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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1207352
審判番号 不服2004-19014  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-15 
確定日 2009-11-18 
事件の表示 特願2000-244466「地図関連情報提供システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月20日出願公開、特開2002- 55990〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成12年8月11日に特許出願としたものであって、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。) は、平成16年7月9日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 複数の利用者に対して、地図に関連して予め登録された個々の利用者ごとの情報をインターネットを介してそれぞれ提供するシステムであって、
各利用者の端末装置に対してインターネットを介して情報の送受を行う情報送受部と、
利用者への提供対象となる地図をデータとして格納した地図データ格納部と、
前記端末装置からインターネットを介して与えられる指示に基づいて、利用可能範囲となる地図を各利用者ごとに設定する設定処理を行うとともに、利用者が設定した利用可能範囲に応じた対価を当該利用者に対して課金する課金処理を行う利用可能範囲設定部と、
前記端末装置からインターネットを介して与えられる指示に基づいて、各利用者ごとに、当該利用者について設定されている利用可能範囲内にある地図上の点、線または面に関連づけられたそれぞれ固有の利用者データを受け取り、これを登録する利用者データ登録部と、
前記端末装置からインターネットを介して与えられる特定の利用者による指示に基づいて、前記特定の利用者について設定されている利用可能範囲内の所定の地図と、当該地図上の点、線または面に関連づけて前記特定の利用者について登録されている利用者データもしくはこの利用者データに基づいて得られるデータとを、前記端末装置のディスプレイ画面上に、前記点、線または面に関連づけた態様でインターネットを介して提示する情報提示部と、
を備えることを特徴とする地図関連情報提供システム。」

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-338344号公報(以下、「刊行物1」という。)には、
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】コンピュータのハードウエア及び該ハードウエアを制御するオペレーティング・システムと共働して動作し、地図データと所定のデータベースとを統合して地図上に前記所定のデータベースのデータを表示する地図情報システムにおいて、
所望領域の地図を表示する地図基本コアと、描画すべきオブジェクトの描画を管理する描画コアと、前記地図データ及びデータベースとのインターフェース機能を有するデータコアとをもつコアプログラムと、
少なくとも、広域地図上へのグラフ表示機能をもつエリアマーケティングエンジンと、前記広域地図より詳細な住宅地図に対して建物の属性データを表示する顧客管理エンジンとを有するエンジン群から、単独で或いは複数適宜組み合わせられたエンジンプログラムと、
個有適用業務毎に形成され、個有適用業務に対応したGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)表示機能を有し、前記エンジンプログラム及びコアプログラムと適宜リンク付けされ、前記GUIを介して与えられた操作命令に対して前記エンジンプログラム及びコアプログラムを適宜実行させる個有適用業務プログラムとを有することを特徴とする地図情報システム。
【請求項2】請求項1に記載された地図情報システムにおいて、
前記地図基本コアは、地図の表示に加えて地図の拡大・縮小及び移動を行う地図操作機能を有することを特徴とする。
【請求項3】請求項1に記載された地図情報システムにおいて、
前記描画コアは、前記地図基本コアにより作成された地図のオブジェクトとそれ以外の所定のオブジェクトの描画を管理する機能を有することを特徴とする。
【請求項4】請求項1に記載された地図情報システムにおいて、
前記データコアは、前記地図基本コアからの地図データ要求に応答して、前記地図データから要求された地図データを取得し、前記エンジンプログラムからの要求に応答して、前記データベースから要求されたデータを取得する機能を有することを特徴とする。
【請求項5】請求項1に記載された地図情報システムにおいて、
前記エリアマーケティングエンジンは、前記データベースから所定のデータを集計し、該集計したデータにしたがって所定のグラフを地図上に作成する機能を有することを特徴とする。
【請求項6】請求項5に記載された地図情報システムにおいて、
前記エリアマーケティングエンジンは、更に、所定のシンボルを地図上に登録し、前記データベース内の住所または位置データと前記地図データ内の住所または位置データとのマッチングをとるプロット機能を有することを特徴とする。
【請求項7】請求項1に記載された地図情報システムおいて、
前記顧客管理エンジンは、前記データベース内の住所または位置データと前記地図データ内の住所または位置データとのマッチングをとり、前記データベース内のデータを地図上に登録するマッチング機能を有することを特徴とする。
【請求項8】請求項1に記載された地図情報システムおいて、
前記顧客管理エンジンは、前記データベース内のデータの属性データの地図データ上への登録、修正、表示画面上への表示する機能を有することを特徴とする。
【請求項9】請求項1に記載された地図情報システムおいて、
前記個有適用業務プログラムは、更に、前記コアプログラム及びエンジンプログラム内の機能を組み合わせたマクロ命令を有することを特徴とする。
【請求項10】請求項1に記載された地図情報システムおいて、
当該地図情報システムがサーバとクライアント間をネットワークで接続可能に構成され、前記サーバ内の前記コアプログラムは、更に、前記コアプログラムの機能を細分化して前記クライアントに送信するウエブコア機能を有することを特徴とする。
