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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1207403
審判番号 不服2007-11381  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-19 
確定日 2009-11-18 
事件の表示 特願2002-245619「繊維混合樹脂およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日出願公開、特開2004- 83715〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成14年8月26日の特許出願であって、平成17年12月5日付けで拒絶理由が通知され、平成18年2月13日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成19年3月8日付けで拒絶査定がなされ、同年4月19日に審判が請求され、同年5月21日に手続補正書が提出され、同年6月8日に手続補正書(方式)が提出され、同年7月5日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年12月5日付けで前置報告がなされ、当審で平成21年1月20日付けで審尋がなされ、同年3月26日に回答書が提出されたものである。



第2 本願発明

本願の請求項1?4に係る発明は、平成19年5月21日に提出された手続補正書及び同年6月8日に提出された手続補正書(方式)により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。

「ビニルエステル系の合成樹脂に、セラミックファイバー、グラスファイバー、カーボンファイバーから選択された2又は3からなる短繊維を混合・混練しながらローラ挽きして得たことを特徴とする繊維混合樹脂。」



第3 原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由となった平成17年12月5日付けの拒絶理由通知書に記載された理由1の概要は、本願発明1は、引用文献1(特開平11-228200号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないというものであり、同じく理由2の概要は、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。



第4 引用文献の記載事項

引用文献1には、以下の事項が記載されている。

(1-ア)「ビニールエステル系若しくはエポキシ系等の合成樹脂剤にセラミックファイバとアルミナファイバ・ガラスファイバ・カーボンファイバ又はこれらを混合・混練した後に、ローラー挽きして気泡を減少させかつ液むらを無くしたことを特徴とする繊維化合成樹脂バインダ。」(特許請求の範囲請求項2)

(1-イ)「アクリル系・ウレタン系・ビニールエステル系・エポキシ系等の合成樹脂剤にセラミックファイバとアルミナファイバ・ガラスファイバ・カーボンファイバ又はこれらを混合・混練した後に、ローラー挽きと真空引きとによって気泡を除去しかつ液むらを無くしたことを特徴とする繊維化合成樹脂バインダ。」(特許請求の範囲請求項3)

(1-ウ)「このような従来技術によるバインダでは、仮にこのバインダを用いて路面などの舗装工事や壁板などの建築工事などの工法に採用されても充分な成果は得られなかった。その理由は、従来の合成樹脂剤やFRP補強バインダ、高分子合成樹脂バインダ、繊維化樹脂剤がその樹脂の中に気泡を多く含んでいたり液むた(「液むら」の誤記と認める。)が多く存在したからである。」(段落【0004】)

(1-エ)「【課題を解決するための手段】本発明は上記の如き問題を解決するために開発したものであって、・・・ビニールエステル系若しくはエポキシ系等の合成樹脂剤にセラミックファイバとアルミナファイバ・ガラスファイバ・カーボンファイバ又はこれらを混合・混練した後に、ローラー挽きして気泡を減少させかつ液むらを無くしたことを特徴とする繊維化合成樹脂バインダ・・・の提供にある。」(段落【0006】)

(1-オ)「【発明の実施の形態】本発明の実施形態は、・・・ビニールエステル系若しくはエポキシ系等の合成樹脂剤にセラミックファイバとアルミナファイバ・ガラスファイバ・カーボンファイバ又はこれらを混合・混練した後にローラー挽きして気泡を減少させかつ液むらを無くしたこと・・・を特徴とする繊維化合成樹脂バインダであるから、従来のバインダよりも合成樹脂の分子を線状や面状に構成することができるので特に膜状に作用することが可能となる。」(段落【0009】)

(1-カ)「この繊維化合成樹脂バインダIを用いている場合は、その用途によってセラミックファイバAとアルミナファイバC・ガラスファイバB・カーボンファイバDの長さや粒度を変える。例えは、舗装用として使用する場合はセラミックファイバAの長さを1mm?10mmとし、アルミナファイバCとガラスファイバB・カーボンファイバDの長さは1mm?5mmとし、これらを混合して絡ませた後に低粘度の合成樹脂Fを膜状に被覆させる。」(段落【0012】)

