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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1207174 |
審判番号 | 不服2008-26541 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-10-16 |
確定日 | 2009-11-12 |
事件の表示 | 特願2004-318617「磁気ヘッド支持機構及び磁気ディスク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月10日出願公開、特開2005- 38601〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成7年11月2日に出願した特願平7-286218号の一部を平成14年11月5日に新たな特許出願とした特願2002-321883号の一部を、さらに平成16年11月1日に新たに特許出願したものであって、平成20年9月10日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年10月16日に拒絶査定不服審判がされるとともに、同年11月13日付で手続補正がなされたものである。 そして、平成21年4月8日付けで前置報告書を利用した審尋がなされたが、回答書は提出されなかったものである。 第2 平成20年11月13日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年11月13日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成20年11月13日付の手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1については、補正前、 「一端に磁気ヘッドが設けられるサスペンションと、 キャリッジアームと前記サスペンションの他端との間に配設されるスペーサとを設けてなる磁気ヘッド支持機構において、 前記スペーサは、前記キャリッジアームに支持されるためのかしめ穴を有しており、 前記サスペンションは、前記スペーサの前記キャリッジアームに搭載される側の面と反対側の面に設けられ、 前記サスペンションの他端は、前記かしめ穴に対して前記磁気ヘッド配設位置に近い位置にあるよう構成され、 前記サスペンションと前記スペーサが、互いの一部のみが重なり合った状態で固定されてなることを特徴とする磁気ヘッド支持機構。」 とあったものを、 本件補正後、 「一端に磁気ヘッドが設けられるサスペンションと、 キャリッジアームと前記サスペンションの他端との間に配設されるスペーサとを設けてなる磁気ヘッド支持機構において、 前記スペーサは、前記キャリッジアームに支持されるためのかしめ穴を有しており、 前記サスペンションは、前記スペーサの前記キャリッジアームに搭載される側の面と反対側の面に設けられ、 前記サスペンションの他端は、前記かしめ穴に対して前記磁気ヘッド配設位置に近い位置にあるよう構成され、 前記サスペンションと前記スペーサが、互いのテーパ状の部分が重なり合った状態で固定されてなることを特徴とする磁気ヘッド支持機構。」 とするものである。 前記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「サスペンションとスペーサ」の互いに重なり合った部分について、「テーパ状」と限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-74086号公報(平成5年3月26日公開、以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。 (1)「【請求項1】記録面へデータを書き込み又は読み出すための信号変換ヘツドを一端に取付けたサスペンシヨンと、このサスペンシヨンの他端を取付けて前記信号変換ヘツドを前記記録面上の所望の位置に位置づけるためのアクチユエータと、を有するデイスク記憶装置において、前記サスペンシヨンの前記他端の前記信号変換ヘツドが取付けられるのと同じ側に前記アクチユエータへ取付けられる手段を有することを特徴とするサスペンシヨンをアクチユエータに取付ける構造。」 (2)「【0001】 【産業上の利用分野】この発明はディスク記憶装置に関し、特に、信号変換ヘッドを一端に取付けたサスペンシヨンの他端を、信号変換ヘッドを記録面の所定の位置に位置づけるためのアクチユエータへ取付ける構造及びその取付ける方法に関する。」 (3)「【0012】 【実施例】図1乃至図7はこの発明の一実施例を示すものである。まず、図1を参照して説明する。磁気デイスク記憶装置1は、ハウジング2とハウジング2の下部に取付けられる制御のための電子回路を搭載したカード3とを有する。ハウジング2は基板4とカバー5とからなる。