【請求項11】請求項10に記載された地図情報システムにおいて、
更に、前記サーバ内の前記データコアは、前記クライアント内のデータコアとの間で所定量の地図データを前記クライアントからの要求に応じて転送することを特徴とする。」(2頁1欄1行?2欄32行)、
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地図データと人口統計データや統計データ等の所定のデータベースとを統合することにより、地図上に前記データベースのデータを表示する地図情報システム、その地図情報システムの構築方法及びその地図情報システム・プログラムを記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】地図情報システム(Geographic Information Systems, GIS)は、地図データと人口統計データや顧客データ等のデータベースとを統合することにより、地図上にデータベースのデータを表示する。地図データは、住所や位置に関連付けられた地形や道路、建物のデータを有し、データベースは、住所や位置に関連付けられた人口データや顧客データを有し、地図情報システムは、それらの地図データとデータベースとを住所や位置にしたがって関連づけることにより、地図上にデータベースのデータそのまま或いは集計されたデータを表示することができる。地図上にデータを表示することにより、単なるデータの羅列では得られない付加価値のあるデータの表示を実現することができる。地図情報システムを利用して顧客データ等を地図上に表示することにより、例えば、店舗の出店の判断材料にするなど、経営戦略の策定、展開等に利用することができる。
【0003】上記のデータベースは、地図情報システムが適用される関連業務の種類によって様々な形態を有し、地図上への表示も様々な形態が要求される。
【0004】従来の地図情報システムにおいて、地図上に人口統計データから形成されたグラフを表示したり、住所や位置に関連付けられたデータベースのデータを表示したりすることが実現されている。」(3頁3欄31行?4欄11行)、
ウ 「【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面に従って説明する。しかしながら、本発明の技術的範囲がその実施の形態に限定されるものではない。
【0017】図1は、実施の形態例の地図情報システムの全体構成を示す図である。この例では、例えば汎用のパーソナルコンピュータとその周辺機器からなるハードウエア10及びそのハードウエアの基本的な制御を行うオペレーティング・システム20と共働して動作するアプリケーションプログラムからなる地図情報システムを、地図情報システムの基本的な機能であって異なる適用業務に汎用的に必要な機能をコンピュータに実現させるコアプログラム層20と、個有適用業務の内容に応じて適宜選択及び組み合わせ可能に作成された複数のエンジンプログラムを有するエンジンプログラム層30と、個有適用業務毎に最適化したGUI(グラフィック・ユーザ・インターフェース)表示機能を少なくとも有する個有適用業務プログラムの層50との3層構造にする。
【0018】コアプログラム30には、少なくとも、地図の表示に必要な機能を有する地図基本コア群C1と、地図のオブジェクトやグラフのオブジェクト等の描画すべきオブジェクトの描画機能を有する描画コア群C2と、データとのインターフェース機能を有するデータコア群C3とを有する。これらのコア群は、個有適用業務の種類にかかわらず、常に必要とされる基本的な機能を実現する為のプログラムであり、全ての個有適用業務に対して使用されるプログラム層である。
【0019】尚、後述するが、地図情報システムがインターネットやイントラネット等のウェブ対応にされる場合、或いはクライアント・サーバ対応にされる場合は、コアプログラム30には、ウエブコアC4が追加される。このウエブコアC4を設けることにより、通信回線を通じて不特定多数のクライアントからのアクセスに対応して、必要なプログラムや必要なデータの送信を可能とする。
【0020】地図情報システムにより利用されるデータには、住所や位置に対応した地形、道路、建物等のデータを有する地図データ60と、住所や位置に対応した人口統計データや顧客管理データ等の所定のデータを有するデータベース62とがある。地図データ60は、例えば一般に市販されている或いはある目的の為に構築されたデータを利用することができるが、データベース62は、人口統計データや企業データ等の中央官庁や私的機関により調査作成されたデータのほかに、地図情報システムのユーザがもつ顧客管理データ等の固有のデータである。従って、上記のデータコア群C3は、これらのデータ60,62との種々のインターフェース機能を有し、それぞれのインターフェースにより、地図データ60またはデータベース62から必要なデータが取り出される。
【0021】エンジンプログラム層40には、例えば、エリアマーケティングエンジン40、顧客管理エンジン42及びファシリティマネージメントエンジン44が設けられる。これらのエンジンは、対象となる地図データが異なり、それぞれの地図データに対応した地図情報処理の機能を有する。例えば、エリアマーケティングエンジン40は、行政界等の比較的広域の地図データに対応しており、後述する通りデータの集計機能やグラフ表示機能を豊富に備える。また、顧客管理エンジン42は、住宅や建物までの詳細な地図データをもつ住宅地図データに対応しており、従って、顧客管理データとの対応(マッチング)機能やその顧客管理データの管理機能等を有する。また、ファシリティマネージメントエンジン44は、例えば道路、上下水道、ガス配管等の広域に設置された設備の地図データに対応しており、それらの地図データに対して設備の状態、状況等の属性データを地図上に表示したりするものである。このファシリティマネージメントエンジン44を利用することにより、広域に設置された設備の維持管理、変更管理、工事管理を効率的に行うことができる。
・・・(中略)・・・
