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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200625301 審決 特許
不服200717080 審決 特許
不服20062586 審決 特許
不服20072731 審決 特許
不服2006876 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1207241
審判番号 不服2006-23379  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-16 
確定日 2009-11-11 
事件の表示 平成 6年特許願第290209号「持続性放出被覆を有する不溶性医薬品の即時放出錠剤コア」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月 3日出願公開、特開平 7-252140〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成6年11月24日(パリ条約による優先権主張 1993年11月23日 米国)の出願であって、平成16年1月8日付拒絶理由通知書に応答して平成16年7月13日付で手続補正がなされたが、その後、平成18年6月23日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年10月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月15日付で手続補正がなされたものである。

2.平成18年11月15日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年11月15日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1 について
「【請求項1】アセトアミノフェンおよびオピオイドを含有する即時放出錠剤コアと、該コア上に形成された約3%から約25%の重量増加に至るまでの膜被覆物とを含む経口投与用の持続性放出錠剤であって、上記錠剤コアは、治療効果を与えるのに十分な量の上記アセトアミノフェンおよびオピオイドを含有しており、上記膜被覆物は、上記被覆錠剤を水溶液に暴露したとき上記治療的活性物質を持続して放出させる、エチルセルロース;アクリレートまたはメタクリレートのポリマーまたはコポリマー;およびそれらの混合物からなる群より選択される疎水性材料を含むことを特徴とする持続性放出錠剤。」
を、
「【請求項1】アセトアミノフェンおよびオピオイドを含有する即時放出錠剤コアと、該コア上に形成された3%から25%の重量を増加させる膜被覆物とを含む経口投与用の持続性放出錠剤であって、上記錠剤コアは、治療効果を与えるのに十分な量の上記アセトアミノフェンおよびオピオイドを含有しており、上記膜被覆物は、上記被覆錠剤を水溶液に暴露したとき上記治療的活性物質を持続して放出させるためにコア上に形成されているものであって、エチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースとを混合した疎水性材料を含むことを特徴とする持続性放出錠剤。」
とする補正を含むものである。
この補正は、膜被覆物に関し、(i)補正前の「エチルセルロース;アクリレートまたはメタクリレートのポリマーまたはコポリマー;およびそれらの混合物からなる群より選択される疎水性材料を含む」を「エチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースとを混合した疎水性材料を含む」、(ii)補正前の「上記被覆錠剤を水溶液に暴露したとき上記治療的活性物質を持続して放出させる、」を「上記被覆錠剤を水溶液に暴露したとき上記治療的活性物質を持続して放出させるためにコア上に形成されているものであって、」、(iii)補正前の「約3%から約25%の重量増加に至るまでの」を「3%から25%の重量を増加させる」とするものである。
上記(i)の補正は、疎水性材料として補正前の請求項1に記載されていた選択肢から「アクリレートまたはメタクリレートのポリマーまたはコポリマー;およびそれらの混合物」を削除してエチルセルロースとするとともに、放出修正剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースをさらに混合する旨(段落0068)を追加限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

(2)独立特許要件について
本願優先権主張日前に頒布された刊行物である欧州特許出願公開第548448号明細書(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(引用例1は外国語で記載されているため、以下、その翻訳を記載事項として記載する。)