(1-キ)「更に前記以外の製法としては、図2に示すようにセラミックファイバAとアルミナファイバC・ガラスファイバB・カーボンファイバD又はこれらを混合して絡ませ、その粘度が10PS程度のビニールエステル系・エポキシ系等の合成樹脂F剤を膜状に被覆させると共に増粘させて20PS?1,000PS程度に調整し、更にローラー挽きによって気泡Eを減少させかつ液むらを無くすことで繊維化合成樹脂バインダ2を製造することができる。」(段落【0013】)



第5 引用発明

引用文献1には、摘示(1-ア)、(1-エ)、(1-オ)及び(1-キ)から、「ビニールエステル系の合成樹脂剤にセラミックファイバとアルミナファイバ・ガラスファイバ・カーボンファイバ又はこれらを混合・混練した後に、ローラー挽きして気泡を減少させかつ液むらを無くしたことを特徴とする繊維化合成樹脂バインダ。」が記載されており、そのセラミックファイバとアルミナファイバ・ガラスファイバ・カーボンファイバ又はこれらを混合との記載からみて、引用文献1には、繊維として、「セラミックファイバー、グラスファイバー、カーボンファイバーから選択された2又は3からなる」ものが記載されているということができる。
そして、当該繊維として、短繊維を用いる態様が記載されていることは、摘示(1-カ)から明らかである。
そうであれば、引用文献1には、「セラミックファイバー、グラスファイバー、カーボンファイバーから選択された2又は3からなる短繊維」が記載されているということができる。
してみると、引用文献1には、「ビニールエステル系の合成樹脂剤にセラミックファイバ、ガラスファイバ、カーボンファイバから選択された2又は3からなる短繊維を混合・混練した後に、ローラー挽きして気泡を減少させかつ液むらを無くしたことを特徴とする繊維化合成樹脂バインダ。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。



第6 本願発明1と引用発明との対比

引用発明の「ビニールエステル系の合成樹脂剤」及び「繊維化合成樹脂バインダ」は、本願発明1の「ビニルエステル系の合成樹脂」及び「繊維混合樹脂」に、それぞれ相当するから、本願発明1と引用発明とは、「ビニルエステル系の合成樹脂に、セラミックファイバー、グラスファイバー、カーボンファイバーから選択された2又は3からなる短繊維を混合・混練し、ローラ挽きして得たことを特徴とする繊維混合樹脂。」の点で一致し、次の相違点で一応相違する。

<相違点>
繊維混合樹脂が、本願発明1では、「混合・混練しながらローラ挽きして得た」ものであるのに対し、引用発明では、「混合・混練した後に、ローラー挽きして」得たものである点。



第7 相違点に対する判断

本願発明1における「混合・混練しながらローラ挽き」する工程が、具体的にどのようにして実施されるのかについては本願明細書に記載されていないが、請求人は、平成18年2月13日提出の意見書において、「混合・混練工程とローラ挽き工程とを繰り返して行うこと」を意味するものであると主張している。
してみると、本願発明1と引用発明とを比較すると、両者は、その製造に際して、混合・混練工程とローラ挽き工程とを、繰り返して行うか、一度だけ行うかという点のみで一応相違するものであるということができる。
ここで、合成樹脂と短繊維との混合の程度(液むらの程度)や残留する気泡の程度(気泡の除去の程度)については、混合・混練工程とローラ挽き工程とを行う回数のみによって決定されるものではなく、混合・混練工程やローラ挽き工程の各工程の時間や条件によって当然に異なるものとなると認められる。
そうであれば、混合・混練工程とローラ挽き工程とを繰り返して行って得られた繊維混合樹脂と、混合・混練工程とローラ挽き工程とを一度だけ行って得られた繊維混合樹脂とで、得られた繊維混合樹脂としてみて、特に差異が見当たらない場合が存在することは明らかである。
したがって、この相違点は、実質的な相違点であるとすることはできない。
よって、本願発明1は、引用発明と同一である。