【0023】個有適用業務プログラム50は、地図情報システムを利用する利用者に固有のアプリケーションプログラムとして、利用者毎にカスタマイズされて形成される。このプログラムは、少なくとも利用者に固有の表示画面を実現するGUI表示機能を有する。利用者毎に異なる個有適用業務に対応した最適なトップ画面が、この個有適用業務プログラム50により実現される。しかしながら、この個有適用業務プログラムの実行により行われる地図情報システムに必要な機能は、上記したコアプログラム層とエンジンプログラム層のプログラムににより実現される。従って、個有適用業務プログラム50は、利用者固有のGUI表示機能を少なくとも有し、GUI画面から与えられた操作命令に対応して、コアプログラム層とエンジンプログラム層の機能を実現させるプログラムとのリンクを発生する。或いは、個有適用業務プログラム50は、コアプログラムやエンジンプログラムの基本的機能を組み合わせたマクロ命令を実行させる様に形成される場合もある。
・・・(中略)・・・
【0025】図2は、コアプログラム20内の地図基本コア群C1の機能を示す図である。コアプログラム内の地図基本コア群には、地図操作機能、地図情報の取得と更新機能及び地図設定機能等を有する。地図操作機能とは、表示画面への地図の表示、地図の拡大・縮小、地図の移動、及び地図の移動の機能である。より具体的には、表示用のメモリ内に表示すべき地図のオブジェクトを記録することでこの機能が実現される。また、地図情報の取得と更新機能とは、例えば表示画面の地図上で示された場所の住所や位置(経度と緯度)情報を地図データ60から取得する機能である。更に、地図設定機能とは、地図データを構成するレイヤーの属性データの設定機能である。
・・・(中略)・・・
【0029】図2,4,5において示したコアプログラム30は、例えば地図の表示を次の様にして行う。先ず、地図基本コア群C1により地図設定が行われ、指定された場所の地図データの取得要求が発行される。それに応答して、データコア群C3は、地図データ60から指定された場所の地図データを取得して、地図基本コア群C1に渡す。地図基本コア群C1では、その地図データをもとに地図のオブジェクトを作成し、描画コア群C2に描画すべき地図オブジェクトとして登録する。描画コア群C2は、登録された地図オブジェクトの描画命令をオペレーティング・プログラム20に対して発行し、表示画面内に地図を表示させる。地図の拡大・縮小の要求があると、地図基本コア群C1により拡大・縮小された地図オブジェクトが作成され、登録される。また、地図の位置の移動の要求があると、地図基本コア群C1は、移動方向の地図データの取得をデータコア群C3に要求し、取得された地図データから新たに地図オブジェクトを作成し、描画コア群C2に登録して描画させる。」(4頁6欄26行?6頁10欄4行)、
エ 「【0031】図6は、図1に示された地図情報システムを利用して、個有適用業務1に対応して構築した地図情報システムの構成例を示す図である。図6に示された地図情報システムの例は、例えば、銀行業務における店舗の出店計画に利用されたり、新聞業務における勧誘計画に利用されたりするシステム例である。この様な地図情報システムの例で特徴的な点は、比較的広域の地図データである行政界地図60を利用して、行政界に対応して集計されている人口統計データやシステム利用者が個別に作成した利用者データ等の集計、そのグラフ表示等行うことにある。また、店舗等のシンボルを地図上に表示したり、システム利用者に固有の商圏やテリトリを設定する機能等が求められる。これらの機能は、従来からのエリアマーケティングの分野において通常使用される機能であり、これらの機能を地図データと連動させることで、地図情報システムは新たな付加価値を提供することができる。
【0032】従って、図6の地図情報システム例では、利用者に最適なGUI表示機能を有する個有適用業務1のプログラムが作成され、エンジンプログラム層には、エリアマーケティングエンジン40のみが選択される。また、データベース62には、人口統計データやシステム利用者のデータが利用される。更に、地図データ60には行政界地図が採用される。
【0033】図7は、図6のシステム構成例における個有適用業務1に対応して形成されたGUIの例を示す図である。このGUI70は、タイトルバーの下のプルダウンメニュー列72,基本機能のアイコン列73の下に、右側に地図表示領域74と、左側に種々の機能ボタン領域75,76が配置される。図7の例では、地図表示領域74には、行政界地図上に性別、年齢別に集計された人口データの3D(三次元)の円グラフが表示されている。各行政界の領域には、それぞれの町名が表示される。
・・・(中略)・・・
【0038】図10は、エリアマーケティングエンジン内のプロット機能Cを示す図である。このプロット機能Cは、例えば店舗や支店等のシンボルを地図上にプロットする機能である。プロット機能は、シンボル登録機能と、自動マッチング機能と、手動マッチング機能とを有する。シンボル登録機能では、表示画面内の地図上にシンボルの位置を指定して表示させる機能であり、シンボル登録機能によりシンボルの住所や位置の属性データを作成し、コアプログラム内の描画コア群C2にシンボルを登録し、描画させる。例えば店舗に対する属性データは、その住所や位置、管理者、売り上げ、設備情報等が含まれ、かかるシンボル登録により、店舗データが形成され、データベース62として記録される。
【0039】自動マッチング機能は、利用者データに含まれる住所や位置の属性データと地図データ内の住所や位置の属性データとのマッチングを行い、マッチングのとれた地図上の位置に自動的にシンボルを登録する機能である。その場合の利用者データは、例えば店舗データであれば、店舗の住所や位置の属性データとそれ以外の売り上げや管理者等の属性データを含む。従って、住所や位置の属性データが地図データの対応する属性データと一致する限りは、この自動マッチング機能により、店舗のシンボルを地図上に登録して表示することができる。
【0040】手動マッチング機能は、上記の自動マッチング機能によってマッチング不能になった店舗等のシンボルに対して、手動でマッチングを行わせる機能である。例えば、住所等の属性データが不一致になった場合は、この手動マッチング機能により、その利用者データの住所の属性データを地図データの住所に変更してマッチングさせたり、地図上で直接位置を指定することで地図データの住所に変更させてマッチング・登録したりすることができる。
・・・(中略)・・・
【0044】図11は、地図表示を行う場合の、各プログラム層におけるフローチャートを示す図である。地図表示の機能は、上記した通りインダストリーエンジンを利用することなく、コアプログラムによって実現される。尚、図11は、地図情報システムを形成するクライアントが、サーバに接続された地図データを利用する例で説明されている。従って、スタンダローンの場合は、単にサーバのデータコアが存在しないだけである。
