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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04H
管理番号 1207383
審判番号 不服2007-30892  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-15 
確定日 2009-11-16 
事件の表示 特願2004-144848「建物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月24日出願公開、特開2005-325594〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯
本願は,平成16年5月14日に特許出願したものであって,平成19年10月9日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年12月12日付けで手続補正がなされたものである。
その後,当審にて,平成21年7月9日付けで拒絶理由を通知したところ,同年7月31日付けで手続補正がなされたものである。

【2】本件発明
本願の請求項1に係る発明は,平成21年7月31日付け手続補正により補正された,以下のとおりのものである。
「【請求項1】
特定階を構成する特定床の一部の上側に中間床が設けられ、当該中間床の上側は同一床平面を有する一つの居室とされるとともに、前記居室の床である中間床の下側と、これに対応する前記特定床との間の全てが天井高0.9m?1.4mの収納空間とされる建物であって、
前記収納空間と隣接する他の特定床上の空間との間には仕切り壁が設けられ、当該仕切壁の一部が前記中間床に対応する前記収納空間の外縁よりも収納空間の内側に奥まって設けられることによって、前記仕切壁により周囲が囲まれた第1の収納空間が構成され、前記奥まって設けられた仕切壁の前方に位置して前記隣接する他の特定床上の空間に開口し、前記第1の収納空間より奥行きが浅い第2の収納空間が複数構成され、前記第1及び第2の収納空間が互いに隣接する二つの収納空間の間に、当該第2の収納空間の奥行き方向と平行な第2仕切壁(20,21,23)が、前記仕切壁(12a,13,14)と交差して設けられていることを特徴とする建物。」
(以下,「本件発明」という。)

【3】引用刊行物
(1)刊行物1
当審の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2004-44210号公報(以下,「刊行物1」という。)には,以下の記載がある。
(1a)「【請求項1】少なくとも1つの特定フロアと,この特定フロアの直上に位置する直上フロアとを有する建物であって,前記特定フロアおよび前記直上フロアは,それらの一部に設けられた中間床と,この中間床の下側に形成された中間床下側空間と,当該中間床の上側に形成された中間床上側空間とを備え,前記特定フロアの中間床上側空間の少なくとも一部と,前記直上フロアの中間床下側空間の少なくとも一部とが連通された吹き抜け空間が構成されていることを特徴とする建物。」(【請求項1】)
(1b)「・・・建物本体3には,外壁3Aによって外部と区画された内部空間を内床3Cで上下に区切ったフロア(階)が形成され,さらに各フロアを内壁3Bや図示しない間仕切壁等で区切ることで生活空間としての居室や廊下,ホール等が形成されている。
図3(A)に示す住宅1の1階部分には,図中下方右側にリビングルーム11,その図中上方にキッチン12,その図中左側に廊下13および玄関ホール14がそれぞれ設けられ,玄関ホール14の図中下方には,洗面所や浴室等を有する水場居室15が設けられている。
・・・
住宅1の特定フロアとしての1階部分において,リビングルーム11と水場居室15との間には,図2に示すように,中間床としての1階中間床30が設けられている。・・・
1階中間床30の下側には,中間床下側空間としての収納空間31が設けられ,その出入り口31Aを玄関ホール14に開口している。また,1階中間床30と2階中間床40との間には,1階中間床30の中間床上側空間の一部と2階中間床40の中間床下側空間の一部とが連通された吹き抜け空間が設けられ,この吹き抜け空間,すなわち中間居室空間32は,生活空間として使用される。中間居室空間32の出入り口32Aは,1階から2階に通じる階段16の踊り場16Aに面して設けられている。階段16および踊り場16Aを挟んで中間居室空間32の向かい側には,収納室33が1階中間床30の上に設けられている。」(段落【0017】?【0020】)
(1c)「収納空間31,41の床である収納空間床10A,20Aと,1階の居室床10および2階の居室床20とは,それぞれのフロアにおいて互いの床面に段差が無く,互いに連続して形成されている。収納空間床10A,20Aの床上面と1階中間床30および2階中間床40の下面との間の距離,すなわち,収納空間31,41の天井高H1は,本実施形態において,1.0m?1.4mの範囲に設定されている。・・・」(段落【0022】)
(1d)「・・・住宅1の1階部分・・・に1階中間床30・・・を設け,各フロアを上下に区切り,1階中間床30・・・の下側に収納空間31・・・を設け,1階中間床30・・・の間に中間居室空間32を設けることによって,大きな収納スペースを備えながら居室として利用できる空間をも確保できるので,建物内空間を有効に利用できるとともに,住宅1の高さが通常の2階建ての建物と同程度に抑えられ,建設コストの増加を防止できる。」(段落【0023】)
(1e)【図3】(A)には,収納空間31は隣接するリビングルーム11,廊下13および水場居室15とに囲まれており,それぞれの間が内壁3Bによって区切られていることが記載されている。

