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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C23F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C23F
管理番号 1207246
審判番号 不服2007-12582  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-01 
確定日 2009-11-11 
事件の表示 特願2003-276596「エッチング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月10日出願公開、特開2005- 36299〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成15年7月18日の出願であって、平成18年6月26日付けで拒絶理由通知がなされ、平成19年1月15日付けで意見書が提出され、同年1月24日付けで平成18年6月26日付け拒絶理由通知に記載した理由により拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年5月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月30日に手続補正書が提出されたものである。

[2]平成19年5月30日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)について
<結論>本件補正を却下する。

<理由>
(2-1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を、
「【請求項1】
複数のローラー支持軸及びそのローラー支持軸の数に対して所定の割合で均等に割り当てられたローラー支持軸非取付部が一定の間隔で搬送方向に沿って配設され、
上記各ローラ支持軸に、複数の搬送ローラーが一定のピッチで取り付けられ、
上記各ローラ支持軸非取付部下に、エッチング液を上向きに噴出するエッチング液噴出部が配置されたエッチング装置であって、
上記各ローラー支持軸の各搬送ローラーの上記搬送方向と直交する向きにおける位置が、その搬送方向側に隣接するローラー支持軸の各搬送ローラーの上記搬送方向と直交する向きにおける位置よりも上記搬送方向と直交する向きに上記搬送ローラーの厚みだけずれるようにされてなる
ことを特徴とするエッチング装置。
【請求項2】
上記各ローラー支持軸取付可能部には、噴出エッチング液が断面形状が略長方形乃至略長蛇円形になるように噴出する複数のエッチング液噴出部が、その略長方形が搬送方向と交差する向きで、且つ被エッチング面上におけるエッチング液被噴出領域が搬送方向に沿って視て互いに重ならず且つ離間しないように、配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載のエッチング装置。」と補正するものである。

(2-2)補正の目的
上記補正は、補正前の請求項1を削除し、同請求項2、3を繰り上げるとともに、「予め設定した向き」を「上記搬送方向と直交する向き」に限定し、さらに引用請求項を整合させるものであって、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(2-3)独立特許要件
そこで、上記補正後の本願請求項1に係る発明(以下、「補正後の本願発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けられるものかどうかを検討する。

(1)引用刊行物の記載事項
当審において発見した、本出願前に頒布された特開昭62-192587号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(a)「コマ(1-1?1-n)上に載置されたプリント板(4)を前記コマの回転によって所定方向に水平移動し、上、下方向に設けられた噴射機(3-1、3-2)より化学処理液(5)を前記プリント板の両面に吹きかける化学処理装置用の水平搬送型コンベヤにおいて、前記コマを階段状に一定間隔で重畳するように配列するとともに、…水平搬送型コンベヤ。」(第1頁左欄 特許請求の範囲)

(b)「プリント配線板をコマ(搬送用リング)上に載置して水平方向に移動し、上、下方向より化学処理液を噴射してプリント配線板(以後プリント板と云う)の両面に処理液を吹きかける化学処理装置用の水平搬送型コンベヤであって、コマを階段状に一定間隔で重畳するように配列するとともに、…プリント板両面への均一な処理液の吹きかけを可能とする。」(第1頁左欄第16行-右欄第6行)

(c)「コマ1-1?1-nは階段状に一定周期を持って重畳するように配列されているため、…コマの下方に設けられた噴射機3-2よりのエッチング液5の吹きかけが均一に行なわれ、従来のオーバラップレイアウトコンベヤにおけるプリント板下面の不均一な吹きかけが解消され、プリント板4の下面のエッチング精度を良くすることができる。」(第3頁左上欄第第13行-右上欄第1行)

(d)第1図には、実施例として、複数の軸芯が一定の間隔で搬送方向に沿って配設され、各軸芯には、複数のコマ(搬送用リング)が等間隔(一定のピッチ)で取り付けられ、各軸芯の各コマ(搬送用リング)の上記搬送方向と直交する向きにおける位置が、その搬送方向側に隣接する軸芯の各コマ(搬送用リング)の上記搬送方向と直交する向きにおける位置よりも上記搬送方向と直交する一方向にずれるようにされている様子が示されている。

