• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1207324
審判番号 不服2007-13525  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-10 
確定日 2009-11-20 
事件の表示 平成10年特許願第181021号「多層プリント配線板およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月21日出願公開、特開2000- 22335〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成10年6月26日の出願であって、平成19年3月29日付で拒絶査定がなされ、これを不服として、平成19年5月10日付で審判請求をするとともに、平成19年6月11日付で手続補正をしたものである。
II.平成19年6月11日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年6月11日付の手続補正を却下する。

[理 由]
1.本件手続補正の内容
本件手続補正により、特許請求の範囲は次のとおりに補正された。

「【請求項1】
コア基板上に設けた導体回路を被覆して層間樹脂絶縁層が形成され、該コア基板にはスルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板において、
前記コア基板上に設けられた層間樹脂絶縁層は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との複合体よりなるとともに、加熱プレスにより平坦化されており、かつ前記コア基板に設けたスルーホールのランドを含む導体回路の側面および上面には、同一の粗化処理により同一種類の粗化層が形成されていることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項2】
コア基板上に設けた導体回路を被覆して層間樹脂絶縁層が形成され、該コア基板には、スルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板を製造するにあたり、少なくとも下記(a)?(g)の工程、すなわち、
(a)両面に金属層が形成された基板にスルーホールを設ける工程、
(b)前記金属層の表面および前記スルーホールの内壁面を粗化処理する工程、
(c)該スルーホールに樹脂を充填する工程、
(d)表面を研磨する工程、
(e)金属層をエッチングして導体回路を形成すると共に、前記スルーホールにランドを形成して、コア基板とする工程、
(f)前記スルーホールのランドを含む導体回路の側面および上面には、同一の粗化処理によって同一種類の粗化層を形成する工程、
(g)前記コア基板上に、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とからなる層間樹脂絶縁剤の層を設け、加熱プレスして平坦化した熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との複合体からなる層間樹脂絶縁層とする工程、
を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。」

2.補正の適否について
上記補正の補正事項は、
(1)補正前の請求項1に記載の「、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、」を、「設けた導体回路を被覆して層間樹脂絶縁層が形成され、」に補正し、
(2)同請求項1に記載の「導体回路には、側面を含む全表面に、」を、「スルーホールのランドを含む導体回路の側面および上面には、同一の粗化処理により」に補正し、
(3)同請求項2に記載の「、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、」を、「設けた導体回路を被覆して層間樹脂絶縁層が形成され、」に補正し、
(4)同請求項2の(e)に記載の「導体回路を形成し、」を、「導体回路を形成すると共に、前記スルーホールにランドを形成して、」に補正し、
(5)同請求項2の(f)に記載の「前記導体回路の側面を含む全表面に、」を、「前記スルーホールのランドを含む導体回路の側面および上面には、同一の粗化処理によって」に補正したものである。

上記補正事項(1)?補正事項(5)のうち、補正事項(1)については、補正前の「層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成され」を、「導体回路を被覆して層間樹脂絶縁層が形成され」に変更したものである。

そうすると、補正前の「導体回路」は、コア基板上に層間樹脂絶縁層を介して形成される一方で、補正後の「導体回路」は、コア基板上に設けられ、しかも、層間樹脂絶縁層で被覆されることになるから、補正前と補正後では導体回路と層間樹脂絶縁層の積層関係は逆転することになり、してみると、補正後の「導体回路」は、補正前の「導体回路」を下位概念化したものではない。よって、上記補正事項(1)は、特許請求の範囲の減縮には該当しないし、さらに、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明にも該当しないので、上記補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものではない。

3.むすび
したがって、本件手続補正は、上記補正事項(2)?補正事項(5)について検討するもでもなく、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成19年6月11日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成18年11月20日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
コア基板上に、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、該コア基板にはスルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板において、
前記コア基板上に設けられた層間樹脂絶縁層は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との複合体よりなるとともに、加熱プレスにより平坦化されており、かつ前記コア基板に設けた導体回路には、側面を含む全表面に、同一種類の粗化層が形成されていることを特徴とする多層プリント配線板。」

