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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1207162 |
審判番号 | 不服2008-17699 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-10 |
確定日 | 2009-11-12 |
事件の表示 | 特願2007-259302「定着装置及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月24日出願公開、特開2008- 15557〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成15年12月4日に出願した特願2003-405744号の一部を新たな特許出願とした特願2007-41713号の一部をさらに平成19年10月3日に新たな特許出願としたものであって、以下の手続きがなされたものである。 平成19年12月25日付けで拒絶理由の通知。 平成20年2月27日付けで、手続補正書の提出。 同年3月14日付けで、最後の拒絶理由の通知。 同年5月15日付けで、手続補正書の提出。 同年6月2日付けで、同年5月15日付けの手続補正を却下決定し、拒絶査定。 同年7月10日付けで、審判請求。 同年7月28日付けで、手続補正書の提出。 平成21年6月19日付けで、当審の審尋に対する回答書の提出。 第2 平成20年7月28日付けの手続補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年7月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正には、特許請求の範囲を次のように補正しようとする事項が含まれている。 (補正前) 「【請求項1】所定の経路に沿って移動するベルトと、 前記ベルトに熱を供給する発熱源を備え、前記ベルトを張架して支持する第1の支持部材と、 回転不能に固定配置され、前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材と、 前記ベルトを介して前記第2の支持部材に圧接し、該第2の支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体と を有し、 前記第2の支持部材は、前記回転体に対向し所定幅を持つ対向面と、該対向面の、前記ベルトの移動方向の下流側の端部に形成されて一部が前記ニップ部に含まれる湾曲部とを有し、前記対向面内の圧力分布は、通紙方向に沿って前記対向面の略中央部の圧力が前記下流側の端部の圧力より大きいことを特徴とする定着装置。 【請求項2】前記対向面が略平面状の底面を備えることを特徴とする請求項1記載の定着装置。 【請求項3】前記第1の支持部材は所定の駆動手段によって駆動され、前記ベルトは前記第1の支持部材に従動して移動することを特徴とする請求項1記載の定着装置。 【請求項4】請求項1乃至3の何れかの定着装置を備え、該定着装置に、トナー像が転写された印刷媒体を供給して定着することを特徴とする画像形成装置。」 これは、平成20年2月27日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲である。 (補正後) 「【請求項1】所定の経路に沿って移動するベルトと、 前記ベルトに熱を供給する発熱源を備え、前記ベルトを張架して支持する第1の支持部材と、 回転不能に固定配置され、前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材と、 前記ベルトを介して前記第2の支持部材に圧接し、該第2の支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体と を有し、 前記第2の支持部材は、前記回転体に対向し所定幅を持つ対向面と、該対向面の、前記ベルトの移動方向の下流側の端部に形成されて一部が前記ニップ部に含まれる湾曲部とを有し、前記対向面内の圧力分布は、通紙方向に沿って前記対向面の略中央部の圧力が前記下流側の端部の圧力より大きく、且つ、トナー像の転写された印刷用紙の定着しようとする用紙面が面する、前記ニップ部における前記第2の支持部材の表面硬度が、前記回転体の表面硬度より大きいと共に、前記ニップ部における前記第2の支持部材の表面が同一部材で前記ニップ部の入口から前記ニップ部の出口に亘って連続的に形成されて、前記第2の支持部材の、前記ニップ部の出口の部分はフッ素系樹脂で形成されることを特徴とする定着装置。 【請求項2】前記対向面が略平面状の底面を備えることを特徴とする請求項1記載の定着装置。 【請求項3】前記第1の支持部材は所定の駆動手段によって駆動され、前記ベルトは前記第1の支持部材に従動して移動することを特徴とする請求項1記載の定着装置。 【請求項4】請求項1乃至3の何れかの定着装置を備え、該定着装置に、トナー像が転写された印刷媒体を供給して定着することを特徴とする画像形成装置。」 この補正事項は、補正前の請求項1において、「トナー像の転写された印刷用紙の定着しようとする用紙面が面する、前記ニップ部における前記第2の支持部材の表面硬度が、前記回転体の表面硬度より大きいと共に、前記ニップ部における前記第2の支持部材の表面が同一部材で前記ニップ部の入口から前記ニップ部の出口に亘って連続的に形成されて、前記第2の支持部材の、前記ニップ部の出口の部分はフッ素系樹脂で形成される」という記載を追加して、第2の支持部材及び回転体の構成を限定するものであり、また、補正の前後において、発明が解決しようとする課題は同一であるということが一応いえる。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 2.引用刊行物の記載事項 (1)刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された特開平2-123387号公報(原査定の引用文献1。