(略)」 (4)「【0014】図2及び図3は、この実施例の取付け構造を有するサスペンシヨン10を示すものである。サスペンシヨン10は、ステンレス製の略三角形のロード・ビーム10aとステンレス製の略四角形のマウント・プレート10bとを有し、ロード・ビーム10aの底辺部分にマウント・プレート10bがスポツト溶接で固着される。ロード・ビーム10aの先端部分にはスポツト溶接で取付けられるステンレス製のフレクスチヤ10cを介して信号変換ヘツドを取付けたスライダ8が取付けられる。スライダ8は磁気デイスクの記録面に対向する。マウント・プレート10bの中央付近には貫通孔10dが設けられている。マウント・プレート10bの信号変換ヘツドを取付けたスライダ8と同じ側の表面の貫通孔10dの開口周縁には円筒上のボス10eが突出して設けられている。 【0015】一方、図4に示すようにこのサスペンシヨン10のマウント・プレート10bが取付けられる側のアクチユエータ9は、アルミ製の断面略コの字形のアクチユエータ・アーム9aを有し、このアクチユエータ・アーム9aに同軸的に二つの貫通孔9bが設けられている。この貫通孔9bの内径は、ボス10eの外径よりわずかに、たとえば数10ミクロン程、大きい。 【0016】この、サスペンシヨン10をアクチユエータ9に取付ける方法を説明する。図5に示すように、アクチユエータ・アーム9aの貫通孔9bのそれぞれの開口端からサスペンシヨン10のマウント・プレート10bのボス10eが挿入される。そして上のマウント・プレート10bの貫通孔10dからボス10eの内径よりわずかに大きな径の鋼球12が圧入されアクチユエータ・アーム9aの貫通孔9bを下まで貫通して、下のマウント・プレート10bの貫通孔10dから出る。この時、上下のボス10eは拡張されて外面がアクチユエータ・アーム9aの貫通孔9bの内面に圧着されて固定される。この操作をアクチユエータ・アーム9aのもう一つの貫通孔9bに対して同時に行えば、アクチユエータ9に四本のサスペンシヨン10を一度に取付ける事ができる。 【0017】この実施例の取付け構造が、従来技術と比較してどれだけハウジング内に収納される機器の厚さを薄くする事ができるかを説明する。図6は従来例のサスペンシヨンをアクチユエータに取付ける構造を示し、図7はこの実施例のサスペンシヨンをアクチユエータに取付ける構造を示す。(略)」 (5)図7には、マウント・プレート10bのボス10eがアクチュエータ・アーム9a側に突出し、マウント・プレート10bの磁気ディスク側にアクチュエータ・アーム9aが固定され、ロード・ビーム10aもマウント・プレート10bの磁気ディスク側に固定されている取付け構造が図示されている。 前記(1)乃至(4)の記載事項によれば、引用例には次の発明(以下「引用例発明」という。)が記載されている。 「記録面へデータを書き込み又は読み出すための信号変換ヘツドを一端に取付けたサスペンシヨンと、 サスペンシヨンの他端を取付けて信号変換ヘツドを記録面上の所望の位置に位置づけるためのアクチユエータ・アームと、 を有する磁気デイスク記憶装置において、 サスペンシヨンは、略三角形のロード・ビームと略四角形のマウント・プレートとを有し、 ロード・ビームの先端部分にはフレクスチヤを介して信号変換ヘツドを取付けたスライダが取付られ、ロード・ビームの底辺部分にマウント・プレートがスポツト溶接で固着され、 マウント・プレートには開口周縁に突出したボスを有する貫通孔が設けられ、ボスはアチユエータ・アームの貫通孔の内面に圧着されて固定される、アクチユエータ・アームへマウント・プレートを取付ける構造。」 3.対比 本願補正発明と引用例発明とを比較すると、 引用例発明の「信号変換ヘツド」は、本願補正発明の「磁気ヘッド」に相当する。 引用例発明の「ロード・ビーム」は、「先端部分にはフレクスチヤを介して信号変換ヘツドを取付けたスライダが取付けられ」ているので、本願補正発明の「一端に磁気ヘッドが設けられるサスペンション」に相当する。 引用例発明の「アクチユエータ・アーム」は、本願補正発明の「キャリッジアーム」に相当する。 引用例発明の「マウント・プレート」は、「ロード・ビームの底辺部に」「スポット溶接で固着され」、「アクチユエータ・アームに取り付けられる」ので、本願補正発明の「キャリッジアームとサスペンションの他端との間に配設されるスペーサ」に相当する。 (なお、引用例発明の「サスペンシヨン」は、本願補正発明の「スペーサ」と「サスペンシヨン」とからなるものである。) 引用例発明の「マウント・プレート」に設けられた「貫通孔」は、アチユエータ・アームに圧着固定、すなわち「かしめ」のための穴であるから、引用例発明は、本願補正発明の「スペーサは、キャリッジアームに支持されるためのかしめ穴を有しており」に相当する構成を備えている。 引用例発明の「ロード・ビームの底辺部分にマウント・プレートがスポツト溶接で固着され」ていることは、「ロード・ビーム」の底辺部分の端がマウント・プレートの貫通孔に対して、「信号変換ヘツド」に近い位置にあることから、本願補正発明の「サスペンションの他端は、かしめ穴に対して磁気ヘッド配設位置に近い位置にあるよう構成され」ていることに相当する。 