<引用例1の記載事項>
a.「1.可塑化したエチルセルロースの水分散液及び治療活性成分を含有する固体基質を調製し、
該基質をそのエチルセルロース水分散液の充分な量でオーバーコートしてこのコーティングされた基質が水溶液に曝された時に該治療活性成分をあらかじめ定めたパターンに放出制御されるようにし、
このコーティングされた基質を該エチルセルロース水分散液のガラス転移点より高い温度でかつ周囲の相対湿度より高い相対湿度の厳しい条件で硬化し、該基質が高い温度および/または湿度の貯蔵状態にさらに曝されても実質的に影響を受けない溶解パターンとなるエンドポイントまで硬化を続けることを特徴とする安定な放出制御処方を得る方法。
(略)
5.治療活性成分を錠剤に加えることにより経口投薬用基質を調製する請求項1記載の方法。
(略)
9.治療活性成分が、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、抗炎症薬、胃腸薬、制吐薬、抗てんかん薬、血管拡張薬、鎮咳薬、去痰薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、ホルモン、利尿薬、抗低血圧薬、気管支拡張薬、抗炎症ステロイド、抗生物質、抗痔薬、睡眠薬、向精神薬、抗下痢薬、ムコ多糖類加水分解剤、鎮静薬、うっ血治療薬、緩下薬、制酸薬、ビタミン、および、興奮薬の群から選択された請求項1記載の方法。
10.治療活性成分が、ヒドロモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、コデイン、ジヒドロモルヒネ、モルヒネ、ブプレノルフィン、これらの塩、および、これらの混合物の群から選択された請求項1記載の方法。
(略)
15.治療活性成分より成る基質を含む安定な放出制御をする固体剤形において、該基質が可塑化したエチルセルロース水分散液でオーバーコートされ、該可塑化エチルセルロース水分散液のガラス転移点より高い温度でかつ周囲の相対湿度より高い相対湿度において硬化され、この硬化された基質が融解状態になり高い温度および/または湿度の貯蔵状態に曝されても実質的に影響を受けなくなるように安定な融解状態になるまで硬化されたことを特徴とする剤形。
16.治療活性成分がエチルセルロース水分散液で約5?15%増すようにオーバーコートされた請求項15記載の安定な放出制御をする固体剤形。
(略)
19.療活性成分が、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、抗炎症薬、胃腸薬、制吐薬、抗てんかん薬、血管拡張薬、鎮咳薬、去痰薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、ホルモン、利尿薬、抗低血圧薬、気管支拡張薬、抗炎症ステロイド、抗生物質、抗痔薬、睡眠薬、向精神薬、抗下痢薬、ムコ多糖類加水分解剤、鎮静薬、うっ血治療薬、緩下薬、制酸薬、ビタミン、および、興奮薬の群から選択された請求項15記載の安定な放出制御をする固体剤形。
20.治療活性成分が、ヒドロモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、コデイン、ジヒドロモルヒネ、モルヒネ、ブプレノルフィン、これらの塩、および、これらの混合物の群から選択された請求項15記載の安定な放出制御をする固体剤形。
21.治療活性成分がテオフィリンである請求項15記載の安定な放出制御をする固体剤形剤。
(略)
28.治療活性成分、および、水溶液と接触したときに有効な制御された薬剤を放出するのに十分な量のエチルセルロースの水分散液から得られたオーバーコーティングより成るコアを含む固体剤形において、オーバーコートの後に、該治療活性成分が高い温度および/または湿度の貯蔵状態に曝されても実質的に影響を受けずに放出されるように硬化されることを特徴とする剤形。
(略)」(特許請求の範囲)

b.「放出即効する剤形(dosage form )を投与した後に普通経験するよりも、投与後の薬理学的応答が長続きすることが、すべての制御放出処方の目的である。このような長い応答時間は、短時間で作用する放出即効する製品では不可能な多くの固有の治療上の長所を有する。」(第2頁第3?6行)
c.「放出制御をする処方を得るためには、治療活性成分を含む基質に、約5%?15%の重量増となるように十分な量のエチルセルロースの水分散液をオーバーコートする必要があるのが普通である。しかしこのオーバーコートは、たとえば、治療活性成分の物性および所望の放出速度、エチルセルロース水分散液への可塑剤の添加およびその添加の方法などにより多かったり少なかったりする。」(第4頁第37?42行)