2.引用刊行物及びその摘記事項
原査定の拒絶の理由に引用した本願出願前に国内において頒布された下記の刊行物1?刊行物3には、次の事項が記載されている。

刊行物1:特開平6-260756号公報
刊行物2:特開平10-51113号公報
刊行物3:特開平10-98271号公報

<刊行物1の摘記事項>
A)「【0026】実施例1
実施例1の多層プリント配線板の製造工程(1)?(9)について、図1(a)?(e)に基づき説明をする。
工程(1):両面銅張積層板に、・・・貫通孔を形成した。全面に、・・・無電解めっきを行い、貫通孔の内壁に銅を析出させ、スルーホール9を形成した。
工程(2):・・・
工程(3):フェノールノボラック型エポキシ樹脂・・・60重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂・・・40重量部および・・・硬化剤・・・5重量部を・・・溶解させて、この組成物・・・に対して、エポキシ樹脂微粉末を、・・・混合し、・・・ペースト状充填材料を作成した。・・・
工程(4):ロールコータ11により、・・・上記充填材料をスルーホールに圧入した。
工程(5):上記充填材料を乾燥、加熱、硬化させ、余剰の充填材料を研磨により除去し、平坦化した。
工程(6):・・・ドライフィルムをラミネートし、・・・エッチングレジストとした。
工程(7):・・・エッチングを行い、両面プリント基板(内層回路1)とした。スルーホールは充填材料で保護されているため、エッチングされなかった。・・・
工程(8):基板を・・・無電解めっき浴にてめっきを施し、Ni-P-Cu共晶の・・・凹凸面2を得た。
・・・
工程(9):クレゾールノボラック型エポキシ樹脂・・・60重量部に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂・・・40重量部、・・・エポキシ樹脂微粉末・・・25重量部を配合した。そして、・・・接着剤のワニスを作成した。
【0027】工程(10):ロールコータを用いて内層回路1上に上記の接着剤ワニスを塗布した後、塗布されたワニスを・・・乾燥硬化させ、・・・感光性接着剤層(層間絶縁層)3を形成した。
工程(11):次に、前記工程(10)の処理を施した配線板に・・・フォトマスクフィルムを密着させ、・・・配線板上に・・・バイアホールとなる開口4を形成した。
工程(12):次いで、前記配線板を・・・加熱処理した。これらの処理により、フォトマスクフィルムに相当する・・・開口4を有する層間絶縁層3を形成した。
工程(13):そして、・・・層間絶縁層3の表面を粗化した。・・・
工程(14):・・・
工程(15):前記配線板上にドライフィルムフォトレジストをラミネートすると共に、・・・メッキレジスト6を形成した。
工程(16):・・・
次いで、常法に従う無電解メッキ液に配線板を直ちに浸漬し・・・た。以上の各工程に経ることによって、・・・導体回路7を備える4層プリント配線板を形成した。内層にスルーホールを有していても上層の膜厚が均一になり、インピーダンスのばらつきは見られなかった。また、内層にスルーホールを有していてもパッドが平滑になるため、ICを実装しても不良は発生しなかった。」

B)「【0023】本願の多層プリント配線板では、導体回路と層間絶縁材層の界面に設けられる無電解めっき膜からなる粗化層が銅、ニッケル、リンから成る共晶化合物であることが望ましい。・・・本発明の共晶めっきにより得られる共晶化合物は、強度が高いため熱衝撃による層間剥離が生じにくく、ヒートサイクル特性が向上するからである。また、このような共晶化合物は、主に針状結晶となるため、アンカーとしての効果が高く、導体回路と層間絶縁材層を密着させることができるため、ヒートサイクル特性が向上する。更に・・・このような処理法では金属が酸化されずに表面に形成されているため、溶解されず、高い密着力を確保できる。」

<刊行物2の摘記事項>
A)「【0002】
【従来の技術】従来より、フルアディティブプロセスによる多層プリント配線板の製造方法が実施されている。・・・
【0003】第1の方法は、液状の接着剤を用いた方法である。この方法では、まず基板31の片面または両面に、一般的な手法によって銅からなる内層導体パターン32を形成する(図8(a)参照)。なお、・・・内層銅パターン32の表層に針状の黒化還元層33(酸化銅層)を形成してもよい。次いで、基板31のパターン形成面に対し、ロールコータ等を用いてアディティブ用接着剤を塗布しかつ硬化させる。この工程を経ると、内層導体パターン32を覆うアディティブ用接着剤層34が、層間絶縁層として基板31上に形成される(図8(b)参照)。
・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来技術には以下のような問題がある。即ち、第1の方法では内層導体パターン32と基板31との高低差が大きくなると、塗布されたアディティブ用接着剤層34が所々で落ち込んでしまい、接着剤層34の表面が平坦にならなくなる。ゆえに、外層導体パターンやバイアホールの形成に支障を来す。」