(2)引用発明
そして、上記記載事項(a)?(d)をまとめると、
「複数の軸芯が一定の間隔で搬送方向に沿って配設され、上記各軸芯に、複数の搬送用リングが一定のピッチで取り付けられ、搬送用リングの下方にエッチング液を上向きに噴射するエッチング液噴射機が配置されたエッチング装置であって、
上記各軸芯の各搬送用リングの上記搬送方向と直交する向きにおける位置が、その搬送方向側に隣接する軸芯の各搬送用リングの上記搬送方向と直交する向きにおける位置よりも上記搬送方向と直交する一方向にずれるようにされてなることを特徴とするエッチング装置。」の発明(以下、「引用刊行物1発明」という。)が記載されている。

(3)対比・判断
補正後の本願発明1と引用刊行物1発明とを対比すると、引用刊行物1発明における「軸芯」、「搬送用リング」、「エッチング液を上向きに噴射するエッチング液噴射機」は、それぞれ、補正後の本願発明1における「ローラー支持軸」、「搬送ローラー」、「エッチング液を上向きに噴出するエッチング液噴出部」に相当し、また、本願発明1の「搬送方向と直交する向き」とは、その実施例として、「搬送方向と直交する一方向」を含むものであることから(【図1】)、引用刊行物1発明における「搬送方向と直交する一方向」は、本願発明1の「搬送方向と直交する向き」に相当する。

よって、両者は、
「複数のローラー支持軸が一定の間隔で搬送方向に沿って配設され、
上記各ローラ支持軸に、複数の搬送ローラーが一定のピッチで取り付けられ、
エッチング液を上向きに噴出するエッチング液噴出部が配置されたエッチング装置であって、
上記各ローラー支持軸の各搬送ローラーの上記搬送方向と直交する向きにおける位置が、その搬送方向側に隣接するローラー支持軸の各搬送ローラーの上記搬送方向と直交する向きにおける位置よりも上記搬送方向と直交する向きにずれるようにされてなることを特徴とするエッチング装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(ア)補正後の本願発明1では、「複数のローラー支持軸及びそのローラー支持軸の数に対して所定の割合で均等に割り当てられたローラー支持軸非取付部が一定の間隔で搬送方向に沿って配設されるとともに、上記各ローラ支持軸非取付部下に、エッチング液噴出部が配置される」のに対し、引用発明では、そのような構成を有していない点、