また、引用例発明の「略三角形のロード・ビームと略四角形のマウント・プレート」とが、「ロード・ビームの底辺部分にマウント・プレートがスポツト溶接で固着され」ることは、本願補正発明の「サスペンションとスペーサが」、「互いの」「部分が重なり合った状態で固定されてなる」ことに相当する。 引用例発明の「アクチュエータ・アームへマウント・プレートを取り付ける構造」は、信号変換ヘツドを支持するための構造であるから、本願補正発明の「磁気ヘッド支持機構」に相当する。 以上のことから、引用例発明と本願補正発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 〈一致点〉 「一端に磁気ヘッドが設けられるサスペンションと、 キャリッジアームと前記サスペンションの他端との間に配設されるスペーサとを設けてなる磁気ヘッド支持機構において、 前記スペーサは、前記キャリッジアームに支持されるためのかしめ穴を有しており、 前記サスペンションの他端は、前記かしめ穴に対して前記磁気ヘッド配設位置に近い位置にあるよう構成され、 前記サスペンションと前記スペーサが、互いの部分が重なり合った状態で固定されてなる磁気ヘッド支持機構。」 〈相違点〉 (1)本願補正発明は「サスペンションは、スペーサのキャリッジアームに搭載される側の面と反対側の面に設けられ」と特定するのに対して、引用例発明はこのように特定していない点。 (2)サスペンションとスペーサが重なり合う互いの部分が、本願補正発明では「テーパ状」であるのに対して、引用例発明では、「略三角形のロード・ビーム」と「略四角形のマウント・プレート」との重なり合う部分の形状が特定されていない点。 4.当審の判断 そこで、上記各相違点について検討する。 相違点(1)について サスペンションをスペーサのキャリッジアームに搭載される側の面と反対側の面に設けるヘッド支持機構は周知(例えば、特開平6-282930号公報のロードアームをロードアームスペーサのヘッドアームに搭載される側の面と反対側の面に設けた構成(図1,3)、特開平7-93927号公報のロードビームをスペーサのアームに搭載される側の面と反対側の面に設けた構成(図1,7,8)等参照。)であり、引用例発明においても、ロード・ビーム(サスペンション)を、マウントプ・レート(スペーサ)のアクチユエータ・アーム(キャリッジアーム)に搭載される側の面と反対側の面に設けることは、当業者が必要に応じて適宜になしえるものである。 相違点(2)について 磁気ヘッドの支持機構において、互いのテーパ状の部分が重なり合った状態で固定する構成は周知(例えば、特開平4-291070号公報の先細り形状の支持バネの後端部とヘッドアームとが互いにテーパ状の部分が重なり合って固定されている状態(図5)、特開平7-93927号公報の先細り形状のロードビームの後端部とスペーサを介しアームとが互いにテーパ状に重なり合って固定されている状態(図1,7)等参照。)である。 してみると、引用例発明のロード・ビーム(サスペンション)とマウント・プレート(スペーサ)を互いのテーパ状の部分が重なり合った状態で固定することは、当業者が必要に応じて適宜になしえるものである。 以上の各相違点は、格別なものではなく、また、相違点を総合しても、本願補正発明の奏する効果は、引用例及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項に規定する要件を満たさないものであるから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成20年11月13日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1.」に補正前の請求項1に記載のとおりのものである。 2.引用例及びその記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から「サスペンションとスペーサ」の互いの重なり合った部分について、「テーパ状」との限定を省くものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]4.」に記載したとおり、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-07 |
結審通知日 | 2009-09-08 |
審決日 | 2009-09-24 |
出願番号 | 特願2004-318617(P2004-318617) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山澤 宏 |
特許庁審判長 |
小松 正 |
特許庁審判官 |
山田 洋一 横尾 俊一 |
発明の名称 | 磁気ヘッド支持機構及び磁気ディスク装置 |
代理人 | 伊東 忠彦 |