以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。 (1-a)「〔産業上の利用分野〕 本発明は、一般的には、複写機または印刷機に関し、より詳細には、加熱された融着部材に直接接触させることによる微粒子熱可塑性トナーの熱および圧力固定に関する。 〔従来の技術〕 ゼログラフィーの過程においては、複写する原画の光像は、典型的には、感光性部材上に静電潜像として記録され、検電マーキング粒子、すなわち通常トナーと呼ばれる粒子を用いて静電潜像が可視化される。可視トナー像は感光性部材上に直接固定されるか、あるいは感光性部材から他の支持体、例えば平面シートに転写され、数ある方法のうちの一つ、例えば熱と圧力とによって静電潜像はシート上に固定される。」(第2頁左上欄第2?16行) (1-b)「第4図に示す本発明の他の実施例に係る融着器38もベルト16を備えている。ベルト16は内部が加熱されたローラー40によって加熱される。この実施例では、第3図に示した実施例のローラー36に代えて、静止マンドレル42が用いられている。静止マンドレル42はローラー40と共働してベルト16を作動的に支持する。ベルト16及びマンドレル42は圧力ローラー30と共働してニップ28を形成する。トナー像20を形成しているコピー基質22はトナー像20を加熱されたベルトに接触させつつ、ニップ28を通過する。マンドレル42、ベルト16及び圧力ローラー30間にニップ圧力を形成するために必要な力はロータリーカム44により供給される。マンドレル42の形状は、カム44を介して力が作用したときのニップ28内の圧力分布が第4a図のようになるように形成される。第4a図に示したように、ニップ28前後の圧力分布は左右非対称である。このため、ニップ28内の最高圧力は、トナー像の温度が十分に高くなってトナーが溶解し、力が作用したときにコピー基質内に流入する以前には生じない。」(第4頁左上欄第15行?右上欄第16行) (1-c)「4.図面の簡単な説明 第1図は従来の代表的な融着器における時間に対する温度、圧力の変化をプロットした線図、第2図は本発明に係る融着器における時間に対する温度、圧力の変化をプロットした線図、第3図は本発明を適用した熱-圧力融着器の概略的な側面図、第4図は本発明に係る他の実施例の一部断面図を含む側面図、第4a図は第4図の融着器のニップの各位置における負荷すなわち圧力をプロットした線図である。」(第4頁右上欄?左下欄) (1-d)第4図(FIG.4)、第4a図(FIG.4a)は次のとおりである。 (1-e)第4図(FIG.4)をみると、静止マンドレル42には、ニップ28を形成する、圧力ローラー30に対向する対向面が、傾斜しているものの、設けられており、また、ベルト16の移動方向の下流側の端部であって、支持しているベルト16が上方の向きに変わる位置に、湾曲部が形成されていることがわかる。この湾曲部の形成については、図面から読み取れるだけでなく、ベルト16が円滑に回転するためには、静止マンドレル42の端部に丸み(R、アール)を有する湾曲部を設けることは、技術的に必須であり、第4図(FIG.4)で設けられていることは当然である。 次に、第4a図(FIG.4a)は、ニップ28内の圧力分布を示しているところ、横軸の「ニップまでの距離」は、ニップ28内の位置を示すものであることは明らかである。 そして、最高圧力を示すピーク位置は、ニップ28内の最高圧力の位置であり、第4図(FIG.4)でいえば、ロータリーカム44により、最大のニップ圧力が形成される位置である。そして、「ニップ28前後の圧力分布は左右非対称」であり、特に、最高圧力を示すピーク位置は、ニップ部の中央より下流側に寄った位置にある。 また、第4a図(FIG.4a)のピーク位置よりも右側の傾斜部分は、第4図(FIG.4)でいえば、最大のニップ圧力が形成される位置より右側(ベルト16の移動方向でみると、上流側)である。 さらに、第4a図(FIG.4a)のピーク位置よりも左側の部分は、ピーク位置付近に若干のなだらかな傾斜部分を経て、ほぼ垂直に落ちているが、これは、第4図(FIG.4)でいえば、最大のニップ圧力が形成される位置より左側(ベルト16の移動方向でみると、下流側)である。そして、この「ピーク位置付近にある若干のなだらかな傾斜部分」は、ニップ圧力がかけられている部分であるから、ニップ28内に位置してことは明らかである。 そうすると、ニップ28内の圧力分布は、ベルト16の移動方向(または通紙方向)に沿って、ニップ28中央位置より下流側に寄った位置に、最高圧力を示すピーク位置があり、さらに、その下流側に、最高圧力より小さい圧力である、若干のなだらかな傾斜部分を有するものである。 これら事項を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「所定の経路に沿って移動するベルト16と、 ベルト16を加熱するとともにベルト16を支持する、内部が加熱されたローラー40と、 ローラー40と共働してベルト16を作動的に支持する、静止マンドレル42と、 静止マンドレル42と共働してベルト16を挟むニップ28を形成する、圧力ローラー30と、 静止マンドレル42に接して設けられ、静止マンドレル42、ベルト16及び圧力ローラー30間にニップ圧力を形成するために必要な力を供給する、ロータリーカム44と を有し、 静止マンドレル42は、ニップ28を形成する、圧力ローラー30に対向する対向面と、ベルト16の移動方向の下流側の端部であって、支持しているベルト16が上方の向きに変わる位置にある湾曲部とを有し、 ニップ28内の圧力分布は、ベルト16の移動方向(または通紙方向)に沿って、ニップ28中央位置より下流側に寄った位置に、最高圧力を示すピーク位置があり、さらに、その下流側に、最高圧力より小さい圧力である、若干のなだらかな傾斜部分を有する、 融着器38。」 3.対比・判断 そこで、本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比する。 刊行物1記載の発明の「ベルト16」は、本願補正発明の「ベルト」に相当する。 