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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S |
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管理番号 | 1207333 |
審判番号 | 不服2008-27149 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-10-24 |
確定日 | 2009-11-20 |
事件の表示 | 特願2006-160299号「光源装置及びこの光源装置を用いたプロジェクタ」拒絶査定不服審判事件(平成19年12月20日出願公開、特開2007-329053号)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成18年6月8日の特許出願であって、平成20年9月22日付けで拒絶査定がされたので、これを不服として同年10月24日に本件審判請求がなされたものである。 そして、本願の各請求項に係る発明は、平成20年7月28日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。 「【請求項1】 筐体部と発光素子とを有し、 前記筐体部は、矩形の射出口を形成する傾斜した反射平面である壁面を備え、前記射出口の長辺側壁面の傾斜が短辺側壁面の傾斜よりも小さな傾斜角であって前記短辺側壁面が台形形状であるとともに、少なくとも前記短辺側壁面に前記発光素子を配置したことを特徴とする光源装置。」 2.引用例及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-114451号公報(以下「引用例1」という)及び特開2004-102132号公報(以下「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。 なお、下記記載中の下線は当審で付与したものである。 [引用例1] (1)【0001】 「 本発明は、発光ダイオードに代表される点状光源を光源とする照明装置と、その照明装置を備えた投写型表示装置とに関するものである。」 (2)【0004】 「特許文献1に開示されているような光源装置には次のような課題がある。すなわち、発光ダイオードから発せられる光は発散光である。よって、図7に示す各発光ダイオード402の発光面に対して垂直に近い発光成分ほど、より小さな入射角度で設置面と反対側の内面401に入射する。ここで、棒状部材400の対向する内面401同士は互いに平行なので、対向する内面401間で反射を繰り返しながら棒状部材400の長手方向に向けて進行する光のこれら内面401に対する入出射角度はその進行中に変化しない。よって、発光ダイオード402の発光面に対して垂直に近い発光成分ほど、棒状部材400の一端403から出射するときの角度が大きくなる。」 (3)【0006】 「本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、なるべく多く点状光源を配備することによって十分な発光光束量を確保しつつ、なるべく小さな角度成分の光によってライトバルブを照明可能な照明装置を提供することを目的とする。」 (4)【0008】 「従って、本発明の照明装置を構成する導光部材は2つの入射面を有し、導光部材の大型化を回避しつつ該導光部材の周囲により多くの光源を配置することできる。さらに、入射面と出射端面との面積比を大きくすれば、集光効率をさらに高めることもできる。また、導光部材の第1の入射面と第2の入射面との間隔が出射端面に近づくに従って広がっているので、導光部材内に入射し、反射を繰り返しながら出射端面に向けて進行する光は、その進行の過程で反射角度が次第に緩和される。よって、出射面端からは相対的に角度成分が小さな光が出射される。」 (5)【発明の効果】【0009】 「本発明によれば、高輝度で、かつ、角度成分が小さな照明光によって照明対象を照明可能な照明装置と、そのような照明装置を備えた投写型表示装置が実現される。」 (6)【0014】 「次に、本例の照明装置の作用について図3を参照しながら説明する。赤色発光ダイオード102から発せられた赤色光131は、第1の入射面105から導光部材101内に入射し、第2の入射面106によってその殆どが全反射される。ここで、第2の入射面106で全反射を起こさない光成分も存在するが、この光成分は第2の入射面106に形成されている薄膜111によって反射される。