そして,上記記載事項(1a)?(1e)及び図面の記載からみて,刊行物1には以下の発明が記載されているものと認められる。
「特定フロアの一部の上側に中間床30が設けられ,該中間床30の上には中間居室空間32,階段16の踊り場16Aおよび収納室33が設けられるとともに,これらの床である前記中間床30の下側と,これに対応する前記特定フロアとの間が天井高1.0m?1.4mの収納空間31とされる建物であって,前記収納空間31は隣接するリビングルーム11,廊下13および水場居室15との間の内壁3Bによって囲まれて構成される建物。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(2)刊行物2
当審の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2003-314068号公報(以下,「刊行物2」という。)には,以下の記載がある。

(2a)「添付した図面の図1は,寝室(1)側から収納空間(2)を見た状態を例示した斜視図であって,図2は,この寝室(1)と収納空間(2)を含めた住居構造の要部を示した平面図である。」(段落【0010】)
(2b)「特に、図1および図2の例のように、出入り口(4)を中央部に配置し、両開きの引戸(8)によって開閉自在とすることで、寝室(1)が実際的に大きな空間になり、しかも狭い収納空間(2)での整理も行いやすくなる。
図3は,図1との対応として,引戸(8)を閉じた状態を示し,一方,図1は引戸(8)を開いた状態を示している。たとえば,この図3に例示したように,引戸(8)の閉鎖側の寝室(1)側には,引出し(9)や棚(10)によって構成した収納部を配置してもよく,また,収納空間(2)側から見た図4に例示したように,引戸の開放側の収納空間(2)側には,収納棚(11)を設けてもよい。
これらの棚(10)(11)等によって,利便性の良好な収納部が形成されることになる。」(段落【0017】?【0019】)
(2c)【図2】には,寝室1と収納空間2とが隣接して配置され,寝室1と収納空間2とは,引戸8,棚10,引き出し9,収納棚11とを備えた間仕切りのようなもので仕切られていること,及び,引戸8が設けられる線を境に寝室1と収納スペース(収納空間2と棚10,引き出し9,収納棚11等)とに分けられることが記載されている。

そして,上記記載事項(2a)?(2c)及び図面の記載からみて,刊行物2には以下の技術が記載されているものと認められる。

「寝室1に隣接して収納スペースを設けた収納部の構造であって,収納スペースは収納空間2と収納部分(棚10や引出し9)とから構成され,収納空間2の出入り口4を開閉する引戸8が設けられる線を境に寝室1と収納スペースとに分けられ,収納スペースの寝室1側の一部を寝室1側から使用できる収納部分(棚10や引出し9)とするために,引戸8が設けられる線より収納空間2側に奥まった位置に収納部分(棚10や引出し9)の背板となる仕切りを配置し,その背板の寝室1側に寝室1側より使用できる収納部分(棚10や引出し9)を構成し,収納空間2の一部である出入り口4と収納部分(棚10や引出し9)との間には収納部分(棚10や引出し9)の側板となる仕切りが配置されている収納部の構造。」(以下,「刊行物2記載の技術」という。)

【4】対比・判断
1.本件発明と刊行物1記載の発明との相違点
本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「特定フロア」が本件発明の「特定階」に相当し,以下同様に「リビングルーム11,廊下13および水場居室15」が「他の特定床上の空間」に,「内壁3B」が「仕切壁」に,それぞれ相当する。