【0045】図11に従って、地図表示機能が実現される様子を説明すると、先ず最初に、個有適用業務プログラム50を介して、ある種類の地図についてある住所の部分の表示が要求される(S1)。この要求は、コアプログラム30内の地図基本コア群に対して行われる。地図基本コア群は、データコア群に対して、パラメータを添付して地図データの取得を要求する(S2)。データコアは、地図データ60にアクセスしてデータの取得を行う(S3,S4)。上記の通り、地図データ60をサーバを介して取得する場合は、図11に示される通り、サーバ内のデータコアを経由してデータが取得される。
【0046】データコアは、取得した地図データを地図基本コアに引き渡す(S5)。地図基本コアでは、そのデータを保管するとともに(S6)、地図データを利用して地図のオブジェクト(要素)を作成する(S7)。そして、地図基本コアは、描画コアに対してその地図のオブジェクトを登録し、描画するように依頼する(S8)。そして、最後に描画コアは、登録されたオブジェクトを管理して、適宜描画する(S9)。具体的には、地図基本コアにより作成されたオブジェクトの画像データが、描画コアによりビデオRAM内に転送される。」(6頁10欄9行?8頁13欄16行)、
オ 「【0064】図18は、地図情報システムの別の構成例(4)を示す図である。このシステム例は、スタンダローンで構成されるシステムではなく、インターネット或いはイントラネットに対応して、ウエブサーバ100と不特定多数のクライアント200との間で構成されるシステムである。この場合、コアプログラム層30には、地図基本コア群、描画コア群及びデータコア群に加えて、ウエブコア(webコア)が設けられる。
【0065】ウエブサーバ100は、コンピュータのハードウエア10とそれを制御するオペレーティング・システム20に加えて、コアプログラム層30とエンジンプログラム層40と個有適用業務プログラム層50で構成される。そして、ウエブサーバ100には、データベース62と地図データ60とが接続される。
【0066】一方、インターネット或いはイントラネットで接続されるクライアント200は、コンピュータのハードウエア210と、その制御を行うオペレーティング・システム220に加えて、コアプログラム層230とエンジンプログラム層240及び個有適用業務プログラム層250、そしてウエブブラウザ260とで構成される。
【0067】インターネット対応の地図情報システムの場合に考慮される点は、不特定多数のクライアントに地図情報システムを利用させる為には、ウエブサーバ100から必要なプログラム30,40,50とデータ60,62をクライアント200に送信しなければならないことである。クライアント200からの要求に応じて、ウエブサーバ100内で表示すべき画面を作成し、その画面データのみをネットワークを通じて送信する方法では、クライアント200側での応答時間が長すぎてスループットが上がらず操作性に欠けることが予想される。一方で、全てのデータとプログラムをウエブサーバ100からクライアントに送信する方法は、ネット上のトラフィックが膨大になり、現実的ではない。また、クライアント側も全ての機能を必要としているわけではなく、かかる方法は有効でない。
【0068】そこで、図18に示されたネット対応の地図情報システムでは、クライアント側が必要とする機能に対応した一部のプログラムが、ウエブサーバ100からネットワークを通じてクライアント200側に送信される。また、地図データ60及び利用者のデータ62に関しても、クライアント200側が必要とする部分だけを、必要とする時に、ネットワークを通じて送信する。そうすることにより、ネットワーク上のトラフィックの問題を解決しつつ、クライアント200内のプログラムを実行して地図情報システムを操作することができるので、クライアントでの操作性をスタンダローン並みに上げることが可能になる。
・・・(中略)・・・
【0072】上記の通り、クライアントは、機能に対するHTML文書をサーバの要求し、送信されてくるHTML文書を分析して、必要なプログラムの送信をサーバ100に要求する。従って、サーバ100内にあるコアプログラム、エンジンプログラム、及び個有適用業務プログラムは、細分化されていて、必要な時に必要な部分のみが、ネットワークを通じてクライアント側に送信させる。地図データについても、同様に必要な時に必要な量だけ送信される。但し、地図データやデータベースのデータを取得するためには、クライアント200側のデータコアからのデータ取得要求が、ウエブサーバ100内のコアプログラム内のデータコアに対して発行され、そのデータコアが、クライアントのデータコアに代わって、データベース62及び地図データ60から必要なデータを取得し、クライアント200に返送する。」(9頁16欄20行?10頁18欄14行)が記載されている。

これらの記載ア?オ及び図面第1図?第19図によれば、刊行物1には、
「インターネットで接続される不特定多数のクライアント200からのウエブサーバ100へのアクセスに対応して、地図データと人口統計データや利用者データ等の所定のデータベースとを統合することにより、地図上に前記データベースのデータを表示する地図情報システムであって、
ウエブサーバ100は、コンピュータのハードウエア10とそれを制御するオペレーティング・システム20に加えて、コアプログラム層30とエンジンプログラム層40と個有適用業務プログラム層50で構成され、ウエブサーバ100には、データベース62と地図データ60とが接続されており、
インターネットで接続されるクライアント200は、コンピュータのハードウエア210と、その制御を行うオペレーティング・システム220に加えて、コアプログラム層230とエンジンプログラム層240及び個有適用業務プログラム層250、そしてウエブブラウザ260とで構成され、
ウエブサーバ100のコアプログラムには、所望領域の地図を表示する地図基本コアと、描画すべきオブジェクトの描画を管理する描画コアと、前記地図データ及びデータベースとのインターフェース機能を有するデータコアに加えて、インターネットを通じて不特定多数のクライアントからのアクセスに対応して、必要なプログラムや必要なデータの送信を可能とするウエブコアC4が追加されており、