B)「【0016】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]以下、本発明をフルアディティブプロセスによる多層プリント配線板の製造方法に具体化した一実施形態を図1?図4に基づき詳細に説明する。
【0017】図4(d)に示されるように、本実施形態の多層プリント配線板1を構成する基板2の両面には、内層導体パターンとしての内層銅パターン3が形成されている。内層銅パターン3の表層には、針状の黒化還元層4が形成されている。基板2におけるパターン形成面には、層間絶縁層としてのアディティブ用の熱硬化性接着剤層6が形成されている。・・・
【0018】次に、本実施形態の多層プリント配線板1を製造する手順を説明する。・・・樹脂製の絶縁基材に銅箔をラミネートしてなる銅張積層板を出発材料とし、その銅箔をサブトラクティブプロセスによりパターン状にエッチングする。その結果、図3(a)に示されるような所定形状をした・・・内層銅パターン3が形成される。次に、従来公知の手法に従って、内層銅パターン3に対する黒化還元処理を行う。すると、図3(b)に示されるように、内層銅パターン3の表層全体に、針状をした・・・黒化還元層4が形成される。
・・・
【0025】次に、・・・ラミネータを用いてラミネート工程を実施する(図3(c)参照)。・・・まず、カバーフィルム11の剥離によって露出した熱硬化性接着剤層6の片面を、基板2のパターン形成面に向けて配置する。・・・ラミネートロール13の圧力は、直接的にではなくベースフィルム12を介して間接的に作用する。その結果、熱硬化性接着剤層6が基板2のパターン形成面に圧着される(図3(d)参照)。
【0026】次に、ラミネート工程を経た基板2をプレス装置に移し、そこで熱プレス工程を実施する。・・・そして、熱板により厚さ方向から押圧力を加えることによって、基板2のパターン形成面に熱硬化性接着剤層6が密着する(図4(a)参照)。
・・・
【0032】熱プレス工程の終了後、・・・硬化した熱硬化性接着剤層6上のベースフィルム12を・・・剥離する(図4(b)参照)。すると、表面の平坦な熱硬化性接着剤層6が露出する。」

<刊行物3の摘記事項>
A)「【0023】本発明の層間絶縁剤において、・・・耐熱性樹脂のマトリックスに熱可塑性樹脂を配合させることは、熱可塑性樹脂が有する可撓性によって、接着剤層やバイアホール部分にクラックが発生しにくくなることから、好適である。
【0024】このような熱可塑性樹脂を配合した上記耐熱性樹脂は、特に、熱硬化性樹脂・・・と熱可塑性樹脂の樹脂複合体で構成することが望ましい。なぜなら、熱硬化性樹脂の剛直骨格により耐酸特性や耐酸化剤特性を確保し、熱可塑性樹脂の可撓性により靱性を確保して、ヒートサイクルなどに強い配線板を得ることができるからである。」

B)「【0034】・・・本発明にかかる層間絶縁剤、無電解めっき用接着剤の耐熱性樹脂マトリックスおよび多層プリント配線板において、これらの製造に用いる耐熱性樹脂は、・・・熱硬化性樹脂・・・または感光性樹脂と熱可塑性樹脂との樹脂複合体・・・を適宜に配合して構成され、必要に応じて耐熱性樹脂微粒子が添加される。
【0035】なお、本発明の多層プリント配線板において、複合層で構成した樹脂絶縁層は、上層の無電解めっき用接着剤を構成する耐熱性樹脂マトリックスとして、熱硬化性樹脂・・・または感光性樹脂と熱可塑性樹脂との複合体を使用し、下層の層間絶縁剤として、熱可塑性樹脂を含まない熱硬化性樹脂・・・または感光性樹脂を使用することが望ましい。この理由は、このような構成にした樹脂絶縁層によれば、無電解めっき用接着剤層の靱性を改善して、ピール強度を向上させることができ、しかも、粗化処理時に、バイアホール用開口部の底面に熱可塑性樹脂が残存することもないからである。」

3.当審の判断
(1)刊行物1に記載の発明
あ)上記摘記事項A)の工程(7)、工程(8)によれば、両面プリント基板(内層回路1)に対して無電解めっきを施し、Ni-P-Cu共晶の凹凸面2を得ているから、内層回路1の側面を含む全表面には、Ni-P-Cu共晶の凹凸面2からなる同一種類の粗化層が形成されているものと認められる。

