• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A41B
管理番号 1207205
審判番号 不服2007-29505  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-31 
確定日 2009-11-09 
事件の表示 平成11年特許願第 74741号「使い捨て吸収性物品に使用される透液性表面シート」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月26日出願公開、特開2000-262558〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年3月19日の出願であって、平成19年9月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成19年10月31日に拒絶査定不服審判がされるとともに、平成19年11月29日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年11月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年11月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、補正前の請求項1
「【請求項1】使い捨て紙おむつまたは生理用ナプキンなどの使い捨て吸収性物品において肌と接する面側に使用される透液性表面シートであって、
前記透液性表面シートは嵩高不織布とされ、前記透液性表面シートの肌面側から裏面に貫通しない凹状に形成された型押し熱圧縮部を点在させたことを特徴とする使い捨て吸収性物品に使用される透液性表面シート。」
を、
「【請求項1】使い捨て紙おむつまたは生理用ナプキンなどの使い捨て吸収性物品において肌と接する面側に使用される透液性表面シートであって、
前記透液性表面シートは、乾式工程によってウエブが製造されるとともに、繊維状のポリプロピレン、ポリエチレンからなる溶融用添加剤をウエブ中に混入し、この溶融用添加剤を溶融させることにより接着するスルーエアボンド法によって製造された嵩高不織布の単独層とされ、前記透液性表面シートの肌面側から裏面に貫通しない凹状に形成された型押し熱圧縮部を、シート表面上で透液性表面シート面積に対して8?25%の割合で点在させるとともに、前記型押し熱圧縮部の窪みの底部厚は前記嵩高不織布厚の1/2以下としたことを特徴とする使い捨て吸収性物品に使用される透液性表面シート。」
とする補正を含むものである。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「透液性表面シート」を「乾式工程によってウエブが製造されるとともに、繊維状のポリプロピレン、ポリエチレンからなる溶融用添加剤をウエブ中に混入し、この溶融用添加剤を溶融させることにより接着するスルーエアボンド法によって製造された嵩高不織布の単独層」のものに、同じく「型押し熱圧縮部」を「シート表面上で透液性表面シート面積に対して8?25%の割合で点在させる」とともに、「型押し熱圧縮部の窪みの底部厚は前記嵩高不織布厚の1/2以下とした」ものに限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
そこで、本件補正後の前記特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるか)について以下に検討する。