ウエブサーバ100のエンジンプログラムは、少なくとも、広域地図上へのグラフ表示機能をもつエリアマーケティングエンジンと、前記広域地図より詳細な住宅地図に対して建物の属性データを表示する顧客管理エンジンと、道路、上下水道、ガス配管等の広域に設置された設備の地図データに対応してそれらの地図データに対して設備の状態、状況等の属性データを地図上に表示したりするファシリティマネージメントエンジンとを有するエンジン群から、単独で或いは複数適宜組み合わせられるものであり、
個有適用業務プログラムは、個有適用業務毎に形成され、個有適用業務に対応したGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)表示機能を有し、前記エンジンプログラム及びコアプログラムと適宜リンク付けされ、前記GUIを介して与えられた操作命令に対して前記エンジンプログラム及びコアプログラムを適宜実行させるものであり、
地図データ60は、住所や位置に対応した地形、道路、建物等のデータを有し、
データベース62は、住所や位置に対応した人口統計データや地図情報システムのユーザがもつ顧客管理データ等の所定のデータを有し、
クライアント側が必要とする機能に対応した一部のプログラムが、ウエブサーバ100からネットワークを通じてクライアント200側に送信され、地図データ60及び利用者のデータ62に関しても、クライアント200側が必要とする部分だけを、必要とする時に、ネットワークを通じて送信することにより、ネットワーク上のトラフィックの問題を解決しつつ、クライアント200内のプログラムを実行して地図情報システムを操作すること、
エリアマーケティングエンジン内のプロット機能が有するシンボル登録機能には、表示画面内の地図上にシンボルの位置を指定して表示させる機能があり、シンボル登録機能によりシンボルの住所や位置の属性データを作成し、コアプログラム内の描画コア群C2にシンボルを登録し、描画させること、例えば店舗に対する属性データは、その住所や位置、管理者、売り上げ、設備情報等が含まれ、かかるシンボル登録により、店舗データが形成され、データベース62として記録されること、
地図表示機能は、先ず最初に、個有適用業務プログラム50を介して、ある種類の地図についてある住所の部分の表示が要求され、この要求は、コアプログラム30内の地図基本コア群に対して行われ、地図基本コア群は、データコア群に対して、パラメータを添付して地図データの取得を要求し、データコアは、地図データ60にアクセスしてデータの取得を行うこと、
を特徴とする地図情報システム。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された松尾直樹、高橋英行、居林宏明,データセンタ・アウトソーシングサービスの展開,NTT技術ジャーナル,日本,社団法人電気通信協会,2000年8月1日,12巻8号,64-68頁(以下、「刊行物2」という。)には、
ア 「急成長を遂げるASP市場
この様なメリットを背景に,アウトソーシング市場の新しいトレンドとして,Eメール,Web,グループウェア,業務アプリケーションソフトなど,インターネットやVPN(仮想専用網)を介してアプリケーション機能を提供するASPビジネスやホスティングビジネス,お客さま設備を預かり,その運用管理のサービスを提供するハウジングビジネスが日本において注目を浴びています。」(65頁中欄1行?14行)
イ 「データセンタに求められるニーズの高度化
NTT Comソリューション事業部は,データセンタサービスにおいて,単なる場所の貸し出しとは異なり,充実したネットワークインフラ,高度なシステム運用とバックアップの体制,SI,お客様企業のビジネス立ち上げのサポートなど,お客さまごとのニーズに合わせ,サービスを提供しています。今後,ますますネット上でEC,SCM(Supply Chain Management),コンテンツ配信を展開する企業が増えるなか,システム・リソース管理や性能管理,高度なセキュリティ管理,課金サービスなどを活用するお客さまの要望は高度化しています。」(65頁右欄20行?38行)が記載されている。

3.対比
そこで、本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ユーザ」、「クライアント」は、本願発明の「利用者」、「利用者の端末装置」に相当する。
引用発明のシステムはインターネットで接続される不特定多数のクライアントに対して、地図データと人口統計データや利用者データ等の所定のデータベースとを統合することにより、地図上に前記データベースのデータを表示する地図情報システムであるから、上位概念化すると、複数の利用者に対して、地図に関連した利用者の情報をインターネットを介してそれぞれ提供するシステムといえ、また、地図関連情報提供システムであるともいえる。一方、本願発明は、「地図に関連して予め登録された個々の利用者ごとの情報」を提供するものであるが、上位概念化すると「地図に関連した利用者の情報」を提供するものといえる。
引用発明のウエブサーバは、インターネットで不特定多数のクライアントに接続されるものであり、そのコアプログラム層にインターネットを通じて不特定多数のクライアントからのアクセスに対応して、必要なプログラムや必要なデータの送信を可能とするウエブコアC4が追加されている構成をしているから、引用発明は、各利用者の端末装置に対してインターネットを介して情報の送受を行う情報送受部を備えているといえる。
引用発明の地図データ60は、それからデータコアがそのインターフェイスにより、必要なデータを取り出すことから、利用者へのの提供対象となる地図データそのものを意味する他に、地図データを格納する構成部分を意味するものといえ、後者の意味するものは、本願発明の地図データ格納部に相当する。
引用発明の地図表示機能は、先ず最初に、個有適用業務プログラム50を介して、ある種類の地図についてある住所の部分の表示が要求され、この要求は、コアプログラム30内の地図基本コア群に対して行われ、地図基本コア群は、データコア群に対して、パラメータを添付して地図データの取得を要求し、データコアは、地図データ60にアクセスしてデータの取得を行うものであるから、引用発明は、与えられる指示に基づいて、利用可能範囲となる地図を設定する構成を備えているといえる。これに対して、本願発明は、利用可能範囲設定部を備え、前記端末装置からインターネットを介して与えられる指示に基づいて、利用可能範囲となる地図を各利用者ごとに設定する設定処理を行うとともに、利用者が設定した利用可能範囲に応じた対価を当該利用者に対して課金する課金処理を行うものである。