d.「本発明の安定な放出制御をする処方は、たとえば、胃液に取り入れられ曝され、次に腸液に取り入れられ曝された時に、治療活性成分を徐々に放出する。本発明の処方の制御されて放出されるパターンは変えることができる。たとえば、エチルセルロース水分散液でオーバーコートする量を変えことにより、エチルセルロース水分散液への可塑剤の添加法を変えることにより、エチルセルロースに対する可塑剤の量を変えることにより、他の成分または賦形剤を加えることにより、製造法を変えることによるなどして変えることができる。」(第6頁第2?8行)

e.「本発明では広範な治療活性剤を用いることができる。本発明の組成物に用いることができる治療活性剤(例、調剤学的薬剤)には水溶性の薬剤および水不溶性の薬剤の両方が含まれる。このような治療活性剤の例としては、・・・鎮痛薬(例、アスピリン、コディン、モルヒネ、ジヒドロモルフォン、オキシコドン等)、抗炎症薬(例、ナプロキシン、ジクロフェナック、インドメタシン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリン、スリンダック)、・・・、鎮咳薬および去痰薬(例、コディンホスフェート)、抗喘息薬(例、テオフィリン)、・・・があげられる。上記のリストは、その他のものを除外する意味のものではない。」(第6頁第9?23行)

f.「エチルセルロース水分散液を、「nu pariel」18/20ビードのような不活性ビードのコーティングに用いる時は、できた安定な放出制御をするビードの複数個を、その後で胃液に取り入れられ接触した時に効果的に制御されて放出されるように十分な量ゼラチンカプセルに入れることができる。この具体化では、たとえば、治療活性剤を水中に溶解し、次にウルスターインサート(Wurster insert)を用いてたとえば「nu pariel」18/20ビードの基質に噴霧して、治療活性剤でコーティングしたビードが調製される。所望によりコーティングの前に、ビードにヒドロモルフォンが結合するのを助けるために、および/または溶液を着色するためなどに他の成分を添加してもよい。たとえば、着色剤と一緒にまたは着色剤を含まないヒドロキシプロピルメチルセルロース製品を溶液に添加し、ビードに適用する前に溶液を混合(たとえば約1時間)してもよい。この例で生成したコーティングされた基質は、次に所望によりバリァー剤でオーバーコートして治療活性成分をエチルセルロースコーティングから分離することができる。適当なバリァー剤の一例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから成るものである。しかしながら、当業に知られている任意のフィルム形成剤を用いることができる。バリァー剤は最終製品の溶解速度に影響しないものであることが好ましい。」(第6頁第27?40行)

g.「本発明の放出制御をするコーティングが錠剤に応用される時には、錠剤のコア(たとえば、基質)は、活性成分を任意の調剤学的に許容されるフィラー(希釈剤)と共に含有することができる。フィラーの例としては、蔗糖、結晶葡萄糖、ラクトース、微結晶セルロース、キシリトール、フラクトース、ソルビトール、およびこれらの混合物等があげられるが、これらに限定されるものではない。錠剤コア成分の成型前に上記の賦形剤成分に、カルシウムまたはマグネシウム石けんのような任意の調剤学的に一般に許容される潤滑剤を添加することができる。最も好ましいのは、固体剤形の約0.5?3重量%の量のステアリン酸マグネシウムである。」(第7頁第31?37行)

h.例1?10にヒドロモルホンHClを、例11、12にモルヒネ硫酸塩を有効成分とするビード上にエチルセルロース水分散液でコーティング処理した制御放出製剤が記載されている。(第7頁第49行?第19頁第45行)

i.「例13?14
例13では、他の薬でありヒドロモルホンに比べて非常に物性が異なるテオフィリンについての応用を示す。まず含水テオフィリンおよびコロイド状二酸化ケイ素を高剪断ミキサーで混合し、次にジェット篩を用いて篩い流動性を増した。ロータープロセッサーを備えた流動床造粒機を用いて、PVP(C-30)溶液を用いて砂糖球の上にテオフィリン/二酸化ケイ素コロイド混合物の層を設けた。78%ロードになるまで層がけした。カプセルに充填した400mgテオフィリンビードの処方を表33に示す。