第8 進歩性について

仮に、本願発明1が、引用文献1に記載された発明でないとしても、上記のとおり、本願発明1と引用発明とは、繊維混合樹脂が、本願発明1では、「混合・混練しながらローラ挽きして得た」ものであるのに対し、引用発明では、「混合・混練した後に、ローラー挽きして」得たものである点において相違するものであるところ、上記第7 において述べたとおり、本願発明1における「混合・混練しながらローラ挽きして得た」との技術的手段は、意見書の主張から、「混合・混練工程とローラ挽き工程とを繰り返して行うこと」を意味するものであると認められるから、本願発明1と引用発明とを比較すると、両者は、その製造に際して、混合・混練工程とローラ挽き工程とを、繰り返して行うか、一度だけ行うかという点でのみ相違するものであるということができる。
ここで、引用発明においては、気泡を減少させかつ液むらを無くすることを課題とするものであるところ、繊維化合成樹脂バインダ(繊維混合樹脂)を得るに際し、更なる気泡の減少、ひいては気泡の除去かつ液むらを無くすることを目的として、合成樹脂と短繊維との混合の程度(液むらの程度)を向上させ、残留する気泡の程度を低減させる(気泡の除去の程度を向上させる)ために、混合・混練工程とローラ挽き工程とを複数回繰り返して行うことは、当業者であれば適宜なし得ることであるといわざるを得ず、その点に格別の困難性は見あたらない。
また、そのことによりもたらされる効果について検討しても、気泡をより確実に除去し、かつ液むらがなく短繊維を均等に混合することができるという点も、摘示(1-ア)?(1-オ)、摘示(1-キ)及び技術常識からみて、当然予測し得る範囲内のものといわざるを得ない。
したがって、本願発明1は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。



第9 請求人の主張に対する検討

1-1.請求人は、平成18年2月13日提出の意見書において、「本願発明において重要な事項は、脱泡を目的とすることもありますが、【0003】にも記載しているように、「気泡の除去」だけでなく、「液むらの解消」も目的とするものであります。」と主張しているが、引用文献1においても、「液むらを無くした」((摘示1-ア)、(摘示1-イ)、(摘示1-エ)、(摘示1-オ)及び(摘示1-キ))ことが記載されているのであるから、この点に差異があるとすることはできない。
1-2.請求人は、同じく、「本願発明において記載する『短繊維』については、2?3種類の単一性質の繊維を混合するものですが、それぞれの種類のウエブフィラメントは伸び率、強度、たわみ力等が異なるものであり、この種類の異なるウエブフィラメントを予め紡績して繊維としたものを採用します。」とも主張しているが、「種類の異なるウエブフィラメントを予め紡績して繊維としたものを採用すること」は請求の範囲に一切規定されていない事項であるし、加えて、請求人も「この点については当初明細書には明確に記載されていませんが」と認めるとおり、当初明細書に一切記載されていない事項であるから、斯かる主張を採用することはできない。