引用発明のエリアマーケティングエンジン内のプロット機能が有するシンボル登録機能には、表示画面内の地図上にシンボルの位置を指定して表示させる機能があり、該シンボル登録機能によりシンボルの住所や位置の属性データを作成し、コアプログラム内の描画コア群C2にシンボルを登録し、描画させているといえ、また、シンボルである店舗に対する属性データには、その住所や位置、管理者、売り上げ、設備情報等が含まれ、かかるシンボル登録により、店舗データが形成され、データベース62として記録されるのであるから、引用発明は、与えられる指示に基づいて、地図上に関連づけられた利用者データを登録する構成を備えているといえる。これに対して、本願発明の利用者データ登録部は、前記端末装置からインターネットを介して与えられる指示に基づいて、各利用者ごとに、当該利用者について設定されている利用可能範囲内にある地図上の点、線または面に関連づけられたそれぞれ固有の利用者データを受け取り、これを登録するものである。
引用発明は、クライアント側が必要とする機能に対応した一部のプログラムが、ウエブサーバ100からネットワークを通じてクライアント200側に送信され、地図データ60及び利用者のデータ62に関しても、クライアント200側が必要とする部分だけを、必要とする時に、ネットワークを通じて送信するものであるから、引用発明は、与えられる指示に基づいて、一部のプログラム、地図データ60及び利用者のデータ62をクライアント200側にインターネットを介して提示する構成を備えているといえる。これに対して、本願発明は、情報提示部を備え、前記端末装置からインターネットを介して与えられる特定の利用者による指示に基づいて、前記特定の利用者について設定されている利用可能範囲内の所定の地図と、当該地図上の点、線または面に関連づけて前記特定の利用者について登録されている利用者データもしくはこの利用者データに基づいて得られるデータとを、前記端末装置のディスプレイ画面上に、前記点、線または面に関連づけた態様でインターネットを介して提示するものである。

したがって、本願発明と引用発明は、「複数の利用者に対して、地図に関連した利用者の情報をインターネットを介してそれぞれ提供するシステムであって、
各利用者の端末装置に対してインターネットを介して情報の送受を行う情報送受部と、
利用者への提供対象となる地図をデータとして格納した地図データ格納部と、
与えられる指示に基づいて、利用可能範囲となる地図を設定する構成と、
与えられる指示に基づいて、地図上に関連づけられた利用者データを登録する構成と、
与えられる指示に基づいて、地図と、利用者データとを、前記端末装置に、インターネットを介して提示する構成と、
を備えることを特徴とする地図関連情報提供システム」の点で一致し、以下の点1?3で相違する。
相違点1
本願発明は、「前記端末装置からインターネットを介して与えられる指示に基づいて、利用可能範囲となる地図を各利用者ごとに設定する設定処理を行うとともに、利用者が設定した利用可能範囲に応じた対価を当該利用者に対して課金する課金処理を行う利用可能範囲設定部」を備えるのに対して、引用発明は、その構成を備えていない点。
相違点2
本願発明は、「前記端末装置からインターネットを介して与えられる指示に基づいて、各利用者ごとに、当該利用者について設定されている利用可能範囲内にある地図上の点、線または面に関連づけられたそれぞれ固有の利用者データを受け取り、これを登録する利用者データ登録部」を備えるのに対して、引用発明は、その構成を備えていない点。
相違点3
本願発明は、「地図に関連して予め登録された個々の利用者ごとの情報」を提供するシステムであるが、引用発明は、そのことが明らかでない点。
本願発明は、「前記端末装置からインターネットを介して与えられる特定の利用者による指示に基づいて、前記特定の利用者について設定されている利用可能範囲内の所定の地図と、当該地図上の点、線または面に関連づけて前記特定の利用者について登録されている利用者データもしくはこの利用者データに基づいて得られるデータとを、前記端末装置のディスプレイ画面上に、前記点、線または面に関連づけた態様でインターネットを介して提示する情報提示部」を備えるのに対して、引用発明は、その構成を備えていない点。

4.当審の判断
以下、相違点1?3について検討する。
相違点1について
引用発明における、与えられる指示に基づいて、利用可能範囲となる地図を設定する構成に関して、刊行物1の段落番号0044?0045には「【0044】図11は、地図表示を行う場合の、各プログラム層におけるフローチャートを示す図である。地図表示の機能は、上記した通りインダストリーエンジンを利用することなく、コアプログラムによって実現される。尚、図11は、地図情報システムを形成するクライアントが、サーバに接続された地図データを利用する例で説明されている。従って、スタンダローンの場合は、単にサーバのデータコアが存在しないだけである。【0045】図11に従って、地図表示機能が実現される様子を説明すると、先ず最初に、個有適用業務プログラム50を介して、ある種類の地図についてある住所の部分の表示が要求される(S1)。この要求は、コアプログラム30内の地図基本コア群に対して行われる。地図基本コア群は、データコア群に対して、パラメータを添付して地図データの取得を要求する(S2)。データコアは、地図データ60にアクセスしてデータの取得を行う(S3,S4)。上記の通り、地図データ60をサーバを介して取得する場合は、図11に示される通り、サーバ内のデータコアを経由してデータが取得される。」と記載され、同じく段落番号0072には、「地図データについても、同様に必要な時に必要な量だけ送信される。但し、地図データやデータベースのデータを取得するためには、クライアント200側のデータコアからのデータ取得要求が、ウエブサーバ100内のコアプログラム内のデータコアに対して発行され、そのデータコアが、クライアントのデータコアに代わって、データベース62及び地図データ60から必要なデータを取得し、クライアント200に返送する。」と記載され、「与えられる指示に基づいて」に関し「クライアント200からインターネットを介して」与えられる指示に基づくことが示唆されるとともに、「利用可能範囲となる地図を設定」に関し「利用者が設定する地図の設定処理」が示唆されている。
