通知」されてくるものである。 ここで、例えば上記メッセージの相手方の受信装置は当然に「関係のある」装置であるから、「関係のあるホスト」ということができ、結局のところ「関係のあるホストに選択されたリンクのMACアドレスを通知する」ことは、IPベースの通信を行う際には、「アドレス解決プロトコル(ARP)」によるメッセージ送信として通常行われる周知の手法であって、これを「リンク移行モジュール」が行うとした相違点2も格別のことではない。 また別の観点に寄れば、引用例の上記ト.【0046】及び【図12】にあるように、引用例においても「接続シフト」(リンク移行)を行う「ブロック734」の直後には、「登録要求737」が「WLANサブネット」を介して「HAホームエージェント」に送られており、少なくとも「関係のあるホスト」を含む「WLANサブネット」との間は、上記「アドレス解決プロトコル(ARP)」により当然に「MACアドレス」のアドレス解決が行われていると認められるので、リンク移行時に「関係のあるホストに選択されたリンクのMACアドレスを通知する」ものであるから、相違点2は格別のことではない。 最後に、相違点3の「動的に」結合する「動的結合モジュール」の点について検討する。 補正後の発明における「動的」結合の意味について検討するに、本願明細書の記載を全体として参酌しても「動的」とは、「静的」、「固定的」の逆の意味で時間的に変化するという程度のことであり、引用発明においても、例えば引用例上記ト.【図12】にあるような場合には、端末装置Aの移動に伴い当然に時間的に変化する「動的」な結合が行われていると認められるので相違点3も格別のことではない。 また、補正後の発明が奏する効果も前記引用発明及び周知技術から容易に予測出来る範囲内のものである。 よって、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、 平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成20年5月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明及び周知技術 引用発明及び周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項中で認定したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-07 |
結審通知日 | 2009-09-08 |
審決日 | 2009-09-25 |
出願番号 | 特願2003-83697(P2003-83697) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 真之、石田 紀之、矢頭 尚之 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 高野 洋 |
発明の名称 | リンク方式間の移行方法及びモバイル・コンピューティング装置 |
代理人 | 伊東 忠彦 |