2.本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されるとおりのものと認める。

3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-246321号公報(以下、「引用例」という)には、以下の記載がある。
(a)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面シートに関するものであり、より詳しくは、ドライ感、及びソフト感や柔らかさのような風合い等の吸収性物品の表面シートに要求される諸物性が向上した吸収性物品の表面シートに関するものである。」
(b)「【0012】図1に示す如く、本発明の吸収性物品の表面シート1は、多数の開孔を有する不織布から成る。かかる不織布としては、従来公知の不織布を特に制限なく用いることができる。例えば、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布を目的・用途に応じて適宜選択することができる。これらの不織布における繊維の接着手段に特に制限はなく、例えば、バインダーによる接着や熱融着による接着を用いることができる。所望の特性、特に改善された柔らかさとドライ感を顕著に実現するためには、上記不織布として、熱融着性繊維ウェブをサクションヒートボンドし、強固な圧縮を受けずに不織布化したシートが最も好適に用いられる。」
(c)「【0016】本発明に用いられる不織布の一例として、繊維径2デニールの芯鞘型のPET/PE複合繊維(容積比50/50)をカード機により開繊した後、熱風により繊維間を融着せしめたサクションヒートボンド不織布(0.5g/cm2 荷重下での見掛け厚さ約0.6mm、坪量25g/m2 )が挙げられる。」
(d)「【0017】図2及び図3に示す如く、上記開孔6は、上記表面シートの表面8Aから裏面8Bに向かって延出する上記不織布によって取り囲まれて形成されている。そして、上記開孔6の内壁10は、上記表面8Aからの連続面で形成されている。即ち、上記開孔6は、立体的な開孔である。立体的な開孔の態様としては、例えば、上記開孔を取り囲む不織布が円筒状になっている開孔や、上記開孔6の径が上記表面8Aから上記裏面8Bに向かって漸次増加していく円錐状の開孔等が挙げられるが、好ましくは、図2及び3に示す如く、上記開孔6の径が上記表面8Aから上記裏面8Bに向かって漸次減少していく逆円錐状の開孔が好ましい。」
(e)「【0027】上記勾配の設け方は、図2の拡大図である図5に示す如く、本発明の表面シートの断面方向において、上記頂部のシート厚さa、上記開孔の下端周縁部のシート厚さc、及び上記頂部と上記下端周縁部との略中間部のシート厚さbの間に、a>b>cなる関係があるように勾配を設ける。…。
【0028】上記a、b及びcの間にa>b>cなる関係があることによって、毛管力に勾配が設けられるが、該毛管力の勾配を駆動力として液体を効果的に吸引するためには、かかる勾配は大きいことが望ましい。上述の通り、本発明の表面シートにおいては、繊維密度に勾配を設けることによって毛管力の勾配を発現せしめているので、毛管力の勾配を大きくするためには、繊維密度の勾配を大きくすることが重要である。…。即ち、密度の大きな部分(主に、上記開孔の下端周縁部)は、繊維が密に存在しているので、毛管力によって上記表面シートの表面に存在する液体を吸引し、上記吸収体へと速やかに導く。一方、密度の小さな部分(主に、上記頂部)は、繊維が疎に存在しているので毛管力は弱く、その結果、一旦上記吸収体に吸収された液体は上記表面シートの表面に戻り難くなる。このように、本発明の表面シートが疎密構造を有することにより、単一の構造中に毛管力の勾配が生じ、表面での液残りが減少し、ドライ感が向上する。」
(f)「【0042】また、本発明の表面シートにおいては、開孔からの液体の吸収能力を高めると共に、上記疎密構造を十分に形成して毛管力勾配によっても液体の吸収能力を高めることが重要である。そのためには、本発明の表面シートの開孔率は7%以上であることが好ましい。上記開孔率が7%に満たないと、上記開孔の下端周縁部への繊維の寄り集まりが不十分で、十分な疎密構造が形成されない場合がある。上記開孔率は、10?20%であることが更に好ましい。なお、上記開孔率とは、本発明の表面シートをその表面8Aから裏面8Bに投影した場合に形成される開孔の面積を表面シートの面積で除した値である。」
(g)「【0056】本発明の表面シートは、上述の如き不織布を機械的に開孔することにより製造することができる。より詳細には、不織布の搬送方向に沿って、角錐又は円錐形状の多数の凸状ピンを列状に有し且つ該列が多列に並設しているピンロール(第1の押し型)と、その多列の凸状ピンの間に嵌入する突条部を有する突条ロール(第2押し型)との間に、上記不織布を介在させることにより、上記構造を有する表面シートを製造することができる。
【0057】上記製造方法では、上記ピンロールは、その凸状ピンが上記不織布の搬送方向に沿って列になって、しかもその列が多列に並設している。一方、上記突条ロー
ルは、その突条部が上記ピンロールの各凸状ピンの列と列の間に嵌入する。
【0058】その結果、上記突条ロールの上記突条部によって、本発明の表面シートの上記頂部が容易に形成され、しかも、上記ピンロールにおける上記凸状ピンの上記不織布への押圧により、上記開孔が形成される。また、この場合、上記ピンロールを60?260℃に加熱して使用すると、上記凸状ピン周縁部に接触する不織布(つまり、上記表面から上記裏面へ向かって延出して上記開孔を形成する不織布)を熱により部分的に軟化或いは部分的に溶融させることによって、特に上記開孔の下端周縁部の密度を他の部分よりも高くする(つまり、シート厚さを小さくする)ことができる。なお、上記頂部の成形性を高めるため、上記不織布を上記ロールに導入する前に、例えば、上記不織布にホットエアー(例えば、60?260℃)を吹き付けたり、上記不織布をプレヒートロール(例えば、60?260℃)に巻き付けたりする等の、当業者に公知の予熱処理を施し、予め上記不織布を加熱しておくことも好ましい。」

ここで、一般に、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品の(肌と接する面側に使用される)表面シートは透液性を有するものであり、また、上記(b)及び(c)の記載より、カード機により開繊した後、熱風により繊維間を融着せしめた不織布は、特に改善された柔らかさとドライ感を顕著に実現したものであるから、単独層の嵩高不織布であると認められる。
さらに、(g)の記載からみて、開孔が型押し熱圧縮部であることは明らかである。 よって、以上の記載及び図1?6によれば、引用例には,次の発明(以下「引用発明」という)が開示されていると認めることができる。

「生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品の肌と接する面側に使用される透液性表面シートであって、前記透液性表面シートは、芯鞘型のPET/PE複合繊維をカード機により開繊した後、熱風により繊維間を融着せしめた不織布の単独層からなる嵩高不織布であり、前記透液性表面シートの肌面側から裏面向かって開孔状に形成された型押し熱圧縮部を、シート表面上で透液性表面シート面積に対して10?20%の割合で点在させた使い捨て吸収性物品に使用される透液性表面シート。」