表33


これらの球を、ジブチルセバケートで可塑化した「Aquacoat」ECD30遅延剤で5%重量増で流動床造粒機中のウルスターカラムでオーバーコートした。球の一部は未硬化のままにし、他の部分は60℃/100%相対湿度で72時間貯蔵し、表34に示す結果が得られた。

表34


上記から、「Aquacoat」でコーティングしたテオフィリンも安定でなく硬化する必要があることが分かる。60℃/相対湿度85%で72時間貯蔵後、溶解速度が劇的に下がった。しかしながら、ある場合にはこのような状態は安定な製品とするのに「理想的な」硬化条件であることもある。この目的のためには、60℃/相対湿度85%で72時間後の溶解データーはテオフィリンの溶解パターンとしては遅すぎる。
従って例14では、この新しい硬化工程を加えることにより処方の溶解パターンを改善し、12時間内に100%テオフィリンが溶解する速度に増すようにコーティングを変更した。
例14では次のように調製した。テオフィリン粉末層化ビードを例13に記載のようにしてつくり、この例では10%HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を加えて可塑化した「Aquacoat」ECD30遅延剤でオーバーコートした。これはテオフィリンの放出を例13より速くするために、そのようにしたのである。HPMCを加えると溶解が速くなることは当業者に知られている。遅延剤層も、流動床造粒機のウルスターカラムで6%重量増となるようにコーティングした。
コーティングしたビードは次に60℃/相対湿度85%で72時間硬化した。初期および37℃/相対湿度80%で3か月貯蔵した後に溶解試験を行なった。例14の処方からのテオフィリンの溶解の安定性は例13に比べて劇的に改良されたことが分かった。さらに、遅延剤層にHPMCを、「Aquacoat」ECD30(固体):HPMCを9:1の割合で加え、重量増6%にするとこの処方の放出速度は、12時間内にテオフィリンが100%に増加することが分かった。結果の詳細を表35に示す。

表35


以上示した例は他を除外する意味のものではない。当業者には、本発明の多くのその他の変化が明らかであろう。
たとえば、最も好ましい疏水性ポリマーであるエチルセルロースについて本発明を説明したが、その他のセルロース誘導体のような他の疏水性ポリマーも本発明と組み合わせて有用であることが考えられる。同様に、処方(オーバーコートの量、治療活性成分の性質など)により硬化条件を必要によりいくらか変化し、温度、湿度および時間について変化した範囲で安定化した製品が得られるようにできることが認識できるであろう。」(第19頁第49行?第21頁第5行)