刊行物1記載の発明の「ベルト16を加熱するとともにベルト16を支持する、内部が加熱されたローラー40」は、当然、ベルト16に熱を供給する発熱源を備えるから、本願補正発明の「前記ベルトに熱を供給する発熱源を備え、前記ベルトを張架して支持する第1の支持部材」の相当する。 また、刊行物1記載の発明の「ローラー40と共働してベルト16を作動的に支持する、静止マンドレル42」は、刊行物1の記載からみて、発熱源を備えないことは自明であり、また、静止マンドレル42は、ロータリーカム44により押圧されて、ニップ圧力を形成するために必要な力を供給されているから、基本的には静止しているが、多少は動く可能性があり、完全に固定されて不動とまではいえない。そうすると、刊行物1記載の発明の当該構成と、本願補正発明の「回転不能に固定配置され、前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材」とは、「基本的に回転不能に配置され、前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材」の点で共通する。 刊行物1記載の発明の「静止マンドレル42と共働してベルト16を挟むニップ28を形成する、圧力ローラー30」は、ベルト16を介して静止マンドレル42に能動的に圧接している(例えば、圧力ローラー30がニップ方向にバネ等で付勢されている)ことまでは記載がない。そうすると、刊行物1記載の発明の当該構成と、本願補正発明の「前記ベルトを介して前記第2の支持部材に圧接し、該第2の支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体」とは、「第2の支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体」の点で共通する。 刊行物1記載の発明の「ニップ28を形成する、圧力ローラー30に対向する対向面」は、実質的に、本願補正発明の「前記回転体に対向し所定幅を持つ対向面」に相当する。なお、本願補正発明では、対向面がベルトの移動方向に対して平行であるか否かの限定がなく、また、「所定幅」とは、ニップ部を形成できる程度の幅を有する意味というべきである。 刊行物1記載の発明の、静止マンドレル42が「ベルト16の移動方向の下流側の端部であって、支持しているベルト16が上方の向きに変わる位置にある湾曲部とを有し」と、 本願補正発明の、第2の支持部材が「該対向面の、前記ベルトの移動方向の下流側の端部に形成されて一部が前記ニップ部に含まれる湾曲部とを有し」とは、 第2の支持部材が「該対向面の、前記ベルトの移動方向の下流側の端部に形成された湾曲部とを有し」の点で共通する。なお、刊行物1記載の発明では、湾曲部の一部がニップ部に含まれるかどうかは不明である。 刊行物1記載の発明の静止マンドレル42(第2の支持部材)は、本願補正発明と同様に、「前記ニップ部における前記第2の支持部材の表面が同一部材で前記ニップ部の入口から前記ニップ部の出口に亘って連続的に形成されて」いることは、明らかである。 刊行物1記載の発明の「融着器38」は、本願補正発明の「定着装置」に相当する。 そうすると、両発明の一致点、相違点は次のとおりと認められる。 [一致点] 「所定の経路に沿って移動するベルトと、 前記ベルトに熱を供給する発熱源を備え、前記ベルトを張架して支持する第1の支持部材と、 基本的に回転不能に配置され、前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材と、 第2の支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体と を有し、 前記第2の支持部材は、前記回転体に対向し所定幅を持つ対向面と、該対向面の、前記ベルトの移動方向の下流側の端部に形成された湾曲部とを有し、 前記第2の支持部材は、前記ニップ部における前記第2の支持部材の表面が同一部材で前記ニップ部の入口から前記ニップ部の出口に亘って連続的に形成された、 定着装置。」 [相違点1] 本願補正発明では、第2の支持部材は、回転不能に固定配置され、回転体は、ベルトを介して第2の支持部材に圧接するのに対し、 刊行物1記載の発明では、静止マンドレル42(第2の支持部材)は、ロータリーカム44により押圧されて、ニップ圧力を形成するために必要な力を供給されているから、多少は動く可能性があり、完全に固定されて不動とまではいえない点。 [相違点2] 本願補正発明では、 (a)第2の支持部材は、対向面の、前記ベルトの移動方向の下流側の端部に形成されて一部が前記ニップ部に含まれる湾曲部を有し、 (b)前記対向面内の圧力分布は、通紙方向に沿って前記対向面の略中央部の圧力が前記下流側の端部の圧力より大きく、且つ、 (c)トナー像の転写された印刷用紙の定着しようとする用紙面が面する、前記ニップ部における前記第2の支持部材の表面硬度が、前記回転体の表面硬度より大きいのに対し、 刊行物1記載の発明では、 (a)静止マンドレル42(第2の支持部材)の湾曲部の一部がニップ部に含まれるかどうかは不明であり、 (b)ニップ28内の圧力分布は、ベルト16の移動方向(または通紙方向)に沿って、ニップ28中央位置より下流側に寄った位置に、最高圧力を示すピーク位置があり、さらに、その下流側に、最高圧力より小さい圧力である、若干のなだらかな傾斜部分を有するものであり、 (c)静止マンドレル42(第2の支持部材)と圧力ローラー30(回転体)の表面硬度の大きさは特定がない点。 [相違点3] 本願補正発明では、第2の支持部材の、前記ニップ部の出口の部分はフッ素系樹脂で形成されるのに対し、 刊行物1記載の発明では、そのような特定がない点。 次に上記相違点について検討する。 (相違点1について) 刊行物1記載の発明において、静止マンドレル42(第2の支持部材)は、回転部材ではなく、静止部材であり、基本的には、本願補正発明と同様に、「回転不能に固定配置」になっているということができる。 