2-1.また、請求人は、平成19年7月5日提出の審判請求書の手続補正書(方式)において、「原査定は『両者はいずれも混合・混練されて均一となり、気泡が除去されたものであるから、繊維が混合された樹脂自体として両者は相違しない。』として、厳密に一致点及び相違点を対比することなく、新規性進歩性を判断している。・・・
本願発明1は、ビニルエステル系の合成樹脂剤を母剤とするものであるから、これに対応するのは引用発明2・3・4であるが、短繊維の混入方法について本願発明1は『混合・混練しながらローラ挽き』する工程を採用するから、・・・引用発明2の『混合・混練した後に、ローラー挽き』する工程は、『混合・混練』工程と『ローラ挽き』工程を同時に行うものではないから、本願発明1の前記工程と異なる。
しかし、この相違点に関して原査定は、『両者はいずれも混合・混練されて均一となり、気泡が除去されたものであるから、繊維が混合された樹脂自体として両者は相違しない。』と認定し、これを本件拒絶理由の実質的な根拠としているため、特に詳細に検討する。
・・・原査定の前記認定は、本願発明1の作用効果をいうものとしては、当を得ている。
これに対して引用発明2の『混合・混練した後に、ローラー挽き』する工程は『混合・混練』工程と『ローラー挽き』工程を別個独立して時系列に行うものであるが、・・・『混合工程』によって『絡ませた』繊維をビニルエステル系合成樹脂剤に投入して『混練工程』により増粘し、その後、『ローラ挽き』工程によって『気泡Eを減少させかつ液むらを無くす』ものと理解される。現に、引用文献1の図2には、剤中に繊維が絡み合って埋入され、且つ、気泡が残留した繊維混合樹脂が示されている。この点、引用文献1では、脱法(「脱泡」の誤記と認める。)の程度として、『減少』と『除去』なる用語が明確に使い分けられてことに留意すべきで、引用発明2は『気泡を減少』させるにとどまり、『気泡を除去』するには至らない。
従って、引用発明2は原査定が認定するような『(繊維が)混合・混練されて均一となり、気泡が除去されたもの』ではないから、繊維混合樹脂自体として、本願発明1と同一ということはできない。」と主張している。
しかしながら、本願発明1における「混合・混練しながらローラ挽きして得た」について、「『混合・混練』工程と『ローラ挽き』工程を同時に行うもの」との主張は、上記した意見書における「混合・混練工程とローラ挽き工程とを繰り返して行うこと」との主張と全く相違するものであって、請求人の主張は矛盾している。
仮に、それが「『混合・混練』工程と『ローラ挽き』工程を同時に行うもの」であるとしても、具体的にどの様にすれば、「混合・混練」工程と「ローラ挽き」工程とを同時に行うことができるのか技術的に全く不明であるといわざるを得ない。
また、本願発明1において、繊維混合樹脂について、「気泡を除去」することは、発明を特定するために必要な事項として一切規定されていない事項であるし、しかも、本願明細書中においても、斯かる「気泡を除去」することに関し、その用語の定義が一切なされていない。
一方、引用文献1においても、繊維化合成樹脂バインダにおいて、気泡の脱泡の程度によって、残留する気泡が減少したか、気泡が除去されたかという点は、その「減少」及び「除去」という用語の定義が一切なされていないものであって、本願明細書における「除去」と引用文献1における「減少」との間の違いとしては、表現する用語が相違する程度のことにすぎず、実質的な差異はないものといわざるを得ないし、仮に相違するものとしてもせいぜい程度問題に留まるものといわざるを得ない。
なお、摘示1-イにも示したとおり、引用文献1には、「混合・混練した後に、ローラー挽きと真空引きとによって気泡を除去しかつ液むらを無くした」繊維化合成樹脂バインダが記載されており、請求人のいう、気泡を減少したものではなく、「気泡を除去しかつ液むらを無くした」繊維化合成樹脂バインダが現に記載されているのであるから、本願発明1に係る繊維混合樹脂は、斯かる繊維化合成樹脂バインダと同一であるといわざるを得ず、この理由によっても、請求人の斯かる主張は採用することができない。