<引用発明>
引用例1には、治療活性成分より成る基質を含む安定な放出制御をする経口投与用固体剤形において、該基質が可塑化したエチルセルロース水分散液でオーバーコートされ、該可塑化エチルセルロース水分散液のガラス転移点より高い温度でかつ周囲の相対湿度より高い相対湿度において硬化され、この硬化された基質が融解状態になり高い温度および/または湿度の貯蔵状態に曝されても実質的に影響を受けなくなるように安定な融解状態になるまで硬化されたことを特徴とする剤形が記載されている(摘記事項a.の請求項1、5、15)。その際、治療活性成分を含む基質に、約5?15%重量増となるように十分な量のエチルセルロースの水分散液をオーバーコートすることも記載されている(摘記事項a.の請求項16、c.)。
そして、引用例1では、上記基質の調製に関する具体的な記載は、ビードの調製のみであるが、上記剤形の調製方法として、治療活性成分を錠剤に加えることにより経口投薬用基質を調製すること(摘記事項a.の請求項5)や、本発明の放出制御をするコーティングが錠剤に応用される時には、錠剤のコア(たとえば、基質)は、活性成分を任意の調剤学的に許容されるフィラー(希釈剤)とともに含有することができること、また、錠剤の調製は、ビードの調製について説明したのと同様な方法で行うことができること(摘記事項g.)が記載されていることから、基質が錠剤のコアである場合の製剤についても実質的な記載がなされているものと認められる。
そうすると、引用例1には、「治療活性成分より成る錠剤のコアを含む安定な経口投与用放出制御錠剤において、該錠剤のコアが、5?15%の重量増となるように十分な量の可塑化したエチルセルロース水分散液でオーバーコートされ、硬化された錠剤。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<対比・判断>
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「錠剤のコアが可塑化したエチルセルロース水分散液でオーバーコートされ、硬化され」ていることは、(a)該硬化されたオーバーコートが、本願発明の「膜被覆物」に相当し、錠剤のコア錠に形成されるものであることが明らかで、(b)該硬化されたオーバーコート、すなわち、膜被覆物にエチルセルロースを含むことも明らかである。
そして、引用発明のように、医薬として用いられる製剤にあっては、その治療活性成分は当然に治療効果を与えるのに十分な量が含有されるべく調製されるといえる。
してみると、両者は、
「錠剤コアと、該コア上に形成された、重量を増加させる膜被覆物とを含む経口投与用の放出制御錠剤であって、上記錠剤コアは、治療効果を与えるのに十分な量の治療活性成分を含有しており、該コアがエチルセルロースを含む、放出制御錠剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点
1.錠剤コアに関し、本願補正発明では、「アセトアミノフェンおよびオピオイドを含有する即時放出錠剤コア」であるとしているのに対し、引用発明では、そのような規定がなされていない点(以下、「相違点1.」という。)
2.膜被覆物に関し、本願補正発明では、「被覆錠剤を水溶液に暴露したとき上記治療的活性物質を持続して放出させるためにコア上に形成されているもの」で「持続性放出」性とするものであって、「エチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースとを混合した疎水性材料」を含み、「3%から25%の重量を増加させる」ものであるのに対し、引用発明では、そのように特定されておらず、「5?15%の重量増となるように十分な量の可塑化したエチルセルロース水分散液」を含むものであるとされている点(以下、「相違点2.」という。)

そこで、上記相違点について検討する。

相違点1.について
引用例1には、治療活性成分には、水溶性の薬剤及び水不溶性の薬剤の両方が含まれることが記載されているのであって(摘記事項e.)、このことは、たとえば、治療活性成分が水溶性の薬剤であるヒドロモルホンやモルヒネ硫酸塩、あるいは水不溶性の薬剤であるテオフィリンが実施例として記載されているとおりである(摘記事項h.、i.)。
アセトアミノフェンおよびオピオイドをともに含有する薬剤を錠剤コアとすることは引用例1には、明記されていない。しかし、引用例1には、上記のとおり、オピオイドを錠剤コアとする製剤が具体的に記載されているし、また、アセトアミノフェンも、オピオイドやテオフィリンとともに、引用発明における治療活性成分として列挙されている。
そして、本願補正発明において用いられるオピオイドの一種であり(本願明細書段落0017)、引用発明における治療活性成分でもあるコデイン(摘記事項e.)を含有する、アセトアミノフェン-コデイン合剤も、本願優先権主張日前、共に鎮痛活性を有する薬剤からなる、広範かつ一般的に処方されていた鎮痛薬である(FDA consumer,Vol.25,No.1,第31?32頁,特に第31頁左欄第19?31行)。ここで、アセトアミノフェンが、実施例としてその製剤例が具体的に記載されているテオフィリンと同様に水不溶性の薬剤であることも当業者に周知の事実である(大阪府病院薬剤師会編 「医薬品要覧 第4版」 第682頁 「テオフィリン」の項 平成元年11月20日 株式会社薬業時報社発行)から、引用例1に治療活性成分として記載される鎮痛剤として(摘記事項a.の請求項19)、それら単独で放出制御錠剤を調製することができる成分をあわせ含有する製剤であって、本願優先権主張日前すでに広く知られるアセトアミノフェン-コデイン合剤に鎮痛効果を期待して、引用発明における治療活性成分をアセトアミノフェンおよびオピオイドを含有するものとする点は当業者が容易に想到し得たものである。