また、不特定多数の利用者による地図情報システム(GIS)の使用において、各利用者ごとに必要とする地図(種類、位置、範囲)はそれぞれ異なることは一般的であるから、各利用者ごとが操作する各クライアント(端末)からインターネットを介して与えられる指示に基づいて、利用可能範囲となる地図を各利用者ごとに設定する設定処理を行うことは、普通のことといえる。そして、利用可能範囲を設定する設定処理を行う構成をその機能に即して「利用可能範囲設定部」と呼称することは、格別なこととはいえない。
ところで、一般に、インターネットを介したASPビジネス、コンテンツ配信、課金サービスは、既に展開されていたといえ(例えば、刊行物2参照。)、地図データを利用するシステムにおいても課金処理を行う手段を設けることは普通に考えられていたことである(例えば、特開平10-66149号公報、特開平9-90869号公報、特開平8-261774号公報参照)。
また、課金サービスにおいて、コンテンツデータに対して従量制で課金をすることは商慣習上普通のことといえ、課金サービスを引用発明の地図情報システムに適用するに際し、利用者が使用のために「設定した地図の利用可能範囲」に応じた対価を当該利用者に対して課すことは、自然なことである。そして、該「設定した地図の利用可能範囲」のデータの取得が、課金処理を行うに際し、必要となることは明らかであるから、引用発明において、課金処理を行う構成を、地図の利用可能範囲の設定処理を行う構成と一体化することは、当業者が適宜なし得ることである。
してみると、引用発明の「与えられる指示に基づいて、利用可能範囲となる地図を設定する構成」に、上述した各事項を採用して、「前記端末装置からインターネットを介して与えられる指示に基づいて、利用可能範囲となる地図を各利用者ごとに設定する設定処理を行うとともに、利用者が設定した利用可能範囲に応じた対価を当該利用者に対して課金する課金処理を行う利用可能範囲設定部」とすることは、当業者が、容易に想到できたことである。
相違点2について
引用発明における、与えられる指示に基づいて、地図上に関連づけられた利用者データを登録する構成に関し、刊行物1の段落番号0038「【0038】図10は、エリアマーケティングエンジン内のプロット機能Cを示す図である。このプロット機能Cは、例えば店舗や支店等のシンボルを地図上にプロットする機能である。プロット機能は、シンボル登録機能と、自動マッチング機能と、手動マッチング機能とを有する。シンボル登録機能では、表示画面内の地図上にシンボルの位置を指定して表示させる機能であり、シンボル登録機能によりシンボルの住所や位置の属性データを作成し、コアプログラム内の描画コア群C2にシンボルを登録し、描画させる。例えば店舗に対する属性データは、その住所や位置、管理者、売り上げ、設備情報等が含まれ、かかるシンボル登録により、店舗データが形成され、データベース62として記録される。」が記載され、該「地図上」は、利用者がその利用に際し予め設定している利用可能な地図の上であることは明らかであるから、「利用者について設定されている利用可能範囲内にある地図上」といえ、「地図上のシンボルの位置」は、地図上の点であり、「シンボルの住所や位置の属性データ」は「地図上の点に関連づけられた固有の利用者データ」といえる。
また、エリアマーケティングエンジン40は、刊行物1図面図6,7に記載されているように地図上の面に関連付けられたデータを取り扱うことが開示されている。
引用発明の顧客管理エンジン42について、刊行物1の段落0058には「【0058】図16は、顧客管理エンジン内の顧客管理データの管理機能を示す図である。具体的には、この機能は、データベースである顧客管理データの地図上への登録、修正、表示、引き出し等の機能を有する。顧客管理データ62内のデータは、入居者レベルでマッチング機能によりマッチングがとられる。マッチングがとられたデータに対して、この顧客管理データの管理機能により、登録し(地図データとのリンクをとる)、必要に応じてデータの修正を行い、図14に示した通り別のウインドウ85にてデータの表示が行われる。」と記載され、「入居者レベル」は地図上では点に相当するから、該記載には、地図上の点に関連づけられた属性データを取り扱うことが開示されているといえる。
引用発明のファシリティマネージメントエンジン44について、刊行物1の段落0021には「ファシリティマネージメントエンジン44は、例えば道路、上下水道、ガス配管等の広域に設置された設備の地図データに対応しており、それらの地図データに対して設備の状態、状況等の属性データを地図上に表示したりするものである。このファシリティマネージメントエンジン44を利用することにより、広域に設置された設備の維持管理、変更管理、工事管理を効率的に行うことができる。」と記載され、道路、上下水道、ガス配管は「地図上の線」に相当するから、該記載には、地図上の線に関連づけられた属性データを取り扱うことが開示されているといえる。
上記エリアマーケティングエンジン40の地図上の面に関連付けられたデータ、顧客管理エンジン42の地図上の点に関連づけられた属性データ、ファシリティマネージメントエンジン44の地図上の線に関連づけられた属性データは、その性質上、上記エリアマーケティングエンジンの「地図上の点に関連づけられた固有の利用者データ」と同様な利用者データ登録の取り扱いをすることに格別困難性は認められない。。
また、刊行物1の図面図18には、ウエブサーバ100のエリアマーケティングエンジン40内にプロット機能Cが図示され、クライアント200はインターネットを介してウエブサーバ100に接続されていることが図示されている。
そして、地図システムにおいて、端末装置からインターネットを介して与えられる指示に基づいて、地図上にデータを登録することは、周知な技術事項である(例えば、特開平9-34902号公報、特開平9-160970号公報、特開平10-162031号公報参照。)。そして、利用者データを登録する構成をその機能に即して「利用者データ登録部」と呼称することは、格別なこととはいえない。
してみると、引用発明の「与えられる指示に基づいて、地図上に関連づけられた利用者データを登録する構成」に上記各事項を採用し、「前記端末装置からインターネットを介して与えられる指示に基づいて、各利用者ごとに、当該利用者について設定されている利用可能範囲内にある地図上の点、線または面に関連づけられたそれぞれ固有の利用者データを受け取り、これを登録する利用者データ登録部」とすることは、当業者が、容易になし得たことである。
相違点3について