そして、一般に、定着装置において、加圧ローラをバネ等で付勢して、他方の定着ローラ等を押圧することは、文献を示すまでもなく、周知であるから、 刊行物1記載の発明において、静止マンドレル42(第2の支持部材)を回転不能に固定配置にして、圧力ローラー30(回転体)が積極的に静止マンドレル42(第2の支持部材)に圧接するようになすことは、当業者が適宜容易になし得ることである。 (相違点2について) まず、本願補正発明の「(c)トナー像の転写された印刷用紙の定着しようとする用紙面が面する、前記ニップ部における前記第2の支持部材の表面硬度が、前記回転体の表面硬度より大きい」は、本件補正において導入された事項であるところ、その補正の根拠として、審判請求書では、次のようにに説明されている。 『「トナー像の転写された印刷用紙の定着しようとする用紙面が面する、前記ニップ部における前記第2の支持部材の表面硬度が、前記回転体の表面硬度より大きい」の補正は、主に出願当初の段落0014の「加圧部材6は、シリコン、フッ素系、PI(poly imide)又はPAI(poly amide imide)などの耐熱性の高い樹脂、或いはアルミナなどの焼結体やガラスなど耐熱性及び断熱性の高い材料でできており」の記述、及び出願当初の段落0016の「加圧ローラ7は、その内部構造を示す図5に示すように、パイプ状の芯金7aとその回りに形成された弾性層7bとで構成され」の記述に基づいています。』 この説明及び本願の図2から判断するに、本願補正発明の「(c)トナー像の転写された印刷用紙の定着しようとする用紙面が面する、前記ニップ部における前記第2の支持部材の表面硬度が、前記回転体の表面硬度より大きい」とは、実際的には、本願の図2に示されるように、第2の部材(加圧部材6)が、加圧ローラ7の弾性層を押して変形させて、加圧ローラ7に食い込むようにして、ニップ部9が形成されることを意味するということができる。 しかしながら、一般に、定着フィルムを用いた定着装置において、定着フィルムを加熱する加熱体が、定着フィルムを介して、弾性層を有する加圧ローラ(圧力ローラー)に押圧して変形させて、食い込むようにしてニップ部を形成するタイプは、本願出願前に周知である。例えば、原審の審査官が例示した特開平2-157878号公報(第6図の実施例など)、特開平11-52767号公報(図2及び図3の弾性体13など)、特開平8-272240号公報(図3の第2の実施例など)を参照。 そして、このタイプでは、定着フィルムを加熱する加熱体は、刊行物1記載の発明における静止マンドレル42(第2の支持部材)のような固定部材の機能(固定部材は加圧部材と対向してニップ部を形成する)を兼用していることは、明らかである。 また、このタイプで、加熱体の通紙方向端部に湾曲部(アール部)を設けて、その湾曲部(アール部)の一部が、加圧ローラの弾性層に食い込んだニップ部に含まれるものも周知である(同じく上記例示文献を参照)。 そして、定着フィルムを用いた定着装置は、定着ベルトを用いた定着装置に、類似する関連技術である。 そうすると、刊行物1記載の発明において、上記周知技術を適用して、第2の部材(静止マンドレル42)が、圧力ローラの弾性層を押して変形させて、圧力ローラに食い込むようにして、ニップ部9を形成する(相違点2に係る本願補正発明の上記(c)の構成を実質的に満たす)とともに、第2の部材(静止マンドレル42)の下流側端部に形成された湾曲部の一部が、ニップ部に含まれる形態(同じく本願補正発明の上記(a)の構成を満たす)とすることは、当業者が容易になし得ることである。 なお、請求人は、上記周知技術の例示文献について、回答書で、次のように主張している。 『これらの参照文献に開示されている、本願の第2の支持部材に相当する部材は、何れもそのニップ部表面に加熱体としての機能を備えるもので(本願請求項1の第2の支持部材は、発熱源を備えない)、これらに開示された当該部材を、例えば引用文献2(特開2003-195671号公報)の固定部材2bに換えて採用したとしても、本審判請求人が平成20年7月28日付け手続補正書によって補正された審判請求書によって掲げた効果(4)、即ち、「上記効果(2)でトナー粒子が潰しやすくなった用紙がニップ部を通過する過程で、ニップ部の約中央部に到達すると十分な圧力が加えられて定着が行われ、ニップ部を通過し終える段階ではベルトの温度が低下するため、ベルトへの再度の巻き付きを避けることが可能となる(段落0031参照)」という効果を得ることができません。』 しかし、上記周知技術で例示した加熱体は、加熱機能とともに、固定部材として、静止マンドレル42(第2の支持部材)と同様の機能を果たしているのであるから、後者の固定部材としての機能に着目した上で、刊行物1記載の発明において、上記した適用を行うことに何ら困難性がない。そして、その適用に際して、前者の加熱機能をあわせて適用しなければならない必然性はなく、当業者であれば、加熱機能を必ずあわせて適用するような発想には至らない。 また、相違点2の(b)の点に関して、 本願補正発明の「(b)前記対向面内の圧力分布は、通紙方向に沿って前記対向面の略中央部の圧力が前記下流側の端部の圧力より大きく」することについて、請求人は、審判請求書において、次のように主張している。 『・通紙方向に沿って対向面の略中央部の圧力が下流側の端部の圧力より大きい点(上記発明事項(E)より) ・第2の支持部材に熱源がない点(上記発明事項(C)より) から更に以下の効果(4)を得ることができます。 (4)上記効果(2)のでトナー粒子が潰しやすくなった用紙がニップ部を通過する過程で、ニップ部の約中央部に到達すると十分な圧力が加えられて定着が行われ、ニップ部を通過し終える段階ではベルトの温度が低下するため、ベルトへの再度の巻き付きを避けることが可能となる(段落0031参照)。』 そこで検討すると、熱源(加熱機能)については、既に検討したとおりである。また、通紙方向に沿って対向面の略中央部の圧力が下流側の端部の圧力より大きい点については、請求人は、「段落0031参照」として効果を主張しているが、本願明細書の【0031】では、「このニップ部9の終端部で、定着ベルト5から分離された印刷用紙10は、再度定着ベルト5に接触して加熱されることはないため、定着ベルト5への再度の巻き付きを避けることができる」としか記載されておらず、審判請求書の説明とは、必ずしも一致しない。 