次に、引用例1には、錠剤のコアについて、「活性成分は任意の調剤学的に許容されるフィラー(希釈剤)と共に含有されることができる。」(摘記事項g.)と記載されており、特段の処理を行うとされていないし、また、安定な放出制御について、「制御されて放出されるパターンは変えることができる。たとえば、エチルセルロース水分散液でオーバーコートする量を変えることにより、エチルセルロース水分散液への可塑剤の添加法を変えることにより、エチルセルロースに対する可塑剤の量を変えることにより、他の成分または賦形剤を加えることにより、製造法を変えることによるなどして変えることができる。」(摘記事項d.)と記載されているように、放出制御はもっぱらオーバーコート、すなわち膜被覆物の調整によって行われるものと理解されるのであって、このことは、たとえば、例13、14において、「Aquacoat」ECD30を遅延剤としていること、膜被覆物の組成を変えることのみによって、治療活性成分の溶解パターンを変えることができたこと、さらには、引用例1記載の背景技術として、「放出即効する剤形(dosage form )を投与した後に普通経験するよりも、投与後の薬理学的応答が長続きすることが、すべての制御放出処方の目的である。このような長い応答時間は、短時間で作用する放出即効する製品では不可能な多くの固有の治療上の長所を有する。」(摘記事項b.)との認識とも整合するものである。
そうすると、引用発明の錠剤コアは、実質的に即時放出錠剤コアであるといえるし、少なくとも、膜被覆物の調整によってその放出特性を調整することができるように、錠剤コアを即時放出性のものとすることは、当業者が容易になしえたところと認める。

相違点2.について
引用発明において、放出制御とは、摘記事項b.の記載から、薬理学的応答が長く続くこと、すなわち持続性放出製剤を提供することを意味するものと理解でき、このことは、100%溶解に12時間以上要する、ヒドロモルホンHCl製剤やテオフィリン製剤の経時的溶解パターンを示す図1?6;表34、35の記載とも合致する。そして、相違点1.についての項で検討したとおり、膜被覆物は放出制御を調整するためのものであるから、治療的活性物質を持続して放出させるためにコア上に形成されているものといえる。
そうすると、引用発明においても、膜被覆物(硬化されたオーバーコート)は、「被覆錠剤を水溶液に暴露したとき上記治療的活性物質を持続して放出させるためにコア上に形成されているもの」で「持続性放出」性とするものといえる。

次に、膜被覆物を構成する成分について検討する。
引用発明においては、可塑化したエチルセルロース水分散液を用いるとしている。他方、本願補正発明には、可塑化について明示の記載はない。ところで、本願明細書には、疎水性材料に関連して、「疎水性ポリマー分散水溶液に有効量の可塑剤を加えると、膜の物理的特性が更に改良される。」(段落0041)と記載されているように、本願補正発明は、可塑剤を加えて可塑化する態様を包含するものであるから、引用発明が、水分散液として、可塑化したものを用いるとしている点は実質的な相違点ではない。
また、引用例1には、例13記載の「Aquacoat」ECD30遅延剤で5%重量増でオーバーコートしたテオフィリン製剤の溶解パターンが遅すぎるとして、テオフィリンの放出を例13より速くするために、例14において、コーティングを10%HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を加えて可塑化した「Aquacoat」ECD30遅延剤で6%重量増となるようにオーバーコートすべく変更したこと、その結果、12時間内に100%テオフィリンが溶解する速度に増したことが溶解データー(表35)をもって記載されるとともに(摘記事項i.)、「HPMCを加えると溶解が速くなることは当業者に知られている。」(摘記事項i.)との記載もある。ここで、「Aquacoat」は、引用例1の第4頁第57行?第5頁第5行に記載されているように、市販のエチルセルロースの水分散液であるから、引用例1には、エチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の9:1混合物を被覆物構成成分とすることが記載されている。そして、治療活性成分の種類によって、望まれる放出パターンもまた異なることは当業者が容易に着想しうるところであるから、相違点1.についての項ですでに検討したとおり、引用発明における治療活性成分をアセトアミノフェンおよびオピオイドを含有するものとする場合に、当該治療活性成分に求められる放出パターンが達成されるべく、被覆物構成成分をエチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物とすること、また、その被覆物量を、上記具体的製剤例における6%重量増、あるいは、引用例1に、エチルセルロースの水分散液を用いた場合に採用されるとして記載されている5?15%重量増(摘記事項a.の請求項16、c.)となる量とした値を参考に、好適な重量増を検討してみることは当業者が容易になし得たところである。