4.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、カード機により開繊するウエブ製造は乾式工程によるウエブ製造に相当すると認められ、引用発明の「芯鞘型のPET/PE複合繊維をカード機により開繊した後、熱風により繊維間を融着せしめた不織布の単独層からなる嵩高不織布」は本願補正発明の「乾式工程によってウエブが製造されるとともに、繊維状のポリプロピレン、ポリエチレンからなる溶融用添加剤をウエブ中に混入し、この溶融用添加剤を溶融させることにより接着するスルーエアボンド法によって製造された嵩高不織布の単独層」とは、乾式工程によってウエブが製造されるとともに、熱風により繊維間を融着せしめた嵩高不織布の単独層である限りにおいて一致する。
そこで、本願補正発明と引用発明を対比すると、両者は、
「使い捨て紙おむつまたは生理用ナプキンなどの使い捨て吸収性物品において肌と接する面側に使用される透液性表面シートであって、
前記透液性表面シートは、乾式工程によってウエブが製造されるとともに、熱風により繊維間を融着せしめた嵩高不織布の単独層とされ、前記透液性表面シートに型押し熱圧縮部を、シート表面上で透液性表面シート面積に対して8?25%の割合で点在させた使い捨て吸収性物品に使用される透液性表面シート。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明では、嵩高不織布を、繊維状のポリプロピレン、ポリエチレンからなる溶融用添加剤をウエブ中に混入し、この溶融用添加剤を溶融させることにより接着するスルーエアボンド法によって製造するのに対して、引用発明では、芯鞘型のPET/PE複合繊維を用い、熱風により繊維間を融着して製造している点。

[相違点2]
本願補正発明では、型押し熱圧縮部が透液性表面シートの肌面側から裏面に貫通しない凹状に形成され、前記型押し熱圧縮部の窪みの底部厚は前記嵩高不織布厚の1/2以下であるのに対して、引用発明では型押し熱圧縮部が開孔である点。

5.判断
[相違点1]について
熱風を用いる不織布の製造方法として、嵩のある不織布とするために、熱的にウエブ中の繊維を接着させる高温空気を吹き付けて加熱するスルーエアボンド法を用いることは周知技術にすぎない(特開平11-42248号公報の段落【0018】、特開平6-184910号公報の段落【0011】参照)。
また、不織布の融着用添加剤として、繊維状のバインダーを添加することは周知技術にすぎず(特開平6-184910号公報の段落【0009】、特開平9-158021号公報の段落【0016】参照)、熱融着性のある複合繊維を主体とした不織布を用いるか、熱融着性繊維を融着用添加剤として含む不織布を用いるかは当業者が適宜選択し得た事項であると認められる。
よって、引用発明の熱融着性のある複合繊維を用いる代わりに、バインダーとしてポリエチレン等の熱融着繊維を添加して、スルーエアボンド法を用いてウエブ中の繊維を接着させることは当業者が容易になし得たことにすぎない。

[相違点2]について
表面シートにおける凹状圧縮部を貫通孔とするか非貫通凹部とするかは、当業者が適宜選択し得る事項であって、引用発明の型押し熱圧縮部を非貫通凹部とすることは当業者が容易になし得たことである(例えば特開平3-267058号公報の第2頁左下欄第1行から右下欄第4行参照)。また、その深さは当業者が適宜選択し得る事項であり(同第2図,第3図,第10図の実施例参照)、その深さが厚みの1/2より大きな、(即ち、底部の密度変化が大きくて毛管現象効果の差の大きい(上記3.(e)参照))非貫通凹部の構成を採用することも当業者が適宜なしえたことである。
よって、引用発明のような嵩高不織布の単独層の表面シートに、前記周知の凹状圧縮部の形状を適用して、表面シートの肌面側から裏面に貫通しない凹状に形成され、窪みの底部厚は前記嵩高不織布厚の1/2以下である型押し熱圧縮部を形成することは当業者が容易になし得たことにすぎない。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成19年11月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年9月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】使い捨て紙おむつまたは生理用ナプキンなどの使い捨て吸収性物品において肌と接する面側に使用される透液性表面シートであって、
前記透液性表面シートは嵩高不織布とされ、前記透液性表面シートの肌面側から裏面に貫通しない凹状に形成された型押し熱圧縮部を点在させたことを特徴とする使い捨て吸収性物品に使用される透液性表面シート。」

第4 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2」の3.に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2」の2.で検討した本願補正発明から「透液性表面シート」の「乾式工程によってウエブが製造されるとともに、繊維状のポリプロピレン、ポリエチレンからなる溶融用添加剤をウエブ中に混入し、この溶融用添加剤を溶融させることにより接着するスルーエアボンド法によって製造された」こと及び「単独層」であるということの限定を省き、同じく「型押し熱圧縮部」の「シート表面上で透液性表面シート面積に対して8?25%の割合で点在させる」及び「型押し熱圧縮部の窪みの底部厚は前記嵩高不織布厚の1/2以下とした」とする限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含みさらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の5.に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2009-09-16 
結審通知日 2009-09-17 
審決日 2009-09-29 
出願番号 特願平11-74741
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A41B)
P 1 8・ 121- Z (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 村上 聡
熊倉 強
発明の名称 使い捨て吸収性物品に使用される透液性表面シート  
代理人 和泉 久志  
代理人 和泉 久志  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