また、本願補正発明の「対向面の略中央部」という規定は、「略」という表現が曖昧であり、位置が特定されないものでもある。 したがって、格別の技術的意義を認めることができない。 そして、刊行物1記載の発明の「(b)ニップ28内の圧力分布は、ベルト16の移動方向(または通紙方向)に沿って、ニップ28中央位置より下流側に寄った位置に、最高圧力を示すピーク位置があり、さらに、その下流側に、最高圧力より小さい圧力である、若干のなだらかな傾斜部分を有するもの」において、最高圧力を示すピーク位置を多少、上流側に調整して、ニップ28中央位置の下流側であるがニップ28中央位置にもう少し近い位置(これでも「対向面の略中央部」に相当するといえる)に配置することは、当業者が必要に応じてなし得る設計的事項に過ぎない。 したがって、刊行物1記載の発明において、相違点2に係る本願補正発明のごとくなすことは、当業者が容易になし得ることである。 (相違点3について) 本願補正発明は、「第2の支持部材の、前記ニップ部の出口の部分はフッ素系樹脂で形成される」と規定するが、その技術的意義として、審判請求書では、『第2の支持部材の、ニップ部の出口の部分はフッ素系樹脂で形成されているため、十分に定着された用紙が分離性がよくニップ部から排出されることになる。』と説明する。 ここで、用紙は、第2の支持部材(加圧部材6)に接するのではなく、定着ベルトと回転体(加圧ローラ)に挟まれるものである(用紙と第2の支持部材(加圧部材6)の間には、定着ベルトが介在する)から、請求人が説明する、本願補正発明の当該構成と、用紙の分離性との関係は、必ずしも明確でない。 しかし、それでも、固定部材(第2の支持部材)と定着ベルト又は定着フィルムとの関係(定着ベルトのスリップや駆動トルクを軽減したいなど)から、固定部材(第2の支持部材)の表面をフッ素系樹脂材料で覆うことは、本願出願前に周知の技術である。例えば、上記例示文献の特開平11-52767号公報の【0064】、原査定の引用文献2(特開2003-195671号)の図6,【0022】【0023】【請求項10】を参照。 そうしてみると、刊行物1記載の発明において、静止マンドレル42(第2の支持部材)の表面をフッ素系樹脂で覆ったり、あるいは、静止マンドレル42(第2の支持部材)全体をフッ素系樹脂で形成したりして、相違点3に係る本願補正発明のごとくなすことは、当業者が容易に想到し得ることである。 (効果について) そして、全体として、本願補正発明によってもたらされる効果も、刊行物1に記載された事項、及び上記周知技術から当業者であれば予測し得る程度ものであり、格別なものとはいえない。 (まとめ) したがって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成20年7月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4は、平成20年2月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】所定の経路に沿って移動するベルトと、 前記ベルトに熱を供給する発熱源を備え、前記ベルトを張架して支持する第1の支持部材と、 回転不能に固定配置され、前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材と、 前記ベルトを介して前記第2の支持部材に圧接し、該第2の支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体と を有し、 前記第2の支持部材は、前記回転体に対向し所定幅を持つ対向面と、該対向面の、前記ベルトの移動方向の下流側の端部に形成されて一部が前記ニップ部に含まれる湾曲部とを有し、前記対向面内の圧力分布は、通紙方向に沿って前記対向面の略中央部の圧力が前記下流側の端部の圧力より大きいことを特徴とする定着装置。」 2.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物1,2は以下のとおりである。 (1)刊行物1:特開平2-123387号公報 これは、上記「第2 2.(1)」で示した刊行物1である。 (2)刊行物2:特開2003-195671号公報 刊行物2には、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。 (2-a)「【0018】 【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1乃至と図3において、搬送するシート材の記録用紙上の被加熱体を加熱して定着する定着装置0は、図示の矢印(A)方向に回転可能に支持されて発熱する定着ベルト搬送ローラ1と、定着ベルト搬送ローラ1と非回転の固定された定着固定部材2に張架されて図示の矢印(B)方向に回動可能な定着ベルト3と、定着ベルト3を介し固定部材2bに保持されてシート材(S)の記録用紙の図示の矢印(C)方向の遠ざかる方向に延伸形状の耐熱弾性部材2aを加圧して広幅(拡幅)が可能な定着ニップ部(N)を形成する図示の矢印(D)方向に回転可能に保持されて主動する加圧ローラ4と、上記加圧ローラ4と定着ベルト3から分離するシート材(S)の記録用紙の巻き付きを防止する曲率以上からなる円弧径を形成する曲率分離部形成手段5とからなり、塗布材や分離爪等を使用することなく耐久性が優れシート材(S)の記録用紙の巻き付きの発生を確実に防止して定着速度も高速で、コールドオフセットや定着性の低下を発生させることなく低コストで小型である。 【0019】ベルト方式の上記定着装置0は、定着ベルト3を介して定着固定部材2に圧接して定着ニップ部(N)を形成してなる上記加圧ローラ4と定着ベルト3が張力付与手段1bで張力が付与され、加熱手段のヒータ1aを内蔵した定着ベルト搬送ローラ1を介して発熱し、シート材(S)の記録用紙上の未定着のトナー(t)を加熱溶融することにより未定着画像をシート材(S)の記録用紙に加熱定着させる。