い)上記摘記事項A)の工程(12)?工程(16)によれば、配線板を無電解メッキ液に浸漬しているから、配線板の層間絶縁層3の表面には導体回路7が形成されているものと認められる。

そこで、上記あ)、い)の事項を考慮しつつ、上記摘記事項A)、B)を整理すると、上記刊行物1には、「両面プリント基板(内層回路)の内層回路上に塗布された接着剤ワニスを乾燥硬化して、感光性接着剤層(層間絶縁層)を形成し、この感光性接着剤層(層間絶縁層)の表面に無電解メッキによる導体回路が形成されてなり、この両面プリント基板(内層回路)にはスルーホールが形成され、このスルーホールには充填材料が圧入されており、この両面プリント基板(内層回路)の内層回路には、側面を含む全表面に、同一種類の粗化層が形成されている多層プリント配線板」に関する発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていることになる。

(2)対比・判断
そこで、本願発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「感光性接着剤層(層間絶縁層)の表面に形成された導体回路」、「両面プリント基板(内層回路)の内層回路」は、本願発明1の「層間樹脂絶縁層を介して形成された導体回路」、「コア基板に設けた導体回路」に相当する。

そうすると、両者は、「コア基板上に、層間樹脂絶縁層を介して導体回路が形成されてなり、該コア基板にはスルーホールが設けられ、そのスルーホールには充填材が充填された構造を有する多層プリント配線板において、前記コア基板に設けた導体回路には、側面を含む全表面に、同一種類の粗化層が形成されている多層プリント配線板」の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点1:層間樹脂絶縁層について、本願発明1の層間樹脂絶縁層は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との複合体よりなるのに対し、刊行物1発明の感光性接着剤層(層間絶縁層)はそのようなものか否か不明な点。

相違点2:層間樹脂絶縁層について、本願発明1の層間樹脂絶縁層は、加熱プレスにより平坦化されているのに対し、刊行物1発明の感光性接着剤層(層間絶縁層)はそのようなものか否か不明な点。

つぎに、上記相違点について検討する。

相違点1について
層間樹脂絶縁層が熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との複合体よりなる点については、上記刊行物3の摘記事項A)に記載されているように、熱硬化性樹脂の剛直骨格により耐酸特性や耐酸化剤特性を確保し、熱可塑性樹脂の可撓性により靱性を確保して、接着剤層やバイアホール部分にクラックが発生しにくくなる作用効果を有しているから、刊行物1発明の感光性接着剤層(層間絶縁層)についても、このような作用効果は要求されているとすることができるので、刊行物1発明の感光性接着剤層(層間絶縁層)として、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との複合体を採用する程度のことは容易に想到することができるものである。

相違点2について
層間樹脂絶縁層が加熱プレスにより平坦化されている点については、上記刊行物2の摘記事項A)の従来の技術によれば、内層導体パターンと基板との高低差が大きくなると、塗布されたアディティブ用接着剤が所々で落ち込んでしまい、接着剤層の表面が平坦にならなくなるので、同摘記事項B)に記載のように、熱プレス工程を実施することにより、基板のパターン形成面に熱硬化性接着剤層が密着して、表面の平坦な熱硬化性接着剤層が露出するようにしている。
そこで、刊行物1発明においても、両面プリント配線板の両面に接着剤ワニスを塗布した場合、内層回路の厚さによっては内層回路と両面プリント配線基板との高低差が大きくなり、感光性接着剤層(層間絶縁層)の表面が平坦にならなくなるものと認められるから、刊行物2の摘記事項B)に記載のように、熱プレス工程により、表面の平坦な感光性接着剤層(層間絶縁層)とするようなことは容易に想到することができるものである。

そして、本願発明1において、層間樹脂絶縁層を、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との複合体とするとともに、加熱プレスにより平坦化した相違点については、格別の作用効果は認められない。

したがって、本願発明1は、刊行物1?刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1?刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の請求項2に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-03 
結審通知日 2009-09-08 
審決日 2009-09-28 
出願番号 特願平10-181021
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 574- Z (H05K)
P 1 8・ 573- Z (H05K)
P 1 8・ 572- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 岡 和久
特許庁審判官 加藤 浩一
粟野 正明
発明の名称 多層プリント配線板およびその製造方法  
代理人 小川 順三  
代理人 中村 盛夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