2-2.さらに、請求人は、平成19年7月5日提出の審判請求書の手続補正書(方式)において、「本願発明1は、『気泡の除去』および『毛玉(液むら)の解消』が完全に行われた繊維混合樹脂を得るという、引用発明2に対して有利な効果を奏するものである。むしろ、引用発明2は、『絡まった繊維』を合成樹脂剤に投入して増粘させるものであるから、『絡まった繊維』はより多くの気泡を含むと共に、投入時にも気泡が剤中に取り込まれやすく、その後にローラ挽きを行ったとしても、増粘状態にある剤からは気泡を完全に除去できないことは、技術常識からみて至極当然である。そして、引用文献1には『混合工程』『混練工程』『ローラ挽き』の各工程を同時に行うことの示唆が一切ないばかりか、引用発明2は繊維を積極的に絡ませるもので、これは『短繊維を均等に混合する』という本願発明1の目的に反するものであるから、引用発明2に基づいて本願発明1に容易に想到できるという論理付けは成立しない。」とも主張している。
しかしながら、引用発明においても、液むらを無くしたことが記載されているのであるから、上記第9 1-1.でも述べたとおり、この点をもってして相違点であるとすることはできない。
そして、「引用発明2は、『絡まった繊維』を合成樹脂剤に投入して増粘させるものである」との主張も引用文献の請求項2の記載に基づかない主張であるし、仮にそうであったとしても、本願発明1においても、「絡まった繊維」を除外するものではなく、結果において「増粘」したものが得られているものと認められるから、この点に関しても差異は見当たらない。
また、本願発明1における「混合・混練しながらローラ挽きして得た」について、「『混合工程』『混練工程』『ローラ挽き』の各工程を同時に行う」との主張は、上記第9 2-1.でも述べたとおり、意見書における「混合・混練工程とローラ挽き工程とを繰り返して行うこと」との主張と全く相違するものであって、採用することができない。
さらに、引用発明が繊維を積極的に絡ませるもので、これは『短繊維を均等に混合する』という本願発明1の目的に反するものであるとの主張も、そもそも引用発明が繊維を積極的に絡ませるものであるとする根拠も見当たらないし、仮にそうだとしても、「繊維を積極的に絡ませること」がどのような理由で「短繊維を均等に混合する」という目的に反するものとなるのか、その主張の意味を理解することができない。

3.さらに、請求人は、平成21年3月26日提出の回答書において、「本願発明では、気泡をより確実に除去して液むらをなくすることに加えて、大きな技術的特徴として、合成樹脂剤に短繊維を均等に混合したことが重要であります。・・・しかしながら、引用文献1にはこれを教示する記載はなく、示唆を受ける開示もありません。
上述したように、本願発明では短繊維を混合・混練しながらローラ挽きするだけではなく、『短繊維を均一に混合する』ことによって所望の樹脂を得るものです。よって、審判請求人は補正の機会を与えていただければ、特許請求の範囲を下記のとおり補正する意思を持っています。
[特許請求の範囲]
[請求項1] ビニルエステル系の合成樹脂剤に、セラミックファイバー、グラスファイバー、カーボンファイバーから選択された2又は3からなる短繊維を混合・混練しながらローラ挽きし、短繊維を均等に混合して得たことを特徴とする繊維混合樹脂。
[請求項2] アクリル系、ウレタン系、エポキシ系の合成樹脂剤、またはアクリル系とウレタン系を混合した合成樹脂剤に、セラミックファイバー、グラスファイバー、カーボンファイバーから選択された2又は3からなる短繊維を混合・混練しながらローラ挽きし、短繊維を均等に混合して得たことを特徴とする繊維混合樹脂。
[請求項3] 請求項1または2の繊維混合樹脂をバインダとして、骨材を接合した繊維混合樹脂体。
[請求項4] 骨材は、小粒径の粒状体である請求項3記載の繊維混合樹脂体。」とも主張しているが、上記のとおり、引用発明においても、「混合・混練した後に、ローラー挽きして」、「液むらを無くした」ものが得られているのであるから、その結果、「短繊維を均等に混合して得た」ものが得られていることは、技術常識からみて当然のことといわざるを得ない。
したがって、斯かる補正案をもってしても、本願は特許すべきものであるとすることはできない。

よって、意見書、審判請求書の手続補正書(方式)及び回答書における請求人の主張は、何れも採用することができない。



第10 むすび

以上のとおり、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、仮にそうでないとしても、本願発明1は、引用文献1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について、更に検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-31 
結審通知日 2009-09-08 
審決日 2009-09-24 
出願番号 特願2002-245619(P2002-245619)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08L)
P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子橋本 栄和三谷 祥子  
特許庁審判長 小林 均
特許庁審判官 小野寺 務
一色 由美子
発明の名称 繊維混合樹脂およびその製造方法  
代理人 濱田 俊明  

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