従って、定着ベルト3に張力を付与すると共に、定着ベルト3に卷回して定着ベルト3を搬送する定着ベルト搬送ローラ1の作用によって、定着ベルト3の回転が円滑に行なえる。その結果、定着ニップ部(N)内の定着ベルト3のスリップによる画像の微小な位置ずれが原因で起きる画像乱れの発生を防止する上記定着装置0を提供することが出来るようになった。定着固定部材2が、耐熱弾性部材2aと耐熱弾性部材2aを保持する非回転で固定された固定部材2bで形成されている。尚、固定部材2bは、固定部材2b_(1)の形状(図1を参照)に限定されものでなく、定着性能や設計上の規制で。例えば、図2に図示の固定部材2b_(2)の形状のように、レイアウト等の必要に応じて適時にその形状は、いろいろな形状に変更される。シート材(S)の記録用紙の搬送方向上流側の定着ニップ部(N)の入り口には、定着ベルト3を介して、耐熱弾性部材2aを保持する固定部材2bの一部によって、シート材(S)の記録用紙を定着ニップ部(N)の入り口に案内するように形成されたシート材(S)の記録用紙の案内工程を有する。シート材(S)の記録用紙の搬送方向中流側の定着ニップ部(N)内は、定着ベルト3を介して、耐熱弾性部材2aと、加圧手段4bの弾性部材により加圧力が付与されて駆動手段4aの駆動モータを設けて主動の回転駆動をする剛性を有する上記加圧ローラ4によって、速度変動が抑制され、定着ニップ部(N)が形成される定着工程を有する。上記加圧ローラ4は、熱膨張や圧力変形による周速度の変動が少ないことが、画像乱れ現象を防止する方法として必要である。そこで、上記加圧ローラ4は、表面硬度がJIS-Aの硬度計で70度以上の剛性を有しており、定着ニップ部(N)内の定着工程における速度変動を小さくして異常画像の発生を抑えて画像乱れを防止するようになっている。 【0020】シート材(S)の記録用紙の搬送方向下流側の定着ニップ部(N)の出口には、定着ベルト3を介して、定着固定部材2の耐熱弾性部材2aを保持する固定部材2bのシート材(S)の分離部に、シート材(S)が定着ベルト3に巻き付くことなく分離可能な曲率分離部形成手段5の円弧形状部5aが形成された分離工程を有する。分離可能な曲率分離部形成手段5の円弧形状部5aとは、シート材(S)が定着ニップ部(N)の出口において、定着ベルト3から分離するためにはシート材(S)の分離モーメント(M1)>トナー(t)/定着ベルト3界面の接着モーメント(M2)の関係がある。曲率分離部形成手段5の円弧形状部5aの円弧径、シート材(S)の曲げ剛性、トナー(t)/定着ベルト3の離型性等が主要因として挙げられるが、曲率分離部形成手段5の上記円弧形状部5aの円弧径が小さい程、曲率分離の効果が得られる(図3を参照)。定着ニップ部(N)の出口において、曲率分離部形成手段5の円弧形状部5aは、円弧径が小さい曲率(1/r、rは円弧半径)の大きな円弧形状を用いることによって、曲率分離による分離性能の向上を図るようになっている。その結果、定着ニップ部(N)の出口において、分離手段の分離爪や分離ガイド板等を定着ベルト3等に当接させる必要がなく使用することなく、シート材(S)の巻き付きが防止され、即ち、確実に分離が可能である。又、シート材(S)を定着ニップ部(N)の入り口に案内するように形成されたシート材(S)の案内工程においては、固定部材2bの一部が未定着画像を有するシート材(S)が定着ベルト3に接触して擦れることなく円滑に搬送されるような形状をなしており、定着ニップ部(N)が形成される定着工程においては充分に広幅が可能な定着ニップ部(N)によって未定着のトナー(t)のシート材(S)への定着が、コールドオフセットや定着性の低下を生じさせることなく、安定して行なわれるので、定着ニップ部(N)の入り口、及び、定着ニップ部(N)の内で、未定着のトナー(t)がシート材(S)上に溶融定着する前に、トナー(t)の擦れ、及び、定着ニップ部(N)の内の速度変動による微小な位置ズレが発生して起きる異常画像の画像乱れが発生することはない。更に、上記定着装置0は、簡易な構成で、定着ベルト3や上記加圧ローラ4を断熱部材や薄肉低熱容量化によって、更に高速立ち上げを実現して省エネルギー定着が可能となるだけでなく装置の小型軽量化が図られるようになった。 【0021】図4又は図5において、上記定着装置0における定着固定部材2の耐熱弾性部材2aは、固定部材2bの固定部材2b_(1)、又は、固定部材2b_(2)から定着ニップ部(N)側に突き出た段差(G)からなる。定着固定部材2を構成する固定部材2bの固定部材2b_(1)、又は、固定部材2b_(2)は、耐熱弾性部材2aの定着ニップ部(N)側の面を除く他の三面を保持し、定着ニップ部(N)の入り口部は未定着画像を有するシート材(S)が定着ベルト3に接触して擦れることなく円滑に搬送されるように、定着ベルト3を案内する作用をなす形状を成し、定着ニップ部(N)では耐熱弾性部材2aが固定部材2b_(1)、又は、固定部材2b_(2)に対して突き出す位置関係の段差(G)を設ける形状をなし、定着ニップ部(N)の出口においてはシート材(S)が容易に定着ベルト3から分離可能な形状、即ち、定着ニップ部(N)の出口部の曲率(1/r)を大きくして、曲率分離によるセルフ(Self)分離の可能な形状の曲率分離部形成手段5の上記円弧形状部5aを設ける形状をなしているから、巻き付きの発生を防止する効果に加えて、簡易な構成の定着固定部材2により低コスト化した定着装置0を提供することができるようになった。定着固定部材2の耐熱弾性部材2aの固定部材2bから定着ニップ部(N)側に突き出た段差(G)は、定着ニップ部(N)の形成時に加圧ローラ4の加圧力で解消する方向に減少するようになっている(図1と図2を参照)。上記定着装置0における定着固定部材2を形成する耐熱弾性部材2aと固定部材2bの固定部材2b_(1)、又は、固定部材2b_(2)の境界部には逃げ部2cが設けてある。これは、耐熱弾性部材2aが加圧ローラ4の加圧によって圧縮された際に、横方向へ変更歪部が生じる。