(イ)補正後の本願発明1では、「搬送ローラーの厚みだけ」ずれるのに対して、引用刊行物1発明では、そのような限定がない点。

そこで、上記各相違点について検討すると、
(ア)について
エッチング装置において、複数のローラー支持軸及びそのローラー支持軸の数に対して所定の割合で均等に割り当てられたローラー支持軸非取付部が一定の間隔で搬送方向に沿って配設されるとともに、上記各ローラ支持軸非取付部下に、エッチング液噴出部が配置されるようにすることは、本出願前周知のものであり(例えば、特開2001-96208号公報:「プリント配線基板材Aを搬送しつつ、…腐食液(エッチング液)、…等の薬液Bが噴射されて、…コンベヤ4では、軸が左右の幅方向Dに平行で前後の搬送方向Cに多数、水平に配設されており、各軸にそれぞれ多数のホイール5が付設されている。このように図3の例では、…各軸について、所定間隔をおいてホイール5が付設されたタイプのものが用いられているが、…そして上下の各ホイール5は、それぞれ前後間が、途中にホイール5の1個分のスペースにて形成された前後の広い間隙空間Kの箇所を除き、密に接近して並べられている」【0035】?【0036】、「この薬液噴射装置6のスリット状噴射口7は、…コンベヤ4の所定のホイール5…間に形成された間隙空間Kに、対向して配設されている。そこで、薬液Bは、…ダイレクトにプリント配線基板材Aの外表面に噴射される。…そして、薬液噴射装置6は、このような間隙空間Kの上側や下側に配設されており、」【0041】、「薬液噴射装置6そしてスリット状噴射口7は、…多くの場合、複数個そして多数個が、搬送方向Cに所定間隔を置きつつ配設される。」【0044】)、特開平11-309401号公報:「プリント配線基板材Aを搬送しつつ、…腐食液…等の処理液Bたる薬液がスプレーされて、…エッチング…等の薬液処理が行われる。…コンベヤ1にてプリント配線基板材Aが横の水平姿勢で搬送される。このコンベヤ1は、…ホイール3が、その軸13を左右の幅方向Dに平行で前後の搬送方向Cに多数、水平に配設されており、…軸13に所定間隔をおいてホイール3が付設されたタイプのもの…が、用いられている
…上下の各ホイール3は、それぞれ前後間が、ホイール3の1個分のスペースにて途中に形成された広い間隙空間Kの箇所を除き、密に接近して並べられている」(【0032】【0033】)、「液体噴射装置14のスリット状噴射口15は、…コンベヤ1の…所定の…ホイール3間に形成された間隙空間Kに、対向して配設されている。そこで処理液Bは、…ダイレクトにプリント配線基板材Aの外表面に噴射されるようになる。すなわち、…液体噴射装置14は、このような間隙空間Kの上側又は下側に配設されており、」(【0039】【0040】))、引用刊行物1発明におけるエッチング装置において、上記の構成を採用することに格別の困難性は認められない。

(イ)について
エッチング液が噴射される搬送基板表面の、幅方向(搬送方向と直交する方向)において、搬送ローラーと接触する部分と接触しない部分があれば、基板全体としてエッチング精度にバラツキが生じることは当然に予想されることであり、なるべく幅方向に密に搬送ローラーを配置すること、すなわち、「搬送ローラーの厚みだけずらす」ことは当業者が適宜なしえることにすぎない。

そして、本願発明1の「各エッチング液噴出部により被エッチング面上へ噴出されるエッチング液の各搬送ローラによる影響を均一化することができる。よって、従来におけるように、多数の搬送ローラーにより搬送される各エッチング体の被エッチング面上の幅方向(搬送方向と直交する)における同じ位置にエッチングムラが生じて、搬送方向にのびるエッチングムラが生じる虞がなくなる」という効果も、引用刊行物1発明(上記(2-3)(1)(b))および周知技術から予想される範囲を何らこえるものではない。

よって、補正後の本願発明1は、引用刊行物1に記載された事項および周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

したがって、補正後の本願請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[3]本願発明
平成19年5月30日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1-3に係る発明は、出願時の明細書の特許請求の範囲、請求項1-3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は以下のとおりである。

「複数のローラー支持軸及びそのローラー支持軸の数に対して所定の割合で均等に割り当てられたローラー支持軸非取付部が一定の間隔で搬送方向に沿って配設され、
上記各ローラ支持軸に、複数の搬送ローラーが一定のピッチで取り付けられ、
上記各ローラ支持軸非取付部下に、エッチング液を上向きに噴出するエッチング液噴出部が配置されたエッチング装置であって、
上記各ローラー支持軸の各搬送ローラーの上記搬送方向と直交する向きにおける位置が、その搬送方向側に隣接するローラー支持軸の各搬送ローラーの上記搬送方向と直交する向きにおける位置よりも予め設定した向きに予め設定した量ずれるようにされてなる
ことを特徴とするエッチング装置。」

[4]引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本出願前に頒布された特開2001-127403号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(a)「軸と軸の直径より大きいリングからなる搬送ロールを複数平行に並べたコンベアであって、隣接する搬送ロールに取り付けたリングが軸方向から見たときに重なる距離に並べられたコンベア、…を用いることができる。
…エッチング処理ゾーンは、…コンベアの下に、エッチング液を噴霧する複数のスプレーを一定の間隔で取り付けたエッチング液供給パイプを複数本並列に並べ、」(第4頁左欄第10-25行)