引用発明における、与えられる指示に基づいて、地図と、利用者データとを、前記端末装置に、インターネットを介して提示する構成について、刊行物1の段落番号0067?0068には「【0067】インターネット対応の地図情報システムの場合に考慮される点は、不特定多数のクライアントに地図情報システムを利用させる為には、ウエブサーバ100から必要なプログラム30,40,50とデータ60,62をクライアント200に送信しなければならないことである。クライアント200からの要求に応じて、ウエブサーバ100内で表示すべき画面を作成し、その画面データのみをネットワークを通じて送信する方法では、クライアント200側での応答時間が長すぎてスループットが上がらず操作性に欠けることが予想される。一方で、全てのデータとプログラムをウエブサーバ100からクライアントに送信する方法は、ネット上のトラフィックが膨大になり、現実的ではない。また、クライアント側も全ての機能を必要としているわけではなく、かかる方法は有効でない。【0068】そこで、図18に示されたネット対応の地図情報システムでは、クライアント側が必要とする機能に対応した一部のプログラムが、ウエブサーバ100からネットワークを通じてクライアント200側に送信される。また、地図データ60及び利用者のデータ62に関しても、クライアント200側が必要とする部分だけを、必要とする時に、ネットワークを通じて送信する。そうすることにより、ネットワーク上のトラフィックの問題を解決しつつ、クライアント200内のプログラムを実行して地図情報システムを操作することができるので、クライアントでの操作性をスタンダローン並みに上げることが可能になる。」と記載され、「クライアント200からの要求に応じて、ウエブサーバ100内で表示すべき画面を作成し、その画面データのみをネットワークを通じて送信する方法」が、「クライアント200側での応答時間が長すぎてスループットが上がらず操作性に欠けることが予想される。」との予想付きであるが、開示されている。
該「クライアント200からの要求に応じて、ウエブサーバ100内で表示すべき画面を作成し、その画面データのみをネットワークを通じて送信する方法」を検討する。クライアント200からの要求は、特定の利用者の指示に基づくものであり、インターネットを介してウエブサーバ100へ伝えられることといえるから、引用発明において「クライアント200からの要求に応じて」は、「クライアント200からインターネットを介して与えられる特定の利用者による指示に基づいて」を示唆しているといえる。「ウエブサーバ100内で表示すべき画面を作成し」における表示すべき画面とは、引用発明において特定の利用者に設定された所定の地図と当該地図上に関連づけされた特定の利用者のデータを関連づけされた態様とする画面であり、「その画面データのみをネットワークを通じて送信する」は、そのことによりクライアント200がハードウエアとして当然備えているディスプレイ装置の表画面上にインターネットを介して提示することを意味しているといえるから、「ウエブサーバ100内で表示すべき画面を作成し、その画面データのみをネットワークを通じて送信する」は、「特定の利用者について設定されている所定の地図と、当該地図上に関連づけされた特定の利用者データに基づいて得られるデータとを、クライアント200のディスプレイ画面上に、関連づけされた態様でインターネットを介して提示する」を示唆しているといえる。
また、地図に関して「利用者について設定されている利用可能範囲内の所定の地図」、利用者データに関して「地図上の点、線または面に関連づけて利用者について登録されている利用者データ」のことについては、上記相違点1,2で述べたとおりである。
なお、「利用者データに基づいて得られるデータ」に関し,刊行物1の段落番号0031に「図6に示された地図情報システムの例は、例えば、銀行業務における店舗の出店計画に利用されたり、新聞業務における勧誘計画に利用されたりするシステム例である。この様な地図情報システムの例で特徴的な点は、比較的広域の地図データである行政界地図60を利用して、行政界に対応して集計されている人口統計データやシステム利用者が個別に作成した利用者データ等の集計、そのグラフ表示等行うことにある。」の記載がある。
ところで、「クライアント200側での応答時間が長すぎてスループットが上がらず操作性に欠けることが予想される。」について検討すると、「ウエブサーバ100内で表示すべき画面を作成」は、ウエブサーバ100の演算処理能力の向上により、その処理時間を短縮することができ、また、ウエブサーバ100へのアクセス数増大への対策等により操作性の改善が図られることは明らかであるから、該予測の記載は、引用発明に「ウエブサーバ100内で表示すべき画面を作成し、その画面データのみをネットワークを通じて送信する」技術の適用の妨げとなるとはいえない。
してみると、引用発明に上記各事項を採用し、「前記端末装置からインターネットを介して与えられる特定の利用者による指示に基づいて、前記特定の利用者について設定されている利用可能範囲内の所定の地図と、当該地図上の点、線または面に関連づけて前記特定の利用者について登録されている利用者データもしくはこの利用者データに基づいて得られるデータとを、前記端末装置のディスプレイ画面上に、前記点、線または面に関連づけた態様でインターネットを介して提示する情報提示部」を備えることとしたことは、当業者が、容易になし得たことである。
また、上述のとおりであるから、引用発明において、「地図に関連して予め登録された個々の利用者ごとの情報」を提供するシステムとすることは、当業者が、容易になし得たことである。
5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に記載された発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する 。
 
審理終結日 2009-08-28 
結審通知日 2009-09-08 
審決日 2009-09-24 
出願番号 特願2000-244466(P2000-244466)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深津 始  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 手島 聖治
菅原 浩二
発明の名称 地図関連情報提供システム  
代理人 志村 浩  

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