この耐熱弾性部材2aの変更歪部が、逃げ部2cにより、固定部材2b_(1)、又は、固定部材2b_(2)との境界部で定着ニップ部(N)面より外方向にはみ出さないようになっている。従って、上記定着装置0は、記録紙の巻き付き等の防止を図ると共に、シート材(S)の安定した搬送が円滑に行なわれ、その結果、シート材(S)の皺、速度変動による画像の乱れが生じることがない。 【0022】図6は本発明の他の実施形態に係る定着装置の要部を示す図であり、定着装置0におけるシート材(S)の矢印(C)方向の搬送方向下流側の定着ニップ部(N)の出口は、定着ベルト3を介して定着固定部材2の耐熱弾性部材2aを保持する固定部材2bの図示しない固定部材2b_(1)、又は、固定部材2b_(2)に曲率分離部形成手段5の円弧形状部5aと、加圧ローラ4によって定着ニップ部(N)が形成された分離工程を有する。図示しない固定部材2b_(1)、又は、固定部材2b_(2)に形成された曲率分離部形成手段5の円弧形状部5aは、シート材(S)が定着ベルト3に巻き付くことなく分離可能な円弧形状をなしている。更には、形成される定着ニップ部(N)は、上記加圧ローラ4からシート材(S)の図示の矢印(C)方向の遠ざかる方向に凹形状に形成されている。従って、上記定着装置0は、特には、定着ベルト3への巻き付きを防止して、及び、加圧ローラ4への巻き付きを防止して、両面定着が可能になり、片面定着時、定着ニップ部(N)の出口分離部において曲率分離部形成手段5の上記円弧形状部5a円弧径が小さければ、定着ニップ部(N)の形状が定着ベルト3にシート材(S)が接近する方向に形成されている凹状態であっても、曲率分離によるセルフ(Self)分離が確実に行なわれる。他方、両面定着時において、定着ニップ部(N)の形状が凹状態のため、上記加圧ローラ4にシート材(S)がが巻き付かないような分離角度を形成している。定着装置0は、耐熱弾性部材2aと耐熱弾性部材2aを支持する固定部材2bの図示しない固定部材2b_(1)、又は、固定部材2b_(2)で形成される定着固定部材2の内、定着ベルト3の内周面と接触する側の定着固定部材2の表面に低摩擦化する低摩擦化手段6を設けている。 【0023】加圧ローラ4は、駆動手段4aによって回転駆動されて、定着ベルト3は主動の加圧ローラ4の回転駆動によって連れ回る構成になって速度変動が抑制されている。このとき、上記加圧ローラ4と定着ベルト3間の摩擦係数(μ1)と定着ベルト3と定着固定部材2との摩擦係数(μ2)の相対的な大きさの関係において、定着ベルト3がスリップして円滑に回転しない場合が有る。例えば、上記加圧ローラ4と定着ベルト3間の摩擦係数(μ1)<定着ベルト3と定着固定部材2との摩擦係数(μ2)のときなどはベルトスリップが発生する。かかる不具合を防止するため、上記低摩擦化手段6は定着ベルト3と定着固定部材2との摩擦係数を低減するようになっている。上記低摩擦化手段6は、特には、定着ベルト3のスリップによる画像乱れの発生を防止すると共に定着ベルト3、及び、定着固定部材2の、特に、耐熱弾性部材2aの耐久性を向上させている。その効果としては、低摩擦化によって、定着ニップ部(N)内の定着ベルト3のスリップによる画像の微小な位置ずれが原因で起きる画像乱れの発生をなくせる。上記低摩擦化手段6は、低摩擦化する手段として、定着ベルト3の内周面と接触する側の定着固定部材2の表面に低摩擦特性を有するフッソ樹脂系材料6aの、PFA、FEP、PTFE等を厚さ10μ乃至30μの範囲で塗布して、シート材(S)の巻き付き等の防止を図ると共に、特に、定着ベルト3のスリップによる画像乱れの発生を防止して、定着ベルト3、及び、定着固定部材2の、特に、耐熱弾性部材2aの耐久性が向上した上記定着装置0を提供することが出来るようになった。」 (2-b)図2、図5、図6を以下に示す。 (2-c)また、(2-a)(2-b)の記載から、定着固定部材2が、耐熱弾性部材2aと耐熱弾性部材2aを保持する固定部材2bで形成されており、定着固定部材2に対し、加圧ローラ4からの加圧力がかけられて、定着ニップ部が形成された時に、耐熱弾性部材2aの段差(G)が解消して(上記【0021】参照)、耐熱弾性部材2aには加圧ローラ4に対向し所定幅を持つ対向面が形成されるとともに、固定部材2bにおける定着ベルト移動方向の下流側の端部に円弧形状部5aが形成されるものであることが、理解される。 そして、シート材(S)が定着ベルト3に巻き付くことなく分離できる作用や図面などからみて、円弧形状部5aの一部が、定着ニップ部Nのニップ圧の影響を受ける位置にあること、すなわち、広い意味での「定着ニップ部」に含まれることは、当然である。 また、定着固定部材2に発熱源がないことも理解される。 これら事項を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「所定の経路に沿って移動する定着ベルト3と、 加熱手段のヒータ1aを内蔵し、定着ベルト3を張架して支持する定着ベルト搬送ローラ1と、 非回転に固定され、定着ベルト搬送ローラ1と共に定着ベルト3を張架して支持し、耐熱弾性部材2aと耐熱弾性部材2aを保持する固定部材2bとで形成された、発熱源を備えない定着固定部材2と、 定着ベルト3を介して耐熱弾性部材2aを加圧して広幅(拡幅)が可能な定着ニップ部(N)を形成する加圧ローラ4と を有し、 定着固定部材2において、耐熱弾性部材2aは、固定部材2bから定着ニップ部(N)側に突き出た段差(G)からなり、定着固定部材2に対し、加圧ローラ4からの加圧力がかけられて、定着ニップ部が形成された時に、段差(G)が解消して、耐熱弾性部材2aには加圧ローラ4に対向し所定幅を持つ対向面が形成されるとともに、固定部材2bにおける定着ベルト移動方向の下流側の端部に円弧形状部5aが形成されるものである、 定着装置。」 3.対比・判断 そこで、本願発明1と刊行物2記載の発明とを対比すると、 刊行物2記載の発明の「定着ベルト3」「加熱手段のヒータ1a」「定着ベルト搬送ローラ1」は、それぞれ、本願発明1の「ベルト」「発熱源」「第1の支持部材」に相当する。 