したがって,両者は以下の点で一致している。
「特定階を構成する特定床の一部の上側に中間床が設けられ,前記中間床の下側と,これに対応する前記特定床との間が収納空間とされる建物であって,
前記収納空間と隣接する他の特定床上の空間との間には仕切壁が設けられ,当該仕切壁により周囲が囲まれた収納空間が構成される建物。」

そして,以下の点で相違している。
<相違点1>
中間床の上側が,本件発明では,同一床平面を有する一つの居室とされているのに対し,刊行物1記載の発明では,中間居室空間32,階段16の踊り場16Aおよび収納室33が設けられている点。
<相違点2>
収納空間の天井高が,本件発明では,0.9m?1.4mであるのに対し,刊行物1記載の発明では,1.0m?1.4mである点。
<相違点3>
本件発明では,当該仕切壁の一部が前記中間床に対応する前記収納空間の外縁よりも収納空間の内側に奥まって設けられることによって、前記仕切壁により周囲が囲まれた第1の収納空間が構成され、前記奥まって設けられた仕切壁の前方に位置して前記隣接する他の特定床上の空間に開口し、前記第1の収納空間より奥行きが浅い第2の収納空間が複数構成され、前記第1及び第2の収納空間が互いに隣接する二つの収納空間の間に、当該第2の収納空間の奥行き方向と平行な第2仕切壁(20,21,23)が、前記仕切壁(12a,13,14)と交差して設けられているのに対し,刊行物1記載の発明は,そのようになっていない点。

2.各相違点についての判断
<相違点1について>
中間床の上側に何を設けるかは当業者が適宜決定すればよい設計事項であって,中間床の上側を同一床平面を有する一つの居室とすることは,それにより格別の効果が生じるとは認められず,当業者が適宜なし得たことである。
<相違点2について>
収納空間の天井高を,0.9m?1.4mと限定することにより格別の効果が生じるものではなく,当業者が適宜なし得たことにすぎない。
<相違点3について>
刊行物2記載の技術の「収納空間2」が本件発明の相違点3に係る構成の「第1の収納空間」に,同様に「寝室1側から使用できる収納部分(棚10や引出し9)」が「第1の収納空間より奥行きが浅い(複数の)第2の収納空間」に,「背板となる仕切り」が「(収納空間2の内側に奥まって設けられる)仕切り壁の一部」にそれぞれ相当している。
そして,刊行物2記載の技術の「収納空間2の一部である出入り口4と収納部分(棚10や引出し9)との間には収納部分(棚10や引出し9)の側板となる仕切り」が,収納部分(棚10や引出し9)の奥行き方向と平行であり,「背板となる仕切り」と交差していることは明らかであるから,それは本件発明の相違点3に係る構成の「第2仕切壁」に相当している。
したがって,本件発明の相違点3に係る構成は,刊行物2記載の技術として開示されており公知の技術である。
ここで,刊行物2には,寝室1と収納空間2との間の仕切りには天井側が開放されてなる連通部7が記載されているが,該連通部7は,寝室1での空間の圧迫感をなくすため,また,収納空間の湿温度の調節を行うために設けられているものであって,刊行物2記載の技術にとって必須の構成ではない。
してみると,刊行物1記載の発明における収納空間と隣接する他の特定床上の空間との間の仕切壁に対して,上記刊行物2記載の技術を採用して,本件発明の相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。
さらに,本件発明の上記相違点3に係る構成による(第2仕切壁がいわゆる袖壁として機能するので,中間床を支持する上で構造耐力に優れているという)効果も,例えば特開平8-105222号公報(拒絶査定時に周知技術として提示された文献)の納戸と押入の仕切壁や一般住宅における居室の押入れ等収納部の側壁等によって普通に発揮される周知の効果であって,当業者にとって格別顕著な効果であるということはできない。

3.まとめ
したがって,本件発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

【5】結び
以上のとおり,本件発明は特許を受けることができないから,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-07 
結審通知日 2009-09-11 
審決日 2009-09-29 
出願番号 特願2004-144848(P2004-144848)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 聡  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 草野 顕子
宮崎 恭
発明の名称 建物  
代理人 土井 清暢  

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