(b)「コンベアは、厚さ6mm、径50mmのポリプロピレン製コンベアロール8を14個を、80mmピッチで取り付けたコンベアシャフト3を6
8本、…設置し、」(第4頁右欄第16-19行)

(c)図1(a),(b)には、エッチング槽内において、複数の搬送ロール軸が一定の間隔で搬送方向に沿って配設され、上記各搬送ロール軸には、複数のリングが一定のピッチで取り付けられ、上記各搬送ロール軸の各リングの上記搬送方向と直交する向きにおける位置が、その搬送方向側に隣接する搬送ロール軸の各リングの搬送方向と直交する向きにおける位置よりも搬送方向と直交する向きに交互に一定量ずれる様子が示されている。

そして、上記記載事項(a)-(c)をまとめると、引用刊行物2には、

「複数の搬送ロール軸が一定の間隔で搬送方向に沿って配設され、上記各搬送ロール軸に、複数のリングが一定のピッチで取り付けられ、上記搬送ロール軸の下に、エッチング液を上向きに噴霧するスプレーが搬送方向に複数配置されたエッチング装置であって、
上記各搬送ロール軸の各リングの上記搬送方向と直交する向きにおける位置が、その搬送方向側に隣接する搬送ロール軸の各リングの上記搬送方向と直交する向きにおける位置よりも搬送方向と直交する向きに交互に一定量ずれることを特徴とするエッチング装置。」の発明(以下、「引用刊行物2発明」という。)が記載されているといえる。

[5]対比・判断
そこで、本願発明1と引用刊行物2発明とを対比すると、
引用刊行物2発明における「搬送ロール軸」、「リング」、「エッチング液を上向きに噴霧するスプレー」、「搬送方向と直交する向きに交互に」、「一定量」は、それぞれ、本願発明1における「ローラー支持軸」、「搬送ローラー」、「エッチング液を上向きに噴出するエッチング液噴出部」、「予め設定した向きに」、「予め設定した量」に相当する。

したがって、両者は、
「複数のローラー支持軸が一定の間隔で搬送方向に沿って配設され、
上記各ローラ支持軸に、複数の搬送ローラーが一定のピッチで取り付けられ、
上記各ローラ支持軸下に、エッチング液を上向きに噴出するエッチング液噴出部が配置されたエッチング装置であって、
上記各ローラー支持軸の各搬送ローラーの上記搬送方向と直交する向きにおける位置が、その搬送方向側に隣接するローラー支持軸の各搬送ローラーの上記搬送方向と直交する向きにおける位置よりも予め設定した向きに予め設定した量ずれるようにされてなる
ことを特徴とするエッチング装置。」である点で一致し、 以下の点で相違する。

本願発明1では、「複数のローラー支持軸及びそのローラー支持軸の数に対して所定の割合で均等に割り当てられたローラー支持軸非取付部が一定の間隔で搬送方向に沿って配設されるとともに、上記各ローラ支持軸非取付部下に、エッチング液噴出部が配置される」のに対し、引用刊行物2発明では、そのような構成を有していない点。

しかしながら、上記(2-3)(3)における判断と同様の理由により、 引用刊行物2発明におけるエッチング装置において、上記構成を採用することに格別の困難性は認められず、それによる効果も、引用刊行物2の記載事項及び周知技術から予想される範囲を何らこえるものではない。

よって、本願発明1は、引用刊行物2の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

[6]むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そのため、本願請求項2-3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、上記のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-18 
結審通知日 2009-06-19 
審決日 2009-07-01 
出願番号 特願2003-276596(P2003-276596)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C23F)
P 1 8・ 575- Z (C23F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馳平 憲一  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 國方 康伸
鈴木 正紀
発明の名称 エッチング装置  
代理人 有原 幸一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 松島 鉄男  

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