また、刊行物2記載の発明の「非回転に固定され、定着ベルト搬送ローラ1と共に定着ベルト3を張架して支持し、耐熱弾性部材2aと耐熱弾性部材2aを保持する固定部材2bとで形成された、発熱源を備えない定着固定部材2」は、本願発明1の「回転不能に固定配置され、前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材」に相当する。但し、刊行物2記載の発明では、耐熱弾性部材2aと固定部材2bとで形成されている。 刊行物2記載の発明の「定着ベルト3を介して耐熱弾性部材2aを加圧して広幅(拡幅)が可能な定着ニップ部(N)を形成する加圧ローラ4」は、、本願発明1の「前記ベルトを介して前記第2の支持部材に圧接し、該第2の支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体」に相当する。但し、刊行物2記載の発明では、特に、耐熱弾性部材2aを加圧して広幅(拡幅)が可能な定着ニップ部(N)を形成している。 そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりと認められる。 [一致点] 「所定の経路に沿って移動するベルトと、 前記ベルトに熱を供給する発熱源を備え、前記ベルトを張架して支持する第1の支持部材と、 回転不能に固定配置され、前記第1の支持部材と共に前記ベルトを張架して支持し、発熱源を備えない第2の支持部材と、 前記ベルトを介して前記第2の支持部材に圧接し、該第2の支持部材と共に前記ベルトを挟むニップ部を形成する回転体と を有する、 定着装置。」 [相違点] 本願発明1では、 第2の支持部材は、回転体に対向し所定幅を持つ対向面と、該対向面の、ベルトの移動方向の下流側の端部に形成されて一部がニップ部に含まれる湾曲部とを有し、 前記対向面内の圧力分布は、通紙方向に沿って前記対向面の略中央部の圧力が前記下流側の端部の圧力より大きいのに対し、 刊行物2記載の発明では、 定着固定部材2(第2の支持部材)は、耐熱弾性部材2aと耐熱弾性部材2aを保持する固定部材2bとで形成されており、 定着固定部材2において、耐熱弾性部材2aは、固定部材2bから定着ニップ部(N)側に突き出た段差(G)からなり、定着固定部材2に対し、加圧ローラ4からの加圧力がかけられて、定着ニップ部が形成された時に、段差(G)が解消して、耐熱弾性部材2aには加圧ローラ4に対向し所定幅を持つ対向面が形成されるとともに、固定部材2bにおける定着ベルト移動方向の下流側の端部に円弧形状部5aが形成されるものであり、 また、対向面内の圧力分布については、特定されていない点。 そこで相違点について検討する。 (1)第2の支持部材について、 本願発明1では、回転体(加圧ローラ)からの加圧力の有無に関係なく、「湾曲部」が形成されているものと解することができるが、 刊行物2記載の発明では、加圧ローラ4からの加圧力がかけられて、定着ニップ部が形成された時に、初めて、固定部材2bにおける定着ベルト移動方向の下流側の端部に「円弧形状部5a」が形成されるものであり、この段階では、刊行物2記載の発明の「円弧形状部5a」は、それぞれ、本願発明1の「湾曲部」に相当するものとなっている。 また、上述のとおり、刊行物2において、シート材(S)が定着ベルト3に巻き付くことなく分離できる作用や図面などからみて、円弧形状部5aの一部が、定着ニップ部Nのニップ圧の影響を受ける位置にあること、すなわち、広い意味での「定着ニップ部」に含まれることは、当然である。 ところで、定着固定部材(第2の支持部材)における定着ベルト移動方向の下流側の端部に円弧部(湾曲部、アール部)を設けることは、定着ベルトの円滑な移動などのために必須の構成であり、例えば、刊行物1のFIG4.の静止マンドレル42には、そのような円弧部(湾曲部、アール部)が形成されている。また、上記「第2 3.」で示した例示文献においても、適当な円弧部(湾曲部、アール部)が設けられており、一般に周知技術である。 そうすると、刊行物2記載の発明において、加圧ローラ4からの加圧力がかけられて、定着ニップ部が形成された時に、初めて、固定部材2bにおける定着ベルト移動方向の下流側の端部に「円弧形状部5a」が形成されることに代えて、加圧ローラ4からの加圧力の有無に関係なく、あらかじめ固定部材2bにおける定着ベルト移動方向の下流側の端部に「円弧形状部5a」を形成しておくことは、当業者が容易になし得ることである。 (2)対向面内の圧力分布について 次に、刊行物2記載の発明では、対向面内の圧力分布が特定されていないが、刊行物2記載の発明でも、本願発明1と同様に、対向面内の圧力分布は、通紙方向に沿って対向面の略中央部の圧力が下流側の端部の圧力より大きいことは、自明である。 よって、この点は、実質的に相違点でない。 (3)したがって、刊行物2記載の発明において、相違点に係る本願発明1のごとくなすことは、当業者が容易になし得ることである。 (効果について) そして、全体として、本願発明1によってもたらされる効果も、刊行物1,2に記載された事項、及び周知技術から当業者であれば予測し得る程度ものであり、格別なものとはいえない。 (まとめ) したがって、本願発明1は、刊行物2記載の発明、及び刊行物1記載の技術、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである 4.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-03 |
結審通知日 | 2009-09-08 |
審決日 | 2009-09-28 |
出願番号 | 特願2007-259302(P2007-259302) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G03G)
P 1 8・ 121- Z (G03G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 祐介 |
特許庁審判長 |
木村 史郎 |
特許庁審判官 |
大森 伸一 伏見 隆夫 |
発明の名称 | 定着装置及び画像形成装置 |
代理人 | 山形 洋一 |
代理人 | 前田 実 |
代理人 | 篠原 昌彦 |