そして、本願明細書記載の本願発明の効果にしても、引用発明から予測しうるものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

平成18年11月15日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年7月13日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】アセトアミノフェンおよびオピオイドを含有する即時放出錠剤コアと、該コア上に形成された約3%から約25%の重量増加に至るまでの膜被覆物とを含む経口投与用の持続性放出錠剤であって、上記錠剤コアは、治療効果を与えるのに十分な量の上記アセトアミノフェンおよびオピオイドを含有しており、上記膜被覆物は、上記被覆錠剤を水溶液に暴露したとき上記治療的活性物質を持続して放出させる、エチルセルロース;アクリレートまたはメタクリレートのポリマーまたはコポリマー;およびそれらの混合物からなる群より選択される疎水性材料を含むことを特徴とする持続性放出錠剤。」

本願発明は、前記2.で検討した、本願補正発明記載の膜被覆物について、それを構成する成分を「エチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースとを混合した疎水性材料を含む」ものから、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとの記載を除きエチルセルロースとし、その他の成分を選択肢に加えて、「エチルセルロース、あるいは、アクリレートまたはメタクリレートのポリマーまたはコポリマー;およびそれらの混合物からなる群より選択される疎水性材料を含む」ものである。
また、本願発明の「上記被覆錠剤を水溶液に暴露したとき上記治療的活性物質を持続して放出させる」、「約3%から約25%の重量増加に至るまでの」は、各々、本願補正発明における「上記被覆錠剤を水溶液に暴露したとき上記治療的活性物質を持続して放出させるためにコア上に形成されているものであって」、「3%から25%の重量を増加させる」に対応する。ここで、膜被覆物が、コア上に形成されているものであって、治療的活性物質の放出に関与していることは本願明細書の記載全体からみて明らかであるから、「放出させるためにコア上に形成されているものであって」との記載の有無によって、本願発明と本願補正発明とが実質的に相違するとは認められないし、また、膜被覆物の形成重量に関連した「約」なる用語の有無によって、あるいは、「増加させる」と「増加に至るまでの」との単なる表現上の相違によって、本願発明と本願補正発明とが実質的に相違するとも認められない。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、前記「2.(2)」の相違点の項において検討した、相違点2.のうち、疎水性材料の種類はエチルセルロースで一致し相違点とならない点を除き、本願補正発明と引用発明との一致点、相違点と同じである。そして、それら相違点についての判断は前記「2.(2)」に記載のとおりであって、本願補正発明が、上記の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も同様の理由を有するものである。
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-29 
結審通知日 2009-06-02 
審決日 2009-06-29 
出願番号 特願平6-290209
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北畑 勝彦守安 智加藤 浩福井 美穂岩下 直人  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 穴吹 智子
星野 紹英
発明の名称 持続性放出被覆を有する不溶性医薬品の即時放出錠剤コア  
代理人 大森 規雄  
代理人 小林 純子  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 片山 英二  
代理人 小林 浩  
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