すなわち、赤色発光ダイオード102から発せられた赤色光131は、実質的にその全てが第2の入射面106によって反射され、以後第1の入射面105と第2の入射面106との間での全反射を繰り返しながら出射端面104に到達し、該出射端面104から出射する。ここで重要なことは、第2の入射面106に形成されている薄膜111によって反射された光成分も、それ以後は第1の入射面105と第2の入射面106との間での全反射を繰り返すことである。なぜなら、第1の入射面105と第2の入射面106は、出射端面104に近づくに従って互いの間隔が広がるように傾斜しているので、光の次の入射面(第1の入射面105又は第2の入射面106)への入射角度が反射の度に大きくなるからである。」 (7)【0015】 「一方、緑色発光ダイオード103gから発せられた緑色光132及び青色発光ダイオード103bから発せられた青色光133は、第2の入射面106から導光部材101内に入射し、第1の入射面105によってその殆どが全反射される。ここでも、第1の入射面105で全反射を起こさない光成分が存在する。しかし、この光成分は第1の入射面105に形成されている薄膜110によって反射される。すなわち、緑色発光ダイオード103gから発せられた緑色光132及び青色発光ダイオード103bから発せられた青色光133は、実質的にその全てが第1の入射面105によって反射され、以後第2の入射面106と第1の入射面105との間での全反射を繰り返しながら出射端面104に到達し、該出射端面104から出射する。ここでも、第1の入射面105に形成されている薄膜110によって一度反射された光成分は、それ以降第2の入射面106と第1の入射面105との間での全反射を繰り返す。その理由は上記と同一である。」 (8)【0016】 「以上のようにして、発光ダイオード102及び103から出射された赤(R)、緑(G)、青(B)の各色光131、132、133が導光部材101の出射端面104から効率よく出射される。さらに、これら色光131、132、133は、全反射を繰り返しながら導光部材1内を進行する過程でその角度が次第に緩和される。これは、出射端面104から出射される光の角度成分が相対的に小さくなり、照明対象に対して相対的に浅い角度で入射することを意味している。」 そうすると、図1?4とともに、上記摘記事項を総合すると、引用例1には、 「導光部材101と発光ダイオード102,103とを有し、 前記導光部材は、矩形の出射端面104を形成する傾斜した反射平面である壁面を備え、この壁面が、前記出射端面の一辺側の壁面(図2の手前側と奧側の面)と、この一辺側と隣接する他辺側の壁面(105,106の面)とから成り、この他辺側の壁面は傾斜しており、前記他辺側の壁面に発光ダイオードを配置した照明装置。」 に関する発明(以下「引用発明」という)が記載されているものと認められる。 [引用例2] (9) 図6の13Cを参照 (10)【0001】【発明の属する技術分野】 「本発明は、高輝度且つ小型化で均一な照明を実現する照明装置及びその照明装置を使用した画像投影装置に関する。」 (11)【0084】 「以上のように、本第2の実施の形態に係る照明装置は、LED1のような微小面光源を用い、効率の良い、且つ、所望の平行性を有する均一照明を実現するため、光源から放射された拡散光を集光性良く、平行度の高い光に変換する素子としてのテーパーロッド13と、該テーパーロッド13からの出射光から所定のサイズの瞳を形成する照明レンズ11とを具備している。」 (12)【0103】 「ここで、図5の(A)及び(B)に示すような口径比(Aperture Ratio、以降ARと記す。)を有するロッドやミラーパイプ、更にはアスペクトのある入射端面形状を有するロッドやミラーパイプの、形状と角度分布特性との関係を明確化するため、図6に示すような角型テーパーロッド(又はテーパーを有するミラーパイプ)13A乃至13Dの角度分布を調べてみる。座標軸は、長軸方向をZとし、図6に示すように、断面の水平方向をX方向、垂直方向をY方向とする。」 (13)【0104】 「この場合の諸元は、図7に示すような表のようになっている。即ち、1×1のLED1のチップサイズに対し、該LEDチップと入射端面とのギャップを0.5、長さを35に統一して、テーパーロッド13Aとテーパーロッド13BはARは同じだが、テーパーロッド13Bは入射端面、出射端面サイズがそれぞれテーパーロッド13Aの2倍の関係、テーパーロッド13Aとテーパーロッド13Cは一方向のARがもう一方の2倍の関係、テーパーロッド13Aとテーパーロッド13DはARは同じだが、一方向の径がもう一方向の径の2倍の関係、テーパーロッド13Cとテーパーロッド13Dは方向によってARが異なる関係とする。」 (14)【0159】【発明の効果】 「以上詳述したように、本発明によれば、LEDのような微小面光源を用い、効率の良い且つ所望の平行性を有する均一照明を実現可能な照明装置及びその照明装置を使用した表示装置を提供することができる。」 3.発明の対比 本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「照明装置」、「導光部材101」、「発光ダイオード102,103」及び「出射端面104」は、それぞれ、本願発明の「光源装置」、「筐体部」、「発光素子」及び「射出口」に相当するものである。 そうすると、両発明は、 「筐体部と発光素子とを有し、 前記筐体部は、矩形の射出口を形成する傾斜した反射平面である壁面を備え、この壁面が、前記射出口の一辺側の壁面と、この一辺側と隣接する他辺側の壁面とから成り、この他辺側の壁面は傾斜しており、少なくとも前記他辺側の壁面に前記発光素子を配置した光源装置」 である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。 <相違点1> 筐体部を形成する射出口の一辺側の壁面とこの一辺側に隣接する他辺側の壁面に関して、 本願発明では、射出口の一辺側の壁面である長辺側壁面の傾斜が他辺側の壁面である短辺側壁面の傾斜よりも小さな傾斜角であって、前記短辺側壁面が台形形状であるのに対して、 引用発明は、前記射出口(出射端面)の一辺側の壁面(図2の手前側と奧側の面)と、この一辺側と隣接する他辺側の壁面(105,106の面)とから成り、この他辺側の壁面は傾斜しているが、どちらが射出口(出射端面)の長辺側壁面で、どちらが短辺側壁面であるのかは特定できない点 <相違点2> 発光素子を配置した壁面が、本願発明では、少なくとも短辺側壁面(「少なくとも短辺側壁面」とは、「短辺側壁面のみ」の場合も含まれるものと解釈される。また、「短辺側壁面」は、大きな傾斜角の側の壁面である。)であるのに対して、引用発明では、傾斜角をもった側の壁面であるものの、長辺側、短辺側のどちらの壁面であるのか特定できない点 4.当審の判断(容易想到性の検討) 上記相違点について検討する。 <相違点1> について 引用例2には、図6の13Cを参照すると、矩形の射出口を形成する傾斜した反射平面である壁面を、射出口の長辺側壁面(一辺側の壁面)の傾斜が短辺側壁面(他辺側の壁面)の傾斜よりも小さな傾斜角であって、この短辺側壁面(他辺側壁面)が台形形状である筐体部形状とすることが開示されており、このような筐体部形状とすることによって「光源から放射された拡散光を集光性良く、平行度の高い光に変換する」ことができ、本願発明でいう課題と同様のことが開示されているといえるから、発光素子(LED1)の配置箇所はさておき、この筐体部の形状を、ただ単に引用発明の筐体部(導光部材)の形状に採用することで本願発明の上記相違点1でいう構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。 <相違点2> について そもそも引用発明も傾斜角をもった他辺側の壁面に発光素子を配置したものであるから、上記相違点1についてのところで検討したように、他辺側壁面を短辺側壁面とすることに伴って発光素子を配置した壁面は短辺側壁面ということになり、本願発明の上記相違点2でいう構成となる。 そして、本願発明の作用効果は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項から当業者が予測可能な範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項から当業者が容易に想到することができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-07 |
結審通知日 | 2009-09-15 |
審決日 | 2009-09-29 |
出願番号 | 特願2006-160299(P2006-160299) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F21S)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平田 信勝 |
特許庁審判長 |
藤井 俊明 |
特許庁審判官 |
中川 真一 横溝 顕範 |
発明の名称 | 光源装置及びこの光源装置を用いたプロジェクタ |